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特開2024-142787ペレット冷却装置、それを用いた磁性体除去装置、および熱可塑性樹脂ペレットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142787
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ペレット冷却装置、それを用いた磁性体除去装置、および熱可塑性樹脂ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 13/04 20060101AFI20241003BHJP
   B29B 9/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29B13/04
B29B9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055111
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】307003168
【氏名又は名称】ダイカテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田尻 敏之
(72)【発明者】
【氏名】大西 賢治
【テーマコード(参考)】
4F201
【Fターム(参考)】
4F201AC01
4F201AJ08
4F201AR12
4F201BA04
4F201BC02
4F201BC19
4F201BL08
4F201BL26
4F201BL50
4F201BN11
4F201BQ12
4F201BQ22
4F201BQ42
(57)【要約】
【課題】ホットカットされた樹脂ペレットを効率よく冷却すると共に、冷却むらを低減するペレット冷却装置およびそれを用いた磁性体除去装置を提供する。
【解決手段】振動させられることによって樹脂ペレットを所望の移送方向に移送するペレット移送板23と、樹脂ペレットを移送方向R1に移送させるようにペレット移送板23を振動させる振動装置26と、樹脂ペレットを冷却するための空気40をペレット移送板23に形成された貫通溝23aに下から上に向けて流すための気流発生装置27と、を備え、振動装置26及び気流発生装置27の作動により、ペレット移送板23の移送方向R1における上流の一端側に供給された樹脂ペレットがペレット移送板23の移送方向R1に移送されて冷却されると共に移送方向R1における下流の他端側から排出されるペレット冷却装置20であって、貫通溝23aは、移送方向R1に延びると共に、移送方向R1に対し垂直な方向に並んで複数形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動させられることによって樹脂ペレットを所望の移送方向に移送するペレット移送板と、樹脂ペレットを前記移送方向に移送させるように前記ペレット移送板を振動させる振動装置と、前記樹脂ペレットを冷却するための空気を前記ペレット移送板に形成された貫通溝に下から上に向けて流すための気流発生装置と、を備え、
前記振動装置および気流発生装置の作動により、前記ペレット移送板の移送方向における上流の一端側に供給された樹脂ペレットが前記ペレット移送板の移送方向に移送されて冷却されると共に、前記移送方向における下流の他端側から排出されるペレット冷却装置であって、
前記貫通溝は、前記移送方向に延びると共に、前記移送方向に対し垂直な方向に並んで複数形成されているペレット冷却装置。
【請求項2】
前記気流発生装置は、前記ペレット移送板を保持し、前記ペレット移送板の一端側に樹脂ペレットを供給するためのペレット供給口を有すると共に、前記した他端側に樹脂ペレットを排出するためのペレット排出口とを有する基台と、
前記基台に保持された前記ペレット移送板の下部に形成された気流発生領域に配設された給気口と、
前記給気口に接続され、前記給気口から前記基台内へ空気を送り込むための給気用送風機と、を有する、請求項1に記載のペレット冷却装置。
【請求項3】
前記ペレット移送板上において、前記樹脂ペレットの移送方向に交差する方向に0.5mm~5mmの一定の高さの関を1か所以上設置することを特徴とする請求項1記載のペレット冷却装置
【請求項4】
請求項1~3に記載のペレット冷却装置における移送方向の下流側であって、前記ペレット冷却装置によって冷却された樹脂ペレットが排出される位置に配設されたマグネットロールを有する磁性体除去装置。
【請求項5】
熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂を混練して熱可塑性樹脂ペレットを製造する工程と、請求項1~3のいずれかに記載のペレット冷却装置を用いて、熱可塑性樹脂ペレットを所望の移送方向に移送させるペレット冷却工程とを含む、熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂を混練して熱可塑性樹脂ペレットを製造する工程と、請求項1~3のいずれかに記載のペレット冷却装置を用いて、熱可塑性樹脂ペレットを所望の移送方向に移送させるペレット冷却工程と、ペレット冷却装置における移送方向の下流側であって、前記ペレット冷却装置によって冷却された熱可塑性樹脂ペレットが排出される位置に配設されたマグネットロールを有する磁性体除去装置を用いて、所望量の磁性体を含まない熱可塑性樹脂ペレットを選別する工程とを含む、熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット移送板によって移送される樹脂ペレットを冷却するペレット冷却装置、それを用いた磁性体除去装置、および熱可塑性樹脂ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属にかわる高耐熱性のプラスチックの需要が増えている。