(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142629
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援プログラム、及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241003BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20241003BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/06
G05B23/02 301Z
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054850
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】川井 英司
(72)【発明者】
【氏名】古市 和也
(72)【発明者】
【氏名】小山 貴範
【テーマコード(参考)】
3C223
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223EB01
3C223FF22
3C223GG01
3C223HH02
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】電力を用いて物又はエネルギーを生成するシステムの運転を適切に支援する。
【解決手段】運転支援装置100は、電力を用いて物又はエネルギーを生成するプラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報を取得する電力情報取得部と、プラントに供給される、物又はエネルギーを生成するための原料に関する現状情報又は予測情報を取得する原料情報取得部と、電力情報取得部により取得されたプラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報と、原料情報取得部により取得されたプラントに供給される原料に関する現状情報又は予測情報と、プラントの運転を予測するプラント予測モデルとに基づいて、プラントの運転を最適化する最適化部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を用いて物又はエネルギーを生成するプラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報を取得する電力情報取得部と、
前記プラントに供給される、前記物又はエネルギーを生成するための原料に関する現状情報又は予測情報を取得する原料情報取得部と、
前記電力情報取得部により取得された前記プラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報と、前記原料情報取得部により取得された前記プラントに供給される原料に関する現状情報又は予測情報と、前記プラントの運転を予測するプラント予測モデルとに基づいて、前記プラントの運転を最適化する最適化部と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記電力情報取得部は、前記プラントに電力を供給する電力供給元において最適化された電力に関する予測情報を取得し、
前記原料情報取得部は、前記プラントに原料を供給する原料供給元において最適化された原料に関する予測情報を取得する
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記電力供給元から前記プラントに供給される電力を最適化する電力最適化モデルを備え、
前記電力情報取得部は、前記電力最適化モデルにより最適化された電力に関する予測情報を取得する
請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記原料供給元から前記プラントに供給される原料を最適化する原料最適化モデルを備え、
前記原料情報取得部は、前記原料最適化モデルにより最適化された原料に関する予測情報を取得する
請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記最適化部は、前記電力最適化モデルと、前記原料最適化モデルと、前記プラント予測モデルとを用いて、前記電力供給元、前記原料供給元、及び前記プラントの運転を統括的に最適化する
請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記最適化部により最適化された前記電力供給元、前記原料供給元、及び前記プラントのうち少なくとも1つの運転を実現するための前記電力供給元、前記原料供給元、及び前記プラントのうち少なくとも1つの運転制御態様を出力する出力部を備える
請求項5に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記最適化部は、前記プラントにおける収益、コスト、製品収率、製品収量、及び製品仕様のうち少なくとも1つを最適化する
請求項1から6のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記プラントにより生成される物又はエネルギーの現在又は将来の需要量又は価格を取得する需要取得部を備え、
