(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142839
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】プローバ及びプローブ検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241003BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20241003BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R31/28 H
G01R31/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055191
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】大竹 俊輔
【テーマコード(参考)】
2G003
2G132
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA10
2G003AG04
2G003AG12
2G003AG13
2G132AF07
2G132AL03
2G132AL04
4M106AA01
4M106BA01
4M106DD05
4M106DD10
4M106DD13
4M106DD18
4M106DH12
4M106DH44
4M106DH45
4M106DJ02
4M106DJ03
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】プローブと電極パッドとのコンタクトが適正に行われたか否かを確認できるプローバ及びプローブ検査方法を提供する。
【解決手段】プローバ10は、ウェーハチャック50を角度傾斜機構76により互いに異なる複数の傾斜条件に基づいて傾斜させて、アライメントカメラ80により、プローブ66がウェーハWをコンタクトした際のプローブのコンタクト跡Cを撮像することで、複数のコンタクト跡画像を取得する制御部と、複数のコンタクト跡画像からコンタクト跡Cの三次元形状を算出する形状算出部と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを保持するウェーハチャックと、
前記ウェーハチャックに対向する面に複数のプローブを有するプローブカードと、
前記ウェーハチャックに保持された前記ウェーハの表面の画像を撮像するアライメントカメラと、
前記ウェーハチャックを傾斜させる傾斜機構と、
前記ウェーハチャックを前記傾斜機構により互いに異なる複数の傾斜条件に基づいて傾斜させて、前記アライメントカメラにより、前記プローブが前記ウェーハをコンタクトした際の前記プローブのコンタクト跡を撮像することで、複数の第1撮像画像を取得する制御部と、
前記複数の第1撮像画像から前記コンタクト跡の三次元形状を算出する形状算出部と、
を備えるプローバ。
【請求項2】
前記三次元形状に基づいて、前記プローブによる前記ウェーハへのコンタクトの良否を判定する、良否判定部をさらに備える、請求項1に記載のプローバ。
【請求項3】
前記良否判定部の判定結果に基づいて、前記プローブが前記ウェーハをコンタクトする際の条件を変更する条件変更部を備える、
請求項2に記載のプローバ。
【請求項4】
前記プローブをクリーニングするためのクリーニング部材を備え、
前記傾斜機構は、前記クリーニング部材を傾斜させ、
前記制御部は、前記クリーニング部材を前記傾斜機構により互いに異なる複数の傾斜条件に基づいて傾斜させて、前記アライメントカメラにより、前記プローブが前記クリーニング部材をコンタクトした際のコンタクト跡を撮像することで、複数の第2撮像画像を取得し、
前記形状算出部は、前記複数の第2撮像画像から前記コンタクト跡の三次元形状を算出する、
請求項1に記載のプローバ。
【請求項5】
ウェーハを保持するウェーハチャックと、前記ウェーハチャックに対向する面に複数のプローブを有するプローブカードと、前記ウェーハチャックに保持された前記ウェーハの表面の画像を撮像するアライメントカメラと、前記ウェーハチャックを傾斜させる傾斜機構と、を有するプローバにおけるプローブ検査方法であって、
前記ウェーハチャックを前記傾斜機構により互いに異なる複数の傾斜条件に基づいて傾斜させて、前記アライメントカメラにより、前記プローブが前記ウェーハをコンタクトした際の前記プローブのコンタクト跡を撮像することで、複数の第1撮像画像を取得するステップと、
前記複数の第1撮像画像から前記コンタクト跡の三次元形状を算出するステップと、を備えるプローブ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハに複数形成された半導体チップの電極パッド上に形成された針跡をカメラによって撮像し、その撮像した画像から電極パッドの針跡を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程は、多数の工程を有し、品質保証及び歩留まりの向上のために、各種の製造工程で各種の検査が行われる。例えば、半導体ウェーハ(以下、「ウェーハ」という)上に複数の半導体チップ(以下、チップという)が形成された段階で、ウェーハレベル検査が行われる。
【0003】
ウェーハレベル検査は、プローブカードに形成された多数の針状のプローブ(以下、プローブ針という)を各チップの電極パッドにコンタクト(接触)させるプローバ装置を使用して行われる。プローブ針はテストヘッドの端子に電気的に接続されており、テストヘッドからプローブ針を介して各チップに電源及びテスト信号を供給すると共に、各チップからの出力信号をテストヘッドで検出して正常に動作するかを測定する。
【0004】
