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特開2024-143279CO2吸収固定方法、及び打継ぎ工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143279
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】CO2吸収固定方法、及び打継ぎ工法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20241003BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20241003BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20241003BHJP
   E01C 7/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C04B28/02 ZAB
C04B40/02
B28B1/30
E01C7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055866
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】西山 沙友里
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
【テーマコード(参考)】
2D051
4G052
4G112
【Fターム(参考)】
2D051AC01
2D051AF01
2D051AF02
2D051EA01
2D051EA06
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
4G112PA02
4G112PE02
4G112PE05
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】効率的にCOの吸収固定を行うことができるCO吸収固定方法、及び打継ぎ工法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るCO吸収固定方法は、COを吸収固定させるCO吸収固定方法であって、下記工程(1)~(4)を有し、水硬性組成物が、セメントと、水と、を含み、水硬性組成物の水セメント比が40%以上60%以下である。
(1)水硬性組成物を用い、1mm以上100mm以下の厚さの第1吸収固定層を形成する工程
(2)第1吸収固定層を大気中に曝し第1吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
(3)水硬性組成物を用い、第1吸収固定層に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第2吸収固定層を形成する工程
(4)第2吸収固定層を大気中に曝し第2吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
COを吸収固定させるCO吸収固定方法であって、
下記工程(1)~(4)を有し、
水硬性組成物が、セメントと、水と、を含み、
水硬性組成物の水セメント比が40%以上60%以下である、CO吸収固定方法。
(1)水硬性組成物を用い、1mm以上100mm以下の厚さの第1吸収固定層を形成する工程
(2)第1吸収固定層を大気中に曝し第1吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
(3)水硬性組成物を用い、第1吸収固定層に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第2吸収固定層を形成する工程
(4)第2吸収固定層を大気中に曝し第2吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
【請求項2】
工程(2)において、第1吸収固定層を大気中に曝す期間が、1年以上15年以下である、請求項1に記載のCO吸収固定方法。
【請求項3】
工程(4)において、第2吸収固定層を大気中に曝す期間が、1年以上15年以下である、請求項1又は2に記載のCO吸収固定方法。
【請求項4】
さらに、下記工程(5)及び(6)を有する、請求項1又は2に記載のCO吸収固定方法。
(5)水硬性組成物を用い、第n-1吸収固定層(nは、3以上のいずれかの自然数であり、第n吸収固定層は、n層目の吸収固定層である。)に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第n吸収固定層を形成する工程
(6)第n吸収固定層を大気中に曝し第n吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
【請求項5】
さらに、下記工程(7)を有する、請求項4に記載のCO吸収固定方法。
