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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142811
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ハーネスクリップ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20241003BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20241003BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02G3/30
F16B2/08 B
F16B19/00 E
F16B19/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055149
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】早川 佳希
(72)【発明者】
【氏名】石丸 健太
【テーマコード(参考)】
3J022
3J036
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA15
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC14
3J022EC22
3J022FB04
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA16
3J022GB43
3J022GB45
3J022GB56
3J036AA03
3J036DA03
3J036DA06
3J036DA14
3J036DB04
5G363BA02
5G363DA13
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減できるハーネスクリップを提供する。
【解決手段】本実施形態に係るハーネスクリップ1は、ワイヤーハーネスWを保持する保持部2と、保持部2をボディパネルPに固定できる固定部3とを有している。そして、保持部2と固定部3とが相対的に回転する方向を回転方向とし、保持部2と固定部3とを回転方向に回転自在に連結する連結部4と、保持部2と固定部3との回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制する規制部5とが備えられている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを保持する保持部と、
前記保持部を固定対象に固定できる固定部とを有するハーネスクリップであって、
前記保持部と前記固定部とが相対的に回転する方向を回転方向とし、
前記保持部と前記固定部とを前記回転方向に回転自在に連結する連結部と、
前記保持部と前記固定部との前記回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制する規制部とが備えられた
ハーネスクリップ。
【請求項2】
前記連結部は、
前記保持部及び前記固定部の一方に設けられた軸部と、
前記保持部及び前記固定部の他方に設けられた穴部とを有しており、
前記軸部と前記穴部との嵌合によって中心軸回りの前記回転方向に回転自在に連結した
請求項1に記載のハーネスクリップ。
【請求項3】
前記軸部が球形状を有し、
前記軸部と前記穴部との嵌合によって中心点周りの前記回転方向に回転自在に連結した
請求項2に記載のハーネスクリップ。
【請求項4】
前記軸部及び前記穴部の一方に係止部が設けられ、
前記軸部及び前記穴部の他方に前記係止部と係止する被係止部が設けられた
請求項2又は請求項3に記載のハーネスクリップ。
【請求項5】
前記規制部は、
前記軸部及び前記穴部の一方の径方向位置に設けられた係合部と、
前記軸部及び前記穴部の他方の径方向位置に設けられた被係合部とを有しており、
前記係合部と前記被係合部との係合によって前記回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制した
請求項1に記載のハーネスクリップ。
【請求項6】
前記係合部が凸形状であり、
前記被係合部が前記凸形状を収容する凹形状であり、
前記凸形状の外側面と前記凹形状の内側面との当接によって前記回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制した
請求項5に記載のハーネスクリップ。
【請求項7】
前記係合部が凸形状であり、
前記被係合部が前記凸形状から前記回転方向に位置する凸形状であり、
前記凸形状の外側面と前記凸形状の外側面との当接によって前記回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制した
請求項5に記載のハーネスクリップ。
【請求項8】
前記規制部が前記連結部を中心とする所定角度ごとに配置された
請求項6又は請求項7に記載のハーネスクリップ。
【請求項9】
前記軸部と前記穴部を接合した状態から分断可能とする分断部が備えられた
請求項2又は請求項3に記載のハーネスクリップ。