このようなウェーハレベル検査が行われた後、プローブ針が電極パッドに正常にコンタクトしたか否かを判定することを目的として、電極パッド上に形成された針跡をカメラによって撮像し、その撮像した画像から電極パッドの針跡を検出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プローバ装置において、電極パッド上に形成された針跡をカメラによって撮像する場合、カメラはウェーハの上方から撮影を行うため、カメラにより撮像された画像は二次元的(平面的)な画像となる。そのため、針跡の深さまでは検出できず、プローブと電極パッドとのコンタクトが適正に行われたか否かを確認するには限界がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、プローブと電極パッドとのコンタクトが適正に行われたか否かを確認できるプローバ及びプローブ検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様のプローバは、ウェーハを保持するウェーハチャックと、ウェーハチャックに対向する面に複数のプローブを有するプローブカードと、ウェーハチャックに保持されたウェーハの表面の画像を撮像するアライメントカメラと、ウェーハチャックを傾斜させる傾斜機構と、ウェーハチャックを傾斜機構により互いに異なる複数の傾斜条件に基づいて傾斜させて、アライメントカメラにより、プローブがウェーハをコンタクトした際のプローブのコンタクト跡を撮像することで、複数の第1撮像画像を取得する制御部と、複数の第1撮像画像からコンタクト跡の三次元形状を算出する形状算出部と、を備える。
【0009】
第2態様のプローバにおいて、三次元形状に基づいて、プローブによるウェーハへのコンタクトの良否を判定する、良否判定部をさらに備える。
【0010】
第3態様のプローバにおいて、良否判定部の判定結果に基づいて、プローブがウェーハをコンタクトする際の条件を変更する条件変更部を備える。
【0011】
第4態様のプローバにおいて、プローブをクリーニングするためのクリーニング部材を備え、傾斜機構は、クリーニング部材を傾斜させ、制御部はクリーニング板を傾斜機構により互いに異なる複数の傾斜条件に傾斜させて、アライメントカメラにより、プローブがクリーニング部材をコンタクトした際のコンタクト跡を撮像することで、複数の第2撮像画像を取得し、形状算出部は、複数の第2撮像画像からコンタクト跡の三次元形状を算出する。
【0012】
第5態様のプローブ検査方法は、ウェーハを保持するウェーハチャックと、ウェーハチャックに対向する面に複数のプローブを有するプローブカードと、ウェーハチャックに保持されたウェーハの表面の画像を撮像するアライメントカメラと、ウェーハチャックを傾斜させる傾斜機構と、を有するプローバにおけるプローブ検査方法であって、ウェーハチャックを傾斜機構により互いに異なる複数の傾斜条件に基づいて傾斜させて、アライメントカメラにより、プローブがウェーハをコンタクトした際のプローブのコンタクト跡を撮像することで、複数の第1撮像画像を取得するステップと、複数の第1撮像画像からコンタクト跡の三次元形状を算出するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プローブと電極パッドとのコンタクトが適正に行われたか否かを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るプローバの全体構成を示した外観図である。
【
図2】
図1に示したプローバを示した平面図である。
【
図7】コンタクト跡形状算出処理の手順を示したフローチャートである。
【
図8】傾斜機構に適用される傾斜条件を示す表である。
【
図10】コンタクト跡形状算出処理を説明するための図である。
【
図11】コンタクト跡形状算出処理を説明するための図である。
【
図12】第1変形例のコンタクト跡形状算出処理の手順を示したフローチャートである。
【
図13】第2変形例の撮像処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0016】
[プローバ]
図1及び
図2は、本発明に係るプローバの全体構成を示した外観図と平面図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、プローバ10は、検査するウェーハWを供給及び回収するローダ部14と、ローダ部14に隣接して配置された測定ユニット12とを備えている。プローバ10は、測定ユニット12が複数の測定部16を備えたマルチステージ式のプローバである。ウェーハWがローダ部14から各測定部16に供給されると、各測定部16はウェーハWの各チップの電気的特性の検査(ウェーハレベル検査)を行う。そして、各測定部16で検査されたウェーハWはローダ部14により回収される。なお、プローバ10は、操作パネル21、各部を制御する制御装置等も備えている。
【0018】
ローダ部14は、ロードポート18と、搬送ユニット22とを有する。ロードポート18には、ウェーハカセット20が載置される。搬送ユニット22は、各測定部16とウェーハカセット20との間でウェーハWを搬送する。搬送ユニット22は、図示しない搬送ユニット駆動機構を備えており、X軸方向、及びZ軸方向に移動可能に構成されると共に、θ方向(Z軸方向周り)に回転可能に構成されている。また、搬送ユニット22は、上記搬送ユニット駆動機構により前後に伸縮自在に構成された搬送アーム24を備えている。搬送アーム24の上面部には図示しない吸着パッドが設けられており、搬送アーム24は、この吸着パッドでウェーハWの裏面を真空吸着してウェーハWを保持する。これにより、ウェーハカセット20内のウェーハWは、搬送ユニット22の搬送アーム24によって取り出され、その上面に保持された状態で測定ユニット12の各測定部16に搬送される。また、検査の終了した検査済みのウェーハWは逆の経路で各測定部16からウェーハカセット20に戻される。
【0019】
【0020】
図3に示すように、測定ユニット12は、複数の測定部16が多段状に積層された積層構造(多段構造)を有しており、各測定部16はX軸方向及びZ軸方向に沿って二次元的に配列されている。一例として、X軸方向に4つの測定部16がZ軸方向に3段積み重ねられている。なお、各測定部16は、いずれも同一の構成を有しており、テストヘッド54、ウェーハチャック50及びプローブカード56等を備えて構成される。
【0021】
測定ユニット12は、複数のフレームを格子状に組み合わせた格子形状を有する筐体11を備えている。この筐体11は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ延び、格子状に組み合わされた複数のフレーム13により構成される。
【0022】
アライメント装置70は、それぞれの段毎に設けられており、各階層(各段)に配置された複数の測定部16間で相互に移動可能に構成されている。すなわち、アライメント装置70は、同一の階層(段)に配置される複数(実施形態では4つ)の測定部16の間で共有されており、同一の階層に配置された複数の測定部16の間を相互に移動する。
【0023】
[測定部]
次に、測定部16の構成について説明する。
