(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142949
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】保持装置、アライメント装置及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20241003BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241003BHJP
H10K 50/10 20230101ALN20241003BHJP
H10K 71/16 20230101ALN20241003BHJP
【FI】
C23C14/50 F
H01L21/68 N
H10K50/10
H10K71/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055372
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 拓平
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG32
3K107GG33
3K107GG54
4K029AA02
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029BB03
4K029CA01
4K029DA03
4K029DA12
4K029HA01
4K029HA02
4K029HA04
4K029JA01
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA09
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA03
5F131BA13
5F131CA18
5F131EA02
5F131EA22
5F131EA23
5F131EB11
5F131FA17
(57)【要約】
【課題】錘部材によって浮上姿勢を調整しつつ、振動特性に対する錘部材の影響を抑制すること。
【解決手段】物体を保持する保持手段と、前記保持手段を浮上状態で支持する支持手段と、前記保持手段に設けられた第1の錘部材と、を備えた保持装置であって、前記保持手段の外形が、第1の辺部を含む多角形状であり、前記第1の錘部材は、前記第1の辺部に沿って配置され、かつ、前記第1の辺部の端部よりも、前記第1の辺部の中央側に配置される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を保持する保持手段と、
前記保持手段を浮上状態で支持する支持手段と、
前記保持手段に設けられた第1の錘部材と、
を備えた保持装置であって、
前記保持手段の外形が、 第1の辺部を含む多角形状であり、
前記第1の錘部材は、前記第1の辺部に沿って配置され、かつ、前記第1の辺部の端部よりも、前記第1の辺部の中央側に配置される、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
前記第1の錘部材は、前記第1の辺部の長さを3等分したうちの、中央の1/3の部分に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記第1の錘部材は、前記保持手段に着脱可能に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の保持装置。
【請求項4】
前記保持手段を変位する位置調整手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の保持装置。
【請求項5】
前記保持手段に設けられた第2の錘部材をさらに備え、
前記多角形状は、
前記第1の辺部に対向する第2の辺部 をさらに含み、
前記第2の錘部材は、前記第2の辺部に沿って配置され、かつ、前記第2の辺部の端部よりも、前記第2の辺部の中央側に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の保持装置。
【請求項6】
前記保持手段に設けられた第3の錘部材及び第4の錘部材をさらに備え、
前記多角形状は、
前記第1の辺部と前記第2の辺部との間の第3の辺部及び第4の辺部と、をさらに含み、
前記第3の錘部材は、前記第3の辺部に沿って配置され、かつ、前記第3の辺部の端部よりも、前記第3の辺部の中央側に配置され、
前記第4の錘部材は、前記第4の辺部に沿って配置され、かつ、前記第4の辺部の端部よりも、前記第4の辺部の中央側に配置される、
ことを特徴とする請求項5に記載の保持装置。
【請求項7】
前記第3の辺部及び前記第4の辺部は、前記第1の辺部及び前記第2の辺部の方向と直交する方向の辺部であり、
前記第1の錘部材は、前記第3の辺部と前記第4の辺部との間の長さを3等分したうちの、中央の1/3の部分に配置され、
前記第2の錘部材は、前記第3の辺部と前記第4の辺部との間の長さを3等分したうちの、中央の1/3の部分に配置され、
前記第3の錘部材は、前記第1の辺部と前記第2の辺部との間の長さを3等分したうちの、中央の1/3の部分に配置され、
前記第4の錘部材は、前記第1の辺部と前記第2の辺部との間の長さを3等分したうちの、中央の1/3の部分に配置される、
ことを特徴とする請求項6に記載の保持装置。
【請求項8】
基板とマスクとの位置を調整するアライメント装置であって、
前記基板を保持する保持手段と、
前記保持手段を浮上状態で支持する支持手段と、
前記保持手段に設けられた第1の錘部材と、
前記保持手段を変位して前記基板と前記マスクとの位置を調整する調整手段と、を備え、
前記保持手段の外形が、第1の辺部と、前記第1の辺部の両側の第1の角部と、を含む多角形状であり、
前記第1の錘部材は、前記第1の辺部に沿って配置され、かつ、前記第1の角部よりも、前記第1の辺部の中央側に配置される、
ことを特徴とするアライメント装置。
【請求項9】
請求項8に記載のアライメント装置と、