【請求項10】
前記軸部及び前記穴部の少なくとも一方に窪み部が形成され、
前記窪み部に充填された接着剤によって前記分断部が構成された
請求項9に記載のハーネスクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスを保持するとともに固定対象に固定できるハーネスクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワイヤーハーネスを保持するとともに固定対象に固定できるハーネスクリップが公知である。かかるハーネスクリップには、ワイヤーハーネスを保持する保持部と固定対象に固定できる固定部とが備えられている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、自動車においては、ボディからドアやスライドシート等の可動構造物に対して給電を行うべく、ワイヤーハーネスが架け渡されている。このような構成において、可動構造物を可動すると、ワイヤーハーネスにおけるハーネスクリップによって保持された渡り部分に屈曲が生じ、局所的な負荷が作用することとなる。そこで、ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減できるハーネスクリップが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-160595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減できるハーネスクリップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、ワイヤーハーネスを保持する保持部と、前記保持部を固定対象に固定できる固定部とを有するハーネスクリップであって、前記保持部と前記固定部とが相対的に回転する方向を回転方向とし、前記保持部と前記固定部とを前記回転方向に回転自在に連結する連結部と、前記保持部と前記固定部との前記回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制する規制部とが備えられたことを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。
詳述すると、本願発明に係るハーネスクリップは、保持部と固定部とを回転方向に回転自在に連結する連結部と、保持部と固定部との回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制する規制部とが備えられている。このような構成によれば、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスが変形しても、ハーネスクリップにおける保持部と固定部とが相対的に回転自在であるので、ハーネスクリップによって保持された渡り部分の屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。また、回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制しているため、ハーネスクリップから延びるワイヤーハーネスの延伸方向が適度に拘束されることとなる。そのため、ワイヤーハーネスを配索経路に沿って配策する際に、配索経路から大きくズレないので、ワイヤーハーネスの配索作業が容易となる。
【0008】
この発明の態様として、前記連結部は、前記保持部及び前記固定部の一方に設けられた軸部と、前記保持部及び前記固定部の他方に設けられた穴部とを有しており、前記軸部と前記穴部との嵌合によって中心軸回りの前記回転方向に回転自在に連結してもよい。
なお、本発明における中心軸回りの回転方向とは、軸部の中心軸を中心とした回転方向をいう。
【0009】
この発明により、保持部と固定部とが中心軸回りの回転方向に回転自在となる。したがって、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスが変形しても、保持部と固定部とが相対的に中心軸回りに回転自在であるので、ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。
【0010】
またこの発明の態様として、前記軸部が球形状を有し、前記軸部と前記穴部との嵌合によって中心点周りの前記回転方向に回転自在に連結してもよい。
なお、本発明における中心点周りの回転方向とは、球形状の中心点を中心とした回転方向をいい、具体的には、中心軸回りの回転方向のほか、かかる中心軸に対して傾倒する方向の回転方向をも含んだ意味である。
【0011】
この発明により、保持部と固定部とが中心点回りの回転方向に回転自在となる。したがって、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスが変形しても、保持部と固定部とが相対的に中心点周りに回転自在であるので、ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記軸部及び前記穴部の一方に係止部が設けられ、前記軸部及び前記穴部の他方に前記係止部と係止する被係止部が設けられてもよい。
