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特開2024-143404硬化物、ドライフィルム、およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143404
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】硬化物、ドライフィルム、およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241003BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20241003BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/027
H05K3/28 D
H05K3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056063
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松野 匠
(72)【発明者】
【氏名】森 花菜
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 光世
【テーマコード(参考)】
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC54
2H225AD02
2H225AE06P
2H225AN94P
2H225AP03P
2H225AP08P
2H225AP09P
2H225AP11P
2H225AP15P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA27
5E314BB02
5E314BB06
5E314CC01
5E314CC07
5E314CC15
5E314EE01
5E314EE02
5E314EE03
5E314FF02
5E314FF03
5E314FF05
5E314GG26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光の反射を抑制することが可能な感光性樹脂組成物の硬化物、並びにそれを用いたドライフィルム、およびプリント配線板の提供。
【解決手段】感光性樹脂組成物の硬化物であって、硬化物表面を360nm~730nmの測定波長によりSCI方式およびSCE方式により測定した場合に、測定波長の全範囲において、SCI方式-SCE方式(正反射率)の値が2.5%以下であり、かつSCI方式(全反射率)の値が6.3%以下である硬化物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂組成物の硬化物であって、
前記硬化物表面を360nm~730nmの測定波長によりSCI方式およびSCE方式により測定した場合に、測定波長の全範囲において、SCI方式-SCE方式(正反射率)の値が2.5%以下であり、かつSCI方式(全反射率)の値が6.3%以下であることを特徴とする硬化物。
【請求項2】
前記感光性樹脂組成物が、カルボキシル基含有樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、無機フィラー、および着色剤を含有する請求項1に記載の硬化物。
【請求項3】
第一のフィルムと、前記感光性樹脂組成物からなる樹脂層と、を備えたドライフィルムであって、
前記第一のフィルムから剥離された状態の前記樹脂層の硬化物が、請求項1または2に記載の硬化物であることを特徴とするドライフィルム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物、ドライフィルム、およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部には、基板に電子回路の回路パターンを銅線により印刷したプリント配線板に、はんだ付けなどにより各種の電子部品が実装された部品が内蔵されている。
しかしながら、銅線が露出しているプリント配線板に電子部品を実装する場合、外力による銅線の断線、銅線以外へのはんだの付着等によるショートなどが起こる可能性がある。そこで、回路パターンの保護、ショートの防止などを目的としてプリント配線板上にソルダーレジスト層を形成する。
【0003】
ソルダーレジスト層は感光性樹脂組成物の硬化物から形成されることが多く、これまでにも様々な感光性樹脂組成物が提案されている。例えば、特許文献1には、カルボキシル基含有樹脂および光重合開始剤等を含有する感光性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
近年、カメラを有する電子機器が増え、カメラの部品であるカメラモジュールをプリント配線板に実装することが多くなっている。カメラモジュールには光を検知するセンサーがあり、カメラモジュールにあたった光をセンサーが検知し、カメラモジュールが動作する。
【0005】
しかしながら、カメラモジュールのセンサーには、カメラにあたった光以外にもソルダーレジスト層からの反射光も検出し得る。このため、カメラモジュールを実装するためのソルダーレジスト層には、光の反射を抑制する性質が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-65942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光の反射を抑制することが可能な感光性樹脂組成物の硬化物、並びにそれを用いたドライフィルム、およびプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明による硬化物は、
感光性樹脂組成物の硬化物であって、
前記硬化物表面を360nm~730nmの測定波長によりSCI方式およびSCE方式により測定した場合に、測定波長の全範囲において、SCI方式による測定値-SCE方式による測定値(正反射率)の値が2.5%以下であり、かつSCI方式による測定値(全反射率)が6.3%以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の態様においては、
感光性樹脂組成物が、カルボキシル基含有樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、無機フィラー、および着色剤を含有することが好ましい。
【0010】
また、本発明の態様においては、
第一のフィルムと、感光性樹脂組成物からなる樹脂層と、を備えたドライフィルムであって、
