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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143172
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】麺類用小麦粉
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20241003BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L7/109 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055704
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一希
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋介
(72)【発明者】
【氏名】貴島 聡
(72)【発明者】
【氏名】上野 洋平
【テーマコード(参考)】
4B023
4B046
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE26
4B023LG06
4B023LP02
4B023LP20
4B046LA02
4B046LA05
4B046LB01
4B046LB10
4B046LC01
4B046LG02
4B046LG04
4B046LG29
4B046LP01
4B046LP10
4B046LP14
4B046LP69
4B046LP71
(57)【要約】
【課題】麺類用小麦粉として有用な高アミロース小麦粉の提供。
【解決手段】コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上であり、RVAセットバックが220~450mPa・sである、麺類用小麦粉。該RVAセットバックは下記手順にて測定されたセットバックである:小麦粉3g(水分14質量%)を水25mLに懸濁し、得られた懸濁液をラピッドビスコアナライザーにより粘度測定する(ここで該粘度測定では、該懸濁液の品温を、はじめに50℃で1分間保持し、その後12℃/分で140℃に昇温させ、140℃で2.5分間維持し、次いで12℃/分で50℃まで降温させ、50℃で14.2分間保持する)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺類用小麦粉であって、
コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上であり、
RVAセットバックが220~450mPa・sであり、
該RVAセットバックが、下記手順にて測定されたセットバックである:
小麦粉3g(水分14質量%)を水25mLに懸濁し、得られた懸濁液をラピッドビスコアナライザーにより粘度測定する(ここで該粘度測定では、該懸濁液の品温を、はじめに50℃で1分間保持し、その後12℃/分で140℃に昇温させ、140℃で2.5分間維持し、次いで12℃/分で50℃まで降温させ、50℃で14.2分間保持する)、
麺類用小麦粉。
【請求項2】
SBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉である、請求項1記載の麺類用小麦粉。
【請求項3】
RVAピーク粘度が150~340mPa・sである、請求項1記載の麺類用小麦粉。
【請求項4】
前記麺類がうどん又は中華麺である、請求項1記載の麺類用小麦粉。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の麺類用小麦粉を、穀粉類及び澱粉類の合計質量中に30質量%以上含有する、麺類用穀粉組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項記載の麺類用小麦粉を、穀粉類及び澱粉類の合計質量中に30質量%以上含有する原料粉を用いる、麺類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類用小麦粉に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物に含まれる澱粉にはアミロースとアミロペクチンが含まれる。アミロースは、消化酵素による消化性が悪く、そのため、ヒトの消化酵素で消化されない難消化性成分、すなわち食物繊維として機能し得、難消化性澱粉に分類される。近年、澱粉合成に関連する酵素に変異を有することでアミロース含有量を増加させた高アミロース小麦が開発されている(非特許文献1、2)。特許文献1~4には、澱粉分枝酵素SBEIIaの遺伝子の点変異を有し、SBEIIaの活性が低下しており、穀粒に含まれる澱粉のアミロース含有量が高い高アミロース小麦が開示されている。しかし一方で、アミロースは食品がパサついたり硬くなったりする原因でもある。例えば、前述の非特許文献2には、高アミロース小麦から製造したパンが、通常の小麦を使用したものと比べて膨らみが悪く品質に劣っていたこと、一方で、高アミロース小麦粉の配合によりパスタのようなテクスチャーの中華麺が得られたことが記載されている。そのため、ベーカリーや麺類では、食品の食感をソフトで口当たりのよいものにしたい場合、アミロース含有量の低い穀粉が利用されることがある。
