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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143509
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】積層体及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241003BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056232
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】乾 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AA20
2H149BA02
2H149BA12
2H149DA02
2H149EA02
2H149EA10
2H149EA19
2H149FA03W
2H149FA26Y
2H149FA28W
2H149FA42W
2H149FA42Y
2H149FA58W
2H149FD05
2H291FA22
2H291FA30
2H291FA81
2H291FB05
2H291FB21
2H291FB22
2H291PA42
2H291PA53
(57)【要約】
【課題】簡便に3次元表示を可能とする積層体及び表示装置を提供する。
【解決手段】積層体3は、二色性色素化合物Aを有する水平配向光吸収異方性膜Aと、二色性色素化合物Bを有する水平配向光吸収異方性膜Bとを含み、水平配向光吸収異方性膜Aにおける吸収軸方向及び極大吸収波長と、前記水平配向光吸収異方性膜Bにおける吸収軸方向及び極大吸収波長とが互いに異なっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二色性色素化合物Aを有する水平配向光吸収異方性膜Aと、二色性色素化合物Bを有する水平配向光吸収異方性膜Bとを含み、
前記水平配向光吸収異方性膜Aにおける吸収軸方向及び極大吸収波長と、前記水平配向光吸収異方性膜Bにおける吸収軸方向及び極大吸収波長とが互いに異なっている、積層体。
【請求項2】
前記二色性色素化合物A及び前記二色性色素化合物Bは、シアン、マゼンダ、イエローの群又はレッド、グリーン、ブルーの群のうちの異なる色相からそれぞれ選択されている、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記二色性色素化合物A及び前記二色性色素化合物Bは、シアン、マゼンダ、イエローの群又はレッド、グリーン、ブルーの群のうちの異なる色相からそれぞれ2種ずつ選択されている、請求項1記載の積層体。
【請求項4】
前記水平配向光吸収異方性膜A及び前記水平配向光吸収異方性膜Bは、いずれも重合性液晶化合物を有する光吸収異方性膜形成用組成物の硬化物である、請求項1記載の積層体。
【請求項5】
前記水平配向光吸収異方性膜A及び前記水平配向光吸収異方性膜Bの少なくとも一方において、前記重合性液晶化合物は、スメクチック相を形成する液晶化合物である、請求項4記載の積層体。
【請求項6】
前記水平配向光吸収異方性膜A及び前記水平配向光吸収異方性膜Bの双方において、前記重合性液晶化合物は、スメクチック相を形成する液晶化合物である、請求項4記載の積層体。
【請求項7】
位相差がπ/2であり、前記水平配向光吸収異方性膜A及び前記水平配向光吸収異方性膜Bのそれぞれの吸収軸に対して45°±5°の方位に遅相軸を有する位相差板を更に含む、請求項1記載の積層体。
【請求項8】
前記位相差板の正面位相差値Re(λ)が下記式(1)を満たす、請求項7記載の積層体。
Re(450)<Re(550)<Re(650)…(1)
【請求項9】
前記水平配向光吸収異方性膜Aと、前記水平配向光吸収異方性膜Bと、前記位相差板とがこの順に積層されている、請求項7記載の積層体。
【請求項10】
前記位相差板と、前記水平配向光吸収異方性膜Aと、前記水平配向光吸収異方性膜Bとがこの順に積層されている、請求項7記載の積層体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項記載の積層体と、
前記積層体に向けて光を出力する光源と、を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や有機EL表示装置などのフラットパネル表示装置に適用される積層体として、例えば偏光子として機能するものが知られている。このような積層体としては、例えば特許文献1に記載の偏光フィルムがある。この従来の偏光フィルムは、二色性色素化合物を含む光吸収異方性膜を含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-211770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、上述のような表示装置において、高い臨場感や実在感を提供できる3次元映像技術の研究開発が進められている。このため、簡便に3次元表示を可能とする技術が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、簡便に3次元表示を可能とする積層体及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る積層体は、二色性色素化合物Aを有する水平配向光吸収異方性膜Aと、二色性色素化合物Bを有する水平配向光吸収異方性膜Bとを含み、水平配向光吸収異方性膜Aにおける吸収軸方向及び極大吸収波長と、水平配向光吸収異方性膜Bにおける吸収軸方向及び極大吸収波長とが互いに異なっている。
【0007】
この積層体では、吸収軸方向及び極大吸収波長が互いに異なる水平配向光吸収異方性膜A,Bが組み合わせられている。このため、積層体を1つの画素として白色光を入力した場合に、水平配向光吸収異方性膜のそれぞれの吸収軸方向に応じて異なる色相の光を1画素で出力させることができる。したがって、例えば画素毎に水平配向光吸収異方性膜A,Bの吸収軸方向が互いに異なるように積層体を配置することで、簡便に3次元表示を実現できる。
【0008】
二色性色素化合物A及び二色性色素化合物Bは、シアン、マゼンダ、イエローの群又はレッド、グリーン、ブルーの群のうちの異なる色相からそれぞれ選択されていてもよい。この場合、積層体から出力した光において十分な視差を生じさせることができる。したがって、より簡便に3次元表示を実現できる。
【0009】
二色性色素化合物A及び二色性色素化合物Bは、シアン、マゼンダ、イエローの群又はレッド、グリーン、ブルーの群のうちの異なる色相からそれぞれ2種ずつ選択されていてもよい。この場合、積層体から出力した光において十分な視差を生じさせることができる。したがって、より簡便に3次元表示を実現できる。
【0010】
水平配向光吸収異方性膜A及び水平配向光吸収異方性膜Bは、いずれも重合性液晶化合物を有する光吸収異方性膜形成用組成物の硬化物であってもよい。この場合、二色性色素化合物の配向状態を好適に固定できる。
【0011】
水平配向光吸収異方性膜A及び水平配向光吸収異方性膜Bの少なくとも一方において、重合性液晶化合物は、スメクチック相を形成する液晶化合物であってもよい。これにより、より高い偏光特性を得ることができる。
【0012】
水平配向光吸収異方性膜A及び水平配向光吸収異方性膜Bの双方において、重合性液晶化合物は、スメクチック相を形成する液晶化合物であってもよい。これにより、より高い偏光特性を得ることができる。
【0013】
積層体は、位相差がπ/2であり、水平配向光吸収異方性膜A及び水平配向光吸収異方性膜Bのそれぞれの吸収軸に対して45°±5°の方位に遅相軸を有する位相差板を更に含んでもよい。位相差板を組み合わせることで、積層体の機能の拡張が図られる。
【0014】
位相差板の正面位相差値Re(λ)が下記式(1)を満たしてもよい。これにより、所望の光学特性を有する位相差板が得られる。
Re(450)<Re(550)<Re(650)…(1)
【0015】
積層体において、水平配向光吸収異方性膜Aと、水平配向光吸収異方性膜Bと、位相差板とがこの順に積層されていてもよい。この場合、水平配向光吸収異方性膜Aから入力された光に対する反射防止膜として位相差板を機能させることができる。
【0016】
積層体において、位相差板と、水平配向光吸収異方性膜Aと、水平配向光吸収異方性膜Bとがこの順に積層されていてもよい。この場合、積層体から出力される光を円偏光とすることができる。したがって、積層体に対する視線がある程度傾いたとしても画像の視認が可能となる。
【0017】
本開示の一側面に係る表示装置は、上記積層体と、積層体に向けて光を出力する光源と、を備える。
【0018】
この表示装置では、積層体において吸収軸方向及び極大吸収波長が互いに異なる水平配向光吸収異方性膜A,Bが組み合わせられている。このため、積層体を1つの画素として白色光を入力した場合に、水平配向光吸収異方性膜のそれぞれの吸収軸方向に応じて異なる色相の光を1画素で出力させることができる。したがって、例えば画素毎に水平配向光吸収異方性膜A,Bの吸収軸方向が互いに異なるように積層体を配置することで、簡便に3次元表示を実現できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、簡便に3次元表示が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の第1実施形態に係る表示装置の構成を示す模式的な図である。
