特開 2024-142812 ハーネスクリップ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024142812

(43)【公開日】2024-10-11

(54)【発明の名称】ハーネスクリップ

(51)【国際特許分類】

   H02G 3/30 20060101AFI20241003BHJP

   F16B 2/08 20060101ALI20241003BHJP

   F16B 19/00 20060101ALI20241003BHJP

【ＦＩ】

H02G3/30

F16B2/08 B

F16B19/00 E

F16B19/00 N

【審査請求】未請求

【請求項の数】8

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023055150

(22)【出願日】2023-03-30

(71)【出願人】

【識別番号】000005290

【氏名又は名称】古河電気工業株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】391045897

【氏名又は名称】古河ＡＳ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100121603

【弁理士】

【氏名又は名称】永田 元昭

(74)【代理人】

【識別番号】100141656

【弁理士】

【氏名又は名称】大田 英司

(74)【代理人】

【識別番号】100182888

【弁理士】

【氏名又は名称】西村 弘

(74)【代理人】

【識別番号】100196357

【弁理士】

【氏名又は名称】北村 吉章

(74)【代理人】

【識別番号】100067747

【弁理士】

【氏名又は名称】永田 良昭

(72)【発明者】

【氏名】西田 勝志

【テーマコード（参考）】

3J022

3J036

5G363

【Ｆターム（参考）】

3J022DA15

3J022EA42

3J022EB14

3J022EC14

3J022FB07

3J022FB12

3J022GA04

3J022GB43

3J022GB45

3J022GB56

3J036AA04

3J036DA06

3J036DA14

3J036DB04

5G363BA02

5G363DA13

5G363DC02

(57)【要約】

【課題】ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減できるハーネスクリップを提供する。
【解決手段】本実施形態に係るハーネスクリップ１は、ワイヤーハーネスＷを保持する保持部２と、保持部２をボディパネルＰに固定できる固定部３とを有している。また、保持部２と固定部３とを連結する連結部４を有している。連結部４は、保持部２から固定部３に向かって延設される第一延設部４１と、固定部３から保持部２に向かって延設される第二延設部４２と、可撓性を有して第一延設部４１及び第二延設部４２を接続する可撓接続部４３とが備えられている。
【選択図】図４

【特許請求の範囲】

【請求項1】

ワイヤーハーネスを保持する保持部と、
前記保持部を固定対象に固定できる固定部とを有するハーネスクリップであって、
前記保持部と前記固定部とを連結する連結部を有し、
前記連結部は、
前記保持部から前記固定部に向かって延設される第一延設部と、
前記固定部から前記保持部に向かって延設される第二延設部と、
可撓性を有して前記第一延設部及び前記第二延設部を接続する可撓接続部とが備えられた
ハーネスクリップ。

【請求項2】

前記第一延設部には、前記固定部に近接している近接部分に他の部分における径よりも拡径された拡径部が設けられ、前記拡径部が前記可撓接続部に内包された
請求項１に記載のハーネスクリップ。

【請求項3】

前記第二延設部には、前記保持部に近接している近接部分に他の部分における径よりも拡径された拡径部が設けられ、前記拡径部が前記可撓接続部に内包された
請求項１に記載のハーネスクリップ。

【請求項4】

前記第一延設部及び前記第二延設部には、それぞれ相手側に近接している近接部分に他の部分における径よりも拡径された拡径部が設けられ、それぞれの前記拡径部が対向して配置された
請求項１に記載のハーネスクリップ。

【請求項5】

前記保持部と前記固定部との間に前記第一延設部及び前記第二延設部の接続方向に所定の隙間を隔てる傾倒規制部が配置された
請求項１に記載のハーネスクリップ。

【請求項6】

前記傾倒規制部が筒状に形成されて前記可撓接続部を囲繞した
請求項５に記載のハーネスクリップ。

【請求項7】

前記第一延設部と前記第二延設部とを接合した状態から分断可能とする分断部が備えられた
請求項１に記載のハーネスクリップ。

【請求項8】

前記第一延設部と前記第二延設部とを接合するランナー部又は接着剤によって前記分断部が構成された
請求項７に記載のハーネスクリップ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、ワイヤーハーネスを保持するとともに固定対象に固定できるハーネスクリップに関する。