基板に蒸着物質を成膜する成膜手段と、を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置、アライメント装置及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体を保持する機構として、浮上状態で物体を支持する機構が提案されている。例えば、特許文献1には、半導体露光装置において、基板を保持するステージを浮上状態で支持するものが開示されている。このような保持機構では、ステージの浮上姿勢を錘部材で調整し、ステージが例えば水平姿勢に維持されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
錘部材の設置は浮上姿勢を調整する点で有利である一方、錘部材を設置したことによっては、物体を保持する部材の振動特性に影響を与える場合がある。例えば、錘部材を設置したことによって物体を保持する部材の固有振動数が低下し、振動特性が悪化する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、錘部材によって浮上姿勢を調整しつつ、振動特性に対する錘部材の影響を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
物体を保持する保持手段と、
前記保持手段を浮上状態で支持する支持手段と、
前記保持手段に設けられた第1の錘部材と、
を備えた保持装置であって、
前記保持手段の外形が、第1の辺部を含む多角形状であり、
前記第1の錘部材は、前記第1の辺部に沿って配置され、かつ、前記第1の辺部の端部よりも、前記第1の辺部の中央側に配置される、
ことを特徴とする保持装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、錘部材によって浮上姿勢を調整しつつ、振動特性に対する錘部材の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明を適用可能な電子デバイスの製造ラインの構成の一部を示す模式図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る成膜装置の模式図。
【
図4】(A)及び(B)は成膜装置の動作の一例を示す模式図。
【
図5】(A)及び(B)は成膜装置の動作の一例を示す模式図。
【
図6】
図3のA―A線矢視方向における保持装置の平面図。
【
図8】(A)及び(B)は錘部材の配置領域の説明図。
【
図10】(A)及び(B)は、有機EL表示装置の一例を示す模式図。
【
図11】(A)~(C)は、錘部材の配置例を示す平面図。
【
図13】(A)及び(B)は、錘部材の配置個数を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第1実施形態>
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、本発明を適用可能な電子デバイスの製造ラインの構成の一部を示す模式図である。
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられるもので、基板1が成膜ブロック401に順次搬送され、基板1に有機ELの成膜が行われる。
【0011】
成膜ブロック401には、平面視で八角形の形状を有する搬送室402の周囲に、基板1に対する成膜処理が行われる複数の成膜室403a~403dと、使用前後のマスクが収納されるマスク格納室405とが配置されている。搬送室402には、基板1を搬送する搬送ロボット402aが配置されている。搬送ロボット402aは、基板1を保持するハンドと、ハンドを水平方向に移動する多関節アームとを含む。換言すれば、成膜ブロック401は、搬送ロボット402aの周囲を取り囲むように複数の成膜室403a~403dが配置されたクラスタ型の成膜ユニットである。なお、成膜室403a~403dを総称する場合、或いは、区別しない場合は成膜室403と表記する。
【0012】
基板1の搬送方向(矢印方向)で、成膜ブロック401の上流側、下流側には、それぞれ、バッファ室406、旋回室407、受渡室408が配置されている。製造過程において、各室は真空状態に維持される。なお、
図1においては成膜ブロック401を1つしか図示していないが、本実施形態に係る製造ラインは複数の成膜ブロック401を有しており、複数の成膜ブロック401が、バッファ室406、旋回室407、受渡室408で構成される連結装置で連結された構成を有する。なお、連結装置の構成はこれに限定はされず、例えばバッファ室406又は受渡室408のみで構成されていてもよい。
【0013】
搬送ロボット402aは、上流側の受渡室408から搬送室402への基板1の搬入、成膜室403間での基板1の搬送、マスク格納室305と成膜室303との間でのマスクの搬送、及び、搬送室402から下流側のバッファ室406への基板1の搬出、を行う。
【0014】
バッファ室406は、製造ラインの稼働状況に応じて基板1を一時的に格納するための室である。バッファ室406には、カセットとも呼ばれる基板収納棚と、昇降機構とが設けられる。基板収納棚は、複数枚の基板1を基板1の被処理面(被成膜面)が重力方向下方を向く水平状態を保ったまま収納可能な多段構造を有する。昇降機構は、基板1が搬入又は搬出される段を搬送位置に合わせるために、基板収納棚を昇降させる。これにより、バッファ室406には複数の基板1を一時的に収容し、滞留させることができる。
【0015】
旋回室407は基板1の向きを変更する装置を備えている。例えば、旋回室407では、旋回室407に設けられた搬送ロボットによって基板1の向きを180度回転させる。旋回室407に設けられた搬送ロボットが、バッファ室406で受け取った基板1を支持した状態で180度旋回し受渡室408に引き渡すことで、バッファ室406内と受渡室408とで基板の前端と後端が入れ替わる。これにより、成膜室403に基板1を搬入する際の向きが、各成膜ブロック401で同じ向きになるため、基板1に対する成膜のスキャン方向やマスクの向きを各成膜ブロック401において一致させることができる。このような構成とすることで、各成膜ブロック401においてマスク格納室405にマスクを設置する向きを揃えることができ、マスクの管理が簡易化されユーザビリティを高めることができる。
