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特開2024-143060アライメント方法およびアライメント装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143060
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】アライメント方法およびアライメント装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20241003BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20241003BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241003BHJP
   H10K 71/20 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H10K50/00
H10K59/10
H10K71/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055541
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江澤 光晴
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107FF12
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG54
4K029AA02
4K029AA06
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029BB03
4K029CA01
4K029DA03
4K029HA01
4K029HA02
4K029HA04
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】基板の画素パターンの領域を狭くすることなく、少ない撮像手段でアライメントを行う。
【解決手段】基板上に設けられたマークを撮像装置によって撮像し、マークの位置を計測して基板のアライメントを行うアライメント方法であって、基板には、第1のマークと、第1のマークと位置が異なる第2のマークが設けられており、第1のマークに基づいてアライメントを行う第1のステップと、第2のマークに基づいてアライメントを行う第2のステップであって、第1のマークを回転中心として基板を回転することによりアライメントを行う第2のステップを含むアライメント方法。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられたマークを撮像装置によって撮像し、前記マークの位置を計測して前記基板のアライメントを行うアライメント方法であって、
前記基板には、第1のマークと、前記第1のマークと位置が異なる第2のマークが設けられており、
前記第1のマークに基づいてアライメントを行う第1のステップと、
前記第2のマークに基づいてアライメントを行う第2のステップであって、前記第1のマークを回転中心として前記基板を回転することによりアライメントを行う第2のステップと、
を含むことを特徴とするアライメント方法。
【請求項2】
前記基板には、前記第1のマークを中心として前記第2のマークを通る円の円弧上、または前記円弧を近似する直線上に、前記第2のマークの中心までの距離と方向を示す第3のマークが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント方法。
【請求項3】
前記第3のマークは、前記円弧上または前記直線上に、前記第2のマークを中心として対称的に配置される
ことを特徴とする請求項2に記載のアライメント方法。
【請求項4】
前記第1のステップでは、相対的に低倍率の撮像装置により撮像された画像に基づいてアライメントを行い、前記第2のステップでは、相対的に高倍率の撮像装置により撮像された画像に基づいてアライメントを行う
ことを特徴とする請求項3に記載のアライメント方法。
【請求項5】
前記第1のステップにおいては、前記第1のマークが前記低倍率の撮像装置により撮像された画像において所定の位置に来るようにアライメントが行われる
ことを特徴とする請求項4に記載のアライメント方法。
【請求項6】
前記第1のステップにおいては、複数の前記第3のマークの少なくともいずれかが前記高倍率の撮像装置により撮像された画像に含まれるようにアライメントが行われる
ことを特徴とする請求項5に記載のアライメント方法。
【請求項7】
