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特開2024-143112分子内にジフルオロメチレン鎖を有する化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143112
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】分子内にジフルオロメチレン鎖を有する化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 1/08 20060101AFI20241003BHJP
   C07C 69/65 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 17/093 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 22/08 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 17/263 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 47/55 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 253/30 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 255/50 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 69/76 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 201/12 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 205/11 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 25/13 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 211/52 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 67/343 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 209/68 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 45/68 20060101ALI20241003BHJP
   C07D 333/12 20060101ALI20241003BHJP
   C07F 9/50 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C07F1/08 A
C07C69/65 CSP
C07C17/093
C07C22/08
C07C17/263
C07C47/55
C07C253/30
C07C255/50
C07C69/76 Z
C07C201/12
C07C205/11
C07C25/13
C07C211/52
C07C67/343
C07C209/68
C07C45/68
C07D333/12
C07F9/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055618
(22)【出願日】2023-03-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (その1) ウェブサイトの掲載日 2022年5月30日 ウェブサイトのアドレス https://jaci-gsc.com/11th/ (その2) 発行日 2022年5月30日 刊行物 第11回 JACI/GSCシンポジウム予稿集 (その3) 開催日 2022年6月15日から2022年6月16日 集会名、開催場所 第11回 JACI/GSCシンポジウム(オンライン開催)
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星谷 尚亨
(72)【発明者】
【氏名】並川 敬
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
(72)【発明者】
【氏名】足達 健二
(72)【発明者】
【氏名】生越 專介
(72)【発明者】
【氏名】土井 良平
(72)【発明者】
【氏名】周 裕洋
【テーマコード(参考)】
4H006
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB01
4H006AB64
4H006AC22
4H006AC24
4H006AC30
4H006EA21
4H006KA31
4H006QN30
4H048AA02
4H048AA03
4H048AB84
4H048AC22
4H048VA10
4H048VA11
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB84
(57)【要約】
【課題】分子内にジフルオロメチレン(-CF-)鎖を有する化合物の有用な製造方法、及び当該製造方法により得られる化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表される化合物の製造方法であって、式(2)で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物を、式(3)で表される化合物と反応させる工程を含む製造方法が開示される。
-(CF)-(CF)-R (1)
-(CF)-(CF)-M (2)
-R (3)
(式中、
は有機基であり、
はハロゲン又は有機基(但し、Rとは異なる。)であり、
は銅、亜鉛、ニッケル、鉄、コバルト、及びスズからなる群より選択される金属であり、
はハロゲンであり、
kは1又は2であり、
nは1以上の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2):
-(CF)-(CF)-M (2)
(式中、
は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、
は銅、亜鉛、ニッケル、鉄、コバルト、及びスズからなる群より選択される金属であり、
kは1又は2であり、
nは1以上の整数である。)
で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物の製造方法であって、
式(4):
-(CF)-M (4)
(式中、
、M、及びkは前記と同意義である。)
で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物を、式(5):
L-CF-X (5)
(式中、
Lは脱離基であり、
はハロゲン又は-SO-X11であり、
11はハロゲンである。)
で表される化合物と反応させる工程を含む製造方法。
【請求項2】
が1個以上の置換基を有していてもよいC6-14アリール基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
が銅、亜鉛、及びニッケルからなる群より選択される金属である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記配位子が含ピリジン配位子及びホスフィン配位子からなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記配位子が二座配位子である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
nが1~5の整数である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
k+nが3又は4である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
Lが-Si(L)(Lは炭化水素基である)又は-COOL(Lは金属、炭化水素基、又は-Si(L)であり、Lは炭化水素基である)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記反応が、式(6):
-(X) (6)
(式中、
は金属であり、
はハロゲンであり、
mはMの価数に対応する数である。)
で表される化合物、式(7):
・X (7)
(式中、
RはH又は有機基であり、任意の2又は3個のRは、これらに隣接するNと一緒になって環を形成していてもよく、
Xはハロゲンである。)
で表される化合物、及び式(8):
3+・H(X) (8)
(式中、
は金属であり、
はハロゲンである。)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の存在下で実施される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
式(1-1):
11-CF-CF-CF-R21 (1-1)
(式中、
11は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、
21は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、又は-PR211212であり、
211及びR212は、それぞれ独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基である。)
で表される化合物。
【請求項11】
式(1-2):
12-CF-CF-CF-CF-R22 (1-2)
(式中、
12は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、
22は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基(但し、フルオロアルキル基ではない。)、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基(但し、アルキル基ではない。)を有していてもよいアリール基(但し、R12とは異なる。)、又は-PR221222であり、
221及びR222は、それぞれ独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基である。)
で表される化合物。
【請求項12】
式(1):
-(CF)-(CF)-R (1)
(式中、
は有機基であり、
はハロゲン又は有機基(但し、Rとは異なる。)であり、
kは1又は2であり、
nは1以上の整数である。)
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
-(CF)-(CF)-M (2)
(式中、
は銅、亜鉛、ニッケル、鉄、コバルト、及びスズからなる群より選択される金属であり、
、k、及びnは前記と同意義である。)
で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物を、式(3):
-R (3)
(式中、
はハロゲンであり、
は前記と同意義である。)
で表される化合物と反応させる工程を含む製造方法。
【請求項13】
さらに、請求項1~9のいずれかに記載の製造方法により、式(2)で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物を製造する工程を含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
が1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
がハロゲン、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、-COOR2A、又は-PR2B2Cであり、
2A、R2B、及びR2Cが、それぞれ独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
が銅、亜鉛、及びニッケルからなる群より選択される、請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】
前記配位子が含ピリジン配位子及びホスフィン配位子からなる群より選択される、請求項12に記載の製造方法。
【請求項18】
前記配位子が二座配位子である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
nが1~5の整数である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項20】
k+nが3又は4である、請求項12~19のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分子内にジフルオロメチレン(-CF-)鎖を有する化合物及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内にジフルオロメチレン(-CF-)鎖を有する化合物は、農薬、液晶材料等において有用な化合物の合成を可能とする。当該化合物の製造方法としては、例えば、銅の存在下、高温でヨウ素化合物を処理する方法(特許文献1)、ジブロモ化合物を3工程で変換する方法(非特許文献1)、カルボニル化合物をフッ素化する方法(非特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許3408411号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】D. A. Vicic; Org. Chem. 2016, 18, 4, 884-886
【非特許文献2】T. Umemoto; J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 51, 18199-18205
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法は、高温条件が必要である上、収率の面で改善の余地がある。また、当該方法は、ヨウ素化合物を別途合成する必要があり、高価なヨウ素を回収する必要もある。特許文献2及び3の方法は、多工程を必要とする。特に、特許文献3の方法は、特殊なフッ素化試薬の使用、過酷な反応条件の設定等も必要である。いずれの方法も合成できる化合物には制限がある。
【0006】
本開示は、分子内にジフルオロメチレン(-CF-)鎖を有する化合物の有用な製造方法、及び当該製造方法により得られる化合物等を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、次の態様を包含する。
項1.
