(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142814
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ケーブル巻取装置及びシート給電装置
(51)【国際特許分類】
H02G 11/02 20060101AFI20241003BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241003BHJP
B65H 75/48 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02G11/02
B60R16/02 620A
B65H75/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055152
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 湧貴
(72)【発明者】
【氏名】宮原 浩志
【テーマコード(参考)】
3F068
5G371
【Fターム(参考)】
3F068AA12
3F068BA11
3F068CA04
3F068DA02
3F068DB03
3F068GA03
3F068JA05
5G371AA01
5G371BA05
5G371CA05
(57)【要約】
【課題】取付対象のスライド動作に応じてフラットケーブルの引き出しや巻き取りが可能であるとともに、取付対象の回転動作によるフラットケーブルの捩れを防止できるケーブル巻取装置を提供する。
【解決手段】フレキシブルフラットケーブル2を収容する収容部3が中心側空間Siと外周側空間Soとに仕切部4によって仕切られ、中心側空間Siに収容された部分と外周側空間Soに収容された部分との境界部分23を保持部5によって保持している。フレキシブルフラットケーブル2には、中心側空間Siにて回転軸6を中心に渦巻状に巻回された中心側巻回部21が形成され、外周側空間Soにて仕切部4を中心に渦巻状に巻回された外周側巻回部22が形成され、中心側巻回部21の内周側部分から延出された一方端がシート200の電気部材に接続され、外周側巻回部22の外周側部分から延出された他方端が車両100の電気部材に接続される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のフラットケーブルと、
前記フラットケーブルを収容する収容部と、
前記収容部の内部空間を中心側空間と外周側空間とに仕切る仕切部と、
前記フラットケーブルにおける前記中心側空間に収容された部分と前記外周側空間に収容された部分との境界部分を保持する保持部とを備え、
前記中心側空間の中央部分には、前記フラットケーブルを保持した状態で当該フラットケーブルの帯幅方向に沿う方向を中心として回転する回転軸が設けられ、
前記外周側空間の外縁部分には、当該外周側空間の内側から外側に向かって引き出される又は外側から内側に向かって巻き取られる前記フラットケーブルを案内する案内口が設けられ、
前記フラットケーブルには、前記中心側空間にて前記回転軸を中心として渦巻状に巻回された中心側巻回部が形成され、前記外周側空間にて前記仕切部を中心として渦巻状に巻回された外周側巻回部が形成され、
前記フラットケーブルにおける前記中心側巻回部の内周側部分から延出された一方端がスライド動作及び回転動作を可能とする取付対象の電気部材に接続され、前記フラットケーブルにおける前記外周側巻回部の外周側部分から延出された他方端が電気供給源側の電気部材に接続される
ケーブル巻取装置。
【請求項2】
前記中心側巻回部の巻回方向と前記外周側巻回部の巻回方向とが同方向とされた
請求項1に記載のケーブル巻取装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記仕切部に形成された前記フラットケーブルが挿通される挿通孔である
請求項1に記載のケーブル巻取装置。
【請求項4】
前記保持部から導出された前記フラットケーブルの導出方向を規制する規制片が設けられた
請求項1に記載のケーブル巻取装置。
【請求項5】
前記フラットケーブルは、一枚又は複数枚を重ね合わせたフレキシブルフラットケーブルである
請求項1に記載のケーブル巻取装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかのケーブル巻取装置を用いたシート給電装置であって、
スライド動作及び回転動作を可能とするシートに対して前記回転軸が連結され、
前記フラットケーブルにおける前記中心側巻回部の内周側部分から延出された一方端が前記シートの電気部材に接続され、前記フラットケーブルにおける前記外周側巻回部の外周側部分から延出された他方端が電気供給源側の電気部材に接続される
