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  • 特開-ペロブスカイト型複合酸化物粉末 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142461
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ペロブスカイト型複合酸化物粉末
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/00 20060101AFI20241003BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C01G45/00
H01M8/12 101
H01M4/86 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054605
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】碇 和正
(72)【発明者】
【氏名】小川 慎太郎
【テーマコード(参考)】
4G048
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA05
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AD08
4G048AE05
5H018AA06
5H018BB01
5H018BB05
5H018BB06
5H018BB11
5H018BB12
5H018BB16
5H018EE13
5H018HH01
5H018HH02
5H018HH04
5H018HH05
5H018HH08
5H018HH10
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】特定組成のペロブスカイト型複合酸化物粉末において高い導電性を得る。
【解決手段】Laを含み、Sr,Ca,Co,Ni,Mn,Feからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含むペロブスカイト型複合酸化物粉末であって、BET比表面積が6.0m/g以下であり、所定手順で測定される残渣割合が5%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Laを含み、Sr,Ca,Co,Ni,Mn,Feからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含むペロブスカイト型複合酸化物粉末であって、
BET比表面積が6.0m/g以下であり、
下記手順で測定される残渣割合が5%以下である
ことを特徴とするペロブスカイト型複合酸化物粉末。
(残渣割合の測定)
上部を固定し、袋状に折り畳んだ15cm角のナイロンメッシュ袋(目開き10μm,開口率4%)の質量(Maとする)を測定する。
次に前記ナイロンメッシュ袋内部に仕込む複合酸化物粉末の質量(Mbとする)を測定する。
複合酸化物粉末が仕込まれたナイロンメッシュ袋の固定部を手で持ち、500ppmのヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(イオン交換水にて溶解,液温20℃)300mL中に、上下方向(振幅幅3cm、1秒間に3往復)に振とうしながら2分間浸漬させる。この測定作業を1セットとし、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を交換しながら10セットの測定作業を行う。
その後、上部を固定した状態のナイロンメッシュ袋ごと、120℃で5分間乾燥させる。乾燥後、上部を固定した状態でナイロンメッシュ袋の質量(Mcとする)を測定する。MaとMcの差分(Mc-Ma)を、ナイロンメッシュ袋内の複合酸化物粉末の残渣質量(Md)とし、下記式から残渣割合(%)を算出する。
残渣割合(%)=Md/Mb×100
【請求項2】
100nmメッシュでのメンブレンフィルター濾過によって算出された粒径100nm以上の粒子の割合が98%以上である請求項1記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末を含み形成される固体酸化物型燃料電池用の空気極。
【請求項4】
燃料極と、固体電解質と、空気極とを備えた固体酸化物型燃料電池であって、