【背景技術】

【0002】

従来より、ワイヤーハーネスを保持するとともに固定対象に固定できるハーネスクリップが公知である。かかるハーネスクリップには、ワイヤーハーネスを保持する保持部と固定対象に固定できる固定部とが備えられている（特許文献１参照）。

【0003】

ところで、自動車においては、ボディからドアやスライドシート等の可動構造物に対して給電を行うべく、ワイヤーハーネスが架け渡されている。このような構成において、可動構造物を可動すると、ワイヤーハーネスにおけるハーネスクリップによって保持された渡り部分に屈曲が生じ、局所的な負荷が作用することとなる。そこで、ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減できるハーネスクリップが求められていた。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１９－１６０５９５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本願発明は、ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減できるハーネスクリップを提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本願発明は、ワイヤーハーネスを保持する保持部と、前記保持部を固定対象に固定できる固定部とを有するハーネスクリップであって、前記保持部と前記固定部とを連結する連結部を有し、前記連結部は、前記保持部から前記固定部に向かって延設される第一延設部と、前記固定部から前記保持部に向かって延設される第二延設部と、可撓性を有して前記第一延設部及び前記第二延設部を接続する可撓接続部とが備えられたことを特徴としている。

【0007】

この発明によれば、ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。
詳述すると、本願発明に係るハーネスクリップは、保持部と固定部とを連結する連結部を有している。連結部は、保持部から固定部に向かって延設される第一延設部と、固定部から保持部に向かって延設される第二延設部と、可撓性を有して第一延設部及び第二延設部を接続する可撓接続部とが備えられている。このような構成によれば、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスが変形しても、ハーネスクリップにおける保持部と固定部とが相対的に変位自在であるので、ハーネスクリップによって保持された渡り部分の屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。具体的には、保持部と固定部とが各延設部を中心とする回転方向ならびに一方の延設部に対して他方の延設部が傾倒する傾倒方向に変位自在であるので、ハーネスクリップによって保持された渡り部分の屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。

【0008】

この発明の態様として、前記第一延設部には、前記固定部に近接している近接部分に他の部分における径よりも拡径された拡径部が設けられ、前記拡径部が前記可撓接続部に内包されていてもよい。

【0009】

この発明により、可撓接続部に対して拡径部が抜け止めとして機能することとなる。したがって、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスが変形し、保持部と固定部との離間方向に大きな荷重が作用したとしても、保持部の第一延設部が可撓接続部から抜け出て分離してしまうことを防止できる。特に、保持部が傾倒方向に変位しつつ離間方向に大きな荷重が作用したとしても、可撓接続部における傾倒方向の反対側の引張部分に拡径部が食い込んで引っ掛かるので、第一延設部が可撓接続部から抜け出て分離してしまうことを防止できる。

【0010】

またこの発明の態様として、前記第二延設部には、前記保持部に近接している近接部分に他の部分における径よりも拡径された拡径部が設けられ、前記拡径部が前記可撓接続部に内包されていてもよい。

【0011】

この発明により、可撓接続部に対して拡径部が抜け止めとして機能することとなる。したがって、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスが変形し、保持部と固定部との離間方向に大きな荷重が作用したとしても、固定部の第二延設部が可撓接続部から抜け出て分離してしまうことを防止できる。特に、固定部が傾倒方向に変位しつつ離間方向に大きな荷重が作用したとしても、可撓接続部における傾倒方向の反対側の引張部分に拡径部が食い込んで引っ掛かるので、第二延設部が可撓接続部から抜け出て分離してしまうことを防止できる。

【0012】

この発明の態様として、前記第一延設部及び前記第二延設部には、それぞれ相手側に近接している近接部分に他の部分における径よりも拡径された拡径部が設けられ、それぞれの前記拡径部が対向して配置されていてもよい。

【0013】

この発明により、保持部と固定部とが相対的に大きく傾倒方向に変位すると、それぞれの拡径部の端縁部分が当接又は少なくとも近接して可動角度を規制することとなる。そのため、ワイヤーハーネスにおけるハーネスクリップによって保持された渡り部分の屈曲を抑えることができる。また、各延設部が可撓接続部から抜け出て分離してしまうことを防止できる。さらに、各延設部が折れたり可撓接続部に亀裂が生じたりすることも防止できる。

