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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142700
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】白色熱硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 7/24 20060101ALI20241003BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20241003BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
C08K3/22
C08K7/24
H01L33/56
H01L33/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054951
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 整
(72)【発明者】
【氏名】養王田 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】出山 佳宏
【テーマコード(参考)】
4J002
5F142
【Fターム(参考)】
4J002CP141
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE126
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD206
4J002GQ05
5F142AA64
5F142AA75
5F142CA11
5F142CE04
5F142CE16
5F142CG05
5F142CG24
5F142DA12
5F142EA02
5F142FA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】十分な光反射率および成形加工性を有し、耐熱光反射性に優れた白色熱硬化性樹脂組成物、それを用いた光半導体素子、光半導体搭載用基板などを提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物を含有するシリコーン樹脂、および白色顔料を含有する白色熱硬化性樹脂組成物である。

は、独立して、ビニル基または水素原子であり;R、Rは、独立して、炭素数1から8の炭化水素基;mは、1から5;nは、2から30を満たす平均値。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物を含有するシリコーン樹脂、および白色顔料を含有する白色熱硬化性樹脂組成物。


式(1)において、Rは、それぞれ独立して、ビニル基または水素原子であり;Rは、それぞれ独立して、炭素数1から8の炭化水素基であり;Rは、それぞれ独立して、炭素数1から8の炭化水素基であり;mは、1から5を満たす平均値であり;nは、2から30を満たす平均値である。
【請求項2】
シリコーン樹脂の重量に基づいて、式(1)で表される化合物の割合が10重量%から80重量%の範囲である、請求項1に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
シリコーン樹脂が、式(2)で表される化合物を含有する、請求項1または2に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。


式(2)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基であり;Xは、それぞれ独立して、式(X1)、式(X2)、または式(X3)で表される基であり;

式(X2)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基であり;sは、2から20を満たす平均値であり;
式(X3)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基であり;Rは、炭素数2から5のアルケニル基であり;Rは、炭素数2から5のアルキレン基であり;tは、2から20を満たす平均値であり;
式(X1)、式(X2)、および式(X3)において、*は、結合部位を示し;
式(2)で表される化合物1分子あたりの式(X1)で表される基の平均数をx、式(X2)で表される基の平均数をx、式(X3)で表される基の平均数をxとしたとき、x+2x+x=4r、0<x<4r、0≦x<2r、かつ0<x<4rを満たし;rは、1から100を満たす平均値である。
【請求項4】
シリコーン樹脂の重量に基づいて、式(2)で表される化合物の割合が10重量%から90重量%の範囲である、請求項3に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
シリコーン樹脂が、式(3)で表される化合物を含有する、請求項3に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。


式(4)において、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、または炭素数6から12の芳香族炭化水素基であり;R10は、それぞれ独立して、炭素数2から5のアルケニル基または水素原子であり;uは、1から50を満たす平均値である。
【請求項6】
シリコーン樹脂の重量に基づいて、式(3)で表される化合物の割合が30重量%以下である、請求項5に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
シリコーン樹脂が、式(4)で表される化合物を含有する、請求項3に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。

式(4)において、R11は、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基であり;Yは、それぞれ独立して、式(Y1)、式(Y2)、式(Y31)、式(Y32)、式(Y33)、式(Y41)、または式(Y42)で表される基であり;