前記空気極として前記請求項3に記載の空気極を用いた固体酸化物型燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末に関し、より詳細には、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell、以下、単に「SOFC」ということがある。)の空気極材料として好適に用いられる複合酸化物粉末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SOFCは、種々のタイプの燃料電池のなかでも発電効率が高く、また多様な燃料が使用可能なこと等から、環境負荷の少ない次世代の発電装置として開発が進められている。SOFCの単セルは、多孔質構造の空気極(カソード)と、酸化物イオン伝導体を含む緻密な固体電解質と、多孔質構造の燃料極(アノード)とがこの順に積層された構造を有する(図1を参照)。SOFCの作動時には、空気極に空気等のO(酸素)含有ガスが、燃料極にH(水素)等の燃料ガスが、それぞれ供給される。この状態で、SOFCに電流を印加すると、空気極でOが還元されてO2-アニオン(酸素イオン)となる。そして、このO2-アニオンが固体電解質を通過して燃料極に到達し、Hを酸化して電子を放出する。これによって、電気エネルギーの生成(すなわち発電)が行われる。
【0003】
このようなSOFCの動作温度は従来800℃~1000℃程度であったが、近年、SOFCの動作温度の低温化が図られている。とはいうものの、実用化されているSOFCの最低温度は600℃以上と依然として高温である。
【0004】
このようなセル構造と高い動作温度のため、SOFCの空気極の材料には、基本的に、酸素イオン導電性が高く、電子伝導性が高く、熱膨張が電解質と同等あるいは近似し、化学的な安定性が高く、他の構成材料との適合性が良好であり、焼結体が多孔質であり、一定の強度を有することなどの特性が要求される。
【0005】
このような固体酸化物型燃料電池の空気極の材料として、本出願人は特許文献1において、一般式ABO3-δ(δは酸素欠損量を表し0≦δ<1である。Aサイトに含有される元素はLa、Bサイトに含有される元素はCo及びNi)で示され、ウィリアムソン-ホール法により求められる結晶子径が20nm以上100nm以下であるペロブスカイト型複合酸化物粉末を提案した(特許文献1)。
【0006】
また特許文献2では、ガスセンサ素子の電極の電極層やリード層の材料として、LaNi(MはCoとFeのうちの一種以上、a+b+c=1、1.25≦x≦1.75)で表される組成式のペロブスカイト型酸化物結晶構造を有する導電性酸化物が提案されている。
【0007】
そしてまた特許文献3では、一般式ABOで表され、AがLa及び希土類元素の群から選ばれる1つ以上の元素と、Sr,Ca及びBaの群から選ばれる1つ以上の元素とからなり、BがMn,Co,Fe,Ni及びCuの群から選ばれる1つ以上の元素からなるペロブスカイト複合酸化物粉体であって、平均粒子径が1μm以下であり、且つ粒度分布の幅が所定範囲内に制限されている空気極原料粉体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2022/013903号公報
【特許文献2】特開2018-112490号公報
【特許文献3】特開2006-32132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
固体酸化物型燃料電池の空気極に用いる材料は、できるだけ抵抗が小さく導電性が高いものがよいところ、近年、更なる性能の向上が望まれている。
【0010】
そこで本発明の目的は、特定組成のペロブスカイト型複合酸化物粉末においてより高い導電性を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成する本発明の実施形態に係るペロブスカイト型複合酸化物粉末は、Laを含み、Sr,Ca,Co,Ni,Mn,Feからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含むペロブスカイト型複合酸化物粉末であって、BET比表面積が6.0m/g以下であり、下記手順で測定される残渣割合が5%以下であることを特徴とする。
(残渣割合の測定)
上部を固定し、袋状に折り畳んだ15cm角のナイロンメッシュ袋(目開き10μm,開口率4%)の質量(Maとする)を測定する。
次に前記ナイロンメッシュ袋内部に仕込む複合酸化物粉末の質量(Mbとする)を測定する。
複合酸化物粉末が仕込まれたナイロンメッシュ袋の固定部を手で持ち、500ppmのヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(イオン交換水にて溶解,液温20℃)300mL中に、上下方向(振幅幅3cm、1秒間に3往復)に振とうしながら2分間浸漬させる。この測定作業を1セットとし、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を交換しながら10セットの測定作業を行う。
その後、上部を固定した状態のナイロンメッシュ袋ごと、120℃で5分間乾燥させる。乾燥後、上部を固定した状態でナイロンメッシュ袋の質量(Mcとする)を測定する。MaとMcの差分(Mc-Ma)を、ナイロンメッシュ袋内の複合酸化物粉末の残渣質量(Md)とし、下記式から残渣割合(%)を算出する。
残渣割合(%)=Md/Mb×100
【0012】
