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特開2024-142675搬送装置の運転制御システム、搬送装置、搬送装置の運転制御方法、及び、搬送装置の運転制御システム用のプログラム
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  • 特開-搬送装置の運転制御システム、搬送装置、搬送装置の運転制御方法、及び、搬送装置の運転制御システム用のプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142675
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】搬送装置の運転制御システム、搬送装置、搬送装置の運転制御方法、及び、搬送装置の運転制御システム用のプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/02 20060101AFI20241003BHJP
   B65G 43/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65G43/02 D
B65G43/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054916
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 勇希
【テーマコード(参考)】
3F027
【Fターム(参考)】
3F027AA02
3F027CA07
3F027DA16
3F027DA33
3F027EA01
3F027FA04
(57)【要約】
【課題】並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置において、搬送装置全体の運転制御を自動的に行うことができる運転制御手段を提供すること。
【解決手段】搬送装置の運転制御システムを、動作検知部110と、動作状態記憶部122と、動作制御部121と、を備え、動作制御部121は、動作検知部110によって主ベルトコンベア31の動作状態が過負荷となったことが検知されたときに副ベルトコンベア11の動作を停止させ、副ベルトコンベア11の停止時間が所定時間を経過したときに、動作検知部110によって検知される主ベルトコンベア31の動作状態が過負荷でなくなっている場合には、動作状態記憶部122に記憶されている停止直前動作状態データに基づいて、副ベルトコンベア11の動作を停止前の状態に復帰させる、搬送装置の運転制御システム100とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置の運転制御システムであって、
前記主ベルトコンベア及び前記副ベルトコンベアの動作状態を検知する動作検知部と、
前記副ベルトコンベアの動作状態データが記憶される動作状態記憶部と、
前記副ベルトコンベアの動作を制御する動作制御部と、
を備え、
前記動作制御部は、前記主ベルトコンベアの動作状態が過負荷となったことが検知されたときに、前記副ベルトコンベアの停止直前動作状態データを前記動作状態記憶部に入力後に前記副ベルトコンベアの動作を停止させ、前記副ベルトコンベアの停止後の経過時間が所定時間を経過したときに、前記動作検知部によって検知される前記主ベルトコンベアの動作状態が過負荷でなくなっている場合には、前記動作状態記憶部に記憶されている前記停止直前動作状態データに基づいて、前記副ベルトコンベアの動作を停止前の状態に復帰させる、
搬送装置の運転制御システム。
【請求項2】
前記動作検知部が、
ベルトコンベアの積載物の重量を測定する荷重測定部、及び/又は、ベルトコンベアの駆動モーターに流れる電流を測定する電流測定部である、
請求項1に記載の搬送装置の運転制御システム。
【請求項3】
並列配置されている複数台の前記副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の前記主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置であって、
請求項1又は2に記載の運転制御システムを備える、
搬送装置。
【請求項4】
並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置の運転制御方法であって、
動作検知部が、主ベルトコンベアの動作状態を検知する動作検知ステップと、
前記動作検知部が前記主ベルトコンベアの動作状態が過負荷となったことを検知したときに、動作制御部が、前記副ベルトコンベアの停止直前動作状態データを動作状態記憶部に入力する副ベルトコンベア動作状態入力ステップと、
前記動作制御部が、前記副ベルトコンベアの動作を停止させる、副ベルトコンベア動作停止ステップと、