なお、本発明における係止部と被係止部とは、互いが引っ掛かり合う形状を全て含んだ意味である。
【0013】
この発明により、保持部と固定部とが確実に連結されることとなる。したがって、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスが変形し、保持部と固定部との離間方向に大きな荷重が作用したとしても、これらが分離してしまうことを防止できる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記規制部は、前記軸部及び前記穴部の一方の径方向位置に設けられた係合部と、前記軸部及び前記穴部の他方の径方向位置に設けられた被係合部とを有しており、前記係合部と前記被係合部との係合によって前記回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制してもよい。
【0015】
この発明により、ハーネスクリップから延びるワイヤーハーネスの延伸方向がより適度に、かつ確実に拘束されることとなる。したがって、ワイヤーハーネスを配索経路に沿って配策する際に、配索経路から大きくズレないので、ワイヤーハーネスの配索作業がより容易となる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記係合部が凸形状であり、前記被係合部が前記凸形状を収容する凹形状であり、前記凸形状の外側面と前記凹形状の内側面との当接によって前記回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制してもよい。
【0017】
この発明により、凸形状の外側面と凹形状の内側面との当接によって可動角度が確実に規制される。したがって、簡素な構成でありながら、ハーネスクリップから延びるワイヤーハーネスの延伸方向がより適度に拘束されることとなる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記係合部が凸形状であり、前記被係合部が前記凸形状から前記回転方向に位置する凸形状であり、前記凸形状の外側面と前記凸形状の外側面との当接によって前記回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制してもよい。
【0019】
この発明により、凸形状の外側面と凸形状の外側面との当接によって可動角度が確実に規制される。したがって、簡素な構成でありながら、ハーネスクリップから延びるワイヤーハーネスの延伸方向がより適度に拘束されることとなる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記規制部が前記連結部を中心とする所定角度ごとに配置されてもよい。
この発明により、複数の規制部によって可動角度が規制される。したがって、回転方向に大きな荷重が作用したとしても、ハーネスクリップから延びるワイヤーハーネスの延伸方向がより適度、かつ確実に拘束されることとなる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記軸部と前記穴部を接合した状態から分断可能とする分断部が備えられてもよい。
この発明により、軸部と穴部を接合した状態においては、ハーネスクリップから延びるワイヤーハーネスの延伸方向が完全に拘束されることとなる。そのため、ワイヤーハーネスを配索経路に沿って配策する際に、配索経路から大きくズレないので、ワイヤーハーネスの配索作業が容易となる。他方で、分断部を分断することにより、ハーネスクリップにおける保持部と固定部とが相対的に回転自在になるので、ハーネスクリップによって保持された渡り部分の屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記軸部及び前記穴部の少なくとも一方に窪み部が形成され、前記窪み部に充填された接着剤によって前記分断部が構成されてもよい。
この発明により、簡素な構成でありながら、軸部と穴部を接合した状態にできる。また、所定の荷重を加えて保持部と固定部とを相対的に回転させるだけで、接着剤を剥離させて分断部を分断することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本願発明は、ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減できるハーネスクリップを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ハーネスクリップの斜視図。
図2】ハーネスクリップの分解斜視図。
図3】保持部の斜視図。
図4】保持部の正面図と底面図。
図5】固定部の斜視図。
図6】固定部の平面図と側面図。
図7図1におけるA-A断面図。
図8図1におけるB-B断面図。
図9】保持部と固定部の可動態様を示す説明図。
図10】他の実施形態に係るハーネスクリップの分解斜視図。
図11】保持部の斜視図と底面図。
図12】固定部の斜視図と平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を図面に基づいて詳述する。