式(Y2)において、R12は、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基であり;wは、1から20を満たす平均値であり;
式(Y41)において、R13は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、またはイソプロピル基であり;
式(Y42)において、R14は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、またはイソプロピル基であり;R15は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、または炭素数2から5のアルケニル基であり;xは、1から20を満たす平均値であり;
式(Y1)、(Y2)、(Y31)、(Y32)、(Y33)、(Y41)および(Y42)において、*は、結合部位を示し;
式(4)で表される化合物1分子あたりの式(Y1)で表される基の平均数をy、式(Y2)で表される基の平均数をy、式(Y31)、式(Y32)または式(Y33)で表される基の平均数をy、式(Y41)または式(42)で表される基の平均数をyとしたとき、y+2y+y+y=4v、0.5v≦y≦3v、0.5v≦2y≦2v、0.1v≦y≦2v、かつ0≦y≦vを満たし;vは、1から100を満たす平均値である。
【請求項8】
シリコーン樹脂の重量に基づいて、式(4)で表される化合物の割合が11重量%以下の範囲である、請求項7に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
白色熱硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、白色顔料の含有量が5重量%から80重量%である、請求項1または2に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の白色熱硬化性樹脂組成物を用いる、光半導体素子。
【請求項11】
請求項1に記載の白色熱硬化性樹脂組成物を用いる、光半導体素子搭載用基板。
【請求項12】
請求項10に記載の光半導体素子または請求項11に記載の光半導体素子搭載用基板を有する光半導体装置。
【請求項13】
請求項1または2に記載の白色熱硬化性樹脂組成物を、側面部に用いた光半導体素子の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色熱硬化性樹脂組成物、これを用いた光半導体素子、光半導体素子搭載用基板およびその製造方法、並びに光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の光半導体素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体装置は、高エネルギー効率および長寿命等の利点から、屋外用ディスプレイ、携帯液晶バックライト、および車載用途等様々な用途に適用され、その需要が拡大している。
【0003】
これに伴って、LEDデバイスの高輝度化が進み、素子の発熱量増大によるジャンクション温度の上昇、または、直接的な光エネルギーの増大による素子材料の劣化が問題視され、近年、熱劣化および光劣化に対して耐性を有する素子材料の開発が課題となっている。
【0004】
こうした状況下、熱または光に起因する輝度低下の問題を防止する技術として、下記特許文献1には、光半導体素子が搭載される部位に光反射率の高いリフレクターを設けた光半導体素子搭載用基板が提案されている。また、特許文献1には、トランスファー成形によりリフレクターを形成することが開示されており、その材料として、シリコーン樹脂、硬化触媒、白色顔料等を含有する光反射用熱硬化性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-94544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、LEDパッケージの製造では、光半導体素子搭載用基板と光半導体素子との接続、光半導体素子の樹脂封止、基板実装時のはんだリフロー等の高温プロセスを経る。光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて作製された光半導体素子搭載用基板の場合、樹脂材料が熱により変色すると、LEDパッケージにおける初期の光学特性の確保が困難となる傾向にある。加えて、光半導体素子搭載用基板には、高温下で長時間使用された際にも光学特性を維持することが求められている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な光反射率および成形加工性を有し、耐熱光反射性に優れた白色熱硬化性樹脂組成物、これを用いた光半導体素子、光半導体搭載用基板、光半導体装置およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、シリコーン樹脂および白色顔料を含有する白色熱硬化性樹脂組成物において、シリコーン樹脂成分として、高度に化学構造が制御された特定のシリコーン樹脂を配合させることにより、光反射率の高い樹脂を得ることができると共に、高温での熱処理後における樹脂の光反射率の低下を従来よりも小さくできること、クラックの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、後述する特定のシリコーン樹脂、および白色顔料を含有する、白色熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0010】
別の側面において、本発明は、白色熱硬化性樹脂組成物を用いる、光素子半導体に関する。当該光素子半導体において白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物を用いる箇所は側面部または側面部および底面部であってもよい。さらに光素子半導体の側面部と白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物間に波長変換部を備えてもよい。
【0011】
別の側面において、本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、基板に塗布することにより光半導体素子搭載用基板とすることができる。
【0012】
さらに別の側面において、本発明は、光半導体素子または光素子半導体搭載用基板に搭載された光半導体素子を備えた、光半導体装置に関する。
【0013】
さらに別の側面において、本発明は、側面部に白色熱硬化性樹脂組成物を用いた光半導体素子の製造方法に関する。本発明にかかる製造方法は白色熱硬化性樹脂組成物をスペーサー中の開口部に配した光半導体素子に塗布して形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、特定のシリコーン樹脂、および白色顔料を含有する、白色熱硬化性樹脂組成物を用いることによって、加熱時に樹脂の光反射性が劣化せず、クラックが発生しない樹脂を提供し、LEDの高出力化に際し十分な白色光反射層が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】光半導体素子の一実施形態を示す断面模式図である。
図2】光半導体素子の他の実施形態を示す断面模式図である。
図3】光半導体素子の作製方法の一実施形態を示す断面模式図である。
図4】光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す断面模式図である。
図5】光半導体装置の一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、項1から13などである。
項1. 式(1)で表される化合物を含有するシリコーン樹脂、および白色顔料を含有する白色熱硬化性樹脂組成物。


式(1)において、Rは、それぞれ独立して、ビニル基または水素原子であり;Rは、それぞれ独立して、炭素数1から8の炭化水素基であり;Rは、それぞれ独立して、炭素数1から8の炭化水素基であり;mは、1から5を満たす平均値であり;nは、2から30を満たす平均値である。
【0017】
項2. シリコーン樹脂の重量に基づいて、式(1)で表される化合物の割合が10重量%から80重量%の範囲である、項1に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【0018】
項3. シリコーン樹脂が、式(2)で表される化合物を含有する、項1または2に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。


式(2)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基であり;Xは、それぞれ独立して、式(X1)、式(X2)、または式(X3)で表される基であり;

式(X2)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基であり;sは、2から20を満たす平均値であり;
式(X3)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基であり;Rは、炭素数2から5のアルケニル基であり;Rは、炭素数2から5のアルキレンである。tは、2から20を満たす平均値であり;
式(X1)、式(X2)、および式(X3)において、*は、結合部位を示し;
式(2)で表される化合物1分子あたりの式(X1)で表される基の平均数をx、式(X2)で表される基の平均数をx、式(X3)で表される基の平均数をxとしたとき、x+2x+x=4r、0<x<4r、0≦x<2r、かつ0<x<4rを満たし;rは、1から100を満たす平均値である。
【0019】
項4. シリコーン樹脂の重量に基づいて、式(2)で表される化合物の割合が10重量%から90重量%の範囲である、項3に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【0020】
項5. シリコーン樹脂が、式(3)で表される化合物を含有する、項1から4のいずれか1項に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。


