(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142825
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】プローバ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241003BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20241003BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R31/26 J
G01R31/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055172
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 徹夫
【テーマコード(参考)】
2G003
2G132
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA10
2G003AG04
2G003AH05
2G132AE01
2G132AE04
2G132AF02
2G132AF06
2G132AL03
4M106AA01
4M106BA01
4M106DD03
4M106DD05
4M106DD10
4M106DD13
4M106DD23
4M106DH12
4M106DJ02
4M106DJ03
(57)【要約】
【課題】プローブの先端の位置を迅速に検出することができるプローバを提供する。
【解決手段】プローバ10は、ウェーハWを保持するウェーハチャック16と、ウェーハチャック16に対向する面にプローブ25を有するプローブカード24と、プローブカード24に対してウェーハチャック16を相対的に移動させる移動機構13,14,15と、2つのカメラ18
L,18
Rを有し、2つのカメラ18
L,18
Rでプローブ25を撮像するプローブ撮像ユニット18と、2つのカメラ18
L,18
Rで撮像された2つの画像I
L,I
Rに基づいて、プローブ25の先端Tの位置を検出するプローブ位置検出部27と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを保持するウェーハチャックと、
前記ウェーハチャックに対向する面にプローブを有するプローブカードと、
前記プローブカードに対して前記ウェーハチャックを相対的に移動させる移動機構と、
2つのカメラを有し、前記2つのカメラで前記プローブを撮像するプローブ撮像ユニットと、
前記2つのカメラで撮像された2つの画像に基づいて、前記プローブの先端の位置を検出するプローブ位置検出部と、
を備えるプローバ。
【請求項2】
前記2つのカメラの撮影光軸は互いに交差する、
請求項1に記載のプローバ。
【請求項3】
前記2つのカメラはそれぞれテレセントリック光学系により構成されたカメラである、
請求項2に記載のプローバ。
【請求項4】
前記移動機構は、前記プローブカードに対して前記プローブ撮像ユニットを相対的に移動させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のプローバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ上に形成された半導体装置(チップ)の電気的特性の検査を行うプローバに関し、プローブの先端の位置を迅速に検出することができるプローバに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程は、多数の工程を有し、品質保証及び歩留まりの向上のために、各種の製造工程で各種の検査が行われる。例えば、ウェーハ上に半導体装置を含む複数のチップが形成された段階で、各チップの電極パッドは、テスタに接続され、テスタから電源及びテスト信号が供給される。そして、各チップ上に形成された半導体装置から出力される信号は、テスタによって測定される。これにより、半導体装置が正常に動作するかを電気的に検査される(ウェーハレベル検査)。このウェーハレベル検査はプローバを用いて行われる。
【0003】