【0016】
製造ラインの制御系は、ホストコンピュータとしてライン全体を制御する上位装置400と、各構成を制御する制御装置140a~140d、409、410とを含み、これらは有線又は無線の通信回線400aを介して通信可能である。制御装置140a~140dは、成膜室403a~403dに対応して設けられ、後述する成膜装置100を制御する。なお、制御装置140a~140dを総称する場合、或いは、区別しない場合は制御装置140と表記する。
【0017】
制御装置409は搬送ロボット402aを制御する。制御装置410は旋回室307の装置を制御する。上位装置400は、基板1に関する情報や搬送タイミング等の指示を各制御装置140、409、410に送信し、各制御装置140、409、410は受信した指示に基づき各構成を制御する。
【0018】
<成膜装置>
図2は本発明の実施形態に係る成膜装置100を模式的に示す概略図である。成膜装置100は、基板1に蒸着物質を成膜する装置であり、マスク2を用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を基板1に形成する。成膜装置100で成膜が行われる基板1の材質は、例えば、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能である。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜処理は、基板1がマスク2の上に載置され、基板1とマスク2が互いに重ね合わされた状態で行われる。
【0019】
成膜装置100は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置100が真空蒸着によって基板1に成膜を行う例を想定するが、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。なお、各図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。
【0020】
成膜装置100は、底部111、側部112、天部113を有する箱型の真空チャンバ110(単にチャンバ110と呼ぶ場合がある)を備えている。真空チャンバ110の内部空間114は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、真空チャンバ110は不図示の真空ポンプに接続されている。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。
【0021】
真空チャンバ110の内部空間114には、基板1を水平姿勢で保持する保持装置300、マスク2を支持するマスク支持ユニット9、蒸着ユニット12、プレートユニット11が配置される。
【0022】
マスク2は、基板1上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもち、マスク台91の上に載置されている。なお、マスク台91は、マスク2を所定の位置に固定する他の形態の手段に置換可能である。マスク2としては、枠状のマスクフレームに数μm~数十μm程度の厚さのマスク箔が溶接固定された構造を有するマスクを用いることができる。マスクの材質は特に限定はされないが、インバー材などの熱膨張係数の小さい金属を用いることが好ましい。成膜処理は、基板1がマスク2の上に載置され、基板1とマスク2とが互いに重ね合わされた状態で行われる。
【0023】
プレートユニット11は、冷却プレート11aと、磁石プレート11bと、プレート可動部11cとを備える。冷却プレート11aは磁石プレート11bの下に配置され、冷却プレート11a及び磁石プレート11bはプレート可動部11cによってZ方向に変位可能に吊り下げられている。冷却プレート11aは、成膜時に後述する保持部6に接近することにより、保持部6に吸着された基板1を冷却する機能を有する。冷却プレート11aは水冷機構等を備えて積極的に基板1を冷却するものに限定はされず、水冷機構等は設けられていないものの保持部6に接近することによって基板1の熱を奪う板状部材であってもよい。磁石プレート11bは、磁力によってマスク2を引き寄せるプレートであり、基板1の上面に載置されて、成膜時に基板1とマスク2の密着性を向上する。
【0024】
なお、冷却プレート11aと磁石プレート11bは適宜省略されてもよい。例えば、保持部6に冷却機構が設けられている場合、冷却プレート11aはなくてもよい。また、保持部6がマスク2を吸着する構成として、磁石プレート11bが無い構成であってもよい。
【0025】
蒸着ユニット12は、ヒータ、シャッタ、蒸発源の駆動機構、蒸発レートモニタなどから構成され、蒸着物質を基板1に蒸着する蒸着源である。より具体的には、本実施形態では、蒸着ユニット12は複数のノズル(不図示)がX方向に並んで配置され、それぞれのノズルから蒸着材料が放出されるリニア蒸発源である。例えば、リニア蒸発源は、蒸発源移動機構(不図示)によってY方向(装置の奥行き方向)に往復移動される。本実施形態では、蒸着ユニット12が後述するアライメント装置2と共に、真空チャンバ110に設けられている。
【0026】
<アライメント装置>
成膜装置1は、基板1とマスク2とのアライメントを行うアライメント装置200を備える。アライメント装置200は、基板1を保持する保持装置300、マスク支持ユニット9、位置測定ユニット10、計測ユニット13、除振ユニット120を備えている。また、保持装置300は、基板1を保持する保持ユニット3等を備えている。以下、アライメント装置200の各構成について説明する。
【0027】