式(4)において、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、または炭素数6から12の芳香族炭化水素基であり;R10は、それぞれ独立して、炭素数2から5のアルケニル基または水素原子であり;uは、1から50を満たす平均値である。
【0021】
項6. シリコーン樹脂の重量に基づいて、式(3)で表される化合物の割合が30重量%以下である、項5に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【0022】
項7. シリコーン樹脂が、式(4)で表される化合物を含有する、項1から6のいずれか1項に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。

式(4)において、R11は、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基であり;Yは、それぞれ独立して、式(Y1)、式(Y2)、式(Y31)、式(Y32)、式(Y33)、式(Y41)、または式(Y42)で表される基であり;

式(Y2)において、R12は、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基であり;wは、1から20を満たす平均値であり;
式(Y41)において、R13は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、またはイソプロピル基であり;
式(Y42)において、R14は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、またはイソプロピル基であり;R15は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、または炭素数2から5のアルケニルであり;xは、1から20を満たす平均値であり;
式(Y1)、(Y2)、(Y31)、(Y32)、(Y33)、(Y41)および(Y42)において、*は、結合部位を示し;
式(4)で表される化合物1分子あたりの式(Y1)で表される基の平均数をy、式(Y2)で表される基の平均数をy、式(Y31)、式(Y32)または式(Y33)で表される基の平均数をy、式(Y41)または式(42)で表される基の平均数をyとしたとき、y+2y+y+y=4v、0.5v≦y≦3v、0.5v≦2y≦2v、0.1v≦y≦2v、かつ0≦y≦vを満たし;vは、1から100を満たす平均値である。
【0023】
項8. シリコーン樹脂の重量に基づいて、式(4)で表される化合物の割合が11重量%以下の範囲である、項7に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【0024】
項9. 白色熱硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、白色顔料の含有量が5重量%から80重量%である、項1から8のいずれか1項に記載の白色熱硬化性樹脂組成物。
【0025】
項10. 項1から9のいずれか1項に記載の白色熱硬化性樹脂組成物を用いる、光半導体素子。
【0026】
項11. 項1から9のいずれか1項に記載の白色熱硬化性樹脂組成物を用いる、光半導体素子搭載用基板。
【0027】
項12. 項10に記載の光半導体素子または項11に記載の光半導体素子搭載用基板を有する光半導体装置。
【0028】
項13. 項1から9のいずれか1項に記載の白色熱硬化性樹脂組成物を、側面部に用いた光半導体素子の作製方法。
【0029】
(白色熱硬化性樹脂組成物)
本実施形態の白色熱硬化性樹脂組成物は、シリコーン樹脂および白色顔料を含む。また、白色熱硬化性樹脂組成物を、単に、熱硬化性樹脂組成物と表記することがある
【0030】
本実施形態に係る好ましい白色熱硬化性樹脂組成物は、シリコーン樹脂の成分として、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および式(4)で表される化合物、並びに白色顔料を含有する。
【0031】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、シリコーン樹脂の成分として、式(1)で表されるシルセスキオキサン構造を有するダブルデッカー型の化合物を含有する。
【0032】
式(1)において、Rは、それぞれ独立して、ビニル基または水素原子であり;Rは、それぞれ独立して、炭素数1から8の炭化水素基であり;Rは、それぞれ独立して、炭素数1から8の炭化水素基であり;mは、1から5を満たす平均値であり;nは、2から30を満たす平均値である。
【0033】
好ましいRは、ビニル基である。
【0034】
における炭化水素基としては、脂肪族鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、および芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基、プロペニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基等を挙げることができる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基等を挙げることができる。
【0035】
好ましいRは、脂肪族鎖状炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、さらに好ましいRは、脂肪族鎖状炭化水素基である。脂肪族鎖状炭化水素基の中では、アルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。芳香族炭化水素基の中では、フェニル基が好ましい。
【0036】
における炭化水素基としては、Rにおける炭化水素基として例示したものと同様である。Rの炭素数の上限は、5が好ましく、3がより好ましい。好ましいRは、脂肪族鎖状炭化水素基である。さらに好ましいRは、アルキル基であり、特にメチル基が好ましい。Rがアルキル基である場合、シロキサン鎖が架橋性の基を含まず、硬化した際の架橋密度が適度になる。これにより、得られる成形体における応力緩和能力が高まることなどにより、高温環境下での耐クラック性がより高まる。
【0037】
mは、式(1)中のシルセスキオキサン構造単位の重合度を表しているといえる。nは、ポリシロキサン鎖におけるシロキサン構造単位の平均の数(ポリシロキサン鎖の重合度)を表しているといえる。
【0038】
式(1)で表される化合物の具体的構造は、シルセスキオキサン構造単位をX、シロキサン構造単位をYとし、m=2、n=5とした場合、以下の通りとなる。但し、mおよびnはそれぞれ平均値であるため、一分子中においても、Yが連続して並ぶ数、すなわちポリシロキサン鎖におけるシロキサン構造単位の平均の数は異なっていてもよい。
【0039】
【0040】
mの下限は、1であり、1.5がより好ましい場合もある。また、このmの上限は、5であり、4がより好ましい場合もある。
【0041】
nの下限は、2であり、3が好ましく、4がより好ましい場合もある。また、このnの上限は、30であり、20が好ましく、10がより好ましい。
【0042】
式(1)で表される化合物の重量平均分子量は、1000から20000の範囲であることが好ましい。下限値は、2000以上であることが好ましい。上限値は、10000以下であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲であることで、得られる成形体における架橋密度が適度になって応力緩和能力が高まることなどにより、高温環境下での耐クラック性が高まる。
また、重量平均分子量が上記上限以下であることで、粘性が適度な液状となり、封止材用途などに好適に用いることができる。
【0043】
式(1)で表される化合物の25℃における粘度は、1Pa・sから100Pa・sの範囲であることが好ましい。粘度の下限値は、5Pa・s以上がより好ましい。一方、この粘度の上限値は、50Pa・s以下がより好ましい。式(1)で表される化合物がこのような粘度を有する場合、適度な流動性を有し、半導体等の封止材としてより有用となる。なお、式(1)で表される化合物の粘度は、重量平均分子量や、各構造単位の重合度等によって調整することができる。
【0044】
式(1)で表される化合物の好ましい割合は、シリコーン樹脂の重量に基づいて、10重量%から80重量%の範囲であり、耐熱性を向上させるために20重量%以上がより好ましい。
【0045】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、白色顔料を含有する。
【0046】
白色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、シリカ、または無機中空粒子等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0047】
無機中空粒子は、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム以外の材料から形成された粒子である。無機中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、またはシリカの粒子が挙げられる。
【0048】
白色顔料の中心粒径は、50nmから1000nmの範囲にあることが好ましい。この中心粒径が50nm以上であると粒子が凝集を防ぎ分散性が良くなる傾向があり、1000nm以下であると硬化物の光反射特性が十分に得られ易くなる傾向がある。
【0049】
白色顔料の好ましい割合は、白色熱硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、5から80重量%である。白色顔料の含有量が5重量%以上であると、硬化物の光反射特性が十分に得られ易くなり、80重量%以下であると、熱硬化性樹脂組成物の塗工性が良くなり、光半導体素子等の作製が容易となる。
【0050】
シリコーン樹脂は、式(2)で表される化合物をさらに含有してもよい。