前記最適化部は、前記需要取得部により取得された前記需要量又は価格に更に基づいて、前記プラントの運転を最適化する
請求項1から6のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記プラントの現在の運転状態及び運転条件を示す情報を取得する運転情報取得部を備え、
前記最適化部は、前記運転情報取得部により取得された前記プラントの現在の運転状態及び運転条件に更に基づいて、前記プラントの運転を最適化する
請求項1から6のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記最適化部は、所定の時間間隔で前記プラントの運転を最適化する
請求項1から6のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記所定の時間間隔は、前記プラントに備えられた前記電力及び前記原料の少なくとも一方を一時的に貯留する貯留部の容量に応じて定められる
請求項10に記載の運転支援装置。
【請求項12】
コンピュータを、
電力を用いて物又はエネルギーを生成するプラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報を取得する電力情報取得部と、
前記プラントに供給される、前記物又はエネルギーを生成するための原料に関する現状情報又は予測情報を取得する原料情報取得部と、
前記電力情報取得部により取得された前記プラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報と、前記原料情報取得部により取得された前記プラントに供給される原料に関する現状情報又は予測情報と、前記プラントの運転を予測するプラント予測モデルとに基づいて、前記プラントの運転を最適化する最適化部と、
として機能させるための運転支援プログラム。
【請求項13】
コンピュータに、
電力を用いて物又はエネルギーを生成するプラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報を取得するステップと、
前記プラントに供給される、前記物又はエネルギーを生成するための原料に関する現状情報又は予測情報を取得するステップと、
前記プラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報と、前記プラントに供給される原料に関する現状情報又は予測情報と、前記プラントの運転を予測するプラント予測モデルとに基づいて、前記プラントの運転を最適化するステップと、
を実行させる運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力を用いて物又はエネルギーを生成するシステムの運転を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を何らかのエネルギーに変換して貯蔵、利用するための技術(Power-to-X)が注目されている。例えば、特許文献1には、発電量の情報を記憶した発電量DBと、需要量の情報を記憶した需要量DBと、輸送手段の情報を記憶した輸送手段DBと、設備の情報を記憶した設備DBと、エネルギー単価の情報を記憶したエネルギー価格DBとを参照して、再生可能エネルギーを用いた発電、ガスエネルギーの生成、輸送及び需要のタイミングを考慮したエネルギーフローの最適化手法を用いて、供給側、需要家又はガスエネルギー需給システム全体の収益を最大化するための各設備の容量及び運転計画、輸送量及び輸送スケジュールを算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再生可能エネルギーや二酸化炭素を含む排ガスなどの原料の供給や、製品の需要は、時々刻々と変動しうる。本発明者らは、電力や原料の供給元と、電力を用いて原料から製品を生成するプラントとを含むシステム全体の収益を向上させるためには、原料供給や製品需要の変動に合わせてシステム全体の運転を最適化する必要があることを課題として認識した。
【0005】
本開示の目的は、電力を用いて物又はエネルギーを生成するシステムの運転を適切に支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の運転支援装置は、電力を用いて物又はエネルギーを生成するプラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報を取得する電力情報取得部と、プラントに供給される、物又はエネルギーを生成するための原料に関する現状情報又は予測情報を取得する原料情報取得部と、電力情報取得部により取得されたプラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報と、原料情報取得部により取得されたプラントに供給される原料に関する現状情報又は予測情報と、プラントの運転を予測するプラント予測モデルとに基づいて、プラントの運転を最適化する最適化部と、を備える。
【0007】