式(2):
-(CF)-(CF)-M (2)
(式中、
は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、
は銅、亜鉛、ニッケル、鉄、コバルト、及びスズからなる群より選択される金属であり、
kは1又は2であり、
nは1以上の整数である。)
で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物の製造方法であって、
式(4):
-(CF)-M (4)
(式中、
、M、及びkは前記と同意義である。)
で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物を、式(5):
L-CF-X (5)
(式中、
Lは脱離基であり、
はハロゲン又は-SO-X11であり、
11はハロゲンである。)
で表される化合物と反応させる工程を含む製造方法。
項2.
が1個以上の置換基を有していてもよいC6-14アリール基である、項1に記載の製造方法。
項3.
が銅、亜鉛、及びニッケルからなる群より選択される金属である、項1又は2に記載の製造方法。
項4.
前記配位子が含ピリジン配位子及びホスフィン配位子からなる群より選択される、項1~3のいずれかに記載の製造方法。
項5.
前記配位子が二座配位子である、項1~4のいずれかに記載の製造方法。
項6.
nが1~5の整数である、項1~5のいずれかに記載の製造方法。
項7.
k+nが3又は4である、項1~6のいずれかに記載の製造方法。
項8.
Lが-Si(L)(Lは炭化水素基である)又は-COOL(Lは金属、炭化水素基、又は-Si(L)であり、Lは炭化水素基である)である、項1~7のいずれかに記載の製造方法。
項9.
前記反応が、式(6):
-(X) (6)
(式中、
は金属であり、
はハロゲンであり、
mはMの価数に対応する数である。)
で表される化合物、式(7):
・X (7)
(式中、
RはH又は有機基であり、任意の2又は3個のRは、これらに隣接するNと一緒になって環を形成していてもよく、
Xはハロゲンである。)
で表される化合物、及び式(8):
3+・H(X) (8)
(式中、
は金属であり、
はハロゲンである。)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の存在下で実施される、項1~8のいずれかに記載の製造方法。
項10.
式(1-1):
11-CF-CF-CF-R21 (1-1)
(式中、
11は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、
21は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、又は-PR211212であり、
211及びR212は、それぞれ独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基である。)
で表される化合物。
項11.
式(1-2):
12-CF-CF-CF-CF-R22 (1-2)
(式中、
12は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、
22は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基(但し、フルオロアルキル基ではない。)、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基(但し、アルキル基ではない。)を有していてもよいアリール基(但し、R12とは異なる。)、又は-PR221222であり、
221及びR222は、それぞれ独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基である。)
で表される化合物。
項12.
式(1):
-(CF)-(CF)-R (1)
(式中、
は有機基であり、
はハロゲン又は有機基(但し、Rとは異なる。)であり、
kは1又は2であり、
nは1以上の整数である。)
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
-(CF)-(CF)-M (2)
(式中、
は銅、亜鉛、ニッケル、鉄、コバルト、及びスズからなる群より選択される金属であり、
、k、及びnは前記と同意義である。)
で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物を、式(3):
-R (3)
(式中、
はハロゲンであり、
は前記と同意義である。)
で表される化合物と反応させる工程を含む製造方法。
項13.
さらに、項1~9のいずれかに記載の製造方法により、式(2)で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物を製造する工程を含む、項12に記載の製造方法。
項14.
が1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である、項12又は13に記載の製造方法。
項15
がハロゲン、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、-COOR2A、又は-PR2B2Cであり、
2A、R2B、及びR2Cが、それぞれ独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基である、項12~14のいずれかに記載の製造方法。
項16.
が銅、亜鉛、及びニッケルからなる群より選択される、項12~15のいずれかに記載の製造方法。
項17.
前記配位子が含ピリジン配位子及びホスフィン配位子からなる群より選択される、項12~16のいずれかに記載の製造方法。
項18.
前記配位子が二座配位子である、項17に記載の製造方法。
項19.
nが1~5の整数である、項12~18のいずれかに記載の製造方法。
項20.
k+nが3又は4である、項12~19のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の前記概要は、本開示の各々の開示された実施形態又は全ての実装を記述することを意図するものではない。
【0009】
本開示の後記説明は、実例の実施形態をより具体的に例示する。本開示のいくつかの箇所では、例示を通してガイダンスが提供され、及びこの例示は、様々な組み合わせにおいて使用できる。それぞれの場合において、例示の群は、非排他的な、及び代表的な群として機能できる。
【0010】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられる。
【0011】
1.用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本開示が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
【0012】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0013】
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
【0014】
本明細書中、表記「Cn-m」(ここで、n、及びmは、それぞれ、1以上の整数であり、n<mである。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0015】
本明細書中、「ハロゲン」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。
【0016】
本明細書中、「有機基」とは、有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」としては、例えば、
1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
アルデヒド基、
カルボキシル基、
QO-、
QS-、
QCO-、
QSO-、
QOCO-、及び
QOSO
(これらの式中、Qは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基である)
が挙げられる。
【0017】
「置換基」としては、例えば、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、及びアルキルチオ基が挙げられる。なお、2個以上の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
本明細書中、「炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、及びアラルキル基が挙げられる。
【0019】
本明細書中、「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル、及びヘキシル等の、直鎖又は分岐鎖状のC1-20アルキル基が挙げられる。
【0020】
本明細書中、「アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(n-プロポキシ、イソプロポキシ)、ブトキシ(n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ)、ペンチルオキシ、及びヘキシルオキシ等の、直鎖状又は分岐鎖状のC1-20アルコキシ基が挙げられる。
