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特開2024-143220ディップ成形体およびディップ成形用ラテックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143220
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ディップ成形体およびディップ成形用ラテックス
(51)【国際特許分類】
   B29C 41/14 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 23/34 20060101ALI20241003BHJP
   C08C 19/32 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 41/36 20060101ALI20241003BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20241003BHJP
   A41D 19/015 20060101ALI20241003BHJP
   A41D 19/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C41/14
C08L23/34
C08C19/32
C08F10/02
C08F10/00
C08J5/00 CES
B29C41/36
A41D19/00 P
A41D19/015 210A
A41D19/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055779
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 聖司
(72)【発明者】
【氏名】澤田 晃平
【テーマコード(参考)】
3B033
4F071
4F205
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3B033AA27
3B033AB02
3B033BA01
4F071AA14
4F071AA78
4F071AE04
4F071AF20Y
4F071AG05
4F071AG34
4F071AH04
4F071BA05
4F071BB13
4F071BC04
4F071BC12
4F205AA45
4F205AC05
4F205AG06
4F205AH70
4F205AR12
4F205AR15
4F205GA08
4F205GB01
4F205GC01
4F205GF01
4F205GF24
4F205GN29
4J002AC022
4J002AC032
4J002AE002
4J002BB271
4J002CD162
4J002EH076
4J002EH106
4J002EH146
4J002FD010
4J002FD022
4J002FD026
4J002FD030
4J002FD090
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD200
4J002GC00
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA05Q
4J100AA07Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA19Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA28
4J100DA49
4J100EA07
4J100HA21
4J100HA61
4J100HB04
4J100HB50
4J100HB53
4J100HE05
4J100HE17
4J100JA57
4J100JA60
(57)【要約】
【課題】柔軟性があり、長時間にわたり装着使用しても疲労感の少なく、且つ保護性にも優れた、クロロスルホン化ポリオレフィン成形体(特に手袋)を提供すること。
【解決手段】クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスをディップ成型して製造されるディップ成形体であって、
厚みが0.3mm以上であり、
25℃、1Hzにおける引張貯蔵弾性率が1~10MPaである、
ディップ成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスをディップ成型して製造されるディップ成形体であって、
厚みが0.3mm以上であり、
25℃、1Hzにおける引張貯蔵弾性率が1~10MPaである、
ディップ成形体。
【請求項2】
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスを構成するクロロスルホン化ポリオレフィン中の塩素含有量が30~40質量%である請求項1に記載のディップ成形体。
【請求項3】
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックス中のクロロスルホン化ポリオレフィン100質量部に対し、可塑剤を5~20質量部含む、請求項1に記載のディップ成形体。
【請求項4】
前記可塑剤が、エポキシ基又はオレフィン基を有する反応性可塑剤である、請求項3に記載のディップ成形体。
【請求項5】
クロロスルホン化ポリオレフィンがクロロスルホン化ポリエチレンである、請求項1~4いずれかに記載のディップ成形体。
【請求項6】
40℃、1Hzにおける引張貯蔵弾性率が0.5~5MPaである、請求項1~4いずれかに記載のディップ成型体。
【請求項7】
成形体が手袋である、請求項1~4のいずれかに記載のディップ成形体。
【請求項8】
成形体がサックである、請求項1~4のいずれかに記載のディップ成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディップ成形体、及びディップ成形体を調製するための組成物(ディップ成形用ラテックス)に関する。より詳しくは、クロロスルホン化ポリオレフィンを含む柔軟性に優れたディップ成形体およびそれを製造するためのディップ成形用ラテックス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム手袋やサックは、家事用、食品工業や電子部品製造業などの種々の工業用および医療用などに、幅広く使用されている。ゴム手袋やサックは、その基本的機能として、酸・アルカリ、毒劇物などの薬品、有機溶媒、あるいは刃物や熱、放射線などから手を保護するために着用される。これに加えて、長時間使用しても疲れないこと、繰り返し屈曲させても劣化しにくいこと等も重要な機能として要求される。例えば、特許文献1には、カルボキシ変性ニトリルゴムラテックスと、有機過酸化物と、を含むディップ成形用組成物を、ディップ成形してなるディップ成形体の製造方法であって、前記カルボキシ変性ニトリルゴムラテックス中のラテックス粒子が、50~90重量%のメチルエチルケトン不溶解分を含むラテックスを用いることにより、引張強度および耐屈曲疲労性に優れ、ゴム手袋とした場合に、装着した際に手に対する密着性および追随性の低下が起こり難い手袋が得られることが、開示されている。
【0003】
クロロスルホン化ポリオレフィン製の手袋は、一般的に使い捨てではなく、また、厚みが他のゴム手袋に比べ厚い。そのため、他のゴム手袋よりも手指の屈曲に対する追随性に劣り、ゴワゴワした感触や、長時間の作業では疲労感が出てくることがある。しかし、強酸、強アルカリに対する耐性は他のゴム手袋よりも優れているため、特に危険性の高い作業においてはよく使用されている。一方で、作業者の保護の観点から、厚みを薄くして、柔軟性を出すことは難しい。
【0004】
クロロスルホン化ポリオレフィンゴム手袋を作る方法としては、ゴムを有機溶媒に溶解させ製造する方法(例えば、特許文献2)やゴムラテックスを用いて手袋を製造する方法(例えば、特許文献3、4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4839676号公報
【特許文献2】特開平05-230702号公報
【特許文献3】特開2011-032590号公報
【特許文献4】特許第7033242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、柔軟性があり、長時間にわたり装着使用しても疲労感の少なく、且つ保護性にも優れた、クロロスルホン化ポリオレフィン成形体(特に手袋)を提供することを目的に、検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスから得られるディップ成形体の物性と、そのディップ成形体(例えば手袋)の装着感との関連について、鋭意検討を行い、得られるディップ成形体の、1Hz、25℃における引張貯蔵弾性率が1MPa以上10MPa未満であれば、柔軟に優れ、長時間装着しても疲労感が出にくいこと見出した。そして、さらに、当該条件を満たすディップ成形体を得るために必要な条件を見いだすべく検討を重ね、ラテックスを構成するクロロスルホン化ポリオレフィンの構造や、あるいは、ディップ成形用ラテックス組成物の配合を調整することにより、前記物性(引張貯蔵弾性率)が満たされるディップ成形体を得られる可能性を見いだした。そして、特に、クロロスルホン化ポリオレフィン中の塩素含有量を特定の範囲にしたり、特定の可塑剤を配合したディップ成形用ラテックス組成物を使用したりすることにより、前記物性を満たしうるディップ成形体が得られうることを見いだした。
【0008】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスをディップ成型して製造されるディップ成形体であって、
厚みが0.3mm以上であり、
25℃、1Hzにおける引張貯蔵弾性率が1~10MPaである、
ディップ成形体。
項2.