本開示の別の態様は、運転支援プログラムである。このプログラムは、コンピュータを、電力を用いて物又はエネルギーを生成するプラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報を取得する電力情報取得部と、プラントに供給される、物又はエネルギーを生成するための原料に関する現状情報又は予測情報を取得する原料情報取得部と、電力情報取得部により取得されたプラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報と、原料情報取得部により取得されたプラントに供給される原料に関する現状情報又は予測情報と、プラントの運転を予測するプラント予測モデルとに基づいて、プラントの運転を最適化する最適化部と、として機能させる。
【0008】
本開示の更に別の態様は、運転支援方法である。この方法は、コンピュータに、電力を用いて物又はエネルギーを生成するプラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報を取得するステップと、プラントに供給される、物又はエネルギーを生成するための原料に関する現状情報又は予測情報を取得するステップと、プラントに供給される電力に関する現状情報又は予測情報と、プラントに供給される原料に関する現状情報又は予測情報と、プラントの運転を予測するプラント予測モデルとに基づいて、プラントの運転を最適化するステップと、を実行させる。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電力を用いて物又はエネルギーを生成するシステムの運転を適切に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る燃料製造システムの構成を示す図である。
【
図2】燃料製造システムの機能構成を概略的に示す図である。
【
図3】燃料製造プラントの構成を概略的に示す図である。
【
図4】プラント制御システムの構成を概略的に示す図である。
【
図5】運転支援装置の構成を概略的に示す図である。
【
図6】実施の形態に係る運転支援方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施の形態に係る燃料製造システムの構成を示す。燃料製造システム1は、電力を用いて原料から製品やエネルギーを製造する。燃料製造プラント40は、例えば、原料から炭化水素を生成し、炭化水素を分離、精製、改質して燃料を生成する。原料供給システム20は、燃料製造プラント40に原料を供給する。電力供給システム10は、原料から製品やエネルギーを製造するために使用される電力を供給する。運転支援装置100は、電力供給システム10、原料供給システム20、及び燃料製造プラント40の運転の統括的な制御を支援する。電力供給システム10、原料供給システム20、燃料製造プラント40、及び運転支援装置100は、インターネット2などの通信網により接続される。
【0013】
図2は、燃料製造システム1の機能構成を概略的に示す。図中、実線の矢印は電力や原料などの流れを示し、破線の矢印は制御信号や情報の流れを示す。
【0014】
電力供給システム10は、電力供給制御システム12及びバッテリー14を備える。電力供給制御システム12は、再生可能エネルギー電力供給源4から供給される電力の変動を、電力系統3から供給される電力を用いて平準化する。バッテリー14は、再生可能エネルギー電力供給源4又は電力系統3から供給される電力の少なくとも一部を蓄電する。電力供給制御システム12は、バッテリー14の充電及び放電や電力供給システム10の各構成要素を制御して、電力を原料供給システム20又は燃料製造プラント40に供給する。電力供給制御システム12は、再生可能エネルギー電力供給源4から供給される電力の現在値や予測値、原料供給システム20又は燃料製造プラント40に供給すべき電力の現在値や予測値、バッテリー14の状態を表す状態量の現在値や予測値、バッテリー14を制御するための制御量の現在値や予測値などに基づいてバッテリー14などの構成要素の制御を最適化するための電力供給最適化モデル11を用いて、バッテリー14などの構成要素を制御する。電力供給制御システム12は、再生可能エネルギー電力供給源4から供給される電力の現在値や予測値、原料供給システム20又は燃料製造プラント40に供給すべき電力の現在値や予測値、バッテリー14などの構成要素の状態を表す状態量の現在値や予測値、バッテリー14などの構成要素を制御するための制御量の現在値や予測値などに基づいて、バッテリー14などの構成要素の稼働率、運転コスト、電力供給システム10の収益などを最適化することが可能なバッテリー14などの構成要素の制御量の値を探索し、探索された制御量の値を自動的に設定し、又はオペレータに提示することにより、バッテリー14などの構成要素を制御してもよい。なお、再生可能エネルギー電力供給源4から供給される電力の変動を電力系統3から供給される電力によって吸収し、原料供給システム20又は燃料製造プラント40が必要とする電力を供給することができる場合は、バッテリー14は設けられなくてもよい。
【0015】