第一のフィルムから剥離された状態の樹脂層の硬化物が、上述の硬化物であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の態様によるプリント配線板は、上述の硬化物を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光の反射を抑制することが可能な感光性樹脂組成物の硬化物、並びにそれを用いたドライフィルム、およびプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係る、硬化物、ドライフィルム、およびプリント配線板について説明する。
【0014】
(硬化物)
本実施形態の硬化物は、硬化物表面をSCI(Specular Component Include:正反射光を含む)方式、およびSCE(Specular Component Exclude:正反射光を除く)方式により測定された値が、以下の(1)、(2)の条件を満たす。
(1)SCI方式による測定値-SCE方式による測定値(正反射率)の値が2.5%以下
(2)SCI方式による測定値(全反射率)の値が6.3%以下
【0015】
本実施形態に係る、SCI方式による測定は、反射光を測定できる装置により行われる。具体的には、硬化物の表面に対して、所定範囲の波長の光を照射し、硬化物の表面からの正反射光を含む反射光を測定する。
本実施形態に係る、所定範囲の波長は、360nm~730nmである。
本実施形態に係る、SCI方式による測定は、10nm刻みにて行う。
本実施形態に係るSCI方式による測定値とは、上記測定範囲において測定されて得られた値のうち、最大値とする。
【0016】
本実施形態に係る、SCE方式による測定は、反射光を測定できる装置により行われる。具体的には、硬化物の表面に対して、所定範囲の波長の光を照射し、硬化物の表面からの正反射光を除いた反射光を測定する。
本実施形態に係る、所定範囲の波長は、360nm~730nmである。
本実施形態に係る、SCE方式による測定は、10nm刻みにて行う。
本実施形態に係るSCE方式による測定値とは、上記測定範囲において測定されて得られた値のうち、最大値とする。
【0017】
硬化物のSCI方式による測定値-SCE方式による測定値(正反射率)の値は、2.5%以下であり、2%以下が好ましい。また、硬化物のSCI方式(全反射率)の値は、6.3%以下であり、6%以下が好ましい。
SCI方式、およびSCE方式により測定された値が、上記の(1)および(2)を満たす場合、硬化物は、表面に当たった光を吸収することにより、表面の光反射を抑制することができる。
【0018】
硬化物のSCI方式およびSCE方式の測定は、通常の方法であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、色差計を用いることができる。
【0019】
<硬化物の製造方法>
硬化物の製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば後記するような方法にて形成することができる。
【0020】
感光性樹脂組成物からなる樹脂層を基材上に形成する方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、感光性樹脂組成物を、有機溶剤を用いて適当な粘度に調整して、基材上に塗布した後、基板を60℃~100℃の温度で15分間~90分間加熱することにより、感光性樹脂組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。
塗布方法は、例えば、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法などが挙げられる。感光性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。また、後述するドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、第一のフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0021】
基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0022】
ドライフィルムの形態である場合には、基材上への貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、基材表面に感光性樹脂組成物を塗布した後、揮発乾燥を行うことが好ましい。揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより基材に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0024】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。ドライフィルムの場合には、露光後、ドライフィルムから第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより、基材上にパターニングされた硬化物を形成する。なお、ドライフィルムの形態である場合、特性を損なわない範囲であれば、露光前にドライフィルムから第一のフィルムを剥離して、露出した樹脂層を露光および現像しても良い。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化) させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化物を形成することができる。
【0025】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0026】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0027】
<感光性樹脂組成物>
本実施形態の硬化物は、感光性樹脂組成物の硬化物である。感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、無機フィラー、および着色剤を含有し、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。
【0028】
<<カルボキシル基含有樹脂>>
カルボキシル基含有樹脂は、分子中にカルボキシル基を有している樹脂であり、従来公知の各種樹脂を用いることができる。感光性樹脂組成物が、カルボキシル基含有樹脂を含有することにより、感光性樹脂組成物に対し現像性(アルカリ現像性)を付与できる。特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂(カルボキシル基含有感光性樹脂)が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。
【0029】