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスを構成するクロロスルホン化ポリオレフィン中の塩素含有量が30~40質量%である項1に記載のディップ成形体。
項3.
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックス中のクロロスルホン化ポリオレフィン100質量部に対し、可塑剤を5~20質量部含む、項1又は2に記載のディップ成形体。
項4.
前記可塑剤が、クロロスルホン化ポリオレフィンの架橋が可能な反応性基を有する反応性可塑剤(例えば、ヒマシ油、アマニ油、大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸等の動植物油系可塑剤;液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴム、液状エチレン-プロピレン-ジエンゴム、液状アクリルゴム等の液状ゴム系可塑剤;等)である、項3に記載のディップ成形体。
項5.
クロロスルホン化ポリオレフィンがクロロスルホン化ポリエチレンである、項1~4のいずれかに記載のディップ成形体。
項6.
40℃、1Hzにおける引張貯蔵弾性率が0.5~5MPaである、項1~5のいずれかに記載のディップ成型体。
項7.
成形体が手袋である、項1~6のいずれかに記載のディップ成形体。
項8.
成形体がサックである、項1~6のいずれかに記載のディップ成形体。
【発明の効果】
【0009】
柔軟性があり、長時間にわたり装着使用しても疲労感の少なく、且つ保護性にも優れた、クロロスルホン化ポリオレフィン成形体(特に手袋)を提供することができる。こにより、当該成形体を装着する作業者の負担(特に手指の負担)を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、特定のクロロスルホン化ポリオレフィンラテックスのディップ成形体や、当該ディップ成形体を調製するためのクロロスルホン化ポリオレフィンラテックス(ディップ成形用組成物)等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0011】
本開示に包含されるディップ成形体は、クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスをディップ成型して製造されるディップ成形体であって、厚みが0.3mm以上であり、25℃、1Hzにおける引張貯蔵弾性率が1~10MPaである、ディップ成形体である。当該ディップ成形体を、本開示のディップ成形体ということがある。
【0012】
本開示のディップ成形体の、25℃、1Hzにおける引張貯蔵弾性率は前記の通り1~10MPaである。当該範囲の上限又は下限は例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、又は9.9であってもよい。例えば当該範囲は、2~8MPaがより好ましく、2.5~7MPaがさらに好ましい。10MPa以下であることにより、手袋やサックとして使用した際に突っ張り感が低減され、長時間装着した際に疲労感をより感じづらくなり、好ましい。また、1MPa以上であることにより、成形体としての形状をより保持しやすくなり、好ましい。
【0013】
当該引張貯蔵弾性率は、25℃、1Hzにおいて動的熱機械分析を行うことで測定される値である。当該測定は、動的熱機械分析装置(例えば、T.Aインスツルメント社製動的粘弾性測定装置RSA-G2)を用いて行うことができる。より詳細には、短冊状の試験片(長さ3cm、幅0.5cm)に温度を変えながら時間によって振動する歪みまたは応力を与えて、それによって発生する応力または歪みを測定することにより測定することができる。本開示においては、以下の条件で測定する。
・測定モード:引張モード
・温度範囲:-70℃~120℃
・昇温速度:5℃/分
・測定周波数:1Hz
【0014】
また本開示のディップ成形体は、40℃、1Hzにおける引張貯蔵弾性率が0.5~5MPaであることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば、0.6、0.7、0.8、0.9、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、又は4.9であってもよい。例えば当該範囲は、0.8~4MPaであることが好ましく、1~4MPaであることがより好ましい。
【0015】
25℃、1Hzでの引張貯蔵弾性率、又は、40℃、1Hzでの引張貯蔵弾性率は、使用するクロロスルホン化ポリオレフィンラテックスを構成するクロロスルホン化ポリオレフィンの構造や分子量、クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスを含むディップ成形用組成物に含まれる添加剤の種類、添加量により適宜調整することができる。例えば、使用するクロロスルホン化ポリオレフィンが結晶性の高い構造のもの(例えば、塩素の含有量が少ないもの)であると貯蔵弾性率は高くなる傾向がある。また、ディップ成型用組成物に含まれる添加剤のうち、不溶性固体の添加剤の量が多くなると貯蔵弾性率は高くなる傾向があり、液体の添加剤の量が多くなると、貯蔵弾性率は低くなる傾向がある。
【0016】
本開示のディップ成形体は、上記の通り、厚みが0.3mm以上であり、0.3~1mmであることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、又は0.95mmであってもよい。例えば当該範囲は0.35~0.8mmがより好ましい。
【0017】
クロロスルホン化ポリオレフィンは、ポリオレフィンを塩素化及びクロロスルホン化して得ることができる。ポリオレフィンとしては、α-オレフィンの重合体若しくは共重合体や、α-オレフィンとその他の重合可能な成分との共重合体等が挙げられる。
【0018】
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。その他の重合可能な成分としては、イソプレン、1,3-ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン等の鎖状ジエン;1,4-シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン等の環状ジエン;酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のビニル化合物等が挙げられる。
【0019】
クロロスルホン化ポリオレフィンとしては、クロロスルホン化α-オレフィン重合体が好ましい。クロロスルホン化α-オレフィン重合体において、α-オレフィンは1種単独で又は2種以上用いられ得る。2種若しくはそれ以上α-オレフィンが用いられる場合、1種はエチレンであることが好ましい。
【0020】
クロロスルホン化ポリオレフィンとしては、より具体的には、例えば、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロスルホン化エチレン-α-オレフィン共重合体、クロロスルホン化α-オレフィン重合体等が挙げられる。なお、クロロスルホン化エチレン-α-オレフィン共重合体、クロロスルホン化α-オレフィン重合体における「α-オレフィン」はエチレン以外のα-オレフィンを示す。ここでのエチレン以外のα-オレフィンとしては、例えばプロピレンが好ましい。つまり、クロロスルホン化エチレン-α-オレフィン共重合体としては例えばクロロスルホン化エチレンプロピレン共重合体が好ましく挙げられ、また、クロロスルホン化α-オレフィン重合体としては例えばクロロスルホン化プロピレン重合体が好ましく挙げられる。
