(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142989
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光半導体素子および光半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G02F1/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055424
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】礒部 結希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理仁
(72)【発明者】
【氏名】阿部 紘士
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA28
2K102BA01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BC10
2K102CA23
2K102CA30
2K102DA05
2K102DB02
2K102DD03
2K102EA05
(57)【要約】
【課題】改善された新規な光半導体素子および光半導体素子の製造方法を得る。
【解決手段】光半導体素子は、例えば、第一クラッド層と、光導波層と、第二クラッド層とが、この順に第一方向に積層され、第一方向と交差した方向に延びたメサと、導体で作られ電力供給配線と電気的に接続された端子部と、当該端子部と電気的に接続され電力供給配線から供給された電力によって発熱する発熱部と、を有し、メサの所定区間に対して絶縁層を挟んで設けられ、光導波層を加熱するヒータと、メサおよびヒータを覆い、端子部の少なくとも一部と第一方向に重なる位置に開口が設けられた絶縁被膜と、を備え、端子部は、第一方向において開口と重なり当該開口を貫通した電力供給配線と電気的に接続された接続部位を有し、絶縁被膜をエッチングして開口を形成可能なエッチング剤に対する接続部位のエッチング耐性が、エッチング剤に対する発熱部のエッチング耐性より高い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一クラッド層と、光導波層と、第二クラッド層とが、この順に第一方向に積層され、前記第一方向と交差した方向に延びたメサと、
導体で作られ電力供給配線と電気的に接続された端子部と、当該端子部と電気的に接続され前記電力供給配線から供給された電力によって発熱する発熱部と、を有し、前記メサの所定区間に対して絶縁層を挟んで設けられ、前記光導波層を加熱するヒータと、
前記メサおよび前記ヒータを覆い、前記端子部の少なくとも一部と前記第一方向に重なる位置に開口が設けられた絶縁被膜と、
を備え、
前記端子部は、前記第一方向において前記開口と重なり当該開口を貫通した前記電力供給配線と電気的に接続された接続部位を有し、
前記絶縁被膜をエッチングして前記開口を形成可能なエッチング剤に対する前記接続部位のエッチング耐性が、前記エッチング剤に対する前記発熱部のエッチング耐性より高い、光半導体素子。
【請求項2】
前記端子部は、前記発熱部の材料より前記エッチング耐性の高い材料で作られた、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記エッチング耐性の高い材料は、前記電力供給配線の材料と同じ材料である、請求項2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記端子部は、前記発熱部を構成する材料と同じ材料で作られ、
前記端子部の前記第一方向における厚さが、前記発熱部の前記第一方向における厚さより厚い、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項5】
前記接続部位は、前記発熱部に対して前記第一方向に重なった、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記端子部は、前記発熱部に対して前記第一方向と交差した方向にずれた第一部位を有し、
前記接続部位は、第一部位に形成された、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項7】
前記端子部は、前記発熱部として互いに離れた複数の発熱部と、電気的に接続された、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項8】
前記複数の発熱部は、前記メサの互いに異なる区間に対して前記絶縁層を挟んで設けられた、請求項7に記載の光半導体素子。
【請求項9】
前記メサとして複数のメサを備え、