このような高耐熱性プラスチックスの成形加工原料となる樹脂ペレットを生成する場合、熱可塑性の樹脂材料と添加剤とを押出機で混錬しながら加熱溶融し、押出機の先端に取り付けた多孔ダイから溶融樹脂を紐状の樹脂(以下、「ストランド」という)として押し出し、このストランドを冷却し、ストランド切断装置へ搬送する。次いで、このストランド切断装置において、前記ストランドを連続的に切断して樹脂ペレットを生成する。この際、ペレット断面を鋭利に切断すべく、ストランドの温度を高くした状態で切断するいわゆるホットカットが実施されている。この時の温度は、強化系のエンジニアリングプラスチックスであれば、120℃から170℃の範囲にされる。このストランドをホットカットして樹脂ペレットにした後、必要に応じて選別装置へ供給され、この選別装置によって大きさが規定範囲内の樹脂ペレットが選別されて取り出される。取り出された樹脂ペレットは、その後、磁性体除去装置に送られる。樹脂ペレットには、生産工程で発生した磁性体が含まれる場合があり(磁性体入り樹脂ペレット)、またストランドを成形した後の工程で磁性体そのものが異物として混入する場合もあり、磁性体除去装置によって、樹脂ペレット等を含む集合体から磁性体入り樹脂ペレットや磁性体そのものが除去される。
【0003】
多くの場合、磁性体は鉄元素を含む強磁性体である。磁性体除去装置には、電磁誘導の原理を利用した金属検出器や、マグネット棒を複数備えたマグネットボックス、そして回転するマグネットロール上に樹脂ペレットを送り、その磁力により樹脂ペレットが落下する際の軌道を変えて、磁性体入り樹脂ペレットや磁性体そのものを取り除くマグネットロールセパレーターがある。この中で、最も強磁性体や強磁性体入りペレットを効率的に高精度で最も小さいものまで取り除けるのは、マグネットロールセパレーターである(例えば特許文献1を参照)。このマグネットロールセパレーターの磁石には、一般的に最も強い磁力を有するネオジウム磁石等の希土類磁石が使用される。然しながらこの希土類磁石は熱に弱く、高温環境下で容易に不可逆減磁を起こす。そのため、希土類磁石は110℃以下、好ましくは100℃以下で使用することが必要となる。よって、ホットカットした樹脂ペレットは、マグネットロールセパレーターに投入される前に、ペレット冷却装置によって、マグネットロールセパレーターの希土類磁石において不可逆減磁が生じない程度の温度まで冷却することが望まれる。
【0004】
ここで、従来のペレット冷却装置として、特許文献2がある。このペレット冷却装置は一端に樹脂ペレットが供給され、振動させられることによって前記樹脂ペレットを他端へ移送するものであり、この移送方向と交差する方向に延びる貫通溝が前記移送方向に並んで複数形成されたペレット移送板と、前記樹脂ペレットを前記移送方向に移送させるように前記ペレット移送板を振動させる振動装置と、前記樹脂ペレットを冷却するための空気を前記ペレット移送板の前記貫通溝に下から上に向けて流すための気流発生装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-178516号公報
【特許文献2】特許第5303480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2において提案されているペレット冷却装置では、ペレット移送板に形成された貫通溝が樹脂ペレットの移送方向と交差する方向に並んでいるために、貫通溝に樹脂ペレットが引っ掛かり滞留を引き起こす。それにより、前記貫通溝に滞留した樹脂ペレットの温度が低くなる一方、滞留した樹脂ペレットの上方を別の樹脂ペレットが通過して、ペレット移送板上に十分に滞留せず移送方向に流れてしまう樹脂ペレットも相当数存在し、滞留せずに移送された樹脂ペレットの温度が十分に低下しないまま排出されていた。よって、このようなペレット冷却装置から排出される樹脂ペレットには、低温の樹脂ペレットと高温の樹脂ペレットとが混在するいわゆる冷却むらが存在することになっていた。その結果、ペレット冷却装置の下流側に接続された磁性体除去装置のマグネットロールに、比較的温度の高い樹脂ペレットが継続的に投入されて接触し、長時間の間にその部分の磁力が弱まり、磁性体除去装置における磁性体を含む樹脂ペレットの選別の精度が低下する原因となっていた。
【0007】
本発明の課題は、ホットカットされた樹脂ペレットを効率よく冷却すると共に、冷却むらを低減するペレット冷却装置、それを用いた磁性体除去装置、および熱可塑性樹脂ペレットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、振動させられることによって樹脂ペレットを所望の移送方向に移送するペレット移送板と、樹脂ペレットを前記移送方向に移送させるように前記ペレット移送板を振動させる振動装置と、前記樹脂ペレットを冷却するための空気を前記ペレット移送板に形成された貫通溝に下から上に向けて流すための気流発生装置と、を備え、
前記振動装置及び気流発生装置の作動により、前記ペレット移送板の移送方向における上流の一端側に供給された樹脂ペレットが前記ペレット移送板の移送方向に移送されて冷却されると共に、前記移送方向における下流の他端側から排出されるペレット冷却装置であって、
前記貫通溝は、前記移送方向に延びると共に、前記移送方向に対し垂直な方向に並んで複数形成されているペレット冷却装置が提供される。
【0009】
前記気流発生装置は、前記ペレット移送板を保持し、前記ペレット移送板の一端側に樹脂ペレットを供給するためのペレット供給口を有すると共に、前記した他端側に樹脂ペレットを排出するためのペレット排出口とを有する基台と、
前記基台に保持された前記ペレット移送板の下部に形成された気流発生領域に配設された給気口と、
前記給気口に接続され、前記給気口から前記基台内へ空気を送り込むための給気用送風機と、を有することが好ましい。