(7)nの自然数を1ずつ上げて行き工程(5)及び工程(6)を少なくとも1回以上繰返し行う工程
【請求項6】
工程(1)において、第1吸収固定層が、既設コンクリートに重ねて形成される、請求項1又は2に記載のCO吸収固定方法。
【請求項7】
COを吸収固定させるコンクリート又はモルタルの打継ぎ工法であって
下記工程(1)~(4)を有し、
水硬性組成物が、セメントと、水と、を含み、
水硬性組成物の水セメント比が40%以上60%以下である、打継ぎ工法。
(1)水硬性組成物を用い、1mm以上100mm以下の厚さの第1吸収固定層を形成する工程
(2)第1吸収固定層を大気中に曝し第1吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
(3)水硬性組成物を用い、第1吸収固定層に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第2吸収固定層を形成する工程
(4)第2吸収固定層を大気中に曝し第2吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO吸収固定方法、及び打継ぎ工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、劣化したコンクリート舗装を補修する工法として、既存の舗装面の上に新たな表面層を舗設する打継ぎ(オーバーレイ)工法、既存の舗装の一部又は全部を取り除き新たな舗装を設ける打換え工法等が知られている。それら工法の中で、打継ぎ工法は、舗装面の摩耗、破損の補修だけでなく、空港等のエプロン部における不同沈下による補修にも採用されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、空港において、舗装が縦断方向の凹凸、くぼみ等で平坦性が低下している場合に、平坦性を改良するためにオーバーレイ工法により補修が行われることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】空港土木施設設計要領(舗装設計編) 国土交通省航空局 平成31年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンクリート又はモルタルの構造物では、大気中の二酸化炭素(CO)を吸収し、該構造物のアルカリ性を低下させる中性化(炭酸化)という現象が知られている。近年、カーボンニュートラル機運の上昇により、CO排出量の低減やCO吸収固定化を目指した技術が注目されている。そこで、コンクリート又はモルタルの構造物にCOが吸収固定化することを利用して、効率的にCOの吸収固定を行う方法が求められている。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、既設コンクリート上にCOを吸収固定させるCO吸収固定層を打継ぎすることで、効率的にCOの吸収固定を行うことができるCO吸収固定方法、及び打継ぎ工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るCO吸収固定方法は、COを吸収固定させるCO吸収固定方法であって、
下記工程(1)~(4)を有し、
水硬性組成物が、セメントと、水と、を含み、
水硬性組成物の水セメント比が40%以上60%以下である。
(1)水硬性組成物を用い、1mm以上100mm以下の厚さの第1吸収固定層を形成する工程
(2)第1吸収固定層を大気中に曝し第1吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
(3)水硬性組成物を用い、第1吸収固定層に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第2吸収固定層を形成する工程
(4)第2吸収固定層を大気中に曝し第2吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
【0008】
本発明に係るCO吸収固定方法は、斯かる構成により、COを吸収固定した第1吸収固定層に重ねて新たな第2吸収固定層を形成して、さらにCOを吸収固定させるので、効率的にCOの吸収固定を行うことができる。
【0009】
本発明に係るCO吸収固定方法は、工程(2)において、第1吸収固定層を大気中に曝す期間が、1年以上15年以下であってもよい。
【0010】
本発明に係るCO吸収固定方法は、斯かる構成により、第1吸収固定層が吸収固定するCOの量が多く、より効率的にCOの吸収固定を行うことができる。
【0011】
本発明に係るCO吸収固定方法は、工程(4)において、第2吸収固定層を大気中に曝す期間が、1年以上15年以下であってもよい。
【0012】
本発明に係るCO吸収固定方法は、斯かる構成により、第2吸収固定層が吸収固定するCOの量が多く、より効率的にCOの吸収固定を行うことができる。
【0013】
本発明に係るCO吸収固定方法は、さらに、下記工程(5)及び(6)を有してもよい。