シート給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、取付対象のスライド動作及び回転動作のいずれにも対応できるケーブル巻取装置と、かかるケーブル巻取装置を用いたシート給電装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ケーブル巻取装置が知られている(特許文献1参照)。ケーブル巻取装置は、帯状のフラットケーブルと、フラットケーブルを収容する収容部とを備え、取付対象のスライド動作に応じてフラットケーブルが引き出される又は巻き取られるよう構成されている。このようなケーブル巻取装置は、車両用のシートに対して給電するシート給電装置として用いられている。
【0003】
ところで、近年においては、スライド動作だけでなく回転動作も可能としたシートが提案されている。このようなシートに従来のケーブル巻取装置を用いた場合、回転動作によってフラットケーブルが捩れてしまい、フラットケーブルが絡まってしまうおそれがあった。また、フラットケーブルの捩れによって円滑な引き出しや巻き取りができなくなってしまうおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、取付対象のスライド動作に応じてフラットケーブルの引き出しや巻き取りが可能であるとともに、取付対象の回転動作によるフラットケーブルの捩れを防止できるケーブル巻取装置と、かかるケーブル巻取装置を用いたシート給電装置とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、帯状のフラットケーブルと、前記フラットケーブルを収容する収容部と、前記収容部の内部空間を中心側空間と外周側空間とに仕切る仕切部と、前記フラットケーブルにおける前記中心側空間に収容された部分と前記外周側空間に収容された部分との境界部分を保持する保持部とを備え、前記中心側空間の中央部分には、前記フラットケーブルを保持した状態で当該フラットケーブルの帯幅方向に沿う方向を中心として回転する回転軸が設けられ、前記外周側空間の外縁部分には、当該外周側空間の内側から外側に向かって引き出される又は外側から内側に向かって巻き取られる前記フラットケーブルを案内する案内口が設けられ、前記フラットケーブルには、前記中心側空間にて前記回転軸を中心として渦巻状に巻回された中心側巻回部が形成され、前記外周側空間にて前記仕切部を中心として渦巻状に巻回された外周側巻回部が形成され、前記フラットケーブルにおける前記中心側巻回部の内周側部分から延出された一方端がスライド動作及び回転動作を可能とする取付対象の電気部材に接続され、前記フラットケーブルにおける前記外周側巻回部の外周側部分から延出された他方端が電気供給源側の電気部材に接続されるケーブル巻取装置である。
【0007】
この発明により、取付対象のスライド動作に応じてフラットケーブルの引き出しや巻き取りが可能であるとともに、取付対象の回転動作によるフラットケーブルの捩れを防止できる。
【0008】
詳述すると、ケーブル巻取装置の取付対象がスライド方向の一方側に移動(スライド動作)してフラットケーブルが引っ張られた場合は、外周側空間における外周側巻回部が巻き絞られ、外周側空間の外側に向かって引き出されることとなる。反対に、ケーブル巻取装置の取付対象がスライド方向の他方側に移動(スライド動作)してフラットケーブルが案内口より外周側空間の内側に押し込まれた場合は、外周側空間における外周側巻回部が巻き緩められ、外周側空間の内側に向かって巻き取られることとなる。
【0009】
また、ケーブル巻取装置の取付対象が回転方向の一方側回りに回転(回転動作)した場合は、取付対象の回転動作に連動して回転軸が一方側回りに回転するので、中心側空間における中心側巻回部が巻き緩められる。こうして、取付対象の回転動作に追従させることにより、フラットケーブルの捩れを防止することができる。反対に、ケーブル巻取装置の取付対象が回転方向の他方側回りに回転(回転動作)した場合は、取付対象の回転動作に連動して回転軸が他方側回りに回転するので、中心側空間における中心側巻回部が巻き絞られる。こうして、取付対象の回転動作に追従させることにより、フラットケーブルの捩れを防止することができる。
【0010】
この発明の態様として、前記中心側巻回部の巻回方向と前記外周側巻回部の巻回方向とが同方向とされてもよい。
この発明により、フラットケーブルにおける中心側巻回部が巻き絞られたり巻き緩められたりした際に、中心側巻回部と外周側巻回部との境界部分に局所的な負荷が作用してしまうことを防止できる。また、フラットケーブルにおける外周側巻回部が巻き絞られたり巻き緩められたりした際にも、中心側巻回部と外周側巻回部との境界部分に局所的な負荷が作用してしまうことを防止できる。
【0011】