また、前記ペレット移送板上において、前記樹脂ペレットの移送方向に交差する方向に0.5mm~5mmの一定の高さの関を1か所以上設置することが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、前記したペレット冷却装置における移送方向の下流側であって、前記ペレット冷却装置によって冷却された樹脂ペレットが排出される位置に配設されたマグネットロールを有する磁性体除去装置が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂を混練して熱可塑性樹脂ペレットを製造する工程と、上記のペレット冷却装置を用いて、熱可塑性樹脂ペレットを所望の移送方向に移送させるペレット冷却工程とを含む、熱可塑性樹脂ペレットの製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂を混練して熱可塑性樹脂ペレットを製造する工程と、上記のペレット冷却装置を用いて、熱可塑性樹脂ペレットを所望の移送方向に移送させるペレット冷却工程と、ペレット冷却装置における移送方向の下流側であって、前記ペレット冷却装置によって冷却された熱可塑性樹脂ペレットが排出される位置に配設されたマグネットロールを有する磁性体除去装置を用いて、所望量の磁性体を含まない熱可塑性樹脂ペレットを選別する工程とを含む、熱可塑性樹脂ペレットの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のペレット冷却装置は、ペレット移送板に形成される貫通溝が、移送方向に延びると共に、前記移送方向に対し垂直な方向に並んで複数形成されていることから、ホットカットされた樹脂ペレットを効率よく冷却することができると共に、冷却むらを低減することができる。
【0014】
また、前記したペレット冷却装置によって冷却された樹脂ペレットが排出される位置にマグネットロールを有する磁性体除去装置が配設されるので、ペレット冷却装置によって樹脂ペレットが均一に効率よく冷却されて、マグネットロールを有するマグネットロールセパレーターに投入されることにより、マグネットロールに採用される磁石の不可逆減磁が生じ選別の精度が低下することが回避される。
【0015】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂ペレット製造方法は、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂を混練して熱可塑性樹脂ペレットを製造する工程と、上記のペレット冷却装置を用いて、熱可塑性樹脂ペレットを所望の移送方向に移送させるペレット冷却工程とを含むことにより、ホットカットされた熱可塑性樹脂ペレットを効率よく冷却することができると共に、冷却むらを低減することができる。
【0016】
また、本発明の熱可塑性樹脂ペレット製造方法は、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂を混練して熱可塑性樹脂ペレットを製造する工程と、上記のペレット冷却装置を用いて、熱可塑性樹脂ペレットを所望の移送方向に移送させるペレット冷却工程と、ペレット冷却装置における移送方向の下流側であって、前記ペレット冷却装置によって冷却された熱可塑性樹脂ペレットが排出される位置に配設されたマグネットロールを有する磁性体除去装置を用いて、所望量の磁性体を含まない熱可塑性樹脂ペレットを選別する工程とを含むことから、熱可塑性樹脂ペレットが均一に効率よく冷却されて、マグネットロールを有する磁性体除去装置に投入されることにより、マグネットロールに採用される磁石の不可逆減磁が生じ選別の精度が低下するという問題が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に基づき構成された実施形態のペレット冷却装置を含むペレット製造システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示すペレット製造システムを構成するペレット冷却装置の全体斜視図である。
図3】(a)は、本実施形態のペレット冷却装置を上方から見た概略平面図であり、(b)は同ペレット冷却装置の概略側面図であり、(c)は同ペレット冷却装置の概略正面図である。
図4】(a)は、本実施形態のペレット冷却装置のペレット移送板を示す概略平面図であり、(b)は、(a)に示すペレット移送板の一部を拡大して示す一部拡大平面図であり、(c)は、(b)に示す一部拡大平面図における断面と共に気流の流れを示す概略断面図である。
図5】磁性体除去装置として機能するマグネットロールセパレーターを図3に示すペレット冷却装置の下流側に配設した態様を示す概略側面図である。
図6】(a)は、図3(a)に示すペレット冷却装置のペレット移送板に関を配設した状態を示す概略平面図であり、(b)は、(a)に示す関が配設された状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に基づいて構成されるペレット冷却装置、それを用いた磁性体除去装置、および熱可塑性樹脂ペレットの製造方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら以下に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することが可能である。
【0019】
図1に示すペレット製造システム10は、押出機11と、ストランド冷却装置12と、ストランド切断装置13と、ペレット形状選別装置14と、冷却機能付き磁性体除去装置15と、収容装置16とを備えている。
【0020】
押出機11は、供給される熱可塑性の樹脂材料と添加剤(例えばガラス繊維)とを混錬して加熱溶融し、図示を省略する多孔ダイからストランド(ひも状樹脂)に成形して押し出す装置である。多孔ダイにおいてストランドを成形する孔の直径は、通常2~5mm、好ましくは3~4mmで設定されるものであり、本実施形態の多孔ダイの孔の直径は3mmである。押出機11の形態は特に限定されないが、例えば、周知の二軸押出機が採用される。押出機11は、樹脂組成物を加熱溶融する図示を省略するヒーターおよび熱電対を備え、加熱溶融された樹脂組成物を多孔ダイから押し出して成形するストランドの温度を所望の温度に調整する。押出機11によって成形されたストランドは、次のストランド冷却装置12に送られる。