前記実施形態のペロブスカイト型複合酸化物粉末において、100nmメッシュでのメンブレンフィルター濾過によって算出された粒径100nm以上の粒子の割合が98%以上であるのが好ましい。
【0013】
そしてまた本発明によれば、前記のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末を含み形成される固体酸化物型燃料電池用の空気極が提供される。
【0014】
また本発明によれば、燃料極と、固体電解質と、空気極とを備えた固体酸化物型燃料電池であって、前記空気極として前記記載の空気極を用いた固体酸化物型燃料電池が提供される。
【0015】
なお、本明細書においてBET比表面積は、後述の実施例に記載の測定方法によるものをいう。また本明細書において示す「~」は、特に断りのない限り、その前後に記載の数値を下限値及び上限値として含むものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より導電性の高いペロブスカイト型複合酸化物粉末が実現可能となる。このようなペロブスカイト型複合酸化物粉末を用いることで、導電性の高い燃料電池の空気極および燃料電池を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】固体酸化物型燃料電池の一例を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るペロブスカイト型複合酸化物粉末(以下、単に「複合酸化物粉末」と記すことがある。)は、La(ランタン)を含み、Sr(ストロンチウム),Ca(カルシウム),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Mn(マンガン),Fe(鉄)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含むペロブスカイト型複合酸化物粉末である。
【0019】
他の表し方をすると、本発明に係る複合酸化物粉末は、一般式ABO3―xで示され、Aサイトには、Laが含有され、SrおよびCaの少なくとも一方が含まれていてもよく、Bサイトには、Co,Ni,Mn,Feからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素が含まれる。xは0を含む酸素欠損量を示し、xの値の範囲は0≦x<1である。
【0020】
これらの組成の中でも、一般式ABO3―xで示すと、AサイトにLaとSrが含有され、BサイトにMnが含有されるものが好ましい。Aサイトに含有されるSrとBサイトに含有されるMnの量は任意に調整することができる。一般式としてLaSrMn1-y3―xと示すことができる。式中のyは0.1≦y≦0.9であることが好ましく、さらには0.3≦y≦0.85であるのがより好ましい。xの値の範囲は0≦x<1である。
【0021】
また他の表し方によれば、本発明に係る複合酸化物粉末は、一般式ABO3―xで示され、AサイトにLa1-(a+b)SrCaが含有され、BサイトにCo,Ni,Mn,Feからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素が含有される。xは0を含む酸素欠損量を示し、xの値の範囲は0≦x<1である。またaとbの範囲は0<a<1、0≦b<1である。
【0022】
本実施形態の複合酸化物粉末は、Cu管球を用いてX線回折(XRD)測定により得られたX線回折パターンに基づいて、上記のX線回折(XRD)装置に付属の解析ソフトウェアにより、得られた複合酸化物粉末の結晶相の同定を行い、ペロブスカイト型構造の結晶相を有するものである。結晶相はペロブスカイト型構造単相であることが好ましい。また、ペロブスカイト型構造に取り込まれなかった成分に起因するピーク高さと、ペロブスカイト型複合酸化物粉末の最大回折線のピーク高さとの比(ペロブスカイト型構造に取り込まれなかった成分のピーク高さ/ペロブスカイト型複合酸化物粉末の最大回折線のピーク高さ)が10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下である。
【0023】
本発明に係る複合酸化物粉末の大きな特徴の一つは、BET一点法により測定したBET比表面積が6.0m/g以下であることである。複合酸化物粉末のBET比表面積が6.0m/g以下であると、複合酸化物粉末をスラリーもしくは塗料化して空気極材料とする際に粘度の上昇が抑制されてスラリーもしくは塗料の塗布性が向上し、導電性に寄与される。複合酸化物粉末のより好ましいBET比表面積は4.5m/g以下である。
一方、複合酸化物粉末のBET比表面積は0.1m/g以上であることが好ましく、1.0m/g以上であるのがより好ましく、2.0m/g以上であるのがさらに好ましい。複合酸化物粉末のBET比表面積が0.1m/g以上であると、複合酸化物粉末を用いて燃料電池の空気極を形成した場合に空気極の表面に適度な量の細孔が形成可能となり、ガスとの接触面積が増加して燃料電池を構成する際の交換効率が向上可能となる。
【0024】