図4及び
図5は、測定部16の構成を示した概略図である。
【0024】
図4に示すように、測定部16は、ウェーハチャック50と、ヘッドステージ52と、テストヘッド54と、プローブカード56と、を備えている。
【0025】
テストヘッド54は、図示しないテストヘッド保持部によりヘッドステージ52の上方に支持されている。テストヘッド54は、プローブカード56のプローブ66に電気的に接続され、電気的特性検査のために各チップに電源及びテスト信号を供給すると共に、各チップからの出力信号を検出して正常に動作するかを測定する機能を備える。
【0026】
ヘッドステージ52は、筐体の一部を構成するフレーム(不図示)に支持されている。ヘッドステージ52は、ポゴフレーム(不図示)の平面形状に対応した円形状の開口からなるポゴフレーム取付部(不図示)を有する。ポゴフレームのヘッドステージ52への固定方法は特に限定されるものでない。
【0027】
なお、ポゴフレームを図示していないが、ポゴフレームは、テストヘッド54の下面に形成される各端子とプローブカード56の上面に形成される各端子とを電気的に接続する多数のポゴピン(不図示)を備えている。また、ポゴフレームの上面(テストヘッド54に対向する面)及び下面(プローブカード56に対向する面)の外周部には、それぞれリング状のシール部材(不図示)が形成されている。そして、図示しない吸引手段により、テストヘッド54とポゴフレームと上面側シール部材で囲まれた空間、及びプローブカード56とポゴフレームと下面側シール部材で囲まれた空間が減圧されることにより、テストヘッド54、ポゴフレーム、及びプローブカード56が一体化される。
【0028】
プローブカード56は、ウェーハWの各チップの電極パッド(不図示)に対応した多数のプローブ66を有する。各プローブ66は、プローブカード56の下面(ウェーハチャック50に対向する面)から下方に向けて突出して形成されており、プローブカード56の上面に設けられる各端子に電気的に接続されている。したがって、テストヘッド54、ポゴフレーム(不図示)、及びプローブカード56が一体化されると、各プローブ66は、ポゴフレームを介してテストヘッド54の各端子に電気的に接続される。なお、プローブカード56は、検査するウェーハWの各チップの電極パッドに対応した多数のプローブ66を備えており、各測定部16ではウェーハチャック50に保持されたウェーハW上のチップの同時検査が行われる。
【0029】
ウェーハチャック50は、上面にウェーハWを保持する保持面50Aを有する。保持面50Aは平面で構成され、真空吸着等によりウェーハWを吸着して固定する。ウェーハチャック50は、アライメント装置70に着脱自在に支持され、アライメント装置70によってX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθ方向に移動可能となっている。また、ウェーハチャック50の保持面50A(ウェーハ載置面)の外周部にはリング状のシール部材(不図示)が設けられている。そして、図示しない吸引手段により、プローブカード56とウェーハチャック50とシール部材で囲まれた空間が減圧されることにより、ウェーハチャック50がプローブカード56に向かって引き寄せられる。これにより、プローブカード56の各プローブ66がウェーハWの各チップの電極パッドに接触して検査を開始可能な状態となる。
【0030】
ウェーハチャック50の内部には、ウェーハWの各チップを高温状態(例えば、最高で150℃)、又は低温状態(例えば最低で-40℃)で電気的特性検査が行えるように、加熱及び冷却源としての加熱冷却機構(不図示)が設けられている。加熱冷却機構としては、公知の適宜の加熱器及び冷却器が採用できるものであり、例えば、面ヒータの加熱層と冷却流体の通路を設けた冷却層との二重層構造にしたもの、又は熱伝導体内に加熱ヒータを巻き付けた冷却管を埋設した一層構造の加熱冷却装置など、様々のものが考えられる。また、電気加熱ではなく、熱流体を循環させるものでもよく、またペルチエ素子を使用してもよい。ウェーハチャック50は、本発明のウェーハチャックの一例である。
【0031】
(アライメント装置)
測定ユニット12は、
図4に示すように、ウェーハチャック50を着脱自在に支持するアライメント装置70を備えている。アライメント装置70は、Z軸移動回転部72と、Z軸移動回転部72に取り付けられたプローブ位置検出カメラ82及びクリーニング板84と、Z軸移動回転部72を支持する支持テーブル74と、支持テーブル74を支持する角度傾斜機構76と、角度傾斜機構76を支持するXYステージ78と、を有する。
【0032】
Z軸移動回転部72は、ウェーハチャック50を着脱自在に支持する上面72Aを、Z軸方向に移動すると共に、Z軸方向と平行な中心軸CLを回転中心として回転させる。これにより、Z軸移動回転部72は、上面72Aに着脱自在に支持されるウェーハチャック50をZ軸方向に移動させると共に、中心軸CLを中心に回転させる。
【0033】
プローブ位置検出カメラ82は、プローブカード56に対向する位置において、プローブカード56のプローブ66を撮像する。このプローブ位置検出カメラ82にて撮像されたプローブ66の撮像画像に基づき、プローブ66の先端位置を検出することができる。具体的には、プローブ66の先端位置のXY座標はプローブ位置検出カメラ82の撮像画像における位置座標(XY座標)から検出され、プローブ66の先端位置のZ座標はプローブ位置検出カメラ82の焦点位置から検出される。
【0034】
クリーニング板84は、プローブ66の先端部に付着した削りカス或いは異物等のゴミを除去する。具体的には、プローブ66とクリーニング板84とを接触させた状態で、両者を相対的に移動、振動、又は揺動等することで、クリーニング板84によりプローブ66の先端部のゴミ等を除去し、プローブ66の先端部をクリーニングする。
【0035】
プローブ位置検出カメラ82は、保持部材85を介して、Z軸移動回転部72に一体に取り付けられている。また、クリーニング板84は、保持部材87を介してプローブ位置検出カメラ82に一体に取りけられた上下ステージ88の上面に取り付けられている。上下ステージ88は中心軸CLに平行な方向にクリーニング板84を移動させる。ただし、この構造に限定されず、プローブ位置検出カメラ82及びクリーニング板84はZ軸移動回転部72に別々に取り付けられてもよいし、またZ軸移動回転部72とは別の部材に取り付けられてもよい。
【0036】