カルボキシル基含有樹脂の具体例は、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0031】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシ基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0032】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物との反応物の部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0033】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0034】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0035】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0036】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0037】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0038】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0039】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0040】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0041】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0042】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0043】
カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40mgKOH/g~150mgKOH/gであることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g以上とすることにより、アルカリ現像が良好になる。
また、酸価を150mgKOH/gを以下とすることで、感光性樹脂組成物をソルダーレジストとして用いた場合に、良好なレジストパターンの描画をし易くできる。より好ましくは、50mgKOH/g~130mgKOH/gである。
【0044】
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上とすることにより、タックフリー性能や解像度を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下とすることで、現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。より好ましくは、5,000~100,000である。
【0045】
カルボキシル基含有樹脂の配合量は、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。20質量%以上とすることにより硬化塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり、印刷性が向上する。より好ましくは、25質量%以上50質量%以下である。
【0046】
<<光重合性モノマー>>
光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート類;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキサイド誘導体のモノまたはジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのアルキレンオキサイド付加物あるいはε-カプロラクトン付加物等の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等のフェノール類またはこれらのアルキレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルのアクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオール等のポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
なお、光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。
【0047】
光重合性モノマーの含有量は、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部~100質量部の割合が好ましい。配合量が、5質量部以上の場合、光硬化性が良好であり、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像において、パターン形成がしやすい。一方、100質量部以下の場合、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られる。
【0048】
<<光重合開始剤>>
光重合開始剤は、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂や光重合性モノマーを露光により反応させるためのものである。光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
光重合開始剤は、例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0050】
光重合開始剤の含有量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.5質量部~10質量部が好ましく、3質量部~8質量部がより好ましい。含有量の値がこの範囲に含まれると、感光性樹脂組成物の硬化物の硬度を向上させることができる。
【0051】
<<無機フィラー>>
無機フィラーは、硬化物の表面に凹凸を形成し、硬化物のSCI方式による測定値を低下させるためにも含有される。
フィラーとしては、公知のフィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、非晶質シリカ、結晶質シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、ハイドロタルサイトおよびタルクが好ましく用いられる。
非晶質シリカは公知慣用のものを用いることができ、合成であっても天然であってもよい。また、表面処理を行っていても行っていなくてもよい。
【0052】
フィラーの含有量は、感光性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは25~75質量%であり、さらに好ましくは30~50質量%である。フィラーの配合量が上記範囲内であることで、硬化物を高強度にすることができる。
【0053】
<<着色剤>>
着色剤は、黒色の着色剤を含有することが好ましく、さらに必要に応じて黒色以外の着色剤を含有することがより好ましい。