(5)水硬性組成物を用い、第n-1吸収固定層(nは、3以上のいずれかの自然数であり、第n吸収固定層は、n層目の吸収固定層である。)に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第n吸収固定層を形成する工程
(6)第n吸収固定層を大気中に曝し第n吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
【0014】
本発明に係るCO吸収固定方法は、斯かる構成により、第n-1吸収固定層に重ねて第n吸収固定層を形成するので、より効率的なCOの吸収固定を行うことができる。
【0015】
本発明に係るCO吸収固定方法は、さらに、下記工程(7)を有してもよい。
(7)nの自然数を1ずつ上げて行き工程(5)及び工程(6)を少なくとも1回以上繰返し行う工程
【0016】
本発明に係るCO吸収固定方法は、斯かる構成により、吸収固定層を繰り返し形成するので、効率的なCOの吸収固定を継続的に行うことができる。
【0017】
本発明に係るCO吸収固定方法は、工程(1)において、第1吸収固定層が、既設コンクリートに重ねて形成されてもよい。
【0018】
本発明に係るCO吸収固定方法は、斯かる構成により、既設コンクリートがCOを吸収固定した後に、第1吸収固定層を形成するので、より効率的にCOの吸収固定を行うことができる。
【0019】
本発明に係る打継ぎ工法は、COを吸収固定させるコンクリート又はモルタルの打継ぎ工法であって
下記工程(1)~(4)を有し、
水硬性組成物が、セメントと、水と、を含み、
水硬性組成物の水セメント比が40%以上60%以下である。
(1)水硬性組成物を用い、1mm以上100mm以下の厚さの第1吸収固定層を形成する工程
(2)第1吸収固定層を大気中に曝し第1吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
(3)水硬性組成物を用い、第1吸収固定層に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第2吸収固定層を形成する工程
(4)第2吸収固定層を大気中に曝し第2吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
【0020】
本発明に係る打継ぎ方法は、斯かる構成により、COを吸収固定した第1吸収固定層に重ねて新たな第2吸収固定層を形成して、さらにCOを吸収固定させるので、効率的にCOの吸収固定を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、効率的にCOの吸収固定を行うことができるCO吸収固定方法、及び打継ぎ工法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態に係るCO吸収固定方法、及び打継ぎ工法について説明する。
【0023】
<CO吸収固定方法>
本実施形態に係るCO吸収固定方法は、COを吸収固定させるCO吸収固定方法であって、下記工程(1)~(4)を有し、水硬性組成物が、セメントと、水と、を含み、水硬性組成物の水セメント比が40%以上60%以下である。
(1)水硬性組成物を用い、1mm以上100mm以下の厚さの第1吸収固定層を形成する工程
(2)第1吸収固定層を大気中に曝し第1吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
(3)水硬性組成物を用い、第1吸収固定層に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第2吸収固定層を形成する工程
(4)第2吸収固定層を大気中に曝し第2吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
【0024】
本実施形態に係るCO吸収固定方法において、COを吸収固定する吸収固定層の形成に用いられる水硬性組成物は、セメントと、水とを含む。
【0025】
セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS R 5210:2019で規定される普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント;超速硬セメント、アルミナセメント等の公知のセメントを用いることができる。なお、セメントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。水には、コンクリート組成物の水和反応及び舗装コンクリートに悪影響を及ぼす有機物、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が含まれないか、含まれていても極めて微量であることが好ましい。水としては、品質の安定した水道水又は工業用水であることがより好ましい。
【0027】