マスク支持ユニット9は、マスク台91、マスク支持柱92、マスク昇降機構93、及び気密部材94を含む。マスク台91は、マスク支持柱92に固定されている。マスク支持柱92は、支持フレーム130と天部113の間に設けられた気密部材94を通過してマスク昇降機構93に接続されている。マスク昇降機構93は、支持フレーム130に設けられており、マスク支持柱92をZ方向に昇降させる。気密部材94は、例えば、ベローズであって、気密性と伸縮性を有している。気密部材94は、マスク支持柱92の昇降時に、真空チャンバ110の真空度が損なわれることを防ぐことができる。
【0028】
位置測定ユニット10は、基板1を保持する保持ユニット3の位置を測定する。位置測定ユニット10は、保持ユニット3のX方向、Y方向、Z方向の位置を測定するよう、マスク台91に複数配置される(
図2ではそのうちの一つのみが図示されている)。位置測定ユニット10が測定する保持ユニット3の各方向における位置情報を基に、保持ユニット3の浮上姿勢(例えばX-Y平面に対する傾き)及び浮上位置(例えばZ方向の位置)を調整することができる。位置測定ユニット10は、例えば、非接触で対象物までの距離を測定するレーザ変位計を用いてもよい。
【0029】
計測ユニット13は、保持ユニット3に保持された基板1とマスク2の位置ずれを計測する。計測ユニット13は、支持フレーム130に設けられており、支持フレーム130と真空チャンバ天板113に形成された窓部130a、113aを介して真空チャンバ110内の画像を撮像可能である。基板1とマスク2にはそれぞれアライメントマーク(不図示)が形成されている。計測ユニット13は、基板1とマスク2の各アライメントマークを撮影する。計測ユニット13の計測結果に基づいて、後述する制御装置140により各アライメントマークの位置のずれを解消するように保持装置300が制御され、基板1とマスク2との相対位置を調整する。
【0030】
計測ユニット13は、例えば、相対的に視野が広いが低い解像度を有する低倍率CCDカメラ(ラフカメラ)や、相対的に視野が狭いが高い解像度(例えば数μmのオーダ)を有する高倍率CCDカメラ(ファインカメラ)などの複数の種類のアライメントカメラを用いることができる。これによって、基板1とマスク2との大まかな位置ずれを計測しつつ、基板1とマスク2との位置ずれを高精度で計測することができる。
【0031】
除振ユニット120は、除振台ベース121、除振台122などによって構成される。除振部120は、例えば、アクティブ除振装置や除振ゴムのようなパッシブ除振装置などであってもよい。除振ユニット120は、真空チャンバ天板113の上部に設けられており、真空チャンバ110に振動が生じた場合に、支持フレーム130側へ振動が伝達することを抑制する。これによって、アライメント装置200は、真空チャンバ110に振動が生じる場合であっても精度の高いアライメントを行うことができる。
【0032】
<保持装置>
保持装置300について
図2に加えて
図3を用いて説明する。
図3は、
図2の保持装置300とその周辺を拡大した図である。保持装置300は、基板を保持する保持ユニット3、保持ユニット3を浮上状態で支持する支持ユニット7、及び、保持ユニット3を変位する位置調整ユニット8を備える。
【0033】
保持ユニット3は、基板1を保持する保持部6と、保持部6を支持するプレート部材である本体部5とを有する。保持部6は、本体部5の下側の面Dに設けられている。保持部6は、例えば、基板1を静電気力によって吸着する静電チャックである。静電チャックは、例えば、セラミックス材質のマトリックス(基体とも呼ばれる)の内部に金属電極などの電気回路が埋め込まれた構造を有する。金属電極にプラス(+)及びマイナス(-)電圧が印加されると、セラミックスマトリックスを通じて基板1に分極電荷が誘導され、基板1と保持部6との間の静電気的な引力(静電気力)により、基板1が保持部6の吸着面(下面)に固定される。
【0034】
本実施形態の支持ユニット7は、磁力により保持ユニット3を浮上状態で支持する。支持ユニット7は、本体部5に設けられた磁力発生部7aと、固定部材4に設けられた磁力発生部7bを含む。固定部材4は真空チャンバ110に固定されており、磁力発生部7bを支持する。磁力発生部7a及び7bは永久磁石である。磁力発生部7aと磁力発生部7bとの間の磁気吸引力(又は磁気排斥力)によって、保持ユニット3を固定部材4に対して非接触で磁気浮上させて支持することができる。支持ユニット7は、保持ユニット3の自重に相当する浮上力を発生可能である。
【0035】
本実施形態の位置調整ユニット8は、磁力により保持ユニット3を変位するユニットであり、例えば、リニアモータである。位置調整ユニット8は、本体部5に設けられた磁力発生部8aと、固定部材4に設けられた磁力発生部8bとを有する。磁力発生部8a及び8bの一方は永久磁石であり、他方は電磁石である。
【0036】
位置調整ユニット8は、複数組設けられており(後述する
図6等を参照)、保持ユニット3をXYZ方向の並進方向の変位と、X、Y、Z軸周りの回転方向の変位と、姿勢の調整(水平方向に対する傾き)とを行える。
【0037】
<制御装置>
制御装置140は、成膜装置100の全体を制御する。制御装置140は、処理部140a、記憶部140b、入出力インタフェース(I/O)140c及び通信部140dを備える。処理部140aは、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部140bに記憶されたプログラムを実行して成膜装置100を制御する。記憶部140bは、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイスであり、処理部140aが実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O140cは、処理部140aと外部デバイスとの間の信号を送受信するインタフェースである。通信部140dは通信回線を介して上記装置又は他の制御装置等と通信を行う通信デバイスである。
【0038】
<成膜装置の動作例>
成膜装置100の動作例について
図4(A)~
図5(B)を用いて説明する。
図4(A)~
図5(B)は、基板1が真空チャンバ内部114に搬入され、基板1とマスク2とのアライメント後に、基板1に蒸着物質の成膜が行われる際の成膜装置100の状態の一例を示す。