図2】本開示の第2実施形態に係る表示装置の構成を示す模式的な図である。
図3】実施例に係る表示装置の評価結果を示す図である。
図4】比較例に係る表示装置の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る積層体及び表示装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本開示の第1実施形態に係る表示装置の構成を示す模式的な図である。図1に示す表示装置1Aは、光源2と、積層体3とによって構成されている。表示装置1Aとしては、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置、電子放出表示装置、電子ペーパー、圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。
【0023】
表示装置1Aは、ここでは、3次元画像を表示する装置として構成されている。光源2は、積層体3に向けて光を出力する部分である。光源2は、例えば白色LEDなどの白色光Lを出力する装置によって構成されている。図1における積層体3は、表示装置1Aにおける1つの画素に対応している。本実施形態では、積層体3は、光源2と反対側から見た場合に、偏光板11A(後述の水平配向光吸収異方性膜Aを含む偏光板)と、偏光板11B(後述の水平配向光吸収異方性膜Bを含む偏光板)と、位相差板12とがこの順に積層されることによって構成されている。すなわち、本実施形態では、偏光板11Bと光源2との間に位相差板12が配置されている。
【0024】
偏光板11A及び偏光板11Bは、所定方向の所定波長の光を吸収する機能を有する部材である。偏光板11A及び偏光板11Bは、例えばガラス基材に配向膜及び水平配向光吸収異方性膜を積層することによって構成されている。ガラス基材は、特に可視光に対する透明性を有し、波長380nm~波長780nmの光に対する透過率が80%以上となっている。ガラス基材の厚さは、実用的な取扱性と加工性とを考慮し、例えば5μm~300μmであり、好ましくは20μm~200μmであり、より好ましくは20μm~100μmである。
【0025】
偏光板11A及び偏光板11Bの基材は、樹脂基材であってもよい。この場合の樹脂材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;及びポリフェニレンオキシド等が挙げられる。中でも光学フィルム用途で使用する際の透明性等の観点からトリアセチルセルロース、環状オレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレートのいずれかから選ばれるフィルム基材がより好ましい。
【0026】
配向膜は、水平配向光吸収異方性膜に含まれる二色性色素化合物を所定の方向に配向させる規制力を有する膜である。配向膜は、水平配向光吸収異方性膜を形成する組成物(光吸収異方性膜形成用組成物)に含まれる二色性色素化合物を配向することで、偏光板11A,11Bの吸収軸方向を所望の方向に調整する。水平配向光吸収異方性膜の吸収軸方向は、例えば配向膜の規制力方向と同じ方向となる。
【0027】
配向膜は、光吸収異方性膜形成用組成物の塗布等に対する耐溶解性を有していると共に、溶剤の除去及び二色性色素の配向のための加熱処理に対する耐熱性を有している。配向膜の厚さは、配向規制力の十分な発現を考慮し、例えば10nm~1200nmであり、好ましくは10nm~1000nmであり、より好ましくは10nm~500nmであり、さらに好ましくは10nm~200nmであり、特に好ましくは50nm~150nmである。
【0028】
配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜、及び表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられる。
【0029】
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステルが挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」と称す)を基材に塗布し、溶剤を除去すること、又は、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングすること(ラビング法)で得られる。
【0031】
溶剤としては、有機溶剤が好ましく、有機溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;及び、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤などが挙げられる。溶剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。溶剤の含有量は、配向性ポリマー組成物100質量部に対して、好ましくは100~1900質量部であり、より好ましくは150~900質量部であり、さらに好ましくは180~600質量部である。
【0032】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20%が好ましく、0.1~10%がさらに好ましい。配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0033】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0034】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0035】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」と称す)を基材に塗布し、偏光(好ましくは偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0036】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応若しくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応又は光架橋反応に関与する基が配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
【0037】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、及び、アゾキシベンゼン構造を有する基が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0038】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基及びカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0039】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶剤としては、「配向性ポリマー組成物」のところに記載の溶剤と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマー或いはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0040】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマー又はモノマーの含有量は、ポリマー又はモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%以上とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲とすることがより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコ-ルやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0041】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0042】
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去したものに偏光UVを直接照射する方式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する方式でもよい。当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。
【0043】