【0021】
ストランド冷却装置12は、例えば、図示を省略するガイドローラーを有する水槽で構成される。前記の押出機11から押し出されるストランドを複数のガイドローラーを用いて水槽につけて冷却し、その表面を固化状態にする。ストランド冷却装置12は、前記の水槽に替えて、金網等のネットベルトを用いたベルトコンベアとこのベルトコンベア上に冷却水を散布する散水装置とを備えるものであってもよい。この構成により、押出機11から押し出されるストランドを前記ベルトコンベアに載せて搬送する際に、ストランドに冷却水を散布して、ストランドを冷却し表面を固化状態にすることができる。ストランド冷却装置12によって冷却されたストランドは、次のストランド切断装置13に送られる。
【0022】
ストランド切断装置13は、例えば、ストランド冷却装置12から送られてくるストランドを、図示を省略する上下の2本のロールからなる引取りロールで引き取って、高速回転する回転刃によってストランドを所定長さに連続切断し、例えば、長さと直径が3mmの円柱状の樹脂ペレットを生成する。前記したストランドの連続切断は、ストランドを所望の温度に維持したままでいわゆるホットカットで実施される。本実施形態のペレット製造システム10においては、前記した如く生成された樹脂ペレットを、次のペレット形状選別装置14に搬送する。このペレット形状選別装置14によって、許容される樹脂ペレットのサイズを超える長いペレットや、欠けペレット等が取り除かれ、大きさの均一な長さと直径が3mmの円柱状の樹脂ペレットを、後述する冷却機能付き磁性体除去装置15に搬送する。以上により、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂を混練して熱可塑性樹脂ペレットを製造する工程が完了する。なお、ペレット形状選別装置14は任意に設定されるものであって、ペレット製造システム10において必ずしも必須の構成ではなく、省略されてもよい。
【0023】
本実施形態の冷却機能付き磁性体除去装置15は、ストランド切断装置13によって切断された樹脂ペレットを冷却するペレット冷却装置20と、磁性体除去装置として機能するマグネットロールセパレーター30とを備える。ペレット冷却装置20によって冷却された樹脂ペレットは、マグネットロールセパレーター30に搬送されて、磁性体を含む樹脂ペレットおよび磁性体そのものが除かれて、磁性体を含まない樹脂ペレットが選別される。磁性体の多くは鉄を含む強磁性体であり、それを取り除くために、本実施形態のペレット製造システム10には、マグネットロールセパレーター30が配設され、樹脂ペレットに混入した鉄が微小なサイズ、例えば直径が200μm程度の鉄粉であっても、その樹脂ペレットを取り除くことが可能である。
【0024】
冷却機能付き磁性体除去装置15に送られた樹脂ペレットは、前記したマグネットロールセパレーター30によって、磁性体を含まない樹脂ペレットと、磁性体を含む樹脂ペレット(製造途中に混入した磁性体そのものも含む)とに振り分けられて、収容装置16に収容される。通常、分けられた磁性体を含まない樹脂ペレットはこの後製品タンクに輸送される。
【0025】
次に、図2、3を参照しながら、本実施形態の冷却機能付き磁性体除去装置15を構成するペレット冷却装置20、および熱可塑性樹脂ペレットをペレット冷却装置20によって実施される所望の移送方向に移送させるペレット冷却工程について、より具体的に説明する。図2は、ペレット冷却装置20の全体斜視図であり、図3(a)は、ペレット冷却装置20を上方から見た概略平面図であり、図3(b)はペレット冷却装置20の概略側面図であり、図3(c)はペレット冷却装置20の概略正面図である。
【0026】
ペレット冷却装置20は、支持台21上に設置され、振動させられることによって樹脂ペレットを図中矢印R1で示す移送方向に移送するペレット移送板23と、樹脂ペレットを移送方向R1に移送させるようにペレット移送板23を振動させる振動装置26と、樹脂ペレットを冷却するための空気40をペレット移送板23に形成された貫通溝23aに下から上に向けて流すための気流発生装置27とを備えている。ペレット移送板23に形成された貫通溝23aは、移送方向R1に延びると共に、移送方向R1に対し垂直な方向に並んで複数形成されている。
【0027】
図2に加え図3からも理解されるように、気流発生装置27は、ペレット移送板23を保持し、ペレット移送板23の上流の一端側に樹脂ペレットを供給するためのペレット供給口24bを有すると共にペレット移送板23の下流の他端側に樹脂ペレットを排出するためのペレット排出口25を有する基台27aと、基台27aに保持されたペレット移送板23の下部の領域、すなわちペレット移送板23と基台27aの下面および側面とによって囲まれた気流発生領域27bと(図3(b)を参照)、気流発生領域27bに臨むように配設された給気口27cと、給気口27cに接続され給気口27cを介して気流発生領域27bへ空気40を送り込むための給気用送風機27dと、を有する。
【0028】
図示の実施形態の給気口27cは、基台27aの後背面に2つ配設されており、給気用送風機27dから給気口27cに送られた空気40は、前記した基台27a内の気流発生領域27bを通過して、図3(b)に示すように、ペレット移送板23の貫通溝23aに下から上に向けて流される。なお。前記した給気口27cを配設する位置や数は、上記した形態に限定されず、基台27aの下部に形成される気流発生領域27bに空気40を導入することができる位置であれば、いずれの位置であってよい。
【0029】