前記第1のマークおよび前記第2のマークは前記基板の外周部に設けられており、前記第2のマークは前記外周部において前記第1のマークと異なる位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項8】
前記基板は円形形状であり、前記第2のマークは前記第1のマークに対向する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載のアライメント方法。
【請求項9】
撮像装置と、アライメント手段と、制御部と、を備え、前記制御部が前記撮像装置により撮像された画像に基づいて前記アライメント手段によるアライメントを行うアライメント装置であって、
前記制御部は、請求項1から6のいずれか1項に記載のアライメント方法によりアライメントを行う
ことを特徴とするアライメント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクを介して基板に所定の成膜材料を蒸着するための成膜装置のマスクと基板のアライメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)は、スマートフォン、テレビ、自動車用ディスプレイだけでなく、VR-HMD(Virtual Reality-HeadMount Display)などにその応用分野が広がっている。特に、VR-HMDに用いられるディスプレイは、ユーザーのめまいを低減する等の目的で、画素パターンを高精度で形成することが求められ、さらなる高解像度化が求められている。
【0003】
有機EL表示装置を構成する有機発光素子(有機EL素子;OLED)を形成する際には、成膜装置の成膜源から放出された成膜材料を、画素パターンが形成されたマスクを介し、基板に成膜することで、有機物層や金属層を形成する。このような成膜装置においては、成膜精度を高めるために、成膜工程の前に、基板とマスクの相対位置を測定し、相対位置がずれている場合には、基板とマスクを相対的にステージで移動させて位置を調整するアライメント工程が行われる。このアライメント工程では、成膜装置の撮像手段で基板とマスクを撮像する。そして、基板とマスクの少なくともいずれかに形成されたアライメントマークを検出することで、基板とマスクの相対位置を計測し、アライメントすることが多い。
【0004】
アライメント工程を行うために基板を搬送するとき、この搬送誤差が上記撮像手段の視野よりも大きくなる場合がある。この場合、撮像手段でアライメントマークを検出できなくなる。そのため、アライメントマークが撮像手段の視野から外れている場合は、二段階アライメントを行うことがある。この場合まず、低倍率の撮像手段を用いて広い視野でアライメントマークを検出して、高倍率の撮像手段の視野にアライメントマークが入るように、1次アライメントを行う。続いて、高倍率の撮像手段を用いた2次アライメントを行う。ここで例えば、基板の水平方向とヨーイング方向(回転方向)のアライメントを行う場合、低倍率の撮像手段と高倍率の撮像手段が、それぞれ少なくとも2台ずつ必要となる。そのため、かかる二段階アライメントを行った場合、コスト的な負担が大きくなる。
【0005】
特許文献1および特許文献2には、アライメントマークとは別に、撮像手段の視野よりも広い範囲にアライメントマークまでの距離と方向がわかるマークが形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-75347号公報
【特許文献2】特開平9-275074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2記載のアライメントマークの場合、低倍率の撮像手段を搭載する必要がなくなるものの、撮像手段の視野よりも広い範囲にマークを形成するため、基板の画素パターンの領域が狭くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、基板の画素パターンの領域を狭くすることなく、少ない撮像手段でアライメ
ントを行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
基板上に設けられたマークを撮像装置によって撮像し、前記マークの位置を計測して前記基板のアライメントを行うアライメント方法であって、
前記基板には、第1のマークと、前記第1のマークと位置が異なる第2のマークが設けられており、
前記第1のマークに基づいてアライメントを行う第1のステップと、