当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レ-ザ-などが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプが好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテ-ラ-などの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。なお、ラビング又は偏光照射を行うときにマスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0044】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターン又は複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0045】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像及びリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、及び、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0046】
水平配向光吸収異方性膜は、二色性色素化合物を含んで構成されている。二色性色素化合物は、分子の長軸方向における吸光度と、分子の短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素化合物である。二色性色素化合物を含んで構成された水平配向光吸収異方性膜を含む偏光板11A,11Bは、所定の方向に吸収方向を有していると共に、所定の波長範囲に極大吸収波長を有している。
【0047】
二色性色素化合物A及び二色性色素化合物Bは、シアン、マゼンダ、イエローの群又はレッド、グリーン、ブルーの群のうちの異なる色相からそれぞれ選択されてもよい。二色性色素化合物A及び二色性色素化合物Bは、シアン、マゼンダ、イエローの群又はレッド、グリーン、ブルーの群のうちの異なる色相からそれぞれ2種ずつ選択されてもよい。
【0048】
二色性色素としては、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素が挙げられ、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、及びスチルベンアゾ色素が挙げられ、中でもビスアゾ色素及びトリスアゾ色素が好ましい。
【0049】
アゾ色素としては、式(I)で表される化合物(以下、場合により「化合物(I)」と称す)が挙げられる。
(-N=N-K-N=N-K (I)
[式(I)中、K及びKは、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表わす。Kは、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表わす。pは1~4の整数を表わす。pが2以上の整数である場合、複数のKは互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0050】
1価の複素環基としては、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0051】
及びKにおけるフェニル基、ナフチル基及び1価の複素環基、並びにKにおけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基及び2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基などの置換又は無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つ又は2つ有するアミノ基、或いは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は、-NHである。)が挙げられる。
【0052】
化合物(I)の中でも、式(I-1)~式(I-8)のいずれかで表される化合物が好ましく、式(I-1)~式(I-3)のいずれかで表される化合物がより好ましく、式(I-1)及び式(I-3)のいずれかで表される化合物がさらに好ましい。
【化1】

[式(I-1)~(I-8)中、B~B30は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(置換アミノ基及び無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子又はトリフルオロメチル基を表わす。n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表わす。n1が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、n2が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、n3が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、n4が2以上である場合、複数のB14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化2】

[式(I-9)中、R~Rは、互いに独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR又はハロゲン原子を表わす。Rは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0053】
前記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化3】

[式(I-10)中、R~R15は、互いに独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR又はハロゲン原子を表わす。Rは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0054】
前記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化4】

[式(I-11)中、R16~R23は、互いに独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR又はハロゲン原子を表わす。Rは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0055】
上記式(I-9)、式(I-10)、及び式(I-11)において、Rの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基及びナフチル基が挙げられる。
【0056】
前記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物及び式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化5】

[式(I-12)中、D及びDは、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表わす。
【化6】

n5は1~3の整数を表わす。]
【化7】

[式(I-13)中、D及びDは、互いに独立に、式(I-13a)~式(I-13h)のいずれかで表される基を表わす。
【化8】

n6は1~3の整数を表わす。]
【0057】
これらの二色性色素の中でも、配向性の観点から、アゾ色素が好ましい。
【0058】
偏光板11Aには、二色性色素化合物Aを有する水平配向光吸収異方性膜Aが設けられており、偏光板11Bには、二色性色素化合物Aとは異なる二色性色素化合物Bを有する水平配向光吸収異方性膜Bが設けられている。水平配向光吸収異方性膜Aにおける吸収軸方向及び極大吸収波長と、水平配向光吸収異方性膜Bにおける吸収軸方向及び極大吸収波長とは、互いに異なっている。図1の例では、偏光板11Aの吸収軸方向は、90°±5°となっており、極大吸収波長は、例えば600nm~680nmとなっている。また、偏光板11Bの吸収軸方向は、0°±5°となっており、極大吸収波長は、500nm~580nmとなっている。
【0059】
水平配向光吸収異方性膜の極大吸収波長は、当該水平配向光吸収異方性膜に含まれる二色性色素化合物を溶媒に溶解させて測定用試料とし、当該測定用試料を紫外可視分光光度計を用いて吸収スペクトルを測定し、得られた吸収スペクトルから極大吸光度となる波長を測定することにより求めることができる。
【0060】
水平配向光吸収異方性膜は、二色性色素化合物を含む光吸収異方性膜形成用組成物を配向膜上に塗布及び乾燥することで形成できる。塗布手法は、上述した配向膜形成用組成物の塗布手法と同様の手法を用いることができる。光吸収異方性膜形成用組成物における二色性色素化合物の含有量は、二色性色素の配向を良好にする観点から、光吸収異方性膜形成用組成物の固形分100質量部に対して、0.1質量部~30質量部であることが好ましく、0.1質量部~20質量部であることがより好ましく、0.1質量部~10質量部であることが更に好ましく、0.1質量部~5質量部であることが特に好ましい。ここでの固形分とは、光吸収異方性膜形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計量である。
【0061】