前記動作制御部が、前記副ベルトコンベアの動作の停止後の経過時間を計算し前記経過時間が所定時間に達したことを検出する停止時間計算ステップと、
前記経過時間が前記所定時間を経過したときに、前記動作検知部によって検知される前記主ベルトコンベアの動作状態が過負荷でなくなっている場合には、前記動作制御部が、前記動作状態記憶部に記憶されている前記停止直前動作状態データを出力して、前記副ベルトコンベアの動作を停止前の状態に復帰させる、副ベルトコンベア動作再開ステップと、
を含んでなる、
搬送装置の運転制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置の運転制御方法において、
前記副ベルトコンベア動作状態入力ステップ、前記副ベルトコンベア動作停止ステップ、前記停止時間計算ステップ、及び、前記副ベルトコンベア動作再開ステップ、を実行させる、
搬送装置の運転制御システム用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置の運転制御システム、搬送装置、搬送装置の運転制御方法、及び、搬送装置の運転制御システム用のプログラムに関する。本発明は、詳しくは、並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置において、連動して稼働するベルトコンベアの運転制御を自動的に行う運転制御システム、そのような運転制御システムを備える搬送装置、そのような制御を行う搬送装置の運転制御方法、及び、そのような制御を行う運転制御システム用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高温加圧酸浸出法(HPALプロセス)によるニッケル酸化鉱石の製錬を行う工業設備等、多くの製錬プラントにおいて、プラント内での鉱石の運搬を行う搬送装置として、図1に示すような構成で複数台のベルトコンベアを組合せて構成した搬送装置が広く用いられている。図1に示す搬送装置1は、鉱石が投入される上流側に並列配置されている複数台の副ベルトコンベア11、21が、それらの下流側に配置されていて、次工程を行う設備(ここでは一例として、篩別装置4)への投入を行う主ベルトコンベア31に連接されてなるものである。同図に示す構成の搬送装置1においては、複数台の副ベルトコンベアのうちの何れか1つの副ベルトコンベアを稼働させた状態で搬送作業を行うこともできるし、或いは、より多くの鉱石供給量を確保する目的で、複数台の副ベルトコンベアを同時に稼働させることもできる。
【0003】
上記の搬送装置1においては、ホッパー12、22からの副ベルトコンベア11、21それぞれへの鉱石の投入量の変動に応じて、主ベルトコンベア31にかかる負荷が変動する。このため、ベルトコンベアの運転状況(例えば、電流値)を、操作員が監視して、主ベルトコンベア31にかかる負荷が過負荷とならないように、副ベルトコンベア11、21の運転状態を随時手動で調整する必要があった。特に、複数台の副ベルトコンベア11、21を同時に稼働させる場合には、主ベルトコンベア31にかかる負荷は、より不規則に、且つ、より頻繁に変動するため、搬送装置の稼働中に、操作員が、常時、主ベルトコンベア31にかかる負荷を確認しながら、複数台の副ベルトコンベア11、21の動作の調整作業を頻繁に行う必要があった。
【0004】
例えば、複数段に直列配置されるベルトコンベアからなる搬送装置の制御システムとしては、各ベルトコンベアの最下流部に搬送物の有無を判定するセンサを設けて、このセンサによって得た情報に基づいてコンベア起動時の前詰め運転を制御するシステム(特許文献1参照)が開発されている。しかしながら、上述した搬送装置1のように、上流側に並列配置されている複数台の副ベルトコンベア11、21の下流側に1台の主ベルトコンベア31が連接されてなる構成の搬送装置においては、主ベルトコンベア31にかかる負荷の不規則な変動に対応するために、依然として、操作員が複数台の副ベルトコンベアの出力調整を手動で行うことを余儀なくされている状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-315194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ニッケル酸化鉱石の製錬を行う工業設備等で広く用いられている搬送装置であって、並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置において、搬送装置全体の運転制御を自動的に行うことができる運転制御手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、一例として図1に示されているように、並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置において、主ベルトコンベアの動作状態が過負荷となったことを副ベルトコンベアの動作にフィードバックする制御を行い、更に、この制御によって副ベルトコンベアを停止させるときに、停止直前の当該副ベルトコンベアの動作状態データを記憶しておき、このように記憶された動作状態データに基づいて、副ベルトコンベアを適切なタイミングで停止前の状態に復帰させる制御態様とすることで、上記課題を解決できることに想到し、本発明を完成させるに至った。本発明は、具体的には、以下のものを提供する。