【0014】

またこの発明の態様として、前記保持部と前記固定部との間に前記第一延設部及び前記第二延設部の接続方向に所定の隙間を隔てる傾倒規制部が配置されていてもよい。
この発明により、保持部と固定部とが相対的に大きく傾倒方向に変位すると、傾倒規制部と隣接する部材とが当接又は少なくとも近接して可動角度を規制することとなる。そのため、ワイヤーハーネスにおけるハーネスクリップによって保持された渡り部分の屈曲を抑えることができる。また、各延設部が可撓接続部から抜け出て分離してしまうことを防止できる。さらに、各延設部が折れたり可撓接続部に亀裂が生じたりすることも防止できる。

【0015】

またこの発明の態様として、前記傾倒規制部が筒状に形成されて前記可撓接続部を囲繞してもよい。
この発明により、簡素な構成でありながら、あらゆる傾倒方向に対して可動角度を規制することができる。

【0016】

またこの発明の態様として、前記第一延設部と前記第二延設部とを接合した状態から分断可能とする分断部が備えられてもよい。
この発明により、第一延設部と第二延設部とが接合した状態においては、ハーネスクリップから延びるワイヤーハーネスの延伸方向が完全に拘束されることとなる。そのため、ワイヤーハーネスを配索経路に沿って配策する際に、配索経路から大きくズレないので、ワイヤーハーネスの配索作業が容易となる。他方で、分断部を分断することにより、ハーネスクリップにおける保持部と固定部とが相対的に変位自在になるので、ハーネスクリップによって保持された渡り部分の屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。

【0017】

またこの発明の態様として、前記第一延設部と前記第二延設部とを接合するランナー部又は接着剤によって前記分断部が構成されてもよい。
この発明により、簡素な構成でありながら、第一延設部と第二延設部とを接合した状態にできる。また、所定の荷重を加えて保持部と固定部とを相対的に変位させるだけで、ランナー部又は接着剤を破断させて分断部を分断することが可能となる。

【発明の効果】

【0018】

本願発明は、ワイヤーハーネスの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減できるハーネスクリップを提供する。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】ハーネスクリップの斜視図。

【図2】保持部の斜視図と正面図。

【図3】固定部の斜視図と側面図。

【図4】図１におけるＡ－Ａ断面図。

【図5】図１におけるＢ－Ｂ断面図。

【図6】保持部と固定部の可動態様を示す説明図。

【図7】保持部が大きく傾倒した状態のハーネスクリップの断面図。

【図8】他の実施形態に係るハーネスクリップの断面図。

【図9】保持部が大きく傾倒した状態のハーネスクリップの断面図。

【図10】他の実施形態に係るハーネスクリップの断面図。

【図11】他の実施形態に係るハーネスクリップの断面図。

【図12】他の実施形態に係るハーネスクリップの分解斜視図。

【発明を実施するための形態】

【0020】

この発明の一実施形態を図面に基づいて詳述する。
図１はハーネスクリップ１の斜視図である。図２は保持部２の斜視図と正面図であり、図３は固定部３の斜視図と側面図である。図２及び図３については、内包された第一延設部４１又は第二延設部４２が見えるように可撓接続部４３を想像線にて示している。

【0021】

また、図４は図１におけるＡ－Ａ断面図であり、図５は図１におけるＢ－Ｂ断面図である。図６は保持部２と固定部３の可動態様を示す説明図であり、図７は保持部２が大きく傾倒した状態のハーネスクリップ１の断面図である。図４、図５及び図７については、保持部２と固定部３とを連結する連結部４の拡大図を示している。

【0022】

なお、本願においては、全ての図面でハーネスクリップ１の方向を示している。詳しくは、矢印Ｆが前方側を示し、矢印Ｂが後方側を示し、矢印Ｌが左方側を示し、矢印Ｒが右方側を示している。そして、矢印Ｕが上方側を示し、矢印Ｄが下方側を示している。加えて、本願においては、前後方向をＸ、左右方向をＹ、上下方向をＺとして説明する。

【0023】

図１及び図２に示すように、ハーネスクリップ１は、ワイヤーハーネスＷを保持するとともに固定対象に固定できるものである。ここで、ワイヤーハーネスＷとは、複数本の電線を束ねた電線群であり、固定対象とは、自動車のボディパネルＰであるとして説明する。但し、電線を束ねた電線群や自動車のボディパネルＰに限定するものではない。