二色性色素化合物A及び二色性色素化合物Bの少なくとも一方、好ましくは双方を構成する光吸収異方性膜形成用組成物は、重合性液晶化合物、溶剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、及び重合性非液晶化合物などを含んでもよい。重合性液晶化合物を含む水平配向光吸収異方性膜では、強度が向上すると共に、色ムラの減少も図られる。光吸収異方性膜形成用組成物に重合性液晶化合物が含まれる場合、光吸収異方性膜形成用組成物を乾燥して得られた乾燥膜を硬化させてもよい。硬化とは、当該乾燥膜に含まれる重合性液晶化合物を重合することである。重合方法としては、加熱、光照射などが挙げられる。硬化により、乾燥膜に含まれる二色性色素の配向状態を固定することができる。
【0062】
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ液晶性を示す化合物である。重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応し得る基である。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基などが挙げられる。液晶性を示す化合物としては、サーモトロピック性液晶、リオトロピック性液晶などが挙げられ、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。液晶性を示す化合物は、サーモトロピック液晶におけるネマチック液晶或いはスメクチック液晶であってもよい。
【0063】
重合性液晶化合物は、より高い偏光特性を得る観点から、スメクチック相を形成する液晶化合物が好ましい。スメクチック相としては、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相、スメクチックL相が挙げられ、スメクチックB相、スメクチックF相、又はスメクチックI相が好ましく、スメクチックB相がより好ましい。これらのスメクチック相は、これらの高次スメクチック相であってもよい。
【0064】
重合性液晶化合物によって形成される液晶相がこれらの高次スメクチック相である場合、より配向秩序の高い水平配向光吸収異方性膜を得ることができる。配向秩序度の高い水平配向光吸収異方性膜では、X線回折測定において、ヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。当該ブラッグピークは、分子配向の周期構造に由来するピークである。重合性液晶化合物によって形成される液晶相がこれらの高次スメクチック相である場合、分子配向の周期間隔が例えば3.0Å~6.0Åである水平配向光吸収異方性膜を得ることができる。
【0065】
重合性液晶化合物としては、下記式(B1)で表される化合物及び該化合物の重合体(以下、該化合物及び該重合体を総称して、「重合性液晶化合物(B1)」とも称す)が挙げられる。
-V-W-X-Y-X-Y-X-W-V-U (B1)
[式(B1)中、X、X及びXは、互いに独立に、2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を表す。該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が酸素原子又は硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X、X及びXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。Y及びYは、互いに独立に、単結合又は二価の連結基である。Uは、水素原子又は重合性基を表わす。Uは、重合性基を表わす。W及びWは、互いに独立に、単結合又は二価の連結基である。V及びVは、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-CO-、-S-又はNH-に置き換わっていてもよい。]
【0066】
重合性液晶化合物(B1)において、X、X及びXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。特に、X及びXは置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であることが好ましく、該シクロへキサン-1,4-ジイル基は、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることがさらに好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基及び塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。また、Y及びYが同一構造である場合、X、X及びXのうち少なくとも1つが異なる構造であることが好ましい。X、X及びXのうち少なくとも1つが異なる構造である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0067】
及びYは、互いに独立して、-CHCH-、-CHO-、-CHCHO-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-、-CR=N-、又はCO-NR-が好ましい。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表わす。Yは、-CHCH-、-COO-、又は単結合であることがより好ましく、Yは、-CHCH-、又はCHO-であることがより好ましい。また、X、X及びXが全て同一構造である場合、Y及びYが互いに異なる構造であることが好ましい。Y及びYが互いに異なる構造である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0068】
は、重合性基である。Uは、水素原子又は重合性基であり、好ましくは重合性基である。U及びUがともに重合性基であることが好ましく、ともに光重合性基であることが好ましい。光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことを意味する。
【0069】
で示される光重合性基とUで示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基がさらに好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0070】
及びVで表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基及びイコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。V及びVは、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
【0071】
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基及びハロゲン原子が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換且つ直鎖状のアルカンジイル基であることがより好ましい。
【0072】
及びWとしては、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、又はOCOO-が好ましく、より好ましくは単結合又は-O-である。
【0073】
重合性液晶化合物(B1)としては、下記式(B-1)~式(B-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(B1)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】
【0074】
これらの中でも、式(B-2)、式(B-3)、式(B-4)、式(B-5)、式(B-6)、式(B-7)、式(B-8)、式(B-13)、式(B-14)、式(B-15)、式(B-16)、及び式(B-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0075】
例示した重合性液晶化合物は、単独又は組み合わせて、使用することができる。2種以上の重合性液晶化合物を組み合わせる場合には、少なくとも1種が重合性液晶化合物であると好ましく、2種以上が重合性液晶化合物であるとより好ましい。組み合わせることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度でも一時的に液晶性を保持することができる場合がある。2種類の重合性液晶化合物を組み合わせる場合の混合比としては、通常、1:99~50:50であり、好ましくは5:95~50:50であり、より好ましくは10:90~50:50である。
【0076】
重合性液晶化合物は、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)、特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造される。
【0077】
光吸収異方性膜形成用組成物の固形分における重合性液晶化合物の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。本明細書において、光吸収異方性膜形成用組成物における固形分とは、光吸収異方性膜形成用組成物から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量をいう。
【0078】