ウェーハレベル検査では、プローバに設置されたプローブカードのプローブ(触針)をチップ上の電極パッドに正確に接触させる必要がある。例えば、特許文献1に記載のプローブ装置(プローバ)は、プローブカードのプローブを下方から撮像する触針用光学装置(プローブ位置検出カメラ)を備え、プローブ位置検出カメラで撮像することによりプローブの先端を検出し、その検出結果に基づいてウェーハを載置するチャック部のZステージを駆動してプローブの先端を電極パッドに接触させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている技術では、Zステージを駆動してプローブ位置検出カメラを上下に動かしてプローブ位置検出カメラの焦点をプローブの先端に合わせることにより、プローブの先端の位置を検出している。特にプローブ位置検出カメラの焦点深度が浅い場合には、プローブとプローブ位置検出カメラとが衝突しないようにプローブカードとプローブ位置検出カメラとの相対距離を小刻みに変更しながらプローブ位置検出カメラの焦点をプローブの先端に合わせる必要がある。そのため、プローブの先端の位置を検出するために時間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、プローブの先端の位置を迅速に検出することができるプローバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係るプローバは、ウェーハを保持するウェーハチャックと、ウェーハチャックに対向する面にプローブを有するプローブカードと、プローブカードに対してウェーハチャックを相対的に移動させる移動機構と、2つのカメラを有し、2つのカメラで前記プローブを撮像するプローブ撮像ユニットと、2つのカメラで撮像された2つの画像に基づいて、プローブの先端の位置を検出するプローブ位置検出部と、を備える。
【0008】
第1態様に係るプローバにおいて、2つのカメラで撮像された画像に基づいて、プローブの先端の位置を検出することができる。プローブ位置検出カメラの焦点合わせに要する時間が実質的にないため、プローブの先端の位置を迅速に検出することが可能となる。
【0009】
好ましくは、2つのカメラの撮影光軸は互いに交差する。これにより、プローブ位置検出部は、比較的容易な幾何学的演算を用いてプローブの先端の位置を検出することができる。
【0010】
より好ましくは、2つのカメラはそれぞれテレセントリック光学系により構成されたカメラである。2つのカメラがテレセントリック光学系を有するため、撮像された画像におけるプローブの先端の大きさ(撮影倍率)はカメラから先端までの距離にほとんど依存せず、ほぼ一定である。そのため、プローブ位置検出部は、画像上でのプローブの先端の位置に基づいて比較的容易な演算で実空間でのプローブの先端の位置を検出することができる。
【0011】
また、好ましくは、移動機構は、プローブカードに対してプローブ撮像ユニットを相対的に移動させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プローブの先端の位置を迅速に検出することができることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】プローブの先端の位置の検出原理を説明する図である。
【
図4】プローブの先端の位置の検出原理を説明する図である。
【
図5】プローブの先端の位置の検出原理を説明する図である。
【
図6】プローブの先端の位置の検出原理を説明する図である。
【
図7】プローブの先端の位置の検出原理を説明する図である。
【
図8】プローブの先端と各カメラの光軸との位置関係を説明する図である。
【
図9】各カメラの視野におけるプローブの先端の位置を説明する図である。
【
図10】実空間におけるプローブの先端のX座標及びY座標の算出を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0015】
<ウェーハテストシステムの構成>
まず、
図1を用いてウェーハテストシステム1の概略構成について説明する。なお、図中のXYZ軸は互いに直交する軸であり、XY軸が水平方向に平行な軸であり、Z軸が水平方向に直交する軸である。以下、図中の上下方向であるZ軸方向の上方及び上面を適宜「上方」及び「上面」といい、Z軸方向の下方及び下面を適宜「下方」及び「下面」という。
【0016】
ウェーハテストシステム1は、複数のチップの各々の電気的特性を検査する。このウェーハテストシステム1は、プローバ10とテスタ30とを備える。
【0017】
プローバ10は、ウェーハW上の個々のチップ(不図示)の表面に形成された
電極(不図示)にプローブ25を接触させる。テスタ30は、プローブ25に電気的に接続され、個々のチップの電気的特性を検査する。
【0018】
プローバ10は、基台11と、ベース12と、Yステージ13と、Xステージ14と、Zθステージ15と、ウェーハチャック16と、制御部17と、プローブ撮像ユニット18と、ウェーハアライメントカメラ19と、ヘッドステージ22と、カードホルダ23と、プローブカード24と、を備える。Yステージ13と、Xステージ14と、Zθステージ15は、本発明の移動機構に相当する。