【0021】
クロロスルホン化ポリオレフィンは1種単独で又は2種類以上を併用してもよい。
【0022】
また、クロロスルホン化ポリオレフィン中に含まれる硫黄含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましい。また、2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。また、0.5~2.0質量%が好ましく、0.8~1.5質量%であることがより好ましい。
【0023】
本開示のクロロスルホン化ポリオレフィン中に含まれる塩素含有量は特に制限するものではないが、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。また、10~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。なお、下述する条件(i)を満たすクロロスルホン化ポリオレフィンラテックスを調製する場合には、さらに条件(i)の塩素含有量を満たすことがより好ましい。
【0024】
クロロスルホン化ポリオレフィンの硫黄含有量および塩素含有量は、酸素フラスコ燃焼法により測定することができる。
【0025】
ポリオレフィンを塩素化及びクロロスルホン化する方法としては、ポリオレフィンを有機溶媒に溶解させて均一系で行う溶液法、ポリオレフィンを溶媒に懸濁させて反応を行う懸濁法、ポリオレフィンを溶融した状態で反応を行う溶融法、ポリオレフィンを気相に浮遊させて反応を行なう気相法等が挙げられる。なかでも均一に塩素化及びクロロスルホン化を行う観点から、溶液法が好ましい。用いられる塩素化剤及びクロロスルホン化剤としては、塩素ガスと亜硫酸ガスの併用、塩素ガスと塩化スルフリルとの併用、塩化スルフリル単独等が挙げられる。塩素化剤及びクロロスルホン化剤とラジカル発生剤、必要に応じてピリジン等の助触媒を用いることにより、クロロスルホン化反応を行うことができる。
【0026】
クロロスルホン化ポリオレフィンは、市販されているものを使用してもよい。市販品の例としては、東ソー株式会社の商品名「TOSO-CSM」、「extos」等が挙げられる。
【0027】
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスは、クロロスルホン化ポリオレフィン、水性分散媒、及び乳化剤を含む。
【0028】
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスの製造方法としては、前記クロロスルホン化ポリオレフィンを溶融させ乳化剤を含む水中に分散させる方法や、前記クロロスルホン化ポリオレフィンを有機溶媒に溶解させ、乳化剤を含む水に分散させ、その後有機溶媒を除去する方法等が挙げられる。クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスの粒子径を制御しやすいという観点からは、後者の方法が好ましい。
【0029】
有機溶媒を用いて水中に分散させる方法としては、例えば、有機溶媒に溶解したクロロスルホン化ポリオレフィンに水を加えて油中水滴(W/O型)エマルションを形成させ、引き続き水を加えながら水中油滴(O/W型)エマルションに転相させる転相乳化法、有機溶媒に溶解したクロロスルホン化ポリオレフィンを、乳化装置を用い、乳化剤の存在下で水中に機械的に分散させる強制乳化法等が挙げられる。これらの方法は単独でも、組み合わせて用いてもよい。
【0030】
前記有機溶媒としては、クロロスルホン化ポリオレフィンを溶解可能、かつ、水と混和しないものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等の塩素系炭化水素系溶媒;1-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上のものが併用されてもよい。
【0031】
有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、クロロスルホン化ポリオレフィンの濃度が5~25質量%になるように設定するのが好ましく、8~20質量%になるよう設定するのがより好ましい。
【0032】
また、乳化剤を用いる場合、乳化剤としては、特に限定されないが、アニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤が好ましく、アニオン系乳化剤が特に好ましい。
【0033】
前記アニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ロジン酸塩および脂肪酸塩等が挙げられる。なかでもラテックスの安定性に優れるという観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩が好ましく、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシプロピレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
乳化剤に脂肪酸塩を用いる場合、前記の有機溶媒にクロロスルホン化ポリオレフィンを溶解させた溶液に脂肪酸を併せて溶解しておき、この有機溶媒溶液と、中和剤を溶解した水溶液を混合して分散してもよい。脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸等が挙げられ、中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アルカノールアミン、アルキルアミン等が挙げられる。
【0035】
前記ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシルエチレン誘導体、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、プロピレングリコールエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
【0036】
前記乳化剤は単独で使用してもよいし、2種以上のものを混合して使用してもよい。乳化剤の添加量は特に限定されないが、クロロスルホン化ポリオレフィン100質量部に対して、0.1~15質量部が好ましく、0.5~12質量部がさらに好ましく、1~10質量部が特に好ましい。
【0037】
乳化装置としては公知の物を使用でき、例えば、パドルミキサー、プラネタリーミキサ―、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパーミキサー等を使用できる。乳化装置はバッチ式であっても、連続式であってもよい。
【0038】
乳化時の温度は用いる有機溶剤の種類に応じて適宜設定でき、通常は5~70℃程度である。
【0039】
