(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143297
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】配線基板および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241003BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20241003BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241003BHJP
G03F 7/004 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
H05K1/02 D
H05K3/28 D
H01L23/12 F
G03F7/004 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055897
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勉
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大介
(72)【発明者】
【氏名】志村 優之
【テーマコード(参考)】
2H225
5E314
5E338
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC55
2H225AC63
2H225AC72
2H225AD02
2H225AE14P
2H225AN36P
2H225AN65P
2H225AN82P
2H225AP11P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA27
5E314AA42
5E314BB06
5E314BB10
5E314BB11
5E314CC02
5E314CC07
5E314CC15
5E314EE01
5E314EE03
5E314FF01
5E314FF19
5E314GG11
5E338AA01
5E338AA16
5E338BB72
5E338BB75
5E338EE26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リフロー処理を実施した場合であっても、基板と補強部材との密着性を維持でき、反りを抑制できる配線基板を提供する。
【解決手段】基板10と、基板10の少なくとも一方の面に設けられた配線層20と、配線層20を覆うように設けられたソルダーレジスト層30と、ソルダーレジスト層30上に、接着剤層50を介して設けられた補強部材40と、を備えた配線基板1であって、補強部材40は、半導体素子実装領域401を露出する開口部を備えた矩形形状を有し、ソルダーレジスト層30は、感光性樹脂組成物の硬化物からなり、感光性樹脂組成物は、硬化性樹脂とフィラーとを含む、ことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に設けられた配線層と、
前記配線層の一部を覆うように設けられたソルダーレジスト層と、
前記ソルダーレジスト層上に、接着剤層を介して設けられた補強部材と、
を備えた配線基板であって、
前記補強部材は、半導体素子実装領域を露出する開口部を備えた矩形形状を有し、
前記ソルダーレジスト層は、感光性樹脂組成物の硬化物からなり、
前記感光性樹脂組成物は、硬化性樹脂とフィラーとを含む、
ことを特徴とする、配線基板。
【請求項2】
前記接着剤層は、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤およびウレタン系接着剤から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記フィラーは、前記硬化性樹脂に対して10~70質量%の割合で含まれている、請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記補強部材が、金属またはセラミックスからなる、請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂と熱硬化性樹脂とを含む、請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の配線基板を備えた半導体装置であって、
前記半導体素子実装領域に半導体素子が実装されている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関し、より詳細には、半導体素子実装領域の周囲に補強部材が設けられた配線基板および該配線基板に半導体素子が実装された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高機能化がますます進み、半導体装置にも高密度集積化、高密度実装化が要求されている。例えば、半導体パッケージの実装密度を向上させるために、端子ピッチを広く保ちつつ多ピン化に対応できる技術としてボール・グリッド・アレイ(BGA)方式やピン・グリッド・アレイ(PGA)方式の半導体装置が実用化されてきている。最近では、実装されるCPU等の半導体チップの高性能化も進み大型化しており、それに伴いBGA基板等では配線基板も大型化する傾向にある。
【0003】
しかしながら、配線基板が大型化すると反りが生じやすく、また反りによって半導体チップの実装時に不具合が発生する恐れがある。そのため、配線基板の補強として、実装される半導体チップの周囲に額縁状の補強部材(スティフナとも呼ばれる)を設けることが知られている(例えば、特許文献1等)。補強部材は、通常、銅やステンレス等の剛性の高い材料からなり、配線基板の配線層またはソルダーレジスト層上に接着剤を介して設けられる(例えば、特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-102216号公報
【特許文献2】特開2016-37529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線基板への半導体チップの実装は、リフロー炉により、はんだの融点(例えば、230℃)以上の温度に加熱して行われる。その際に、基板に貼り付けた補強部材の密着性が低下し、補強部材を設けているにもかかわらず配線基板の反りが問題となる場合があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、リフロー処理を実施した場合であっても、基板と補強部材との密着性を維持でき、反りを抑制できる配線基板を提供することである。