図3(a)、(b)から理解されるように、ペレット供給口24bは、前記したストランド切断装置13から搬送された高温の樹脂ペレットを、ペレット移送板23の移送方向R1における上流の一端側に供給するものであり、本実施形態では、樹脂ペレット投入口24aを備えたホッパー24のペレット排出口によって形成されている。また、図3(c)に示すように、ペレット供給口24b(ホッパー24のペレット排出口)とペレット移送板23との間には、樹脂ペレットが移送方向R1に流れるのに十分な隙間が形成されており、本実施形態では、前記隙間は10mmで設定されている。
【0030】
振動装置26は、例えば、周知の電磁フィーダーが採用される。電磁フィーダーは、振動を、電磁コイルを備えた電磁石で発生させる。ペレット移送板23を保持する基台27aと振動装置26とは、図3(b)に矢印R2で示す振動方向に直角な方向に配設された図示を省略する板ばねで連結されている。基台27aは、半波脈動電圧により励磁された図示を省略する電磁コイルに一旦吸引され、吸引力がなくなると前記した板ばねによって振動方向R2に反発復元することによって振動させられる。このような振動が繰り返されることで、ペレット供給口24bから投入された樹脂ペレットは、基台27aと共に振動するペレット移送板23上においてペレット排出口25側に移送される。ペレット排出口25には、基台27aの下部に気流発生領域27bが配設されていることによる段差を解消する傾斜部25aが形成されている。なお、振動装置26の形態はこれに限定されず、例えば、ゴムスプリングフィーダーであってもよい。
【0031】
上記したペレット移送板23について、さらに具体的に説明する。図4(a)には、ペレット移送板23を上方から見た平面図を示し、図4(b)には、その一部(図4(a)において破線で囲まれた領域A)を拡大した一部拡大平面図を示し、図4(c)には、図4(b)のB-B断面を示している。図示のように、ペレット移送板23には、樹脂ペレットの移送方向R1に沿う方向にスリット状の貫通溝23aが形成されている。この貫通溝23aは、移送方向R1に対し垂直な方向に並んで複数形成され、ペレット移送板23の全幅に渡って形成されている。また、本実施形態の貫通溝23aは、図4(c)に示すように、隣り合う貫通溝23a間の断面形状が楔形状(逆三角形)になっている。このようなペレット移送板23として周知のウェッジワイヤースクリーンを用いることができる。隣り合う貫通溝23a間の断面形状が楔形状(逆三角形)になっていることにより、前記した給気用送風機27dから送られ、気流発生領域27bを介して供給される冷却用の空気40が、貫通溝23aを下から上に通る時の空気抵抗を低減し、風速を落とさずに貫通溝23aを通過して、冷却効率を上げることができる。更に樹脂ペレットから発生する微粉が貫通溝23aに詰まることも抑制できる。そして楔形を成していることにより、ペレット移送板23が上からの力を受けた場合でも変形することが抑制される。なお、貫通溝23aの溝幅は、樹脂ペレットより小さい所定の寸法であり、樹脂ペレットが貫通溝23aを通過して落下ない寸法、より具体的には、樹脂ペレットの直径および高さのいずれの寸法よりも小さい寸法で設定される。本実施形態の樹脂ペレットは、直径3mm、高さ3mmの円柱状であるのに対し、ペレット移送板23に形成される貫通溝23aの幅は0.5mmである。尚、給気用送風機27dからの送風量は、貫通溝23aが形成されたペレット移送板23の面積1000cm当たりに3~30m/分の範囲で供給されることが好ましい。3m/分以上であれば、樹脂ペレットを十分に冷却できる。また、30m/分以下であればペレットが舞い上がり基台27aから飛び出る可能性を低減できる。より好ましい範囲は5~25m/分である。更により好ましくは7~20m/分である。上記したように、ペレット冷却装置20によって、熱可塑性樹脂ペレットを製造する工程によって得られた熱可塑性の樹脂ペレットを、所望の移送方向に移送させて冷却するペレット冷却工程が実施される。
【0032】
次いで、図5を参照しながら、前記したペレット冷却装置20に投入された樹脂ペレット2が排出されるペレット排出口25に配設された、磁性体除去装置として機能するマグネットロールセパレーター30について説明する。
【0033】
図示のマグネットロールセパレーター30は、図中R3で示す移送方向の下流側(図中左方側)に位置する回転可能なマグネットロール31と、移送方向R3の上流側(図中右方側)に位置する回転可能なサブロール32と、これらのマグネットロール31とサブロール32との周りに巻装される樹脂製の搬送用の移送ベルト33と、を備えている。前記したマグネットロール31は、外周面にネオジウム磁石が積層されたものであり、中心軸31aには、図示しない駆動モータが連結され、マグネットロール31を予め設定された回転数で、図中矢印R4で示す方向に回転させる。サブロール32は一般の従動ローラを用いることができる。移送ベルト33は樹脂製であり、例えば、ウレタン、ポリエステルで形成されており、永久磁石の磁界を遮蔽しないものを使用する。
【0034】
マグネットロールセパレーター30のマグネットロール31の前方には、収容装置16が配設されている。収容装置16は、マグネットロール31の前方側(図中左方側)に間隔を空けて配設されている分離板16aと、分離板16aの前方側に配置される非磁性ペレット収容部16bと、分離板16aの後方側(図中右方側)に配置される磁性ペレット収容部16cとを備えている。分離板16aは、平板状であって、移送ベルト33の移送方向R3に対して、分離板16aの面が対向するように傾斜して配置され、上端縁が移送ベルト33の幅方向へ向けられ、水平方向へ延在するように配置される。なお、図示の実施形態では、説明の都合上、マグネットロール31、サブロール32、図示を省略する駆動モータ、収容装置16等を支持する支持台が省略されている。
【0035】