【0021】
本明細書中、「アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ(n-プロピルチオ、イソプロピルチオ)、ブチルチオ(n-ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ)、ペンチルチオ、及びヘキシルチオ等の、直鎖状又は分岐鎖状のC1-20アルキルチオ基が挙げられる。
【0022】
本明細書中、「アルケニル基」としては、例えば、ビニル、1-プロペン-1-イル、2-プロペン-1-イル、イソプロペニル、2-ブテン-1-イル、4-ペンテン-1-イル、及び5-ヘキセン-1-イル等の、直鎖状又は分岐鎖状のC2-20アルケニル基が挙げられる。
【0023】
本明細書中、「アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1-プロピン-1-イル、2-プロピン-1-イル、4-ペンチン-1-イル、及び5-ヘキシン-1-イル等の、直鎖状又は分岐鎖状のC2-20アルキニル基が挙げられる。
【0024】
本明細書中、「シクロアルキル基」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチル等の、C3-20シクロアルキル基が挙げられる。
【0025】
本明細書中、「シクロアルケニル基」としては、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、及びシクロヘプテニル等の、C3-20シクロアルケニル基が挙げられる。
【0026】
本明細書中、「シクロアルカジエニル基」としては、例えば、シクロブタジエニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル、シクロノナジエニル、及びシクロデカジエニル等の、C4-20シクロアルカジエニル基が挙げられる。
【0027】
本明細書中、「アリール基」は、例えば、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。当該「アリール基」としては、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニル、3-ビフェニル、4-ビフェニル、及び2-アンスリル等の、C6-20アリール基が挙げられる。
【0028】
本明細書中、「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチル、2-ビフェニルメチル、3-ビフェニルメチル、及び4-ビフェニルメチル等の、C7-20アリール基が挙げられる。
【0029】
本明細書中、「非芳香族複素環基」とは、非芳香族複素環から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。当該「非芳香族複素環基」は、例えば、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。当該「非芳香族複素環基」は、飽和、又は不飽和であることができる。当該「非芳香族複素環基」は、例えば、5~18員の非芳香族複素環基であることができる。当該「非芳香族複素環基」は、例えば、環構成原子として、炭素原子に加えて酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる1~4個のヘテロ原子を含有する非芳香族複素環基であることができる。
【0030】
当該「非芳香族複素環基」としては、例えば、テトラヒドロフリル、オキサゾリジニル、イミダゾリニル(例:1-イミダゾリニル、2-イミダゾリニル、4-イミダゾリニル)、アジリジニル(例:1-アジリジニル、2-アジリジニル)、ピロリジニル(例:1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル)、ピペリジニル(例:1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル)、アゼパニル(例:1-アゼパニル、2-アゼパニル、3-アゼパニル、4-アゼパニル)、アゾカニル(例:1-アゾカニル、2-アゾカニル、3-アゾカニル、4-アゾカニル)、ピペラジニル(例:1,4-ピペラジン-1-イル、1,4-ピペラジン-2-イル)、ジアゼピニル(例:1,4-ジアゼピン-1-イル、1,4-ジアゼピン-2-イル、1,4-ジアゼピン-5-イル、1,4-ジアゼピン-6-イル)、ジアゾカニル(例:1,4-ジアゾカン-1-イル、1,4-ジアゾカン-2-イル、1,4-ジアゾカン-5-イル、1,4-ジアゾカン-6-イル、1,5-ジアゾカン-1-イル、1,5-ジアゾカン-2-イル、1,5-ジアゾカン-3-イル)、テトラヒドロピラニル(例:テトラヒドロフラン-4-イル)、モルホリニル(例:4-モルホリニル)、チオモルホリニル(例:4-チオモルホリニル)、2-オキサゾリジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、及びジヒドロキノリル等が挙げられる。
【0031】
本明細書中、「ヘテロアリール基」は、例えば、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。当該「ヘテロアリール基」は、例えば、5~18員のヘテロアリール基であることができる。当該「ヘテロアリール基」は、例えば、環構成原子として、炭素原子に加えて酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる1~4個のヘテロ原子を含有するヘテロアリール基であることができる。当該「ヘテロアリール基」は、「単環性ヘテロアリール基」、及び「芳香族縮合複素環基」を包含する。
【0032】
当該「単環性へテロアリール基」としては、例えば、ピロリル(例:1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、フリル(例:2-フリル、3-フリル)、チエニル(例:2-チエニル、3-チエニル)、ピラゾリル(例:1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、イミダゾリル(例:1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル)、イソオキサゾリル(例:3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル)、オキサゾリル(例:2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル)、チアゾリル(例:2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,3-トリアゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-4-イル)、オキサジアゾリル(例:1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)、チアジアゾリル(例:1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-5-イル)、テトラゾリル、ピリジル(例:2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリダジニル(例:3-ピリダジニル、4-ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル)、及びピラジニル等が挙げられる。
【0033】
当該「芳香族縮合複素環基」としては、例えば、イソインドリル(例:1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル)、インドリル(例:1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル)、ベンゾ[b]フラニル(例:2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル、4-ベンゾ[b]フラニル、5-ベンゾ[b]フラニル、6-ベンゾ[b]フラニル、7-ベンゾ[b]フラニル)、ベンゾ[c]フラニル(例:1-ベンゾ[c]フラニル、4-ベンゾ[c]フラニル、5-ベンゾ[c]フラニル)、ベンゾ[b]チエニル、(例:2-ベンゾ[b]チエニル、3-ベンゾ[b]チエニル、4-ベンゾ[b]チエニル、5-ベンゾ[b]チエニル、6-ベンゾ[b]チエニル、7-ベンゾ[b]チエニル)、ベンゾ[c]チエニル(例:1-ベンゾ[c]チエニル、4-ベンゾ[c]チエニル、5-ベンゾ[c]チエニル)、インダゾリル(例:1-インダゾリル、2-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル)、ベンゾイミダゾリル(例:1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル)、1,2-ベンゾイソオキサゾリル(例:1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-4-