(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142421
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】大豆含有押出膨化食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 11/00 20210101AFI20241003BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L11/00 A
A23J3/16 501
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054556
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】西尾 柚香
(72)【発明者】
【氏名】瀧沢 秀樹
【テーマコード(参考)】
4B020
【Fターム(参考)】
4B020LB27
4B020LG01
4B020LG02
4B020LG03
4B020LK05
4B020LK09
4B020LP16
(57)【要約】
【課題】本発明は、全大豆由来の原料を使用した大豆含有押出膨化食品でも、十分に膨化し、適度な吸水性を持ち、風味に優れた大豆含有押出膨化食品及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】全大豆由来の原料とでん粉を含み、糖質が33~44重量%、タンパク質が37~45重量%、脂質4~7重量%であり、比重が0.19~0.39g/ml、吸水率が140~190%である大豆含有押出膨化食品により解決する。また、本発明に係る大豆含有押出膨化食品の製造方法としては、全大豆由来の原料とでん粉を含み、糖質27~37重量%、タンパク質31~38重量%、脂質3~5重量%、水分22~28重量%となるように調整した生地を、二軸エクストルーダーを用いて出口の温度が85~110℃、圧力0.9~3MPaで、押出膨化させる方法が挙げられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全大豆由来の原料とでん粉を含み、
糖質が33~44重量%、タンパク質が37~45重量%、脂質4~7重量%であり、
比重が0.19~0.39g/ml、吸水率が140~190%である大豆含有押出膨化食品。
【請求項2】
前記全大豆由来の原料が丸大豆を吸水させた吸水大豆の何れか一つを含むことを特徴とする請求項1記載の大豆含有押出膨化食品。
【請求項3】
前記でん粉が小麦粉でん粉またはα化小麦粉でん粉の何れか一つを含むことを含むことを特徴とする請求項1または2記載の大豆含有押出膨化食品。
【請求項4】
前記全大豆由来の原料が、前記大豆含有押出膨化食品中に固形分として14~25重量%含まれることを特徴とする請求項1または2記載の大豆含有押出膨化食品。
【請求項5】
前記でん粉が、前記大豆含有押出膨化食品中に固形分として35~41重量%含まれることを特徴とする請求項1または2記載の大豆含有膨化食品。
【請求項6】
全大豆由来の原料とでん粉を含み、糖質27~37重量%、タンパク質31~38重量%、脂質3~5重量%、水分22~28重量%となるように調整した生地を、二軸エクストルーダーを用いて出口の温度が85~110℃、圧力0.9~3MPaで、押出膨化させる大豆含有押出膨化食品を製造方法。
【請求項7】
前記全大豆由来の原料が、大豆粉または丸大豆を吸水させた吸水大豆の何れか一つを含むことを特徴とする請求項6記載の大豆含有押出膨化食品の製造方法。
【請求項8】
前記でん粉が小麦粉でん粉またはα化小麦粉でん粉の何れか一つを含むことを含むことを特徴とする請求項6または7記載の大豆含有押出膨化食品の製造方法。
【請求項9】
前記全大豆由来の原料が、前記生地中に固形分として13~22重量%含まれることを特徴とする請求項6または7記載の大豆含有押出膨化食品の製造方法。
【請求項10】
前記でん粉が、前記生地中に固形分26~37重量%含まれることを特徴とする請求項6または7記載の大豆含有膨化食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆含有押出膨化食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肉の代替として、大豆タンパクや小麦タンパク等の植物タンパク質を主とする粉末をエクストルーダーにより押出すことで作製した組織状蛋白素材から肉様の蛋白加工食品を製造するが提案されている。これらの組織状蛋白素材は、近年、グラノーラやシリアルバーなどで、タンパク質の補給や食感のアクセントとしても使用されている。