支持テーブル74は、Z軸移動回転部72の下面側に配置される。すなわち、Z軸移動回転部72は、支持テーブル74の上面74Aに支持される。Z軸移動回転部72の上面72Aにはウェーハチャック50が支持され、且つ保持部材85及び保持部材87を介してクリーニング板84が取り付けられている。なお、支持テーブル74が、図示しない支持部材を介してプローブ位置検出カメラ82を支持する構成であってもよい。また、支持テーブル74を省略して、後述する角度傾斜機構76がZ軸移動回転部72を直接的に支持する構成であってもよい。
【0037】
角度傾斜機構76は、支持テーブル74とXYステージ78との間に配置される。角度傾斜機構76は、支持テーブル74を支持しており、支持テーブル74を傾斜させる。すなわち、角度傾斜機構76は、支持テーブル74を傾斜させることで、Z軸移動回転部72を介してウェーハチャック50を傾斜させることができ、ウェーハチャック50に保持されたウェーハWを複数の方向に傾斜させることができる。
【0038】
角度傾斜機構76は、支持テーブル74の水平方向(X軸方向及びY軸方向に平行な方向)に対する傾斜角度を任意に変更できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、以下のような構成を好ましく採用することができる。
【0039】
角度傾斜機構76は、支持テーブル74の下面を3点で支持する3つの昇降支持部材を備え、各昇降支持部材を昇降させることで、各昇降支持部材により支持される支持テーブル74の各支持点の高さを相互に変化させる。これにより、支持テーブル74の水平方向に対する傾斜角度を任意に変化させる。なお、角度傾斜機構76は、このような構成に限らず、公知の構成を適宜採用することが可能である。角度傾斜機構76は、本発明の傾斜機構の一例である。
【0040】
XYステージ78は、プローブカード56とウェーハWとの位置合わせ(アライメント)やウェーハレベル検査を行う場合には、ウェーハチャック50をXY方向(すなわち、ウェーハチャック50の保持面50Aに平行な方向)に移動させる。また、XYステージ78は、ウェーハチャック50に保持されているウェーハWをアライメントカメラ80により撮像する場合には、ウェーハチャック50をアライメントカメラ80に対して対向する位置(
図5における2点鎖線で示す位置)に移動させる。
【0041】
XYステージ78は、さらに、搬送パレットに載置されるベースと、ベースに載置され、Y軸方向に移動可能なY移動ステージと、Y移動ステージに載置され、X軸方向に移動可能なX移動ステージと、を含むことができる。
【0042】
アライメント装置70は、ウェーハチャック50を着脱自在に支持するZ軸移動回転部72と、Z軸移動回転部72を支持するXYステージ78とを備えるので、ウェーハチャック50を、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θ方向に移動させて、プローブカード56に対するウェーハチャック50の相対的な位置合わせを行うことができる。
【0043】
図5に示すようにアライメント装置70は、アライメントカメラ80を備えている。アライメントカメラ80は、ウェーハチャック50上のウェーハWのアライメントを行うために設けられている。アライメントカメラ80はウェーハチャック50よりもZ軸方向上方側で、プローブカード56からY軸方向にずれた位置に配置されている。
【0044】
以上のように構成されるプローバ10において、ウェーハレベル検査を行う場合には、次のような動作が行われる。
【0045】
まず、ローダ部14から所定の測定部16のウェーハチャック50にウェーハWを受け渡すウェーハ受け渡し処理(ウェーハロード)が行われる。ウェーハ受け渡し処理では、搬送アーム24によってウェーハカセット20内のウェーハWを取り出し、搬送アーム24の吸着パッドに保持した状態でウェーハWを所定の測定部16のウェーハチャック50に搬送して受け渡す。このとき、ウェーハチャック50は、XYステージ78の移動により所定の受け渡し位置に移動する。そして、その受け渡し位置に移動したウェーハチャック50には搬送アーム24からウェーハWが受け渡され、ウェーハチャック50にウェーハWが保持される。
【0046】
次に、プローブ位置検出カメラ82がプローブ66の下に位置するように、XYステージ78を移動させ、プローブ位置検出カメラ82でプローブ66の先端位置を検出する。プローブ66の先端の水平面内の位置(X座標及びY座標)は、プローブ位置検出カメラ82の撮像画像における位置座標により検出され、プローブ66の先端の高さ位置(Z座標)はプローブ位置検出カメラ82の焦点位置で検出される。このプローブ位置の検出処理は、プローブカード56を交換したときには必ず行う必要があり、プローブカード56を交換しない時でも所定個数のチップを測定する毎に適宜行われる。なお、プローブカード56には、多数本のプローブ66が設けられているため、全てのプローブ66の先端位置を検出せずに、通常は作業効率を考慮して、特定のプローブ66の先端位置を検出する。
【0047】
また、ウェーハチャック50に保持されたウェーハが、アライメントカメラ80に対向する位置となるように、XYステージ78を移動させ、アライメントカメラ80によりウェーハWの表面の各チップの電極パッドの位置を検出する。1チップのすべての電極パッドの位置を検出する必要はなく、いくつかの電極パッドの位置を検出すればよい。また、ウェーハW上の全てのチップの電極パッドを検出する必要はなく、いくつかのチップの電極パッドの位置が検出される。そして、チップの電極パッドの配列方向とプローブの配列方向が一致するように、Z軸移動回転部72によりウェーハチャック50を回転させた後、電極パッドが対応するプローブの真下に位置するように、XYステージ78によりウェーハチャック50を移動させた後、Z軸移動回転部72によりウェーハチャック50を上昇させて、電極パッドをプローブ66にコンタクトさせる。コンタクトが行われた後、ウェーハチャック50がプローブカード56に対して真空吸着等により吸着保持される。ウェーハチャック50がプローブカード56に対して吸着保持された後、アライメント装置70に対するウェーハチャック50の固定を解除した後、Z軸移動回転部72をZ軸方向に下降させることにより、アライメント装置70からウェーハチャック50を離脱させる。そして、テストヘッド54から、プローブ66を介して電極パッドに電源及びテスト信号を供給し、出力される信号を検出して正常に動作するかを確認する。
【0048】