原料供給システム20は、原料供給制御システム22、及び原料供給部23を備える。原料供給部23は、原料供給源5から供給される原料を燃料製造プラント40に供給する。原料供給部23は、原料供給源5から供給される原料をそのまま燃料製造プラント40に供給してもよい。この場合、原料供給部23は、設けられなくてもよい。原料供給部23は、原料供給源5から供給される原料を分離、精製、回収してから燃料製造プラント40に供給してもよい。この場合、原料供給部23は、不純物などを含む原料を分離、精製、回収するための装置を含んでもよい。原料供給部23は、電力供給システム10から供給される電力を用いて原料を製造してもよい。原料は、燃料製造プラント40において燃料を製造するために使用される物質や工業用水などを含む。原料供給制御システム22は、電力供給システム10から供給される電力の現在値や予測値、燃料製造プラント40に供給すべき原料の量の現在値や予測値、原料供給部23の状態を表す状態量の現在値や予測値、原料供給部23を制御するための制御量の現在値や予測値などに基づいて原料供給部23の制御を最適化するための原料供給最適化モデル21を用いて、原料供給部23を制御する。原料供給制御システム22は、電力供給システム10から供給される電力の現在値や予測値、燃料製造プラント40に供給すべき原料の量の現在値や予測値、原料供給部23の状態を表す状態量の現在値や予測値、原料供給部23を制御するための制御量の現在値や予測値などに基づいて、原料供給部23の稼働率、運転コスト、原料供給システム20の収益などを最適化することが可能な原料供給部23の制御量の値を探索し、探索された制御量の値を自動的に設定し、又はオペレータに提示することにより、原料供給部23を制御してもよい。
【0016】
図3は、燃料製造プラント40の構成を概略的に示す。
【0017】
燃料製造プラント40は、プラント制御システム41、原料貯留部42、反応部43、改質/精製部44、及びセンサ50を備える。
【0018】
原料貯留部42は、原料供給システム20から供給される原料を一時的に保留し、反応部43に供給する。燃料製造プラント40において電力を使用する場合は、燃料製造プラント40は、電力供給システム10から供給される電力を一時的に貯留するためのバッテリーを備えてもよい。原料貯留部42とバッテリーの双方が備えられてもよい。原料貯留部42のみが備えられ、バッテリーが備えられなくてもよい。バッテリーのみが備えられ、原料貯留部42が備えられなくてもよい。原料貯留部42とバッテリーの双方が備えられなくてもよい。
【0019】
反応部43は、化学反応などにより、原料から炭化水素などの生成物を生成する。改質/精製部44は、反応部43により生成された生成物を分離、精製、改質して、SAF(Sustainable Aviation Fuel)、メタンなどの合成燃料や、メタノール、オレフィンなどの化学品などの製品を生成する。
【0020】
センサ50は、燃料製造プラント40が備える各種の構成の状態を検知する。
【0021】
プラント制御システム41は、運転支援装置100から提供される情報などに基づいて、原料貯留部42、反応部43、改質/精製部44などの構成を制御する。
【0022】
図4は、プラント制御システム41の構成を概略的に示す。
【0023】
プラント制御システム41は、操作パネル60、状態情報取得部61、プラント情報送信部62、制御量推奨値受信部63、情報提示部64、制御量設定部65、及び制御装置66を備える。
【0024】
操作パネル60は、情報を表示するための表示装置と、オペレータから制御量の設定値などの入力を受け付ける入力装置とを備える。
【0025】
状態情報取得部61は、燃料製造プラント40の各構成やセンサ50などから、燃料製造プラント40の状態を表す状態情報を取得する。状態情報取得部61は、センサ50により検知された検知情報や、各構成の状態量の現在値や予測値などの状態情報を取得する。
【0026】
プラント情報送信部62は、燃料製造プラント40の状態や制御などに関する情報を運転支援装置100に送信する。プラント情報送信部62は、状態情報取得部61により取得された状態情報や、燃料製造プラント40の各構成を制御するための制御量の現在値や予測値などのプラント情報を運転支援装置100に送信する。
【0027】
制御量推奨値受信部63は、運転支援装置100により最適化された制御量の推奨値を受信する。
【0028】
情報提示部64は、状態情報取得部61により取得された状態情報や、燃料製造プラント40の各構成を制御するための制御量の現在値、予測値、推奨値や、各構成の異常を検知又は予測するための情報などを操作パネル60に表示する。
【0029】
制御量設定部65は、オペレータから制御量の設定値の入力を受け付け、受け付けた設定値を制御装置66に設定する。制御量設定部65は、制御量推奨値受信部63により受信された制御量の推奨値を自動的に制御装置66に設定してもよい。
【0030】
制御装置66は、制御量設定部65により設定された制御量の設定値にしたがって、燃料製造プラント40の各構成を制御する。制御装置66は、原料貯留部42に貯留される原料の量、温度、圧力、濃度、流量などや、反応部43の反応温度、反応時間、反応器入口の原料の流量、反応器出口の生成物の流量などや、改質/精製部44における製品の生成温度、生成時間、圧力、濃度、流量などを制御する。
【0031】
【0032】
運転支援装置100は、通信装置101、表示装置102、入力装置103、処理装置120、及び記憶装置160を備える。
【0033】
通信装置101は、無線又は有線による通信を制御する。通信装置101は、インターネット2を介して、他の装置との間でデータを送受信する。表示装置102は、処理装置120により生成された表示画像を表示する。入力装置103は、処理装置120に指示を入力する。
【0034】