【0019】
基台11の上面には、ベース12が固定されている。なお、基台11の代わりに脚部材を用いてもよいし、或いは基台11とベース12一体に形成してもよい。
【0020】
ベース12の上面には、不図示のY移動部を介してYステージ13がY軸方向に移動自在に支持されている。Y移動部は、ベース12の上面に設けられ且つY軸に平行なガイドレールと、Yステージ13の下面に設けられ且つガイドレールに係合するスライダと、Yステージ13をY軸方向に移動させるモータ等の駆動機構と、を備える。このY移動部を駆動することにより、ベース12上でYステージ13と、後述のXステージ14及びZθステージ15等とが一体的にY軸方向に移動される。
【0021】
Yステージ13の上面には、不図示のX移動部を介してXステージ14がX軸方向に移動自在に支持されている。X移動部は、Yステージ13の上面に設けられ且つX軸に平行なガイドレールと、Xステージ14の下面に設けられ且つガイドレールに係合するスライダと、Xステージ14をX軸方向に移動させるモータ等の駆動機構と、を備える。このX移動部を駆動することにより、Yステージ13上でXステージ14及び後述のZθステージ15等が一体的にX軸方向に移動される。
【0022】
Xステージ14の上面には、Zθステージ15が設けられている。Zθステージ15には、不図示のZθ移動部が設けられている。また、Zθステージ15の上面には、不図示のZθ移動部を介してウェーハチャック16が保持されている。Zθ移動部は、例えば、Zθステージ15の上面をZ軸方向に移動自在な昇降機構と、且つこの上面をZ軸の軸周りに回転させる回転機構とを有する。このため、Zθ移動部は、Zθステージ15の上面に保持されているウェーハチャック16をZ軸方向に移動させると共に、Z軸の軸周りに回転させる。
【0023】
ウェーハチャック16は、ウェーハWをその裏面側から保持する。このウェーハチャック16は、既述のYステージ13とXステージ14とZθステージ15とにより、ベース12に対してXYZ軸方向に移動自在に支持されていると共に、Z軸の軸周りに回転自在に支持されている。これにより、ウェーハチャック16に保持されているウェーハWと、後述のプローブ25とを相対的に移動させることができる。
【0024】
ヘッドステージ22は、例えばプローバ10の不図示の筐体の天板を構成しており、不図示の支柱等によってウェーハチャック16(ウェーハW)の上方に支持されている。ヘッドステージ22の中央部には、プローブカード24を保持する略環状のカードホルダ23が設けられている。すなわち、ヘッドステージ22は、カードホルダ23を介してプローブカード24を保持する。
【0025】
プローブカード24は複数のプローブ25を有している。これらプローブ25は、検査対象のウェーハWの不図示の各チップの電極の配置パターンに対応するパターンでプローブカード24に配置されている。
【0026】
プローブ撮像ユニット18は、2つのカメラ18L及び18Rを有し、各々のカメラ18L及び18Rを用いてプローブ25を撮像する。プローブ撮像ユニット18の構成について詳しくは後述する。
【0027】
ウェーハアライメントカメラ19は、ベース12上に設けられた不図示の支柱によって支持されており、ウェーハチャック16に保持されているウェーハWのチップ(不図示)を上方から撮影する。このウェーハアライメントカメラ19にて撮影されたチップの画像に基づき、チップの電極の位置を検出することができる。
【0028】
制御部17は、プローバ10全体の動作を統括制御する。制御部17は、例えばパーソナルコンピュータのような演算装置により構成され、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサとして、例えば、CPU(Central Processing Unit、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイスが挙げられる。また、プログラマブル論理デバイスとして、例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)等が挙げられる。
【0029】
制御部17の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。制御部17は、例えば、機能ごとに、テスタ通信制御部26と、プローブ位置検出部27と、ステージ移動制御部28と、を備える。
【0030】
テスタ通信制御部26は、テストヘッド31とプローバ10との間でウェーハレベル検査に用いるテスト信号及び制御情報等の通信を制御する。通信方式は有線通信でもよいし、無線通信でもよい。