前記第2のマークに基づいてアライメントを行う第2のステップであって、前記第1のマークを回転中心として前記基板を回転することによりアライメントを行う第2のステップと、を含むことを特徴とするアライメント方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板の画素パターンの領域を狭くすることなく、少ない撮像手段でアライメントを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態の成膜装置の概略断面図
図2】第1の実施形態の磁気浮上ステージの拡大図
図3】第1の実施形態の磁気浮上ステージの上面図
図4】第1の実施形態のウエハの上面図
図5】第1の実施形態のアライメントマーク近傍の拡大図
図6】第1の実施形態のプリアライメントフロー図
図7】第1の実施形態のプリアライメントフローの各ステップの説明図
図8】第1の実施形態のプリアライメントフローの各ステップの続きの説明図
図9】第1の実施形態のプリアライメントフローの各ステップの続きの説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。すなわち、以下の実施形態は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成およびソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
本発明は、基板等の成膜対象物の表面に成膜材料の薄膜を形成する成膜装置に好適である。本発明は、かかる成膜装置による成膜方法や、かかる成膜装置の制御方法として捉えられる。本発明はまた、かかる成膜装置に備えられる、または成膜装置とともに用いられる、アライメント装置としても捉えられる。本発明はまた、アライメント装置を用いたアライメント方法としても捉えられる。本発明はまた、電子デバイスの製造装置やその制御方法、電子デバイスの製造方法としても捉えられる。本発明はまた、成膜方法、アライメント方法、制御方法をコンピュータに実行させるプログラムや、当該プログラムを格納した記憶媒体としても捉えられる。記憶媒体は、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。
【0014】
本発明における基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属、シリコンなど任意のものを
利用できる。成膜材料としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物)など任意のものを利用できる。本発明は特に有機材料により形成された有機膜の検査および評価に好適である。以下の説明における「基板」とは、基板材料の表面に既に1つ以上の成膜が行われたものを含む。本発明の技術は、典型的には、電子デバイスや光学部材の製造装置に適用される。特に、有機EL素子を備える有機ELディスプレイ、それを用いた有機EL表示装置などの有機電子デバイスに好適である。本発明はまた、薄膜太陽電池、有機CMOSイメージセンサにも利用できる。
【0015】
<第1の実施形態>
(成膜装置の概要)
図1を用いて本発明に係る成膜装置の概要を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略断面図(正面図)である。
【0016】
図1において破線で囲われた部分が磁気浮上ステージ2である。磁気浮上ステージ2はステージ支持体6を介して、真空チャンバ4の内上面角部あるいは内側面上部に固定される。真空チャンバ4は真空チャンバ側面3、真空チャンバ下面32、真空チャンバ天板11で構成され、全体としては六面体の構成を取るのが一般的である。
【0017】
真空チャンバ下面32には、蒸着源5が設置される。蒸着源5から放出された成膜材料は、マスク16を介して基板に成膜される。下記実施例では、ウエハ27が成膜対象となる基板である。マスク16は磁性体を含んでおり、磁気浮上ステージ2に対して相対的に上下移動可能な吸引マグネット18によって吸い上げられるようになっている。マスク台33上に設置されたレーザ変位計17によって磁気浮上ステージの位置を制御する。なお、成膜材料によっては蒸着源ではなく、スパッタリングなど他の方式による成膜源を用いてもよい。
【0018】
次に、大気側における除振台支持部の構成を説明する。除振台9a、9bは真空チャンバ天板11上に除振台ベース10a、10bを介して配設される。支持フレーム8は除振台9aおよび9b上で支持され、チャンバから伝わる振動を減衰または絶縁する。マスク支持支柱13aおよび13bは、支持フレーム8上に置かれたマスク案内機構12aおよび12bによってガイドされ、不図示の駆動機構により上下に駆動する。マスク支持支柱13aおよび13bは、真空チャンバ天板11を介してチャンバ内部の真空環境内に導入され、真空内のマスク台33を支持する。
【0019】