溶剤としては、「配向性ポリマー組成物」のところに記載の溶剤と同様のものが挙げられ、溶剤の含有量は、光吸収異方性膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは100~1900質量部、より好ましくは150~900質量部、さらに好ましくは180~600質量部である。
【0079】
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤として、通常、波長300nm~380nmに光吸収を有する光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温下で重合反応を開始できる。具体的には、吸収した光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0080】
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩、及びスルホニウム塩が挙げられる。これらの重合開始剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0081】
ベンゾイン化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びベンゾインイソブチルエーテルが挙げられる。ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノンが挙げられる。
【0082】
アルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーが挙げられる。
【0083】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0084】
トリアジン化合物としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチ_ル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0085】
光重合開始剤には、市販のものを用いることができる。市販の重合開始剤としては、”イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907”、”イルガキュア(登録商標)184”、”イルガキュア(登録商標)651”、”イルガキュア(登録商標)819”、”イルガキュア(登録商標)250”、”イルガキュア(登録商標)369”(チバ・ジャパン(株));”セイクオール(登録商標)BZ”、”セイクオール(登録商標)Z”、”セイクオール(登録商標)BEE”(精工化学(株));”カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100”(日本化薬(株));”カヤキュアー(登録商標)UVI-6992”(ダウ社製);”アデカオプトマーSP-152”、”アデカオプトマーSP-170”((株)ADEKA);”TAZ-A”、”TAZ-PP”(日本シイベルヘグナー社);及び”TAZ-104”(三和ケミカル社)が挙げられる。
【0086】
重合開始剤の含有量は、光吸収異方性膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。重合開始剤の含有量が上記の下限値以上であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合できる。また、重合開始剤の含有量が上記の上限値以下であると、長期保管安定性を向上でき、得られる偏光膜の配向欠陥の発生をより抑制又は防止しやすい。
【0087】
増感剤としては、光増感剤が好ましい。光増感剤としては、キサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレンが挙げられる。増感剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0088】
光吸収異方性膜形成用組成物が増感剤を含有する場合、該組成物に含有される重合性液晶化合物の重合反応をより促進することができる。増感剤の使用量は、重合開始剤及び重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0089】
光吸収異方性膜形成用組成物の重合反応をより安定的に進行させるために、該組成物には適量の重合禁止剤を含有してもよく、これにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いを制御しやすくなる。
【0090】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコールなど)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカルなどのラジカル補足剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類及びβ-ナフトール類が挙げられる。
【0091】
光吸収異方性膜形成用組成物が重合禁止剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物の種類及びその量、並びに増感剤の使用量などに応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合禁止剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0092】
光吸収異方性膜形成用組成物は、1以上のレベリング剤を含んでいてよい。レベリング剤は、光吸収異方性膜形成用組成物の流動性を調整し、該組成物を塗布することにより得られる塗布膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0093】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、”BYK-350”、”BYK-352”、”BYK-353”、”BYK-354”、”BYK-355”、”BYK-358N”、”BYK-361N”、”BYK-380”、”BYK-381”及び”BYK-392”[BYK Chemie社]が挙げられる。
【0094】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、”メガファック(登録商標)R-08”、同”R-30”、同”R-90”、同”F-410”、同”F-411”、同”F-443”、同”F-445”、同”F-470”、同”F-471”、同”F-477”、同”F-479”、同”F-482”及び同”F-483”[DIC(株)];”サーフロン(登録商標)S-381”、同”S-382”、同”S-383”、同”S-393”、同”SC-101”、同”SC-105”、”KH-40”及び”SA-100”[AGCセイミケミカル(株)];”E1830”、”E5844”[(株)ダイキンファインケミカル研究所];”エフトップEF301”、”エフトップEF303”、”エフトップEF351”及び”エフトップEF352”[三菱マテリアル電子化成(株)]が挙げられる。
【0095】
光吸収異方性膜形成用組成物がレベリング剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。レベリング剤の含有量が上記の範囲内であると、得られる偏光膜がより平滑化しやすく、ムラも生じにくい傾向がある。
【0096】
<偏光膜>
本開示の積層体に用いる水平配向光吸収異方性膜Aおよび水平配向光吸収異方性膜Bは、偏光膜としての機能を有し(以下、単に「偏光膜」とも称す)、当該偏光膜は、偏光機能を有する膜(フィルム)であり、配向状態の重合性液晶に二色性色素が包摂されていることが好ましい。本開示の積層体に用いる偏光膜は、前記偏光膜形成用組成物から形成されることが好ましく、配向欠陥がほとんど又は全くなく、優れた偏光性能を有する。
【0097】
本開示の積層体に用いる偏光膜は、例えば前記偏光膜形成用組成物の塗膜を形成し、該塗膜から有機溶剤を乾燥除去する工程(ii)、及び重合性液晶化合物をスメクチック液晶相の状態で配向硬化させる工程(iii)を含む方法により製造することができる。
【0098】
工程(ii)は、前述の基材、配向膜又は他の層(例えば機能層)上に前記偏光膜形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で有機溶剤を乾燥除去し、乾燥被膜を得る工程である。偏光膜は基材や他の層(例えば機能層)上に直接塗布してもよいが、配向規則力を有する配向膜上に塗布することが好ましい。
【0099】
工程(ii)において、乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法が挙げられる。重合性液晶化合物が重合性スメクチック液晶化合物である場合、乾燥被膜に含まれる重合性スメクチック液晶化合物の液晶状態をネマチック相(ネマチック液晶状態)にした後、スメクチック相に転移させることが好ましい。ネマチック相を経由してスメクチック相を形成させるためには、例えば乾燥被膜に含まれる重合性スメクチック液晶化合物がネマチック相の液晶状態に相転移する温度以上に乾燥被膜を加熱し、次いで重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を示す温度まで冷却するといった方法が採用される。