【0008】
(1) 並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置の運転制御システムであって、前記主ベルトコンベア及び前記副ベルトコンベアの動作状態を検知する動作検知部と、前記副ベルトコンベアの動作状態データが記憶される動作状態記憶部と、前記副ベルトコンベアの動作を制御する動作制御部と、を備え、前記動作制御部は、前記主ベルトコンベアの動作状態が過負荷となったことが検知されたときに、前記副ベルトコンベアの停止直前動作状態データを前記動作状態記憶部に入力後に前記副ベルトコンベアの動作を停止させ、前記経過時間が所定時間を経過したときに、前記動作検知部によって検知される前記主ベルトコンベアの動作状態が過負荷でなくなっている場合には、前記動作状態記憶部に記憶されている前記停止直前動作状態データに基づいて、前記副ベルトコンベアの動作を停止前の状態に復帰させる、搬送装置の運転制御システム。
【0009】
(1)の搬送装置の運転制御システムによれば、並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置において、搬送装置全体の運転制御を自動的に行うことができる。
【0010】
(2) 前記動作検知部が、ベルトコンベアの積載物の重量を測定する荷重測定部、及び/又は、ベルトコンベアの駆動モーターに流れる電流を測定する電流測定部である、(1)に記載の搬送装置の運転制御システム。
【0011】
(2)の搬送装置の運転制御システムによれば、(1)の搬送装置の運転制御システムにおいて各ベルトコンベアの動作状態の検知を、搬送物の種類、性質、或いは、ベルトコンベアの駆動方式に応じた最適な検知手段として、上記の検知手段の何れか、或いは、それらの両者により行うことができる。両手段を適切に組合せることによって、搬送物の種類、性質、或いは、ベルトコンベアの駆動方式にかかわらず、ベルトコンベアの動作状態を正確に検知することができるので、(1)の搬送装置の運転制御システムの汎用性を向上させ、制御動作の信頼性も更に向上させることができる。
【0012】
(3) 並列配置されている複数台の前記副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の前記主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置であって、(1)又は(2)に記載の運転制御システムを備える、搬送装置。
【0013】
(3)の搬送装置によれば、ニッケル酸化鉱石の製錬を行う工業設備等で鉱石等を搬送する装置として広く用いられている複数台のベルトコンベアを組合せてなる搬送装置において、(1)又は(2)の搬送装置の運転制御システムの奏する上記各効果を享受して、当該搬送装置の制御に係るコストを削減して、工業製品の生産性の向上に寄与することができる。
【0014】
(4) 並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置の運転制御方法であって、動作検知部が、主ベルトコンベアの動作状態を検知する動作検知ステップと、前記動作検知部が前記主ベルトコンベアの動作状態が過負荷となったことを検知したときに、動作制御部が、前記副ベルトコンベアの停止直前動作状態データを動作状態記憶部に入力する副ベルトコンベア動作状態入力ステップと、前記動作制御部が、前記副ベルトコンベアの動作を停止させる、副ベルトコンベア動作停止ステップと、前記動作制御部が、前記副ベルトコンベアの動作の停止後の経過時間を計算し前記経過時間が所定時間に達したことを検出する停止時間計算ステップと、前記経過時間が前記所定時間を経過したときに、前記動作検知部によって検知される前記主ベルトコンベアの動作状態が過負荷でなくなっている場合には、前記動作制御部が、前記動作状態記憶部に記憶されている前記停止直前動作状態データを出力して、前記副ベルトコンベアの動作を停止前の状態に復帰させる、副ベルトコンベア動作再開ステップと、を含んでなる、搬送装置の運転制御方法。
【0015】
(4)の搬送装置の運転制御方法によれば、並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置において、搬送装置全体の運転制御を自動的に行うことができる。
【0016】