【0024】

ハーネスクリップ１は、ワイヤーハーネスＷを保持する保持部２と、保持部２をボディパネルＰに固定できる固定部３とを有している。また、ハーネスクリップ１は、保持部２と固定部３とを連結する連結部４を有している。さらに、連結部４を構成する第一延設部４１と第二延設部４２とを接続した状態から分断可能とする分断部５（図４及び図５参照）を有している。

【0025】

図２に示すように、保持部２は、主にバンド部２１とバックル部２２とを有している。また、保持部２は、連結部４を構成する第一延設部４１を有している。第一延設部４１については、後に詳しく説明する。

【0026】

バンド部２１は、長く帯状に形成された部位である。バンド部２１の先端部分から中途部分における外周面には、係止帯２１ｆ（図４及び図５参照）が形成されている。係止帯２１ｆは、凹部と凸部が交互に並んだ凹凸形状である。バンド部２１は、作業者によってワイヤーハーネスＷの外周に巻き付けられる。

【0027】

バックル部２２は、バンド部２１につながる略直方体状に形成された部位である。バックル部２２の下板部分には、右方側Ｒに向かって係止片２２１が延設されており、かかる係止片２２１の上側面に係止爪２２ｆ（図４及び図５参照）が形成されている。バックル部２２は、挿通されたバンド部２１の係止帯２１ｆに係止爪２２ｆが引っ掛かることにより、かかるバンド部２１を環状に係止することができる。

【0028】

図３に示すように、固定部３は、主に挿入軸部３１と、支持板部３２と、一対の係止爪部３３とを有している。また、固定部３は、連結部４を構成する第二延設部４２を有している。第二延設部４２については、後に詳しく説明する。

【0029】

挿入軸部３１は、ボディパネルＰの貫通孔Ｐｈ（図１参照）に挿入される部位である。挿入軸部３１は、上下方向Ｚに沿って延びており、前後方向Ｘ及び左右方向Ｙから視て先端部分が先細りになっている。また、挿入軸部３１は、中心軸Ｌｃに沿う上下方向Ｚから視て長円形状に形成されている。但し、円形状等であってもよい。

【0030】

支持板部３２は、挿入軸部３１がボディパネルＰの貫通孔Ｐｈ（図１参照）に挿入された状態において、ボディパネルＰの表面に当接する部位である。支持板部３２は、挿入軸部３１と一体的に形成されており、挿入軸部３１の全周から外側かつ斜め下方側に向かって張り出している。また、支持板部３２は、中心軸Ｌｃに沿う上下方向Ｚから視て長円形状に形成されている。但し、円形状等であってもよい。

【0031】

係止爪部３３は、挿入軸部３１がボディパネルＰの貫通孔Ｐｈ（図１参照）に挿入された状態において、貫通孔Ｐｈの裏面に引っ掛かる部位である。係止爪部３３は、挿入軸部３１と一体的に形成されており、挿入軸部３１における先端部分の円弧面から外側かつ斜め上方側に向かって延設されている。また、係止爪部３３は、その上端部分に貫通孔Ｐｈの内周面に当接して付勢する当接面３３ｓが形成されている。

【0032】

次に、図１から図７を用いて、連結部４について詳しく説明する。前述したように、連結部４は、保持部２と固定部３とを連結するものである。連結部４を構成する第一延設部４１は、保持部２に設けられ、連結部４を構成する第二延設部４２は、固定部３に設けられている。第一延設部４１と第二延設部４２は、上下方向Ｚに対称形状であり、可撓接続部４３によって接続されている。

【0033】

第一延設部４１は、バックル部２２における下端面から下方側Ｄに向かって突出した部位である。第一延設部４１は、その下端部分が中心軸Ｌｃを中心に拡径された形状とされている。かかる拡径部分４１１の外径は、拡径部分４１１につながる円柱軸部分４１２の外径よりも大きく形成されている。そして、これら拡径部分４１１と円柱軸部分４１２とが可撓接続部４３の上端部分に内包されている。そのため、拡径部分４１１における円柱軸部分４１２よりも径外側へ張り出した部分が可撓接続部４３の内側にて引っ掛かることとなる。

【0034】

また、第二延設部４２は、挿入軸部３１における上端面から上方側Ｕに向かって突出した部位である。第二延設部４２は、その上端部分が中心軸Ｌｃを中心に拡径された形状とされている。かかる拡径部分４２１の外径は、拡径部分４２１につながる円柱軸部分４２２の外径よりも大きく形成されている。そして、これら拡径部分４２１と円柱軸部分４２２とが可撓接続部４３の下端部分に内包されている。そのため、拡径部分４２１における円柱軸部分４２２よりも径外側へ張り出した部分が可撓接続部４３の内側にて引っ掛かることとなる。