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-5-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-6-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-7-イル)、ベンゾオキサゾリル(例:2-ベンゾオキサゾリル、4-ベンゾオキサゾリル、5-ベンゾオキサゾリル、6-ベンゾオキサゾリル、7-ベンゾオキサゾリル)、1,2-ベンゾイソチアゾリル(例:1,2-ベンゾイソチアゾール-3-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-4-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-5-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-6-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-7-イル)、ベンゾチアゾリル(例:2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル)、イソキノリル(例:1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル)、キノリル(例:2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、8-キノリル)、シンノリニル(例:3-シンノリニル、4-シンノリニル、5-シンノリニル、6-シンノリニル、7-シンノリニル、8-シンノリニル)、フタラジニル(例:1-フタラジニル、4-フタラジニル、5-フタラジニル、6-フタラジニル、7-フタラジニル、8-フタラジニル)、キナゾリニル(例:2-キナゾリニル、4-キナゾリニル、5-キナゾリニル、6-キナゾリニル、7-キナゾリニル、8-キナゾリニル)、キノキサリニル(例:2-キノキサリニル、3-キノキサリニル、5-キノキサリニル、6-キノキサリニル、7-キノキサリニル、8-キノキサリニル)、ピラゾロ[1,5-a]ピリジル(例:ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-4-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-5-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イル)、イミダゾ[1,2-a]ピリジル(例:イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-7-イル、及びイミダゾ[1,2-a]ピリジン-8-イル)等が挙げられる。
【0034】
2.錯体化合物の製造方法
一実施形態において、式(2):
-(CF)-(CF)-M (2)
で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物(以下、「化合物P」と表記する場合がある)の製造方法は、式(4):
-(CF)-M (4)
で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物(以下、「化合物S」と表記する場合がある)を、式(5):
L-CF-X (5)
で表される化合物と反応させる工程(以下、「工程A」と表記する場合がある)を含む。
【0035】
式(4)において、Rは1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、好ましくは1個以上の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、より好ましくは1個以上の置換基を有していてもよいC6-10アリール基、さらに好ましくは1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基である。当該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基等が挙げられる。当該置換基の数は、0個であってもよく、1個、2個、3個、4個、又は5個であってもよい。当該置換基の数が2個以上である場合、任意の2個の置換基が連結して環を形成していてもよい。
【0036】
式(4)において、Mは銅、亜鉛、ニッケル、鉄、コバルト、及びスズからなる群より選択される金属であり、好ましくは銅、亜鉛、又はニッケル、より好ましくは銅又は亜鉛、さらに好ましくは銅である。Mは、配位子と配位結合を形成していることが好ましい。
【0037】
式(4)において、kは1であってもよく2であってもよい。一実施形態において、kは2である。
【0038】
化合物Sは配位子を含んでいなくてもよく、配位子を含んでいてもよい。配位子としては、例えば、含ピリジン配位子、ホスフィン配位子等が挙げられる。
含ピリジン配位子としては、例えば、フェナントロリン(例:1,10-フェナントロリン)、2,2’-ビピリジル、ピリジン、メチルピリジン、ルチジン(例:2,6-ルチジン)等が挙げられる。
ホスフィン配位子としては、トリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィンが好ましい。トリアルキルホスフィンとしては、具体的には、トリイソプロピルホスフィン、ジt-ブチルメチルホスフィン、トリt-ブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリアダマンチルホスフィン、トリビシクロ[2,2,2]オクチルホスフィン、トリノルボルニルホスフィン等のトリ(C3-20アルキル)ホスフィン等が挙げられる。トリアリールホスフィンとしては、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメシチルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン等のトリ(単環性アリール)ホスフィンが挙げられる。これらの中でも、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリt-ブチルホスフィンが好ましい。
【0039】
上記の配位子は、二座配位子であることが好ましい。
その好ましい例としては、1,10-フェナントロリンが挙げられる。
【0040】
式(4)で表される化合物に配位しうる配位子の配位数は、金属Mの酸化数、及び配位子の配位原子数等によって異なるが、好ましくは1、2、又は3である。
【0041】
式(5)において、Lで表される脱離基は、脱離してジフルオロカルベンを生成するものであれば、特に制限されない。
脱離基の一例としては、-Si(L)(Lは炭化水素基である)が挙げられる。各Lは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Lは、好ましくはアルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、さらにより好ましくはメチル基、エチル基、又はプロピル基である。
脱離基の別の例としては、-COOL(Lは金属、炭化水素基、又は-Si(L)であり、Lは炭化水素基である)が挙げられる。Lが金属である場合、当該金属は、好ましくはアルカリ金属、より好ましくはNa又はK、さらに好ましくはNaである。Lが炭化水素基である場合、当該炭化水素基は、好ましくはアルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、さらにより好ましくはメチル基、エチル基、又はプロピル基である。Lが-Si(L)である場合、各Lは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Lは、好ましくはアルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、さらにより好ましくはメチル基、エチル基、又はプロピル基である。
【0042】
式(5)において、Xはハロゲン又は-SO-X11であり、好ましくはフッ素、塩素、臭素、又は-SO-Fである。
【0043】
式(5)で表される化合物としては、例えば、(CH)SiCF、(CH)SiCFCl、(CH)SiCFBr、(CH)SiOCOCFSOF、NaOCOCF、NaOCOCFCl、NaOCOCFBr、CHOCOCFCl、CHOCOCFBr等が挙げられる。
【0044】
式(5)で表される化合物の使用量は、化合物S1モルに対して、例えば0.5モル以上、好ましくは0.8モル以上、さらに好ましくは1モル以上である。式(5)で表される化合物の使用量は、化合物S1モルに対して、例えば6モル以下、好ましくは5モル以下、さらに好ましくは4.8モル以下である。式(5)で表される化合物の使用量は、化合物S1モルに対して、例えば0.5~6モルの範囲内、好ましくは0.8~5モルの範囲内、さらに好ましくは1~4.8モルの範囲内である。
【0045】
工程Aの反応は、添加剤の存在下で実施することが好ましい。添加剤としては、例えば、式(6):
-(X) (6)
で表される化合物、式(7):
・X (7)
で表される化合物、式(8):
3+・H(X) (8)