実施形態のプローバ10は、プローブ66と電極パッドとのコンタクトが適正に行われたか否かを確認するため、電極パッドに対してプローブ66がコンタクトした跡であるコンタクト跡(針跡)の三次元形状を算出する処理(以下、コンタクト跡形状算出処理という)を行うための機能を備えている。コンタクト跡形状算出処理では、角度傾斜機構76とアライメントカメラ80とを利用して、コンタクト跡の三次元形状を算出し、この三次元形状からコンタクトの適性の判断を可能とするものである。
【0049】
(制御装置)
図6は、実施形態のプローバ10の制御装置90の要部構成を示した機能ブロック図である。なお、
図6では、本発明の要部であるコンタクト跡形状算出処理に関する構成要素のみを図示している。
【0050】
図6に示す制御装置90は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置90の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0051】
図6に示すように、制御装置90は、全体制御部91、撮像制御部92、形状算出部93、記憶部94、良否判定部95、及び条件変更部96を備える。
【0052】
全体制御部91は、プローバ10を構成する各部を統括的に制御する。具体的には、全体制御部91は、検査するウェーハWの各チップの電極パッドとプローブカード56の各プローブ66とを接触させる動作(コンタクト動作)の制御を行う。また、全体制御部91は、コンタクト動作の他に、各測定部16の間でアライメント装置70を相互に移動させる移動制御や、テストヘッド54によるウェーハレベル検査の動作の制御などを行う。また、ユーザからの入力の指示の受付け、各種情報のディスプレイ装置等への出力など処理を行う。さらに、全体制御部91は、クリーニング板84とプローブ66とを接触させる動作(クリーニング動作)の制御を行う。
【0053】
撮像制御部92は、プローブ66がウェーハWをコンタクトした際のコンタクト跡を、アライメントカメラ80で撮像し、複数のコンタクト跡画像を取得する。撮像制御部92によるコンタクト跡画像の取得処理については後述する。コンタクト跡画像は、本発明の第1撮像画像の一例である。
【0054】
形状算出部93は、撮像制御部92により取得された複数のコンタクト跡画像に基づいて、コンタクト跡の三次元形状を算出する。形状算出部93によるコンタクト跡形状算出処理については後述する。
【0055】
記憶部94は、ウェーハレベル検査の動作の制御に必要な測定条件(オーバードライブ量を含む)を記憶する。また、記憶部94は、角度傾斜機構76の傾斜条件を記憶する。角度傾斜機構76の傾斜条件については後述する。
【0056】
良否判定部95は、形状算出部93が算出したコンタクト跡の三次元形状に基づき、プローブと電極パッドとのコンタクトが適正に行われたか否か判定する。
【0057】
条件変更部96は、良否判定部95の判定結果に基づいて、記憶部94に記憶されている測定条件の1つであるオーバードライブ量を変更する。
【0058】
次に、実施形態のプローバ10で実行されるコンタクト跡形状算出処理について説明する。
図7は、コンタクト跡形状算出処理の手順を示したフローチャートである。
図8は、傾斜条件の一例を示す図である。
図9は、撮像処理の動作を説明するための図である。
図10及び
図11は、コンタクト跡の三次元形状の算出方法を説明するための図である。なお、以下では、符号Cを用いてコンタクト跡を示す。
【0059】
コンタクト跡形状算出処理が開始されると、まず、ウェーハチャック50の移動処理が行われる(ステップS12)。具体的には、ウェーハチャック50の移動処理では、全体制御部91が、XYステージ78の動作を制御して、ウェーハWを保持したウェーハチャック50をアライメントカメラ80の下方に移動させる。
【0060】
次に、角度傾斜機構76による傾斜処理(ステップS16)と、アライメントカメラ80による撮像処理(ステップS18)とを、予め設定された繰り返し回数Tだけ繰り返し実行する。具体的には、以下のようにして行われる。
【0061】
まず、カウンタ初期化処理が行われる(ステップS14)。カウンタ初期化処理では、撮像制御部92は、カウンタ値Kを1に初期化する(ステップS14)。カウンタ値Kは、撮像処理が実行される回数(撮像回数)をカウントするための変数である。
【0062】
次に、角度傾斜機構76による傾斜処理が行われる(ステップS16)。角度傾斜機構76による傾斜処理では、撮像制御部92は、角度傾斜機構76の動作を制御して、ウェーハチャック50(ウェーハW)を所定の傾斜角度に傾斜させる。なお、記憶部94には、撮像回数(カウンタ値K)毎に異なる角度傾斜機構76の傾斜条件(
図8参照)が記憶されている。撮像制御部92は、記憶部94から撮像回数(カウンタ値K)に対応した傾斜条件を読み出し、当該傾斜条件に基づいて角度傾斜機構76の動作を制御する。
【0063】
ここで、記憶部94に記憶されている「傾斜条件」について詳しく説明する。この「傾斜条件」は、
図8に示すように、撮像回数(カウンタ値K)毎にX軸方向及びY軸方向のそれぞれについてウェーハチャック50の傾斜角度を規定したものであり、X軸方向の傾斜角度とY軸方向の傾斜角度との組み合わせが互いに異なるものである。具体的には、(1)X軸方向及びY軸方向のいずれも傾斜なしの場合(K=1)、(2)X軸方向のみ傾斜ありの場合(K=2~5)、(3)Y軸方向のみ傾斜ありの場合(K=6~9)の3つの傾斜パターンに大別される。そして、(2)の傾斜パターンには、X軸方向の傾斜角度がプラス側である場合(K=2、3)と、X軸方向の傾斜角度がマイナス側である場合(K=4、5)とが含まれ、各々の場合において傾斜角度の絶対値が同じものが含まれている。同様に、(3)の傾斜パターンには、Y軸方向の傾斜角度がプラス側である場合(K=6、7)と、Y軸方向の傾斜角度がマイナス側である場合(K=8、9)とが含まれ、各々の場合において傾斜角度の絶対値が同じものが含まれている。
【0064】
なお、
図8に示した傾斜条件では、一例として、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの傾斜角度を規定したものを示したが、傾斜角度を定める方向はこれに限らず、水平方向において少なくとも互いに異なる2方向の傾斜角度を定めるものであればよく、例えば、2方向は互いに直交せずに斜めに交差するものであってもよい。また、
図8に示したX軸方向及びY軸方向の傾斜角度は一例にすぎず、任意に設定可能である。