本発明に係る複合酸化物粉末のもう一つの大きな特徴は、下記手順で測定される残渣割合が5%以下であることである。燃料電池の空気極の導電性を高めることなどを目的として、本発明者等は種々検討を重ねたところ、空気極の材料である複合酸化物粉末の凝集粉の含有割合が少なくなると空気極の導電性が向上するとの新たな知見を得た。そして本発明者等は、複合酸化物粉末の凝集粉の含有割合の一つの指標として、下記手順で測定される残渣割合を用いることとした。複合酸化物粉末の残渣割合が少ないほど複合酸化物粉末の凝集粉は少ないと判断される。
【0025】
本発明に係る複合酸化物粉末の残渣割合は、ナイロンメッシュ袋に仕込んだ複合酸化物を、所定の水溶液中で振とうしながら浸漬を所定回数繰り返した場合の質量変化から算出した割合である。詳細には、上部をクリップ留めなどで固定した、袋状に折り畳んだ15cm角のナイロンメッシュ袋(目開き10μm,開口率4%)の質量(以下、Maとする)を測定する。次にナイロンメッシュ袋内部に仕込む複合酸化物粉末の質量(Mbとする)を測定する。本実施例では仕込む複合酸化物粉末の質量を0.5gとした。次にナイロンメッシュ袋内部に複合酸化物粉末を0.5g仕込み、再度クリップ留めし上部を固定する。
複合酸化物粉末が仕込まれたナイロンメッシュ袋の固定部分(クリップ留めした部分)を手で持ち、500ppmのヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(イオン交換水にて溶解、液温20℃)300mL中に、上下方向(振幅幅3cm、1秒間に3往復)に振とうしながら2分間浸漬させる。上記複合酸化物粉末が仕込まれたナイロンメッシュ袋のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液への振とうしながら2分間浸漬作業を1セットとし、各セット毎にヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を交換しながら10セット行った。
その後、クリップ留めで、ナイロンメッシュ袋の上部を固定した状態でナイロンメッシュ袋ごと、120℃で5分間乾燥させる。乾燥後、クリップ留め上部を固定した状態でナイロンメッシュ袋の質量(Mcとする)を測定する。
MaとMcの差分(Mc-Ma)を、ナイロンメッシュ袋内の複合酸化物粉末の残渣質量(Md)とし、下記式から残渣割合(%)を算出する。
残渣割合(%)=Md/Mb×100
【0026】
本発明では複合酸化物粉末の残渣割合を5%以下と定めた。残渣割合が5%よりも多い、すなわち複合酸化物粉末における凝集粉の含有量が多いと、複合酸化物粉末を用いて作製した燃料電池の空気極の導電性の向上が望めない。残渣割合の好ましい上限値は2.5%である。
【0027】
また本実施形態に係る複合酸化物粉末の、100nmメッシュでのメンブレンフィルター濾過によって算出された100nm以上の粒子の割合は98%以上であるのが好ましい。なお、100nm以上の粒子の割合は次の手順で測定する。
・複合酸化物粉末の質量(W1)を測定する。また、使用前のメンブレンフィルターを載置したバットの質量(W2)を測定する。質量(W1)と質量(W2)との合計を濾過前質量(Wb)とする。
・質量測定した複合酸化物粉末を水100gに分散させてスラリーとする。
・前記メンブレンフィルターを取り付けた濾過器で前記スラリーを吸引しながら濾過する。
・濾過後、濾過器からメンブレンフィルターを取り外してバット内に載置し、温度100℃で2時間乾燥させる。
・乾燥後、メンブレンフィルターを載置したままのバットの質量(濾過後質量(Wa))を測定する。
・WaとWbとの差分(Wb-Wa)を100nm以上の粒子の質量とし、下記式から複合酸化物粉末の100nm以上の粒子の割合(%)を算出する。
複合酸化物粉末の100nm以上の粒子の割合=(Wb-Wa)/Wb×100
【0028】
一方、複合酸化物粉末のレーザー回折・散乱法を用いた粒度分布測定装置により体積基準で算出される累積50%である粒径D50が0.4μm以上2.0μm以下の範囲で一山分布とするのが好ましく、0.6μm以上1.5μm以下であるのがさらに好ましい。
【0029】
(製造方法)
本発明に係る複合酸化物粉末の製造方法に特に限定はないが、製造方法の一例を以下説明する。複合酸化物粉末の製造方法としては、液中で前駆体などを形成させ、それを熱処理することで複合酸化物化する湿式法と、原料を秤量してそのまま混合し焼成して複合酸化物とする乾式法とがあるが、本発明の目的を達成するためには湿式法で製造するのが好ましい。以下に複合酸化物粉末の湿式法による製造方法について例示するが、ここで例示した方法の趣旨を逸脱しない範囲において適宜調整することは可能である。
【0030】
(前駆体の作製)
本実施形態に係る複合酸化物粉末の製造方法としては、予めアンモニア水などのアルカリ溶液に、Laなどの元素を含む原料を水または酸に溶解した原料溶液を添加して中和反応を行い、複合酸化物の中和生成物を含有するスラリーを生成する方法を採用することができる。原料は、焼成段階で不純物の形で残存せず、気体として抜けてしまうようなものとすることが好ましい。