で表される化合物、1,1-ジフェニルエチレン等が挙げられる。添加剤は1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
式(6)において、Mは金属であり、好ましくはナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、銅、亜鉛、ニッケル、鉄、コバルト、又はスズであり、より好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は銅、さらに好ましくはナトリウム、カリウム、セシウム、又は銅である。mはMの価数に対応する数であり、例えば1又は2である。
【0047】
式(6)において、Xはハロゲンであり、具体的にはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素である。
【0048】
式(6)で表される化合物としては、例えば、NaF、KF、CsF、NaCl、KCl、CsCl、CuCl、NaBr、CuBr、NaI、CuI等が挙げられる。
【0049】
式(7)において、RはH又は有機基であり、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。Rは、好ましくはH又は1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、より好ましくはH、アルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、さらに好ましくはH又はアルキル基、さらにより好ましくはH又はC1-6アルキル基である。任意の2又は3個のRは、これらに隣接するNと一緒になって環を形成していてもよい。当該環としては、例えば、ピリジン、イミダゾール、モルホリン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
【0050】
式(7)において、Xはハロゲンであり、好ましくは塩素、臭素、又はヨウ素である。
【0051】
式(7)で表される化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、トリブチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド等のテトラC1-6アルキルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、トリメチルプロピルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド等のテトラC1-6アルキルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、エチルトリメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモウニウムヨージド、エチルトリプロピルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド等のテトラC1-6アルキルアンモニウムヨージド等が挙げられる。
【0052】
式(8)において、Mは、金属であり、具体的にはカリウム、ナトリウム等のアルカリ金属である。
【0053】
式(8)において、Xはハロゲンであり、好ましくはフッ素である。
【0054】
式(8)で表される化合物としては、例えば、二フッ化水素ナトリウム、二フッ化水素カリウム等が挙げられる。
【0055】
添加剤の使用量は、化合物S1モルに対して、例えば0.01モル以上、好ましくは0.1モル以上、さらに好ましくは0.2モル以上である。添加剤の使用量は、化合物S1モルに対して、例えば2モル以下、好ましくは1.5モル以下、さらに好ましくは1モル以下である。添加剤の使用量は、化合物S1モルに対して、例えば0.01~2モルの範囲内、好ましくは0.1~1.5モルの範囲内、さらに好ましくは0.2~1モルの範囲内である。
【0056】
工程Aの反応は、溶媒の存在下で実施することが好ましい。溶媒としては、例えば、エーテル系溶媒(例:テトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒)、アミド系溶媒(例:ジメチルホルムアミド等)、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル、ブチロニトリル等の鎖状ニトリル、ベンゾニトリル等の環状ニトリル)、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン等)、これら2種以上の混合溶媒等が挙げられる。
【0057】
溶媒の使用量は、錯体化合物S1mmolに対して、例えば0.5mL以上、好ましくは1mL以上、さらに好ましくは2mL以上である。溶媒の使用量は、錯体化合物S1mmolに対して、例えば20mL以下、好ましくは15mL以下である。溶媒の使用量は、錯体化合物S1mmolに対して、例えば0.5~20mLの範囲内、好ましくは1~15mL質量部の範囲内である。
【0058】
工程Aの反応温度及び反応時間は、反応が進行する限り、特に制限されない。
反応温度は、例えば-10℃以上、好ましくは-5℃以上、さらに好ましくは0℃以上である。反応温度は、例えば50℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは25℃以下である。反応温度は、例えば-10~50℃の範囲内、好ましくは-5~30℃の範囲内、さらに好ましくは0~25℃の範囲内である。
反応時間は、例えば1時間以上、好ましくは6時間以上、さらに好ましくは12時間以上である。反応時間は、例えば120時間以下、96時間以下、48時間以下、又は24時間以下であり得る。反応時間は、例えば6~96時間の範囲内、好ましくは12~96時間の範囲内である。
【0059】
工程Aの反応により、式(4)で表される化合物のCFとMとの間に1個以上(特に1~5個)のCFを挿入することができる。したがって、工程Aの反応を経て得られる式(2)で表される化合物において、nは1以上の整数であり、好ましくは1、2、3、4、又は5、より好ましくは1、2、3、又は4、さらに好ましくは1、2、又は3、さらにより好ましくは1又は2である。化合物Pは、式(2)においてnが互いに異なる化合物(例えば、nが1である化合物とnが2である化合物)の混合物を含んでいてもよい。式(2)で表される化合物において、CFの合計の数(k+n)は、例えば2~7の整数、好ましくは3、4、5、又は6、より好ましくは3、4、又は5、さらに好ましくは3又は4である。
【0060】
3.式(1)で表される化合物の製造方法
一実施形態において、式(1):
-(CF)-(CF)-R (1)
で表される化合物の製造方法は、式(2):
-(CF)-(CF)-M (2)
で表される化合物、又は、当該化合物及び配位子を含む錯体化合物(化合物P)を、式(3):
-R (3)
で表される化合物と反応させる工程(以下、「工程B」と表記する場合がある)を含む。当該製造方法は、さらに工程Aを含むことが好ましい。
【0061】
式(3)において、Xはハロゲンであり、好ましくは塩素、臭素、又はヨウ素である。
【0062】
式(3)において、Rはハロゲン又は有機基であり、好ましくはハロゲン、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、-COOR2A、又は-PR2B2Cであり、より好ましくはハロゲン、1個以上の置換基(当該置換基はアリール基及び-COOR2Dからなる群より選択される)アルキル基、1個以上の置換基(当該置換基はアリール基及び-COOR2Eからなる群より選択される)を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基(当該置換基はメチル基、エチル基、アルデヒド基、-COOR2F、シアノ基、ハロゲン、トリフルオロメチル基、ニトロ基、及びアミノ基からなる群より選択される)を有していてもよいアリール基若しくはヘテロアリール基、-COOR2A、又は-PR2B2Cであり、さらに好ましくは塩素、臭素、ヨウ素、1個以上の置換基(当該置換基はフェニル基及び-COOR2Dからなる群より選択される)C1-6アルキル基、1個以上の置換基(当該置換基はフェニル基及び-COOR2Dからなる群より選択される)C2-6アルケニル基、1個以上の置換基(当該置換基はメチル基、エチル基、アルデヒド基、-COOR2F、シアノ基、ハロゲン、トリフルオロメチル基、ニトロ基、及びアミノ基からなる群より選択される)を有していてもよいC6-14アリール基若しくは5員~14員ヘテロアリール基(ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子は、N、O、及びSからなる群より選択される)、-COOR2A、又は-PR2B2Cである。
2A、R2B、R2C、R2D、R2E、及びR2Fは、それぞれ独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基であり、好ましくは1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてよいアリール基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、より好ましくはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、C6-10アリール基、又はC7-14アラルキル基である。