前記したペレット冷却装置20によって冷却され移送された樹脂ペレット2は、ペレット排出口25からマグネットロールセパレーター30の移送ベルト33の上流側に投入される。マグネットロールセパレーター30においては、前記した駆動モータによってマグネットロール31がR4で示す方向に回転することで、移送ベルト33が移動し、マグネットロールセパレーター30の移送方向R3に樹脂ペレット2が移送され、下流側のマグネットロール31に到達する。樹脂ペレット2は、磁性体を含む磁性樹脂ペレット2aと、磁性体を含まない非磁性樹脂ペレット2bとを含み、以下のように選別される。
【0036】
マグネットロール31の磁力は移送ベルト33を貫通し移送ベルト33の上に載った樹脂ペレット2に及び、そこに磁性体が含まれていれば、前記磁性体に強い引力が働く。移送ベルト33によって移送されてマグネットロール31から磁性体を含まない非磁性樹脂ペレット2bが離れる場合、非磁性樹脂ペレット2bは、図示のように、通常の運動方程式にしたがい放物線軌道を描き遠くに投げ出される。これに対し、磁性体を含む磁性樹脂ペレット2aは、マグネットロール31の作用で、引力(磁力)が働いて自重によって落下するまでマグネットロール31に吸着することから、落下する軌道が、非磁性樹脂ペレット2bと比較し、手前側(図中右側)に変化する。前記したように、収容装置16には、分離板16aが設置されていて、引力(磁力)が働いて手前側に落下するように軌道が変更された磁性樹脂ペレット2aは、分離板16aに衝突する等して、手前側の磁性ペレット収容部16cに捕捉される。他方、引力が働かず、遠くに投げ出された非磁性樹脂ペレット2bは、非磁性ペレット収容部16bに捕捉される。なお、樹脂ペレット2の製造工程において、樹脂ペレット2の集合体の中に混入した磁性体も、磁性樹脂ペレット2aと同様にして、磁性ペレット収容部16cに捕捉される。上記したように、マグネットロール31を有し磁性体除去装置として機能するマグネットロールセパレーター30を用いて、所望量の磁性体を含まない熱可塑性の樹脂ペレット2を選別する工程が実施され、これにより磁性のない良品の非磁性樹脂ペレット2bのみを選別して、非磁性ペレット収容部16bに収容することができる。
【0037】
さらに、本発明は、上記した実施形態に限定されず、前記したペレット冷却装置20に替えて、図6を参照しながら以下に説明する関(第一の関28a、第二の関28b)が設置されたペレット冷却装置20’を採用するようにしてもよい。なお、図6(a)、(b)に基づき説明するペレット冷却装置20’は、図3(a)、(b)に基づき説明したペレット冷却装置20に対して、ペレット移送板23の表面に、図示の第一の関28a、第二の関28bを配設した点のみ相違しており、その他の同一の構成については同一の符号を付すと共に、詳細な説明については省略する。
【0038】
図6(a)、(b)に示すペレット冷却装置20’では、第一の関28aは、ペレット移送板23の移送方向R1で示す長手方向の中央よりも上流側であって、ペレット供給口24bよりも下流側に設置され、ペレット移送板23の移送方向R1に垂直な方向(幅方向)全体に渡る寸法で設置される。第一の関28aは、例えば、2mmの高さを有する断面が矩形形状の棒状部材である。第二の関28bは、第一の関28aと同様の形態であり、ペレット移送板23の長手方向の中央または中央よりも下流側において、移送方向R1に垂直な方向(幅方向)全体に渡る寸法で設置される。第一の関28a、第二の関28bの高さは、0.5mm~5mmの範囲で設定されることが好ましく、より好ましくは、投入される樹脂ペレット2の寸法(本実施形態の樹脂ペレットは円柱状であって直径3mm、高さ3mm)よりも小さい、例えば2mmに設定されることが好ましい。
【0039】
樹脂ペレットは、ペレット冷却装置20’のペレット供給口24bからペレット移送板23の上流側の一端に供給され、振動装置26の作用により、移送方向R1に移送される。ここで、前記したように、ペレット移送板23の上流側には、第一の関28aが配設されていることから、ペレット供給口24bから供給された樹脂ペレットは、第一の関28aにおいて矢印R5で示すように、ペレット移送板23の幅方向に均一に広がる。そして、幅方向に広がった樹脂ペレットは、その後、ペレット移送板23の全面を覆うように、矢印R6で示すように流れる。
【0040】
さらに、ペレット移送板23の長手方向の中央に第二の関28bが配設されており、ペレット移送板23上を樹脂ペレットが移送される途中において、ペレット移送板23の幅方向において樹脂ペレットの片寄りが生じた場合でも、この第二の関28bの作用により、樹脂ペレットがペレット移送板23の幅方向に均一に広げられる。この結果、ペレット移送板23の貫通溝23aにおいて下から上に通過する冷却用の空気40が、ペレット移送板23によって移送される樹脂ペレットに均一に当たると共に、マグネットロールセパレーター30に投入される樹脂ペレットは、マグネットロールセパレーター30の移送ベルト33の幅方向に均一に広げられて搬送される。なお、前記したペレット冷却装置20’では、ペレット移送板23上に、第一の関28aと第二の関28bとを設置した例を示したが、本発明は、これに限定されるものではない。上記した第一の関28aのみを配設することによっても、ペレット移送板23の幅方向に樹脂ペレットを均一に広げ、樹脂ペレットを均一に冷却する効果を奏することができる。また、上記したように、2つの関(第一の関28a、第二の関28b)を設置するのに加え、それ以上の関を配設することも可能であり、例えば、ペレット移送板23の下流側端部であって、ペレット排出口25の直上流に第三の関(図示はしていない)を設置するようにしてもよい。
【0041】