図1はハーネスクリップ1の斜視図である。図2はハーネスクリップ1の分解斜視図である。図3は保持部2の斜視図であり、図4は保持部2の正面図と底面図である。図5は固定部3の斜視図であり、図6は固定部3の平面図と側面図である。
【0026】
また、図7図1におけるA-A断面図であり、図8図1におけるB-B断面図である。図9は保持部2と固定部3の可動態様を示す説明図である。図9における矢印Saは、保持部2と固定部3の中心軸Lc回りの回転方向を表し、矢印Sb,Scは、保持部2と固定部3の中心軸Lcに対して傾倒する方向の回転方向を表している。
【0027】
なお、本願においては、全ての図面でハーネスクリップ1の方向を示している。詳しくは、矢印Fが前方側を示し、矢印Bが後方側を示し、矢印Lが左方側を示し、矢印Rが右方側を示している。そして、矢印Uが上方側を示し、矢印Dが下方側を示している。加えて、本願においては、前後方向をX、左右方向をY、上下方向をZとして説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、ハーネスクリップ1は、ワイヤーハーネスWを保持するとともに固定対象に固定できるものである。ここで、ワイヤーハーネスWとは、複数本の電線を束ねた電線群であり、固定対象とは、自動車のボディパネルPであるとして説明する。但し、電線を束ねた電線群や自動車のボディパネルPに限定するものではない。
【0029】
ハーネスクリップ1は、ワイヤーハーネスWを保持する保持部2と、保持部2をボディパネルPに固定できる固定部3とを有している。また、ハーネスクリップ1は、保持部2と固定部3とを回転方向に回転自在に連結する連結部4と、保持部2と固定部3との回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制する規制部5とを有している。さらに、ハーネスクリップ1は、分断部6(図7及び図8参照)を有している。
【0030】
図3及び図4に示すように、保持部2は、主にバンド部21とバックル部22とを有している。また、保持部2は、連結部4を構成する軸部41と規制部5を構成する係合凸部51とを有している。軸部41と係合凸部51については、後に詳しく説明する。
【0031】
バンド部21は、長く帯状に形成された部位である。バンド部21の先端部分から中途部分における外周面には、係止帯21fが形成されている。係止帯21fは、凹部と凸部が交互に並んだ凹凸形状である。バンド部21は、作業者によってワイヤーハーネスWの外周に巻き付けられる。
【0032】
バックル部22は、バンド部21につながる略直方体状に形成された部位である。バックル部22の下板部分には、右方側Rに向かって係止片221が延設されており、かかる係止片221の上側面に係止爪22f(図7及び図8参照)が形成されている。バックル部22は、挿通されたバンド部21の係止帯21fに係止爪22fが引っ掛かることにより、かかるバンド部21を環状に係止することができる。
【0033】
図5及び図6に示すように、固定部3は、主に挿入軸部31と、支持板部32と、一対の係止爪部33とを有している。また、固定部3は、連結部4を構成する穴部42と規制部5を構成する係合凹部52とを有している。穴部42と係合凹部52については、後に詳しく説明する。
【0034】
挿入軸部31は、ボディパネルPの貫通孔Ph(図1参照)に挿入される部位である。挿入軸部31は、上下方向Zに沿って延びており、前後方向X及び左右方向Yから視て先端部分が先細りになっている。また、挿入軸部31は、中心軸Lcに沿う上下方向Zから視て長円形状に形成されている。但し、円形状等であってもよい。
【0035】
支持板部32は、挿入軸部31がボディパネルPの貫通孔Ph(図1参照)に挿入された状態において、ボディパネルPの表面に当接する部位である。支持板部32は、挿入軸部31と一体的に形成されており、挿入軸部31の全周から外側かつ斜め下方側に向かって張り出している。また、支持板部32は、中心軸Lcに沿う上下方向Zから視て長円形状に形成されている。但し、円形状等であってもよい。
【0036】
係止爪部33は、挿入軸部31がボディパネルPの貫通孔Ph(図1参照)に挿入された状態において、貫通孔Phの裏面に引っ掛かる部位である。係止爪部33は、挿入軸部31と一体的に形成されており、挿入軸部31における先端部分の円弧面から外側かつ斜め上方側に向かって延設されている。また、係止爪部33は、その上端部分に貫通孔Phの内周面に当接して付勢する当接面33sが形成されている。
【0037】
次に、図3から図9を用いて、連結部4について詳しく説明する。前述したように、連結部4は、保持部2と固定部3とを回転方向に回転自在に連結するものである。連結部4を構成する軸部41は、保持部2に設けられ、連結部4を構成する穴部42は、固定部3に設けられている。
【0038】
軸部41は、バックル部22における下端面から下方側Dに向かって突出した部位である。軸部41は、その下端部分が中心軸Lc上の点を中心とした球形状に形成されている。かかる球軸部分411の外径は、球軸部分411を支える円柱軸部分412の外径よりも大きく、換言すると、円柱軸部分412の外径は、球軸部分411の外径よりも小さく形成されている。そのため、円柱軸部分412は、球軸部分411に比べて径内側に向かってくびれた凹環形状となっており、後述する円柱穴部分422に引っ掛かる被係止部として機能する。