(5) (4)に記載の搬送装置の運転制御方法において、前記副ベルトコンベア動作状態入力ステップ、前記副ベルトコンベア動作停止ステップ、前記停止時間計算ステップ、及び、前記副ベルトコンベア動作再開ステップ、を実行させる、搬送装置の運転制御システム用のプログラム。
【0017】
(5)の搬送装置の運転制御システム用のプログラムによれば、並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置において、搬送装置全体の運転制御を自動的に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、並列配置されている複数台の副ベルトコンベアが、それらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベアに連接されてなる搬送装置において、搬送装置全体の運転制御を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の搬送装置の構成の一例を模式的に示す図面である。
図2】本発明の搬送装置の運転制御システムの基本構成を示すブロック図である。
図3】本発明の搬送装置の運転制御方法の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0021】
<本発明の概要>
本発明の「搬送装置の運転制御システム」及び「搬送装置の運転制御方法」は、図1に示す搬送装置1のように、並列配置されている複数台の副ベルトコンベア11、21の下流側に1台の主ベルトコンベア31が連接されてなる搬送装置1において、連動して稼働するベルトコンベアの運転制御を自動的に行う運転制御手段である。そして、本発明の「搬送装置」とは、一例として図1に示すような構成の搬送装置であって、本発明の「搬送装置の運転制御システム」を備える搬送装置である。
【0022】
<搬送装置>
本発明の「搬送装置の運転制御システム」及び「搬送装置の運転制御方法」の適用対象となる搬送装置は、一例として図1に示す搬送装置1である。この搬送装置1は、2台の副ベルトコンベア11、21がそれらの下流側に配置されている1台の主ベルトコンベア31に連接されてなる構成とされている。但し、本発明の「搬送装置の運転制御システム」及び「搬送装置の運転制御方法」の制御対象となる搬送装置の構成はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の「搬送装置の運転制御システム」及び「搬送装置の運転制御方法」の制御対象となる搬送装置は、並列配置される副ベルトコンベアの台数を、主ベルトコンベア31に並列接続可能な範囲において2台以上の任意の数とすることもできる。又、副ベルトコンベアの台数が3台以上である場合には、それらのベルトコンベアから任意に選択した2台(若しくは副ベルトコンベアの総台数よりも少ない任意の台数)のベルトコンベアのみを予め制御対象として選択し、これらの選択された2台(若しくは副ベルトコンベアの総台数よりも少ない任意の台数)のベルトコンベアを本発明の搬送装置を構成する制御対象の副ベルトコンベアとみなして、本発明の搬送装置を構成することもできる。
【0023】
尚、本発明の「搬送装置の運転制御システム」及び「搬送装置の運転制御方法」の制御対象となる搬送装置は、主ベルトコンベア31が、複数台(図1においては2台)のベルトコンベアが直列に接続されることによって構成されているものであってもよい。本明細書においては、複数台の副ベルトコンベアの下流側に連接されている「主ベルトコンベア」が、複数台のベルトコンベアが直列に接続されて構成されている場合には、直列接続されているそれらの全てのベルトコンベアを、全体として「1台の主ベルトコンベア」とみなすものとする。但し、この場合において、搬送装置の運転制御システム100によって動作を検知する対象となるベルトコンベアについては、それら全てのベルトコンベアの動作を検知する必要はなく、接続されている複数のベルトコンベアのうち最下流側のベルトコンベア(図1においては篩別装置4に鉱石を投入するベルトコンベア)の動作について検知を行えばよい。
【0024】
そして、ニッケル酸化鉱石の製錬を行う工業設備等における本発明の搬送装置の具体的な実施形態として、図1に示すように、副ベルトコンベア11、21のそれぞれの上流側の上方位置に、各コンベアにニッケル酸化鉱石を投入するホッパー12、22がそれぞれ設置されていて、一方で、主ベルトコンベア31の下流側には次工程を行う設備(ここでは一例として、篩別装置4)が配置されている全体構成を、本発明の搬送装置の好ましい実施形態の一例として挙げることができる。
【0025】
<搬送装置の運転制御システム>
[全体構成]