前記の方法で得られた乳化液から有機溶媒を除去するには、常圧、減圧又は加圧下で蒸留して除去すればよい。この時、必要に応じて同時に水を除去してラテックスの濃度を調整することができる。この有機溶媒の除去操作において、乳化剤に起因する発泡を抑制するために消泡剤を用いてもよい。消泡剤としては、ミネラルオイル系消泡剤、シリコーン系消泡剤、アセチレン系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤等が挙げられる。中でもアセチレン系消泡剤が好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。消泡剤の使用量は、乳化剤の使用量にもよるが、クロロスルホン化ポリオレフィン100質量部に対して100~2000ppmwtが好ましい。消泡剤は除去操作の前に乳化液に添加してもよいし、除去操作中に適宜添加してもよい。添加する方法としては、一括で添加する方法、滴下する方法、噴霧する方法等を用いることができる。
【0040】
有機溶媒の除去後、さらに濃度を調整するために水を除去する場合は、蒸留、遠心分離、膜分離、ろ過などの操作により除去することができる。
【0041】
ラテックス組成物に含まれるクロロスルホン化ポリオレフィンの粒子径は、特に限定されないが、レーザー回折式粒度分布計で測定される体積基準の中位粒子径が0.1~10μmが好ましく、0.3~5μmがより好ましく、0.5~2μmが特に好ましい。粒子径がこの範囲であると、安定性に優れるラテックスが得られやすくなる。当該粒子径は、前記有機溶媒、乳化剤の種類や量、水の使用量や、乳化装置の運転条件により調整することが出来る。
【0042】
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスは、市販されているものを使用してもよい。市販品の例としては、住友精化株式会社の商品名「セポレックスCSM-N」等が挙げられる。
【0043】
なお、ディップ成形用組成物に用いられるラテックスとしては、効果を損なわない範囲において、前記クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスに、さらに、天然ゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、ポリイソプレンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、水素化スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリルゴムラテックス、エチレン-プロピレン-ジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ブチルゴムラテックス、塩素化ポリオレフィンゴムラテックス、フッ素ゴムラテックス、エピクロロヒドリンゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス等を混合して用いてもよい。
【0044】
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスの安定性を高めるために、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース等の分散安定剤や、ジブチルヒドロキシトルエン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン等剤、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の安定剤等の添加剤を添加してもよい。このような添加剤は、調製後のクロロスルホン化ポリオレフィンラテックスへ添加してもよいし、添加剤の種類によっては、クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスの調製時において、乳化時に用いる有機溶媒溶液または水に添加しておいてもよい。なお、添加剤は、通常、個別のまたは混合物の水溶液または水分散液として添加されることが好ましい。添加剤を添加する場合、クロロスルホン化ポリオレフィン100質量部に対して、合計で0.1~10質量部が好ましい。
【0045】
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスをディップ成形用組成物として用いるにあたっては、さらに添加剤が含まれることが好ましい。添加剤としては、レオロジー調整剤、老化防止剤、消泡剤、pH調整剤、キレート剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、受酸剤、成膜助剤、可塑剤、充填剤、顔料、ゲル化剤等、公知の添加剤が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
レオロジー調整剤としては、セルロース、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、グアガム、キサンタンガム等の多糖類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、架橋ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン等の水溶性ビニルポリマー類、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト等の粘土鉱物が挙げられる。
【0047】
老化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン等のフェノール系老化防止剤、N-フェニル-1-ナフチルアミン、ジ(4-オクチルフェニル)アミン等のアミン系老化防止剤、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト等のリン系老化防止剤、チオジプロピオン酸ジラウリル、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等の硫黄系老化防止剤、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
消泡剤としては、油脂系消泡剤、ミネラルオイル系消泡剤、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酢酸等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ビス(アミノエチル)グリコールエーテル-N,N,N’,N’-四酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
加硫剤としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄等の硫黄、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等の有機過酸化物、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド等のマレイミド化合物、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム等のキノイド化合物、酸化マグネシウム、酸化鉛等の金属化合物、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール化合物が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