を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、基板と補強部材との密着性が低下する原因を詳細に検討したところ、リフロー処理時に補強部材を接着している接着剤が軟化し、接着剤とソルダーレジスト層との密着性が低下することが原因であることを見出した。そして、基板上にソルダーレジスト層を形成する際に、フィラーを含有する感光性樹脂組成物を用いることで、接着剤が軟化した場合であっても、ソルダーレジスト層(すなわち、当該感光性樹脂組成物の硬化物)との密着性を維持でき、その結果、リフロー処理を実施した場合であっても、基板と補強部材との密着性を維持できるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
[1] 基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に設けられた配線層と、
前記配線層を覆うように設けられたソルダーレジスト層と、
前記ソルダーレジスト層上に、接着剤層を介して設けられた補強部材と、
を備えた配線基板であって、
前記補強部材は、半導体素子実装領域を露出する開口部を備えた矩形形状を有し、
前記ソルダーレジスト層は、感光性樹脂組成物の硬化物からなり、
前記感光性樹脂組成物は、硬化性樹脂とフィラーとを含む、
ことを特徴とする、配線基板。
[2] 前記接着剤層は、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤およびウレタン系接着剤から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の配線基板。
[3] 前記フィラーは、前記硬化性樹脂に対して10~70質量%の割合で含まれている、[1]に記載の配線基板。
[4] 前記補強部材が、金属またはセラミックスからなる、[1]に記載の配線基板。
[5] 前記硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂と熱硬化性樹脂とを含む、[1]に記載の配線基板。
[6] [1]~[5]のいずれか一項に記載の配線基板を備えた半導体装置であって、
前記半導体素子実装領域に半導体素子が実装されている、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線基板のソルダーレジスト層を、フィラーを含有する感光性樹脂組成物により形成することで、リフロー処理を実施した場合であっても、基板と補強部材との密着性を維持でき、反りを抑制できる配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の1実施形態に係る配線基板の平面図である。
【
図3】本発明の1実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による配線基板の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る配線基板を、半導体素子を実装する面側から見た平面図であり、
図2は、
図1の平面図のX-X’線断面図である。また、
図3は、本発明の1実施形態に係る配線基板の半導体素子実装領域に半導体素子を実装した半導体装置の断面図である。
【0012】
本発明の一実施形態に係る配線基板1は、
図1および
図2に示すように、基板10の一方の面に配線層20が設けられており、配線層20の一部を覆うようにソルダーレジスト層30が設けられている。このようにソルダーレジスト層30はパターンングされたものであるが、パターニングの方法等については後述する。なお、図示はしないが、配線層20は基板10の他方の面にも設けられていてもよいし、基板が多層である場合は基板の厚さ方向に複数の配線層が設けられていてもよい。
【0013】
ソルダーレジスト層30上には、接着剤層50を介して補強部材40が設けられるが、
図2に示すように、パターニングされてたソルダーレジスト層30のうち、下層に配線層20が設けられていない箇所に補強部材40が設けられている。補強部材40は、開口部402を備えた矩形形状を有しており、開口部402により、基板10上に設けられた配線層20およびソルダーレジスト層30が露出した半導体素子実装領域401が形成されている。
【0014】
本発明の一実施形態に係る配線基板1は、
図3に示すように、半導体素子実装領域401に半導体素子200を実装することで半導体装置100とすることができる。半導体素子200は、配線基板1の配線層20とはんだ300を介して電気的に接続される。半導体素子200の実装は、リフロー処理により行われるのが通常である。
【0015】
基板は絶縁層からなる単層であってもよく、また絶縁層と導体層(導体パターン)とが交互に積層された多層基板であってもよい。図示はしないが、多層基板では、配線層20が、ビア、各層の導体層、および配線基板1の裏面側の配線層(図示せず)と電気的に接続されている。基板10はコアレス基板であってもよい。
【0016】
配線層は、典型的には銅箔をパターニングすることにより形成されており、銅箔表面は、半導体素子実装用パッドとして金やニッケル等の金属からなる層(図示せず)が設けられていてもよい。
【0017】
配線層20の一部を覆うように設けられたソルダーレジスト層30は、感光性樹脂組成物を露光・現像して所望パターンに形成した後、硬化させることで形成される。本発明においては、感光性樹脂組成物が硬化性樹脂とフィラーとを含むため、後述する接着剤層との密着性が向上している。
【0018】
補強部材40は、例えば、銅板、アルミニウム、ステンレス等の金属やセラミックスからなる板を使用してもよいし、ガラスエポキシ基板等の樹脂を使用してもよい。補強部材40の厚さは、配線基板や半導体素子の大きさや厚さによって適宜調整することができる。また、補強部材40の開口部402の大きさは、実装する半導体素子200に応じて適宜調整される。
【0019】
補強部材40は、基板10のソルダーレジスト層30上に、接着剤層50を介して貼り合わされている。そのため、基板10と補強部材40との密着性は、補強部材40と接着剤層50との密着性と、接着剤層50とソルダーレジスト層30との密着性に影響される。接着剤層50には、一般的に、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤が使用される。本発明においては、リフロー処理後の基板10と補強部材40との密着性の低下が、接着剤層50とソルダーレジスト層30との密着性の低下に起因していることを突きとめ、感光性樹脂組成物にフィラーを配合することで、リフロー処理を実施した場合であっても、基板と補強部材との密着性を維持し、配線基板の反りを抑制したものである。ソルダーレジスト層は感光性樹脂組成物を硬化させて硬化物(硬化膜)とすることで形成することができる。以下、本発明による配線基板におけるソルダーレジスト層に好ましく使用できる感光性樹脂組成物の一例を説明する。
【0020】
