(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142493
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】乾燥穀物風粒状物
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20241003BHJP
A23L 29/212 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L7/10 B
A23L29/212
A23L7/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054647
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】片岡 弘
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 良美
【テーマコード(参考)】
4B023
4B025
【Fターム(参考)】
4B023LC02
4B023LC05
4B023LC08
4B023LC09
4B023LE05
4B023LE30
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4B023LP10
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4B023LQ01
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4B025LG43
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4B025LP06
4B025LP08
4B025LP12
4B025LP15
4B025LP20
(57)【要約】
【課題】高アミロース米由来デンプンと難消化性デンプンを主成分とする乾燥穀物風粒状物の炊飯後に生じる白ボケの発生を予防するとともに、再度加熱調理した際に白ボケが改善されるようにすることを目的とする。
【解決手段】高アミロース米由来デンプンおよび難消化性デンプンを主成分とする穀物風粒状物に用いる品質改良剤において、DE値0~20の物質が品質改良剤の全重量中50~100重量%である、穀物風粒状物に用いる品質改良剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高アミロース米由来デンプンおよび難消化性デンプンを主成分とする穀物風粒状物に用いる品質改良剤において、
DE値0~20の物質が品質改良剤の全重量中50~100重量%である、穀物風粒状物に用いる品質改良剤。
【請求項2】
DE0~20の物質が高含有アミロペクチン由来である、請求項1記載の穀物風粒状物に用いる品質改良剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物風粒状物の添加剤に関する。より詳しくは、穀物風粒状物の見た目や味を改善する添加材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ライフスタイルの多様化により、最適化栄養食と呼ばれる一日に必要な栄養素を簡便に摂取できると謳われるドリンクやグミ、麺類など商品が上市されている。これらの商品は、厚生労働省より設定された栄養素等表示基準値や同じく厚生労働省により策定された日本人の食事摂取基準に記載されている必須栄養素の1日に必要とされる量の3分の1量以上含まれるものである。これとは別に、数種類の栄養素のみ足らないもののほぼ最適化食である準最適化食や特定の栄養素のみを補うようなサプリメントなどの商品もあり、日々の食生活で不足している必要な栄養素を簡単に補えるような食品が多数上市されている。
【0003】
上記食品は、元の原料の成分に対して新たな成分を添加したものであり、成分組成が自由に設定できる食材と言える。そして、成分組成の変更方法も比較的簡単である。例えば、ドリンクであれば溶媒となる液体に新たな成分を添加して混合すればよい。また、グミや麺類等は、原材料に新たな成分を添加した後、通常の製造工程を経て成形すればよい。このように、その多くは配合への必要成分の添加/不要成分の除去を比較的容易に行う事が可能という側面を持つ。
【0004】