【0065】
次に、アライメントカメラ80による撮像処理が行われる(ステップS18)。アライメントカメラ80による撮像処理では、
図9の9-1又は9-2に示すように、撮像制御部92は、アライメントカメラ80の動作を制御し、ウェーハチャック50に保持されたウェーハWの電極パッドに発生したコンタクト跡Cをアライメントカメラ80により撮像し、コンタクト跡画像を取得する。撮像制御部92は、コンタクト跡Cを撮像した際の角度傾斜機構76の傾斜条件(X軸方向及びY軸方向の傾斜角度を含む)と、取得したコンタクト跡画像とを関連付けて、記憶部94に記憶する。
【0066】
本例では、カウンタ値Kが1である場合、
図9の9-1に示すように、角度傾斜機構76による傾斜処理として、撮像制御部92は、角度傾斜機構76の動作を制御して、ウェーハチャック50(ウェーハW)を水平方向に平行な状態にする。そして、ウェーハチャック50が水平方向に平行となっている状態で、撮像制御部92による撮像処理として、撮像制御部92は、アライメントカメラ80の動作を制御して、ウェーハWの電極パッドのコンタクト跡Cをアライメントカメラ80により撮像してコンタクト跡画像を取得する。なお、取得したコンタクト跡画像は記憶部94に記憶される。
【0067】
次に、カウンタ判定処理が行われる(ステップS20)。カウンタ判定処理では、撮像制御部92は、カウンタ値Kが上述した繰り返し回数Tと等しいか否かを判定する。
【0068】
カウンタ判定処理においてカウンタ値Kが繰り返し回数T未満であると判定された場合(ステップS20においてNoの場合)には、カウンタ値Kをインクリメントする処理(すなわち、カウンタ値Kに1を加算する処理)を行い(ステップS22)、ステップS16に戻る。そして、カウンタ判定処理においてカウンタ値Kが繰り返し回数Tと等しいと判定されるまで、角度傾斜機構76による傾斜処理(ステップS16)と、アライメントカメラ80による撮像処理(ステップS18)とが繰り返し行われる。
【0069】
本例では、カウンタ値Kが2以上である場合、
図9の9-2に示すように、角度傾斜機構76による傾斜処理として、撮像制御部92は、角度傾斜機構76を制御して、ウェーハチャック50(ウェーハW)を、
図9の9-1とは異なる角度に傾斜させた状態(すなわち、ウェーハチャック50(ウェーハW)を水平方向から傾斜させた状態)にする。そして、ウェーハチャック50が水平方向に対して傾斜している状態で、撮像制御部92による撮像処理として、撮像制御部92は、アライメントカメラ80の動作を制御して、ウェーハWの電極パッドのコンタクト跡Cをアライメントカメラ80により撮像してコンタクト跡画像を取得する。なお、取得したコンタクト跡画像は記憶部94に記憶される。
【0070】
なお、上述したように、記憶部94には、撮像回数(カウンタ値K)毎に異なる角度傾斜機構76の傾斜条件が記憶されている。したがって、角度傾斜機構76による傾斜処理(ステップS16)と、アライメントカメラ80による撮像処理(ステップS18)とが繰り返し行われる場合、アライメントカメラ80に対するウェーハチャック50(ウェーハW)の傾斜角度が撮像回数毎に互いに異なる状態で撮像された複数のコンタクト跡画像が取得される。
【0071】
このように撮像制御部92は、カウンタ判定処理においてカウンタ値Kが繰り返し回数Tと等しいと判定されるまで、ステップS16からステップS22までの処理を繰り返し行う。この繰り返し処理により、
図9の9-3に示すように、アライメントカメラ80に対するウェーハチャック50の傾斜角度が互いに異なる状態で、アライメントカメラ80がコンタクト跡Cを撮像する。撮像制御部92は、本発明の制御部の一例である。
【0072】
カウンタ判定処理においてカウンタ値Kが繰り返し回数Tと等しいと判定された場合(ステップS20においてYesの場合)には、コンタクト跡形状算出処理を行う(ステップS24)。コンタクト跡形状算出処理では、形状算出部93が、撮像制御部92が取得した複数のコンタクト跡画像を記憶部94から読み出し、複数のコンタクト跡画像から、コンタクト跡Cの三次元形状を算出する。
【0073】
ここで、コンタクト跡形状の算出処理について、
図10及び
図11を参照して説明する。
図10は、アライメントカメラ80で撮像されたコンタクト跡Cの画像(コンタクト跡画像I1~I4及びウェーハWの傾斜状態)を概略的に示した図である。なお、
図10では、説明の便宜上、アライメントカメラ80に対するウェーハチャック50(ウェーハW)の傾斜角度が互いに異なる4つのパターンのみを図示している。
【0074】
図10の10-1は、ウェーハWを水平状態で撮像したコンタクト跡画像I1を示している。また、
図10の10-2、10-3及び10-4は、ウェーハWを水平方向に対して所定方向にそれぞれ傾斜させた状態で撮像したコンタクト跡画像I2、I3及びI4を示している。なお、コンタクト跡画像I2及びI4は、ウェーハWをX軸方向に対して傾斜させた場合であり、それぞれ互いに逆側(プラス側、マイナス側)に傾斜させた場合を示している。また、コンタクト跡画像I3は、ウェーハWをY軸方向に対して傾斜させた場合を示してる。
【0075】
形状算出部93は、二次元画像のコンタクト跡画像I1から、画像処理によりコンタクト跡CのX軸方向及びY軸方向の溝幅を求める。形状算出部93は、同様に、二次元画像のコンタクト跡画像I2、I3及びI4についても、コンタクト跡CのX軸方向及びY軸方向の溝幅を求める。
図10に示すように、ウェーハWが傾斜された状態で撮像されているため、コンタクト跡画像I2、I3及びI4のコンタクト跡Cの形状は、平面視でコンタクト跡画像I1と異なる形状として認識される。
【0076】
図11の11-1は、各傾斜角度に対応したコンタクト跡画像から算出されるコンタクト跡Cの溝幅を示している。なお、
図11-1において左側の欄(測定長さ)は、コンタクト跡画像から直接算出されるコンタクト跡Cの測定結果を示しており、右側の欄(計算長さ)は、左側の欄のウェーハチャック50の傾斜角度を水平状態に変換して示したものである。また、0<θm<θnとする。
【0077】
傾斜角度が0°の場合、ウェーハチャック50の傾斜角度を水平状態にした状態であるので、測定結果と計算結果の長さLは、コンタクト跡CのエッジP1とエッジP2との間の水平方向の長さとなる。
【0078】
傾斜角度がθmの場合、測定結果における長さLmは、傾斜されたコンタクト跡Cの水平方向の長さとなる。これを、ウェーハチャック50の傾斜角度をθmから水平状態に変換した場合、計算結果の長さLmは、エッジP1からコンタクト跡Cの壁面P3までの長さを示すことになる。