記憶装置160は、処理装置120が使用するデータ及びコンピュータプログラムを格納する。記憶装置160は、電力供給予測モデル161、原料供給予測モデル162、プラント予測モデル164、電力供給最適化モデル165、原料供給最適化モデル166、及びプラント最適化モデル168を格納する。
【0035】
電力供給予測モデル161は、電力供給システム10から原料供給システム20又は燃料製造プラント40に供給される電力を予測するためのモデルである。電力供給予測モデル161は、再生可能エネルギー電力供給源4から供給される電力の現在値や予測値、バッテリー14などの構成要素の状態を表す状態量の現在値や予測値、バッテリー14などの構成要素を制御するための制御量の現在値や予測値などに基づいてバッテリー14などの構成要素の運転をシミュレートするシミュレータや、その代理モデルなどであってもよい。電力供給予測モデル161は、電力供給システム10において使用されるものと同じものであってもよく、電力供給システム10から運転支援装置100に提供されてもよい。
【0036】
原料供給予測モデル162は、原料供給システム20から燃料製造プラント40に供給される原料の量などを予測するためのモデルである。原料供給予測モデル162は、電力供給システム10から供給される電力の現在値や予測値、燃料製造プラント40に供給すべき原料の量の現在値や予測値、原料供給部23の状態を表す状態量の現在値や予測値、原料供給部23を制御するための制御量の現在値や予測値などに基づいて原料供給部23の運転をシミュレートするシミュレータや、その代理モデルなどであってもよい。原料供給予測モデル162は、原料供給システム20において使用されるものと同じものであってもよく、原料供給システム20から運転支援装置100に提供されてもよい。
【0037】
プラント予測モデル164は、燃料製造プラント40の運転を予測するためのモデルである。プラント予測モデル164は、プラントの稼働率、物質熱収支、反応性能などに関わる物理モデルであってもよい。プラント予測モデル164は、原料貯留部42、反応部43、改質/精製部44などの各構成の運転を個別に予測するシミュレータを組み合わせたものであってもよい。例えば、反応部43の運転を予測するためのシミュレータは、化学反応を予測するための反応モデル、触媒の劣化を予測するためのモデル、反応器の内部の流体の状態をシミュレートするための数値流体力学(CFD)モデルなどを組み合わせたモデルであってもよい。プラント予測モデル164は、原料貯留部42、反応部43、改質/精製部44などの各構成を運転させたときの実績データや、各構成の運転を予測するためのシミュレータにより計算されたシミュレーションデータを学習データとして学習された代理モデルであってもよい。プラント予測モデル164は、原料供給システム20から燃料製造プラント40に供給される原料の量などの入力情報を入力し、製品の収量、収率、仕様(物性、密度、粘度、引火点など)、燃料製造プラント40のコスト、収益などの出力情報を出力するものであってもよい。燃料製造プラント40のコストは、燃料製造プラント40において燃料を製造するために要する費用、例えば、原料調達費、電力調達費、機器調達費、機器保守費、人件費、管理費などを含んでもよい。
【0038】
電力供給最適化モデル165は、電力供給システム10の運転を最適化するためのモデルである。電力供給最適化モデル165は、再生可能エネルギー電力供給源4から供給される電力の現在値や予測値、バッテリー14などの構成要素の状態を表す状態量の現在値や予測値、バッテリー14などの構成要素を制御するための制御量の現在値や予測値などを入力して、電力供給システム10の収益、コスト、稼働率などを最適化する制御量の設定値を出力する。電力供給最適化モデル165は、電力供給システム10において使用されるものと同じものであってもよく、電力供給システム10から提供されてもよい。
【0039】
原料供給最適化モデル166は、原料供給システム20の運転を最適化するためのモデルである。原料供給最適化モデル166は、電力供給システム10から供給される電力の現在値や予測値、燃料製造プラント40に供給すべき原料の量の現在値や予測値、原料供給部23の状態を表す状態量の現在値や予測値、原料供給部23を制御するための制御量の現在値や予測値などを入力して、原料供給システム20の収益、コスト、稼働率などを最適化する制御量の設定値を出力する。原料供給最適化モデル166は、原料供給システム20において使用されるものと同じものであってもよく、原料供給システム20から提供されてもよい。
【0040】
プラント最適化モデル168は、燃料製造プラント40の運転を最適化するためのモデルである。プラント最適化モデル168は、電力供給システム10から供給される電力の現在値や予測値、原料供給システム20から供給される原料の量の現在値や予測値、製造すべき製品の種類、仕様、需要量、単価の現在値や予測値、各構成の状態を表す状態量の現在値や予測値、各構成を制御するための制御量の現在値や予測値などを入力して、燃料製造プラント40の収益、コスト、稼働率、製品収量、製品収率などを最適化する制御量の設定値を出力する。
【0041】