本実施形態のペレット製造システム10は、概ね前記したとおりの構成を備えており、前記した冷却機能付き磁性体除去装置15の効果を検証すべく、以下に説明する実験を行った。以下に説明する実験で使用したペレット冷却装置20、20’のペレット移送板23は、幅が250mm、長さが500mm、貫通溝23aの幅が0.5mm、隣り合う貫通溝23aと貫通溝23aとの間隔が1.5mmのものを使用した。振動装置26としては、日東電気エンジニアリング社製FA-30Bを使用した。また、樹脂ペレットの温度測定はペレット排出口25で行い、赤外線温度計CHINO FLIR CPA-E54を使用し、樹脂ペレットの平均温度と温度分布幅を画像から求めた。さらに、給気用送風機27dは、は昭和電機社製低騒音ブロワーのAH-H04を使用した。
【0042】
実験に使用した樹脂ペレットは、以下のX、Y、Zであり、いずれも黒色であって、直径3mm、長さ3mmの円柱状である。
Xペレット:ガラス繊維55%を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂ペレット
(ポリブチレンテレフタレート樹脂は、三菱エンジニアリングプラスチックス社製「5008」を使用した)
Yペレット:ガラス繊維50%を含有するポリカーボネート樹脂ペレット
(ポリカーボネート樹脂は、三菱エンジニアリングプラスチックス社製「S-3000」を使用した)
Zペレット:ガラス繊維50%を含有するMXD6ナイロン樹脂ペレット
(MXD6ナイロンは、三菱ガス化学社製、「MXナイロン#6000」を使用した)
【0043】
[実施例1]
Xペレットを140℃の乾燥機に2時間入れ、140℃に温めた。ペレット冷却装置20の給気口27cには、約20℃の空気を、給気用送風機27dにより12m/分の空気供給量で供給した。ペレット移送板23の貫通溝23aは、移送方向R1に延びると共に、移送方向R1に対し垂直な方向に並んで複数形成されているように設置した。そして、140℃に温めたXペレットを400kg/hで、ペレット冷却装置20のホッパー24に供給し、ペレット供給口24bからペレット移送板23の上流側の一端に供給した。振動装置26の出力は20Wとした。ペレット移送板23によって移送され、ペレット冷却装置20のペレット排出口25から出てきた樹脂ペレットの平均温度は95℃であり、温度分布は88℃~105℃の範囲であって、17℃の温度分布があった。
[実施例2]
Xペレットの代わりにYペレットを使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。ペレット冷却装置20のペレット排出口25から出てきた樹脂ペレットの平均温度は98℃であり、温度分布は90℃~109℃の範囲であって、19℃の温度分布があった。
[実施例3]
Xペレットの代わりにZペレットを使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。ペレット冷却装置20のペレット排出口25から出てきた樹脂ペレットの平均温度は97℃であり、温度分布は91℃~109℃の範囲であって、18℃の温度分布があった。
[実施例4]
ペレット移送板23の上流の一端から15cmの所に、ペレット移送方向R1に対し垂直な方向に前記した第一の関28aを設置したペレット冷却装置20’を使用し、それ以外は実施例1と同様に実験を行った。ペレット冷却装置20のペレット排出口25から出てきた樹脂ペレットの平均温度は86℃であり、温度分布は81℃~96℃の範囲であって、15℃の温度分布であった。
【0044】
[比較例1]
給気用送風機27dを停止した以外は実施例1と同様に実験した。ペレット冷却装置20のペレット排出口25から出てきた樹脂ペレットの平均温度は131℃であり、温度分布は125℃~136℃の範囲であって、11℃の温度分布であった。
[比較例2]
貫通溝23aを樹脂ペレットの移送方向に垂直になるように設置した以外は実施例1と同様に実験を行った。ペレット冷却装置20のペレット排出口25から出てきた樹脂の平均温度は102℃であり、温度分布は79℃~121℃の範囲であって、32℃の温度分布があった。
[比較例3]
給気用送風機27dを停止した以外は、実施例2と同様に実験を行った。ペレット冷却装置20のペレット排出口25から出てきた樹脂ペレットの平均温度は133℃であり、温度分布は126℃~137℃の範囲であって、11℃の温度分布であった。
[比較例4]
給気用送風機27dを停止した以外は、実施例3と同様に実験を行った。ペレット冷却装置20のペレット排出口25から出てきた樹脂ペレットの平均温度は132℃であり、温度分布は124℃~137℃の範囲であって、13℃の温度分布であった。
【0045】
以上の結果を以下の表1に示す。
上記した実験の総合判定を、以下のような基準により行い、表1に記載した。
<平均温度判定:冷却後ペレットの平均温度に基づき判定>
90℃以下 ◎
90~100℃ 〇
100~110℃ △
100℃以上 ×
<温度分布判定:冷却後ペレットの温度分布幅に基づき判定>
20℃未満 〇
20℃以上 ×
<総合判定>
上記のいずれも△以上 〇
いずれか一方が× ×
【0046】
【表1】
【0047】
上記した実験結果(表1も合わせて参照)から確認されるように、実施例1~3では、ペレット冷却装置20のペレット排出口25から出てきた樹脂ペレットの平均温度が、いずれも100℃以下(判定:〇)で、温度分布が20℃未満(判定:〇)になるように均一に冷却され、総合判定が〇となった。これに対し、比較例1~4では、樹脂ペレットの平均温度判定、又は温度分布判定のいずれかが×となってしまい、総合判定が×となった。特に着目すべきは、比較例2であり、ペレット移送板23の貫通溝23aを樹脂ペレットの移送方向に垂直になるように設置したことにより、貫通溝23aにおいて樹脂ペレットが滞留したことで樹脂ペレットが均一に冷却されず、平均温度が100℃以下にならなかった。また、実施例1に比べ温度分布の範囲が広く、一部の樹脂ペレットが高温(121℃)の状態で排出された。実施例1~3のように、ペレット移送板23の貫通溝23aが移送方向R1に延びると共に、移送方向R1に対し垂直な方向に並んで複数形成されていることにより、ペレット冷却装置20によって樹脂ペレットが均一に効率よく冷却されたことが確認され、マグネットロール31を有するマグネットロールセパレーター30に投入された場合において、不可逆減磁が生じることが回避される。また、ペレット排出口25から出てきた樹脂ペレットの平均温度が、いずれも100℃以下(判定:〇)となっていることから、耐熱性が高くない移送ベルト33が劣化したり、継ぎ目部が剥がれたりすることも回避される。