【0003】
特許文献5には、生地を40~150kgf/cm2の圧力で押出製麺する生パスタ類の製造方法において、該生地の原料粉に、RVAピーク粘度が3000~5000mPa・S、ブレークダウンが1500~4000mPa・S、セットバックが1000~2500mPa・Sである普通小麦粉を配合することが記載されている。非特許文献3には、高アミロース小麦粉のRVA(140℃まで昇温)によるピーク粘度が約235~407cP、ブレークダウンが約170.5~323cP、セットバックが約533~639.5cPであったことが記載されており、こうした高アミロース小麦粉のRVAピーク粘度及びブレークダウンは、同じ条件で測定した普通小麦粉のRVAピーク粘度及びブレークダウンと比べてかなり低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007-504803号公報
【特許文献2】特表2008-526690号公報
【特許文献3】特表2015-504301号公報
【特許文献4】特表2019-527054号公報
【特許文献5】特開2017-035061号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J Jpn Assoc Dietary Fiber Res, 2003, 7(1):20-25
【非特許文献2】Trends in Food Science and Technology, 2006, 17:448-456
【非特許文献3】Carbohydrate Polymers, 2020, 245:116557
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高アミロース小麦粉は有望な食物繊維素材の1つである。本発明は、麺類用小麦粉として有用な高アミロース小麦粉に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的実施形態として、以下を提供する。
〔1〕麺類用小麦粉であって、
コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上であり、
RVAセットバックが220~450mPa・sであり、
該RVAセットバックが、下記手順にて測定されたセットバックである:
小麦粉3g(水分14質量%)を水25mLに懸濁し、得られた懸濁液をラピッドビスコアナライザーにより粘度測定する(ここで該粘度測定では、該懸濁液の品温を、はじめに50℃で1分間保持し、その後12℃/分で140℃に昇温させ、140℃で2.5分間維持し、次いで12℃/分で50℃まで降温させ、50℃で14.2分間保持する)、
麺類用小麦粉。
〔2〕SBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉である、〔1〕記載の麺類用小麦粉。
〔3〕RVAピーク粘度が150~340mPa・sである、〔1〕又は〔2〕記載の麺類用小麦粉。
〔4〕前記麺類がうどん又は中華麺である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の麺類用小麦粉。
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の麺類用小麦粉を、穀粉類及び澱粉類の合計質量中に30質量%以上含有する、麺類用穀粉組成物。
〔6〕〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の麺類用小麦粉を、穀粉類及び澱粉類の合計質量中に30質量%以上含有する原料粉を用いる、麺類の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明で提供される高アミロース小麦粉を用いて製造した麺類は、硬さと粘りのバランスの良い、良好な食感を有する。当該高アミロース小麦粉は、麺類用小麦粉として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、高アミロース小麦粉とは、アミロース含有量が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは43質量%以上、さらに好ましくは47質量%以上の小麦粉をいう。小麦粉のアミロース含有量とは、該小麦粉に含まれる総澱粉中のアミロース含有量をいう。