マスクフレーム15は、不図示のロボットハンドによって装置内に搬入され、マスク台33上に載置される。マスクフレーム15にはマスク16が張架される。マスクフレーム15および基板を載置するためにロボットハンドが出入りする際には、マスク台33を退避するためにマスク案内機構が下降する。昇降の際はベローズ14aおよび14bが伸縮するので、チャンバ内部の真空度が損なわれることは無い。
【0020】
なお、ロボットハンドの位置決め精度や載置時のずれが大きい場合は、アライメントマークをカメラ視野内に入れるために、上下駆動機構に加え、回転並進機構を設けることも好ましい。
【0021】
撮像装置であるアライメントカメラ7a、7bは支持フレーム8によって支持されることで、チャンバからの振動が減衰または絶縁されるため、高精度での計測が可能である。真空チャンバ天板11にはアライメント計測用に、気密を維持可能なビューポートが設置されており、大気側からアライメント計測することができる。マスク台33の下面に照明24a、24bが設置されており、透過光で不図示のアライメントマークを撮像する。アライメントカメラおよび照明は不図示のものを含めてそれぞれ4台ずつ設置されており、
ウエハに形成されたアライメントマークの位置を検出できるようになっている。なおアライメントカメラは、典型的にはマスクフレーム15の四隅に対応するように設置されるが、位置や数はこれに限定されず、例えば辺の中央に設置してもよい。
【0022】
成膜装置はさらに、搬送や成膜に関する電気制御や機械制御を行ったり、ユーザーとのインタフェース機能を担ったりする制御部150を備えることが好ましい。制御部150としては、プロセッサやメモリなどを備えるコンピュータや制御回路が好適である。制御部150がプログラムの内容やユーザーの指示に従って制御を行うことで、本発明の成膜方法やアライメント方法が実行される。
【0023】
なお、本発明の成膜装置は、複数の真空チャンバを有していてもよい。複数の真空チャンバを有することにより、異なる種類の膜を形成することもできるし、複数のラインで成膜を行ってタクトタイムを向上させることもできる。基板を真空チャンバ間で運搬する際の運搬機構としては、磁力浮上を用いた機構や、ロボットハンドなどの運搬機構を組み合わせて利用できる。成膜装置はさらに、基板の搬送や受け渡しに用いる搬送室、基板を反転させる回転室、基板をストックする基板ストック室、マスクをストックするマスクストック室などを備えていてもよい。
【0024】
次に、図2および図3を用いて、磁気浮上ステージ2の詳細を説明する。図2は本発明の磁気浮上ステージ2を拡大した図である。図3は磁気浮上ステージ2を上面から見た図である。磁気浮上ステージ2は、ステージフレーム31と、浮上部を非接触で支持する自重補償磁石固定子23a~23dと、非接触で推力を出し、位置決めセンサの出力に応じて入力することが可能であるリニアモータ可動子22a~22dからなる。磁気浮上ステージ2表面には静電チャック25が固定され、成膜対象であるウエハ27をフェイスダウン状態で吸着保持可能である。
【0025】
ウエハ27は、マスクフレーム15に張架されたマスク16に対向している。静電チャック25は、ウエハ27に当接して静電引力によって吸着保持する。静電チャック25は、セラミック等で構成された板状の基材に、金属電極などの電気回路が埋設された構造を有し、グラディエント力タイプ、クーロン力タイプ、ジョンソン・ラーベック力タイプなど、任意の方式のものを利用できる。
【0026】
自重補償磁石固定子23a~23dはステージ支持体6下面に固定される。自重補償磁石の可動子と固定子の間に発生する、磁気浮上ステージ可動部の重力に相当する推力によって、微動ステージ可動部は非接触でステージ支持体6によって支持される構成となる。リニアモータ固定子21a~21dもステージ支持体6に固定される。リニアモータ固定子21a~21dに内蔵されるコイルを流れる電流値を変化させることで、必要な推力を出すことが可能となっている。上下方向には、前述の通り自重補償磁石によって磁気浮上ステージ可動部の自重はキャンセルされており、リニアモータが発生する推力(電流)は微小であり、発熱による変形や破損の心配はない。また、必要に応じてコイルごと水冷ジャケットで覆い、冷媒を流して積極的に冷却してもよい。
【0027】
リニアモータ可動子20a~20dはステージフレーム31上面の角部に4か所に配置されている。これによりXY方向の並進駆動およびZ軸周りの回転駆動が可能である。また、不図示ではあるが、少なくとも3個以上のZ軸方向に推力を発生するリニアモータも配置することで、磁気浮上ステージ2を6自由度駆動することが可能である。本実施例では、合計7か所に配置されたリニアモータで、磁気浮上ステージ2を6自由度駆動する。また、自重補償磁石可動子22は重心周りに、対称に4か所に配置されている。これによりモーメント力に対しても力を受けることができるので、安定した浮上が可能となっている。