【0003】
特許文献1には、従来よりも口溶けが良好で喉通りが良いながらも噛み出しの硬さもあるという畜肉らしい食感を持ち、かつ植物性蛋白素材特有の臭味を感じにくいという風味にも優れた膨化蛋白素材の製造法を提供することを課題し、原料として油糧種子由来の植物性蛋白原料と水をエクストルーダーに導入して混練及び加圧加熱を行い、常圧下に押出して混練物を膨化させる膨化蛋白素材の製造法であって、該原料として油脂を混合し、全原料中における、植物性蛋白原料の無脂固形分の含有率を44~74重量%、油脂分を2~10重量%、水分を25~55重量%し、エクストルーダーとして、3軸以上のエクストルーダーを用いて押し出すことを特徴とする膨化蛋白素材の製造法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、大豆のえぐ味及び甘味が低減した組織状大豆蛋白の製造方法、及びかかる方法で製造された組織状大豆蛋白を提供することを課題として、大豆蛋白素材を含む原料に塩化カルシウム水溶液を添加する工程と、大豆蛋白素材を含む原料をエクストルーダーにより加圧・加熱する工程、を有する組織状大豆蛋白の製造方法で、前記塩化カルシウム水溶液の添加による塩化カルシウムの添加量が、大豆蛋白素材100質量部に対して、0.03~0.08質量部であることを特徴とする組織状大豆蛋白の製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、これまでのでん粉主体の膨化スナック食品とは異なり、大豆タンパク質が豊富に含まれている膨化スナック食品であって口溶け喉通りと成型性に優れた高蛋白大豆スナック食品を得ることを目的に、加水分解した大豆蛋白、でん粉及び炭酸カルシウムを水系下に加圧加熱し押出して膨化させることを特徴とする高蛋白大豆スナック食品の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許6881689号公報
【特許文献2】特開2020-162432号公報
【特許文献3】国際公開番号WO2008/004512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように様々な組織状蛋白素材が発明されているが、グラノーラなどに使用する場合、脱脂した大豆粉や大豆蛋白を多く使用するとタンパク質の風味が強く、大豆本来の風味が得られなかった。そのため、大豆本来の風味を得るために、脱脂前の丸大豆の粉末である大豆粉末や丸大豆を吸水させた吸水大豆の使用を検討した。しかしながら、これらの丸大豆を全部使用した全大豆由来の原料を使用する場合、原料中に油脂を多く含むため、膨化が不均質且つ十分でなく、吸水性が悪く、食感もガリガリとしたものとなった。
【0008】
よって本発明は、全大豆由来の原料を使用した大豆含有押出膨化食品でも、十分に膨化し、適度な吸水性を持ち、風味に優れた大豆含有押出膨化食品及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、鋭意研究した結果、押出時の生地の糖質含量、蛋白含量、油脂含量の比を適正な範囲とすることで、全大豆由来の原料が含まれる場合でも、安定して膨化することを見出した。また、膨化後の大豆含有押出膨化食品は、適度な吸水性を持ち、風味、食感に優れていることを見出した。
【0010】
すなわち、全大豆由来の原料とでん粉を含み、糖質が33~44重量%、タンパク質が37~45重量%、脂質4~7重量%であり、比重が0.19~0.39g/ml、吸水率が140~190%である大豆含有押出膨化食品である。
【0011】
また、本発明に係る全大豆由来の原料は、大豆粉または丸大豆を吸水させた吸水大豆の何れか一つを含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るでん粉は、小麦粉でん粉またはα化小麦粉でん粉の何れか一つを含むことを含むことが好ましい
【0013】