【0035】

さらに、可撓接続部４３は、可撓性を有して第一延設部４１及び第二延設部４２を接続する部位である。可撓接続部４３は、中心軸Ｌｃに沿って配置された第一延設部４１及び第二延設部４２を同時に内包するよう、いわゆる二色成形（ダブルモールド）にて形成されている。また、可撓接続部４３は、中心軸Ｌｃに沿う上下方向Ｚから視て四方に突出した突出部分４３ｐを有しており（図１参照）、かかる突出部分４３ｐによって所定の傾倒方向に対する剛性ならびに復元性を強めている。但し、突出部分４３ｐの数や方向について限定するものではない。また、突出部分４３ｐを有しない単なる円柱状であってもよい。

【0036】

このような構成により、保持部２と固定部３とが連結部４によって連結される。より詳しくは、保持部２の第一延設部４１と固定部３の第二延設部４２とが可撓接続部４３によって接続される。可撓接続部４３は、エラストマー等の可撓性を有する素材で形成されているため、所定の荷重を加えることによって保持部２と固定部３の相対位置を変位させることが可能となる。より詳しくは、中心軸Ｌｃ回りの回転方向（図６における矢印Ｓａ参照）のほか、かかる中心軸Ｌｃに対して傾倒する傾倒方向（図６における矢印Ｓｂ，Ｓｃ参照）に変位させることが可能となる。

【0037】

加えて、ハーネスクリップ１は、第一延設部４１の下端部分に拡径部分４１１が形成され、第二延設部４２の上端部分に拡径部分４２１が形成され、それぞれの拡径部分４１１，４２１が対向して配置されている。そのため、保持部２と固定部３とが相対的に大きく傾倒方向に変位すると、それぞれの拡径部分４１１，４２１の端縁部分が当接して可動角度を規制することとなる（図７における矢印Ｐｃ参照）。つまりは、保持部２が傾倒方向に変位すると、拡径部分４１１の端縁部分が４２１の端縁部分に当接して可動角度を規制することとなる。反対に、固定部３が傾倒方向に変位すると、拡径部分４２１の端縁部分が４１１の端縁部分に当接して可動角度を規制することとなる。

【0038】

ところで、図４及び図５に示すように、ハーネスクリップ１においては、第一延設部４１と第二延設部４２とを接合した状態から分断可能とする分断部５が備えられている。分断部５は、ハーネスクリップ１がボディパネルＰに取り付けられていない初期状態において、第一延設部４１と第二延設部４２をランナー部５１にて接合した部位を指す。ランナー部５１の剛性は、所定の荷重を加えて保持部２と固定部３とを相対的に変位させるだけで、破断する程度とされている。

【0039】

以上のように、本実施形態に係るハーネスクリップ１は、ワイヤーハーネスＷを保持する保持部２と、保持部２をボディパネルＰに固定できる固定部３とを有している。また、保持部２と固定部３とを連結する連結部４を有している。連結部４は、保持部２から固定部３に向かって延設される第一延設部４１と、固定部３から保持部２に向かって延設される第二延設部４２と、可撓性を有して第一延設部４１及び第二延設部４２を接続する可撓接続部４３とが備えられている。

【0040】

このようなハーネスクリップ１によれば、ワイヤーハーネスＷの屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。
詳述すると、本実施形態に係るハーネスクリップ１は、保持部２と固定部３とを連結する連結部４を有している。連結部４は、保持部２から固定部３に向かって延設される第一延設部４１と、固定部３から保持部２に向かって延設される第二延設部４２と、可撓性を有して第一延設部４１及び第二延設部４２とを接続する可撓接続部４３とが備えられている。このような構成によれば、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスＷが変形しても、ハーネスクリップ１における保持部２と固定部３とが相対的に変位自在であるので、ハーネスクリップ１によって保持された渡り部分の屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。具体的には、保持部２と固定部３とが各延設部４１，４２を中心とする回転方向ならびに一方の延設部（例えば第一延設部４１）に対して他方の延設部（例えば第二延設部４２）が傾倒する傾倒方向に変位自在であるので、ハーネスクリップ１によって保持された渡り部分の屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。