【0028】
次に図2におけるマスク搭載部について説明する。マスク16には、画素パターンに相当する複数個の貫通穴が空いている。穴を通過する成膜材料がウエハ27上面に成膜される。マスク16の材質は、例えばインバー等の熱膨張に強い金属箔や、Siウエハを薄く加工したメンブレン膜のようなもので構成される。マスク16はマスクフレーム15に固定されており、フレームごとロボットハンドによって搬送され、マスク台33に載置される。マスク16とマスクフレーム15の固定方法は、例えば架張された状態でスポット溶接によって固定する方法や、メカクランプや、接着による固定などでもよく、なるべく固定時にマスク16を歪ませないことが望ましい。
【0029】
ウエハ27は静電チャック25により保持されている。吸引マグネット18は、静電チャック25の吸着面と対向する面に非接触の範囲で接近可能であり、マスク16の吸引に必要な磁束を飛ばすことが可能となっている。吸引マグネット18の磁束は静電チャック25およびウエハ27が非磁性体であるときに、マスク16に上方向に吸引力を発生させることが可能である。この吸引力によって、マスク16はウエハ27に密着させることができる。ここでの密着性が確保されることで、成膜時における成膜材料の回り込み(シャドー)を防ぐことが可能となる。
【0030】
次に、ウエハ27とマスク16の相対位置決め機構に関して説明する。磁気浮上ステージの位置決めにおいては、マスク台33上のレーザ変位計17によって相対位置が計測可能となっている。このレーザ変位計17はX方向に2か所、Y方向に1か所、Z方向に3か所等、合わせて6か所に配置されている。6か所に配置された前記のレーザ変位計17情報を元に幾何学的な座標変換を実施して、磁気浮上ステージ2の重心周りの6自由度の位置に換算する。6自由度の位置情報に基づいて制御演算を行い、6自由度の推力指令を決定する。6自由度の推力指令に基づいて、7か所に配置された各リニアモータのコイルに電流を流し、駆動することで、磁気浮上ステージ2を高精度に位置決めすることが可能である。
【0031】
また、レーザ変位計17は図1で示したマスク台33上の、マスク16の近傍に固定されており、真空環境内に置いてアッベ誤差などの影響を受けず直接的にマスクとウエハの位置決めが可能な構成となっている。さらに、レーザ変位計17は、マスク台33を介して支持フレーム8が置かれる除振台9によってチャンバからの振動を絶縁しているので、安定した計測が可能となっている。一方で磁気浮上ステージ2は非接触かつ低い磁気バネ性の自重補償磁石で支持されており、同様にチャンバからの振動が絶縁された状態である。これらの相対位置を制御するので、磁気浮上ステージ2とマスク台33の相対位置は高精度で位置決めが可能であり、最終的にはウエハ27とマスク16の高精度アライメントを実現する。
【0032】
上述した、ウエハ27を移動およびアライメントするための各種の手段は、本発明のアライメント手段として捉えることができる。なお、上述した成膜装置の構成は本発明の適用対象の一例に過ぎず、基板やマスクの半出入のための構成、アライメント装置の構成、成膜のための構成は上記記載に限定されることはない。本発明のアライメント方法を実行可能であれば、装置構成は様々に変形させることが可能である。
【0033】
(アライメントマーク)
次に、図4および図5を用いて、ウエハに形成されたアライメントマークについて説明する。図4はウエハ27を上面から見た図で、図5はアライメントマークM2cの近傍を拡大した図である。本実施例では、1台の低倍率カメラと3台の高倍率カメラを使用した場合のアライメント方法について説明する。本実施例では、高倍率のカメラ視野101a~101cにファインアライメントマークM2a~M2cを入れるフローをプリアライメ
ントと言う。また、ファインアライメントマークM2a~M2cに位置をアライメントするフローをファインアライメントと言う。
【0034】
ウエハ27には低倍率のカメラでプリアライメントするときに用いられる、第2のマークであるプリアライメントマークM1と、高倍率のカメラでファインアライメントするときに用いられる、第2のマークであるファインアライメントマークM2a~M2cが形成されている。さらに、マークM1を中心とし、マークM2cを通る円の円弧110上に、マークM2cまでの距離および方向がわかる、第3のマークである補助アライメントマークM31a、M31b、および、M32a、M32b、および、M33a、M33bが形成されている。有機ELの発光素子の画素が並ぶ表示領域120の外周部に、複数の上記アライメントマークが形成されている。