本発明の搬送装置の運転制御システム(運転制御システム100)は、図2に示すように、動作検知部110と演算処理部120とを含んで構成される。動作検知部110は、荷重測定部111又は電流測定部112の何れか、或いは、それらの両者を含んで構成されることが好ましい。演算処理部120は、少なくとも、動作制御部121、動作状態記憶部122を含んで構成される。
【0026】
ここで、運転制御システム100においては、演算処理部120が、動作検知部110から主ベルトコンベア31の動作状態に係るデータを受信し、制御対象とする副ベルトコンベア11、21に向けて、適切な制御信号を送信することができるように、これらの各部が相互に情報通信可能に接続されてなる情報処理システムとして構成される。上記各部間の接続は、専用の通信ケーブルを利用した有線接続、或いは、有線LANによる接続とすることができる。又、有線接続に限らず、無線LANや近距離無線通信等の各種無線通信を用いた接続とすることもできる。
【0027】
運転制御システム100を構成する上記各部のうち、動作検知部110については、主ベルトコンベア31及び副ベルトコンベア11、21の動作を実際に検知することが可能となる位置(主ベルトコンベア31及び制御対象とする副ベルトコンベア11、21に直接或いは間接的に設置可能な範囲内)に分散して配置される。演算処理部120については、配置は特に限定されず、制御対象とする搬送装置の設置場所近傍に設置することもできるし、或いは、当該搬送装置の設置場所から物理的に離れた任意の場所にある他の施設内や、或いは、インターネット上(所謂クラウド上)に配置することもできる。そのような分散型の情報システムとしての実施形態も当然に本発明の「搬送装置の運転制御システム」の技術的範囲に含まれる。
【0028】
[動作検知部]
動作検知部110は、主ベルトコンベア31の動作状態が過負荷となったこと、及び、任意の時点での副ベルトコンベア11、21の動作状態を検知することができる各種の技術的手段によって構成される。このような技術的手段は、例えば、主ベルトコンベア31及び副ベルトコンベア11、21の積載物の重量を測定する荷重測定部111、或いは、これらの各ベルトコンベアの駆動モーターに流れる電流を測定する電流測定部112を含んで構成される。動作検知部110は、これらのうちの何れかによって構成することができるが、これらの両者を備える構成とすることが好ましい。
【0029】
(荷重測定部)
荷重測定部111は、制御対象とする搬送装置1を構成する各ベルトコンベアの積載物の重量を検知する重量測定手段である。荷重測定部111は、ベルトコンベアの全体又は単位長さ当たりの被搬送物の重量(荷重)を検出することができる秤量機によって構成することができる。具体的には、一例として、特開昭58-95220号公報に開示されている「コンベヤスケール」、或いは、その他のコンベヤスケール或いはベルトスケールと称される公知の各種荷重検出器によって荷重測定部111を構成することができる。
【0030】
(電流測定部)
電流測定部112は、制御対象とする搬送装置1を構成する各ベルトコンベアの駆動モーターに流れる電流を測定する電流測定手段である。電流測定部112は、ベルトコンベの駆動モーターに流れる電流の変動を感知して計測することができる各種の計測機によって構成することができる。具体的には、一例として、上記駆動モーターの電流回路に変流計を接続することによって電流測定部112を構成することができる。
【0031】
[演算処理部]
演算処理部120は、動作検知部110から送信された主ベルトコンベア31及び副ベルトコンベア11、21の動作状態に係るデータを入力値として、搬送装置1の動作の適切な制御を自動的に実行するために必要な演算処理を行い、副ベルトコンベア11、21の動作を制御するためのデータを出力値として適切なタイミングで出力する。そのために、演算処理部120は、上述した通り、動作検知部110から主ベルトコンベア31の動作状態に係るデータを受信し、制御対象とする副ベルトコンベア11、21に向けて、適切な制御信号を送信することができるように、各ベルトコンベアに設置されている動作検知部110及び制御対象とする副ベルトコンベア11、21と通信可能に接続されている。
【0032】
演算処理部120は、運転制御システム100の動作を実行するための演算処理用途に特化した専用の情報処理装置として構成してもよいし、或いは、必要な機能を備える情報処理手段をサーバーとしてクラウド上に構成して、これを複数のクライアントで共有する構成とすることもできる。又、演算処理部120は、本発明の搬送装置が設置されている工場等において、全体プロセスを制御するために設置されている分散制御システム(DCS)等を構成する情報処理装置に、本発明の核構成を適切に分散させて組み込むことによって構成することもできる。
【0033】