【0031】
プローブ位置検出部27は、プローブ撮像ユニット18を構成する2つのカメラ18L及び18Rで撮像されたプローブ25の画像に基づいてプローブ25の先端Tの位置を検出する。プローブ位置検出部27によるプローブ25の先端Tの位置の検出について詳しくは後述する。
【0032】
ステージ移動制御部28は、Yステージ13、Xステージ14及びZθステージ15に設けられた不図示の駆動機構を介して各ステージの移動を制御する。ステージ移動制御部28は、ウェーハアライメントカメラ19が検出した電極の位置と、プローブ位置検出部27が検出したプローブ25の先端Tの位置とに基づいて、Yステージ13、Xステージ14及びZθステージ15等を移動させることにより、プローブ25とウェーハWのチップの電極との位置合わせを行う。
【0033】
テスタ30は、テストヘッド31と、テストヘッド31に設けられたコンタクトリング32とを備えている。プローブカード24には、各プローブ25に接続される端子が設けられている。そして、コンタクトリング32は、プローブカード24の各端子に接触可能な配置パターンで配置されたスプリングプローブを有する。
【0034】
テストヘッド31は、不図示の支持機構により、プローバ10に対して保持される。このテストヘッド31は、プローブカード24及びプローブ25等を介して不図示のチップの電極に電気的に接続される。そして、テストヘッド31は、チップに電流又は電圧等を印加することにより、チップの電気的特性を検査する。
【0035】
<プローブ撮像ユニットの構成>
次に、
図2を用いてプローブ撮像ユニット18の構成について説明する。
図2に示すように、プローブ撮像ユニット18は2つのカメラ18
L及び18
Rを備える。例えば、プローブ撮像ユニット18(カメラ18
L及び18
R)は、ウェーハチャック16の近傍に設けられる。プローブ撮像ユニット18は、不図示の撮像ユニット支持部材に固定されており、この撮像ユニット支持部材によりXステージ14上に支持されている。したがって、プローブ撮像ユニット18は、Yステージ13及びXステージ14によりXY軸方向に移動自在に構成される。なお、撮像ユニット支持部材は、プローブ撮像ユニット18をZ軸方向に昇降自在に支持するものであってもよい。
【0036】
カメラ18L及び18Rは、それぞれプローブ25を撮像する。カメラ18L及び18Rは基本的に同じ構成を有し、好ましくは、それぞれテレセントリック光学系を備える。テレセントリック光学系を備えるカメラでは、撮像された画像における被写体の大きさはカメラから被写体までの距離にほとんど依存せず、ほぼ一定である。そのため、カメラ18L及び18Rがテレセントリック光学系を備える場合、プローブ位置検出部27は、画像上でのプローブ25の先端Tの位置に基づいて、非テレセントリック光学系を備えるカメラよりも比較的容易な演算で実空間でのプローブ25の先端Tの位置を検出することができる。
【0037】
また、カメラ18L及び18Rは、好ましくは、従来のプローバで用いられていたプローブ位置検出カメラと比較して、各カメラの視野が広く且つ焦点深度が深いものが用いられる。
【0038】
なお、カメラ18L及び18Rは、両側テレセントリック光学系を備えてもよいし、物体側テレセントリック光学系を備えてもよい。
【0039】
2つのカメラ18L及び18RはX軸方向に互いに離隔して、プローブ25の方に向くように配置される。なお、カメラ18L及び18RのX軸方向の距離を撮影基線長Lという。
【0040】
図2において、一点鎖線はカメラ18
Lの撮影光軸(以下、単に光軸と称する)OX
L及びカメラ18
Rの光軸OX
Rを示す。光軸OX
L及び光軸OX
RはXZ平面に平行な面上にあり、且つ、それぞれZ軸に対してX軸方向に傾斜している。すなわち、光軸OX
L及び光軸OX
Rは、Z軸に対してY軸方向には傾斜しておらず、且つ、XZ平面に平行な平面上においてプローブ25が存在する側で互いに向き合う方向に傾斜しており、互いに交差している。
【0041】
より具体的に説明すると、
図2に示すようにY軸方向から見た場合、左側のカメラ18
Lの光軸OX
Lと右側のカメラ18
Rの光軸OX
RはZ軸に対してX軸方向に互いに同一角度で逆向きに傾斜している。換言すれば、左側のカメラ18
Lの光軸OX
LはX軸方向に対して鋭角側の傾斜角がθ(°)で傾斜し、且つ、右側のカメラ18
Rの光軸OX
RはX軸方向に対して鋭角側の傾斜角がθ(°)で傾斜している。
【0042】