【0039】
穴部42は、挿入軸部31における円柱部分311の上端面から下方側Dに向かって陥没した部位である。穴部42は、その底側部分が中心軸Lc上の点を中心とした球形状に形成されている。かかる球穴部分421の内径は、球穴部分421につながる円柱穴部分422の内径よりも大きく、換言すると、円柱穴部分422の内径は、球穴部分421の内径よりも小さく形成されている。そのため、円柱穴部分422は、球穴部分421に比べて径内側に向かって突き出た凸環形状となっており、前述した円柱軸部分412に引っ掛かる係止部として機能する。
【0040】
なお、球軸部分411の外径は、球穴部分421の内径よりも小さく形成されて僅かな隙間を形成している。また、円柱軸部分412の外径は、円柱穴部分422の内径よりも小さく形成されて比較的に大きな隙間を形成している。そのため、保持部2と固定部3とを連結した状態において、保持部2と固定部3とがガタつく程ではないものの、所定の荷重を加えることによって回転させることが可能となる。つまりは、球軸部分411、あるいは球穴部分421の中心点Rcを中心とした回転方向に回転させることが可能となる。より詳しくは、中心軸Lc回りの回転方向(図9における矢印Sa参照)のほか、かかる中心軸Lcに対して傾倒する方向の回転方向(図9における矢印Sb,Sc参照)に回転させることが可能となる。
【0041】
次に、図3から図9を用いて、規制部5について詳しく説明する。前述したように、規制部5は、保持部2と固定部3との回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制するものである。規制部5を構成する係合凸部51は、保持部2に設けられ、規制部5を構成する係合凹部52は、固定部3に設けられている。
【0042】
係合凸部51は、バックル部22における下端面に形成された凸形部分であって、軸部41から前方側Fならびに後方側Bに向かって直線状に形成された部位である。軸部41よりも前方側Fの係合凸部51の左右幅は、後方側Bの係合凸部51の左右幅と等しく、さらに、軸部41よりも前方側Fの係合凸部51の上下高さは、後方側Bの係合凸部51の上下高さと等しく形成されている。本実施形態に係るハーネスクリップ1において、係合凸部51は、前後方向Xに平行な直線状であるが、上下方向Zに対して垂直となる各方向に平行な直線状、あるいは放射状に形成されていてもよい。
【0043】
係合凹部52は、挿入軸部31における円柱部分311の上端面に形成された凹形部分であって、穴部42から前方側Fならびに後方側Bに向かって直線状に形成された部位である。穴部42よりも前方側Fの係合凹部52の左右幅は、後方側Bの係合凹部52の左右幅と等しく、さらに、穴部42よりも前方側Fの係合凹部52の上下深さは、後方側Bの係合凹部52の上下深さと等しく形成されている。本実施形態に係るハーネスクリップ1において、係合凹部52は、前後方向Xに平行な直線状であるが、上下方向Zに対して垂直となる各方向に平行な直線状、あるいは放射状に形成されていてもよい。
【0044】
なお、係合凸部51の左右幅は、係合凹部52の左右幅よりも小さく形成されて比較的に大きな隙間を形成している。また、係合凸部51の上下高さは、係合凹部52の上下深さよりも小さく形成されて比較的に大きな隙間を形成している。そのため、保持部2と固定部3とを連結した状態において、係合凸部51と係合凹部52とが係合することとなり、回転方向への可動角度が所定の角度範囲内でのみ可能となる。つまりは、球軸部分411、あるいは球穴部分421の中心点Rcを中心とした回転方向への可動角度が所定の角度範囲内でのみ可能となる。より詳しくは、中心軸Lc回りの回転方向(図9における矢印Sa参照)のほか、かかる中心軸Lcに対して傾倒する方向の回転方向(図9における矢印Sb,Sc参照)への可動角度が所定の角度範囲内でのみ可能となる。
【0045】
ところで、図7及び図8に示すように、ハーネスクリップ1においては、軸部41と穴部42を接合した状態から分断可能とする分断部6が備えられている。分断部6は、ハーネスクリップ1がボディパネルPに取り付けられていない初期状態において、軸部41と穴部42を接着剤61にて接合した部位を指す。但し、円柱軸部分412と円柱穴部分422とを接合した部位であってもよい。
【0046】
球軸部分411における下方側Dの外周面には、窪み部が形成されていないものの、球穴部分421における底方側(下方側D)の内周面には、僅かな窪み部42dが形成されている。そして、窪み部42dに接着剤61が充填されている。このような構成とすることにより、保持部2と固定部3に所定の荷重を加えて相対的に回転させるだけで、球軸部分411の外周面に沿って接着剤61を剥離させることができる。
【0047】
なお、球軸部分411に窪み部を設けないのは、球軸部分411の外周面に沿って接着剤61を剥離させるためである。そして、固化した接着剤61は、球穴部分421の窪み部42dに収まったままで球穴部分421の内周面を形成することとなる。そのため、保持部2と固定部3の引っ掛かりのない円滑な回転が可能となる。但し、球軸部分411に窪み部を設け、球穴部分421に窪み部を設けない構成であってもよい。あるいは球軸部分411と球穴部分421の両方に窪み部を設けた構成であってもよい。