感光性樹脂組成物は硬化性樹脂とフィラーとを含む。硬化性樹脂としては、露光、現像によりパターニングすることを考慮して、カルボキシル基含有樹脂が含まれることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂を含むことにより、アルカリ現像性とすることができる。また、感光性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを使用してもよい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、即ち光重合性モノマーを併用する必要がある。カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で他の類似の表現についても同様である。
【0021】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0022】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0023】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物との反応物の部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0024】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0025】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0026】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0027】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0028】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0029】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0030】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0031】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0032】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0033】
本発明に使用できるカルボキシル基含有樹脂は、上記列挙したものに限られない。また。上記列挙したカルボキシル基含有樹脂は1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0034】
感光性樹脂組成物中のカルボキシル基含有樹脂の配合量は、固形分換算で、感光性樹脂組成物全体に対して20~60質量%であることが好ましく、より好ましくは、25~60質量%である。20質量%以上とすることにより塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり加工性が向上する。
【0035】
感光性樹脂組成物に含まれるフィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用できるが、特に、硫酸バリウム、球状シリカ、ハイドロタルサイトおよびタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を得るために金属酸化物や水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとして使用することができる。ソルダーレジスト層を構成する硬化物にフィラーを配合することでソルダーレジスト層の物理的強度や耐熱性が向上することは従来から知られていたものの、補強部材を基板に貼り合わせるための接着剤との密着性が、フィラーが含有されることで、リフロー処理のような高温環境下においても維持できることは予想外であった。
【0036】
フィラーの配合量は特に限定されるものではないが、硬化性樹脂に対して10~70質量%の割合であることが好ましく、より好ましくは30~60質量%である。
【0037】
フィラーは、感光性樹脂組成物中での分散性を高めるために表面処理されたものであってもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0038】
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、あらかじめフィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、球状シリカ100質量部に対するカップリング剤の処理量は、0.5~10質量部であることが好ましい。
【0039】
感光性樹脂組成物には光重合性モノマーが含まれていてもよい。光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε-カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくとも1種から適宜選択して用いることができる。このような光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。
【0040】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などを光重合性モノマーとして用いてもよい。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0041】
光重合性モノマーの配合量は、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.2~60質量部、より好ましくは0.5~50質量部である。光重合性モノマーの配合量を0.2質量部以上とすることにより、感光性樹脂組成物の光硬化性が向上する。また、配合量を60質量部以下とすることにより、ソルダーレジスト層の表面硬度を向上させることができる。
【0042】
また、感光性樹脂組成物には、光重合開始剤が含まれていてもよい。光重合開始剤は、上記したカルボキシル基含有樹脂や光重合性モノマーを露光により反応させるためのものである。光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0044】
光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~18質量部であることがより好ましく、1~15質量部がさらに好ましい。0.01質量部以上の場合、感光性樹脂組成物の光硬化性が良好となり、耐薬品性等の被膜特性も良好となる。また、20質量部以下の場合、ソルダーレジスト層表面での光吸収が良好となり、深部硬化性が低下しにくい。
【0045】