式(2)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基であり;Xは、それぞれ独立して、式(X1)、式(X2)、または式(X3)で表される基であり;

式(X2)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基であり;sは、2から20を満たす平均値であり;
式(X3)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基であり;Rは、炭素数2から5のアルケニル基であり;Rは、炭素数2から5のアルキレンである。tは、2から20を満たす平均値であり;
式(X1)、式(X2)、および式(X3)において、*は、結合部位を示し;
式(2)で表される化合物1分子あたりの式(X1)で表される基の平均数をx、式(X2)で表される基の平均数をx、式(X3)で表される基の平均数をxとしたとき、x+2x+x=4r、0<x<4r、0≦x<2r、かつ0<x<4rを満たし;rは、1から100を満たす平均値である。
【0051】
Xが式(X2)で表される基を含む場合、同一のシルセスキオキサン構造内で架橋してもよい。
【0052】
好ましいRは、メチル基、エチル基、またはプロピル基であり、特にメチル基が好ましい。
【0053】
好ましいRは、メチル基、エチル基、またはプロピル基であり、特にメチル基が好ましい。好ましいsは2~10である。
【0054】
好ましいRは、メチル基、エチル基、またはプロピル基であり、特にメチル基が好ましい。好ましいRおよびRは、エチル基である。tの上限は、10が好ましく、5がより好ましく、3がさらに好ましい。
【0055】
は、rを超えることが好ましく、2rを超えることがより好ましい。また、xは、3r未満が好ましい。xは、r以下であることが好ましい。xは、rを超えることが好ましい。また、xは、3r未満が好ましく、2r未満がより好ましい。x>xを満たすことも好ましい。一形態として、xは0であってよい。このとき、rは1となる。
【0056】
式(2)で表される化合物は、例えば国際公開第2011/145638号に記載の方法にて合成することができる。
【0057】
式(2)で表される化合物の好ましい割合は、シリコーン樹脂の重量に基づいて、10重量%から90重量%の範囲であり、耐熱性を向上させるために85%以下がより好ましい。
【0058】
シリコーン樹脂は、式(3)で表される化合物をさらに含有してもよい。