また、水硬性組成物は、骨材を含んでもよい。骨材としては、細骨材及び/又は粗骨材を用いることができる。なお、細骨材とは、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85%以上通過する骨材のことをいい、粗骨材とは、5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材のことをいう(JIS A 0203:2019)。
【0028】
細骨材としては、例えば、JIS A 5308:2019附属書Aレディーミクストコンクリート用骨材で規定される川砂、陸砂、山砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然物由来の砂、高炉スラグ等が挙げられる。なお、細骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
粗骨材としては、例えば、JIS A 5308:2019附属書Aレディーミクストコンクリート用骨材で規定される川砂利、山砂利、海砂利等の天然骨材、砂岩、硬質石灰岩、玄武岩、安山岩等の砕石等の人工骨材、再生骨材等が挙げられる。また、珪石を粉砕、分級して製造された珪砂等を用いてもよい。なお、粗骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、水硬性組成物は、混和材を含んでもよい。混和材としては、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、セメントキルンダスト、高炉フューム、高炉水砕スラグ微粉末、高炉除冷スラグ微粉末、転炉スラグ微粉末、半水石膏、膨張材、石灰石微粉末、生石灰微粉末、ドロマイト微粉末等の無機質微粉末、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、活性白土、酸性白土、アロフェン、イモゴライト、シラス(火山灰)、シラスバルーン、カオリナイト、メタカオリン(焼成粘土)、合成ゼオライト、人造ゼオライト、人工ゼオライト、モルデナイト、クリノプチロライト等の無機物系フィラーが挙げられる。なお、混和材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、水硬性組成物は、混和剤を含んでもよい。混和剤としては、例えば、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、分離低減剤、凝結遅延剤(例えば、酒石酸等)、凝結促進剤(例えば、硫酸アルミニウム等)、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤等が挙げられる。なお、混和剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
水硬性組成物の水セメント比は、40%以上60%以下である。なお、水セメント比とは、セメントに対する水の質量百分率である。水セメント比としては、後述する吸収固定層のCO吸収固定量を向上させる観点から、40%以上であり、好ましくは45%以上である。また、水セメント比としては、吸収固定層の強度を向上させる観点から、60%以下であり、好ましくは55%以下である。
【0033】
工程(1)は、水硬性組成物を用い第1吸収固定層を形成する。第1吸収固定層は、混練された水硬性組成物を施工箇所に打設、塗布等を行い、硬化させることで形成される。また、第1吸収固定層を形成する際、セルフレベリング材を用いて、第1吸収固定層表面を整地してもよい。
【0034】
第1吸収固定層の厚さは、1mm以上100mm以下である。一般に、コンクリート又はモルタルの構造物において、大気に曝された表面から内側に向かってCOが吸収固定されることから、大気に曝した期間の初期では、単位時間当たりのCO吸収固定量は大きくなり、曝した期間が長くなるほど、単位時間当たりのCO吸収固定量は小さくなる。そのため、第1吸収固定層の厚さを大きくすると、吸収固定できるCO量は多くなるが、第1吸収固定層全体にCOを吸収固定させるには、大気に曝す期間が長期になってしまう。したがって、第1吸収固定層に吸収固定するCO量、大気に曝す期間等を考慮して、第1吸収固定層の厚さを1mm以上100mm以下とすることで、効率的にCOを第1吸収固定層に吸収固定できる。第1吸収固定層の厚さとしては、CO吸収固定の効率を向上させる観点から、好ましくは1mm以上50mm以下であり、より好ましくは1mm以上20mm以下である。
【0035】
第1吸収固定層の厚さは、第1吸収固定層の厚さ方向の断面において、第1吸収固定層が形成される箇所の上部から第1吸収固定層の上部までの距離とする。例えば、レーザー変位計を用いて第1吸収固定層の厚さを測定することができる。また、第1吸収固定層が形成される箇所の表面及び/または第1吸収固定層の表面が粗い場合、第1吸収固定層の厚さは、第1吸収固定層の厚さ方向の断面における第1吸収固定層が形成される箇所の粗さを均一化した平均線から第1吸収固定層の表面側の粗さを均一化した平均線までの距離をいう。なお、本明細書において、平均線は、単位長さあたりの凸となる部分の合計面積と凹となる部分の合計面積が同じになる線をいい、測定は表面粗さ計により行うことができる。