また、本発明に係る全大豆由来の原料は、大豆含有押出膨化食品中に固形分として14~25重量%含まれることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るでん粉は、大豆含有押出膨化食品中に固形分として35~41重量%含まれることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る大豆含有押出膨化食品の製造方法は、全大豆由来の原料とでん粉を含み、糖質27~37重量%、タンパク質31~38重量%、脂質3~5重量%、水分22~28重量%となるように調整した生地を、二軸エクストルーダーを用いて出口の温度が85~110℃、圧力0.9~3MPaで、押出膨化させる大豆含有押出膨化食品を製造方法が挙げられる。
【0016】
また、本発明に係る大豆含有押出膨化食品の製造方法の全大豆由来の原料は、大豆粉または丸大豆を吸水させた吸水大豆の何れか一つを含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る大豆含有押出膨化食品の製造方法のでん粉は、小麦粉でん粉またはα化小麦粉でん粉の何れか一つを含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る大豆含有押出膨化食品の製造方法の全大豆由来の原料は、押出前の生地中に固形分として13~22重量%含まれることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る大豆含有押出膨化食品の製造方法のでん粉は、押出前の生地中に固形分として26~37重量%含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、全大豆由来の原料を使用した大豆含有押出膨化食品でも、十分に膨化し、適度な吸水性を持ち、風味に優れた大豆含有押出膨化食品及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0022】
1.原料
本発明に係る大豆含有押出膨化食品は、全大豆由来の原料を含む。全大豆由来の原料とは、脱脂や蛋白抽出などの処理をしていない丸大豆そのままの状態を使用した原料であり、丸大豆を粉砕した大豆粉、丸大豆の状態で水を吸水させた吸水大豆、吸水大豆をさらに発芽させた発芽大豆が挙げられる。本発明おいては、発芽大豆も吸水大豆の一部とする。このうち、風味や食感の面で大豆粉よりも丸大豆の形状のままの吸水大豆をエクストルーダーにて押し出す方が好ましい。
【0023】
本発明に係る大豆含有押出膨化食品の全大豆由来の原料の配合量は、後述する押出し前の生地の状態で油脂を含む固形分として13~22重量%含むことが好ましい。13重量%未満だと全大豆由来の原料の風味が感じられにくい。また、22重量%よりも大きいと膨化が不均質となり、食感も悪くなりやすい。また、大豆含有押出膨化食品中としては、全大豆由来の原料が油脂を含む固形分として14~25重量%含まれることが好ましい。
【0024】
本発明に係る大豆含有押出膨化食品は、でん粉を含む。でん粉の種類については特に限定はなく、小麦でん粉、馬鈴薯でん粉、コーンスターチ、タピオカでん粉などその由来を問わず、また、それらの加工でん粉でも差し支えない。本発明においては、膨化や食感の面から特に小麦でん粉が好ましく、さらに小麦でん粉をα化処理したα化小麦でん粉が好ましい。
【0025】
本発明に係る大豆含有押出膨化食品のでん粉の配合量は、後述する押出し前の生地の状態で固形分として31~38重量%含むことが好ましい。31重量%未満だと糖質のバランスを調整することが難しく、膨化を均質に行えない。逆に38重量%よりも多いと膨化にムラが出るため、外観や食感の面で好ましくない。また、大豆含有押出膨化食品中としては、でんぷんが固形分として35~41重量%含まれることが好ましい。
【0026】
本発明に係る大豆含有押出膨化食品のその他の原料としては、タンパク質調整のために、蛋白素材を添加することもできる。蛋白素材としては、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白、脱脂大豆粉、小麦蛋白のいずれも使用することができる。タンパク質含量が多い点で分離大豆タンパク粉を用いることが好ましい。また、その他の原料としては、セルロース、難消化性澱粉、などの食物繊維、大豆油、菜種油、米油、亜麻仁油などの油脂、乳化剤、デキストリン、糖類、酸化防止剤、色素、pH調整剤、カルシウム塩などを添加することができる。
【0027】
2.生地の調整