【0079】
傾斜角度がθnの場合も同様に、ウェーハチャック50の傾斜角度をθnから水平状態に変換した場合、計算結果における長さLnは、エッジP1からコンタクト跡Cの壁面P4(壁面P3とは異なる位置)までの長さを示すことになる。
【0080】
したがって、形状算出部93は、角度傾斜機構76による傾斜処理(ステップS16)と、アライメントカメラ80による撮像処理(ステップS18)とを複数回繰り返して得られた複数のコンタクト跡画像のそれぞれにおいて、コンタクト跡CのX軸方向及びY軸方向の幅を算出し、その算出結果をウェーハチャック50(ウェーハW)の傾斜角度を加味して重ね合わせることで、
図11の11―2に示すようにコンタクト跡Cの三次元形状を算出することができる。
【0081】
なお、コンタクト跡Cの三次元形状の算出にあたっては、記憶部94に記憶されている複数のコンタクト跡画像に基づいて、上述したアライメントカメラ80による撮像処理が行われていないウェーハチャック50(ウェーハW)の傾斜角度に対応した画像データ(コンタクト跡画像)の補間処理を行うようにしてもよい。
【0082】
形状算出部93は、上記のようにしてコンタクト跡Cの三次元形状を算出した後、更に、算出したコンタクト跡Cの三次元形状に基づいて、コンタクト跡Cの深さを算出する。コンタクト跡Cはプローブ66を電極パッドにコンタクトさせた際に形成されるものであり、その深さは、プローブ66の電極パッドに対するコンタクト圧(すなわち、プローブ66の電極パッドに対するオーバードライブ量)に応じて変化する。形状算出部93は、本発明の形状算出部の一例である。
【0083】
このようにしてコンタクト跡形状算出処理(ステップS24)が行われた後、コンタクトの良否判定処理が行われる(ステップS26)。良否判定処理では、良否判定部95が、形状算出部93が算出したコンタクト跡Cの三次元形状に基づき、プローブ66と電極パッドとのコンタクトが適正に行われたか否か判定する。具体的には、良否判定部95は、実験的又は計算的によって予め求めたコンタクト跡Cの理想的な三次元形状(コンタクト跡が適正に行われたものとみなせるコンタクト跡Cの三次元形状)から定められるコンタクト跡Cの深さと、形状算出部93が算出したコンタクト跡Cの深さとの差分値が予め設定した閾値範囲内であるか否かを判定する。この場合、上記差分値が閾値範囲内であると判定された場合にはコンタクトが適正に行われたと判定し、閾値範囲内でないと判定された場合にはコンタクトが適正に行われなかったと判定する。良否判定部95は、本発明の良否判定部の一例である。なお、良否判定処理の判定結果を、全体制御部91の機能を利用してディスプレイ装置等に出力するようにしてもよい。
【0084】
良否判定処理において、上記差分値が閾値範囲内でないと判定された場合(ステップS26においてNoの場合)には、測定条件変更処理を行う(ステップS28)。
【0085】
測定条件変更処理では、条件変更部96が、形状算出部93において算出したコンタクト跡Cの深さに基づいて、記憶部94に記憶されている測定条件の1つであるオーバードライブ量を変更する。具体的には、コンタクト跡Cの深さが基準値よりも浅い場合には、オーバードライブ量を所定量増やす方向に変更する。一方、コンタクト跡Cの深さが基準値よりも深い場合には、オーバードライブ量を所定量減らす方向に変更する。このようにオーバードライブ量を変更することにより、プローブ66の電極パッドに対するコンタクト圧が適正な値となり、プローブ66と電極パッドとのコンタクトが最適化される。条件変更部96は、本発明の条件変更部の一例である。
【0086】
良否判定処理において、上記差分値が閾値範囲内であると判定された場合(ステップS26においてYseの場合)、又は、測定条件変更処理(ステップS28)が完了した場合には、フローチャートは終了となる。
【0087】
(第1変形例)
図12は、第1変形例のコンタクト跡形状算出処理の手順を示したフローチャートである。上述した実施形態と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0088】
図12に示す第1変形例は、コンタクト跡形状算出処理の手順において、良否判定処理(ステップS26)及び測定条件変更処理(ステップS28)に代えて、判定結果出力処理(ステップS30)を行う。
【0089】
判定結果出力処理では、コンタクト跡形状算出処理(ステップS24)において算出されたコンタクト跡Cの三次元形状、又は、コンタクト跡Cの三次元形状から求められるコンタクト跡Cの深さが、全体制御部91の機能を利用してディスプレイ装置等に出力される。
【0090】
判定結果出力処理が行われることにより、ディスプレイ装置等に出力された内容に基づいて、ユーザはコンタクトが適正に実行されたか否かを自ら判断することができる。ユーザは、その判断結果に応じて、測定条件の変更等を適宜実行することができる。
【0091】
なお、第1変形例において、本実施形態と同様に、良否判定処理(ステップS26)及び測定条件変更処理(ステップS28)を追加したものであってもよい。この場合、ディスプレイ装置等には、コンタクト跡Cの3次元形状又はコンタクト跡Cの深さと共に、良否判定の判定結果が出力されるので、ユーザは、プローブ66と電極パッドとのコンタクトが適正に行われたか否かをより的確に把握することが可能となる。
【0092】
(第2変形例)
図13は、第2変形例を説明するための図である。
図13において、上述した実施形態と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0093】
第2変形例は、プローブ66とクリーニング板84とのコンタクトが適正に行われた否かを確認するため、クリーニング板84に対してプローブ66がコンタクトした跡であるコンタクト跡(クリーニング跡及び除去されたゴミ等を含むクリーニング時のコンタクト跡)の三次元形状を算出する処理(以下、コンタクト跡形状算出処理という)を行うための機能を備えている。本実施形態と同様に、コンタクト跡形状算出処理では、角度傾斜機構76とアライメントカメラ80とを利用して、クリーニング時のコンタクト跡の三次元形状を算出し、この三次元形状からコンタクトの適性の判断を可能とするものである。
【0094】
第2変形例は、上述した実施形態と同様に、角度傾斜機構76による傾斜処理と、アライメントカメラ80による撮像処理とを、繰り返し回数Tだけ繰り返し実行する。具体的には、以下のようにして行われる。