【0031】
中和生成物を生成させるときは、炭酸を含ませておくことが好ましい。こうすることによって、中和生成物(本明細書では「前駆体」ということがある。)を分離回収した際に空気中の二酸化炭素と反応して局部的に炭酸塩化し結晶化することが抑制される。その結果、後の工程でペロブスカイト化した際の不純物相の析出が抑制されることになるので好ましい。この系内への炭酸の添加は炭酸塩としての添加でよい。このようにして得られた中和生成物は、各元素が均一に混合された非晶質のナノ粒子であるため、焼成時に元素の拡散が容易になり単相化および結晶子の成長を促す効果が得られる。
【0032】
中和生成物を形成させるときの温度は60℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以下、一層好ましくは40℃以下である。こうした温度設定にすることで、液中に含まれる炭酸やアンモニアなどのガスとなりやすいものが液中から気散するので、中和生成物を好適に得ることが出来る。本実施形態で得られた複合酸化物の中和生成物は、各元素が均一に混合された非晶質のナノ粒子であるため、焼成時に元素の拡散が容易になり単相化および結晶子の成長を促す効果が得られる。
【0033】
(ろ過・乾燥)
得られた中和生成物は必要に応じてスラリーから分離して、洗浄を行った後、乾燥を行い、中和生成物を乾燥させた前駆体を得る。スラリーから分離する方法としては、例えばろ過分離、フィルタープレスによる分離回収やスプレードライやフリーズドライなどにより直接乾燥する方法のいずれも採用することができる。ろ過分離やフィルタープレスについては、公知の方法をいずれも採用することができる。また、直接乾燥する際、得られる前駆体を所望の大きさなどに調整するために、pH調整を行ってもよい。pH調整の際には、乾燥凝集体にアルカリ金属、アルカリ土類金属など不純物の残存を避けるため、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属を含むような調整剤を用いるよりは、乾燥時に揮散して残存する虞の少ないアンモニア等で調整することが好ましい。中和生成物を乾燥する際の乾燥温度は150℃以上350℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以上300℃以下である。この乾燥温度範囲を極端に外れた温度で乾燥させると、一部がペロブスカイト化するおそれ、もしくは乾燥しきらずに前駆体中に水分が残るおそれがあるので好ましくない。
【0034】
(前駆体粉砕)
乾燥した前駆体は粉砕を行うことで、微細化処理することが出来る。粉砕は、後述の焼成工程を経てから行っても構わない。上述の乾燥工程においてスプレードライヤーにより乾燥させた場合には、粉砕を要しない場合もある。粉砕に用いる装置としては、例えば、乾式粉砕を採用する場合には、乳鉢、サンプルミル、ヘンシェルミキサー、ハンマーミル、ジェットミル、パルペライザー、インペラーミル、インパクトミルなどが挙げられる。例えば、インパクトミルを使用する場合の回転数としては9000rpm以上16000rpm以下の範囲が好ましい。なお、インパクトミルの回転数と粉砕時間は、焼成工程における焼成温度と焼成時間とに関連し、焼成温度が高くまた焼成時間が長いほど、インパクトミルの回転数は大きく粉砕時間は長くするのが望ましい。
【0035】
(焼成)
作製した前駆体の粉末は焼成炉にて焼成し、複合酸化物を得る。焼成炉は、熱源が電気式又はガス式のシャトルキルン、ローラハースキルン、ロータリーキルンなど従来公知のものが使用できる。焼成温度は、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を構成する粒子の結晶子径を大きくするために1000℃よりも高温で焼成するのが好ましい。また、焼成温度が1500℃以下であると焼成後の焼成物の解粒が容易となるため好ましい。
【0036】
焼成時の昇温速度は10℃/min以下とし、焼成時の雰囲気は大気雰囲気であってもよいし、酸素を1ppm以上20%以下含む窒素中で焼成してもよい。焼成を緩やかとすることで、結晶子径を調整することができる。そして、焼成炉内や焼成容器内を開放系とし、成分原料の原料塩から発生するガス成分を除去しながら昇温する。なお、本発明において開放系とは、焼成炉内や焼成容器内が密閉されておらず、雰囲気である気体の流入出が可能な反応系を指す。
【0037】
(粉砕)