加硫促進剤としては、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジフェニルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、トリメチルチオ尿素、N,N'-ジエチルチオ尿素、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
加硫促進助剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
受酸剤としては、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム等の金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、ハイドロタルサイト等の粘土鉱物、フェニルグリシジルエーテル、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、ソルビトールポリグリシジルエーテル、エポキシ化ポリブタジエン、ポリグリシジルメタクリレート等のエポキシ化合物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
成膜助剤としては、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノiso-ブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノiso-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
可塑剤としては、ヒマシ油、アマニ油、大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の動植物油系可塑剤;ポリα-オレフィン(例えばポリブタジエン)およびその水素化物、イソブテンオリゴマーおよびその水素化物、ポリイソブチレンおよびその水素化物等の合成油系可塑剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等の鉱油系可塑剤;液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴム、液状エチレン-プロピレン-ジエンゴム、液状アクリルゴム等の液状ゴム系可塑剤;フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、セバシン酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジオクチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、安息香酸ベンジル、安息香酸ドデシル、ポリエステルポリオール等のエステル系可塑剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等のエーテル系可塑剤等が挙げられる。なかでもブリードアウトを抑制する観点から、反応性基(クロロスルホン化ポリオレフィンの架橋が可能な反応性基、具体的には、例えば、エポキシ基やオレフィン基)を有する反応性可塑剤が好ましく、エポキシ化動植物油系可塑剤、液状ゴム系可塑剤が特に好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
充填剤としては、炭素繊維、セルロース繊維、カーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0057】
顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化クロム、紺青、アンバー、ニッケルチタンイエロー、ビリジアン、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、モリブデンオレンジ、クロムイエロー、アントラキノン、キナクドリン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゲル化剤としては、アルギン酸ナトリウム、ペクチン(LMペクチン、HMペクチン)、ジェランガム(LAジェランガム、HAジェランガム)、アラビアガム、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、トラガカントゴム、グルコマンナン、トレメルガム、フコイダン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ラムザンガム、ダイユータンガム、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
本開示のディップ成形用組成物に含まれる添加剤の量としては特に限定はされないが、ラテックス組成物中の固形分(すなわちクロロスルホン化ポリオレフィン)100質量部に対し、5~50質量部が好ましいく、5~30質量部がより好ましい。
【0059】
本開示のディップ成形体用組成物には、添加剤として可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤の添加量としては、ラテックス組成物中の固形分(すなわち主としてクロロスルホン化ポリオレフィン)100質量部に対し、5~20質量部が好ましく、7~18質量部が特に好ましい。なお、下述する条件(ii)を満たすクロロスルホン化ポリオレフィンラテックスを調製する場合には、さらに条件(ii)を満たすことがより好ましい。
【0060】
本開示のディップ成形体を調製できるクロロスルホン化ポリオレフィンラテックス(ディップ成形体調製用組成物)は、少なくとも以下の条件(i)及び条件(ii)のいずれか一方を満たし、好ましくは両方を満たす。これらの条件のいずれか(好ましくは両方)を満たすクロロスルホン化ポリオレフィンラテックスを用いることにより、本開示のディップ成形体を特に好ましく調製することができる。
(i)クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスを構成するクロロスルホン化ポリオレフィン中の塩素含有量が30~40質量%である。
(ii)クロロスルホン化ポリオレフィン100質量部に対し可塑剤を5~20質量部含む。
【0061】
条件(i)において、クロロスルホン化ポリオレフィン中の塩素含有量(30~40質量%)の上限又は下限は例えば31、32、33、34、35、36、37、38、又は39質量%であってもよい。
【0062】
条件(ii)において、クロロスルホン化ポリオレフィン100質量部に対する可塑剤量(5~20質量部)の上限又は下限は例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19質量部であってもよい。
【0063】