次いで生地を作製する。生地の作製は、前記した原料に必要により水を加えて混合して作製する。水の添加は、二軸エクストルーダーで原料を押出す際に添加することもできる。原料を添加する水の量としては、押出前の生地の水分が22~28重量%の範囲となるように添加すればよい。また、押出す前の生地の組成としては、糖質が27~37重量%、タンパク質31~38重量%、脂質3~5重量%の範囲となるように、大豆由来の原料、でん粉、必要により蛋白素材などの原料を調整することが好ましい。脂質については、油脂を添加することもできるが、基本的には、全大豆由来の原料中に含まれる脂質で調整することが好ましい。この範囲に生地を調整することで、後述するエクストルーダーによる押出工程で適切な膨化度合と吸水率を有する大豆含有押出膨化食品を作製することができる。なお、本発明に係る糖質は、全重量から水分、タンパク質、脂質、灰分の重量を差し引いた炭水化物の重量から食物繊維の重量を差し引いたものをいう。なお、タンパク質、脂質、灰分、食物繊維の測定方法については、公定法に従って行えばよい。
【0028】
3.押出工程
エクストルーダーを用いて調整した生地を高圧下でダイを通して常圧下に押出すことで大豆含有押出膨化食品を作製する。本発明に用いるエクストルーダーは、一軸エクストルーダーでも二軸エクストルーダーでも用いることができるが、品質の安定性の点から二軸型のものが好ましい。エクストルーダーは、原料供給口、バレル内をスクリューにおいて原料送り、混合、圧縮、加熱機構を有し、さらに先端バレルに装着されたダイを有するものであれば利用できる。本発明の組織化温度は、でん粉が充分糊化されたα化澱粉を用いる場合は、押出し途中で特に高温で加熱するは必要なく出口の温度が85~110℃となるように調整することが好ましい。本発明の押出時の圧力としては出口付近の圧力が0.9~3MPaが適当である。高圧下から常圧下に一気に開放されることで多孔質構造を有するようになる。また、ダイの形状を変えることにより、様々な形状の大豆含有押出膨化食品が得られる。本発明においては、球状、楕円球状、円柱状、フレーク状、キューブ状、板状、リング状などの形状を取ることができる。グラノーラに使用する場合は、球状、楕円球状が好ましい。また、大豆含有押出膨化食品の大きさとしては3~10mm程度が好ましく、より好ましくは、5~8mm程度の大きさが好ましい。また、押出工程の後に、水分調整のために必要により乾燥工程を行い大豆含有押出膨化食品とすることもできる。
【0029】
4.大豆含有押出膨化食品
本発明に係る大豆含有押出膨化食品の組成としては、糖質33~44重量%、タンパク質37~45重量%、脂質4~7重量%、水分4~8重量%の範囲が好ましい。タンパク質が多すぎると風味が悪く、膨化がしにくくなる。逆にタンパク質が少なすぎると膨化が大きくなり吸水性が高くなりすぎ、サクサクとした食感が得られにくくなる。脂質については、多すぎると膨化が悪くなり、吸水性が悪くなる。逆に少なすぎると全大豆由来の原料が少ないため風味が悪くなる。糖質については多くなりすぎると膨化しすぎて吸水性しすぎ、少なすぎると膨化が悪く、吸水性が悪くなる。
【0030】
また、本発明に係る大豆含有押出膨化食品の膨化度合としては、比重が0.19~0.39g/mlが好ましい。比重が高すぎると硬く、ガリガリとした食感となり、吸水性も悪くなる。逆に比重が小さすぎると食感は軽くなるが、すぐに吸水してしまい、グラノーラとして牛乳やヨーグルトに入れた場合、サクサクとした食感が維持されにくくなる。
【0031】
比重の測定方法は、大豆含有押出膨化食品をそのままか、大きさが大きいものは軽く粉砕して、篩により1mmメッシュ以上、4.75mmメッシュ以下に分級したサンプルを測定サンプルとし、100mLのメスシリンダーに軽く振動させながら少しずつ入れ100mlとなったところで内容物の重量を測定し、算出により求める。
【0032】
また、本発明に係る大豆含有押出膨化食品の吸水率としては、吸水率が140~190%が好ましい。吸水率が140%を切ると吸水性が悪く、サクサクとした食感が得られにくい。逆に吸水率が190%を超えると吸水性がよく、すぐにふやけた食感となる。より好ましい吸水率としては170~190%である。
【0033】
吸水率は、大豆含有押出膨化食品4.0gに20℃の水25gを加え2分間静置した後、大豆含有押出膨化食品を金網で掬い、水を切り、重量を測定して、吸水率(%)=測定重量(g)/4.0g x 100で算出により求める。