前記複数の発熱部は、前記複数のメサに対して前記絶縁層を挟んで設けられた、請求項7に記載の光半導体素子。
【請求項10】
前記接続部位は、前記複数の発熱部の間に設けられた、請求項7に記載の光半導体素子。
【請求項11】
前記メサは、前記光半導体素子に設けられ前記第一方向を向くベース面から前記第一方向に突出した、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項12】
前記ベース面は、前記光半導体素子に設けられたトレンチの底面である、請求項11に記載の光半導体素子。
【請求項13】
前記メサに対して、前記第一方向および前記メサの延び方向と交差した第二方向、ならびに当該第二方向の反対方向に隣り合うように設けられた埋込層を備えた、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項14】
第一クラッド層と、光導波層と、第二クラッド層とが、この順に第一方向に積層され、前記第一方向と交差した方向に延びたメサと、
導体で作られ電力供給配線と電気的に接続された端子部と、当該端子部と電気的に接続され前記電力供給配線から供給された電力によって発熱する発熱部と、を有し、前記メサの所定区間に対して絶縁層を挟んで設けられ、前記光導波層を加熱するヒータと、
前記メサおよび前記ヒータを覆い、前記端子部の少なくとも一部と前記第一方向に重なる位置に開口が設けられた絶縁被膜と、
を備え、
前記端子部は、前記第一方向において前記開口と重なり当該開口を貫通した前記電力供給配線と電気的に接続された接続部位を有し、
前記絶縁被膜をエッチングして前記開口を形成可能なエッチング剤に対する前記接続部位のエッチング耐性が、前記エッチング剤に対する前記発熱部のエッチング耐性より高い、光半導体素子の製造方法であって、
前記絶縁被膜のうち前記端子部を覆う部位をエッチングして前記開口を形成し当該開口から前記接続部位を露出する工程と、
一部が前記開口に収容され前記接続部位と電気的に接続された部位を有するように前記電力供給配線を形成する工程と、
を備えた、光半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子および光半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導波路を加熱するヒータを備えた光半導体素子が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、ヒータが露出している分、酸化しやすい。
【0005】
ヒータの酸化を防止するため、当該ヒータを絶縁層で覆う構成とすることが考えられる。その場合、ヒータと当該ヒータに電力を供給する配線とを電気的に接続するため、絶縁層をヒータ上で部分的にエッチングして当該絶縁層に開口を形成し、当該開口からヒータを部分的に露出し、当該開口を埋めるように電力供給配線を形成することにより、開口を介してヒータと電力供給配線とを電気的に接続する、という手法および構成が考えられる。
【0006】
その場合、絶縁層の厚さの製造ばらつきを考慮した上で当該絶縁層を確実にエッチングするためには、絶縁層の公差最大となる厚さよりも深くエッチングする必要があるが、その場合に、ヒータが過度にエッチングされてしまうと、例えば、ヒータが部分的に消失することにより、加熱性能が低下したり、ヒータと電力供給配線とを確実に電気的に接続できなくなったり、といった問題が生じる虞がある。
【0007】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、ヒータと電力供給配線とを電気的に接続するために絶縁層をエッチングして開口を形成する場合に、当該エッチングによる不都合な事象が生じ難くなるような、改善された新規な光半導体素子および光半導体素子の製造方法を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光半導体素子は、例えば、第一クラッド層と、光導波層と、第二クラッド層とが、この順に第一方向に積層され、前記第一方向と交差した方向に延びたメサと、導体で作られ電力供給配線と電気的に接続された端子部と、当該端子部と電気的に接続され前記電力供給配線から供給された電力によって発熱する発熱部と、を有し、前記メサの所定区間に対して絶縁層を挟んで設けられ、前記光導波層を加熱するヒータと、前記メサおよび前記ヒータを覆い、前記端子部の少なくとも一部と前記第一方向に重なる位置に開口が設けられた絶縁被膜と、を備え、前記端子部は、前記第一方向において前記開口と重なり当該開口を貫通した前記電力供給配線と電気的に接続された接続部位を有し、前記絶縁被膜をエッチングして前記開口を形成可能なエッチング剤に対する前記接続部位のエッチング耐性が、前記エッチング剤に対する前記発熱部のエッチング耐性より高い。