次に、焼成後の造粒物(焼成物)を粉砕する。粉砕は、湿式粉砕及び乾式粉砕の一方であっても、それらを併用してもかまわない。乾式粉砕時には、前駆体粉砕時に例示列挙した装置等をいずれも採用することができる。また、湿式粉砕を採用する場合には、湿式ボールミル、サンドグラインダー、アトライター、パールミル、超音波ホモジナイザー、圧力ホモジナイザー、アルティマイザーなどが挙げられる。これらを用いて湿式破砕を行うことにより、上述の条件に沿ったペロブスカイト型複合酸化物を構成することができる。特に、パールミルを使用することが好ましい。湿式での粉砕を行うにあたりパールミルを選択するときには、知られている縦型流通管式ビーズミル、横型流通管式ビーズミル、強粉砕型突流式ビスコミルなどの既存の湿式粉砕機のいずれでも粉砕可能であるが、好ましくは横型流通管式ビーズミルを使用する。横型流通管式ビーズミルは縦型流通管式ビーズミルと比較してベッセル内に滞留している間は均一に粉砕が行われ、同一流量においてより均一な粉砕が可能となるため好適である。また、横型流通管式ビーズミルは強粉砕型突流式ビスコミルよりも処理流量が大きいため経済的に好ましい。粉砕メディアとしてはガラス、セラミック、アルミナ、ジルコニア等の硬質原料で製造されたボールを使用すると良い。所望の粒子径を有したペロブスカイト型複合酸化物を得るためのボールの粒子径は0.1mm以上5.0mm以下程度が好ましく、0.5mm以上2.0mm以下がより好ましい。湿式粉砕の場合に使用する分散媒として水や比較的低沸点で除かれやすいエタノール等の有機溶媒を用いることができる。製造コストの観点からは、水を分散媒とすることが好ましい。
【0038】
湿式粉砕後の粉砕物は乾燥させ、粉砕乾燥物を得る。乾燥方法は、噴霧乾燥が好ましい。噴霧乾燥装置としてはスプレードライヤーが好適に使用される。中でも、ディスク式のスプレードライヤーが、乾燥効率や量産性の観点からより好ましい。乾燥温度は60℃以上350℃以下、好ましくは75℃以上325℃以下、より好ましくは100℃以上300℃以下とするのがよい。この温度範囲を極端に外れた状態で乾燥させると、一部がペロブスカイト化するおそれ、もしくは乾燥しきらずに粉末中に水分が残ることがある。
【0039】
乾式粉砕後の粉砕物または湿式粉砕後の粉砕乾燥物に対し解砕処理を行う。なお、「解砕」とは、凝集した粉体を解すことをいう。解砕装置としては乾式粉砕に用いた装置が使用でき、回転数といった処理条件を粉砕する場合の条件よりも緩くすることで、すなわち低回転とすることで乾燥物を粉砕することなく解砕することができる。解砕装置は、サンプルミル、ヘンシェルミキサー、ハンマーミル、ジェットミル、パルペライザー、インペラーミル、インパクトミルなど機械的に解砕できる装置を用いることが好ましい。このような解砕処理を行うことで複合酸化物粉末における凝集物の含有量が一層減少する。例えば、解砕装置としてサンプルミルを使用する場合は、回転数を1000~4000rpmの範囲にすることが好ましい。
【0040】
(篩分け)
湿式粉砕後の粉砕物は乾燥させた後、篩分けによって粗大粒子(凝集粉)を除去し複合酸化物粉末を得る。篩分けに使用する篩の目開きは、複合酸化物粉末の平均一次粒子径(超音波分散後)等を考慮して適宜決定すればよい。複合酸化物粉末の平均一次粒子径が数十μm程度の場合、篩の目開きは250μm以下(60メッシュ以上)であるのが好ましく、より好ましい篩の目開きは150μm以下(100メッシュ以上)である。篩分け後の焼成物(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)の粒度分布は、超音波分散前のマイクロトラック粒度分布測定装置により体積基準の粒度分布で算出される累積50%粒子径D50Bは0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましい。また、超音波分散後のマイクロトラック粒度分布測定装置により体積基準の粒度分布で算出される累積50%粒子径D50Aは0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
【0041】
(固体酸化物型燃料電池,SOFC)
固体酸化物型燃料電池について説明する。図1は、固体酸化物型燃料電池の一例を模式的に示した断面構成図である。支持体となる薄板状あるいはシート状の燃料極1と、燃料極1の表面に形成された固体電解質膜2と、固体電解質膜2の表面に形成された薄板状あるいはシート状の空気極3とが積層された構造を有する。
【0042】
そして、燃料極1に燃料ガス(典型的には水素(H)であるが炭化水素(メタン(CH))等でもよい。)を供給し、空気極3に酸素(O)を含む気体(空気)を流し、燃料電池に電流を印加すると、空気極3において、空気中の酸素が、酸化物イオンとなる。酸化物イオンは、空気極3から固体電解質2を介して燃料極1に供給される。そして、該燃料極1において、燃料ガスと反応して水(HO)を生成し、電子を放出し、発電が行われる。
【0043】
SOFCは、適用する燃料電池の構成や製造プロセスにもよるが、燃料極、固体電解質膜等の積層体を予め作製し、その積層体の上に、印刷法や蒸着等によって、上記空気極材料を含む層を形成し焼結させることで空気極が形成され、燃料電池が作製される。
【0044】