【0039】
図4(A)は、
図1に示した搬送ロボット402aによって基板1が真空チャンバ110の内部空間114に搬入される前の成膜装置100の状態の一例を示している。マスク台91はマスク昇降機構93によって下降される。
図4(A)の状態から基板1が内部空間114に搬入され、保持ユニット3の保持部6に基板1が保持される。
【0040】
図4(B)は、基板1とマスク2のアライメント動作時の成膜装置100の状態を示している。基板1は保持部6に保持される。マスク2はアライメント位置まで上昇される。基板1とマスク2のアライメントは、基板1とマスク2が極僅かに離れた状態で行われる。
図4(A)~
図5(A)では、動作を分かり易くするため基板1とマスク2との隙間を誇張して表している。
【0041】
アライメント動作においては、まず、マスク台91に設けられた位置測定ユニット10によって、保持ユニット3の浮上位置が測定される。位置測定ユニット10が測定した情報を基に、
図1に示した制御装置140によって座標変換が行われ、保持ユニット3の6自由度(X方向、Y方向、Z方向、θX方向、θY方向、θZ方向)の位置情報が演算される。保持ユニット3の6自由度の位置情報に基づいて、制御装置140は保持ユニット3の浮上位置を調整するために位置調整ユニット8の制御を行う。位置調整ユニット8によって保持ユニット3の浮上姿勢は、水平に維持される。このようにして、保持ユニット3の浮上姿勢が水平に調整されることで、高精度なアライメント動作を行うことができる。
【0042】
次に、計測ユニット13は、基板1とマスク2に設けられたアライメントマークを撮影して、基板1とマスク2との位置ずれ量を計測する。「位置ずれ量」とは、X方向、Y方向、Z軸周りのθ方向の基板1マスク2との相対的なずれの量である。位置ずれ量が小さくなるように制御装置104が位置調整ユニット8を制御し、保持ユニット3の位置調整が行われる。位置ずれ量が許容範囲内になるまで計測と位置調整を繰り返す。これによって、マスク2に対する基板1の相対位置が調整される。
【0043】
アライメント動作が完了すると、基板1をマスク2上に載置する。
図5(A)に示すように本体部5の開口部50aにプレートユニット11の冷却プレート11a及び磁石プレート11bが降下される。プレートユニット11は、本体部5の開口部50aに向けて下降され、
図5(B)に示すように冷却プレート11aが保持部6に接近する。磁石プレート11bの磁力によって、マスク2が引き寄せられ、マスク2と基板1とを全体的に密着させることができる。その後、蒸着ユニット12から、マスク2を介して基板1に蒸着物質を放出する成膜処理を行う。基板1に蒸着物質の薄膜が成膜される。
【0044】
<保持ユニットの構造>
保持ユニット3の構造の詳細について説明する。上述したように基板1とマスク2の位置ずれを調整するアライメント動作は、保持ユニット3が浮上した状態で行われる。本体部5に錘部材を配置することで、保持ユニット3の重量バランスを調整し、保持ユニット3の浮上姿勢が水平姿勢になりやすくすることができる。一方、錘部材の配置によっては、保持ユニット3の振動特性に影響を与える場合がある。本実施形態では、錘部材によって保持ユニット3の浮上姿勢を調整しつつ、錘部材の配置によって、振動特性に対する錘部材の影響を抑制する構造を示している。
図6は、保持ユニット3の平面図であり、
図3のA―A線矢視方向の図に相当する。
図7は保持ユニット3の斜視図である。以下の説明では、便宜的にY方向を前後方向、X方向を左右方向と呼ぶ場合がある。
【0045】
本体部5は、平面視で保持ユニット3の外形を形成する。本体部5の外形は多角形状であって、特に矩形(正方形)である。点Pは本体部5の外形の図心である。本体部5は、その中央部に円形の開口部50aを有する板状の部材である。開口部50aはプレートユニット11の冷却プレート11a及び磁石プレート11bが通過可能な大きさを有している。
【0046】
本体部5は、Y方向に互いに対向する前辺部5F及び後辺部5Bと、これら前辺部5F及び後辺部5Bの間の、X方向に互いに対向する左辺部5L及び右辺部5Rと、を有し、また、角部5a~5dを有している。角部5a及び5bは、前辺部5Fの両端部の角部である。角部5c及び5dは、後辺部5Bの両端部の角部である。角部5a及び5dは左辺部5Lの両端部の角部である。角部5b及び5cは右辺部5Rの両端部の角部である。前辺部5F及び後辺部5Bは平行であり、左辺部5L及び右辺部5Rは平行である。前辺部5F及び後辺部5Bの方向と、左辺部5L及び右辺部5Rの方向とは直交している。
【0047】
本体部5の上面Uには、支持ユニット7の磁力発生部7b、位置調整ユニット8の磁力発生部8b、及び、錘部材15が設けられている。面Uは、固定部材4側の面である。本体部の下面Dには、保持部6が設けられている。下面Dは、マスク2が吸着される側の面である。
【0048】
本実施形態の保持装置300は、4つの支持ユニット7と、4つの位置調整ユニット8とを備えている。このため、本体部5の上面Uには、4つの磁力発生部7bと、4つの磁力発生部8bとが設けられている。4つの磁力発生部7bと、4つの磁力発生部8bとは、本体部5の対角線上の位置に配置されている。4つの磁力発生部8bのうちの2つはY方向に延設され、残りの2つはX方向に延設されている。
【0049】
本実施形態の場合、錘部材15は、辺部5F、5B、5L及び5R毎に設けられ、合計で4つである。各錘部材15の重さをチューニングすることによって、保持ユニット3の浮上姿勢を調整することができる。本実施形態では、錘部材15は、固定具150を用いて本体部5に着脱可能に取り付けられている。固定具150は、例えば、本体部5に形成したねじ穴に螺合するボルトである。重さの異なる錘部材15の交換を容易に行うことができ、保持ユニット3の浮上姿勢をより簡易に調整することができる。
【0050】
各錘部材15は、対応する辺部5F、5B、5L又は5Rに沿って設けられている。各錘部材15は、対応する辺部5F~5Rの端部(角部5a~5d)よりも中央51~54の側に配置されている。
【0051】