【0054】
<<<黒色の着色剤>>>
黒色の着色剤は、黒色であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、カーボンブラック、窒化ジルコニウム、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32などが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0055】
<<<黒色以外の着色剤>>>
黒色以外の着色剤は、本実施形態の硬化物の効果を阻害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。
【0056】
具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げることができる。
【0057】
赤色着色剤としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがある。青色着色剤としては、フタロシアニン系、アントラキノン系などがあり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物を使用することができる。これら以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系がある。これら以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等がある。
【0058】
着色剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対し、10質量部以下が好ましく、0.1質量部~7質量部がより好ましい。着色剤の含有量の値がこの範囲に含まれると、高黒色な硬化物となる。
【0059】
<<その他の成分>>
本実施形態の感光性樹脂組成物には、必要に応じてさらに、熱硬化性成分、光開始助剤、シアネート化合物、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0060】
<感光性樹脂組成物の製造方法>
感光性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記各成分を所定の割合で配合後、室温にて、3本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、または、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練又は混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0061】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いてもよい。また、液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0062】
(ドライフィルム)
本実施形態のドライフィルムは、第一のフィルムと、樹脂層とを有する。
本発明によるドライフィルムにおける第一のフィルムとは、基板等の基材上に、ドライフィルム上に形成された感光性樹脂組成物からなる樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には少なくとも樹脂層に接着しているものをいう。第一のフィルムは、ラミネート後の工程において、樹脂層から剥離しても良い。特に、本発明においては露光後の工程において、樹脂層から剥離することが好ましい。
【0063】
<<樹脂層>>
樹脂層は、感光性樹脂組成物からなる。
感光性樹脂組成物は、前述の感光性樹脂組成物を用いることができ、樹脂層は、前述の樹脂層を用いることができる。
樹脂層を硬化させたものが、前述の硬化物となる。すなわち、第一のフィルムから剥離された状態の樹脂層の硬化物が、前述の硬化物である。
【0064】
<<第一のフィルム>>
第一のフィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を第一のフィルムとして使用することもできる。
【0065】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0066】
第一のフィルムとして、熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合、フィルムを成膜する際の樹脂中にフィラーを添加(練り込み処理)したり、マットコーティング(コーティング処理)したり、フィルム表面をサンドブラスト処理のようなブラスト処理をしたり、あるいはヘアライン加工、またはケミカルエッチング等により特定の表面形態を有するものを使用してもよい。
【0067】
第一のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0068】
<<第二のフィルム>>
第一のフィルム上に本発明の感光性樹脂組成物の樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な第二のフィルムを積層することが好ましい。本発明によるドライフィルムにおける第二のフィルムとは、基板等の基材上にドライフィルムの樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際、ラミネート前に樹脂層から剥離するものをいう。
【0069】
樹脂層から剥離可能な第二のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、第二のフィルムを剥離するときに樹脂層と第一のフィルムとの接着力よりも樹脂層と第二のフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0070】
第二のフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0071】
ドライフィルムを製造するに際しては、本実施形態の感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、アプリケーター等で第一のフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50℃~130℃の温度で1分間~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後膜厚で、1μm~150μm、好ましくは5μm~60μmの範囲で適宜選択される。
【0072】
(プリント配線板)
本実施形態のプリント配線版は、上述の硬化物を有するものである。
プリント配線板のサイズや種類は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【実施例0073】
次に、本発明者らが行った試験について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0074】