一方、日本人の主食である米は成分組成を自由に変更できる食材ではない。しかし、近年の健康志向の影響もあり、摂取カロリーの低減や新たな成分を追加した米が求められている。このような需要に対して、コンニャク粉を含んだ混合物を米状に成形したコンニャク米が提案されている(特許文献1参照)。コンニャク米を米の一部と置き換えて炊飯することで、血液中のブドウ糖の上昇を抑制、満腹感を感じながらも、摂取カロリーを抑え、肥満を防ぐなどの効果が期待できる。
【0005】
また、難消化性デキストリンとともに炊飯する方法も提案されている(特許文献2参照)。難消化性デキストリンを添加することで、血糖値上昇抑制、整腸作用、脂質代謝の改善などの生理効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2020-505903号公報
【特許文献2】特許第6125681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の場合、通常の米とは異なりコンニャク米の食感が柔らかいため、喫食時に違和感が生じてしまう。一方、特許文献2のように難消化性の物を用いる場合、炊飯前に添加できるのは10~15%程度までしか添加できず、それ以上は通常の米とは違う食感・風味になってしまう問題がある。
【0008】
そこで、本発明者等はまず、摂取カロリーを抑えるととともに、加熱調理した際の食感等が通常の米を炊飯したものに近い乾燥穀物風粒状物について研究を行った。そして、高アミロース米由来デンプンと難消化性デンプンとを組み合わせて用いることで、摂取カロリーが抑えられ、しかも食感等を通常の米に近づけられること発見した。
【0009】
ところで、得られた乾燥穀物風粒状物は、炊飯直後であればツヤや透明感が通常の炊飯米と同等であった。しかし、炊飯後一定の温度で保温し続けると、ツヤや透明感がなくなり白ボケしてしまうといった問題が新たに生じた。また、炊飯後に冷蔵・冷凍した場合にもツヤや透明感がなくなり白ボケてしまうだけでなく、いったん見た目が悪くなってしまった穀物風粒状物はその後再加熱をしても見た目が改善されないという問題が生じた。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、高アミロース米由来デンプンと難消化性デンプンを主成分とする乾燥穀物風粒状物の炊飯後に生じる白ボケの発生を予防するとともに、再度加熱調理した際に見た目が改善されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者等は、上記課題が解決できないか検討を行った。そして、おねばに着目し研究したところ、特定のDE値を有する物質を乾燥穀物風粒状物に添加して炊飯することで、炊飯後の穀物風粒状物の白ボケが改善され、ツヤのある見た目にできることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
上記課題解決のため、本発明は、高アミロース米由来デンプンおよび難消化性デンプンを主成分とする穀物風粒状物に用いる品質改良剤において、DE値0~20の物質が品質改良剤の全重量中50~100重量%であることを特徴とする。また、DE0~20の物質が高含有アミロペクチン由来であることが好ましい
【発明の効果】
【0013】
高アミロース米由来デンプンと難消化性デンプンを主成分とする乾燥穀物風粒状物と、特定のDE値を有する物質とを一緒に炊飯することで、炊飯後の穀物風粒状物の表面がDE0~20の物質でコーティングされるものと考えられる。表面がコーティングされることで、水分の蒸散や成分の流出が抑えられ、結果として白ボケを予防したり改善したりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0015】
本発明にかかる乾燥穀物風粒状物とは、穀物の形状に似せた混練物を乾燥させたものである。ここで穀物とは、米などのイネ科作物の種子である禾穀類の種子を指すが、ソバ、アマランサス、キヌアなどの擬禾穀類を含んでもよい。
【0016】
本発明の乾燥穀物風粒状物は、高アミロース米由来デンプンと難消化性デンプンを主成分としている。難消化性デンプンとは、アミラーゼ消化に対して耐性のあるデンプンを意味し、老化デンプン、湿熱処理デンプン、架橋剤によって強い架橋処理を施したものやエーテル置換したものなどの化学的に改変された加工デンプンなどが挙げられる。このうち、本発明においては、架橋剤処理によって得られる難消化性デンプンを用いることが好ましい。また、本発明に用いられる難消化性デンプンのカロリーとしては、0~2キロカロリー/gであることが好ましく、0~1キロカロリー/gであることがより好ましく、0キロカロリー/gであることがさらにより好ましい。なお、当該カロリーは、日本食物繊維学会により認定された値を基準とする。