例えば、前辺部5Fに沿って配置された錘部材15は、角部5a及び5bよりも、前辺部5Fの中央51の側に配置されている。同様に、後辺部5Bに沿って配置された錘部材15は、角部5c及び5dよりも後辺部5Bの中央53の側に配置されている。左辺部5Lに沿って配置された錘部材15は、角部5b及び5cよりも左辺部5Lの中央52の側に配置されている。右辺部5Rに沿って配置された錘部材15は、角部5a及び5dよりも右辺部5Rの中央54の側に配置されている。
【0052】
本実施形態の場合、各錘部材15の対応する辺部5F、5B、5L及び5Rに沿った位置は、その長手方向の中心(換言すると平面視での図心)が、対応する辺部5F、5B、5L及び5Rの各中央51~54に位置するように配置されているが、錘部材15の配設位置は、これに限られない。
【0053】
錘部材15の配設位置について
図8(A)及び
図8(B)を参照して説明する。
図8(A)及び
図8(B)はその説明図であり、本体部5の模式図である。
図8(A)は、本体部5の辺部5Fに沿う錘部材15の配設範囲を説明する模式図である。配設範囲は、例えば、範囲L12であり、範囲L12は、辺部5Fの長さL1を5等分したうちの中央51を中心とした3/5の範囲である。長さL1は、辺部5Lと辺部5Rとの間の長さ(離間距離)でもある。
【0054】
配設範囲はL12よりも狭いL11の範囲であってもよい。範囲L11は、辺部5Fの長さL1を4等分したうちの中央51を中心とした2/4の範囲である。また、配設範囲は、L11よりも狭いL10の範囲であってもよい。範囲L10は、辺部5Fの長さL1を3等分したうちの中央51を中心とした1/3の範囲である。本実施形態では、錘部材15が範囲L10内に配置されている。
【0055】
図8(B)は、辺部5Fの範囲L10と同様の範囲を各辺部5B、5L及び5Rについて示した図である。
【0056】
範囲L20は、辺部5Rの長さL2を3等分したうちの中央52を中心とした1/3の範囲であり、本実施形態では対応する錘部材15が範囲L20内に配置されている。長さL2は辺部5Fと辺部5Bとの間の長さ(離間距離)でもある。
【0057】
範囲L30は、辺部5Bの長さL3を3等分したうちの中央53を中心とした1/3の範囲であり、本実施形態では対応する錘部材15が範囲L30内に配置されている。長さL3は辺部5Lと辺部5Rとの間の長さ(離間距離)でもある。
【0058】
範囲L40は、辺部5Lの長さL4を3等分したうちの中央54を中心とした1/3の範囲であり、本実施形態では対応する錘部材15が範囲L40内に配置されている。長さL4は辺部5Fと辺部5Bとの間の長さ(離間距離)でもある。
【0059】
以上の構成により、本実施形態では、錘部材15を本体部5の角部5a~5dよりも各辺部5F~5Lの中央51~54の側に配置することで、以下に述べるように保持ユニット3の振動特性、特に固有振動数に対する錘部材15の影響を抑制することができる。
【0060】
図9を参照して、本体部5の振動特性について説明する。
図9は、錘部材15が無い状態での本体部5の1次固有振動モードを模式的に示す概略図である。保持ユニット3が変位される場合等において、本体部5は微振動を生じる。1次固有振動モードにおいては、本体部5の部材形状に起因して、角部5a~5dで振幅が大きくなり、各辺部5F~5Lの中央51~54では振幅が小さい。したがって、錘部材15が角部5a~5d近傍に配置されると、振動の振幅を増大する方向に作用する。本体部5の角部5a~5dよりも、中央51~54の側に錘部材15を配置することで、振動の振幅の増大を低減でき、固有振動数の低下を抑制することができる。
【0061】
更に、角部5a~5dよりも中央51~54側の方が、本体部5の図心(重心位置)Pからの距離が近いため、中央51~54の側に錘部材15を配置することで、錘部材15に働く慣性モーメントが小さくなる。したがって、本実施形態のように、錘部材15を本体部5の角部5a~5dよりも各辺部5F~5Lの中央51~54の側に配置することで錘部材15の影響を抑制でき、
図8(A)の例で言えば、範囲L12よりも範囲L11に錘部材15を配置することで振動特性の影響を低減でき、更に、範囲L11よりも範囲L10に錘部材15を配置することで振動特性の影響を低減できる。
【0062】
<電子デバイスの製造方法>
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。この例の場合、
図1に例示した成膜ブロック401、製造ライン上に、例えば、3箇所、設けられる。
【0063】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図10(A)は有機EL表示装置500の全体図、
図10(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0064】
図10(A)に示すように、有機EL表示装置500の表示領域501には、発光素子を複数備える画素510がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0065】
なお、ここでいう画素とは、表示領域501において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子510R、第2発光素子510G、第3発光素子510Bの複数の副画素の組み合わせにより画素510が構成されている。画素510は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素510は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素510を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0066】
図10(B)は、