またこの発明の態様として、前記保持部は、前記仕切部に形成された前記フラットケーブルが挿通される挿通孔であってもよい。
この発明により、フラットケーブルにおける中心側巻回部と外周側巻回部とを連続した一のフラットケーブルにて構成することができる。また、簡素な構造でありながら、中心側巻回部と外周側巻回部との境界部分を確実に保持することが可能となる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記保持部から導出された前記フラットケーブルの導出方向を規制する規制片が設けられてもよい。
この発明により、フラットケーブルの導出方向を確実に規制できる。そのため、取付対象のスライド動作及び回転動作によってフラットケーブルが折れ曲がり、局所的に負荷が作用してしまうことを防止できる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記フラットケーブルは、一枚又は複数枚を重ね合わせたフレキシブルフラットケーブルであってもよい。
この発明により、フラットケーブルを小さな曲げ半径で湾曲させることができる。そのため、中心側空間及び外周側空間の径を小さくでき、ひいてはケーブル巻取装置の小型化を実現することが可能となる。また、湾曲したフラットケーブルが元の形状に戻ろうとする高い弾性を有するため、その反発力のみで各巻回部が巻き緩んで広がるようになる。したがって、構造の簡素化を実現することも可能となる。
【0014】
またこの発明の態様として、前述したケーブル巻取装置を用いたシート給電装置であって、スライド動作及び回転動作を可能とするシートに対して前記回転軸が連結され、前記フラットケーブルにおける前記中心側巻回部の内周側部分から延出された一方端が前記シートの電気部材に接続され、前記フラットケーブルにおける前記外周側巻回部の外周側部分から延出された他方端が電気供給源側の電気部材に接続されてもよい。
この発明により、シートのスライド動作に応じてフラットケーブルの引き出しや巻き取りが可能であるとともに、シートの回転動作によるフラットケーブルの捩れを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
取付対象のスライド動作に応じてフラットケーブルの引き出しや巻き取りが可能であるとともに、取付対象の回転動作によるフラットケーブルの捩れを防止できるケーブル巻取装置と、かかるケーブル巻取装置を用いたシート給電装置とを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】ロアケースにフラットケーブルを収容した状態の平面図。
【
図6】シートを後方側に移動した場合の動作態様を示す説明図。
【
図7】シートを前方側に移動した場合の動作態様を示す説明図。
【
図8】シートを左方側回りに回転した場合の動作態様を示す説明図。
【
図9】シートを右方側回りに回転した場合の動作態様を示す説明図。
【
図10】他の実施形態に係るケーブル巻取装置のロアケースの平面図。
【
図11】他の実施形態に係るケーブル巻取装置のロアケースの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施例を図面に基づいて詳述する。
本願においては、矢印Fが前方側を示し、矢印Bが後方側を示し、矢印Lが左方側を示し、矢印Rが右方側を示している。また、矢印Uが上方側を示し、矢印Dが下方側を示している。本願においては、前後方向をX、左右方向をY、上下方向をZとして説明する。
【0018】
図1は車両100におけるシート200周辺の斜視図である。
図2はケーブル巻取装置1の斜視図であり、
図3はケーブル巻取装置1の分解斜視図である。
図4は収容部3を構成するロアケース31の平面図であり、
図5はロアケース31にフラットケーブル2を収容した状態の平面図である。
図4及び
図5については、ロアケース31の一部拡大図を示している。
【0019】
また、
図6はシート200を後方側Bに移動した場合の動作態様を示す説明図であり、
図7はシート200を前方側Fに移動した場合の動作態様を示す説明図である。
図8はシート200を左方側回りRlに回転した場合の動作態様を示す説明図であり、
図9はシート200を右方側回りRrに回転した場合の動作態様を示す説明図である。
図6から
図9については、(a)がシート200の動作態様を示し、(b)がケーブル巻取装置1の動作態様を示している。
【0020】
図1に示すように、車両100は、シート200を支持するシート支持構造300を有している。シート支持構造300は、一対のレール301と、一対のスライダ302と、一枚のロアプレート303と、同じく一枚のアッパープレート304とを備えている。
【0021】