【0048】
以上のように、本実施形態に係るハーネスクリップ1は、ワイヤーハーネスWを保持する保持部2と、保持部2をボディパネルPに固定できる固定部3とを有している。そして、保持部2と固定部3とが相対的に回転する方向を回転方向とし、保持部2と固定部3とを回転方向に回転自在に連結する連結部4と、保持部2と固定部3との回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制する規制部5とが備えられている。
【0049】
このようなハーネスクリップ1によれば、ワイヤーハーネスWの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。
詳述すると、本実施形態に係るハーネスクリップ1は、保持部2と固定部3とを回転方向に回転自在に連結する連結部4と、保持部2と固定部3との回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制する規制部5とが備えられている。このような構成によれば、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスWが変形しても、ハーネスクリップ1における保持部2と固定部3とが相対的に回転自在であるので、ハーネスクリップ1によって保持された渡り部分の屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。また、回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制しているため、ハーネスクリップ1から延びるワイヤーハーネスWの延伸方向が適度に拘束されることとなる。そのため、ワイヤーハーネスWを配索経路に沿って配策する際に、配索経路から大きくズレないので、ワイヤーハーネスWの配索作業が容易となる。
【0050】
また、本実施形態に係るハーネスクリップ1において、連結部4は、保持部2に設けられた軸部41と、固定部3に設けられた穴部42とを有しており、軸部41と穴部42との嵌合によって中心軸Lc回りの回転方向(図9における矢印Sa参照)に回転自在に連結している。
【0051】
このようなハーネスクリップ1によれば、保持部2と固定部3とが中心軸Lc回りの回転方向に回転自在となる。したがって、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスWが変形しても、保持部2と固定部3とが相対的に中心軸Lc回りに回転自在であるので、ワイヤーハーネスWの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態に係るハーネスクリップ1においては、軸部41が球形状を有し、軸部41と穴部42との嵌合によって中心点Rc周りの回転方向(図9における矢印Sa,Sb,Sc参照)に回転自在に連結している。
【0053】
このようなハーネスクリップ1によれば、保持部2と固定部3とが中心点Rc回りの回転方向に回転自在となる。したがって、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスWが変形しても、保持部2と固定部3とが相対的に中心点Rc周りに回転自在であるので、ワイヤーハーネスWの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態に係るハーネスクリップ1においては、軸部41に円柱軸部分412(被係止部として機能する)が設けられ、穴部42に円柱軸部分412と係止する円柱穴部分422(係止部として機能する)が設けられている。
【0055】
このようなハーネスクリップ1によれば、保持部2と固定部3とが確実に連結されることとなる。したがって、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスWが変形し、保持部2と固定部3との離間方向(上下方向Z)に大きな荷重が作用したとしても、これらが分離してしまうことを防止できる。
【0056】
また、本実施形態に係るハーネスクリップ1において、規制部5は、軸部41の径方向位置に設けられた係合凸部51と、穴部42の径方向位置に設けられた係合凹部52とを有しており、係合凸部51と係合凹部52との係合によって回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制している。
【0057】
このようなハーネスクリップ1によれば、ハーネスクリップ1から延びるワイヤーハーネスWの延伸方向がより適度に、かつ確実に拘束されることとなる。したがって、ワイヤーハーネスWを配索経路に沿って配策する際に、配索経路から大きくズレないので、ワイヤーハーネスWの配索作業がより容易となる。
【0058】
また、本実施形態に係るハーネスクリップ1においては、係合凸部51が凸形状であり、係合凹部52が凸形状(係合凸部51)を収容する凹形状であり、凸形状(係合凸部51)の外側面と凹形状(係合凹部52)の内側面との当接によって回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制している。