図10(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素510は、基板520上に、第1の電極(陽極)521と、正孔輸送層522と、赤色層522R・緑色層522G・青色層522Bのいずれかと、電子輸送層523と、第2の電極(陰極)528と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層522、赤色層522R、緑色層522G、青色層522B、電子輸送層523が有機層に当たる。赤色層522R、緑色層522G、青色層522Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0067】
また、第1の電極521は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層522と電子輸送層523と第2の電極522は、複数の発光素子510R、510G、510Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、
図10(B)に示すように正孔輸送層522が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層522R、緑色層522G、青色層522Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層523と第2の電極522が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0068】
なお、近接した第1の電極521の間でのショートを防ぐために、第1の電極521間に絶縁層529が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層530が設けられている。
【0069】
図10(B)では正孔輸送層522や電子輸送層523が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極521と正孔輸送層522との間には第1の電極521から正孔輸送層522への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極528と電子輸送層523の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0070】
赤色層522R、緑色層522G、青色層522Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層522Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0071】
なお、ここでは赤色層522Rの例を示したが、緑色層522Gや青色層522Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0072】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。ここでは、赤色層522Rが下側層522R1と上側層522R2の2層からなり、緑色層522Gと青色層522Bは単一の発光層からなる場合を想定する。成膜室403として6つの成膜室を想定する。
【0073】
まず、有機EL表示装置500を駆動するための回路(不図示)及び第1の電極521が形成された基板520を準備する。なお、基板520の材質は特に限定はされず、ガラス、プラスチック、金属などで構成することができる。本実施形態においては、基板520として、ガラス基板上にポリイミドのフィルムが積層された基板を用いる。
【0074】
第1の電極521が形成された基板520の上にアクリル又はポリイミド等の樹脂層をバーコートやスピンコートでコートし、樹脂層をリソグラフィ法により、第1の電極521が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層529を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。なお、本実施形態では、絶縁層529の形成までは大型基板に対して処理が行われ、絶縁層529の形成後に、基板520を分割する分割工程が実行される。
【0075】
絶縁層529がパターニングされた基板520を第1の成膜装置100に搬入し、正孔輸送層522を、表示領域の第1の電極521の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層522は、最終的に1つ1つの有機EL表示装置のパネル部分となる表示領域501ごとに開口が形成されたマスクを用いて成膜される。
【0076】
次に、正孔輸送層522までが形成された基板520を第2の成膜室403に搬入する。基板520とマスクとのアライメントを行い、基板520をマスクの上に載置し、正孔輸送層522の上の、基板520の赤色を発する素子を配置する部分(赤色の副画素を形成する領域)に、赤色層56Rを成膜する。ここで、第2の成膜装置で用いるマスクは、有機EL表示装置500の副画素となる基板520上における複数の領域のうち、赤色の副画素となる複数の領域にのみ開口が形成された高精細マスクである。これにより、赤色発光層を含む赤色層522Rは、基板520上の複数の副画素となる領域のうちの赤色の副画素となる領域のみに成膜される。換言すれば、赤色層522Rは、基板520上の複数の副画素となる領域のうちの青色の副画素となる領域や緑色の副画素となる領域には成膜されずに、赤色の副画素となる領域に選択的に成膜される。
【0077】
赤色層522Rの成膜と同様に、第3の成膜室503において緑色層522Gを成膜し、さらに第4の成膜室503において青色層522Bを成膜する。赤色層522R、緑色層522G、青色層522Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置100において表示領域501の全体に電子輸送層523を成膜する。電子輸送層523は、3色の層522R、522G、522Bに共通の層として形成される。
【0078】