レール301は、車両100の前後方向Xに沿って延びている。それぞれのレール301は、所定の間隔を隔てて平行に配置されており、車両100のフロアパネル101に固定されている。それぞれのレール301の上面部分には、軌道溝30rが形成されている。
【0022】
スライダ302は、レール301の軌道溝30rに嵌め合わされた状態で支持されている。そのため、それぞれのスライダ302は、前後方向Xに沿って移動自在である(矢印Sf,Sb参照)。それぞれのスライダ302の上面部分には、上方側Uに向かってボルト30bが突出されている。
【0023】
ロアプレート303は、左右方向Yの両端部分に貫通孔が形成されており、スライダ302のボルト30bが挿通された状態で支持されている。そのため、ロアプレート303は、スライダ302とともに前後方向Xに沿って移動自在である(矢印Sf,Sb参照)。ロアプレート303の中央部分には、円筒状の回転軸部30sが設けられている。
【0024】
アッパープレート304は、その中央部分に回転受部が設けられており、ロアプレート303の回転軸部30sが挿入された状態で支持されている。そのため、アッパープレート304は、ロアプレート303とともに前後方向Xに沿って移動自在であり(矢印Sf,Sb参照)、かつロアプレート303に対して回転自在である(矢印Rl,Rr参照)。そして、アッパープレート304の上面部分には、シート200のシートクッション201が載置され、固定されている。
【0025】
このような構成により、シート200は、車両100の前方側Fならびに後方側Bに移動自在である(矢印Sf,Sb参照)。また、シート200は、車両100の左方側回りならびに右方側回りに回転自在である(矢印Rl,Rr参照)。但し、シート支持構造300の構成について限定するものではない。また、シート200及びシート支持構造300の用途について自動車等の車両用に限定するものではない。例えば、鉄道等の車両用であってもよいし、船舶用や航空機用であってもよい。
【0026】
なお、ロアプレート303には、シート給電装置10が取り付けられている。シート給電装置10は、主にケーブル巻取装置1によって構成されており、ケーブル巻取装置1を構成する回転軸6がロアプレート303の回転軸部30sを介してシート200に連結されている。また、フラットケーブル2の一方端がシート200の電気部材に接続され、フラットケーブル2の他方端が車両100の電気部材に接続されている。以下において、フラットケーブル2は、フレキシブルフラットケーブル2として説明する。
【0027】
図2から
図5を用いて、ケーブル巻取装置1について説明する。ケーブル巻取装置1は、帯状のフレキシブルフラットケーブル2と、フレキシブルフラットケーブル2を収容する収容部3と、フレキシブルフラットケーブル2を保持した状態でフレキシブルフラットケーブル2の帯幅方向(上下方向Z)に沿う方向を中心として回転する回転軸6とを備えている。
【0028】
フレキシブルフラットケーブル2は、帯状に形成された電線である。フレキシブルフラットケーブル2は、平行に並べた複数枚の導電体をシート状の絶縁体によって挟み込んだ構造とされている。そのため、小さな曲げ半径で湾曲させることができ、湾曲しても元の形状に戻ろうとする高い弾性を有している。フレキシブルフラットケーブル2は、一枚のみで用いてもよいし、複数枚を重ね合わせて用いてもよい。
【0029】
また、フレキシブルフラットケーブル2は、渦巻状に巻回された状態で収容部3に収容される。より詳しくは、渦巻状に巻回された中心側巻回部21が収容部3における中心側空間Siに収容され、渦巻状に巻回された外周側巻回部22が収容部3における外周側空間Soに収容される。中心側巻回部21と外周側巻回部22の巻回方向は、中心軸Cに沿う方向である上方側Uから視て、径内側から径外側に向かって左回りとされている(
図5における矢印Ri,Ro参照)。
【0030】
収容部3は、フレキシブルフラットケーブル2を収容する筐体である。収容部3は、中心側空間Si及び外周側空間Soが形成されたロアケース31と、ロアケース31に嵌合されて中心側空間Si及び外周側空間Soの開口端(上方側Uの開口である)を塞ぐアッパーカバー32とを有している。以下に、ロアケース31とアッパーカバー32について説明する。
【0031】
ロアケース31は、略円形状の底板311と、底板311の外縁部分から上方側Uに向かって延設された外周板312と、外周板312の右端縁から前方側Fに延びた右端板313と、外周板312の前端縁から右方側Rに延びた前端板314とを有している。底板311には、その中心軸Cを中心として上下方向Zに貫通する貫通孔31hが形成されている。
【0032】
また、ロアケース31は、その中心軸Cを中心として略円筒状の中板315を有している。かかる中板315は、底板311の径方向中途部分から上方側Uに向かって延設されており、内部空間を内側の中心側空間Siと外側の外周側空間Soとに仕切っている。そのため、中板315は、中心側空間Siと外周側空間Soとに仕切る仕切部4であるといえる。