【0009】
前記光半導体素子では、前記端子部は、前記発熱部の材料より前記エッチング耐性の高い材料で作られてもよい。
【0010】
前記光半導体素子では、前記エッチング耐性の高い材料は、前記電力供給配線の材料と同じ材料であってもよい。
【0011】
前記光半導体素子では、前記端子部は、前記発熱部を構成する材料と同じ材料で作られ、前記端子部の前記第一方向における厚さが、前記発熱部の前記第一方向における厚さより厚くてもよい。
【0012】
前記光半導体素子では、前記接続部位は、前記発熱部に対して前記第一方向に重なってもよい。
【0013】
前記光半導体素子では、前記端子部は、前記発熱部に対して前記第一方向と交差した方向にずれた第一部位を有し、前記接続部位は、第一部位に形成されてもよい。
【0014】
前記光半導体素子では、前記端子部は、前記発熱部として互いに離れた複数の発熱部と、電気的に接続されてもよい。
【0015】
前記光半導体素子では、前記複数の発熱部は、前記メサの互いに異なる区間に対して前記絶縁層を挟んで設けられてもよい。
【0016】
前記光半導体素子は、前記メサとして複数のメサを備え、前記複数の発熱部は、前記複数のメサに対して前記絶縁層を挟んで設けられてもよい。
【0017】
前記光半導体素子では、前記接続部位は、前記複数の発熱部の間に設けられてもよい。
【0018】
前記光半導体素子では、前記メサは、前記光半導体素子に設けられ前記第一方向を向くベース面から前記第一方向に突出してもよい。
【0019】
前記光半導体素子では、前記ベース面は、前記光半導体素子に設けられたトレンチの底面であってもよい。
【0020】
前記光半導体素子は、前記メサに対して、前記第一方向および前記メサの延び方向と交差した第二方向、ならびに当該第二方向の反対方向に隣り合うように設けられた埋込層を備えてもよい。
【0021】
本発明の光半導体素子の製造方法は、例えば、第一クラッド層と、光導波層と、第二クラッド層とが、この順に第一方向に積層され、前記第一方向と交差した方向に延びたメサと、導体で作られ電力供給配線と電気的に接続された端子部と、当該端子部と電気的に接続され前記電力供給配線から供給された電力によって発熱する発熱部と、を有し、前記メサの所定区間に対して絶縁層を挟んで設けられ、前記光導波層を加熱するヒータと、前記メサおよび前記ヒータを覆い、前記端子部の少なくとも一部と前記第一方向に重なる位置に開口が設けられた絶縁被膜と、を備え、前記端子部は、前記第一方向において前記開口と重なり当該開口を貫通した前記電力供給配線と電気的に接続された接続部位を有し、前記絶縁被膜をエッチングして前記開口を形成可能なエッチング剤に対する前記接続部位のエッチング耐性が、前記エッチング剤に対する前記発熱部のエッチング耐性より高い、光半導体素子の製造方法であって、前記絶縁被膜のうち前記端子部を覆う部位をエッチングして前記開口を形成し当該開口から前記接続部位を露出する工程と、一部が前記開口に収容され前記接続部位と電気的に接続された部位を有するように前記電力供給配線を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、改善された新規な光半導体素子および光半導体素子の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態の光半導体素子の例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の光半導体素子の製造途中の構成を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の光半導体素子の製造途中の構成を示す例示的かつ模式的な斜視図であって、
図4の後の状態を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の光半導体素子の製造途中の構成を示す例示的かつ模式的な斜視図であって、
図5の後の状態を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の光半導体素子の製造途中の構成を示す例示的かつ模式的な斜視図であって、
図6の後の状態を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の光半導体素子の、一部の断面を含む例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の光半導体素子の製造途中の構成を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の光半導体素子の
図3と同等位置における断面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態の光半導体素子の