(感光性樹脂組成物の調製)
<カルボキシル基含有樹脂の合成>
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート650質量部にオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EPICLON N-695、DIC株式会社製、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1, 070g、アクリル酸360g、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルフォスフィン4.3質量部を仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、さらにトリフェニルフォスフィン1.6質量部を追加し、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(ティーソル150、株式会社スタンダード石油大阪発売所製)525g、テトラヒドロ無水フタル酸608g(4.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行った。さらに、得られた反応液にグリシジルメタクリレート142.0gを仕込み、115℃で4時間反応を行った。このようにして、固形分65%、固形分の酸価77mgKOH/gであるカルボキシル基含有樹脂の溶液を得た。
【0075】
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表1に記載の各成分を、同表に示す量で混合し、撹拌機にて予備撹拌した後、3本ロールミルを用いて混錬し、感光性樹脂組成物A~Dを調製した。なお、表1中の数値は質量部を示し、固形分換算での値である。
【0076】
【表1】
【0077】
なお、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・カルボキシル基含有樹脂:合成例にて合成したカルボキシル基含有樹脂
・光重合性モノマー:商品名:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、(日本化薬株式会社製)
・光重合開始剤:2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’モルフォリノブチロフェノン(Omnirad 369E、IGM Resins社製)
・無機フィラー:シリカ(ACE MATT OK412、EVONIK DEGUSSA社製)
・無機フィラー:タルク(LMP-100、富士タルク株式会社製)
・無機フィラー:硫酸バリウム(B-30、堺化学工業株式会社製)
・黒色の着色剤:カーボンブラック(MA-100、三菱ケミカル株式会社製)
・黒色の着色剤:窒化ジルコニウム(UB-2、三菱マテリアル電化化成株式会社製)
・青色着色剤:ファストゲンブルー5380/FA5380、DIC株式会社製
・赤色着色剤:Paliogen Red K3580、BASFジャパン株式会社製
・その他の成分:エポキシ樹脂(EPICLON N-770、DIC株式会社製)
【0078】
(第一のフィルムの作製)
<マットPETαの作製>
iso-ブチル化メラミン樹脂(アミディアL-125-60、固形分60%、DIC株式会社製)、およびメラミン焼き付け用アクリル樹脂(アクリディックA-405、固形分50%、DIC株式会社製)を、配合割合が質量基準で25:75(固形分換算)となるように配合し、撹拌機にて予備撹拌し、アクリルメラミン樹脂を得た。
次いで、得られたアクリルメラミン樹脂をメチルエチルケトンで希釈し固形分濃度35質量%の樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液に、さらに塗膜の厚みに応じて適当な固形分濃度となるようにメチルエチルケトンを加えた後、シリコーン系樹脂(サイマックUS-270、東亜合成株式会社製)と最大粒径が2μmとなるように調整したフィラー(J-4P、アクリルビーズ、根上工業株式会社製)とを、アクリルメラミン樹脂とシリコーン系樹脂とフィラーとの配合割合が、質量基準で59.7:0.3:108(固形分換算)となるように添加し、室温で十分に撹拌し、均一な塗工液を得た。
得られた塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT60、東レ株式会社製)に塗布し、130℃で、20秒間乾燥させることによりマットコーティング層を含む第一のフィルム1を作製した。第一のフィルム1の全体の厚みは40μmであった。
また、マットコーティング層を設けた側の算術表面粗さRaを、JIS B 0601:2001に準拠してレーザーマイクロスコープ(VX―100、株式会社キーエンス製)を用いて形状測定モードにより測定した。具体的には、レーザーマイクロスコープの形状測定モードにおいて、観察アプリケーション(VK-H1XV)を立ち上げ、X-Yステージ上に測定する試料を静置し、形状測定モードにおいて50倍の対物レンズで、オートフォーカスにてピントを合わせた。必要に応じてZ軸をコントロールし、フォーカスを最適な位置に調整した。自動測定モードまたは手動測定モードにて、観察画像の取り込みを行った。次いで、解析アプリケーション(VK-H1XA)を立ち上げ、Raの測定を開始した。測定の結果、第一のフィルム1のマットコーティング層を設けた側の面の算術表面粗さRaは0.180μmであった。
【0079】
<マットPETβの作製>
マットPETαの作製方法において、フィラーをフュームドシリカ(AEROSIL200、日本アエロジル株式会社製)に変更し、アクリルメラミン樹脂とシリコーン系樹脂とフィラーとの配合割合を、質量基準で59.7:0.3:80.0(固形分換算)に変更し、ビーズミルにて分散を行った以外は、マットPETαの製造方法と同様にしてマットコーティング層を含むマットPETβを作製した。
このフィルムの全体の厚みは40μmであった。また、マットコーティング層を設けた側の面の算術表面粗さRaは1.43μmであった。
【0080】
<マットPETγの作製>
マットPETαの作製方法において、フィラーを球状シリカ(SO-C2、株式会社アドマテックス製)に変更し、アクリルメラミン樹脂とシリコーン系樹脂とフィラーとの配合割合を、質量基準で59.7:0.3:12.0(固形分換算)に変更した以外は、マットPETαの製造方法と同様にしてマットコーティング層を含むマットPETγを作製した。
このフィルムの全体の厚みは43μmであった。また、マットコーティング層を設けた側の面の算術表面粗さRaは0.196μmであった。
【0081】
なお、光沢PETは市販品(DIAFOIL T100-25、三菱ケミカル株式会社製)を用いた。
【0082】
(実施例1、比較例2:感光性樹脂組成物の硬化物)