【0041】

また、本実施形態に係るハーネスクリップ１において、第一延設部４１には、固定部３に近接している下端部分に円柱軸部分４１２における径よりも拡径された拡径部分４１１が設けられ、拡径部分４１１が可撓接続部４３に内包されている。

【0042】

このようなハーネスクリップ１によれば、可撓接続部４３に対して拡径部分４１１が抜け止めとして機能することとなる。したがって、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスＷが変形し、保持部２と固定部３との離間方向（上下方向Ｚ）に大きな荷重が作用したとしても、保持部２の第一延設部４１が可撓接続部４３から抜け出て分離してしまうことを防止できる。特に、保持部２が傾倒方向に変位しつつ離間方向に大きな荷重が作用したとしても、可撓接続部４３における傾倒方向の反対側の引張部分に拡径部分４１１が食い込んで引っ掛かるので、第一延設部４１が可撓接続部４３から抜け出て分離してしまうことを防止できる。

【0043】

また、本実施形態に係るハーネスクリップ１において、第二延設部４２には、保持部２に近接している上端部分に円柱軸部分４２２における径よりも拡径された拡径部分４２１が設けられ、拡径部分４２１が可撓接続部４３に内包されている。

【0044】

このようなハーネスクリップ１によれば、可撓接続部４３に対して拡径部分４２１が抜け止めとして機能することとなる。したがって、可動構造物の可動等によってワイヤーハーネスＷが変形し、保持部２と固定部３との離間方向（上下方向Ｚ）に大きな荷重が作用したとしても、固定部３の第二延設部４２が可撓接続部４３から抜け出て分離してしまうことを防止できる。特に、固定部３が傾倒方向に変位しつつ離間方向に大きな荷重が作用したとしても、可撓接続部４３における傾倒方向の反対側の引張部分に拡径部分４２１が食い込んで引っ掛かるので、第二延設部４２が可撓接続部４３から抜け出て分離してしまうことを防止できる。

【0045】

また、本実施形態に係るハーネスクリップ１において、第一延設部４１及び第二延設部４２には、それぞれ相手側に近接している下端部分及び上端部分に円柱軸部分４１２，４２２における径よりも拡径された拡径部分４１１，４２１が設けられ、それぞれの拡径部分４１１，４２１が対向して配置されている。

【0046】

このようなハーネスクリップ１によれば、保持部２と固定部３とが相対的に大きく傾倒方向に変位すると、それぞれの拡径部分４１１，４２１の端縁部分が当接して可動角度を規制することとなる。そのため、ワイヤーハーネスＷにおけるハーネスクリップ１によって保持された渡り部分の屈曲を抑えることができる。また、各延設部４１，４２が可撓接続部４３から抜け出て分離してしまうことを防止できる。さらに、各延設部４１，４２が折れたり可撓接続部４３に亀裂が生じたりすることも防止できる。

【0047】

また、本実施形態に係るハーネスクリップ１においては、第一延設部４１と第二延設部４２とを接合した状態から分断可能とする分断部５が備えられている。
このようなハーネスクリップ１によれば、第一延設部４１と第二延設部４２とが接合した状態においては、ハーネスクリップ１から延びるワイヤーハーネスＷの延伸方向が完全に拘束されることとなる。そのため、ワイヤーハーネスＷを配索経路に沿って配策する際に、配索経路から大きくズレないので、ワイヤーハーネスＷの配索作業が容易となる。他方で、分断部５を分断することにより、ハーネスクリップ１における保持部２と固定部３とが相対的に変位自在になるので、ハーネスクリップ１によって保持された渡り部分の屈曲を抑えて局所的な負荷を低減することが可能となる。

【0048】

また、本実施形態に係るハーネスクリップ１においては、第一延設部４１と第二延設部４２とを接合するランナー部５１によって分断部５が構成されている。
このようなハーネスクリップ１によれば、簡素な構成でありながら、第一延設部４１と第二延設部４２とを接合した状態にできる。また、所定の荷重を加えて保持部２と固定部３とを相対的に変位させるだけで、ランナー部５１を破断させて分断部５を分断することが可能となる。