【0034】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例0035】
(試験例1~12)
下記表1に記載された組成を有する原料を下記表2に記載された試験例1~13の配合で100質量部となるように準備し、二軸エクストルーダー(N.P&Company社製 N32L Twin screw extruder)で原料を押出しながら原料100質量部に対して下記表2に記載された質量部の水をエクストルーダー内で添加し、φ3mmの穴の開いたダイから押し出しながら、押出後の長径が5~8mmに近くなるようにカットし、組織化された膨化物を作製した。押出時の出口の温度、圧力は、下記表2に記載した通りであった。また、押出前の原料の組成について下記表3に記載する。また、押出後の押出膨化食品の組成について表4に記載する。
【0036】
また、作製した押出膨化食品サンプルについて評価を行った。外観、食感、風味については試験例1を基準として評価を行った。評価については、ベテランのパネラー8人によってオープンパネル方式で行った。
【0037】
具体的には、外観については試験例1と同等に膨化が均質で十分膨化しているものを◎、試験例1と比較してやや膨化が不均質であるか、不十分であるが概ね良好なものを〇、試験例1と比較して膨化が不均質であるか、不十分であり不可なものを△、著しく膨化か不均質か、膨化していないものを×とした。
【0038】
また、食感については、試験例1と同等の硬さのものを◎、試験例1よりもやや硬いまたは軽い食感であるが概ね良好なものを〇、試験例1よりも硬すぎるまたは軽すぎる食感であり不可なものを△、著しく硬すぎるまたは軽すぎる食感のものを×とした。
【0039】
また、風味については、試験例1と同等か悪いものを×、試験例1よりも全大豆由来の風味を感じるが不十分なものを△、試験例1よりも全大豆由来の風味を感じ良好なものを〇、試験例1よりも全大豆由来の風味を強く感じ、非常に良好なものを◎とした。
【0040】
また、外観上膨化が不可なものを除き、比重と吸水率を測定した。また、吸水率を測定したサンプルについて喫食し、食感について評価を行った。評価基準は、試験例1と同等の硬さのものを◎、試験例1よりもやや硬いまたは柔らかい食感であるが概ね良好なものを〇、試験例1よりも硬すぎるまたは柔らかすぎる食感であり不可なものを△、著しく硬すぎるまたは柔らかすぎる食感のものを×とした。
【0041】
官能評価及び分析結果を表5に示す。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
脱脂大豆粉を原料に膨化させたサンプルを試験例1として評価の標準品とした。膨化については均質であり、食感も適度な硬さを有しているが、脱脂している分、全大豆由来の風味が無かった。
【0048】
試験例1の脱脂大豆粉の一部を、丸大豆を粉砕した大豆全粒粉に置き換えた試験例2のサンプルは、ほとんど膨化せず、食感も著しく硬く、大豆粉を使った風味についても僅かしか感じられなかった。
【0049】
試験例2に対して、脱脂大豆粉の代わりに分離大豆蛋白を原料中に50重量%、でん粉を原料中に30%に変更した試験例3のサンプルは、膨化の改善は見られたが不十分であり、食感も風味も不十分な結果となった。
【0050】
試験例2に対して、脱脂大豆粉の代わりに分離大豆蛋白を原料中に30重量%、でん粉を原料中に50%に変更した試験例4のサンプルは、膨化はしたが不均質であり、食感も風味も不十分な結果となった。
【0051】
試験例2に対して、脱脂大豆粉の代わりに分離大豆蛋白を原料中に35重量%、澱粉を原料中に45%に変更した試験例5のサンプルは、均質に膨化し、食感も風味も良好な結果となった。
【0052】
試験例5に対して、大豆全粒粉の量を原料中に17%、分離大豆蛋白を原料中に固形分として38%に変更した試験例6のサンプルは、膨化度合や食感、風味は概ね良好であったが、風味は試験例5に比べ若干弱かった。
【0053】
試験例5に対して、大豆全粒粉の量を原料中に23%、分離大豆蛋白を原料中に32%に変更した試験例7のサンプルは、風味については、試験例5に比べ良く非常に良好であったが、膨化度合や食感については概ね良好なものの、試験例5に比べ膨化度合は若干弱く、食感は試験例5に比べ硬めであった。
【0054】
試験例7に対して、大豆全粒粉の一部を通常の浸漬大豆に変更し、分離大豆蛋白、でん粉の添加量及び加水量を調整した試験例8のサンプルは、試験例7よりも膨化が均質で食感も適度な硬さであり、口溶けもよく非常に良好であり、風味も大豆の風味を強く感じ非常に良好であった。