【0048】
また、実施例4では、第一の関28aを備えたペレット冷却装置20’を使用することで、ペレット排出口25から出てきた樹脂ペレットの平均温度が90℃以下(判定:◎)となり、さらに、実施例1~3に比べ、温度分布もより狭い範囲(81℃~96℃の範囲であって、15℃の温度分布であった(判定:〇))となり、総合判定が〇となった。これにより、実施例1~3と比べ、マグネットロール31を有するマグネットロールセパレーター30において不可逆減磁が生じることがより確実に回避される。これは、ペレット移送板23によって滞留することなく樹脂ペレットが移送されると共に、第一の関28aが配設されていることにより、樹脂ペレットがペレット移送板23の幅方向に均一に広がり、ペレット移送板23の貫通溝23aを下から上に通る空気によって効率よく冷却されたからである。
【0049】
また、マグネットロールセパレーター30のマグネットロール31は、ペレット移送板23の幅(250mm)よりも大きい幅寸法(700mm以下)で形成される。樹脂ペレットが幅方向の1か所に集中すると、樹脂ペレットが重なって層を形成し、上に重なった樹脂ペレットが受ける磁力は弱まり、磁性体を含む樹脂ペレットの選別力が低下する。これに対し、実施例4のように、第一の関28aが配設されることにより、マグネットロールセパレーター30に対して樹脂ペレットを多層化せずにばらして、幅方向において均一に供給することができ、磁性体を含む樹脂ペレットの選別力がより確実に確保される。
【0050】
本発明のペレット冷却装置20は、上記した実施形態に限定されない。前記のペレット冷却装置20およびペレット冷却装置20’は、基台27aの上方が開放されているが、基台27aの上方、すなわちペレット移送板23が保持されている上側を閉塞する屋根部材を配設して基台27aを略筐体で構成してもよい。略筐体で構成した基台27aにペレット供給口24bと、ペレット排出口25とを配設すると共に、前記屋根部材に送風機を配設して排気ダクトを形成し、給気用送風機27dから供給されペレット移送板23の貫通溝23aを通過した空気40を、図示を省略するエアフィルターを介して外部に放出するようにしてもよい。
【0051】
なお、本発明のペレット冷却装置に適用される熱可塑性樹脂は、上記した実施例、比較例に使用された樹脂に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD等のポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、また、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂がいずれも使用できる。これらの樹脂は単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。このような熱可塑性樹脂の中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等のエンジニアリングプラスチックスと称される熱可塑性樹脂は、押出機での溶融混練温度が高いため冷却までの温度差が大きく、本発明の効果が大きいので特に好ましい。
【0052】
上記した実施例、比較例を示す実験では、ガラス繊維を添加剤として含む強化系樹脂ペレットを使用したが、本発明は、ガラス繊維を含まない非強化のペレットに対しても同様の効果を奏する。また、本発明に基づき構成されるペレット冷却装置によって冷却される樹脂ペレットは、ガラス繊維以外の他の強化材を含んでいても構わない。ガラス繊維以外のその他の強化材とは、力学的特性、具体的にはペレットを成形することによって得られた成形品の力学的特性を高めることが可能な物質である。強化材の形状は特に限定されず、例えば、繊維状であってもよく、粒状であってもよい。ガラス繊維以外の強化材は、特に限定されず、例えば、ガラスフレーク、ガラスビーズ、粉末状ガラス(ミルドファイバー)、針状ワラストナイト、マイカ、タルク、未焼成クレー、ウィスカ(例えばチタン酸カリウィスカ)、酸化チタン、炭素繊維、セラミック繊維、シリカ、アルミナ、カオリン、石英、グラファイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、金属粉末などを挙げることができる。中でも、マイカ、タルクのような無機強化材が好ましい。強化材は、1種のみを単独使用してもよく、数種を組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
2:樹脂ペレット
2a:磁性樹脂ペレット
2b:非磁性樹脂ペレット
10:ペレット製造システム
11:押出機
12:ストランド冷却装置
13:ストランド切断装置
14:ペレット形状選別装置
15:冷却機能付き磁性体除去装置
16:収容装置
16a:分離板
16b:非磁性ペレット収容部
16c:磁性ペレット収容部
20:ペレット冷却装置
21:支持台
23:ペレット移送板
23a:貫通溝
24:ホッパー
24a:樹脂ペレット投入口
24b:ペレット供給口
25:ペレット排出口
25a:傾斜部
26:振動装置
27:気流発生装置
27a:基台
27b:気流発生領域
27c:給気口
27d:給気用送風機
27e:分岐部材
28a:第一の関
28b:第二の関
30:マグネットロールセパレーター(磁性体除去装置)
31:マグネットロール
32:サブロール
33:移送ベルト
40:空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6