本明細書における小麦粉のアミロース含有量は、コンカナバリンA(ConA)法により分析された値として定義され、例えば、該小麦粉をMegazyme社のアミロース/アミロペクチン分析キット(AMYLOSE/AMYLOPECTIN ASSAY KIT)で分析することで測定することができる。従来一般的なアミロース含有量の分析方法としては、(1) アミロースのヨウ素に対する結合能の高さを利用した方法(ヨウ素親和力測定法;例えば電流滴定法、比色定量法、AACC61-03法など)、(2) アミロペクチンとConAが特異的に結合することを利用した方法(ConA法)が知られている。しかし(1)を利用した方法ではアミロース量がより高く算出される傾向がある。例えば、非特許文献1~2に記載されるSGP-1遺伝子の機能欠失型変異(null変異)を有する高アミロース小麦粉のアミロース含有量は、ヨウ素親和力測定法では37質量%程度であるが、ConA法では31質量%程度である。なお、従来一般的な小麦粉のアミロース含有量は、ヨウ素親和力測定法では32質量%未満、ConA法では28質量%未満である。
【0010】
高アミロース小麦粉の原料小麦の例としては、澱粉分枝酵素SBEIIaの活性が低い改変小麦が挙げられる。そのような改変小麦の例としては、特許文献1~4に記載される、SBEIIaの遺伝子の変異を有し、SBEIIaの活性が低下している高アミロース小麦が挙げられる。より具体的な例としては、穀粒中のSBEIIaタンパク質の量又は活性が野生型小麦穀粒中の量又は活性の2%よりも低い高アミロース小麦、1つ以上、例えば1つ又は2つのSBEIIa遺伝子のnull変異を有する高アミロース小麦、などが挙げられる。
【0011】
本発明は、麺類用小麦粉として好適に使用することができる高アミロース小麦粉を提供する。本発明の高アミロース小麦粉は、RVAセットバック(SB)が、220~450mPa・s、好ましくは270~420mPa・s、より好ましくは300~420mPa・sであり、この値は、従来の高アミロース小麦粉(例えば、非特許文献3参照)と比べて低い。また本発明の高アミロース小麦粉は、好ましくはRVAピーク粘度が150~340mPa・s、より好ましくは170~320mPa・sである。
【0012】
本明細書において、小麦粉の「RVAセットバック」(又は単に「セットバック」という)とは、ラピッドビスコアナライザー(RVA)にて測定される該小麦粉のセットバック、具体的にはRVAにて測定される最終粘度と最低粘度との差をいう。また本明細書において、小麦粉の「RVAピーク粘度」(又は、単に「ピーク粘度」という)とは、RVAにて測定される該小麦粉のピーク(最高)粘度をいう。これらのRVA測定値は、水に分散させた小麦粉の、主として含有する澱粉が加熱されて糊になった際の、糊化特性を表す。
【0013】
前述した本明細書における小麦粉のRVAでの測定値は、非特許文献3に記載の方法に準じたAACC法76-21の改変法に従って得られる。通常、RVAでは、試料を95℃まで昇温させるが、高アミロース小麦粉は95℃では充分に糊化しない。そのため、該改変法では、試料を95℃の代わりに140℃まで昇温させ、充分に糊化させる。具体的には、本明細書における小麦粉のRVA測定値は、以下の方法に従って得られる:
小麦粉3g(水分14質量%換算、固形分として2.58g)を水25mLに懸濁し、得られた懸濁液をラピッドビスコアナライザー(RVA)により粘度測定する。なお、小麦粉の水分が前記と異なる場合は、前記の値に換算されるように小麦粉及び水の量を調整する。該粘度測定では、該懸濁液の品温を、はじめに50℃で1分間保持し、その後12℃/分で140℃に昇温させ、140℃で2.5分間維持し、次いで12℃/分で50℃まで降温させ、50℃で14.2分間保持する。該粘度測定で得られた該懸濁液の粘度曲線における、最高粘度を「ピーク粘度」、その後の最低粘度を「最低粘度」、降温後の最高粘度を「最終粘度」として求める。
・SB(セットバック)=最終粘度-最低粘度
【0014】
本発明の高アミロース小麦粉は、前述した高アミロース小麦の穀粒を通常の方法に従って、ただし小麦粉が前記のRVA粘度特性を有するように条件を調整して、製粉することによって製造することができる。例えば、原料小麦の製粉の際にブレーキング工程、グレーディング工程、ピュリフィケーション工程、及びリダクション工程を調整することで、前記のRVAセットバックを有する高アミロース小麦粉を調整することができる。
【0015】
本発明の高アミロース小麦粉は、該高アミロース小麦の穀粒の胚乳画分のみを実質的に含む小麦粉であってもよく、又は、該高アミロース小麦の穀粒の胚乳画分に加えてさらに胚芽やふすま画分を含む小麦粉(例えば全粒粉)であってもよい。
【0016】
好ましくは、本発明の高アミロース小麦粉は、灰分が、1.0質量%以下、より好ましくは0.2~0.9質量%である。本明細書における小麦粉の灰分は、直接灰化法(ISS Standard Methods No.104/1)に従って測定した値をいう。
【0017】