式(4)において、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、または炭素数6から12の芳香族炭化水素基であり;R10は、それぞれ独立して、炭素数2から5のアルケニル基または水素原子であり;uは、1から50を満たす平均値である。
【0059】
好ましいRは、アルキル基であり、特にメチルが好ましい。好ましいRは、アルキル基または芳香族炭化水素基であり、特にメチル基またはフェニル基が好ましい。R10における炭素数2から5のアルケニルは、ビニル基が好ましい。
【0060】
2つのR10が共に水素である化合物または2つのR10が共にビニルである化合物が好ましい。2つのR10が共に水素である場合、uの上限は30が好ましく、15がより好ましい。2つのR10が共にアルケニルである場合、uの上限は10が好ましく、5がより好ましく、3がさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0061】
式(3)で表される化合物の好ましい割合は、シリコーン樹脂の重量に基づいて、30重量%以下である。
【0062】
シリコーン樹脂は、式(4)で表される化合物をさらに含有してもよい。


式(4)において、R11は、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基であり;Yは、それぞれ独立して、式(Y1)、式(Y2)、式(Y31)、式(Y32)、式(Y33)、式(Y41)、または式(Y42)で表される基であり;

式(Y2)において、R12は、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基であり;wは、1から20を満たす平均値であり;
式(Y41)において、R13は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、またはイソプロピル基であり;
式(Y42)において、R14は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、またはイソプロピル基であり;R15は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、または炭素数2からのアルケニルであり;xは、1から20を満たす平均値であり;
式(Y1)、(Y2)、(Y31)、(Y32)、(Y33)、(Y41)および(Y42)において、*は、結合部位を示し;
式(4)で表される化合物1分子あたりの式(Y1)で表される基の平均数をy、式(Y2)で表される基の平均数をy、式(Y31)、式(Y32)または式(Y33)で表される基の平均数をy、式(Y41)または式(42)で表される基の平均数をyとしたとき、y+2y+y+y=4v、0.5v≦y≦3v、0.5v≦2y≦2v、0.1v≦y≦2v、かつ0≦y≦vを満たし;vは、1から100を満たす平均値である。
【0063】
好ましいR11は、アルキル基であり、特にメチル基が好ましい。
【0064】
好ましいR12は、アルキル基であり、特にメチル基が好ましい。好ましいR13、R14、R15は、メチル基である。
【0065】
、y、y、およびyは、それぞれ、v≦y≦2v、0.3v≦y≦v、0.3v≦y≦v、および0.3v≦y≦vであることが好ましい。vの下限は、3であってよく、5であってもよい。また、vの上限は、30であってよく、15であってもよい。
【0066】
式(4)で表される化合物の好ましい割合は、シリコーン樹脂の重量に基づいて、11重量%以下であり、耐熱性を向上させるために5重量%以下がより好ましい。
【0067】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物を硬化させる目的で、硬化触媒を添加してもよい。
【0068】
硬化触媒としては、ヒドロシリル化反応を促進する触媒活性を有するものであれば特に限定されない。Pt触媒、Rh触媒、Pd触媒、Co触媒などを用いることができ、好ましくはPt触媒を用いる。Pt触媒は、白金を含む触媒であり、白金は酸化されていなくても良いし、酸化されていてもよい。酸化された白金としては、例えば、酸化白金が挙げられる。部分的に酸化された白金としては、例えば、アダムス触媒などが挙げられる。
【0069】
Pt触媒としては、例えば、カルステッド触媒(Karstedt catalyst)、スパイヤー触媒(Speier catalyst)、ヘキサクロロプラチニック酸などが挙げられる。これらは一般的によく知られた触媒である。このなかでも酸化されていないタイプのカルステッド触媒が好ましく用いられる。
【0070】
硬化触媒の割合は、本実施形態の白色熱硬化性樹脂組成物の硬化を進めるのに十分な量であることが好ましく、具体的には、シリコーン樹脂の重量に基づいて、0.01ppmから10ppmの範囲であることが好ましく、0.1ppmから3ppmの範囲であることがより好ましい。
【0071】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、上述した成分以外に、無機充填剤、酸化防止剤、離型剤、分散剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤を更に含有することができる。
【0072】
無機充填剤としては、例えば、溶融球状シリカ、破砕状シリカ、シリカ、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム及び炭酸バリウムが挙げられる。無機充填剤の中心粒径は、白色顔料とのパッキング効率を向上させる観点から、10から1000nmの範囲内にあることが好ましい。無機充填剤の含有量は、白色熱硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、15重量%以下が好ましい。
【0073】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じてカップリング剤等が添加されていてもよい。この場合、(1)で表される化合物や(2)で表される化合物と、白色顔料、無機充填剤等の無機成分との界面接着性を向上させることができる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤としては、一般にエポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの複合系等、公知の化合物を用いることができる。カップリング剤の使用量は、無機成分に対する表面被覆量を考慮して適宜調整することが好ましいが、硬化性を向上させる観点から、白色熱硬化性樹脂組成物を重量に基づいて、5重量%以下とすることが好ましい。白色顔料、無機充填剤等の無機成分が予め上記カップリング剤で処理されていてもよい。
【0074】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、保存安定性を改良する目的、または、製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を添加してもよい。硬化遅延剤としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
【0075】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパルギルアルコール類、エン-イン化合物類、マレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1~3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t-ブチル等が例示される。