【0095】
記憶部94から撮像回数毎に異なる角度傾斜機構76の傾斜条件(
図8参照)を読み出し、角度傾斜機構76を制御し、クリーニング板84を傾斜させる。クリーニング板84は、本発明のクリーニング部材の一例である。
【0096】
具体的には、まず、本実施形態と同様に、
図13の13-1に示すように、角度傾斜機構76による傾斜処理として、クリーニング板84を水平方向に平行な状態にする。そして、撮像制御部92は、アライメントカメラ80を制御し、クリーニング板84のコンタクト跡を撮像し、コンタクト跡を示すコンタクト跡画像を取得する。
【0097】
次に、
図13の13-2に示すように、角度傾斜機構76による傾斜処理として、クリーニング板84を水平方向から傾斜させた状態とし、撮像制御部92による撮像処理として、アライメントカメラ80を制御し、クリーニング板84のコンタクト跡を撮像し、コンタクト跡画像を取得する。これを上述した傾斜条件に従って複数回繰り返し行う。そして、撮像制御部92は、コンタクト跡を撮像した際の角度傾斜機構76の傾斜条件(X軸方向及びY軸方向の傾斜角度を含む)と、取得したコンタクト跡画像とを関連付けて、記憶部94に記憶する。コンタクト跡画像は、本発明の第2撮像画像の一例である。
【0098】
このようにして複数のコンタクト跡画像を取得し終えると(撮像回数が繰り返し回数Tに達すると)、コンタクト跡形状算出処理を行う。コンタクト跡形状算出処理では、形状算出部93が、撮像制御部92が取得した複数のコンタクト跡画像を記憶部94から読み出し、複数のコンタクト跡画像から、
図13の13-3に示すコンタクト跡(クリーニング跡C1及びゴミG)の三次元形状を算出する。また、形状算出部93は、算出したコンタクト跡の三次元形状に基づいて、コンタクト跡の深さを算出する。なお、コンタクト跡形状算出処理は、本実施形態のコンタクト跡形状算出処理と同様の処理により実行されるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0099】
コンタクト跡形状算出処理が行われた後、プローブ66とクリーニング板84とのコンタクトの良否判定処理が行われる。良否判定処理では、良否判定部95が、形状算出部93が算出したコンタクト跡の三次元形状に基づき、プローブ66とクリーニング板84とのコンタクトが適正に行われたか否か判定する。具体的には、良否判定部95は、実験的又は計算的によって予め求めた理想的なクリーニング時のコンタクト跡の三次元形状で定められるクリーニング跡の深さと、形状算出部93が算出したコンタクト跡の三次元形状から得られたクリーニング跡の深さとの差分値が予め設定した閾値範囲内であるか否かを判定する。上記差分値が閾値範囲内であると判定された場合にはコンタクトが適正に行われたと判定し、閾値範囲内でないと判定された場合にはコンタクトが適正に行われなかったと判定する。
【0100】
良否判定処理において、上記差分値が閾値範囲内でないと判定された場合には、クリーニング条件変更処理が行われる。クリーニング条件変更処理では、条件変更部96が、形状算出部93において算出したコンタクト跡の深さに基づいて、記憶部94に記憶されているクリーニング条件の1つであるオーバードライブ量を変更する。このオーバードライブ量は、プローブ66のクリーニングを行う場合に定められたクリーニング時のオーバードライブ量である。コンタクト跡の深さが基準値よりも浅い場合には、オーバードライブ量を所定量増やす方向に変更する。一方、コンタクト跡の深さが基準値よりも深い場合には、オーバードライブ量を所定量減らす方向に変更する。このようにクリーニング条件を変更することにより、プローブ66のクリーニング板84に対するコンタクト圧が適正な値となり、プローブ66とクリーニング板84とのコンタクトが最適化される。条件変更部96は、本発明の条件変更部の一例である。
【0101】
なお、第2変形例において、良否判定処理及びクリーニング条件変更処理に代えて、或いは、これらの処理と共に、上述した第1変形例と同様の判定結果出力処理を行うようにしてもよい。判定結果出力処理により、プローブ66とクリーニング板84とのコンタクトの良否をユーザが判断することも可能となる。
【0102】
また、第2変形例では、プローブ66をクリーニングするクリーニング部材の一例として、クリーニング板84が適用される場合を示したが、これに限らず、クリーニング部材がクリーニングウェーハであってもよい。クリーニングウェーハは、ウェーハチャック50に保持され、プローブ66とクリーニングウェーハとをコンタクトさせてプローブ66のクリーニングを実行する。したがって、上述した実施形態と同様に、角度傾斜機構76による傾斜処理と、アライメントカメラ80による撮像処理とを複数回繰り返して得られた複数のコンタクト跡画像に基づき、クリーニングウェーハ上のコンタクト跡の三次元形状を算出することで、第2変形例と同様に、クリーニングが適正なコンタクトで実行されたか否かを判定することができる。
【0103】
また、上述した実施形態(各変形例を含む)では、プローバ10が、複数の測定部16を備えるマルチステージ式のプローバである場合について説明したが、本発明はこれに限らず、1つの測定部のみを備えるシングルタイプのプローバにも適用可能である。
【0104】
以上、本発明に係るプローバ及びプローブ検査方法について詳細に説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0105】
10…プローバ、11…筐体、12…測定ユニット、13…フレーム、14…ローダ部、16…測定部、18…ロードポート、20…ウェーハカセット、21…操作パネル、22…搬送ユニット、24…搬送アーム、50…ウェーハチャック、50A…保持面、52…ヘッドステージ、54…テストヘッド、56…プローブカード、66…プローブ、70…アライメント装置、72…Z軸移動回転部、72A…上面、74…支持テーブル、74A…上面、76…角度傾斜機構、78…XYステージ、80…アライメントカメラ、82…プローブ位置検出カメラ、84…クリーニング板、85…保持部材、87…保持部材、88…上下ステージ、90…制御装置、91…全体制御部、92…撮像制御部、93…形状算出部、94…記憶部、95…良否判定部、96…条件変更部、C…コンタクト跡、C1…クリーニング跡、CL…中心軸、G…ゴミ、I1、I2、I3、I4…コンタクト跡画像、P1…エッジ、P2…エッジ、P3…壁面、P4…壁面、W…ウェーハ