一実施形態において、R2Aはベンジル基等のC7-14アラルキル基である。
一実施形態において、R2B及びR2Cは、それぞれ独立して、フェニル基等のC6-10アリール基である。
一実施形態において、R2Dはメチル基、エチル基等のC1-6アルキル基である。
一実施形態において、R2Eはメチル基、エチル基等のC1-6アルキル基である。
一実施形態において、R2Fはメチル基、エチル基等のC1-6アルキル基である。
【0063】
好適な実施形態において、Rは、下記からなる群から選択される基である。
【化1】
(式中、*は、(CF)との結合点を示す)
【0064】
式(3)で表される化合物は求電子剤であり得る。式(3)で表される化合物としては、例えば、上記Rを有するハロゲン化合物が挙げられ、その具体例としては、クロロぎ酸ベンジル等のクロロぎ酸アラルキル、ヨードベンゼン、ヨードビフェニル、ヨードフルオレン等のヨードアレーン、アリルブロミド等のアルケニルブロミド、分子状ヨウ素等の分子状ハロゲン、クロロジフェニルホスフィン等のクロロジアリールホスフィン等が挙げられる。
【0065】
式(3)で表される化合物の使用量は、化合物P1モルに対して、例えば0.1モル以上、好ましくは0.4モル以上、より好ましくは0.5モル以上、さらに好ましくは0.6モル以上である。式(3)で表される化合物の使用量は、化合物P1モルに対して、例えば10モル以下、好ましくは9モル以下、さらに好ましくは8モル以下である。式(3)で表される化合物の使用量は、化合物P1モルに対して、例えば0.4~10モルの範囲内、好ましくは0.5~9モルの範囲内、さらに好ましくは0.6~8モルの範囲内である。
【0066】
工程Bの反応は、溶媒の存在下で実施することが好ましい。溶媒としては、例えば、エーテル系溶媒(例:テトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒)、アミド系溶媒(例:ジメチルホルムアミド等)、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル、ブチロニトリル等の鎖状ニトリル、ベンゾニトリル等の環状ニトリル)、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン等)、これら2種以上の混合溶媒等が挙げられる。工程Bの溶媒は、工程Aの溶媒と異なる溶媒であってもよく同一の溶媒であってもよい。
【0067】
溶媒の使用量は、化合物P1mmolに対して、例えば0.5mL以上、好ましくは1mL以上、さらに好ましくは2mL以上である。溶媒の使用量は、化合物P1mmolに対して、例えば20mL以下、好ましくは15mL以下である。溶媒の使用量は、化合物P100質量部に対して、例えば0.5~20mLの範囲内、好ましくは1~15mLの範囲内である。工程Bの溶媒の使用量は、工程Aの溶媒の使用量と異なっていてもよく同一であってもよい。
【0068】
工程Bの反応温度及び反応時間は、反応が進行する限り、特に制限されない。
反応温度は、例えば-10℃以上、好ましくは0℃以上、さらに好ましくは20℃以上である。反応温度は、例えば120℃以下、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。反応温度は、例えば-10~120℃の範囲内、好ましくは0~100℃の範囲内、さらに好ましくは20~90℃の範囲内である。
反応時間は、例えば1時間以上、好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上である。反応時間は、例えば48時間以下、好ましくは36時間以下である。反応時間は、例えば1~48時間の範囲内、好ましくは2~36時間の範囲内である。
工程Bの反応温度及び反応時間は、それぞれ、工程Aの反応温度及び反応時間と異なっていてもよく同一であってもよい。
【0069】
工程A及び工程Bは同一の反応系で行ってもよく、所謂ワンポット合成反応であってもよい。
【0070】
工程Bを経て得られる式(1)で表される化合物には、例えば、下記式(1-1)で表される化合物(k=1及びn=2、又は、k=2及びn=1)及び下記式(1-2)で表される化合物(k=1及びn=3、又は、k=2及びn=2)が含まれる:
11-CF-CF-CF-R21 (1-1)
12-CF-CF-CF-CF-R22 (1-2)
【0071】
式(1-1)において、R11は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、好ましくは1個以上の置換基を有していてもよいC6-10アリール基、さらに好ましくは1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0072】
式(1-1)において、R21は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、又は-PR211212であり、好ましくはアルキル基、アルケニル基、又は-PR211212、さらに好ましくはC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、又は-PR211212である。R211及びR212は、それぞれ独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基であり、好ましくは1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、より好ましくはアリール基、さらに好ましくはC6-10アリール基、さらにより好ましくはフェニル基である。
【0073】
式(1-2)において、R12は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、好ましくは1個以上の置換基を有していてもよいC6-10アリール基、さらに好ましくは1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0074】
式(1-2)において、R22は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基(但し、フルオロアルキル基ではない。)、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基(但し、アルキル基ではない。)を有していてもよいアリール基(但し、R12とは異なる。)、又は-PR221222であり、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、又は-PR221222、さらに好ましくはC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C6-10アリール基、又は-PR211212である。R221及びR222は、それぞれ独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基であり、好ましくは1個以上の置換基を有していてもよいアリール基であり、より好ましくはアリール基、さらに好ましくはC6-10アリール基、さらにより好ましくはフェニル基である。
【実施例0075】
以下、実施例によって本開示の一実施態様を更に詳細に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。なお、実施例中の各略号の意味は下記の通りである。
Bn:ベンジル
Cbz:ベンジルオキシカルボニル(COOBn)
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
eq.及びequiv.:当量
Et:エチル
Ph:フェニル
phen:1,10-フェナントロリン
rt:室温
TBAI:テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド
THF:テトラヒドロフラン
TMS:トリメチルシリル
【0076】
TMSCF 3 を用いるPhCF 2 CF 2 CF 2 Cu(phen)の合成
窒素雰囲気下、バイアルにPhCF2CF2Cu(phen) (0.1 mmol, 42 mg)をはかりとり、DMFとTHFの1:3混合溶媒を1 mL加えた。TMSCF3(0.1 mmol, 15 μL)を加えて室温で24時間攪拌した。19F NMRにより反応生成物を分析したところ、PhCF2CF2CF2Cu(phen)を54%の収率で観測した。
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.6 (s, 2F), -109.8 (s, 2F), -128.3 (s, 2F).
【0077】
TMSCF 3 を用いるPhCF 2 CF 2 CF 2 COOBnの合成1
窒素雰囲気下、バイアルにPhCF2CF2Cu(phen) (0.1 mmol, 42 mg)をはかりとり、DMFとTHFの1:3混合溶媒を1 mL加えた。TMSCF3(0.1 mmol, 15 μL)を加えて室温で24時間攪拌した。クロロギ酸ベンジル(0.7 mmol, 0.1 mL)を加えて、さらに1時間攪拌した。19F NMRにより反応生成物を分析したところ、PhCF2CF2CF2COOBnを73%の収率で観測した。