【0017】
難消化性デンプンの原料としては、タピオカ、小麦、馬澱、甘藷、サゴ、ハイアミロースコーン、コーンスターチ、ワキシーコーン、米、エンドウ豆より選ばれる1または2以上の物を用いることができる。このうち、米を用いることが好ましい。
【0018】
本発明の乾燥穀物風粒状物に含まれる高アミロース米由来デンプンの量としては、加熱調理前の段階において、乾燥穀物風粒状物100g当たり30~75重量%が好ましく、40~50重量%がより好ましい。また、本発明の乾燥穀物風粒状物に含まれる難消化性デンプンの量としては、加熱調理前の段階において、乾燥穀物風粒状物100g当たり25~70重量%が好ましく、50~60重量%がより好ましい。また、難消化性デンプンと高アミロース米由来デンプン同士の配合比率としては、20:80~80:20であることが好ましい。
【0019】
乾燥穀物風粒状物の製造に際して、副原料として糖類、増粘剤、グルテン、卵白、色素、その他の栄養素等を必要に応じて用いることができる。なお、必要な栄養素としては、ビタミン、カルシウム等が挙げられる。また、水に副原料を溶解させて用いてもよい。
【0020】
ところで、ご飯のカロリーは100g換算で約168キロカロリーであると言われている。そのため、例えば後述する実施例の条件下において0キロカロリー/gの難消化性デンプンを用いた場合においては、難消化性デンプンに20%置き換えた場合にはカロリーが28%OFFとなり約122キロカロリー、難消化性デンプンに60%置き換えた場合にはカロリーが64%オフとなり約61キロカロリーとなる。また、後述する実施例の条件下において2キロカロリー/gの難消化性デンプンを用いた場合においては、難消化性デンプンに40%置き換えた場合にはカロリーが28%OFFとなり約122キロカロリー、難消化性デンプンに60%置き換えた場合にはカロリーが37%オフとなり約106キロカロリーとなる。
【0021】
本発明にかかる添加剤は、DE値0~20の物質であることを特徴とする。DE値とは、デンプンがどのくらい分解されているのかを表した指標であり、0~20はほとんど分解されていないデンプンの状態に近いものを指す。一方、DE値80~100は分解されて単糖または単糖の状態に近いものを指す。本発明では、DE値が0~20の物質を主成分としており、添加剤全体の50~100重量%を占めることを特徴としている。また、本発明の添加剤は、穀物風粒状物全量に対して、3~10%の割合で添加することが好ましい。3%未満だと効果が弱い。10%より多いと、米の食感を悪くする。
【0022】
DE0~20の物質は高含有アミロペクチン由来であれば特に制限されないが、一例として小麦または米等の禾穀類、トウモロコシ類、馬澱または甘藷などのイモ類、豆類などが挙げられる。これらの由来物質はα化した上で用いてもよいし、α化せずに用いてもよい。本発明においては、米由来であることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明においては必要に応じて香味油、食品添加物、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、苦味料、酸味料、乳化剤、強化剤及び香料を添加剤と共に用いてもよい。特に、見た目を改善する目的以外のものとして、炊飯時の香り付与や、難消化性デンプンの粉っぽさ及び栄養素の苦みをマスキングする観点から香料を用いることが好ましい。香料の形態としては液体、粉末いずれの形態でも用いることができるが、粉末であれば混練時に、液体であれば炊飯時、または喫食直前に添加することが好ましい。
【0024】
次に、乾燥穀物風粒状物の製造方法について説明する。原料の調製はエクストルーダーを用いて行うことができる。具体的には、エクストルーダーを用いて高アミロース米由来デンプン、難消化性デンプン及び水を混捏する。生成された混合物は、スクリュー駆動部によって駆動されるスクリューによって送られ、ダイから押し出される。ダイから押し出された混合物は、ペレット状にカットされ、穀物風粒状物を得ることができる。用いるエクストルーダーは、一軸エクストルーダーでも二軸以上の複軸エクストルーダーでも用いることができるが、品質の安定性の点から二軸型のものが好ましい。エクストルーダーは、原料供給口、バレル内をスクリューにおいて原料送り、混合、圧縮、加熱機構を有し、さらに先端バレルに装着されたダイを有するものであれば利用できる。