【0100】
工程(iii)は、乾燥皮膜中の重合性液晶化合物をスメクチック液晶相の状態で配向硬化させる工程である。以下に、工程(ii)で乾燥被膜中の重合性液晶化合物の液晶状態をスメクチック相にした後、スメクチック相の液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を光重合させる方法について説明する。光重合において、乾燥被膜に照射する光としては、当該乾燥被膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する光重合基の種類)及びその量に応じて適宜選択される。
【0101】
その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線及びγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって光重合可能なように重合性液晶組成物に含有される重合性液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥被膜を冷却しながら光照射することにより、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても適切に偏光膜を形成できる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた偏光膜を得ることもできる。
【0102】
前記活性エネルギー線の光源としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0103】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cmである。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分、より好ましくは5秒~3分、さらに好ましくは10秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回又は複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm、好ましくは50~2,000mJ/cm、より好ましくは100~1,000mJ/cmである。
【0104】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、偏光膜が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる偏光膜は、前記二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光膜、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる偏光膜と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点がある。
【0105】
偏光膜の厚みは、適用される表示装置などに応じて適宜選択でき、好ましくは0.1~5μmであり、より好ましくは0.3~4μmであり、さらに好ましくは0.5~3μmである。
【0106】
本開示に用いる偏光膜形成用組成物は、長期保管安定性に優れるため、長期保管後に使用することができる。そのため、工程(ii)では、保管後の偏光膜形成用組成物を使用してもよい。保管後の偏光膜形成用組成物を使用する場合、得られる偏光膜の配向欠陥を有効に抑制又は防止する観点から、さらに工程(i)を行うことが好ましい。
【0107】
工程(i)は、偏光膜形成用組成物を保管する工程である。工程(i)において、保管温度は、好ましくは15~35℃、より好ましくは20~30℃である。偏光膜形成用組成物は有機溶剤が蒸発しないように、通常密封状態で保管する。偏光膜形成用組成物を入れた容器は、遮蔽することができるが、本開示に用いる偏光膜形成用組成物は、特に該組成物中の二色性色素が光重合開始剤に起因するラジカルを発生し得る紫外光(波長380nm)を吸収し得るため、遮蔽しなくても長期保管安定性に優れる。
【0108】
位相差板12は、例えば1/4波長板としての機能を有する部材である。位相差板12は、例えばガラス基材に光配向膜及び位相差膜を積層することによって構成されている。位相差板12は、位相差がπ/2であり、二色性色素化合物A及び二色性色素化合物Bのそれぞれの吸収軸に対して45°±5°の方位に遅相軸を有している。位相差板12は、以下の式(1)で表される光学特性を有していることが好ましく、以下の式(1)を満たし、かつ以下の式(2)、式(4)、及び式(5)で表される光学特性を有していることがより好ましく、以下の式(1)を満たし、かつ以下の式(3)、式(4)、及び式(5)で表される光学特性を有していることが更に好ましい。下記式(1)~式(5)中、Re(λ)は、波長λnmの光に対する正面位相差値である。
Re(450)<Re(550)<Re(650)…(1)
100nm<Re(550)<160nm …(2)
130nm<Re(550)<150nm …(3)
Re(450)/Re(550)≦1.00 …(4)
1.00≦Re(650)/Re(550) …(5)
【0109】
正面位相差値は、下記式(6)によって決定される。式(6)中、dは厚さ、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。所望の正面位相差値を得るためには、dとΔn(λ)とを調整すればよい。正面位相差値の調整により、1/4波長板としての位相差板12を得ることができる。
Re(λ)=d×Δn(λ) …(6)
【0110】
上記構成を有する表示装置1Aでは、光源2から出力した白色光Lが位相差板12に入力される。位相差板12に入力された白色光Lは、振動方向が位相差板12の遅相軸方向に揃った光となり、偏光板11B及び偏光板11Aにこの順に入力される。偏光板11Bを通って偏光板11Aから出力した光は、偏光板11Bの吸収軸方向(ここでは0°±5°)については、偏光板11Aの二色性色素化合物Aに対応する色相の光Laを含んでおり、偏光板11Aの吸収軸方向(ここでは90°±5°)については、偏光板11Bの二色性色素化合物Bに対応する色相の光Lbを含んでいる。
【0111】
以上説明したように、表示装置1Aに適用される積層体3では、吸収軸方向及び極大吸収波長が互いに異なる水平配向光吸収異方性膜A,Bが組み合わせられている。このため、積層体3を1つの画素として白色光Lを入力した場合に、水平配向光吸収異方性膜A,Bのそれぞれの吸収軸方向に応じて異なる色相の光La,Lbを1画素で出力させることができる。したがって、例えば画素毎に水平配向光吸収異方性膜A,Bの吸収軸方向が互いに異なるように積層体3を配置することで、簡便に3次元表示を実現できる。
【0112】
本実施形態では、二色性色素化合物A及び二色性色素化合物Bは、シアン、マゼンダ、イエローの群又はレッド、グリーン、ブルーの群のうちの異なる色相からそれぞれ選択されている。或いは、二色性色素化合物A及び二色性色素化合物Bは、シアン、マゼンダ、イエローの群又はレッド、グリーン、ブルーの群のうちの異なる色相からそれぞれ2種ずつ選択されている。これにより、積層体3から出力した光において十分な視差を生じさせることができる。したがって、より簡便に3次元表示を実現できる。
【0113】
本実施形態では、水平配向光吸収異方性膜A及び水平配向光吸収異方性膜Bは、いずれも重合性液晶化合物を有する光吸収異方性膜形成用組成物の硬化物となっている。これにより、二色性色素化合物の配向状態を好適に固定できる。また、本実施形態では、水平配向光吸収異方性膜A及び水平配向光吸収異方性膜Bの少なくとも一方或いは双方において、重合性液晶化合物は、スメクチック相を形成する液晶化合物となっている。これにより、より高い偏光特性を得ることができる。
【0114】
本実施形態では、位相差がπ/2であり、水平配向光吸収異方性膜A及び水平配向光吸収異方性膜Bのそれぞれの吸収軸に対して45°±5°の方位に遅相軸を有する位相差板12が更に設けられている。位相差板12を組み合わせることで、積層体3の機能の拡張が図られる。本実施形態では、積層体3において、水平配向光吸収異方性膜Aと、水平配向光吸収異方性膜Bと、位相差板12とがこの順に積層されている。これにより、水平配向光吸収異方性膜Aから入力された光に対する反射防止膜として位相差板12を機能させることができる。
【0115】
本実施形態では、位相差板12の正面位相差値Re(λ)が上記式(1)を満たしている。これにより、所望の光学特性を有する位相差板12が得られる。
【0116】
[第2実施形態]
図2は、本開示の第2実施形態に係る表示装置の構成を示す模式的な図である。図2に示すように、第2実施形態に係る表示装置1Bは、積層体3における位相差板12の配置位置が第1実施形態に係る表示装置1Aと異なっている。具体的には、本実施形態では、積層体3において、光源2と反対側から見た場合に、位相差板12と、偏光板11A(水平配向光吸収異方性膜A)と、偏光板11B(二色性色素化合物B)とがこの順に積層されている。すなわち、本実施形態では、表示装置1Bの最表面として位相差板12が配置されている。
【0117】