PhCF2CF2CF2COOBn:
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -110.4 (t, 2F, JFF = 10.2 Hz), -118.1 (t, 2F, JFF =9.9 Hz), -123.6 (s, 2F)
HRMS: calculated for C17H12F6O2 362.0741 found for 362.0748
【0078】
TMSCF 3 を用いるPhCF 2 CF 2 CF 2 COOBnの合成2
窒素雰囲気下、バイアルに(phen)CuCF2CF2Ph (0.1 mmol, 42 mg)をはかりとり、DMFとTHFの1:3混合溶媒を1 mL加えた。TMSCF3(0.15 mmol, 22.5 μL)を加えて室温で24時間攪拌した。クロロギ酸ベンジル(0.7 mmol, 0.1 mL)を加えて、さらに1時間攪拌した。19F NMRにより反応生成物を分析したところ、PhCF2CF2CF2COOBnを60%、PhCF2CF2CF2CF2COOBnを21%の収率で観測した。
PhCF2CF2CF2CF2COOBn:
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -110.9 (t, JFF = 14.0 Hz, 2F), -118.7 (t, JFF = 11.0 Hz, 2F), -121.8 (br, 2F), -122.4 (br, 2F)
GC-MS (EI, m/z): 412
【0079】
TMSCF 2 Brを用いるPhCF 2 CF 2 CF 2 COOBnの合成
窒素雰囲気下、バイアルにPhCF2CF2Cu(phen) (0.02 mmol, 8.4 mg)をはかりとり、THFを0.2 mL加えた。TMSCF2Br(0.02 mmol, 3.1 μL)を加えて室温で3時間攪拌した。クロロギ酸ベンジル(0.024 mmol, 3.4 μL)を加えて、さらに1時間攪拌した。19F NMR測定によりPhCF2CF2CF2COOBnが20%の収率で生成していることを確認した。
【0080】
TMSCF 2 Brを用いるPhCF 2 CF 2 (CF 2 ) na COOBnの合成
窒素雰囲気下、バイアルにPhCF2CF2Cu(phen) (0.02 mmol, 8.4 mg)をはかりとり、表1に示す溶媒を0.2 mL加えた。TMSCF2Brを表1に示す等量分)を加えて室温で3時間攪拌した後、クロロギ酸ベンジル(0.024 mmol, 3.4 μL)を加えて、さらに1時間攪拌した。19F NMR測定によりPhCF2CF2(CF2) na COOBnが表1に示す収率で生成していることを確認した。
【0081】
【表1】
【0082】
TMSCF 3 及び添加剤を用いるPhCF 2 CF 2 (CF 2 ) nb COOBnの合成
窒素雰囲気下、バイアルにPhCF2CF2Cu(phen) (0.1 mmol, 42 mg)をはかりとり、表2に示す溶媒を1 mL加えた。TMSCF3(0.1 mmol, 15 μL)及び表2に示す添加剤を表2に示す添加量加えて室温で24時間攪拌した。その後、クロロギ酸ベンジル(0.7 mmol, 0.1 mL)を加えて、さらに1時間攪拌した。NMRにより反応生成物を分析したところ、表2に記載の通り、PhCF2CF2(CF2)nbCOOBnが生成していることを確認した。
【0083】
【表2】
【0084】
TMSCF 3 を用いるPhCF 2 CF 2 CF 2 Iの合成
窒素雰囲気下、試験管にPhCF2CF2Cu(phen) (0.08 mmol, 33 mg)をはかりとり、DMFとTHFの1:3混合溶媒を1 mL加えた。TMSCF3(0.096 mmol, 14 μL)を加えて室温で24時間攪拌した。その後、よう素(0.12 mmol, 31.4 mg)を加え、さらに4時間攪拌したところ、収率50%で表題化合物が生成していることを確認した。
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -57.7 (s, 2F), -109.4 (t, JFF = 13.4 Hz, 2F), -113.4 (s, 2F).
GC-MS (EI, m/z): 354.
【0085】
TMSCF 3 を用いるPhCF 2 CF 2 CF 2 Clの合成
よう素を4-トルエンスルホニルクロリド(0.06 mmol, 12 mg)に変更し、添加後の攪拌時間を24時間に変更した以外は、上記と同様の操作をして、表題化合物が68%の収率で生成していることを確認した。
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -66.9 (t, JFF = 12.7 Hz, 2F), -110.0 (t, JFF = 12.8 Hz, 2F), -120.6 (s, 2F).
GC-MS (EI, m/z): 262.
【0086】
TMSCF 3 を用いるPhCF 2 CF 2 CF 2 Bnの合成
よう素をベンジルブロミド(0.05 mmol, 9 mg)に変更し、添加後の攪拌条件を反応温度80℃、24時間に変更した以外は、上記と同様の操作をして、表題化合物が56%の収率で生成していることを確認した。
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.9 (t, JFF = 11.4 Hz, 2F), -112.1 (t, JFF = 16.1 Hz, 2F), -123.9 (s, 2F)
GC-MS (EI, m/z): 318.
【0087】
TMSCF 3 を用いるPhCF 2 CF 2 CF 2 PPh 2 の合成
よう素をジフェニルホスフィンクロリド(0.05 mmol, 11 mg)に変更した以外は、上記と同様の操作をして、表題化合物が68%の収率で生成していることを確認した。
19F NMR (376 MHz, in C6D6, rt, δ/ppm): -106.9 (dt, JFP = 60.8 Hz, JFF = 12.8 Hz, 2F), -109.7 (q, JFF = 21.7 Hz, 2F), -117.2 (d, JFF = 25.8 Hz, 2F)
【0088】
TMSCF 3 を用いるPhCF 2 CF 2 CF 2 CH 2 CH=CHPhの合成
よう素をシンナミルブロミド (0.09 mmol, 18.0 mg)に変更し、添加後の攪拌条件を80℃、24時間に変更した以外は、上記と同様の操作をして、表題化合物が28%の収率で生成していることを確認した。
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -111.8 (s, 2F), -117.7 (t, 2F), -123.9 (s, 2F).
GC-MS (EI, m/z) 344.
【0089】
【化2】
窒素雰囲気下、試験管にPhCF2CF2Cu(phen) (0.6 mmol, 250 mg)をはかりとり、DMFとTHFの1:3混合溶媒を6 mL加えた。TMSCF3(0.72 mmol, 107 μL)を加えて室温で24時間攪拌した。その後、4-ヨードベンズアルデヒド(0.5 mmol)を加え、60℃で4時間攪拌したところ、表題の化合物(nc=1) が64%、及び化合物(nc=2) が21%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(nc = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.5 (t, JFF = 12.0 Hz, 2F), -110.0 (t, JFF = 12.0 Hz, 2F), -122.4 (s, 2F).
化合物(nc = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -110.8 (t, JFF = 13.8 Hz, 2F), -111.1 (t, JFF = 12.9 Hz, 2F), -121.3 (m, 4F).
【0090】
【化3】
4-ヨードベンズアルデヒドを4-ヨードベンゾニトリル(0.5 mmol)に変更した以外は、上記と同じ操作をして、表題の化合物(nd=1) が65%、及び化合物(nd=2) が23%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(nd = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.5 (t, JFF = 12.5 Hz, 2F), -110.5 (t, JFF = 12.5 Hz, 2F), -122.4 (s, 2F).
化合物(nd = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -113.99 (t, JFF = 14.2 Hz, 2F), -114.7 (t, JFF = 13.7 Hz, 2F), -124.4 (m, 2F), -124.5 (m, 2F).