上記した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。特に、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物を用いることが好ましい。チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは感光性樹脂組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、ソルダーレジスト層のパターンのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の精度を向上させることができる。
【0047】
感光性樹脂組成物は、硬化性樹脂として、カルボキシル基含有樹脂に加えて熱硬化性樹脂が含まれていてもよい。感光性樹脂組成物に熱硬化性樹脂が含まれることにより、ソルダーレジスト層の耐熱性を向上させることができるともに、高温環境下での接着剤層との密着性も向上する。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂を使用できる。特に好ましいのは、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらのなかでもエポキシ樹脂を好ましく使用することができる。
【0048】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0049】
熱硬化性樹脂の配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂に含有されるカルボキシル基1molあたりに対し、反応する熱硬化性樹脂の官能基数が0.5~2.5molが好ましく、より好ましくは0.8~2.0molである。
【0050】
また、感光性樹脂組成物には、上記した熱硬化性樹脂に加えて熱硬化触媒を配合することができる。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0051】
さらに、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。熱硬化触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
熱硬化触媒としては、上記した以外のものをさらに含んでもよく、例えば、フェノール樹脂、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂等が挙げられる。
【0053】
感光性樹脂組成物は、上記した成分以外にも必要に応じて、着色剤、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0054】
感光性樹脂組成物には、調製のし易さや塗布性の観点から有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
感光性樹脂組成物における有機溶剤の配合量は、感光性樹脂組成物を構成する材料に応じ適宜変更することができ、例えば、硬化性樹脂100質量部に対して固形分換算で30~300質量部とすることができる。
【0056】
感光性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いてもよい。また、液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。以下、ドライフィルムについ説明する。ドライフィルムは、第一のフィルムと、当該第一のフィルム上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる樹脂層とを備える。
【0057】
ドライフィルムを作製するには、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第一のフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、1~150μm、好ましくは5~60μmの範囲で適宜選択される。
【0058】
感光性樹脂組成物を用いてソルダーレジスト層を形成するには、感光性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基板上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基板と接触するように基板上に貼り合わせた後、第一のフィルムを剥がすことにより、基板上に樹脂層を形成する。
【0059】
基板上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。ドライフィルムの場合には、露光後、ドライフィルムから第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより、基板上にパターニングされた硬化物を形成する。なお、ドライフィルムの形態である場合、特性を損なわない範囲であれば、露光前にドライフィルムから第一のフィルムを剥離して、露出した樹脂層を露光および現像しても良い。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れたソルダーレジスト層を形成することができる。
【実施例0060】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0061】
[感光性樹脂組成物の調製]
(カルボキシル基含有樹脂の合成例)
感光性樹脂組成物の調製前に、下記に示す手順に従って、本実施例で用いられるカルボキシル基含有樹脂を調製した。
温度計、窒素導入装置、アルキレンオキサイド導入装置、および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショウノールCRG951」、アイカ工業株式会社製、OH当量:119.4)119.4質量部、水酸化カリウム1.19質量部、およびトルエン119.4質量部を導入し、撹拌しながら系内を窒素置換し、昇温した。次に、プロピレンオキサイド63.8質量部を徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56質量部を添加および混合しながら水酸化カリウムを中和して、ノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液[固形分:62.1%;水酸基価:182.2mgKOH/g(307.9g/eq.)]を得た。このプロピレンオキサイド反応溶液は、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキサイドが平均1.08モル付加したものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液293.0質量部、アクリル酸43.2質量部、メタンスルホン酸11.53質量部、メチルハイドロキノン0.18質量部およびトルエン252.9質量部を、攪拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら110℃で12時間反応させた。