処理装置120は、電力情報取得部121、電力供給予測部122、電力供給最適化部123、原料情報取得部124、原料供給予測部125、原料供給最適化部126、製品情報取得部130、プラント情報取得部131、プラント予測部132、プラント最適化部133、電力供給運転制御情報出力部134、原料供給運転制御情報出力部135、及びプラント運転制御情報出力部137を備える。これらの構成は、ハードウエアコンポーネントでいえば、任意の回路、コンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、又はそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0042】
電力情報取得部121は、電力供給システム10から原料供給システム20又は燃料製造プラント40に供給される電力に関する現状情報や予測情報を取得する。電力情報取得部121は、再生可能エネルギー電力供給源4から供給される電力の現在値や予測値、電力の価格の現在値や予測値、バッテリー14などの構成要素の状態を表す状態量の現在値や予測値、バッテリー14などの構成要素を制御するための制御量の現在値や予測値、電力供給システム10から原料供給システム20又は燃料製造プラント40に供給される電力の現在値や予測値などを電力供給システム10から取得する。
【0043】
電力供給予測部122は、電力供給予測モデル161を用いて、電力供給システム10から原料供給システム20又は燃料製造プラント40に将来供給される電力を予測する。
【0044】
電力供給最適化部123は、電力供給最適化モデル165を用いて、電力供給システム10の運転を最適化することが可能な制御量の設定値を算出する。
【0045】
電力供給運転制御情報出力部134は、電力供給最適化部123により算出された制御量の設定値を、最適な運転制御態様として電力供給システム10に出力する。電力供給制御システム12は、運転支援装置100から取得した制御量の設定値に基づいて、電力供給システム10の運転を制御する。電力供給システム10が、運転支援装置100から制御量の設定値を受け付けないように構成される場合は、電力供給運転制御情報出力部134は設けられなくてもよい。
【0046】
電力情報取得部121が、電力供給システム10により最適化されたように電力供給システム10が運転された場合の電力に関する情報を取得する場合は、電力供給予測部122や電力供給最適化部123は設けられなくてもよい。
【0047】
原料情報取得部124は、原料供給システム20から燃料製造プラント40に供給される原料に関する現状情報や予測情報を取得する。原料情報取得部124は、電力供給システム10から供給される電力の現在値や予測値、燃料製造プラント40に供給すべき原料の量の現在値や予測値、原料供給部23の状態を表す状態量の現在値や予測値、原料供給部23を制御するための制御量の現在値や予測値、原料供給システム20から燃料製造プラント40に供給される原料の量、価格の現在値や予測値などを原料供給システム20から取得する。
【0048】
原料供給予測部125は、原料供給予測モデル162を用いて、原料供給システム20から燃料製造プラント40に将来供給される原料の量を予測する。
【0049】
原料供給最適化部126は、原料供給最適化モデル166を用いて、原料供給システム20の運転を最適化することが可能な制御量の設定値を算出する。原料供給最適化部126は、電力供給最適化部123により最適化されたように電力供給システム10が運転されたときに電力供給システム10から原料供給システム20に供給されると予測される電力に基づいて、原料供給システム20の運転を最適化する。
【0050】
原料供給運転制御情報出力部135は、原料供給最適化部126により算出された制御量の設定値を、最適な運転制御態様として原料供給システム20に出力する。原料供給制御システム22は、運転支援装置100から取得した制御量の設定値に基づいて、原料供給システム20の運転を制御する。原料供給システム20が、運転支援装置100から制御量の設定値を受け付けないように構成される場合は、原料供給運転制御情報出力部135は設けられなくてもよい。
【0051】
原料情報取得部124が、原料供給システム20により最適化されたように原料供給システム20が運転された場合の原料に関する情報を取得する場合は、原料供給予測部125や原料供給最適化部126は設けられなくてもよい。
【0052】
製品情報取得部130は、製品として製造すべき燃料の種類、仕様、需要量、価格などの現在値や予測値などの情報を取得する。
【0053】
プラント情報取得部131は、燃料製造プラント40に関する現状情報や予測情報を取得する。プラント情報取得部131は、電力供給システム10から供給される電力の現在値や予測値、原料供給システム20から供給される原料の量の現在値や予測値、製造すべき製品の種類、仕様、需要量、単価の現在値や予測値、各構成の状態を表す状態量の現在値や予測値、各構成を制御するための制御量の現在値や予測値、製造される製品の収量、収率、質などの現在値や予測値などを燃料製造プラント40から取得する。
【0054】
プラント予測部132は、プラント予測モデル164を用いて、燃料製造プラント40の状態、稼働率、製品収量、製品収率、製品仕様などを予測する。プラント予測部132は、予測結果を燃料製造プラント40に出力する。
【0055】