【0055】
試験例8に対して、浸漬大豆を発芽大豆に変更した試験例9のサンプルは、試験例8とほぼ同等の膨化度合及び食感であった。風味に関しては、若干試験例8よりもよく感じたが、試験例8及び9共に非常に良好であった。
【0056】
試験例8に対して、でん粉の種類をα化小麦でん粉から小麦でん粉に変更した試験例10のサンプルは、膨化度合は概ね良好であったものの、試験例8に比べ弱く、食感も試験例8に比べ硬めであった。
【0057】
試験例8に対して、でん粉の種類をα化小麦粉でん粉からα化馬鈴薯でん粉に変更した試験例11のサンプルは、膨化度や食感は概ね良好であったものの、試験例10に比べ弱く、食感も硬めであった。
【0058】
試験例8に対して、通常の浸漬大豆と大豆全粒粉の割合を調整し、分離大豆蛋白、でん粉の添加量、加水量を変更した試験例12のサンプルは、膨化度、食感は良好であったものの、試験例8と比較すると弱く、風味に関しては試験例8と比較して強く非常に良好であった。
【0059】
試験例8に対して、通常の浸漬大豆と大豆全粒粉の割合を調整し、分離大豆蛋白、でん粉の添加量、加水量を変更した試験例13のサンプルは、食感や膨化度は良好であったものの、試験例8と比較すると膨化に若干ムラがあり、食感が軽く、風味に関しては試験例8と比較して弱めであったが非常に良好であった。
【0060】
膨化が明らかに悪い試験例2~4を除き試験例1、5~13について、吸水性の測定及び吸水性測定後のサンプルの食感について評価を行った。試験例11については、評価サンプルの中では一番比重が大きく、吸水率も他のサンプルに比べ低く、吸水後の食感が硬めであった。その他のサンプルについては、比重も適正な範囲で吸水率も概ね適正な範囲で食感も良好であった。
【0061】
上記結果から、全大豆由来の原料を使用するにあたり、通常の脱脂大豆などの原料を用いたものと比較して、糖質の量を多く添加し、生地の適度な糖質、タンパク質、脂質のバランスをとることで、エクストルーダーで適正な範囲に膨化させることができた。具体的な膨化前の生地のバランスとしては、水分22~28重量%、糖質27~37重量%、タンパク質31~38重量%、脂質3~5重量%の範囲となるように生地の組成を調整することが好ましいと考える。
【0062】
また、全大豆由来の原料としては、風味の面から生地中に固形分として13重量%以上含まれていることが好ましく、脂質の面から生地中に固形分として22重量%以下となるように含まれることが好ましいと考える。
【0063】
また、適正な膨化度を得るために生地中の糖質の調整として添加するでん粉の添加量としては、生地中に固形分として26重量%以上含まれることが好ましい。逆に多く添加すると膨化が不均質になりやすくなるため37重量%以下となるように含まれることが好ましいと考える。
【0064】
また、試験例8、10、11の結果から、でん粉の種類としてはα化小麦でん粉または小麦でん粉が膨化や吸水性の面で好ましく、より好ましくはα化小麦でん粉が好ましいと考える。
【0065】
また、試験例7~9の結果から全大豆由来の原料としては、大豆全粒粉よりも通常の浸漬大豆か、浸漬大豆を発芽させた発芽大豆が風味の面で好ましいと考える。
【0066】
また、試験例5~13の結果から、本発明に係る大豆含有押出膨化食品としては、糖質が33~44重量%、タンパク質が37~45重量%、脂質が4~7重量%、水分が4~8重量%、比重が0.19~0.39g/ml、吸水率が140~190%の範囲が好ましい。より好ましくは、比重としては0.19~0.32g/ml、、吸水率としては170~190%の範囲が好ましいと考える。
【0067】
また、試験例5~13の結果から、本発明に係る大豆含有押出膨化食品に含まれる全大豆由来の原料としては、大豆含有押出膨化食品中に固形分として14~25重量%含まれることが好ましいと考える。
【0068】
また、試験例5~13の結果から、本発明に係る大豆含有押出膨化食品に含まれる澱粉としては、大豆含有押出膨化食品中に固形分として35~41重量%含まれることが好ましいと考える。
全大豆由来の原料とでん粉を含み、糖質27~37重量%、タンパク質31~38重量%、脂質3~5重量%、水分22~28重量%となるように調整した生地を、二軸エクストルーダーを用いて出口の温度が85~110℃、圧力0.9~3MPaで、押出膨化させる大豆含有押出膨化食品の製造方法。