【0025】
エクストルーダー内のバレル温度は80~140℃、好ましくは100~130℃が適当である。本発明の加圧はダイ部圧力が0~20Bar、好ましくは0.5~10Barが適当である。また、ダイの形状を変えることにより、例えば長粒種米や短粒種米など様々な形状の穀物風粒状物が得られる。本発明においては、ダイの先端に設けられた回転刃で適切な大きさに切断することが好ましい。穀物風粒状物を米形状にする場合には、厚さ2mm程度にスライスすることが好ましい。なお、麺線のように押し出した後、カッター等を用いて所望の大きさに切断してもよい。
【0026】
最後に得られた穀物風粒状物を乾燥させることで、乾燥穀物風粒状物となる。乾燥方法は特に限定されず、例えば熱風乾燥処理、真空凍結乾燥処理、マイクロ波乾燥、低温での送風乾燥といった乾燥処理方法があげられる。これらを組み合わせて乾燥させることもできる。本発明においては乾燥穀物風粒状物の水分含量が15%以下となるまで乾燥させることが好ましい。
【実施例0027】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。ここでは、高アミロース米由来デンプンと難消化性デンプンを主成分とする穀物風粒状物を用いた場合を例に説明する。また、参考例として市販米(コシヒカリ)を用いた。
【0028】
<穀物風粒状物の調製>
まず、高アミロース米由来デンプン4kgと0キロカロリー/gの難消化性デンプン6kgで混合した。次に二軸エクストルーダーを用いて、粉と水が1:1になるように加水しながら、混練した。このとき、エクストルーダーの設定条件は、バレル温度は100℃~130℃、スクリュー速度(生地搬送速度)は60rpmとした。エクストルーダーのダイ形状は、俵型2.0×6.5mmを用いた。また、ダイから押し出された混練物は、ダイの先端に設けられた回転刃で米短粒種サイズ(厚さ2mm)となるように切断した。次に切断された混練物を60℃条件下で20分間乾燥した。一度常温で60分保管した後、次に、60℃で50分乾燥し、水分含量が15%以下の乾燥穀物風粒状物を得た。
【0029】
<添加剤>
本発明にかかる添加剤として、下記表に基づくDE値の物質のみを用いた添加剤(実施例1~5)を用意した。
また、添加剤は、乾燥穀物風粒状物200gに対して固形分換算値で10gとなるように添加した。
【0030】
【0031】
(比較例1~6)
比較例1~5において、DE値の異なる物質を用いたこと以外は、実施例1と同じである。用いた物質については表2の通りである。また、比較例6は添加剤を入れなかったこと以外は、実施例1と同じである。
【0032】
【0033】
まず、保温時における添加剤の効果について実験を行った。調整した各実施例・比較例にかかる穀物風粒状物を160%の加水率で、参考例を140%の加水率で炊飯した。炊飯直後を0分とし、0,10,30,60,90,120,240分の時点で参考例と比べた各実施例・比較例の粒の状態(味、見た目)についてか下記評価基準に従って評価した。時間経過による観察の間、全ての実施例、比較例及び参考例は炊飯器の保温機能によって保温し続けた。見た目の結果を表3に、味の結果を表4に示す。
【0034】
見た目
5:粒の表面に透明な膜のようなものが存在し、表面が滑らかであり、膜で反射した光によって粒が輝いている。
4:粒の表面に薄い透明な膜のようなものが存在し、表面が滑らかである。
3:粒の表面に薄い透明な膜のようなものは存在するが、膜での光の反射が弱く、粒の輝きも弱い
2:粒の表面に斑に透明な膜が存在し、粒の輝きが僅かにある
1:粒の表面に透明な膜がなく、表面が荒れており、粒が輝いていない
【0035】
味
3:咀嚼すると、ほんのり甘みを感じる
2:咀嚼すると甘みを感じる
1:咀嚼すると強く甘みを感じる
【0036】
【0037】
【0038】
表3から明らかなように、時間経過とともに参考例含めていずれの実施例・比較例においても評価が下がっていることが分かる。これは保温によって米または粒状物の表面から常時水分が蒸散し、経時的に乾燥していったためと考えられる。特に、比較例1~6は水分が蒸散しやすかったのか、保温開始30分経過時点から表面の輝きが衰え始め、60分経過時点ではほとんど輝きが認められなくなっていた。このことから、DE25~100では、表面に被膜を張って水分蒸散を防ぐ機能が弱いものと推察された。これに対して、実施例1~5は保温開始90分を経過するまでは、粒状物の表面に薄い膜のようなものが見てとれ、表面が滑らかで輝いていた。また、90分経過後であっても弱いながらも輝きが認められた。特に、実施例2の見た目は参考例と同じ評価であった。なお、実施例5は保温開始後240分経過時点でほとんど輝きが認められなくなってしまったが、それまでは比較例よりも輝きを維持していた。このことから、DE値が低いほど表面に被膜を張って水分蒸散を防ぐ機能が強いものと推察された。