図3と同等位置における断面図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態の光半導体素子の一部の例示的かつ模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0025】
以下に示される実施形態および変形例は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態および変形例の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0026】
本明細書において、序数は、部品や、部材、部位、方向等を区別するために便宜上付与されうるものである。なお、序数は、優先順位や順番を示すものではないし、数を特定するものでもない。
【0027】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。なお、X方向は、長手方向あるいは延び方向とも称され、Y方向は、短手方向あるいは幅方向とも称され、Z方向は、高さ方向あるいは突出方向とも称されうる。
【0028】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の光半導体素子100Aの斜視図である。
図1に示されるように、光半導体素子100A(100)は、基板10および積層部20を含む積層体30と、メサ40と、ヒータ50と、電力供給配線60と、を備えている。
【0029】
基板10は、半導体基板である。基板10は、Z方向と交差して広がっている。本実施形態では、基板10は、X方向およびY方向に延びるとともに、Z方向と直交している。基板10は、例えば、n-InPで作られる。
【0030】
積層部20は、基板10上にZ方向に積層された複数の半導体層を有している。積層体30は、基板10と積層部20とを有している。積層体30が作られた後、当該積層体30にZ方向に凹んだトレンチ31を形成することにより、相対的にトレンチ31の底面31aから突出したメサ40が形成される。したがって、積層部20とメサ40とは、複数の半導体層が積層された同じ積層構造を有している。
【0031】
メサ40においては、基板10上に、第一クラッド層41、導波路層42、および第二クラッド層43が、Z方向にこの順に積層されている。第一クラッド層41は、例えば、n-InPで作られ、導波路層42は、例えば、n-InGaAsPで作られ、第二クラッド層43は、例えば、p-InPで作られる。Z方向は、第一方向の一例である。上述したように、積層部20においても、メサ40を構成するこれら半導体層と同じ半導体層が、Z方向にこの順に積層されている。
【0032】
メサ40は、底面31aからZ方向に突出し、Y方向における所定幅およびZ方向における所定高さで、X方向に延びている。X方向は、第一方向と交差した方向の一例である。なお、本実施形態では、メサ40は、直線状に延びているが、これには限定されず、湾曲しながら延びてもよい。この場合も、メサ40は、Z方向と交差した方向に延びるものとなる。
【0033】
積層体30は、全体的に絶縁層32で覆われている。絶縁層32は、例えば、SiNxや、SiO2によって作られる。
【0034】
図2は、
図1のII-II断面図である。
図1,2に示されるように、電力供給配線60は、絶縁層32上に設けられている。すなわち、電力供給配線60と積層体30との間には、絶縁層32が介在している。
【0035】
電力供給配線60は、メサ40に対してY方向に離れた積層部20上から、当該積層部20とメサ40との間のトレンチ31の側面31b、底面31a、および側面31bを経由して、メサ40上まで延びている。電力供給配線60は、積層体30の各表面の法線方向における所定の厚さおよびX方向における所定の幅で、延びている。電力供給配線60は、例えば、Auのような電気伝導率が高い材料で作られる。
【0036】
図3は、
図2のIII部の拡大図である。
図3に示されるように、ヒータ50は、発熱部51と、端子部52と、を有している。端子部52は、導体で作られ、電力供給配線60と電気的に接続されている。また、発熱部51は、端子部52と電気的に接続され、当該端子部52を介して電力供給配線60から供給された電力によって発熱する。端子部52は、例えば、Auのような電気伝導率が高い材料で作られる。また、発熱部51は、例えば、ニッケルクロム合金で作られる。
【0037】
電力供給配線60のうちメサ40の先端部分を覆う接続部位60aは、製造工程の途中でヒータ50を覆っていた絶縁層32bをエッチングによって選択的に除去することにより形成された開口32h内に進入し、そのZ方向の反対方向の端部において端子部52の接続部位52aと接し、端子部52および発熱部51と電気的に接続されている。接続部位52aは、端子部52のうち、Z方向において開口32hと重なる部位である。