電子輸送層523までが形成された基板を第6の成膜室403に移動し、第2の電極528を成膜する。本実施形態では、第1の成膜室403~第6の成膜室403では真空蒸着によって各層の成膜を行う。しかし、本発明はこれに限定はされず、例えば第6の成膜室403における第2の電極528の成膜はスパッタによって成膜するようにしてもよい。その後、第2の電極528までが形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層530を成膜して(封止工程)、有機EL表示装置500が完成する。なお、ここでは保護層530をCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0079】
<第2実施形態>
第1実施形態では、錘部材15を本体部5の上面Uに配置したが、錘部材15の配置場所はこれに限らない。
図11の(A)~
図11(C)及び
図12は、錘部材15の配置例を示す。
【0080】
図11(A)は、錘部材15を本体部5の側面に配置した例を示している。
図11(B)は、錘部材15を本体部5の下面Uに配置した例を示す。このように、錘部材15は、対応する辺部5F、5B、5L及び5Lに沿って、本体部5の側面に配置してもよいし、下面Uに配置してもよい。
【0081】
また、錘部材15を領域L10に配置する態様として、第一実施形態のように、錘部材15の全体が領域L10に配置される態様の他、錘部材15の一部が領域L10からはみ出るものの、その重心が領域L10に配置される態様であってもよい。
図11(C)は、その一例を示す。辺部5Fに沿って配置された錘部材15は、その長手方向の両端部が領域L10から僅かにはみ出ているが、その重心位置P’は領域L10内に位置している。他の辺部5B、5L及び5Rに沿う各錘部材15も同様である。
【0082】
錘部材15の全部又は一部が、本体部5の内部に埋め込まれた形態であってもよい。
図12は、錘部材15が本体部5の上面Uに設けられたた凹部50bに配置されている例を示す。このように錘部材15が本体部5に埋め込まれるように設けられることによって、錘部材15の重心位置P’が高くなることを避けることができる。したがって、保持ユニット3の浮上姿勢の安定性を高めつつ、保持ユニット3の振動特性の影響を抑制できる。
【0083】
<第3実施形態>
第1実施形態では、各辺部5F、5B、5L及び5Rに錘部材15を設けたが、錘部材15を設けない辺部があってもよい。
図13(A)及び
図13(B)は、錘部材15の別の配置例を示す。
図13(A)は、錘部材15が本体部5の辺部5L及び辺部5Rに沿って配置されており、合計で2つ設けられている例を示す。辺部5F及び辺部5Bに対応する錘部材15は設けられていない。
【0084】
錘部材15は、複数の錘部から構成されてもよい。
図13(B)の例では、錘部材15が複数の錘部15’によって構成されている。錘部15’の個数を調整することで、各錘部材15の重さの調整を簡易に行うことができる。
【0085】
<第4実施形態>
本体部5の外形は様々な多角形状を採用可能である。
図14(A)は、本体部5の角部5a~5dに面取り部5gを設けた形態であり、略四角形で、厳密には八角形である。辺部5Fに沿って配置される錘部材15は、辺部5Fの両端部e1よりも中央の側に配置され、かつ、範囲L10内に配置されている。範囲L10は、一例として、辺部5Lと辺部5Rとの間の長さL1を3等分したうちの辺部5Fの中央を中心とした1/3の範囲である。
【0086】
辺部5Rに沿って配置される錘部材15は、辺部5Rの両端部e2よりも中央の側に配置され、かつ、範囲L20内に配置されている。範囲L20は、一例として、辺部5Fと辺部5Bとの間の長さL2を3等分したうちの辺部5Rの中央を中心とした1/3の範囲である。
【0087】
辺部5Bに沿って配置される錘部材15は、辺部5Bの両端部e3よりも中央の側に配置され、かつ、範囲L30内に配置されている。範囲L30は、一例として、辺部5Lと辺部5Rとの間の長さL3を3等分したうちの辺部5Bの中央を中心とした1/3の範囲である。
【0088】
辺部5Lに沿って配置される錘部材15は、辺部5Lの両端部e4よりも中央の側に配置され、かつ、範囲L40内に配置されている。範囲L40は、一例として、辺部5Fと辺部5Bとの間の長さL4を3等分したうちの辺部5Lの中央を中心とした1/3の範囲である。
【0089】
図14(B)は、本体部5の角部5a~5dをR形状(円弧形状)にした形態である。この例においても、辺部5Fに沿って配置される錘部材15は、辺部5Fの両端部e1よりも中央の側に配置され、かつ、範囲L10内に配置されている。範囲L10は、一例として、辺部5Lと辺部5Rとの間の長さL1を3等分したうちの辺部5Fの中央を中心とした1/3の範囲である。
【0090】
辺部5Rに沿って配置される錘部材15は、辺部5Rの両端部e2よりも中央の側に配置され、かつ、範囲L20内に配置されている。範囲L20は、一例として、辺部5Fと辺部5Bとの間の長さL2を3等分したうちの辺部5Rの中央を中心とした1/3の範囲である。
【0091】
辺部5Bに沿って配置される錘部材15は、辺部5Bの両端部e3よりも中央の側に配置され、かつ、範囲L30内に配置されている。範囲L30は、一例として、辺部5Lと辺部5Rとの間の長さL3を3等分したうちの辺部5Bの中央を中心とした1/3の範囲である。
【0092】
辺部5Lに沿って配置される錘部材15は、辺部5Lの両端部e4よりも中央の側に配置され、かつ、範囲L40内に配置されている。範囲L40は、一例として、辺部5Fと辺部5Bとの間の長さL4を3等分したうちの辺部5Lの中央を中心とした1/3の範囲である。
【0093】
本体部5の外形は、上記の例以外にも、三角形、六角形なども採用可能である。
【0094】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0095】
1 基板、2 マスク、3 保持ユニット、4 固定部材、5 本体部、6 保持部、7 支持ユニット、8 位置調整ユニット、9 マスク支持ユニット、10 位置測定ユニット、11 プレートユニット、12 蒸着ユニット、13 計測ユニット、15 錘部材、100 成膜装置、200 アライメント装置、300 保持装置