反応により生成した水12.6質量部を、トルエンとの共沸混合物として留出させた。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35質量部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1質量部でトルエンを置換しながら留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5質量部およびトリフェニルフォスフィン1.22質量部を、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部を徐々に加え、95~101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして、カルボキシル基含有樹脂の溶液(固形分:70.6%;固形分の酸価:87.7mgKOH/g)を得た。
【0062】
次いで、下記表1に従って各成分を混合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混錬し、実施例1~4および比較例1~2の各感光性樹脂組成物を調製した。なお、表1中の配合量は固形分量を表す。また、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
カルボキシル基含有樹脂:上述した合成例により得られたカルボキシル基含有樹脂
光重合開始剤:Omnirad819(IGM Resins社製)
熱硬化性樹脂:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(N―730A、DIC株式会社製)
フィラー:球状シリカ(アドマファインSO-C2、平均粒径0.5μm、株式会社アドマテックス製)
熱硬化触媒:メラミン
光重合性モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬株式会社製)
【0063】
【0064】
[実施例1]
<ドライフィルムの作製>
上記のようにして得られた感光性樹脂組成物にメチルエチルケトン300gを加えて希釈し、攪拌機で15分間撹拌して塗工液を得た。塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ株式会社製エンブレットPTH-25)上に塗布し、80℃の温度で15分間乾燥し、厚み20μmの感光性樹脂層を形成した。次いで、感光性樹脂層上に、厚み18μmのポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株株式会社製OPP-FOA)を貼り合わせて、ドライフィルムを作製した。
【0065】
<評価用基板の作製>
FR-4銅張積層板(100mm×150mm×0.8mmt、両面銅箔、銅箔の厚みは両面ともに18μm)の銅箔表面をメック株式会社製のCZ8101Bを用いてエッチングレート1μmでCZ処理を行い、CZ処理された銅箔表面に、上記のようにして得られたドライフィルムからポリプロピレンフィルムを剥離して、露出したドライフィルムの感光性樹脂層の露出面を貼り合わせ、続いて、真空ラミネーター(CVP-300:ニッコーマテリアルズ株式会社製)を用いて90℃の第一チャンバーにて真空圧3hPa、バキューム時間30秒の条件下でラミネートした後、プレス圧0.5MPa、プレス時間30秒の条件でプレスを行い、銅張積層板と感光性樹脂層とを密着させた。
続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム面側から、ネガマスクを介して、光源としてメタルハライドランプ搭載のUVコンベア炉(東芝株式会社製KUV- 28351-XK-DM)を用いて365nmの波長における積算露光量が1000mJ/cm2(38mW・cm2×26s)となる条件にて露光を行った。その後10分間静置させてポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し感光性樹脂層を露出させ、液温30℃の濃度が0.2質量%のNa2CO3水溶液を用いて現像を行い、水洗しパターン形成した。次いで150℃の温度で60分間加熱して感光性樹脂層を硬化することで、ソルダーレジスト層形成基板を得た。
その後、ステンレス鋼板からなる額縁状形状を有するスティフナー(補強部材)を準備し、その一方の面にディスペンサを用いてエポキシ樹脂接着剤を塗布し、スティフナーの接着剤塗布面を、レジストパターン形成基板のレジストパターン形成面のレジスト上に貼り合わせた。次いでスティフナーが設けられたソルダーレジスト層形成基板を加熱し、スティフナーに塗布された接着剤を硬化させて評価用基板を作製した。
【0066】
[比施例1]
感光性樹脂組成物1を感光性樹脂組成物2に変更した以外は実施例1と同様にして評価用基板を作製した。
【0067】
[比較例2]
得られたソルダーレジスト層形成基板にスティフナーを設けなかった以外は実施例1と同様にして評価用基板を作製した。
【0068】
[比較例3]
得られたソルダーレジスト層形成基板にスティフナーを設けなかった以外は比較例1と同様にして評価用基板を作製した。
【0069】
<リフロー試験>
上記のようにして得られた各評価用基板を、あらかじめ最高温度260℃に設定したリフロー炉に通過させ、リフロー試験を行った後、下記の密着性評価および反り評価を行った。
【0070】
<密着性評価>
リフロー試験後の実施例1および比較例2の各評価基板について、以下評価基準に基づき密着性評価を行った。
○:スティフナーが基板から剥がれていない
×:スティフナーが基板から剥がれている
評価結果は、下記の表2に示すとおりであった。
【0071】
<反り評価>
リフロー試験後の各評価用基板を水平な木製の板の上に載せて基板の4隅の浮き上がり量の平均値を測定し、以下評価基準に基づき反りの評価を行った。
○:4mm以下である
×:4mm超である
評価結果は、下記の表2に示すとおりであった。
【0072】
【0073】
表2に示した評価結果からも明らかなように、ソルダーレジスト層がフィラーを含む感光性樹脂組成物の硬化物からなる配線基板(実施例1)は、基板と補強部材との密着性に優れ、配線基板の反りも抑制されることがわかる。
一方、ソルダーレジスト層がフィラーを含まない感光性樹脂組成物の硬化物からなる配線基板(比較例1)では、補強部材が設けられていて基板との密着性が不十分であり、配線基板の反りを抑制できないことがわかる。
また、補強部材も設けなかった配線基板(比較例2および3)では、フィラーの有無に関係なく、反りが抑制できないことがわかる。