このような構成を有する表示装置1Bにおいても、上記表示装置1Aと同様に、積層体3を1つの画素として白色光Lを入力した場合に、水平配向光吸収異方性膜A,Bのそれぞれの吸収軸方向に応じて異なる色相の光La,Lbを1画素で出力させることができる。したがって、例えば画素毎に水平配向光吸収異方性膜A,Bの吸収軸方向が互いに異なるように積層体3を配置することで、簡便に3次元表示を実現できる。
【0118】
また、表示装置1Bでは、偏光板11Bを通って偏光板11Aから出力した光、すなわち、互いに異なる色相の光La及び光Lbが位相差板12を通ることで、いずれも円偏光となる。したがって、積層体3に対する視線がある程度傾いたとしても画像の視認が可能となる。
【0119】
[実施例]
以下、実施例により本開示を更に詳細に説明する。下記実施例中の「%」及び「部」は、特記が無い限り、「質量%」及び「質量部」である。各実施例及び各比較例における積層体の構成及び評価結果を図3及び図4にまとめる。
【0120】
[重合性液晶化合物の製造]
下記に示す構造を有する重合性液晶化合物(A-6)~(A-8)をそれぞれ製造した。重合性液晶化合物(A-6)及び(A-7)は、lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)記載の方法にしたがって製造した。重合性液晶化合物(A-8)は、特開2010-31223号公報に記載の方法と同様に準備した。
【化14】

(A-6)
【化15】

(A-7)
【化16】

(A-8)
【0121】
[二色性色素化合物の製造]
二色性色素化合物として、特開2013-101328号公報の実施例に記載の下記に示す構造を有するアゾ系二色性色素化合物(D-1)~(D-3)を用いた。
【化17】

(D-1)
【化18】

(D-2)
【化19】

(D-3)
【0122】
[二色性色素化合物の極大吸収波長の測定]
クロロホルム50mLに二色性色素化合物1mgを溶解させて測定用試料としての溶液を得た。光路長1cmの測定用セルに測定用試料を入れ、当該測定用試料を紫外可視分光光度計(UV-2450、株式会社島津製作所製)にセットして吸収スペクトルを測定し、得られた吸収スペクトルから極大吸光度となる波長を測定した。測定結果を表1に示す。
【表1】
【0123】
<実施例1>
[光吸収異方性膜形成用組成物(1)の調製]
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することにより、光吸収異方性膜形成用組成物(1)を得た。
・重合性液晶化合物:(A-6) 75部
・重合性液晶化合物:(A-7) 25部
・二色性色素:(D-1) 4.0部
・重合開始剤:2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
・レベリング剤[ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)]:1.2部
・溶剤:o-キシレン 250部
【0124】
[光吸収異方性膜形成用組成物(2)の調製]
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することにより、光吸収異方性膜形成用組成物(2)を得た。
・重合性液晶化合物:(A-6) 75部
・重合性液晶化合物:(A-7) 25部
・二色性色素:(D-2) 4.0部
・重合開始剤:2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
・レベリング剤[ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)]:1.2部
・溶剤:o-キシレン 250部
【0125】
[偏光板用の配向膜の作製]
透明基材としてガラス基材を用いた。当該ガラス基材上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液(配向膜形成用組成物)をスピンコート法により塗布し、厚さ100nmの乾燥膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向膜を形成した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ-008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA-20-RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。ラビング処理により、ガラス基材上に配向膜が形成された積層体(1)を得た。
【0126】
[偏光板(1)の作製]
積層体(1)の配向膜上に、光吸収異方性膜形成用組成物(1)をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で1分間加熱乾燥した後、速やかに室温まで冷却して、配向膜上に乾燥膜を形成した。この乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物の液晶状態は、スメクチックB相であった。次いで、UV照射装置(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用い、紫外線を露光量1000mJ/cm(365nm基準)で乾燥膜に照射することにより、乾燥膜に含まれる重合性液晶化合物を液晶状態を保持したまま重合させた。これにより、ガラス基材/配向膜/水平配向光吸収異方性膜(1)からなる偏光板(1)を作製した。
【0127】
[偏光板(2)の作製]
光吸収異方性膜形成用組成物(2)を用いた以外は上記と同様にして、ガラス基材/配向膜/水平配向光吸収異方性膜(2)からなる偏光板(2)を得た。
【0128】
[位相差膜形成用組成物の調製]
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することにより、位相差膜形成用組成物を得た。
・重合性液晶化合物:(A-8) 100部
・重合開始剤:イルガキュアOXE-03(チバスペシャルティケミカルズ社製)3部
・レベリング剤:ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)0.1部
・溶剤:シクロペンタノン 690部
【0129】
[位相差板用の光配向膜の作製]
下記に示す構造の光配向性材料(重量平均分子量:50000、m:n=50:50)を、特開2021-196514に記載の方法に準じて製造した。光配向性材料2部と、シクロペンタノン(溶剤)98部とを成分として混合し、得られた混合物を80℃で1時間撹拌することにより、位相差板用の光配向膜形成用組成物を調製した。
【化20】
【0130】
[位相差板の作製]
透明基材としてガラス基材を用いた。当該ガラス基材上に、位相差板用の光配向膜形成用組成物をスピンコート法により塗布し、80℃で1分間乾燥を行って乾燥膜を形成した。次いで、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cm2の積算光量で乾燥膜に偏光UV露光を実施し、ガラス基板上に光配向膜が形成された積層体(2)を得た。レーザ顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定した光配向膜の膜厚は、100nmであった。
【0131】
積層体(2)の光配向膜上に、上記位相差膜形成用組成物をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で1分間加熱乾燥した後、速やかに室温まで冷却して、光配向層上に乾燥膜を形成した。乾燥膜に含まれる重合性液晶化合物の液晶状態は、ネマチック相であった。高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、窒素雰囲気下にて露光量500mJ/cm2(365nm基準)の紫外光を乾燥膜に照射することにより位相差膜を形成し、ガラス基材/光配向膜/位相差膜からなる位相差板を得た。オリンパス株式会社製のレーザ顕微鏡LEXTOLS4100を用いて測定した位相差膜の膜厚は、2.0μmであった。
【0132】
[積層体の作製]
上記により得られた偏光板(1)、偏光板(2)、及び位相差板を積層し、実施例1~8に係る積層体を得た。同様の手法で得られた偏光板(3)、偏光板(4)、及び位相差板を積層し、実施例9~12に係る積層体を得た。同様の手法で得られた偏光板(5)、偏光板(6)、及び位相差板を積層し、実施例13,14に係る積層体を得た。同様の手法で得られた偏光板(7)及び位相差板を積層し、比較例1~4に係る積層体を得た。偏光板(3)~(7)の詳細は、後述する。
【0133】
[外観評価]
実施例1~14及び比較例1~4に係る積層体をバックライト上に載置し、最表面の偏光板に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して積層体の色相を目視で観察した。同様に、最表面の偏光板に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して積層体の色相を目視で観察した。
【0134】
[吸収スペクトル測定]
入射光に対して最表面の偏光板の吸収軸が45°方向となるように紫外可視分光光度計(UV-2450、株式会社島津製作所製)に実施例1~14及び比較例1~4に係る積層体をそれぞれセットし、吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定結果から、実施例1~14及び比較例1~4に係る積層体の極大吸収波長λmaxと半値幅とを評価した。