【0059】
このようなハーネスクリップ1によれば、凸形状(係合凸部51)の外側面と凹形状(係合凹部52)の内側面との当接によって可動角度が確実に規制される。したがって、簡素な構成でありながら、ハーネスクリップ1から延びるワイヤーハーネスWの延伸方向がより適度に拘束されることとなる。
【0060】
また、本実施形態に係るハーネスクリップ1においては、規制部5が連結部4を中心とする180度ごとに配置されている。
このようなハーネスクリップ1によれば、複数の規制部5によって可動角度が規制される。したがって、回転方向に大きな荷重が作用したとしても、ハーネスクリップ1から延びるワイヤーハーネスWの延伸方向がより適度、かつ確実に拘束されることとなる。
【0061】
また、本実施形態に係るハーネスクリップ1においては、軸部41と穴部42を接合した状態から分断可能とする分断部6が備えられている。
このようなハーネスクリップ1によれば、軸部41と穴部42を接合した状態においては、ハーネスクリップ1から延びるワイヤーハーネスWの延伸方向が完全に拘束されることとなる。そのため、ワイヤーハーネスWを配索経路に沿って配策する際に、配索経路から大きくズレないので、ワイヤーハーネスWの配索作業が容易となる。他方で、分断部6を分断することにより、ハーネスクリップ1における保持部2と固定部3とが相対的に回転自在になるので、ハーネスクリップ1によって保持された渡り部分の屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態に係るハーネスクリップ1においては、穴部42に窪み部42dが形成され、窪み部42dに充填された接着剤61によって分断部6が構成されている。
このようなハーネスクリップ1によれば、簡素な構成でありながら、軸部41と穴部42を接合した状態にできる。また、所定の荷重を加えて保持部2と固定部3とを相対的に回転させるだけで、接着剤61を剥離させて分断部6を分断することが可能となる。
【0063】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
ハーネスクリップはハーネスクリップ1に対応し、
保持部は保持部2に対応し、
固定部は固定部3に対応し、
連結部は連結部4に対応し、
規制部は規制部5に対応し、
分断部は分断部6に対応し、
軸部は軸部41に対応し、
穴部は穴部42に対応し、
係合部は係合凸部51に対応し、
被係合部は係合凹部52に対応し、
接着剤は接着剤61に対応し、
被係止部は円柱軸部分412に対応し、
係止部は円柱穴部分422に対応し、
窪み部は窪み部42dに対応し、
中心軸は中心軸Lcに対応し、
中心点は中心点Rcに対応し、
固定対象はボディパネルPに対応し、
ワイヤーハーネスはワイヤーハーネスWに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0064】
例えば、前述した第一実施形態に係るハーネスクリップ1においては、保持部2が係合凸部51を有し、固定部3が係合凹部52を有している。そして、係合凸部51と係合凹部52とが係合することにより、回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制することができる。
【0065】
この点、図10から図12に示すように、固定部3が係合凸部51から回転方向に位置する係合凸部53を有してもよい。係合凸部53は、挿入軸部31における円柱部分311の上端面に形成された凸形部分であって、穴部42から左方側Lならびに右方側Rに向かって直線状に形成された部位である。
【0066】
すなわち、第二実施形態に係るハーネスクリップ1は、係合凸部51が凸形状であり、係合凸部53が凸形状(係合凸部51)から回転方向に位置する凸形状であり、凸形状(係合凸部51)の外側面と凸形状(係合凸部53)の外側面との当接によって回転方向への可動角度を所定の角度範囲内に規制している。
【0067】
このような第二実施形態に係るハーネスクリップ1によれば、凸形状(係合凸部51)の外側面と凸形状(係合凸部53)の外側面との当接によって可動角度が確実に規制される。したがって、簡素な構成でありながら、ハーネスクリップ1から延びるワイヤーハーネスWの延伸方向がより適度に拘束されることとなる。
【0068】
また、第一実施形態に係るハーネスクリップ1においては、保持部2が軸部41を有し、固定部3が穴部42を有している。しかしながら、保持部2が穴部42を有し、固定部3が軸部41を有してもよい。さらに、保持部2が係合凸部51を有し、固定部3が係合凹部52を有している。しかしながら、保持部2が係合凹部52を有し、固定部3が係合凸部51を有してもよい。これは、第二実施形態に係るハーネスクリップ1においても同様である。
【符号の説明】
【0069】
1…ハーネスクリップ
2…保持部
3…固定部
4…連結部
5…規制部
6…分断部
41…軸部
42…穴部
51…係合凸部
52…係合凹部
61…接着剤
412…円柱軸部分
422…円柱穴部分
42d…窪み部
Lc…中心軸
Rc…中心点
P…ボディパネル
W…ワイヤーハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図12