【0049】

この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
ハーネスクリップはハーネスクリップ１に対応し、
保持部は保持部２に対応し、
固定部は固定部３に対応し、
連結部は連結部４に対応し、
分断部は分断部５に対応し、
第一延設部は第一延設部４１に対応し、
第二延設部は第二延設部４２に対応し、
可撓接続部は可撓接続部４３に対応し、
拡径部は拡径部分４１１，４２１に対応し、
他の部分は円柱軸部分４１２，４２２に対応し、
ランナー部はランナー部５１に対応し、
固定対象はボディパネルＰに対応し、
ワイヤーハーネスはワイヤーハーネスＷに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。

【0050】

例えば、前述した第一実施形態に係るハーネスクリップ１においては、第一延設部４１の拡径部分４１１と第二延設部４２の拡径部分４２１とが対向して配置され、保持部２と固定部３とが相対的に大きく傾倒方向に変位すると、それぞれの拡径部分４１１，４２１の端縁部分が当接して可動角度を規制する。

【0051】

この点、図８及び図９に示すように、保持部２と固定部３との間に傾倒規制部６が配置されてもよい。傾倒規制部６は、可撓接続部４３を囲繞する円筒状に形成されており、傾倒規制部６が挿入軸部３１の上端面に当接している状態においては、傾倒規制部６と保持部２との間に所定の隙間Ｄｃを形成している。

【0052】

すなわち、第二実施形態に係るハーネスクリップ１は、保持部２と固定部３との間に第一延設部４１及び第二延設部４２の接続方向（上下方向Ｚ）に所定の隙間Ｄｃを隔てる傾倒規制部６が配置されていてもよい。
このような第二実施形態に係るハーネスクリップ１によれば、保持部２と固定部３とが相対的に大きく傾倒方向に変位すると、傾倒規制部６と隣接する部材（保持部２や固定部３）とが当接又は少なくとも近接して可動角度を規制することとなる。そのため、ワイヤーハーネスＷにおけるハーネスクリップ１によって保持された渡り部分の屈曲を抑えることができる。また、各延設部４１，４２が可撓接続部４３から抜け出て分離してしまうことを防止できる。さらに、各延設部４１，４２が折れたり可撓接続部４３に亀裂が生じたりすることも防止できる。

【0053】

また、第二実施形態に係るハーネスクリップ１においては、傾倒規制部６が筒状に形成されて可撓接続部４３を囲繞している。
このような第二実施形態に係るハーネスクリップ１によれば、簡素な構成でありながら、あらゆる傾倒方向に対して可動角度を規制することができる。

【0054】

なお、傾倒規制部６は、保持部２や固定部３とは別部材とされている。しかしながら、図１０（ａ）に示すように、保持部２のバックル部２２における下端面から下方側Ｄに向かって突出しており、固定部３との間に所定の隙間Ｄｃを隔てていてもよい。あるいは、図１０（ｂ）に示すように、固定部３の挿入軸部３１における上端面から上方側Ｕに向かって突出しており、保持部２との間に所定の隙間Ｄｃを隔てていてもよい。

【0055】

さらには、図１１（ａ）に示すように、保持部２のバックル部２２における下端面から下方側Ｄに向かって突出し、固定部３の挿入軸部３１における上端面から上方側Ｕに向かって突出し、互いに対向する傾倒規制部６との間に所定の隙間Ｄｃを隔てていてもよい。あるいは、図１１（ｂ）に示すように、それぞれの傾倒規制部６が径方向に所定の隙間Ｄｃを隔てて配置されるとしてもよい。このようにしても、あらゆる傾倒方向に対して可動角度を規制することができる。

【0056】

加えて、前述した各実施形態に係るハーネスクリップ１においては、保持部２と固定部３とを一体的に形成するとともに、可撓接続部４３を二色成形（ダブルモールド）にて形成している。この点、図１２に示すように、保持部２と固定部３とを別個に形成するとともに、さらに別個に形成された可撓接続部４３によって接続するとしてもよい。このように、保持部２と固定部３とを別個に形成する場合は、第一延設部４１と第二延設部４２とをランナー部５１ではなく、接着剤にて接合することが考えられる。

【符号の説明】

【0057】

１…ハーネスクリップ
２…保持部
３…固定部
４…連結部
５…分断部
４１…第一延設部
４２…第二延設部
４３…可撓接続部
４１１，４２１…拡径部分
４１２，４２２…円柱軸部分
５１…ランナー部
Ｐ…ボディパネル
Ｗ…ワイヤーハーネス

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】