【0033】
さらに、中板315には、フレキシブルフラットケーブル2が挿通される挿通孔31sが形成されている。かかる挿通孔31sは、中板315の外周面31aから径内側に向かって湾曲(
図4及び
図5における符号31sc参照)した後に、中板315の内周面31bに接するように形成されたスリット状の狭い通路であり、挿通されたフレキシブルフラットケーブル2を挟み込んで確実に保持することができる。そのため、挿通孔31sは、フレキシブルフラットケーブル2における中心側空間Siに収容された中心側巻回部21と外周側空間Soに収容された外周側巻回部22との境界部分23を保持する保持部5であるといえる。
【0034】
加えて、前述した外周板312と、右端板313と、前端板314とに囲まれた空間には、フレキシブルフラットケーブル2の案内通路31pが形成されている。案内通路31pは、前後方向Xに沿って設けられた一対の案内板316で構成されている。そして、案内通路31pは、その後端部分が後方側Bの内部(外周側空間So)に向かって開放され、その前端部分が前方側Fの外部に向かって開放されている。そのため、案内通路31pは、外周側空間Soの内側から外側に向かって引き出される又は外側から内側に向かって巻き取られるフレキシブルフラットケーブル2を案内する案内口7であるといえる。
【0035】
他方で、アッパーカバー32は、略円形状の蓋板321と、蓋板321の外縁部分から下方側Dに向かって延設された外周板322と、外周板322の右端縁から前方側Fに延びた右端板323と、外周板322の前端縁から右方側Rに延びた前端板324とを有している。蓋板321には、その中心軸Cを中心として上下方向Zに貫通する貫通孔32hが形成されている。
【0036】
また、アッパーカバー32は、その中心軸Cを中心として略円筒状の内周板325を有している。かかる内周板325は、蓋板321の径方向中途部分から下方側Dに向かって延設されており、その外径がロアケース31の外周板312の内径よりも僅かに小さく設定されている。そのため、ロアケース31に対してアッパーカバー32を取り付けた際には、外周板312と内周板325とが嵌合することとなる。
【0037】
このような構成により、アッパーカバー32は、中心側空間Si及び外周側空間Soの開口端(上方側Uの開口である)を塞ぐことができる。このとき、ロアケース31の外周板312とアッパーカバー32の外周板322は、互いの先端部分が当接することとなる。同様に、ロアケース31の右端板313とアッパーカバー32の右端板323、ロアケース31の前端板314とアッパーカバー32の前端板324も、互いの先端部分が当接することとなる。
【0038】
なお、本実施形態に係るケーブル巻取装置1は、ロアケース31に仕切部4が設けられ、かかる仕切部4の先端部分がアッパーカバー32の蓋板321に当接するよう構成されている。この点、アッパーカバー32に仕切部4が設けられ、かかる仕切部4の先端部分がロアケース31の底板311に当接するよう構成されていてもよい。この場合においても、仕切部4に形成された挿通孔31sが保持部5とされてもよい。また、案内口7がアッパーカバー32側に設けられてもよい。
【0039】
次に、回転軸6について説明する。回転軸6は、フレキシブルフラットケーブル2を保持した状態でフレキシブルフラットケーブル2の帯幅方向(上下方向Z)に沿う方向を中心として回転する回転体である。回転軸6は、フレキシブルフラットケーブル2を保持するロテータ61と、ロテータ61の挿入軸として機能するスリーブ62とを有している。以下に、ロテータ61とスリーブ62について説明する。
【0040】
ロテータ61は、略円環状の蓋板611と、蓋板611の内縁部分から下方側Dに向かって延設された筒板612とを有している。蓋板611には、その周方向の一部に上方側Uに向かって延出されたコネクタホルダ613が形成されており、かかるコネクタホルダ613の内側には、フレキシブルフラットケーブル2の各導電体と電気的に接続されたコネクタ(図示せず)が収容されている。
【0041】
また、筒板612は、かかる筒板612を中心としてフレキシブルフラットケーブル2が渦巻状に巻回される。そのため、筒板612の半径は、フレキシブルフラットケーブル2の許容曲げ半径よりも大きく設定されている。さらに、筒板612の上下方向Zの長さは、フレキシブルフラットケーブル2の帯幅方向(上下方向Z)の長さよりも長く設定されている。そして、フレキシブルフラットケーブル2は、中心側巻回部21の最も内側の内周側部分において、上方側Uに向かって折り曲げられ、その末端部分に前述したコネクタ(図示せず)が取り付けられている。