【0076】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で、無色または例えば淡黄色の比較的着色していないものが好ましい。硬化遅延剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0077】
硬化遅延剤の添加量は、使用する硬化触媒1質量部に対し、0.1から10000質量部の範囲が好ましく、1から50質量部の範囲がより好ましい。
【0078】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物には、特性を改質する目的で、式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物以外の熱硬化性樹脂を添加してもよい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレタン樹脂等が例示されるが、これに限定されるものではない。これらのうち、電子部品としての利便性が高く金属部品との接着性等に優れるという観点から、エポキシ樹脂が好ましい。上記熱硬化性樹脂としては、無色、または、淡黄色のような比較的着色していないものが好ましい。
【0079】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサフルオロビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’-ビス(4-グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,5-スピロ-(3,4-エポキシシクロヘキサン)-1,3-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2-シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート及びジアリルモノグリシジルイソシアヌレートが挙げられる。エポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤として、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族酸またはこれらの無水物を更に添加するとよい。これらのエポキシ樹脂または硬化剤は、それぞれ単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0080】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物には、粘弾性を制御する目的で、シリカを添加することが好ましい。
【0081】
シリカの好ましい割合は、白色熱硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、15重量%以下である。
【0082】
シリカは、天然に産する珪石を細粒化したもの(天然シリカ)を使用してもよく、産業的に合成されたシリカ(合成シリカ)を使用してもよい。天然シリカの場合、結晶であるため結晶軸を持つ。このため、結晶由来の光学的な特徴を期待することができるものの、比重が合成シリカと比べてやや高いため、白色熱硬化性樹脂組成物中での分散に影響する場合がある。また、天然物を粉砕して得る場合、不定形状の粒子である場合や、粒径分布が広い材料となる場合がある。
【0083】
合成シリカは、湿式合成シリカおよび乾式合成シリカがあるが、本発明では特に使用の限定はない。ただし、合成シリカでは製法に関わらず結晶水を持つ場合があり、この結晶水が白色熱硬化性樹脂組成物もしくはその硬化物、またはLED素子等に何らかの影響を与える可能性があるときは、結晶水数も考慮して選択することが好ましい。
【0084】
合成シリカは、結晶ではなくアモルファスであるため、粒子分布の制御のほか、粒子径を極めて小さくできるなどの特徴を有する。
【0085】
特に、ヒュームドシリカはナノオーダーの粒子径であり、粒子の分散性に優れている。さらに同じ重量で比較した場合は、粒子径が小さいほど表面積の総和が大きくなることから、光の反射方向がより多様化するので、より好ましく用いることができる。
【0086】
また、一般にシリカは表面積が大きく、かつ表面に存在するシラノールの効果により親水性の材料(親水性シリカ)であるが、化学修飾により疎水性シリカとすることもできる。どちらの性質のシリカを使用するかは、目的に応じて選択される。
【0087】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、その用途から、硬化後の波長430から800nmにおける光反射率(厚さ0.1mm)が90%以上となることが好ましい。この光反射率が90%以上である場合、光半導体装置の輝度向上に十分に寄与できる傾向がある。本実施形態の白色熱硬化性樹脂組成物は、上記光反射率が90%以上となるものであることが好ましい。また、光半導体装置の輝度を向上させる点で、硬化後の波長450nmにおける光反射率が、90%以上となることが好ましく、95%以上となることがより好ましい。
【0088】
耐熱光反射性を良好にする観点から、硬化後の成形物が、200℃の環境下に1000時間晒す耐熱性試験の後でも、波長430から800nmにおいて90%以上の光反射率を保持することが好ましい。また、上述の耐熱性試験後の測定時に、波長450nmにおける光反射率が90%以上となることがより好ましい。このような白色熱硬化性樹脂組成物の光反射特性は、白色熱硬化性樹脂組成物を構成する各種成分の配合量を適切に調整することによって実現することができ、より具体的には、無色の熱硬化性樹脂成分と高屈折率の白色顔料を混合することで達成できる。
【0089】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されない。例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロールまたはビーズミル等の混合機を用いて、常温または加温下で、上述した硬化促進剤、シリコーン樹脂、白色顔料および、必要に応じて上記熱硬化剤、酸化防止剤等の各所定量を混合する方法が挙げられる。
【0090】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物を反射層として含む光半導体素子もまた、本発明の1つである。
【0091】
(白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備えた光半導体素子)
本実施形態に係る白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備えた光半導体素子は、本発明の白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物を、光半導体素子の側面に備え、底面には備えていても備えていなくてもよい。また、光半導体素子側面と白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物の間または光半導体素子上部に波長変換層を備えていても備えていなくてもよい。
【0092】
図1は、光半導体素子の一実施形態を示す模式断面図である。光半導体素子100は側面部に光反射層101を備える。光反射層101が、上述の本実施形態に係る白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0093】