【0038】
図1~3の例では、発熱部51は、1箇所の接続部位52a(端子部52)を介して電力供給配線60と電気的に接続されているが、発熱部51は、当該接続部位52aから離れた図示しない少なくとももう1箇所の接続部位52a(端子部52)を介して別の電力供給配線60と電気的に接続されている。光半導体素子100は、当該もう1箇所でも、
図2,3と同様の構成を備えている。そして、複数の電力供給配線60間を通電し、端子部52を介して発熱部51に電力を供給することにより、発熱部51は発熱する。これにより、メサ40の導波路層42が加熱され、当該導波路層の屈折率が変化する。
【0039】
本実施形態の光半導体素子100では、ヒータ50の発熱部51が絶縁層32で覆われているため、発熱部51が露出した構成に比べて、当該発熱部51の酸化、ひいては発熱性能の劣化を、抑制することができる。
【0040】
ここで、
図4~9を参照しながら、
図3に示される構成を形成する手順について説明する。
【0041】
図4は、光半導体素子100Aの製造途中の構造を示す斜視図であって、積層体30上を絶縁層32a(32)で覆い、さらに、メサ40上にヒータ50の発熱部51を形成した状態を示す。
図4に示されるように、発熱部51は、メサ40の頂面を覆い、Z方向に所定の厚さおよびY方向における所定の幅で、X方向に延びている。
【0042】
図5は、光半導体素子100Aの製造途中の構造を示す斜視図であって、
図4で形成された発熱部51上に端子部52を形成した状態を示す。
図5に示されるように、端子部52は、発熱部51の一部区間を覆うように、Z方向に所定の厚さおよびY方向における所定の幅で、X方向に延びている。なお、端子部52を形成するプロセスにおいて、トレンチ31内にも端子部52と同じ成分の部位53が形成される。
【0043】
図6は、光半導体素子100Aの製造途中の構造を示す斜視図であって、
図5で形成された構造を覆う絶縁層32bを形成した状態を示す。
図6を
図5と比較すれば明らかとなるように、絶縁層32bは、
図5の状態において露出している部位、すなわち、発熱部51、端子部52、部位53、および絶縁層32aを、覆う。
【0044】
図7は、
図6のVII-VII断面図である。
図7に示されるように、発熱部51のみが積層された位置では、メサ40は絶縁層32aで覆われ、当該絶縁層32a上にヒータ50の発熱部51が積層され、当該発熱部51が絶縁層32bで覆われる。メサ40の頂面を除く部位は、絶縁層32aで覆われた後、さらに絶縁層32bで覆われる。Z方向における発熱部51の厚さは、T1である。
【0045】
図8は、
図6のVIII-VIII断面図である。
図8に示されるように、発熱部51および端子部52が積層された位置では、メサ40は絶縁層32aで覆われ、当該絶縁層32a上にヒータ50の発熱部51が積層され、当該発熱部51上にさらに端子部52が積層され、当該端子部52が絶縁層32bで覆われる。この断面でも、メサ40の頂面を除く部位は、絶縁層32aで覆われた後、さらに絶縁層32bで覆われる。この断面でも、Z方向における発熱部51の厚さは、T1である。また、この時点でのZ方向における端子部52の厚さは、T2である。
【0046】
図9は、光半導体素子100Aの製造途中の構造を示す斜視図であって、
図6の後、開口32hが形成された状態を示す。開口32hは、絶縁層32bをエッチングマスクで覆い、絶縁層32bのうち当該エッチングマスクによって覆われていない部位に対してZ方向の反対方向にエッチング剤を作用させる選択的エッチングによって、形成される。エッチング剤は、例えば、CF
4である。開口23hが形成される絶縁層32bは、絶縁被膜の一例である。
【0047】
開口32hは、端子部52の少なくとも一部とZ方向に重なる位置に設けられる。したがって、電力供給配線60が形成される前の
図9の状態において、端子部52は、開口32hを介して部分的にZ方向に露出することになる。その後、電力供給配線60が形成され、
図1~3に示されるような光半導体素子100Aが作られる。この際、
図3に示されるように、電力供給配線60の一部によって開口32hが埋められ、言い換えると、電力供給配線60の一部が開口32hに収容され、当該電力供給配線60と端子部52とが電気的に接続される。
図3,9に示されるように、端子部52のうち、開口32hとZ方向に重なり、当該開口32hを貫通した電力供給配線60と電気的に接続される部位が、端子部52の接続部位52aである。
【0048】