2つのカメラ18L及び18Rは、Z軸に対してX軸方向に同一角度で逆向きに傾斜した状態でプローブ25の方に向いているため、光軸OXL及び光軸OXRはXZ平面に平行な面上の交点O(オー)において交差する。カメラ18L及び18Rの撮影基準面RP(「撮影基線」ともいう。)はXY平面に平行な面であり、撮影基準面RPから交点OまでのZ軸方向の距離(高さ)を撮影距離Hとする。
【0043】
なお、カメラ18L及び18Rの撮影基線長L、傾斜角θ、及び撮影距離Hは既知であり、予めプローバ10の制御部17内のメモリにカメラ情報として記憶されている。交点Oの位置は、制御部17内のメモリに記憶されたカメラ情報から算出することが可能である。
【0044】
図2では、一例として、カメラ18
L及び18
Rの撮影基準面RPは、ウェーハチャック16の上面と略一致する位置に設定されているが、カメラ18
L及び18
Rの撮影基準面RPの位置を
図2に示した例に限定する趣旨ではない。
【0045】
なお、撮影基線長L及撮影距離Hについては、例えば、カメラ18L及び18Rに設けられたレチクルマークやビームなどの基準から求めるようにしてもよい。
【0046】
<プローブ位置の検出原理>
次に、
図3から
図7を用いて、プローブの先端の位置の検出原理について説明する。
図3から
図7の上側の図は、プローブ25の先端Tと交点Oとの位置関係を示した図である。
図3から
図7の下側の図は、各図の上側の図に示した位置関係において各カメラ18
L及び18
Rによって撮像された画像中でのプローブ25の先端Tの位置を示す。なお、以下では、説明の便宜上、
図3から
図7の上側の図において、2つのプローブ25の先端Tの中央位置を、単にプローブ25の先端Tの位置と略して説明する。
【0047】
図3から
図7の下側の図において、左側の図はカメラ18
Lの視野を示し、カメラ18
Lによって撮像される画像I
Lに対応する(以下、左画像と略称する)。右側の図はカメラ18
Rの視野を示し、カメラ18
Rによって撮像される画像I
Rに対応する(以下、右画像と略称する)。以下、簡易的にカメラ18
L及び18
Rの視野と撮像される画像I
L及びI
Rとを区別せず、同じ参照符号を用いて説明する。
【0048】
画像I
L及びI
Rにおいて、実空間のY軸方向に平行な方向をy軸方向とし、y軸方向に対して垂直な方向をx軸方向とする。また、
図3から
図7中の画像I
L及びI
Rにおいて、黒い丸は2つのプローブ25の先端Tを示し、点線の交点は視野中心O
L及びO
Rを示し、xy平面の原点に相当する。
【0049】
図3の上側の図では、実空間(XYZ空間)においてプローブ25の先端Tの位置が交点Oと合っている。この場合、
図3の下側に示す左画像I
L及び右画像I
Rにおいてプローブ25の先端Tは視野中心O
L及びO
Rの位置に撮像されているため、左画像I
Lと右画像I
Rとは、ほぼ同一である。
【0050】
図4の上側の図では、実空間においてプローブ25の先端TにおけるXY軸方向の位置は交点Oと合っているが、Z軸方向の位置が交点Oよりも低い(つまり、プローブ25の先端Tとカメラ18
L及び18
RとのZ軸方向の距離が撮影距離Hよりも短い)。この場合、
図4の下側に示すように、左画像I
Lではプローブ25の先端Tがx軸方向において視野中心O
Lよりも右側(矢印A1で示す方向)に位置し、右画像I
Rではプローブ25の先端Tがx軸方向において視野中心O
Rよりも左側(矢印A2で示す方向)に位置する。
【0051】
図5の上側の図では、実空間においてプローブ25の先端TにおけるXY軸方向の位置は交点Oと合っているが、Z軸方向の位置が交点Oよりも高い(つまり、プローブ25の先端Tとカメラ18
L及び18
RとのZ軸方向の距離が撮影距離Hよりも長い)。この場合、
図4に示す場合とは逆に、
図5の下側に示すように、左画像I
Lではプローブ25の先端Tがx軸方向において視野中心O
Lよりも左側(矢印A3で示す方向)に位置し、右画像I
Rではプローブ25の先端Tがx軸方向において視野中心O
Rよりも右側(矢印A4で示す方向)に位置する。
【0052】
このように、実空間においてプローブ25の先端TにおけるXY軸方向の位置は交点Oと合っているが、Z軸方向の位置が交点Oの位置とは異なっている場合、左画像IL及び右画像IRにおいてプローブ25の先端Tは視野中心OL及びORからx軸方向に離れて位置し、左画像ILでのプローブ25の先端Tの位置と右画像IRでのプローブ25の先端Tの位置とは視野中心OL及びORを挟んで互いに逆向きの位置となる。そして、左画像IL及び右画像IRにおいて視野中心OL及びORからプローブ25の先端Tまでの距離及び方向は、実空間におけるプローブ25の先端TのZ軸方向の位置と交点Oの位置との位置関係に応じて変化する。
【0053】
図6の上側の図では、実空間においてプローブ25の先端TにおけるYZ軸方向の位置は交点Oと合っているが、X軸方向の位置が交点Oよりも右側(カメラ18