空気極の膜厚はセルの構造等に応じて適宜決定すればよく特に限定されないが、例えば20μm以上50μm以下であることが好ましい。空気極の材料は、本実施形態の複合酸化物粉末のみであってもよいし、組成の異なるペロブスカイト複合酸化物粉末や、粒子径の異なる1種又は2種以上のペロブスカイト複合酸化物粉末と、本実施形態の複合酸化物粉末を混合して用いてもよい。
【0045】
固体電解質層としては、上記空気極材料に用いる電解質材料を用いることができ、例えば、希土類元素ドープセリア系固体酸化物電解質や、希土類元素ドープジルコニア系固体酸化物電解質が挙げられる。
【0046】
固体電解層の膜厚は、固体電解質層の緻密性が維持される程度に厚くする一方、燃料電池として好ましい酸素イオン又は水素イオンの伝導度を供し得る程度に薄くなるよう、両者をバランスさせて設定され、0.1μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上20μm以下がより好ましい。
【0047】
燃料極としては、多孔質構造を有し、供給される燃料ガスと接触できるように構成されていればよく、従来から固体酸化物型燃料電池に用いられている材料を使用することができる。例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)その他の白金族元素、コバルト(Co)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)等からなる金属および/または元素のうちの1種類以上から構成される金属酸化物が挙げられる。これらは、一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
燃料極の膜厚は、耐久性、熱膨張率等から20μm以上1mm以下が好ましく、20μm以上250μm以下であることがより好ましい。
【0049】
なお、SOFCの構造は、従来公知の平型、多角形型、円筒型(Tubular)あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒型(Flat Tubular)等とすることができ、形状やサイズは特に限定されない。また、平型のSOFCとしては、燃料極支持型(ASC:Anode-Supported Cell)の他にも、例えば電解質を厚くした電解質支持型(ESC:Electrolyte-Supported Cell)や、空気極を厚くした空気極支持型(CSC:Cathode-Supported Cell)等を用いることができる。その他、燃料極の下に多孔質な金属シートを入れた、メタルサポートセル(MSC:Metal-Supported Cell)とすることもできる。
【実施例0050】
(実施例1)
(1)前駆体作製
硝酸に酸化ランタンを溶解させた溶液(La濃度:15.04質量%、NO :270g/L)290gと、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)粉末17.1g、金属マンガン濃度50.4質量%の硝酸マンガン(Mn(NO)水溶液144.3gとを混合して得られた硝酸塩の混合溶液とを、それぞれイオン交換水549.1gに溶解させ混合溶液を作製した。
【0051】
また、イオン交換水2670gと炭酸アンモニウム330gを反応槽に入れ、撹拌しながら水温を25℃になるよう調整した。この炭酸アンモニウム溶液中に、混合溶液を徐々に加えて水温25℃で中和反応を行い、ペロブスカイト型複合酸化物の中和生成物を析出させた後、この中和生成物を30分間熟成させて反応を完了させた。
【0052】
(2)ろ過・乾燥
得られた中和生成物をろ過した後に水洗し、次いで直径5mmの細長い円柱形のペレット状に成形した。その後直ちにペレット状の成形体を空気を通風しながら250℃で2時間加熱して乾燥し、黒色の前駆体を得た。
【0053】
(3)焼成
得られた前駆体50gを丸型ルツボ(直径90mm、高さ75mmの容器)内に入れ、電気マッフル炉(株式会社東洋製作所製のKM-160)内へセットし、室温から800℃まで昇温速度3.1℃/分、800℃から1100℃まで昇温速度2.6℃/分で昇温し、1100℃(焼成温度)で2時間保持して焼成した後、室温まで自然冷却した。
【0054】
(4)乾式粉砕
得られた焼成物をサンプルミル粉砕装置(協立理工株式会社製、機種名:SK-M10)を用いて、20g/バッチの仕込量で回転数16000rpmで30秒×2回の粉砕処理して複合酸化物粉末を得た。
【0055】
(5)湿式粉砕
得られた複合酸化物粉末50gを、アイメックス社製4筒式サンドグラインダー(TSG-4U型、容積容量:350mL)のポットに、直径1.0mmのZrOビーズ200gおよびイオン交換水93gと共に入れた。そして、ポットを20℃の冷却水で冷却しながら、回転数1500rpmで40分間回転させて湿式粉砕した。その後、固形分として複合酸化物の粉砕物を含むスラリーをスプレードライヤー(大川原化工機株式会社製、型式;FL―12)を用いて、アトマイザー回転数20000rpm、スラリー供給量160g/minで噴霧しながら乾燥温度200℃で造粒乾燥させた。
【0056】
(6)解砕