表2に記載の組合せにて、各感光性樹脂組成物をCuベタ基板(150mm×95mm×0.89mmt)に、乾燥後の塗膜の厚みが25μmとなるように、スクリーン印刷により形成し、熱循環式Box炉で80℃、30分間乾燥することで感光性樹脂組成物からなる樹脂層を有する構造体を得た。なお、Cuベタ基板は、エッチング剤(CZ8101、メック株式会社製)によって化学研磨を施したものを用いた。
【0083】
得られた構造体について、超高圧水銀灯DI露光機(DXP-3580、株式会社オーク製作所製)を用いて、Stouffer41段ステップタブレットで15段の硬化段数になるように露光を実施した。30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液でブレイクポイント(最短現像時間)の2倍の現像時間で現像を行った。その後UVコンベア(株式会社オーク製作所製、メタルハライドランプ)を用いて1000mJ/cmで露光し、熱循環式Box炉で150℃、60分間硬化させることにより、基板上に感光性樹脂組成物の硬化物(ソルダーレジスト層)を備える試験基板を得た。
【0084】
(実施例2~5、比較例1および3:ドライフィルム)
表2に記載の組合せにて、各感光性樹脂組成物を第一のフィルム上(マットPETα~γ、光沢PET)に乾燥後の塗膜の厚みが25μmとなるように、アプリケーター塗布により形成し、熱循環式Box炉で80℃、15分間乾燥することでドライフィルムを得た。ドライフィルムの感光性樹脂組成物側の面を、Cuベタ基板(150mm×95mm×0.89mmt)に、真空ラミネーターCVP-300(ニッコー・マテリアルズ株式会社製)を用いてラミネートすることで、構造体を得た。なお、Cuベタ基板は、エッチング剤(CZ8101、メック株式会社製)によって化学研磨を施したものを用いた。
【0085】
得られた構造体について、超高圧水銀灯DI露光機(DXP-3580、株式会社オーク製作所製)を用いて、Stouffer41段ステップタブレットで15段の硬化段数になるように露光を実施した。露光終了から10分後に第一のフィルムを剥離した後に、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液でブレイクポイント(最短現像時間)の2倍の現像時間で現像を行った。その後UVコンベア(株式会社オーク製作所製、メタルハライドランプ)を用いて1000mJ/cmで露光し、熱循環式Box炉で150℃、60分間硬化させることにより、基板上にドライフィルムから形成された感光性樹脂組成物の硬化物(ソルダーレジスト層)を備える試験基板を得た。
【0086】
【表2】
【0087】
得られた硬化物の試験基板の60°光沢度、反射率、Rv(最大谷深さ)値、およびL値を測定し、センサーへの受光性を評価した。評価結果を表3に記載した。
【0088】
<60°光沢度>
光沢度測定には、デジタル変角光沢度計(BYK-micro-TRI-gloss)を使用した。標準板で校正を行ったのち、硬化物の凹凸面におけるGs(60°)の光沢度を測定した。
【0089】
<SCI方式(全反射率)・SCE方式(拡散反射率)による測定>
SCI方式の反射率(全反射率)を色差計(CM-2600d、コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定した。
得られた硬化物の表面に対して、360nm~730nmの波長の光を照射し、硬化物の表面から正反射光を含む反射光の反射率を測定した。測定は、10nm刻みにて行った。この測定における最大値が、当該硬化物のSCI方式による測定値とした。
また、SCE方式の反射率(拡散反射率)を色差計(CM-2600d、コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定した。
得られた硬化物の表面に対して、360nm~730nmの波長の光を照射し、硬化物の表面から正反射光を除く反射光の反射率を測定した。測定は、10nm刻みにて行った。この測定における最大値が、当該硬化物のSCE方式による測定値とした。
得られたSCI方式およびSCE方式の測定値から、正反射方式における反射率(SCI方式-SCE方式)を算出した。
【0090】
<最大谷深さ(Rv値)>
最大深さ(Rv値)を形状測定レーザーマイクロスコープ(VX―100、株式会社キーエンス製)を用いて、形状測定モードにより測定した。
具体的な測定方法としては、観察アプリケーション(VK-H1XV)を立ち上げ、x-yステージ上に測定する試料(硬化物)を静置し、形状測定モードにおいて50倍の対物レンズで、オートフォーカスにてピントを合わせた。必要に応じてz軸をコントロールし、フォーカスを最適な位置に調整した。自動測定モードまたは手動測定モードにて、観察画像の取り込みを行った。次に解析アプリケーション(VK-H1XA)を立ち上げ、測定を開始した。
測定条件として、観察測定範囲(面積)は55,965μmとし、評価箇所はサンプルの中心部分から外部に向かって等間隔に10箇所のRvの値をそれぞれ測定し、その平均を硬化物表面の最大深さ(Rv値)とした。
【0091】
<L値>
硬化物のLab色空間における、L値は、硬化物に対して色差計(コニカミノルタ株式会社製、CM-2600d)を使って測定した。
【0092】
<センサーへの受光性>
硬化物のセンサーへの受光性をデジタルルクスメーター(BT-881D、BTMETER社製)にて評価した。
デジタルルクスメーターの表示値が0.00Luxとなる部屋(暗室)に、試験基板(硬化物)を置いた。レーザーポインター(サシ-41N)を用いて、高さ0.3m、水平距離1.3m離れた固定位置より、レーザー光を試験基板に照射した。レーザー照射点から水平方向に3cmの位置にデジタルルクスメーターの受光部を設置し、表示値を読み取り、その値から下記評価基準により評価した。
-評価基準-
◎:表示値が、0Lux以上0.5Lux未満
〇:表示値が、0.5Lux以上5Lux未満
×:表示値が、5Lux以上
【0093】
【表3】
【0094】
表3から明らかなように、硬化物表面の360nm~730nmにおいてSCI方式の値-SCE方式の値(正反射率)の値が2.5%以下であり、かつSCI方式の値(全反射率)が6.3%以下である実施例1~5は、硬化物のセンサーへの受光性の評価結果が「◎」または「〇」であった。これに対し、正反射率の値が4.2%、4.4%である比較例1、2は、センサー受光性の評価結果が「×」であった。また、全反射率が7.5%である比較例3は、センサー受光性の評価結果が「×」であった。比較例1~3の結果から、正反射率または全反射率のいずれかが低いだけでは、センサーへの受光性の評価を良好にすることはできないことが明らかになった。
以上から、正反射率が2.5%以下であり、かつ全反射率が6.3%以下である硬化物が、光の反射を抑制できる硬化物であることが明らかになった。
【0095】
以上、本発明を実施するための形態について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。