図2は、光半導体素子の一実施形態を示す模式断面図である。光半導体素子100は上面部および側面部に波長変換層103を備え、底面部に光反射層101を備える。さらに波長変換層103は側面部および底面部に光反射層101を備える。光反射層101が、上述の本実施形態に係る白色熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0094】
図3は、光半導体素子を作製する工程の一実施形態を示す概略図である。光半導体素子の製造方法は特に限定されないが、例えばはんだバンプ102を備えた半導体素子100をスペーサー104に配置し、白色熱硬化性樹脂組成物105をディスペンサーなどを用いて塗布し、加熱硬化後スペーサーを除去し底部をバフ研磨するなどしてはんだバンプを露出することにより作製することができる。
【0095】
加熱硬化の条件としては、特に限定されないが、例えば、80℃にて40分間、120℃にて40分間、その後160℃にて2時間の順で加熱することが好ましい。
【0096】
本実施形態に係る光半導体搭載用基板は、銅箔と銅箔上に積層された前述した白色熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された光反射層を備える。
【0097】
図4は、光半導体素子搭載用基板の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図4に示すように、光半導体素子搭載用基板200は、基材201と、該基材201上に積層された銅箔202と、該銅箔202に積層された光反射層101からなる。光反射層101は、前述した本発明の白色熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されている。
【0098】
基材201としては、光半導体搭載用基板に用いられる基材を特に制限なく使用することができるが、例えば、ガラスエポキシ樹脂積層板やフェノール樹脂積層板などが挙げられる。
【0099】
光半導体素子搭載用基板200は、銅箔202付の基材201上に、本実施形態に係る白色熱硬化性樹脂組成物を塗布し、加熱硬化することにより作製することができる。
【0100】
図5は、光半導体装置の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図5に示すように、光半導体装置300は、反射層101を用いた光半導体素子100と、光半導体素子搭載用基板200からなる。光半導体素子100は、はんだバンプ102を介して、銅箔202と電気的に接続されている。
【0101】
本実施形態に係る光半導体装置300は、前述の光反射層101を用いた光半導体素子100と光半導体素子搭載用基板200の双方または一方を用いた光半導体装置である。
【0102】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物で、反射層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、モールド型枠中に本発明の光半導体用組成物を予め注入し、そこに発光素子が固定されたリードフレーム等を浸漬した後、硬化させる方法、発光素子を挿入した型枠中に本発明の光半導体用組成物を注入し、硬化する方法、および発光素子に塗布した後に硬化し切り分ける方法が挙げられる。
【0103】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物を注入する方法としては、例えば、ディスペンサーによる注入、トランスファー成形、および射出成形が挙げられる。さらに塗布する方法としては、例えば、本発明の白色熱硬化性樹脂組成物を発光素子上へ滴下、孔版印刷、スクリーン印刷、マスクを介して塗布し硬化させる方法、および底部に発光素子を配置したカップ等に本発明の光半導体用組成物をディスペンサー等により注入し、硬化させる方法が挙げられる。
【0104】
加熱硬化の条件としては、特に限定されないが、例えば、80℃にて40分間、120℃にて40分間、その後160℃にて2時間の順で加熱することが好ましい。
【実施例0105】
本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定されない。
【0106】
<数平均分子量、重量平均分子量の測定>
本発明で合成したポリマーの数平均分子量と重量平均分子量は、次のように測定した。
日本分光(株)製の高速液体クロマトグラフシステムCO-2065plusを使用し、試料濃度1質量%のTHF溶液20μLを分析サンプルとして、カラム:Shodex KF804L[昭和電工(株)製](直列に2本接続)、カラム温度:40℃、検出器:RI、溶離液:THF、および溶離液流速:1.0mL毎分でGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。
【0107】
実施例で使用した試薬等は下記の通りである。
UT771(酸化ジルコニウムにて被覆された酸化チタン):石原産業株式会社製
CR-90(シリカにて被覆された酸化チタン):石原産業株式会社製
FM-2205(化合物(3-1))(両末端にビニルを有する数平均分子量が700のポリジメチルシロキサン):JNC株式会社製
FM-1111(化合物(3-2)):JNC株式会社製
DVTS(1,5-ジビニル-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン)(化合物(3-3)):GELEST社製
2BH(1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン)(化合物(3-4)):Biogen社製
MVS-H(1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン):GELEST社製
ECYH-OH(1-エチニルシクロヘキサノール):東京化成株式会社製
DM-30S(乾式シリカ):株式会社トクヤマ製
青色フリップチップLED(B3838FCP1):Genesis Photonics Inc.製
【0108】
<化合物(1-1)の合成>
特開2020-090593号記載の方法にて、下記の構造を有する化合物(1-1)を合成した。
(分析結果)
H-NMR(溶剤:重クロロホルム):δ(ppm):-0.15~0.42(m,187.0H)、5.60~6.19(m,6.0H)、6.95~7.72(m,89.9H)
29Si-NMR(溶剤:THF):δ(ppm):-78.1~-76.9(m、9.0Si)、-63.4(s、2.0Si)、-21.3~-17.5(m、13.2Si)、-2.4(s、1.3Si)
粘度=11.6Pa・s
数平均分子量:Mn=3960
重量平均分子量:Mw=6760
n=9.5
m=3.2
【0109】
【0110】
<化合物(1-2)の合成>
特開2020-090593号記載の方法にて、下記の構造を有する化合物(1-2)を合成した。
(分析結果)
H-NMR(溶剤:重クロロホルム):δ(ppm):-0.15~0.42(m,74.5H)、5.60~6.19(m,6.0H)、6.95~7.72(m,56.4H)
29Si-NMR(溶剤:THF):δ(ppm):-78.1~-76.9(m、8.6Si)、-63.4(s、2.0Si)、-21.3~-17.5(m、6.9Si)、-2.4(s、1.4Si)
粘度=21.7Pa・s
数平均分子量:Mn=1890
重量平均分子量:Mw=2650
n=4.3
m=1.5
【0111】
【0112】
<化合物(2-1)の合成>