湿式粉砕の工程までを複数回実施して、200gの乾燥粉を得た。得られた乾燥粉を、サンプルミル粉砕装置(ダルトン製、型式:KIIWR-1型、スクリーン;ドット直径1mm)を用いて、回転数3600rpmで解砕処理を行った。
【0057】
(7)篩分け
得られた乾燥粉を、振動篩(ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製、型番:AS200)を用いて、目開き500μm(30メッシュ)の篩にて篩分けを行い実施例1に係る複合酸化物粉末を得た。
得られた複合酸化物粉末の物性を下記測定方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0058】
(比較例1)
湿式粉砕後の解砕工程を行わなかったことを除き、実施例1と同様にして、比較例1に係る複合酸化物粉末を得た。
得られた複合酸化物粉末の物性を下記測定方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0059】
(組成分析)
誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(アジレント・テクノロジー株式会社製720ES)によって複合酸化物粉末の組成分析を行った。
【0060】
(BET比表面積)
得られた複合酸化物粉末について、BET比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を用いてBET一点法によりBET比表面積を求めた。
【0061】
(導電率測定)
複合酸化物粉末を半径10mmのユニットに2g仕込み、粉体抵抗測定システム(株式会社 三菱ケミカルアナリテック社製 MCP-PD51)を用いて圧力20kN(ニュートン)で圧粉し、抵抗率計(株式会社 三菱ケミカルアナリテック社製 MCP-T610)を用いて4探針プローブ法で導電率を測定した。
【0062】
(X線回折測定)
得られた複合酸化物粉末のXRD測定を株式会社リガク製のUltimaIVを用いて行った。測定条件としては、管球はCuを用い、管電圧は40kV、管電流は40mA、発散スリット1/2°、散乱スリット8mm、受光スリットは解放設定、ステップ幅は0.02°、計測時間は4°/分の設定とした。得られたX線回折パターンに基づいて、上記のX線回折(XRD)装置に付属の解析ソフトウェア(株式会社リガク製の統合粉末X線解析ソフトウェアPDXL2用ICDS(Inorganic Crystal Structure Database))により、得られた複合酸化物粉末の結晶相の同定を行った。
【0063】
(残渣割合の測定)
上部をクリップ留めした、袋状に折り畳んだ15cm角のナイロンメッシュ袋(目開き10μm,開口率4%,株式会社くればぁ製、型番:PA8)の質量(Maとする)を測定した。
次にナイロンメッシュ袋内部に複合酸化物粉末を0.5g仕込み、上部を再度クリップ留めした。なお、ナイロンメッシュ袋に仕込んだ複合酸化物粉末の質量をMbとする。
複合酸化物粉末が仕込まれたナイロンメッシュ袋のクリップを手で持ち、500ppmのヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(イオン交換水にて溶解、液温20℃)300mL中に、上下方向(振幅幅3cm、1秒間に3往復)に振とうしながら2分間浸漬させた。
上記測定作業を1セットとし、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を交換しながら10セットの測定作業を行った
その後、クリップ留めした状態のナイロンメッシュ袋ごと、120℃で5分間乾燥させた。乾燥後、クリップ留めした状態でナイロンメッシュ袋の質量(Mcとする)を測定した。
MaとMcの差分(Mc-Ma)を、ナイロンメッシュ袋内の複合酸化物粉末の残渣質量(Md)とし、下記式から残渣割合(%)を算出した。
残渣割合(%)=Md/Mb×100
【0064】
【表1】
【0065】
ICP発光分析装置による複合酸化物粉末の組成分析の結果から、実施例1および比較例1の複合酸化物粉末は、組成式La0.8Sr0.2Mn1.0であり、X線回折測定により、単相なペロブスカイト型複合酸化物粉末となっていることが確認された。
【0066】
残渣割合が2.0%であった実施例1の複合酸化物粉末の導電率は9610μS/cmに対して、残渣割合が5.9%と本発明の規定範囲よりも多い比較例1の複合酸化物粉末での導電率は7074μS/cmと実施例1の複合酸化物粉末に比べて格段に低い値であった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、より導電性の高いペロブスカイト型複合酸化物粉末が実現可能となる。このようなペロブスカイト型複合酸化物粉末を用いることで、導電性の高い燃料電池の空気極および燃料電池を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
1 燃料極
2 固体電解質膜
3 空気極
図1