本発明の高アミロース小麦粉は、麺類の原料として好適である。好ましくは、本発明の高アミロース小麦粉は麺類用小麦粉として使用される。
【0018】
したがって、本発明はまた、前述の本発明の高アミロース小麦粉を含有する麺類用穀粉組成物を提供する。本発明で提供される麺類用穀粉組成物(以下、単に本発明の組成物ともいう)における本発明の高アミロース小麦粉の含有量は、該組成物に含まれる穀粉類及び澱粉類の合計質量中、好ましくは30質量%以上、より具体的には30~100質量%、より好ましくは40~100質量%である。
【0019】
本発明の組成物は、本発明の高アミロース小麦粉以外の他の穀粉類及び/又は澱粉類を含有することができる。該他の穀粉類の例としては、本発明の高アミロース小麦粉以外の小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉、ライ麦粉、ふすま粉などが挙げられる。該小麦粉の例としては、好ましくは非高アミロース小麦粉、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉、熱処理粉(α化小麦粉、部分α化小麦粉、焙焼小麦粉等)が挙げられる。上記に挙げた穀粉類は、いずれか1種又はいずれか2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0020】
前記澱粉類の例としては、特に限定されず、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの未加工澱粉、及びそれらを加工(例えば、架橋化、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化など)した加工澱粉が挙げられる。好ましくは、該加工澱粉は、エーテル化澱粉及びアセチル化澱粉からなる群より選択される1種以上である。該エーテル化澱粉及びアセチル化澱粉は架橋処理されていてもよい。上記に挙げた未加工澱粉及び加工澱粉は、いずれか1種又はいずれか2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0021】
本発明の組成物における、本発明の高アミロース小麦粉を含む、穀粉類及び澱粉類の合計含有量は、該組成物の全質量中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0022】
本発明の組成物は、前述した本発明の高アミロース小麦粉、他の穀粉類、澱粉類に加えて、麺類の製造に従来用いられる他の成分をさらに含有していてもよい。当該他の成分としては、例えば、小麦蛋白質(グルテン)、大豆蛋白質、乳蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材;油脂類;かんすい;食塩;糖類;甘味料;焼成カルシウム;食物繊維;香辛料;調味料;ビタミン、ミネラル、栄養強化剤;色素;香料;デキストリン(難消化性含む);膨張剤;乳化剤;増粘剤;保水剤;保存剤;酵素剤;pH調整剤;酸化還元剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの他の成分は、製造する麺類の種類に応じて、いずれか1種又はいずれか2種以上の組み合わせで用いることができる。該組成物中における他の成分の各々の含有量は、目的とする麺類の性質に応じて適宜決定することができる。例えば、該組成物がグルテンを含有する場合、その含有量は、該組成物の全量中、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~10質量%である。
【0023】
本発明の組成物は、前述した本発明の高アミロース小麦粉、及び必要に応じて、他の穀粉類、澱粉類や他の成分を混合することで調製することができる。本発明の組成物は、麺類の原料粉として使用することができる。
【0024】
本発明の高アミロース小麦粉又は本発明の組成物を用いて、麺類を製造することができる。製造される麺類の種類は、特に限定されないが、うどん、冷や麦、素麺、中華麺、そば、パスタ類などの麺線類や麺皮類(ギョーザ皮、シウマイ皮、ワンタン皮等)などが挙げられ、このうち、うどん、冷や麦、素麺、中華麺、そば、パスタ類などの麺線類が好ましく、うどん及び中華麺がより好ましい。
【0025】