【0036】
第1吸収固定層を形成する箇所としては、水硬性組成物を打設、塗布等ができれば特に限定はない。例えば、第1吸収固定層を既設コンクリートに重ねて形成してもよい。既設コンクリートに第1吸収固定層を重ねることで、既設コンクリートに新たな表面層を形成できるので、既設コンクリートが劣化しているような場合には、既設コンクリートの補修も可能となる。
【0037】
工程(2)は、第1吸収固定層を大気中に曝し第1吸収固定層にCOを吸収固定させる。第1吸収固定層を大気中に曝す期間は、第1吸収固定層にCOを吸収固定できれば、特に限定はない。
【0038】
上述したようにコンクリート又はモルタルの構造物を大気に曝した際、大気に曝した期間に応じて、単位時間当たりのCO吸収固定量が変化する。そのため、単位時間当たりのCO吸収固定量が大きい期間に、第1吸収固定層を大気に曝すのが好ましい。第1吸収固定層を大気に曝す期間としては、CO吸収固定の効率を向上させる観点から、好ましくは1年以上15年以下であり、より好ましくは1年以上8年以下である。
【0039】
工程(3)は、水硬性組成物を用い、第1吸収固定層に重ねて、第2吸収固定層を形成する。第2吸収固定層は、混練された水硬性組成物を第1吸収固定層に打設、塗布等を行い、硬化させることで形成される。また、第2吸収固定層を形成する際、セルフレベリング材を用いて、第n吸収固定層表面を整地してもよい。
【0040】
第2吸収固定層は、第1吸収固定層に重ねて形成される。COが吸収固定された第1吸収固定層の上に新たな表面層となる第2吸収固定層が形成されるので、第2吸収固定層にCOを吸収固定させることができる。
【0041】
第2吸収固定層の厚さは、1mm以上100mm以下である。上述した第1吸収固定層と同様であり、第2吸収固定層の厚さとしては、CO吸収固定の効率を向上させる観点から、好ましくは1mm以上50mm以下であり、より好ましくは1mm以上20mm以下である。また、第2吸収固定層の厚さは、第1吸収固定層と同様であり、第2吸収固定層の厚さ方向の断面において、第1吸収固定層の上部から第2吸収固定層の上部までの距離とし、第1吸収固定層及び/又は第2吸収固定層の表面が粗い場合の厚さについても、第1吸収固定層と同様である。
【0042】
工程(4)は、第2吸収固定層を大気中に曝し第2吸収固定層にCOを吸収固定させる。第2吸収固定層を大気中に曝す期間は、第1吸収固定層と同様であり、第2吸収固定層にCOを吸収固定できれば、特に限定はない。第2吸収固定層を大気に曝す期間としては、CO吸収固定の効率を向上させる観点から、好ましくは1年以上15年以下であり、より好ましくは1年以上8年以下である。
【0043】
本実施形態に係るCO吸収固定方法は、COを吸収固定した第1吸収固定層に重ねて新たな第2吸収固定層を形成して、さらにCOを吸収固定させるので、効率的にCOの吸収固定を行うことができる。
【0044】
本実施形態に係るCO吸収固定方法は、さらに、下記工程(5)及び(6)を有してもよい。
(5)水硬性組成物を用い、第n-1吸収固定層(nは、3以上のいずれかの自然数であり、第n吸収固定層は、n層目の吸収固定層である。)に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第n吸収固定層を形成する工程
(6)第n吸収固定層を大気中に曝し第n吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
【0045】
工程(5)は、水硬性組成物を用い、第n-1吸収固定層に重ねて、第n吸収固定層を形成する。第n吸収固定層は、混練された水硬性組成物を第n-1吸収固定層に打設、塗布等を行い、硬化させることで形成される。また、第n吸収固定層を形成する際、セルフレベリング材を用いて、第n吸収固定層表面を整地してもよい。
【0046】
工程(5)における第n吸収固定層(nは、3以上のいずれかの自然数である。)は、第2吸収固定層以降に形成されるn層目の吸収固定層である。第n吸収固定層は、n-1層目に形成された第n-1吸収固定層に重ねて形成される。
【0047】
COが吸収固定された第n-1吸収固定層の上に新たな表面層となる第n吸収固定層が形成されるので、第n吸収固定層にCOを吸収固定させることができる。
【0048】
第n吸収固定層の厚さは、1mm以上100mm以下である。上述した第1吸収固定層と同様であり、第n吸収固定層の厚さとしては、CO吸収固定の効率を向上させる観点から、好ましくは1mm以上50mm以下であり、より好ましくは1mm以上20mm以下である。また、第n吸収固定層の厚さは、第1吸収固定層と同様であり、第n吸収固定層の厚さ方向の断面において、第n-1吸収固定層の上部から第n吸収固定層の上部までの距離とし、第n-1吸収固定層及び/又は第n吸収固定層の表面が粗い場合の厚さについても、第1吸収固定層と同様である。
【0049】