【0091】
【化4】
4-ヨードベンズアルデヒドを1-ヨード-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(0.5 mmol)に変更した以外は、上記と同じ操作をして、表題の化合物(ne=1) が61%、及び化合物(ne=2) が19%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(ne = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -63.2 (s, 3F), -109.5 (t, JFF = 12.6 Hz, 2F), -110.0 (t, JFF = 12.2 Hz, 2F), -122.4 (s, 2F)
化合物(ne = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -63.2 (s, 3F), -110.8 (t, JFF = 14.3 Hz, 2F), -111.1 (t, JFF = Hz, 2F), -121.3 (m, 4F)
【0092】
【化5】
4-ヨードベンズアルデヒドをエチル 4-ヨードベンゾエート(0.5 mmol)に変更した以外は、上記と同じ操作をして、表題の化合物(nf=1) が62%、及び化合物(nf=2) が20%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(nf = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.5 (t, JFF = 12.0 Hz, 2F), -109.9 (t, JFF = 12.0 Hz, 2F), -122.5 (s, 2F)
化合物(nf = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -110.8 (t, JFF = 14.0 Hz, 2F), -111.1 (t, JFF = 13.8 Hz, 2F), -121.3 (m, 2F), -121.5 (m, 2F)
【0093】
【化6】
窒素雰囲気下、試験管にPhCF2CF2Cu(phen) (0.8 mmol, 340 mg)をはかりとり、DMFとTHFの1:3混合溶媒を8 mL加えた。TMSCF3(0.96 mmol, 140 μL)を加えて室温で24時間攪拌した。その後、4-ヨードビフェニル (0.5 mmol)を加え、60℃で18時間攪拌したところ、表題の化合物(ng=1) が66%、及び化合物(ng=2) が19%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(ng = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.3 (t, JFF = 11.2 Hz, 2F), -109.5 (t, JFF = 11.4 Hz, 2F), -122.5 (s, 2F)
化合物(ng = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -110.5 (t, JFF = 11.8 Hz, 2F), -110.7 (t, JFF = 13.2 Hz, 2F), -121.4 (m, 4F)
【0094】
【化7】
4-ヨードビフェニルをエチル 2-ヨード9,9-ジメチルフルオレン (0.5 mmol)に変更した以外は、上記と同じ操作をして、表題の化合物(nh=1) が67%、及び化合物(nh=2) が21%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(nh = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -108.5 (t, JFF = 11.9 Hz, 2F), -109.5 (t, JFF = 12.0 Hz, 2F), -122.4 (s, 2F)
化合物(nh = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.7 (t, JFF = 15.2 Hz, 2F), -110.7 (t, JFF = 13.8 Hz, 2F), -121.2 (s, 2F), -121.5 (s, 2F)
【0095】
【化8】
4-ヨードビフェニルを4-ヨード-1-ニトロベンゼン(0.5 mmol)に変更した以外は、上記と同じ操作をして、表題の化合物(ni=1) が67%、及び化合物(ni=2) が18%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(ni = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.6 (t, JFF = 12.3 Hz, 2F), -110.1 (t, JFF = 12.2 Hz, 2F), -122.4 (s, 2F).
化合物(ni = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -110.8 (t, JFF = 14.1 Hz, 2F), -111.1 (t, JFF = 13.6 Hz, 2F), -121.2 (m, 4F).
【0096】
【化9】
4-ヨードビフェニルを2-クロロ-4-ブロモ-1-ヨードベンゼン(0.5 mmol)に変更した以外は、上記と同じ操作をして、表題の化合物(nj=1) が52%、及び化合物(nj=2) が12%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(nj = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -106.3 (t, JFF = 12.9 Hz, 2F), -109.9 (t, JFF = 12.9 Hz, 2F), -120.7 (s, 2F)
化合物(nj = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -112.1 (t, JFF = 14.8 Hz, 2F), -115.5 (t, JFF = 14.3 Hz, 2F), -124.5 (m, 2F), -126.4 (m, 2F)
【0097】
【化10】
4-ヨードビフェニルを3-ヨードピリジン(0.5 mmol)に変更した以外は、上記と同じ操作をして、表題の化合物(nk=1) が67%、及び化合物(nk=2) が15%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(nk = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.6 (t, JFF = 12.1 Hz, 2F), -110.5 (t, JFF = 12.1 Hz, 2F), -122.7 (s, 2F)
化合物(nk = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -110.9 (t, JFF = 14.0 Hz, 2F), -111.6 (t, JFF = 13.3 Hz, 2F), -121.3 (m, 2F), -121.6 (m, 2F)
【0098】
【化11】
4-ヨードビフェニルを(Z)-エチル 3-ヨードアクリレート(0.5 mmol)に変更した以外は、上記と同じ操作をして、表題の化合物(nl=1) が67%、及び化合物(nl=2) が17%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(nl = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -108.9 (d, JFF = 11.4 Hz, 2F), -110.0 (t, JFF = 11.0 Hz, 2F), -124.1 (s, 2F).
化合物(nl = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.9 (t, JFF = 12.6 Hz, 2F), -110.8 (t, JFF = 13.8 Hz, 2F), -121.7 (br, 2F), -122.8 (br, 2F).
【0099】
【化12】
窒素雰囲気下、試験管にPhCF2CF2Cu(phen) (0.8 mmol, 340 mg)をはかりとり、DMFとTHFの1:3混合溶媒を8 mL加えた。TMSCF3(0.96 mmol, 140 μL)を加えて室温で24時間攪拌した。その後、2-ヨードチオフェン (0.5 mmol)を加え、60℃で24時間攪拌したところ、表題の化合物が24%の収率で生成していることを確認した。
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -99.39 (t, JFF = 11.7 Hz, 2F), -109.6 (t, JFF = 12.3 Hz, 2F), -122.4 (s, 2F)
【0100】
【化13】
2-ヨードチオフェンを4-ヨードアニリン(0.5 mmol)に変更した以外は、上記と同じ操作をして、表題の化合物(nm=1) が43%、及び化合物(nm=2) が14%の収率でそれぞれ生成していることを確認した。
化合物(nm = 1)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -107.8 (t, JFF = 10.7 Hz, 2F), -109.4 (t, JFF = 10.3 Hz, 2F), -122.7 (s, 2F)
化合物(nm = 2)
19F NMR (376 MHz, in CDCl3, rt, δ/ppm): -109.2 (br, 2F), -110.7 (br, 2F), -121.6(br, 4F)
【0101】
PhCF 2 CF 2 (CF 2 ) nn COOBnの合成
窒素雰囲気下、バイアルに(phen)CuCF2CF2Ph (0.1 mmol, 42 mg)をはかりとり、DMFとTHFの1:3混合溶媒を1 mL加えた。TMSCF3(0.12 mmol, 18 μL)を加えて室温で24時間攪拌した。これを4回繰り返し、クロロギ酸ベンジル(0.7 mmol, 0.1 mL)を加えて、さらに1時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィー質量分析にて分析したところ、m/z=412(nn=2)、462(nn=3)、512(nn=4)、562(nn=5)が観測され、表題の化合物(nn=2~5)が生成していることを確認した。