化合物(2-1)は、国際公開2011/145638号に記載の方法にて合成した。
【0113】
<化合物(4-1)の合成>

化合物(4-1)は、特許第5880556号公報に記載の方法にて合成した。
【0114】
<実施例1から実施例4、比較例1の調製>
各成分を下表1、2に示す配合組成(重量%)で均一に混合し、白色熱硬化性樹脂組成物を調製した。この白色熱硬化性樹脂組成物を用いて各評価を行った。
【0115】
<実施例および比較例における0.1mm厚の樹脂硬化膜付スライドガラスの作製>
各白色熱硬化性樹脂組成物を厚さ0.1mmのスペーサーを配したスライドガラスに塗布し、80℃にて40分間、120℃にて40分間、その後160℃にて2時間の順で加熱することにより硬化させ、スペーサーを取り除くことでスライドガラス上に30mm×55mm×0.1mm厚の樹脂硬化膜を得た。
【0116】
<反射率評価>
上記硬化膜について、日本分光株式会社製紫外可視分光光度計 V-650および積分球ILV-724を用いて波長450nmにおける光の反射率を測定した。
【0117】
<耐熱試験後の反射率評価>
初期反射率を測定した硬化膜を、200℃に設定したオーブンに入れ、1000時間後に取り出し、日本分光株式会社製紫外可視分光光度計 V-650および積分球ILV-724を用いて波長450nmにおける光の反射率を測定した。
【0118】
<反射率の維持率>
上記初期反射率(波長450nm)/耐熱試験後反射率(波長450nm)から反射率の維持率を算出した。
【0119】
<耐熱クラック性の試験>
前述した0.1mm厚の樹脂硬化膜を250℃のオーブンに入れ、クラックが発生するまでの時間を計測した。
【0120】
併記された数値のうち、括弧書きはシリコーン樹脂の重量に基づく重量%を表す。
【0121】
表1に示すように、比較例1と比較して、本発明の白色熱硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜は、耐熱試験後においても高い反射率を保持し、かつ顕著に優れた耐熱クラック性を有することが分かる。
【0122】
実施例1と同様に実施例2から4を調製し、各種評価を行った(表2)。
【0123】

併記された数値のうち、括弧書きはシリコーン樹脂の重量に基づく重量%を表す。
【0124】
表2に示すように、式(1)で表される化合物として、実施例1とは異なる化合物を用いた場合やフィラーの種類および含有量をかえた場合でも、同様に十分に高い反射率および優れた耐熱クラック性を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は光反射材、絶縁膜、シール材、接着剤などに利用できる。本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、耐熱クラック性試験時や耐熱耐光性試験時にクラックの発生が抑制されるため、LED等の光半導体素子の光反射材として有用である。
【符号の説明】
【0126】
100…光半導体素子、
101…光反射層、
102…はんだバンプ、
103…波長変換層、
104…スペーサー、
105…白色熱硬化性樹脂組成物、
200…光半導体素子搭載用基板、
201…基材、
202…銅箔、
300…光半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5