【0035】
以降、補助アライメントマークM31a、M31b、および、M32a、M32b、および、M33a、M33bのことを総称する場合は、「補助アライメントマークM31-M33」と記載する。補助アライメントマークM31-M33は、マークM2cまでの距離および方向が分かるものであれば形状を問わず、また、円弧における位置も問わない。ただし、解析処理を容易にする点で、図示例のようにマークM2cを中心として対称的な配置とすることが好適である。
【0036】
補助アライメントマークM31-M33は、円弧110上にあることが望ましい。プリアライメントマークM1を中心にウエハ27をXY平面上に回転させたとき、補助アライメントマークM31-M33のいずれかが高倍率のカメラ視野101aに入ればよい。そのため、例えば、円弧110の接線上に補助アライメントマークM31-M33があってもよい。なお、「低倍率」および「高倍率」という表現は相対的な倍率の高低を示しており、各ステップで用いられる撮像装置の倍率を特定するものではない。
【0037】
補助アライメントマークM31-M33は、それぞれ、ファインアライメントマークM2cまでの距離がわかる特徴量を持っている。典型的には、制御部は、補助アライメントマークM31-M33を撮像した画像を解析することで、各マークそれぞれとファインアライメントマークM2aの間の距離を取得することができる。本実施例ではマークの面積が異なっており、0.5°毎に補助アライメントマークが形成されており、ファインアライメントマークM2cに近いほど補助アライメントマークの面積が大きくなっている。高倍率のカメラ視野101cには、少なくとも2つ以上の補助アライメントマークまたはファインアライメントマークM2cが入るようになっているため、ファインアライメントマークM2cまでの距離および方向がわかるようになっている。このような構成は、ファインアライメントマークM2a、M2bについても同様である。
【0038】
(アライメント方法)
次に、図6から図9を用いて、上記アライメントマークを使ったアライメント方法について説明する。まず、高倍率カメラの視野にファインアライメントマークM2a~M2cを入れるプリアライメントフローについて説明する。図6は、プリアライメントフローを示した図である。図7図9は、プリアライメントフローの各ステップ状態におけるカメラ視野とアライメントマークの関係を示した図である。図7(a)、図8(a)、図9(a)はウエハ27を上面から全体を見た図であり、図7(b)、図8(b)、図9(b)はファインアライメントマークM2c近傍を拡大した図である。
【0039】
アライメント工程を行うためにウエハ27を搬送するとき、この搬送誤差が高倍率のカメラ視野101a~101cよりも大きく、低倍率のカメラ視野100よりも小さい場合、カメラ視野とアライメントマークの関係は図7のようになる。なお、低倍率のカメラ視野100は搬送誤差よりも大きくなるように選定している。図7(a)に示すように、プ
リアライメントマークM1のみ低倍率のカメラ視野100内に入り、ファインアライメントマークM2a~M2cは高倍率のカメラ視野101a~101cに入っていない状態である。これを初期状態とし、高倍率のカメラ視野101a~101cにファインアライメントマークM2a~M2cを入れるフロー(プリアライメント)について説明する。フローの各工程は、制御部150が成膜装置の各駆動部を制御することによって実行される。
【0040】
[ステップS1]
図6に示すプリアライメントフローのステップS1では、プリアライメントマークM1を低倍率のカメラで所定のXY方向の位置にアライメントする。本実施例では低倍率のカメラ視野100の所定の位置(典型的には中心)にプリアライメントマークM1が来るように微動ステージをXY方向に移動する。これによって、カメラ視野とアライメントマークの関係は図8(a)のようになる。
【0041】
プリアライメントマークM1が理想位置にアライメントできた場合、ファインアライメントマークM2cのアライメント目標位置T上に円弧110が来る。低倍率のカメラとしては、プリアライメントマークM1のアライメントによって、円弧110は少なくともカメラ視野101cに入るような倍率のカメラを採用している。前述の通り、円弧110上に補助アライメントマークM31-M33が形成されている。そのため、ステップS1で、高倍率のカメラ視野101cには、補助アライメントマークM31a、M31b、M32a、M32b、M33a、M33bのうち、少なくともいずれかが入る。本実施例では図8(b)に示すように、補助アライメントマークM32bおよびM33aが高倍率のカメラ視野101cに入っている。なお、補助アライメントマークとファインアライメントマークM2cまでの距離は、ウエハの搬送角度誤差よりも大きくなるようにしている。