なお、クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスが条件(ii)を満たす場合、条件(i)を満たさなくても、本開示のディップ成形体を特に好ましく調製することができる。このため、特に限定はされないが、条件(ii)を満たす場合、クロロスルホン化ポリオレフィン中の塩素含有量は、30質量%未満又は40質量%より大きくてもよい。例えば、10質量%以上30質量%未満であってもよく、10~29質量%であってもよい。当該範囲の上限又は下限は例えば11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、又は28質量%であってもよい。例えば当該範囲は15質量%以上30質量%未満であってもよく、また例えば15~28質量%であってもよい。また例えば、40質量%より大きく60質量%以下であってもよく、41~60質量%であってもよい。当該範囲の上限又は下限は例えば42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、又は59質量%であってもよい。例えば当該範囲は40質量%より大きく55質量%以下であってもよく、また例えば41~55質量%であってもよい。
【0064】
また、条件(i)及び(ii)の両方を満たすクロロスルホン化ポリオレフィンラテックス(ディップ成形体調製用組成物)から調製されるディップ成形体は、特に柔軟性に優れ、また、長時間にわたり装着使用しても疲労感の少なく、且つ保護性にも優れる。
【0065】
また、本開示のラテックスをディップ成形用組成物として用いる場合には、効果を損なわない範囲で、他のゴムラテックスを含んでいてもよい。このような他のラテックスとしては、例えば、天然ゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ブチルゴムラテックス、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリルゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス、フッ素ゴムラテックス、エピクロロヒドリンゴムラテックス、オレフィンゴムラテックス等が挙げられる。これらの各種ゴムラテックスを本開示のラテックスと組み合わせてディップ成形用組成物として用いる場合における含有量は、その他のゴムの含有量がクロロスルホン化ポリオレフィンの含有量よりも少ないことが好ましく、例えばクロロスルホン化ポリオレフィンの含有量100質量部に対して50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下、若しくは5質量部以下であることが好ましい。
【0066】
ディップ成形体調製用組成物として好ましいクロロスルホン化ポリオレフィンラテックスの調製方法は、特に限定されず、ボールミル、ビーズミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、前記クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスに各種の添加剤を混合する方法や、予め分散機を用いて所望の添加剤の水性分散液を調製した後、該水性分散液とクロロスルホン化ポリオレフィンラテックスとを混合する方法、クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスに一部の添加剤を混合した後、その他の添加剤の水性分散液と混合する方法等が挙げられる。
【0067】
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスのpHは、用いる乳化剤や添加剤の種類、量により異なるため一概には言えないが、凝固をしやすくする観点から、pH5以上であることが好ましく、pH7~12の範囲であることがより好ましい。
【0068】
また、クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスのクロロスルホン化ポリオレフィン濃度は、20~60質量%であることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、又は59質量%であってもよい。例えば当該範囲は25~50質量%がより好ましい。
【0069】
クロロスルホン化ポリオレフィンラテックスは、ディップ成形に供する前に、熟成(前加硫ともいう)させてもよい。熟成時間は、添加剤の種類や熟成温度にもよるため一概には決められないが、1~7日間が好ましく、1~3日間がより好ましい。また、熟成温度は、10~50℃が好ましく、20~40℃がより好ましい。
【0070】
熟成した後は、ディップ成形に供されるまで、30℃以下の温度で貯蔵することが好ましい。30℃よりも高温で貯蔵すると、さらに熟成が進行し、得られるディップ成形体の機械強度が低下する恐れがある。
【0071】
ディップ成形体は、上記クロロスルホン化ポリオレフィンラテックス(ディップ成形体調製用組成物)をディップ成形して得られる。
【0072】
ディップ成形に用いられる型は、セラミックや金属、ガラス、プラスチック等で一体に形成した、所望する立体形状に対応した型を使用できる。型の表面は、ディップ成形体の目的に応じて、梨地面に仕上げたり、繊維や別種のゴム皮膜等、別の素材を備えたりしていてもよい。また、ディップ成形用組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。
【0073】
型をディップ成形用組成物に浸漬する前、または、型をディップ成形用組成物から引き上げた後、ゴム成分を凝集するために凝固剤を用いることが好ましい。凝固剤の使用方法としては、ディップ成形用組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液(以下凝固液ともいう)に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法や、ディップ成形用組成物を沈着させた型を凝固液に浸漬する方法等が挙げられる。厚みムラの少ないディップ成形体が得られるという観点から、ディップ成形用組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法が好ましい。
【0074】
凝固剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等の金属ハロゲン化物;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム等の金属硝酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸アルミニウム等金属酢酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の金属硫酸塩等の水溶性金属塩が挙げられる。なかでも、凝固力が高いという観点から、多価金属イオンを生成する多価金属塩が好ましく、水溶性多価金属塩がより好ましい。ここでの多価金属としては、アルカリ土類金属が好ましく、カルシウム、バリウム、マグネシウムがより好ましく、カルシウムが中でも好ましい。また、凝固剤としては、水への溶解度が高いという観点から、塩化カルシウムや硝酸カルシウムが特に好ましい。これらの凝固剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