【0042】
他方で、スリーブ62は、略円環状の底板621と、底板621の外縁部分から上方側U及び下方側Dに向かって延設された筒板622とを有している。底板621には、上方側Uに向かって延出されたボルトガイド623が形成されており、かかるボルトガイド623の内側には、ロアプレート303の回転軸部30sに螺合されるボルト(図示せず)が挿通されている。
【0043】
また、筒板622は、ロアケース31の中央部分に形成された貫通孔31hに挿入される。そのため、筒板622の外径は、貫通孔31hの内径よりも僅かに小さく設定されている。さらに、筒板622の上下方向Zの長さは、貫通孔31hの上下方向Zの長さよりも十分に長く設定されている。よく詳しくは、下方側Dに向かって長く延設されることで十分に長く設定されている。そのため、前述したボルト(図示せず)の頭部が収まることとなる。但し、シート200に連動して回転軸6が回転すればよく、このような構造に限定するものではない。
【0044】
このように、ケーブル巻取装置1は、帯状のフレキシブルフラットケーブル2と、フレキシブルフラットケーブル2を収容する収容部3と、収容部3の内部空間を中心側空間Siと外周側空間Soとに仕切る仕切部4と、フレキシブルフラットケーブル2における中心側空間Siに収容された部分と外周側空間Soに収容された部分との境界部分23を保持する保持部5とを備えている。また、中心側空間Siの中央部分には、フレキシブルフラットケーブル2を保持した状態でフレキシブルフラットケーブル2の帯幅方向(上下方向Z)に沿う方向を中心として回転する回転軸6が設けられ、外周側空間Soの外縁部分には、外周側空間Soの内側から外側に向かって引き出される又は外側から内側に向かって巻き取られるフレキシブルフラットケーブル2を案内する案内口7が設けられている。そして、フレキシブルフラットケーブル2には、中心側空間Siにて回転軸6を中心として渦巻状に巻回された中心側巻回部21が形成され、外周側空間Soにて仕切部4を中心として渦巻状に巻回された外周側巻回部22が形成され、フレキシブルフラットケーブル2における中心側巻回部21の内周側部分から延出された一方端がスライド動作及び回転動作を可能とするシート200の電気部材に接続され、フレキシブルフラットケーブル2における外周側巻回部の外周側部分から延出された他方端が車両100側の電気部材に接続される。
【0045】
このようなケーブル巻取装置1によれば、シート200のスライド動作に応じてフレキシブルフラットケーブル2の引き出しや巻き取りが可能であるとともに、シート200の回転動作によるフレキシブルフラットケーブル2の捩れを防止できる。
【0046】
詳述すると、
図6に示すように、シート200が後方側Bに移動(スライド動作)してフレキシブルフラットケーブル2が引っ張られた場合は(矢印Ro参照)、外周側空間Soにおける外周側巻回部22が巻き絞られ、外周側空間Soの外側に向かって引き出されることとなる。反対に、
図7に示すように、シート200が前方側Fに移動(スライド動作)してフレキシブルフラットケーブル2が案内口7より外周側空間Soの内側に押し込まれた場合は(矢印Ru参照)、外周側空間Soにおける外周側巻回部22が巻き緩められ、外周側空間Soの内側に向かって巻き取られることとなる。
【0047】
また、
図8に示すように、シート200が左方側回りRlに回転(回転動作)した場合は(矢印Tl参照)、シート200の回転動作に連動して回転軸6が左方側回りRlに回転するので、中心側空間Siにおける中心側巻回部21が巻き緩められる。こうして、シート200の回転動作に追従させることにより、フレキシブルフラットケーブル2の捩れを防止することができる。反対に、シート200が右方側回りRrに回転(回転動作)した場合は(矢印Tr参照)、シート200の回転動作に連動して回転軸6が右方側回りRrに回転するので、中心側空間Siにおける中心側巻回部21が巻き絞られる。こうして、シート200の回転動作に追従させることにより、フレキシブルフラットケーブル2の捩れを防止することができる。
【0048】
また、ケーブル巻取装置1において、中心側巻回部21の巻回方向と外周側巻回部22の巻回方向とが同方向とされている(
図5における矢印Ri,Ro参照)。
このようなケーブル巻取装置1によれば、フレキシブルフラットケーブル2における中心側巻回部21が巻き絞られたり巻き緩められたりした際に、中心側巻回部21と外周側巻回部22との境界部分23に局所的な負荷が作用してしまうことを防止できる。また、フレキシブルフラットケーブル2における外周側巻回部22が巻き絞られたり巻き緩められたりした際にも、中心側巻回部21と外周側巻回部22との境界部分23に局所的な負荷が作用してしまうことを防止できる。
【0049】