R側)にある。この場合、
図6の下側に示すように、左画像I
L及び右画像I
Rの両方において、プローブ25の先端Tがx軸方向において視野中心O
L及びO
Rよりも右側(矢印A5及びA6で示す方向)に位置する。
【0054】
図7の上側の図では、実空間においてプローブ25の先端TにおけるYZ軸方向の位置は交点Oと合っているが、X軸方向の位置が交点Oよりも左側(カメラ18
L側)にある。この場合、
図7の下側に示すように、左画像I
L及び右画像I
Rの両方において、プローブ25の先端Tがx軸方向において視野中心O
L及びO
Rよりも左側(矢印A7及びA8で示す方向)に位置する。
【0055】
このように、実空間においてプローブ25の先端TにおけるYZ軸方向の位置は交点Oと合っているが、X軸方向の位置が交点Oの位置とは異なっている場合、左画像IL及び右画像IRにおいてプローブ25の先端Tは視野中心OL及びORからx軸方向に離れた位置に位置し、左画像ILでのプローブ25の先端Tの位置と右画像IRでのプローブ25の先端Tの位置とは視野中心OL及びORに対して互いに同一側の位置となる。そして、左画像IL及び右画像IRにおいて視野中心OL及びORからプローブ25の先端Tまでの距離及び方向は、実空間においてプローブ25の先端TにおけるX軸方向の位置と交点Oの位置との位置関係に応じて変化する。
【0056】
また、図示は省略するが、実空間においてプローブ25の先端TにおけるY軸方向の位置が交点Oの位置とは異なっている場合、左画像IL及び右画像IRにおいてプローブ25の先端Tは視野中心OL及びORからy軸方向に離れた位置に位置し、左画像ILでのプローブ25の先端Tの位置と右画像IRでのプローブ25の先端Tの位置とは視野中心OL及びORに対して互いに同一側の位置となる。そして、左画像IL及び右画像IRにおいて視野中心OL及びORからプローブ25の先端Tまでの距離及び方向は、実空間におけるプローブ25の先端TのY軸方向の位置と交点Oの位置との位置関係に応じて変化する。
【0057】
従って、
図3から
図7に示すように、交点Oに対するプローブ25の先端Tの相対位置を、2つのカメラ18
L及び18
Rによって撮像された画像I
L及びI
Rから求めることができる。プローブ位置検出部27は、この原理を利用して画像I
L及びI
Rからプローブ25の先端Tの位置を幾何学的に検出する。
【0058】
<プローブ位置の検出方法>
以下、
図8から
図10を用いてプローブ位置検出部27によるプローブ25の先端Tの位置の検出方法について具体的に説明する。
【0059】
図8は、1つのプローブ25の先端Tと、各カメラ18
L及び18
Rの光軸OX
L及びOX
Rとの位置関係の一例を示す。
図8において、一点鎖線は光軸OX
L及び光軸OX
Rを示す。太い実線はそれぞれカメラ18
L及び18
Rの視野(画像に対応)I
L及びI
Rを示す。なお、カメラ18
L及び18
Rによってプローブ25の先端Tを撮像する際、カメラ18
L及び18
Rの焦点はおおまかにプローブ25の先端Tに一致されるように調整されているものとする。カメラ18
L及び18
Rの焦点とプローブ25の先端Tの位置ずれが所定距離(カメラ18
L及び18
Rの焦点深度)を超える場合には、カメラ18
L及び18
Rの焦点を、おおまかにプローブ25の先端Tに合わせる処理(焦点調整ステップ)が行われる。
【0060】
また、ここでは、説明の便宜上、カメラ18L及び18Rの撮影倍率が等倍(1倍)であり、カメラ18L及び18Rの撮影画像上における距離は実空間上の距離と等しいものとする。カメラ18L及び18Rの撮影倍率が等倍以外の場合には、カメラ18L及び18Rの撮影倍率に基づき、カメラ18L及び18Rの撮影画像上における距離を実空間上の距離に変換して計算すればよい。
【0061】
視野I
L及びI
RはXZ平面に対して垂直な平面であるため、
図8において視野I
L及びI
Rは太い実線として表れている。実際には
図9に示すように視野I
L及びI
Rは平面である。視野I
Lと光軸OX
Lとの交点O
Lはカメラ18
Lの視野中心を示し、視野I
Rと光軸OX
Rとの交点O
Rはカメラ18
Rの視野中心を示す。
【0062】
図8において、実空間における交点Oを原点とした場合に、プローブ25の先端Tの空間座標をT(X
P,Y
P,Z
P)とする(交点Oに対する先端Tの相対座標)。
図8に示すように、プローブ25の先端Tの位置を光軸OX
Lに沿ってカメラ18
Lの視野I
L上に投影した位置が、左画像I
Lにおけるプローブ25の先端Tの位置T
Lに対応する(
図8において白丸で示す)。同様に、プローブ25の先端Tの位置を光軸OX