本発明で提供される麺類は、原料粉として本発明の高アミロース小麦粉又は本発明の組成物を用いる以外は、通常の手順に従って製造することができる。具体的には、原料粉と練水とを混捏して生地を調製する。該原料粉は、本発明の高アミロース小麦粉を、該原料粉に含まれる穀粉類及び澱粉類の合計質量中に、好ましくは30質量%以上、より具体的には30~100質量%、より好ましくは40~100質量%含むことができる。このとき、本発明の高アミロース小麦粉、及び必要に応じて他の穀粉類、澱粉類や他の成分は、一度に又は任意の順序で混合することができる。練水としては、水、塩水、かん水、ガス含有水(炭酸水等)などを使用することができる。原料粉に対する練水の量は、適宜調整すればよいが、原料粉100質量部に対して、好ましくは20~67質量部、より好ましくは25~57質量部である。次いで、調製した生地を成形して生麺を製造する。麺生地の成形の方法は、圧延、複合や切出し等の工程を含むロール製麺、押出し製麺、それらの組み合わせなど、特に限定されない。得られた生麺に対して、さらに常法に従って、乾燥、調理、凍結、冷蔵、それらの組み合わせなどの処理を施してもよい。本発明の高アミロース小麦粉を用いて製造された麺類は、硬さと粘りのバランスの良い、良好な食感を有し、かつ冷蔵又は冷凍保存後にもその良好な食感を維持することができる。
【実施例0026】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0027】
製造例
(高アミロース小麦粉の調製)
高アミロース小麦(SBEIIa変異遺伝子を有するSBEIIaの発現量の低い小麦)を調質後、製粉した。製粉の際にブレーキング工程、グレーディング工程、ピュリフィケーション工程、及びリダクション工程を調整することにより、製造例1~6、及び比較例1~2の高アミロース小麦粉(HAW)を製造した。小麦粉のアミロース含有量はアミロース/アミロペクチン分析キット(Megazyme社)により測定した。小麦粉のRVAによる粘度測定は下記の手順にて行った。
【0028】
(RVA)
ラピッドビスコアナライザー(回転式糊化特性測定装置、PerkinElmer Japan)に付属のアルミ缶(測定対象物の収容容器)に、小麦粉3g(水分14質量%)及び蒸留水25mLを入れた後、さらにパドル(攪拌子)を入れ、装置にセットした。なお、小麦粉の量は、小麦粉の水分が14質量%のときに3g(小麦粉の固形分として2.58g)が必要である。小麦粉の水分が異なる場合は、上記の水分量(及び固形分量)に換算されるように、アルミ缶に入れる小麦粉及び蒸留水の量を調整した。そして、アルミ缶内のパドルを回転数160rpm/minで回転させながら、該アルミ缶を加熱してその内容物(小麦粉懸濁液)の温度を上昇させつつ該内容物の粘度を測定した。このときのアルミ缶内容物の加温上昇条件は、はじめにアルミ缶内容物の品温を50℃で1分間保持した後、12℃/minで140℃まで昇温させ、同温度で2.5分間保持し、次いで、12℃/minで50℃まで降温した後、同温度で14.2分間保持する条件とした。そして、斯かるアルミ缶加熱処理中の内容物の粘度曲線を得た。該粘度曲線に基づいて、ピーク粘度、最低粘度、最終粘度を求めた。RVAピーク粘度は製造例1~6で190~298mPa・s、比較例1~2で265~279mPa・sであった。SB(セットバック)は下記式により算出した。
・SB=最終粘度-最低粘度
【0029】
試験例1 うどん
中力粉50質量部と表1の高アミロース小麦粉50質量部からなる原料粉100質量部に対し、食塩3質量部を添加した水34~42質量部を加え、ミキシングして麺生地を調製した。該生地を製麺ロールで圧延して麺帯を作製し、切り刃(#10角)で切り出してうどんの生麺線を製造した(麺厚2.8mm)。得られた麺線を歩留約310%となるように茹でた。得られた茹でうどんの食感を訓練されたパネラー10人により下記評価基準に従って評価し、10名の評価の平均点を求めた。評価結果を表1に示す。
<評価基準>
5点:表面の硬さと中心部の粘りのバランスが非常によく、極めて良好。
4点:表面の硬さと中心部の粘りのバランスが良く、良好。
3点:表面の硬さと中心部の粘りのバランスがやや良く、やや良好。
2点:表面の硬さと中心部の粘りのバランスがやや悪く、やや不良。
1点:表面の硬さと中心部の粘りのバランスが悪く、不良。
【0030】
【表1】
【0031】
試験例2 中華麺
準強力粉50質量部と表2の高アミロース小麦粉50質量部からなる原料粉に対し、かんすい1質量部を添加した水34~46質量部を加え、ミキシングして麺生地を調製した。該生地を製麺ロールで圧延及び複合して麺帯を作製し、切り刃(#20角)で切り出して中華麺の生麺線を製造した(麺厚1.4mm)。得られた麺線を歩留約225%となるように茹でた。得られた麺の食感を試験例1と同様の手順で評価した。評価結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
試験例3 冷凍うどん
表3の高アミロース小麦粉100質量部に対し、食塩3質量部、水39~44質量部を加え、ミキシングして麺生地を調製した。該生地を製麺ロールで圧延して麺帯を作製し、切り刃(#10角)で切り出してうどんの生麺線を製造した(麺厚3mm)。得られた麺線を歩留約310%となるように茹で、水洗冷却した。得られた茹で麺を個食に包装し、急速冷凍庫(-40℃)で急速凍結し、-18℃で7日間保存した。冷凍保存した麺を熱湯で再び1分間茹で、得られた茹でうどんの食感を試験例1と同様の手順で評価した。評価結果を表3に示す。
【0034】
【表3】