上記何れの構成においても、演算処理部120は、CPU、メモリ、通信部等のハードウェアを備えている。そして、このような構成からなる演算処理部120は、本発明に係るコンピュータプログラムである「搬送装置の運転制御システム用のプログラム」を当該ハードウェアに実行させることにより、以下に説明する各種動作、及び、搬送装置の運転制御方法を具体的に実行することができる。
【0034】
(動作制御部)
動作制御部121は、動作検知部110を構成する荷重測定部111、電流測定部112、或いは、その両者によって、主ベルトコンベア31の動作状態が過負荷となったことが検知されたときに、副ベルトコンベアの動作を一時停止し、更に、適切なタイミングで動作を再開させ停止前の状態に復帰させる制御を行うシーケンス制御装置である。動作制御部121の具体的な動作の詳細については、「搬送装置の運転制御方法(搬送装置の運転制御システムの動作)」の説明と併せて後述する。
【0035】
(動作状態記憶部)
動作状態記憶部122には、動作検知部110によって測定される主ベルトコンベア31の動作状態が過負荷となったことが検知されたときに、当該検知時点における副ベルトコンベア11の動作状態データ(停止直前動作状態データ)が記憶される。停止直前動作状態データとは、具体的には、上記検知時点(停止直前の時点)における制御対象の副ベルトコンベア11の運転速度(駆動モーターの単位時間当たり回転数)を特定することのできる数値データであればよく、同時点における当該ベルトコンベアの電流値でもよく、或いは、より好ましくは、同時点における当該ベルトコンベアの電流値と積載荷重の組合せである。そして、動作状態記憶部122は、このような数値データを入力して記憶し、必要に応じて出力することが可能な各種の記憶デバイスによって構成することができる。
【0036】
<搬送装置の運転制御方法(搬送装置の運転制御システムの動作)>
図3は、運転制御システム100を用いて実行することができる本発明の「搬送装置の運転制御方法」の流れを示すフロー図である。本発明の「搬送装置の運転制御方法」は、並列配置されている複数台の副ベルトコンベア11、21の下流側に1台の主ベルトコンベア31が連接されてなる搬送装置1において、搬送装置1全体の運転制御を自動的に行うことができる制御プロセスである。
【0037】
この「搬送装置の運転制御方法」は、図3に示す通り、動作検知ステップS10、副ベルトコンベア動作状態入力ステップS20、副ベルトコンベア動作停止ステップS30、停止時間計算ステップS40、及び、副ベルトコンベア動作再開ステップS50が、順次行われるプロセスである。このプロセスは、上記において詳細を説明した運転制御システム100を搬送装置1に適用することによって実施することができる。
【0038】
本発明の「搬送装置の運転制御方法」を実施する際の搬送装置の初期状態としては、主ベルトコンベアが運転を継続中であることが想定されている。又、副ベルトコンベアについては、少なくとも2台以上のベルトコンベアが運転を継続中であることが想定されている。以下においては、本発明の「搬送装置の運転制御方法」の実施態様の一例として、図1に示すように2台の副ベルトコンベア11、21が運転継続中の搬送装置1において、これら2台の副ベルトコンベアを制御対象とし、搬送装置全体の運転を、本発明の「搬送装置の運転制御方法」によって制御する場合について、その実施態様の詳細を説明する。
【0039】
[動作検知ステップ]
動作検知ステップS10では、運転制御システム100を構成する動作検知部110が搬送装置1の主ベルトコンベア31の動作状態を検知するための動作状態の測定を継続的に行う。動作状態の測定は、動作検知部110を構成する検知用のデバイス、具体的には、荷重測定部111及び/又は電流測定部112によって行われる。
【0040】
動作検知部110によって測定される動作状態に係るデータは継続的に演算処理部120に送信される。当該データに基づいて、主ベルトコンベア31の動作状態が予め設定する「過負荷」の状態であることが検知された場合(メインコンベア動作状態、NO)には、副ベルトコンベア動作状態入力ステップS20へ進み、「過負荷」の状態であることが検知されていない場合(メインコンベア動作状態、YES)には、動作検知ステップS10へ戻り、検知動作を継続する。
【0041】
尚、主ベルトコンベア31の動作状態が「過負荷」の状態であるとは、動作検知部110を構成する検知用のデバイスによって検知される、荷重や電流の値、或いは、それらの組合せの値が、予め、規定する閾値を超えた状態となっていることを意味する。主ベルトコンベア31の動作状態が「過負荷」であるか否かの判定は、演算処理部120によって行われるが、当該判定を行って判定結果を出力するデバイス(リミッター等)は、運転制御システム100を構成する演算処理部120の構成要件の1つとして全体構成の中で何れかの位置に組み込まれていればよく、例えば、演算処理部120を構成する主たる情報処理装置と通信可能に接続されている状態で、主ベルトコンベア31側に分散配置されていてもよい。