工程(6)は、第n吸収固定層を大気中に曝し第n吸収固定層にCOを吸収固定させる。第n吸収固定層を大気中に曝す期間は、第1吸収固定層と同様であり、第n吸収固定層にCOを吸収固定できれば、特に限定はない。第n吸収固定層を大気に曝す期間としては、CO吸収固定の効率を向上させる観点から、好ましくは1年以上15年以下であり、より好ましくは1年以上8年以下である。
【0050】
本実施形態に係るCO吸収固定方法は、工程(5)及び(6)を有することで、第n-1吸収固定層に重ねて第n吸収固定層を形成するので、より効率的なCOの吸収固定を行うことができる。
【0051】
本実施形態に係るCO吸収固定方法は、さらに、下記工程(7)を有してもよい。
(7)nの自然数を1ずつ上げて行き工程(5)及び工程(6)を少なくとも1回以上繰返し行う工程
【0052】
工程(7)は、nの自然数を1ずつ上げて行き工程(5)及び工程(6)を少なくとも1回以上繰返し行う。工程(5)及び工程(6)が繰り返し行われることで、COが吸収固定されたnの自然数が1つ上がった第n-1吸収固定層の上にさらに新たな表面層となる第n吸収固定層が形成され第n吸収固定層が大気に曝される。
【0053】
本実施形態に係るCO吸収固定方法は、工程(7)を有することで、効率的なCOの吸収固定を継続的に行うことができる。
【0054】
<打継ぎ工法>
本実施形態に係る打継ぎ工法は、COを吸収固定させるコンクリート又はモルタルの打継ぎ工法であって、下記工程(1)~(4)を有し、水硬性組成物が、セメントと、水と、を含み、水硬性組成物の水セメント比が40%以上60%以下である。
(1)水硬性組成物を用い、1mm以上100mm以下の厚さの第1吸収固定層を形成する工程
(2)第1吸収固定層を大気中に曝し第1吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
(3)水硬性組成物を用い、第1吸収固定層に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第2吸収固定層を形成する工程
(4)第2吸収固定層を大気中に曝し第2吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
なお、特に説明のない部分については、上述のCO吸収固定方法と同様である。
【0055】
本実施形態に係る打継ぎ工法は、上述のCO吸収固定方法と同様な工程でCOを吸収固定させるコンクリート又はモルタルの打継ぎを行う。したがって、本実施形態に係る打継ぎ工法は、COを吸収固定した第1吸収固定層に重ねて新たな第2吸収固定層を形成して、さらにCOを吸収固定させるので、効率的にCOの吸収固定を行うことができる。
【0056】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]COを吸収固定させるCO吸収固定方法であって、
下記工程(1)~(4)を有し、
水硬性組成物が、セメントと、水と、を含み、
水硬性組成物の水セメント比が40%以上60%以下である、CO吸収固定方法。
(1)水硬性組成物を用い、1mm以上100mm以下の厚さの第1吸収固定層を形成する工程
(2)第1吸収固定層を大気中に曝し第1吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
(3)水硬性組成物を用い、第1吸収固定層に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第2吸収固定層を形成する工程
(4)第2吸収固定層を大気中に曝し第2吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
[2]工程(2)において、第1吸収固定層を大気中に曝す期間が、1年以上15年以下である、上記[1]に記載のCO吸収固定方法。
[3]工程(4)において、第2吸収固定層を大気中に曝す期間が、1年以上15年以下である、上記[1]又は[2]に記載のCO吸収固定方法。
[4]さらに、下記工程(5)及び(6)を有する、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のCO吸収固定方法。
(5)水硬性組成物を用い、第n-1吸収固定層(nは、3以上のいずれかの自然数であり、第n吸収固定層は、n層目の吸収固定層である。)に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第n吸収固定層を形成する工程
(6)第n吸収固定層を大気中に曝し第n吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
[5]さらに、下記工程(7)を有する、上記[4]に記載のCO吸収固定方法。
(7)nの自然数を1ずつ上げて行き工程(5)及び工程(6)を少なくとも1回以上繰返し行う工程
[6]工程(1)において、第1吸収固定層が、既設コンクリートに重ねて形成される、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のCO吸収固定方法。