また、ケーブル巻取装置1において、保持部5は、仕切部4に形成されたフレキシブルフラットケーブル2が挿通される挿通孔31sである。
このようなケーブル巻取装置1によれば、フレキシブルフラットケーブル2における中心側巻回部21と外周側巻回部22とを連続した一のフレキシブルフラットケーブル2にて構成することができる。また、簡素な構造でありながら、中心側巻回部21と外周側巻回部22との境界部分23を確実に保持することが可能となる。
【0050】
また、ケーブル巻取装置1において、フレキシブルフラットケーブル2は、一枚又は複数枚を重ね合わせたフレキシブルフラットケーブルである。
このようなケーブル巻取装置1によれば、フレキシブルフラットケーブル2を小さな曲げ半径で湾曲させることができる。そのため、中心側空間Si及び外周側空間Soの径を小さくでき、ひいてはケーブル巻取装置1の小型化を実現することが可能となる。また、湾曲したフレキシブルフラットケーブル2が元の形状に戻ろうとする高い弾性を有するため、その反発力のみで各巻回部21,22が巻き緩んで広がるようになる。したがって、構造の簡素化を実現することも可能となる。
【0051】
ところで、本実施形態に係るケーブル巻取装置1は、挿通孔31sにてフレキシブルフラットケーブル2の導出方向を規制している。この点、
図10に示すように、規制片317によってフレキシブルフラットケーブル2の導出方向を規制することが考えられる。
【0052】
すなわち、挿通孔31sにてフレキシブルフラットケーブル2を適宜に湾曲させてフレキシブルフラットケーブル2の導出方向を規制してもよい。あるいは保持部5から導出されたフレキシブルフラットケーブル2の導出方向を規制する規制片317が設けられてもよい。
【0053】
このようなケーブル巻取装置1としても、フレキシブルフラットケーブル2の導出方向を確実に規制できる。そのため、シート200のスライド動作及び回転動作によってフレキシブルフラットケーブル2が折れ曲がり、局所的に負荷が作用してしまうことを防止できる。
【0054】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
ケーブル巻取装置はケーブル巻取装置1に対応し、
フラットケーブルはフレキシブルフラットケーブル2に対応し、
収容部は収容部3に対応し、
仕切部は仕切部4に対応し、
保持部は保持部5に対応し、
回転軸は回転軸6に対応し、
案内口は案内口7に対応し、
シート給電装置はシート給電装置10に対応し、
中心側巻回部は中心側巻回部21に対応し、
外周側巻回部は外周側巻回部22に対応し、
収容ケースはロアケース31に対応し、
収容カバーはアッパーカバー32に対応し、
規制片は規制片317に対応し、
挿通孔は挿通孔31sに対応し、
電気供給源は車両100に対応し、
取付対象はシート200に対応し、
中心側空間は中心側空間Siに対応し、
外周側空間は外周側空間Soに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0055】
例えば、ケーブル巻取装置1において、中心側巻回部21と外周側巻回部22の巻回方向は、中心軸Cに沿う方向である上方側Uから視て、径内側から径外側に向かって左回りとされている。この点、
図11に示すように、中心側巻回部21及び外周側巻回部22のいずれかの巻回方向を逆回りとすることが考えられる(
図11における矢印Ri,Ro参照)。
【0056】
また、ケーブル巻取装置1において、フレキシブルフラットケーブル2は、フレキシブルフラットケーブルであるとして説明した。しかしながら、断面形状が扁平である、いわゆるリボン電線であってもよい。リボン電線とは、導電体を被覆した電線を平行に並べて一体化したものであり、フレキシブルフラットケーブルと同じように小さな曲げ半径で湾曲させることができる。リボン電線であったとしても、一枚又は複数枚を重ね合わせて用いることが可能である。
【0057】
さらに、ケーブル巻取装置1においては、本願発明の技術的思想を具現化したものであり、スライド動作及び回転動作を可能としたシート200のシート給電装置10に適用した場合を説明した。しかしながら、回転動作だけでなく、テレスコピック動作を可能としたステアリングハンドルのステアリング給電装置に適用することも考えられる。つまり、本願発明の技術的思想は、いわゆる回転コネクタ装置として具現化することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…ケーブル巻取装置
2…フラットケーブル
3…収容部
4…仕切部
5…保持部
6…回転軸
7…案内口
10…シート給電装置
21…中心側巻回部
22…外周側巻回部
31…ロアケース
32…アッパーカバー
317…規制片
31s…挿通孔
100…車両
200…シート
Si…中心側空間
So…外周側空間