【0042】
[副ベルトコンベア動作状態入力ステップ]
副ベルトコンベア動作状態入力ステップS20では、「停止直前動作状態データ」、即ち、動作検知ステップS10において主ベルトコンベア31の動作状態が「過負荷」の状態であると検知された時点における副ベルトコンベア11、21の「動作状態データ」を、動作制御部121が動作状態記憶部122に入力し、当該動作状態データが「停止直前動作状態データ」として動作状態記憶部122に記憶される。副ベルトコンベアの動作状態データとは、上述した通り、上記検知時点における制御対象の副ベルトコンベア11の運転速度(駆動モーターの単位時間当たり回転数)を特定することのできる数値データであればよい。
【0043】
[副ベルトコンベア動作停止ステップ]
副ベルトコンベア動作停止ステップS30では、「停止直前動作状態データ」の動作状態記憶部122への入力後に、動作制御部121が、副ベルトコンベア11、21の動作を停止させる。具体的な動作としては、副ベルトコンベア11、及び副ベルトコンベア21の運転を停止する信号を各コンベアの運転制御手段に対して出力する。
【0044】
[停止時間計算ステップ]
停止時間計算ステップS40では、動作制御部121が、副ベルトコンベア11、21の動作の停止後の経過時間を計算し、当該経過時間が所定時間に達したことを検出する。上述の所定の経過時間は、特に限定されないが、15秒以上120秒以下であることが好ましく、特に好ましい一例として60秒である。
【0045】
副ベルトコンベア11、21の動作の停止時間、即ち副ベルトコンベア動作停止ステップS30における動作の停止後に経過した時間を計算し当該停止時間が所定時間(一例として60秒)に達した時点で、動作検知部110によって測定される主ベルトコンベア31の動作状態が「過負荷」の状態でない場合(メインコンベア動作状態、YES)には、副ベルトコンベア動作再開ステップS50へ進み、この時点で、動作検知部110によって測定される主ベルトコンベア31の動作状態が「過負荷」の状態である場合(メインコンベア動作状態、NO)には、停止時間計算ステップS40を繰り返す。
【0046】
[副ベルトコンベア動作再開ステップ]
副ベルトコンベア動作再開ステップS50では、動作制御部121が、動作状態記憶部122に記憶されている上述の「停止直前動作状態データ」を出力して、副ベルトコンベア11、21の動作を停止前の状態、即ち、主ベルトコンベア31の動作状態が「過負荷」の状態であると検知された時点における運転速度(駆動モーターの単位時間当たり回転数)に復帰させる。尚、副ベルトコンベア11、21の運転速度の具体的な制御手段としては、PID制御(Proportional-Integral-Differential Controller、PID Controller)等、公知の各種制御方法によることができる。
【0047】
副ベルトコンベア動作再開ステップS50の完了後、制御動作の終了の命令が入力された場合(制御終了、Yes)等、制御動作が終了されるが、それ以外の場合、即ち、「搬送装置の運転制御方法」の実施を継続する場合(制御終了、No)には、動作検知ステップS10へ戻り、上述した制御動作を継続する。
【実施例0048】
ニッケル酸化鉱石の製錬を行う工業設備において、本発明の「搬送装置の運転制御システム」を図1に示す構成からなる搬送装置に適用し、上述の「搬送装置の運転制御方法」による運転制御を行いながら、試験操業を実施した。3回に分けて合計39.5時間の操業を行った。この間、動作検知ステップS10において、主ベルトコンベア31の動作状態が過負荷となったことが検知された回数は計67回(1時間当たり平均1.48回)であり、各検知の時点において、副ベルトコンベア動作状態入力ステップS20、副ベルトコンベア動作停止ステップS30、停止時間計算ステップS40、副ベルトコンベア動作再開ステップS50が実行された。上記の全試験操業期間中において、操作員が、搬送装置の動作を監視するようにしたが、操作員による介入が必要となることはなかった。
【0049】
上記の試験操業の結果、本発明の「搬送装置の運転制御システム」及び「搬送装置の運転制御方法」によれば、操作員の介入を最小限に抑えた運転制御が可能となり、より効率的且つ安定した操業が実施できることが確認された。
【符号の説明】
【0050】
1 搬送装置
11、21 副ベルトコンベア
12、22 ホッパー
31 主ベルトコンベア
4 篩別装置
100 運転制御システム
110 動作検知部
111 荷重測定部
112 電流測定部
120 演算処理部
121 動作制御部
122 動作状態記憶部
S10 動作検知ステップ
S20 副ベルトコンベア動作状態入力ステップ
S30 副ベルトコンベア動作停止ステップ
S40 停止時間計算ステップ
S50 副ベルトコンベア動作再開ステップ
図1
図2
図3