【0039】
次に、味について確認する。通常、炊飯米は咀嚼したときに唾液に含まれるアミラーゼによって澱粉が分解され、ほんのりとした甘みを感じる。表4に記載している通り、本実施例においても参考例は保温経過時間に関係なく、咀嚼によってほんのりと甘みを感じられた。同様に、実施例1~5及び比較例6は保温経過時間に関係なく咀嚼によってほんのりと甘みが感じられる結果となった。一方で、比較例1~3は、経過時間に関係なく常に咀嚼すると通常の炊飯米よりも甘味が際立って感じられ、違和感のあるものであった。これは、比較例1~3ではある程度分解された澱粉を添加剤として添加しているため、唾液中に含まれるアミラーゼによって単糖に分解されやすく、甘味が際立ちやすかったためと考えられる。さらに、比較例4,5は咀嚼する、または、咀嚼しなくてもと強く甘みを感じられ、通常の炊飯米を咀嚼したときには感じられないほど明らかに異なる味であった。これは、比較例4,5に使用している添加剤がほぼ単糖または単糖の状態に近いものであったため、最初から甘みを感じやすくなっていたためと考えられる。
【0040】
これらのことから、DE0~20の添加剤を用いることで、保温経過時間が長くなった場合でも市販の炊飯米の見た目や味に近づけられることが示唆された。
【0041】
続いて、炊飯した穀物風粒状物を冷凍保存し、その後解凍した際の見た目と味に対する添加剤の効果について検討を行った。なお、効果の検証は、先ほどの実施例の結果から、実施例2、比較例5、比較例6及び参考例について行った。
【0042】
検証は次のようにして行った。まず、実施例2、比較例5、比較例6及び参考例から各150gをトレーに移し、5分間室温に放置して粗熱を取った。その後、-40℃で急速冷凍を行い、そのまま30分間維持した。次に、トレーのまま電子レンジで500W,2分10秒間加熱調理した。評価は、炊飯直後、凍結後、レンジ調理後、レンジ調理直後を0分として10,30,60,120分の時点で上述した評価基準に従って評価した。ただし、凍結後の味については評価しなかった。なお、電子レンジ調理後はトレーに蓋などをせず、開放状態で室温に放置した。見た目の結果を表5に、味の結果を表6に示す。
【0043】
【0044】
【0045】
表5から明らかなように、凍結によって全てのサンプルの表面から輝きが失われていることが分かる。そして、電子レンジで加熱することによって、程度の差はあれ、いずれのサンプルも輝きが少なからず戻っていた。しかし、いずれのサンプルも炊飯直後と比べて評価は低いものであった。特に、比較例5,6は評価の低下が著しく、10分後にはいずれも最低評価となった。これに対して、実施例2および参考例はレンジ調理後30分までは評価が維持された結果となった。ここで、上述の保温試験の結果と比べて、評価の低下が早い理由としては、保温試験は炊飯器の蓋が閉まっているため、炊飯器内の水分量がある程度維持された状態であるのに対し、本試験では電子レンジ加熱調理後も開放状態であるため、水分の喪失が早まったためと考えられる。
【0046】
一方、参考例及び実施例2の評価が高かった理由としては、表面の構造が関係しているものと考えられる。参考例である炊飯米の表面は、おねばによって覆われている。そのため、水分蒸散抑制や見た目にはおねばが重要な役割を果たしているものと考えられる。そうすると、参考例と同じ傾向を示した実施例2においても、穀物風粒状物の表面がおねばに似た成分でおおわれているものと考えられる。つまり、本実施形態では、DE0の添加剤がおねばと同様の役割を果たしたために、比較例5,6よりも優れた結果になったと考えられる。
【0047】
次に、味について検討を行った。味については、上述の保温試験の結果と同じく、比較例5以外はすべて、電子レンジ調理後の経過時間に関係なく咀嚼によってほんのりと甘みが感じられる結果となった。一方で、比較例5は咀嚼する、または、咀嚼しなくても強く甘みを感じられ、通常の炊飯米を咀嚼したときには感じられないほど明らかに異なる味であった。
【0048】
以上の結果からも、本発明に係る添加剤を用いることで、冷凍を行った場合でも市販の炊飯米の見た目や味に近づけられることが示唆された。