凝固剤は、水溶液の状態で使用することが好ましい。この水溶液は、さらにメチルアルコール、エチルアルコール等の水溶性有機溶媒やノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。凝固液の濃度としては、特に限定はされないが、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~35質量%が特に好ましい。凝固液への成形型の浸漬時間としては、特に限定されないが、通常5~300秒が好ましく、10~100秒がより好ましい。
【0076】
凝固液に成形型を浸漬して表面に凝固液を付着させた後、凝固液の溶媒を乾燥により除去してもよい。乾燥温度としては、使用する溶媒や塩の種類に応じて適宜設定することができ、60~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。また、乾燥時間は特に限定されないが、1~600秒が好ましく、5~300秒がより好ましい。成形型の表面の凝固液を乾燥させることにより、成形型表面に均一に塩が付着した状態を作りやすくなる。
【0077】
成形型をクロロスルホン化ポリオレフィンラテックス(ディップ成形用組成物)に浸漬する時間は、厚みが0.3mm以上となるよう適宜設定すればよいが、例えば5~600秒が好ましく、10~300秒がより好ましい。
【0078】
成形型をディップ成形用組成物から引き上げた後、通常、加熱して型表面に形成されたゴム皮膜を乾燥させる。乾燥方法としては、特に限定されず、熱風加熱装置、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置、高周波加熱装置等を用いて乾燥することが出来る。この際における乾燥温度は、特に限定されないが、50~160℃が好ましく、60~140℃がより好ましく、70~120℃が特に好ましい。また、乾燥時間は、特に限定されないが、1~120分が好ましく、10~100分がより好ましく、20~60分が特に好ましい。
【0079】
また、必要に応じてさらに加熱して、型表面に形成されたゴム皮膜を加硫してもよい。加硫時の加熱条件は、特に限定されないが、60~200℃が好ましく、80~180℃がより好ましく、100~160℃が特に好ましい。加熱温度をこの範囲にすることにより、適度な加硫速度とするとともに、過剰な加熱によるゴム成分の劣化を抑制することが出来る。加硫のための加熱時間は、加熱温度に応じて適宜選択すればよく、通常、5~120分である。加熱の方法は、例えば前記の加熱方法と同様の方法を用いることができる。
【0080】
また、ディップ成形用組成物を沈着させた型を加熱する前あるいは加熱した後に、水溶性不純物(例えば、余剰の乳化剤や界面活性剤、凝固剤、未凝固のラテックス等)を除去するために、型を水または温水で洗浄することが好ましい。用いる水または温水の温度としては20~80℃が好ましく、30℃~70℃がより好ましい。洗浄時間は、0.5~60分程度が好ましい。
【0081】
乾燥後(及び必要に応じて更に加硫した後)のディップ成形体は、成形型から脱着される。脱着方法としては、手で型から剥がす方法、剥離ローラーを用い型から剥がす方法、水圧や圧縮空気圧により剥がす方法等が挙げられる。ディップ成形体は、型から脱着した後、さらに水洗をしてもよい。さらに必要に応じて、ディップ成形体同士の接触面における密着を防止し、着脱の際の滑りをよくするために、タルク、炭酸カルシウム等の無機微粒子またはコーンスターチ等の有機微粒子を表面に塗布したり、微粒子を含有するエラストマー層を表面にさらに形成したり、表面層を塩素化処理したりしてもよい。
【0082】
本開示のディップ成形体は、柔軟性に優れ、長時間装着しても疲労感が出にくい。そのため、本開示のディップ成形体は、特に手指に適用される物(例えば手袋やサック)として好適に用いられる。
【0083】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件の任意の組み合わせを全て包含する。
【0084】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0085】
以下に実施例および比較例を挙げ、本開示を具体的に説明するが、本開示は、これら実施例等によってなんら限定されるものではない。
【0086】
<評価方法>
各製造例、実施例および比較例に関し、以下の方法で評価した。
(ラテックスの固形分濃度)
ラテックスを2g採取し、120℃で1時間乾燥して水分を除去した後に残渣の質量を測定し、固形分(クロロスルホン化ポリオレフィン)量を測定した。
(ラテックスの中位粒子径)
レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所の商品名「SALD-2000J」)を用い、ラテックスの体積基準の中位粒子径を測定した。なお、ここでの粒子径は、直径1μmの球と同じ回折、散乱光のパターンを示す被測定粒子は、その形状に関わらず粒子径が1μmであるものと見なして算出した値である。
(ディップ成形体の厚み)
ディップ成形体の袋状(サック状)になっている端部の先端から1cmを切断し、円筒状とした。この円筒状になったディップ成形体を長手方向に切り開き、長方形にした(約6cm×約4.7cm)。得られた長方形の長手方向におおよそ3分割したときの上部、中部、下部の3か所でそれぞれ厚みを測定して、全体の平均をとり、それを成形体の厚みとした。
(ディップ成形体の引張貯蔵弾性率)
得られたディップ成形体から長さ3cm、幅0.5cmの短冊状の試験片を切り出し、TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置RSA-G2を用い、引張モード、測定温度を-70℃~120℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzで測定した際の、25℃における引張貯蔵弾性率及び40℃における引張貯蔵弾性率を測定した。
(装着感の評価)
得られたサック状のディップ成形体を指に装着し、装着した際のべたつきや指の曲げ伸ばしをした際の突っ張り感を評価した。また、指の曲げ伸ばしを100回連続で行い、10回ごとに疲労感の有無を評価した。評価は4人で行い、以下の基準で点数付けを行い、その平均値をそれぞれの項目の評価結果とした。
【0087】
【表1】
【0088】
それぞれの数値が高いほど、柔軟性に優れ、疲労感を感じにくいものであると評価できる。
【0089】
<製造例1>
内容積500mLのセパラブルフラスコに塩素含有量が30質量%のクロロスルホン化ポリエチレン45g、トルエン255gおよびオレイン酸0.45gを仕込み、85℃で4時間撹拌して均一に溶解させ、ゴム溶液を調整した。別途、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(日油株式会社の商品名「トラックスET-314」)7.5gと水酸化カリウム0.188gを170gのイオン交換水に溶解し、乳化剤水溶液を調製した。
ゴム溶液に乳化剤水溶液を全量添加し、ホモミキサー(プライミクス株式会社の商品名T.K.ロボミックス)を用いて10分間撹拌混合することで乳濁液を得た。撹拌混合時の回転数および温度は、それぞれ12,000rpmおよび40℃に設定した。得られた乳濁液を40~90kPaの減圧下で40~70℃に加熱することでトルエンを留去した後、限外ろ過機(限外ろ過膜:平膜式、分画分子量200,000、材質ポリスルホン)を用いて固形分(クロロスルホン化ポリエチレン)濃度が40%になるように濃縮し、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス(中位粒子径1.4μm)を得た。