[7]COを吸収固定させるコンクリート又はモルタルの打継ぎ工法であって
下記工程(1)~(4)を有し、
水硬性組成物が、セメントと、水と、を含み、
水硬性組成物の水セメント比が40%以上60%以下である、打継ぎ工法。
(1)水硬性組成物を用い、1mm以上100mm以下の厚さの第1吸収固定層を形成する工程
(2)第1吸収固定層を大気中に曝し第1吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
(3)水硬性組成物を用い、第1吸収固定層に重ねて、1mm以上100mm以下の厚さの第2吸収固定層を形成する工程
(4)第2吸収固定層を大気中に曝し第2吸収固定層にCOを吸収固定させる工程
【実施例0057】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
(水硬性組成物の作製)
表1に、水硬性組成物1、2に含まれる各成分を示す。表1に示す各成分の詳細を以下に示す。
セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
細骨材:山砂(静岡県掛川市産)
【0059】
【表1】
【0060】
(COの吸収固定)
<実施例1>
COの吸収固定を以下の方法で行った。
[1]混練された水硬性組成物1を型枠(長さ400mm、幅100mm、高さ100mm)に打込み、長さ400mm、幅100mm、厚さ80mmの供試体を作製した。
[2]供試体をCO濃度5%の雰囲気中に28日間曝す第1促進中性化試験を行った。この時、供試体の上面のみを開放し、その他の面をアルミテープで密閉して、該上面のみからCOの吸収固定が行われるようにした。なお、第1促進中性化試験は、JIS A 1153:2012に規定される方法に準拠して行った。
[3]第1促進中性化試験後の供試体の一部をカットし、カットした供試体を用いて供試体が吸収固定したCO量を測定した。供試体が吸収固定したCO量の測定は、供試体の厚さ方向において上面から10mmをカットし、粉砕後、STA 2500(TG-DTA同時測定装置)(NETZSCH Japan製)を用いて熱重量-示差熱同時分析法により行った。結果を表2に示す。
[4]供試体の上面から高さ20mm位置に目印を設け、目印と同じ高さになるように混練された水硬性組成物1を打継ぎし、供試体の上面に厚さ20mmの水硬性組成物1からなる層を有する積層体を形成し、28日間気中養生した。
[5]積層体をCO濃度5%の雰囲気中に28日間曝す第2促進中性化試験を行った。この時、積層体の上面のみを開放し、その他の面をアルミテープで密閉して、該上面のみからCOの吸収固定が行われるようにした。なお、第2促進中性化試験は、上記第1促進中性化試験と同様の方法で行った。
[6]積層体の一部をカットし、カットした積層体を用いて積層体が吸収固定したCO量を測定した。CO量の測定は、積層体の厚さ方向において上面から10mmをカットして、粉砕したものを用い、上記と同様な方法で行った。結果を表2に示す。
【0061】
<比較例1>
[1]混練された水硬性組成物1を型枠(長さ400mm、幅100mm、高さ100mm)に打込み、長さ400mm、幅100mm、厚さ100mmの供試体を作製した。
[2]供試体をCO濃度5%の雰囲気中に28日間曝す第1促進中性化試験を行った。この時、供試体の上面のみを開放し、その他の面をアルミテープで密閉して、該上面のみからCOの吸収固定が行われるようにした。なお、第1促進中性化試験は、上記と同様の方法で行った。
[3]第1促進中性化試験後の供試体の一部をカットし、カットした供試体を用いて供試体が吸収固定したCO量を測定した。CO量の測定は、供試体の厚さ方向において上面から10mmをカットして、粉砕したものを用い、上記と同様な方法で行った。結果を表2に示す。
[4]供試体を28日間気中養生した。
[5]気中養生した供試体をCO濃度5%の雰囲気中に28日間曝す第2促進中性化試験を行った。この時、供試体の上面のみを開放し、その他の面をアルミテープで密閉して、該上面のみからCOの吸収固定が行われるようにした。なお、第2促進中性化試験は、上記と同様の方法で行った。
[6]供試体の一部をカットし、カットした供試体を用いて供試体が吸収固定したCO量を測定した。CO量の測定は、供試体の厚さ方向において上面から10mmをカットして、粉砕したものを用い、上記と同様な方法で行った。結果を表2に示す。
【0062】
<比較例2>
水硬性組成物1に代えて、水硬性組成物2を用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【0063】
【表2】
【0064】
表2中、合計CO吸収固定量は、それぞれの促進中性化試験後の値を加えたものとなる。実施例1では、比較例1、比較例2と比べると合計CO吸収固定量が高くなっている。このことから、COを吸収固定した層に新たなCOを吸収固定させる層を形成することで、効率的にCOの吸収固定を行うことが可能であることが示された。