Rに沿ってカメラ18
Rの視野I
R上に投影した位置が、カメラ18
Rによって撮像された右画像I
Rにおけるプローブ25の先端Tの位置T
Rに対応する(
図8において白丸で示す)。
【0063】
図9は、
図8に示す位置関係における各カメラの視野I
L及びI
Rを示す。
図9において、左側の図はカメラ18
Lの視野(画像)I
Lを示し、右側の図はカメラ18
Rの視野(画像)I
Rを示す。視野I
L及びI
Rにおいてプローブ25の先端Tの位置T
L及びT
Rを白丸で示す。また、視野I
Lにおいて視野中心O
Lを原点とするT
Lの座標を(x
L,y
L)とし、視野I
Rにおいて視野中心O
Rを原点とするT
Rの座標を(x
R,y
R)とする。
【0064】
図8及び
図9に示す幾何学的関係において、まず、光軸OX
L及び光軸OX
RはY軸方向には傾斜しておらず、且つ、同一平面上にあるため、実空間におけるプローブ25の先端TのY座標Y
Pは、視野I
L及びI
Rにおけるプローブ25の先端Tの位置T
L及びT
Rのy座標y
L及びy
Rに相当する。つまり、y
L=Y
P又はy
R=Y
Pが成立する。
【0065】
続いて、
図10を用いて実空間における交点Oを原点とするプローブ25の先端Tの空間座標(X
P,Y
P,X
P)のうち、X座標及びZ座標を検出する幾何学的演算について説明する。
図10に示すように、光軸OX
L及び光軸OX
RはそれぞれX軸方向に対する鋭角側の傾斜角θだけ傾斜しているため、実空間におけるプローブ25の先端TのZ座標Z
Pについては、以下の式(1)及び式(2)からなる連立方程式が成り立つ。
【0066】
【0067】
【0068】
この連立方程式を解くことにより、XP及びZPの算出式である式(3)及び式(4)を得ることができる。
【0069】
【0070】
【0071】
このような検出方法を用いることにより、プローブ位置検出部27は、カメラ18L及び18Rによって撮像された画像IL及びIRにおけるプローブ25の先端Tの座標から、実空間におけるプローブ25の先端Tの空間座標(XP,YP,XP)を検出することができる。
【0072】
プローブ位置検出部27によってプローブ25の先端Tの位置が検出された後、検出されたプローブ25の先端Tの位置に基づいて、ステージ移動制御部28は、不図示の駆動機構を介してYステージ13、Xステージ14及びZθステージ15に対する制御を行い、プローブカード24とウェーハチャック16との相対的な位置合わせ(アライメント)を行う。その後、ウェーハレベル検査が行われる。
【0073】
従来技術に係るプローバでは、プローブ25の先端Tを検出するためのプローブ位置検出カメラの焦点合わせが必要となるため、プローブ25の先端Tの位置を検出するためには時間がかかる。特に焦点深度が浅いカメラが用いられる場合には、プローブ位置検出カメラの焦点合わせのためにより多くの時間がかかることになり、スループットの低下を招く。
【0074】
一方、本実施形態に係るプローバ10では、2つのカメラ18L及び18Rで撮像された2つの画像IL及びIRに基づいてプローブ25の先端Tの位置を検出することができるため、上記のような焦点合わせに要する時間を大幅に減らすことができる。よって、プローブ25の先端Tの位置を従来技術よりも迅速に検出することができる。なお、カメラ18L及び18Rの焦点がプローブ25の先端Tにおおまかに合っている場合には、カメラ18L及び18Rの焦点合わせが不要となる。
【0075】
また、従来技術に係るプローバでは、プローブ位置検出カメラがプローブ25に接触しないように、色々な種類のプローブカード24が用いられることを想定して、プローブカード24とプローブ位置検出カメラとの距離を、マージンを取った初期値(初期高さともいう)に設定する必要がある。
【0076】
一方、本実施形態に係るプローバ10では、カメラ18L及び18Rの焦点がプローブ25の先端Tにおおまかに合っていればよく、カメラ18L及び18Rの焦点合わせに要する時間が実質的にないため、上記のようなマージンを設定したとしても、プローブ25の先端Tの位置を迅速に検出することが可能である。
【0077】
更に、従来技術に係るプローバでは、プローブカード24とプローブ位置検出カメラとの距離が初期値よりも誤って短く設定されている場合、プローブ位置検出カメラの焦点合わせの際にプローブカード24とプローブ位置検出カメラとが接触するおそれがある。逆に、プローブカード24とプローブ位置検出カメラとの距離が初期値よりも誤って長く設定されている場合、プローブ位置検出カメラの高さを小刻みに変更ながらカメラの焦点合わせを行っても、なかなかプローブ位置検出カメラの焦点が合わず、プローブ25の先端Tの位置を検出するために一層時間がかかることになる。