ここで、絶縁層32bのエッチングに際しては、絶縁層32bの製造ばらつきの最大厚さである場合にも、絶縁層32bが確実に除去されるように行う必要がある。したがって、開口32hを設けるための絶縁層32bのエッチングによって、当該絶縁層32bに加えて、端子部52(接続部位52a)も部分的にエッチングされる。
図3に示されるように、接続部位52aの厚さT3は、エッチング前の厚さT2(
図8参照)より低くなる。厚さT2は、端子部52のうち、接続部位52aから外れた部位の厚さでもある。
【0049】
この場合において、仮に、
図7の断面において、発熱部51を覆う絶縁層32bをエッチングして開口を形成した場合、発熱部51が部分的に消失することになる。発熱部51が消失すると、加熱性能が低下したり、発熱部51と電力供給配線60とを確実に電気的に接続できなくなったり、といった問題が生じる虞がある。
【0050】
これに対し、本実施形態では、発熱部51と電気的に接続された端子部52を設け、当該端子部52を覆う絶縁層32bをエッチングして、開口32hを形成する。これにより、絶縁層32bを超えるエッチングによっては、端子部52が部分的に除去されることになり、発熱部51は除去されずに済む。したがって、発熱部51が消失することにより、加熱性能が低下したり、発熱部51と電力供給配線60とを確実に電気的に接続できなくなったり、といった問題が生じるのを、回避することができる。
【0051】
本実施形態では、接続部位52aは、発熱部51に対してZ方向に重なっている。この場合、接続部位52aは、絶縁層32bを除去するエッチングにおいて、発熱部51を保護しているということができる。
【0052】
絶縁層32bをエッチングするエッチング剤に対するエッチング耐性は、例えば、当該エッチング剤に対する材料のエッチング速度に反比例した指標とすることができる。本実施形態では、端子部52は、発熱部51の材料(例えば、ニッケルクロム合金)よりも当該エッチング剤に対するエッチング速度が低い材料(例えば、Au)で作られる。したがって、本実施形態では、端子部52のエッチング耐性が、当該エッチング剤に対する発熱部51のエッチング耐性より高い。
【0053】
なお、本実施形態では、端子部52は、電力供給配線60と同じ材料で作られている。しかしながらこれには限定されず、端子部52は、電力供給配線60とは異なる材料で作られてもよい。
【0054】
以上、説明したように、本実施形態によれば、例えば、ヒータ50と電力供給配線60とを電気的に接続するために絶縁層32bをエッチングして開口32hを形成する場合に、当該エッチングによる不都合な事象が生じ難くなるような、改善された新規な光半導体素子100および当該光半導体素子100の製造方法を得ることができる。
【0055】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態の光半導体素子100B(100)の斜視図である。
図10に示されるように、光半導体素子100Bは、リング共振器として構成されており、オーバル状かつ周状の導波路を構成する湾曲したメサ40C1,40C2と、例えば2×2MMIのような結合部Cを介して光学的に接続された二つの直線状のメサ40Lと、を備えている。
【0056】
図11は、光半導体素子100Bの製造途中の構造を示す斜視図であって、絶縁層32a上に、発熱部51および端子部52を形成した状態、すなわち上記第1実施形態の
図5と同等の状態を示す図である。
【0057】
図11に示されるように、ヒータ50の発熱部51は、湾曲したメサ40C1,40C2上に絶縁層32aを介して積層されている。また、ヒータ50の端子部52は、結合部C上に絶縁層32aを介して積層されている。端子部52は、発熱部51上に積層された部位52bと、結合部Cの絶縁層32a上に積層された部位52cと、を有している。部位52cは、発熱部51に対してX方向またはX方向の反対方向にずれた部位である。部位52cは、発熱部51に対してZ方向と交差した方向にずれた第一部位の一例である。
【0058】
図12は、
図10のXII-XII断面図である。
図12に示されるように、本実施形態では、結合部Cのメサ40上に、
図3と同様の開口32hが形成されている。ただし、本実施形態では、
図11,12に示されるように、端子部52のうち開口32hと重なる接続部位52aは、発熱部51からX方向またはX方向の反対方向にずれた部位52cに形成されており、発熱部51とは重なっていない。
【0059】
したがって、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、開口32hを形成するため絶縁層32bを除去するエッチングによっては、端子部52が部分的に除去されることになり、発熱部51は除去されずに済む。したがって、本実施形態によっても、発熱部51が消失することにより、加熱性能が低下したり、発熱部51と電力供給配線60とを確実に電気的に接続できなくなったり、といった問題が生じるのを、回避することができる。