【0090】
<製造例2>
クロロスルホン化ポリエチレンを、塩素含有量が35質量%のクロロスルホン化ポリエチレンにした以外は、製造例1と同様の操作を行い、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス(中位粒子径1.6μm)を得た。
【0091】
<製造例3>
クロロスルホン化ポリエチレンを、塩素含有量が40質量%のクロロスルホン化ポリエチレンにした以外は、製造例1と同様の操作を行い、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス(中位粒子径1.7μm)を得た。
【0092】
<製造例4>
クロロスルホン化ポリエチレンを、塩素含有量が23質量%のクロロスルホン化ポリエチレンにした以外は、製造例1と同様の操作を行い、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス(中位粒子径0.9μm)を得た。
【0093】
<製造例5>
クロロスルホン化ポリエチレンを、塩素含有量が43質量%のクロロスルホン化ポリエチレンにした以外は、製造例1と同様の操作を行い、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス(中位粒子径2.1μm)を得た。
【0094】
<実施例1>
(ディップ成型用組成物の調整)
製造例1で得られたクロロスルホン化ポリエチレンラテックスに、受酸剤として15質量部のエポキシ化ポリブタジエン(日本曹達社製、商品名「NISSO―PB JP100」)を加え、ホモミキサー(プライミクス社製T.K.ロボミックス)を用いて、12000rpmで1時間混合した。そこに3質量部のペンタエリスリトール(富士フイルム和光純薬社製、試薬)、2質量部のジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーTRA」)を加え、ホモミキサーを用いて12000rpmで1時間混合した。そこに、0.5質量部の柑橘由来LMペクチン(柑橘由来LMペクチン(富士フイルム和光純薬製 試薬、エステル化度35)を加え、完全に溶解するまで攪拌し、ラテックス組成物を得た。
【0095】
なお、用いた各成分の質量部は、クロロスルホン化ポリエチレンラテックスに含まれるクロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対する値である。
【0096】
(ディップ成形体の製造)
セラミック型を35質量%の硝酸カルシウム水溶液に5秒浸漬し、その後、160℃の送風乾燥機で300秒乾燥させた。その後、74℃まで放冷した型を25℃に維持した前記ディップ成型用組成物に30秒浸漬し、その後、ディップ成型用組成物から引き上げた。セラミック型を100℃の送風乾燥機で20分乾燥させた後、40℃のお湯に5分浸漬し、水溶性不純物を除去した。お湯から引き上げたのち、セラミック型を100℃の送風乾燥機で10分乾燥させた後、さらに160℃で20分加熱し、加硫を行った。室温まで冷却後、セラミック型から皮膜を剥離し、浸漬成形体を得た。なお、用いたセラミック型は10cm×1.5cm(長さ×直径)の円柱状のセラミック型であり、最終的にサック状の成形体を得た。得られたディップ成形体の厚みは0.53mmであった。
【0097】
<実施例2>
製造例2で得られたクロロスルホン化ポリエチレンラテックスを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ディップ成形体を得た。
【0098】
<実施例3>
製造例3で得られたクロロスルホン化ポリエチレンラテックスを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ディップ成形体を得た。
【0099】
<比較例1>
製造例4で得られたクロロスルホン化ポリエチレンラテックスを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ディップ成形体を得た。
【0100】
<比較例2>
製造例5で得られたクロロスルホン化ポリエチレンラテックスを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ディップ成形体を得た。
【0101】
【表2】
【0102】
表2の通り、クロロスルホン化ポリオレフィン中の塩素含有量が適正範囲であれば、25℃における引張弾性率が低くなり、突っ張り感がなく、疲労を感じにくいディップ成形体が得られた。
【0103】
<実施例4>
製造例4で得られたクロロスルホン化ポリエチレンラテックスに、0.5質量部の柑橘由来LMペクチン(柑橘由来LMペクチン(富士フイルム和光純薬製 試薬、エステル化度35)を加え、完全に溶解するまで攪拌した後、アマニ油(関東化学製 試薬)を10質量部、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーTP」)を固形分換算で3質量部、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤社製、商品名「メチルプロピレントリグリコール」)10質量部を加え、さらに撹拌してディップ成型用組成物を得た。
【0104】
なお、用いた各成分の質量部は、クロロスルホン化ポリエチレンラテックスに含まれるクロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対する値である。
【0105】
(ディップ成形体の製造)
セラミック型を35質量%の硝酸カルシウム水溶液に5秒浸漬し、その後、160℃の送風乾燥機で300秒乾燥させた。その後、74℃まで放冷した型を25℃に維持した前記ディップ成型用組成物に30秒浸漬し、その後、ディップ成型用組成物から引き上げた。セラミック型を100℃の送風乾燥機で20分乾燥させた後、さらに160℃で20分加熱し、加硫を行った。室温まで冷却後、セラミック型から皮膜を剥離し、ディップ成形体を得た。なお、用いたセラミック型は10cm×1.5cm(長さ×直径)の円柱状のセラミック型であり、最終的にサック状の成形体を得た。
【0106】
<実施例5~12、比較例3~6>
アマニ油10質量部に変えて、表3の通りに配合を変え、実施例4と同様の操作を行い、ディップ成形体を得た。なお、表3のphrは、クロロスルホン化ポリエチレンラテックスに含まれるクロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対する、用いた各可塑剤の質量部値を示す。
【0107】
<実施例13>
製造例2で得られたクロロスルホン化ポリエチレンラテックスを使用し、アマニ油10質量部に変えて、エポキシ化大豆油10質量部を用いたい以外は、実施例4と同様の操作を行い、ディップ成形体を得た。
【0108】
【表3】
【0109】
表3の通り、可塑剤を添加していない場合に評価が不良なラテックスを使用しても、可塑剤を適量配合することにより柔軟になり、突っ張り感や疲労感を感じにくいディップ成形体を得ることができる。また、条件(i)(ii)の両方を満たすことにより、さらに柔軟性に優れたディップ成形体を得ることができる。