【0078】
一方、本実施形態に係るプローバ10では、カメラ18L及び18Rの焦点がプローブ25の先端Tとおおまかに合っていればよいので、上記初期値に対するマージン(許容範囲)を拡大することができる。そのため、仮にプローブカード24とカメラ18L及び18Rとの距離が初期値と異なる場合であっても、プローブカード24とカメラ18L及び18Rとが接触する可能性がなく、また、プローブ25の先端Tの位置を検出するための時間が長くなるという問題も生じにくい。
【0079】
<発明の効果>
本実施形態に係るプローバ10では、プローブ位置検出部27は、2つのカメラ18L及び18Rで撮像された2つの画像IL及びIRに基づいてプローブ25の先端Tの位置を検出することができる。プローブ25の先端Tの位置検出のためにカメラ18L及び18Rの焦点合わせに要する時間が実質的にないため、プローブ25の先端Tの位置を迅速に検出することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態に係るプローバ10では、2つのカメラ18L及び18Rの光軸OXL及びOXRは同一平面上で互いに交差するため、比較的容易な幾何学的演算によって2つの画像IL及びIRに基づいてプローブ25の先端Tの位置を検出することができる。
【0081】
また、本実施形態に係るプローバ10では、2つのカメラ18L及び18Rはテレセントリック光学系を有するため、画像IL及びIRにおけるプローブ25の先端Tの大きさはカメラ18L及び18Rから先端Tまでの距離に依存せず、ほぼ一定である。画像IL及びIRに基づいて検出されたプローブ25の先端Tの位置を容易に実空間における実際の位置に変換することができる。
【0082】
<その他>
本発明に係るプローバ10について詳細に説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよいのはもちろんである。以下に、変形例をいくつか例示する。
【0083】
上記実施形態では、好ましい態様として、2つのカメラ18L及び18Rの光軸OXL、OXRがそれぞれZ軸に対してX軸方向に互いに同一角度で逆向きに傾斜する場合を示したが、必ずしも同一角度で傾斜していなくてもよい。光軸OXL及び光軸OXRがZ軸に対してX軸方向に互いに異なる異なる角度で逆向きに傾斜する場合、式1から式4の傾斜角θを適宜変更して計算すればよい。
【0084】
また、上記実施形態では、2つのカメラ18L及び18Rの光軸OXL、OXRがXZ面に平行な面上にあり、Y軸方向に対しては傾斜しない場合を示したが、必ずしも上記実施形態に限定されず、2つのカメラ18L及び18Rの光軸OXL、OXRがZ軸Yに対してY軸方向に傾斜していてもよい。この場合、プローブ位置の検出方法については既知の三角測量法を適用することで、プローブ25の先端Tの位置を検出することができる。
【0085】
また、上記実施形態では、カメラ18L及び18Rがウェーハチャック16の近傍に設けられる場合を示したが、カメラ18L及び18Rが配置される位置を限定する趣旨ではない。ウェーハチャック16の近傍の各種機器の空間的配置に応じてカメラ18L及び18Rの位置を適宜に変更してもよい。
【0086】
さらに、従来技術に係るプローバの光軸がZ軸に略平行なプローブ位置検出カメラに追加して、本発明のカメラ18L及び18Rを設けても良い。この場合、従来技術のプローブ位置検出カメラの精度を維持したまま、プローブとプローブ位置検出カメラとの衝突回避や焦点合わせの時間の短縮をすることができる。
【0087】
また、上記実施形態では、2つのカメラ18L及び18Rを設けているが、これに限らず、カメラを3つ以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…ウェーハテストシステム、10…プローバ、11…基台、12…ベース、13…Yステージ、14…Xステージ、15…Zθステージ、16…ウェーハチャック、17…制御部、18…プローブ撮像ユニット、18L,18R…カメラ、19…ウェーハアライメントカメラ、22…ヘッドステージ、23…カードホルダ、24…プローブカード、25…プローブ、26…テスタ通信制御部、27…プローブ位置検出部、28…ステージ移動制御部、30…テスタ、31…テストヘッド、32…コンタクトリング、A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8…矢印、IL,IR…画像(視野)、H…撮影距離、L…撮影基線長、O…交点、OL,OR…視野中心、OCL,OXR…光軸、RP…撮影基準面、T,TL,TR…先端、W…ウェーハ、θ…傾斜角