プラント最適化部133は、プラント最適化モデル168を用いて、燃料製造プラント40の運転を最適化することが可能な制御量の設定値を算出する。プラント最適化部133は、電力供給最適化部123により最適化されたように電力供給システム10が運転されたときに電力供給システム10から原料供給システム20又は燃料製造プラント40に供給されると予測される電力と、原料供給最適化部126により最適化されたように原料供給システム20が運転されたときに原料供給システム20から燃料製造プラント40に供給されると予測される原料の量とに基づいて、燃料製造プラント40の運転を最適化する。プラント最適化部133は、算出した制御量の設定値を推奨値として燃料製造プラント40に出力する。
【0056】
プラント最適化部133は、製品情報取得部130により取得された製品として製造すべき燃料の種類、仕様、需要量、価格などの現在値、予測値や、プラント情報取得部131により取得された燃料製造プラント40に関する現状情報、予測情報などに基づいて、電力供給最適化モデル165、原料供給最適化モデル166、プラント最適化モデル168を用いて、電力供給システム10、原料供給システム20、及び燃料製造プラント40の運転を統合的に最適化してもよい。この場合、電力供給運転制御情報出力部134は、算出された制御量の設定値を、最適な運転制御態様として電力供給システム10に出力する。原料供給運転制御情報出力部135は、算出された制御量の設定値を、最適な運転制御態様として原料供給システム20に出力する。プラント最適化部133は、算出された制御量の設定値を、最適な運転制御態様の推奨値として燃料製造プラント40に出力する。
【0057】
燃料製造システム1において変動する状態量などのパラメータの全てをまとめて最適化する場合は、計算負荷が膨大となって、リアルタイムに運転を最適化することが困難である。しかし、本実施の形態の運転支援装置100は、電力供給システム10、原料供給システム20、及び燃料製造プラント40の運転をそれぞれ局所的に最適化しつつ、燃料製造システム1の全体を統括的に最適化するので、計算負荷を抑えつつ、効率的に燃料製造システム1の全体を最適化することができる。これにより、燃料製造システム1の運転を所定の時間間隔でリアルタイムに最適化することができるので、燃料製造システム1の生産性を最大化することができる。
【0058】
運転支援装置100が燃料製造システム1の全体の運転を最適化して制御量の設定値を変更する時間間隔は、燃料製造プラント40に備えられた電力と原料の少なくとも一方を一時的に貯留する貯留部の容量に応じて定められてもよい。例えば、この時間間隔は、原料貯留部42の容量に応じて定められてもよい。また、この時間間隔は、バッテリー14の容量に応じて定められてもよい。貯留部の容量が大きいほど、電力や原料の供給量の変動を吸収する能力が高くなるので、時間間隔を大きくしてもよい。時間間隔は、例えば、数秒から数分程度であってもよい。
【0059】
図6は、実施の形態に係る運転支援方法の手順を示すフローチャートである。運転支援装置100の電力情報取得部121は、燃料製造プラント40に供給される電力に関する現状情報又は予測情報を取得する(S10)。原料情報取得部124は、燃料製造プラント40に供給される原料に関する現状情報又は予測情報を取得する(S12)。プラント最適化部133は、電力情報取得部121により取得された電力に関する現状情報又は予測情報と、原料情報取得部124により取得された原料に関する現状情報又は予測情報と、プラントの運転を予測するプラント予測モデル164とに基づいて、燃料製造プラント40の運転を最適化する(S14)。
【0060】
以上、本開示を、実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0061】
上記の実施の形態では、電力を用いて原料から炭化水素燃料を製造する燃料製造システムの運転を支援する場合について説明したが、本開示の技術は、電力を用いて物又はエネルギーを生成する任意のシステムに適用可能である。
【0062】
本実施の形態の技術は、プラントの運転中にリアルタイムにプラントの運転を最適化する場合だけでなく、プラントの運転中にオペレータの運転指標として使用したり、プラントの運転計画を策定したり、プラントを設計したりする際にも利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 燃料製造システム、2 インターネット、3 電力系統、4 再生可能エネルギー電力供給源、5 原料供給源、10 電力供給システム、11 電力供給最適化モデル、12 電力供給制御システム、14 バッテリー、20 原料供給システム、21 原料供給最適化モデル、22 原料供給制御システム、23 原料供給部、40 燃料製造プラント、41 プラント制御システム、42 原料貯留部、43 反応部、44 改質/精製部、50 センサ、60 操作パネル、61 状態情報取得部、62 プラント情報送信部、63 制御量推奨値受信部、64 情報提示部、65 制御量設定部、66 制御装置、100 運転支援装置、121 電力情報取得部、122 電力供給予測部、123 電力供給最適化部、124 原料情報取得部、125 原料供給予測部、126 原料供給最適化部、130 製品情報取得部、131 プラント情報取得部、132 プラント予測部、133 プラント最適化部、134 電力供給運転制御情報出力部、135 原料供給運転制御情報出力部、137 プラント運転制御情報出力部、161 電力供給予測モデル、162 原料供給予測モデル、164 プラント予測モデル、165 電力供給最適化モデル、166 原料供給最適化モデル、168 プラント最適化モデル。