【0042】
[ステップS2]
図6に示すプリアライメントフローのステップS2では、補助アライメントマークを高倍率カメラで検出し、微動ステージの指令回転角度θと指令水平移動量(Δx,Δy)を算出する。高倍率カメラで検出した補助アライメントマークM32bおよびM33aの位置に基づき、ファインアライメントマークM2cとアライメント目標位置Tまでの距離dM2を算出する(図8(b))。プリアライメントマークM1とファインアライメントマークM2c距離をLとする(図8(a))。このとき、ステージの指令回転角度θ[rad]は式(1)で求められる。ファインアライメントマークM2cとアライメント目標位置Tまでの距離dM2は、円弧110上の長さを示すことが理想である。しかし、微動ステージの指令回転角度θが微小な場合は、ファインアライメントマークM2cとアライメント目標位置Tの直線距離をdM2として近似してもよい。このように補助アライメントマークを、プリアライメントマークを回転中心としてファインアライメントマークを通る円弧上、または円弧を近似する直線上に設けることで、後続の微動ステージの移動が可能になる。
【数1】
【0043】
次に、微動ステージの重心座標を(x,y)とし、プリアライメントマークM1の座標を(Mx1,My1)とすると、プリアライメントマークM1を回転中心としてウエハ27をθ[rad]回転した時の微動ステージの重心座標(x,y)は式(2)で求められる。よって、指令水平移動量(Δx,Δy)は式(3)のようになる。
【数2】
【0044】
[ステップS3]
図6に示すプリアライメントフローのステップS3では、ステップS2で算出した微動ステージの指令回転角度θと指令水平移動量(Δx,Δy)に基づいて、微動ステージを移動する。これによって、カメラ視野とアライメントマークの関係は図9(a)のようになり、図9(b)のようにファインアライメントマークM2cが高倍率のカメラ視野101cに入る。
【0045】
[ステップS4]
図6に示すプリアライメントフローのステップS3では、高倍率のカメラ視野101a、101b、101cに全てのファインアライメントマークM2a、M2b、M2cが入っていることを確認する。もし、視野に入っていなければステップS1からやり直し、視野に入っていれば、ファインアライメントマークM2a、M2b、M2cをそれぞれの目標位置にアライメントするファインアライメントフローを開始する。
【0046】
ファインアライメントにおいて、マスク16にマスクアライメントマークが設けられている場合、高倍率のカメラ視野101a、101b、101cそれぞれにおいて撮像をおこなう。そして、ウエハ27上のファインアライメントマークM2a、M2b、M2cと、対応するマスクアライメントマークが、距離や角度等において所定の位置関係の範囲内にあるかどうかを判定する。所定の位置関係の範囲内の場合はアライメント完了として成膜ステップに進無。一方、所定の位置関係の範囲外の場合は、ウエハ27とマスク16の少なくともいずれかの位置を調整してアライメントを再実行する。
【0047】
上記フローにおいては、補助アライメントマークM31a-M33bは基板の画素パターンに干渉することなく配置されているため、画素パターンの領域を狭くすることなく、1台の低倍率カメラでプリアライメントすることができている。
【0048】
なお、図示例では円形形状のウエハ27を成膜対象としているが、本発明の適用される基板はこれに限定されない。画素形成領域の外周部にアライメントマークを設けてアライメントする構成であれば、例えば四角形などの基板を対象としてもよい。
【0049】
従来は、低倍率の撮像手段を用いて広い視野でアライメントマークを検出して、高倍率の撮像手段の視野にアライメントマークを入れるプリアライメントにおいて、基板の水平方向とヨーイング方向のアライメントを行う場合、低倍率の撮像手段と高倍率の撮像手段が、それぞれ少なくとも2台ずつ必要だった。しかし、以上の実施形態で述べたように本発明によれば、少ない撮像手段でアライメントを行うことが可能となる。さらに本発明の手法であれば、基板に設けるアライメントマークをカメラ視野よりも極端に大きなサイズとする必要がないため、基板の画素パターンの領域を狭くする必要がなくなり、基板からより多くのパネルを製造できるようになる。
【符号の説明】
【0050】
7:アライメントカメラ、27:ウエハ、150:制御部、M1:プリアライメントマーク、M2:ファインアライメントマーク
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