【0060】
また、
図10,11に示されるように、本実施形態では、端子部52は、互いに離れた複数の発熱部51と電気的に接続されている。また、複数の発熱部51は、周状のメサ40C1,40C2の互いに異なる区間に対して絶縁層32aを挟んで設けられている。言い換えると、複数の発熱部51は、複数のメサ40C1,40C2に対して絶縁層32aを挟んでもうけられている。すなわち、メサ40C1用の発熱部51と、メサ40C2用のメサとで、端子部52および当該端子部52と電気的に接続された電力供給配線60とが、共用されている。よって、本実施形態によれば、例えば、複数の発熱部51について、それぞれ、端子部52および電力供給配線60が設けられた構成に比べて、構成を簡素化することができ、製造に要する手間やコストを抑制することができるという効果が得られる。
【0061】
なお、端子部52は、異なる複数のメサ40の発熱部51について共用されればよく、この場合における当該複数のメサ40の形態は、湾曲したメサ40には限定されず、直線状のメサ40が含まれてもよいし、直線状のメサ40と湾曲したメサ40とが含まれてもよい。また、三つ以上のメサ40の発熱部51について、端子部52が共用されてもよい。
【0062】
[第3実施形態]
図13は、第3実施形態の光半導体素子100C(100)の、
図3と同等位置での断面図である。
図13に示されるように、本実施形態では、端子部52は、発熱部51の一部であって、発熱部51の一般部分51aより厚さが厚い部位51bである。すなわち、本実施形態では、端子部52は、発熱部51を構成する材料と同じ材料で作られている。一般部分51aは、メサ40上に絶縁層32aを介して積層され、当該メサ40に沿って伸びる部位であり、本実施形態では、発熱部51に相当する。一般部分51aの厚さは、T1であり、端子部52の厚さは、T4(>T1)である。また、接続部位52aは、Z方向において開口32hと重なる部位である。
【0063】
したがって、本実施形態でも、上記第1,第2実施形態と同様に、開口32hを形成するため絶縁層32bを除去するエッチングによっては、端子部52としての部位51bが部分的に除去されることになり、発熱部51の一般部分51aは除去されずに済むように構成することができる。したがって、本実施形態によっても、発熱部51の一般部分51aが消失することにより、加熱性能が低下したり、発熱部51と電力供給配線60とを確実に電気的に接続できなくなったり、といった問題が生じるのを、回避することができる。
【0064】
絶縁層32bをエッチングするエッチング剤に対すエッチング耐性は、例えば、当該エッチング剤に対する材料の消失時間に比例した指標とすることができる。本実施形態では、端子部52としての部位51bの厚さT4は、一般部分51aの厚さT1より厚いため、端子部52としての部位51bの消失時間は、一般部分51aの消失時間より長い。したがって、本実施形態では、絶縁層32bをエッチングするエッチング剤に対する端子部52としての部位51bのエッチング耐性が、当該エッチング剤に対する発熱部51の一般部分51aのエッチング耐性より高い。
【0065】
本実施形態の構成は、上記第1,第2実施形態の光半導体素子100A,100Bにも適用可能である。
【0066】
[第4実施形態]
図14は、第4実施形態の光半導体素子100D(100)の斜視図である。
図14に示されるように、本実施形態では、メサ40に対して、Y方向およびY方向の反対方向に隣り合ったトレンチ31が、埋込層33で埋められている。すなわち、埋込層33は、メサ40に対して、Y方向およびY方向の反対方向に隣り合っている。Y方向は、第二方向の一例である。埋込層33は、例えば、p-InPで作られた下部ブロッキング層と、n-InPで作られた上部ブロッキング層とが、Z方向にこの順に積層された、電流ブロッキング部である。
【0067】
上記第1~第3実施形態の構成は、本実施形態のような所謂埋込型のメサにも適用することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
10…基板
20…積層部
30…積層体
31…トレンチ
31a…底面
31b…側面
32…絶縁層
32a…絶縁層
32b…絶縁層(絶縁被膜)
32h…開口
33…埋込層
40,40L…メサ
40C1,40C2…メサ(区間)
41…第一クラッド層
42…導波路層
43…第二クラッド層
50…ヒータ
51…発熱部
51a…一般部分
51b…部位
52…端子部
52a…接続部位
52b…部位
52c…部位(第一部位)
53…部位
60…電力供給配線
60a…接続部位
100,100A~100D…光半導体素子
C…結合部
T1~T4…厚さ
X…方向
Y…方向(第二方向)
Z…方向(第一方向)