【0135】
[反射防止特性]
実施例1~14及び比較例1~4に係る積層体を平面鏡上に載置し、50cm離れた距離から目視で積層体を観察して反射防止特性を評価した。黒色表示となり良好な反射防止特性を有するものを「○」、黒色表示となったが一部で光透過が見られたものを「△」、黒色表示とならないものを「×」とした。
【0136】
<実施例1>
実施例1では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(1)、偏光板(2)、位相差板をこの順に積層して積層体とした。偏光板(1)及び偏光板(2)における偏光膜形成時(光硬化前)の重合性液晶化合物の液晶状態は、スメクチックB相であった。
・偏光板(1) 0°方向
・偏光板(2) 90°方向
・位相差板 45°方向
【0137】
実施例1の外観評価では、偏光板(1)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈し、偏光板(1)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈した。この結果から、実施例1の積層体が1画素で青色及び赤色の光を出力でき、画素毎に偏光板(1)及び偏光板(2)の吸収軸方向が互いに異なるように積層体を配置することで、簡便に3次元表示を実現できることが確認できた。実施例1のスペクトル測定では、極大吸収波長は582nm、半値幅は124nmであった。また、実施例1の反射防止特性は、「○」であった。
【0138】
<実施例2>
実施例2では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(1)、偏光板(2)、位相差板をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(1) 90°方向
・偏光板(2) 0°方向
・位相差板 45°方向
【0139】
実施例2の外観評価では、偏光板(1)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈し、偏光板(1)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈した。なお、紫外可視分光計を用いて偏光の向きを確認したところ、実施例1とは逆回りの円偏光となっていることを確認した。実施例2のスペクトル測定では、極大吸収波長は576nm、半値幅は122nmであった。また、実施例2の反射防止特性は、「○」であった。
【0140】
<実施例3>
実施例3では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、位相差板、偏光板(1)、偏光板(2)、をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(1) 0°方向
・偏光板(2) 90°方向
・位相差板 45°方向
【0141】
実施例3の外観評価では、偏光板(1)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈し、偏光板(1)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈した。実施例3のスペクトル測定では、極大吸収波長は578nm、半値幅は126nmであった。また、実施例3の反射防止特性は、「×」であった。
【0142】
<実施例4>
実施例4では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、位相差板、偏光板(1)、偏光板(2)、をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(1) 90°方向
・偏光板(2) 0°方向
・位相差板 45°方向
【0143】
実施例4の外観評価では、偏光板(1)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈し、偏光板(1)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈した。実施例4のスペクトル測定では、極大吸収波長は584nm、半値幅は122nmであった。また、実施例4の反射防止特性は、「×」であった。
【0144】
<実施例5>
実施例5では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(2)、偏光板(1)、位相差板をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(1) 90°方向
・偏光板(2) 0°方向
・位相差板 45°方向
【0145】
実施例5の外観評価では、偏光板(1)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈し、偏光板(1)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈した。実施例5のスペクトル測定では、極大吸収波長は576nm、半値幅は122nmであった。また、実施例5の反射防止特性は、「○」であった。
【0146】
<実施例6>
実施例6では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(2)、偏光板(1)、位相差板をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(1) 0°方向
・偏光板(2) 90°方向
・位相差板 45°方向
【0147】
実施例6の外観評価では、偏光板(1)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈し、偏光板(1)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈した。実施例6のスペクトル測定では、極大吸収波長は582nm、半値幅は124nmであった。また、実施例6の反射防止特性は、「○」であった。
【0148】
<実施例7>
実施例7では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、位相差板、偏光板(2)、偏光板(1)をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(1) 90°方向
・偏光板(2) 0°方向
・位相差板 45°方向
【0149】
実施例7の外観評価では、偏光板(1)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈し、偏光板(1)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈した。実施例7のスペクトル測定では、極大吸収波長は584nm、半値幅は122nmであった。また、実施例7の反射防止特性は、「×」であった。
【0150】
<実施例8>
実施例8では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、位相差板、偏光板(2)、偏光板(1)をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(1) 0°方向
・偏光板(2) 90°方向
・位相差板 45°方向
【0151】
実施例8の外観評価では、偏光板(1)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈し、偏光板(1)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈した。実施例8のスペクトル測定では、極大吸収波長は578nm、半値幅は126nmであった。また、実施例8の反射防止特性は、「×」であった。
[重合性液晶化合物の製造]
<実施例9>
【0152】
実施例9では、光吸収異方性膜形成用組成物の重合性液晶化合物として、下記式(LC242)に示す液晶化合物LC242(BASF社 登録商標)を用いた。
【化21】
【0153】
[光吸収異方性膜形成用組成物(3)の調製]
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することにより、光吸収異方性膜形成用組成物(3)を得た。
・重合性液晶化合物:LC242 100部
・二色性色素:(D-1) 4.0部
・重合開始剤:2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
・レベリング剤[ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)]:1.2部
・溶剤:o-キシレン 250部
【0154】
[光吸収異方性膜形成用組成物(4)の調製]
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することにより、光吸収異方性膜形成用組成物(4)を得た。
・重合性液晶化合物:LC242 100部
・二色性色素:(D-2) 4.0部
・重合開始剤:2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
・レベリング剤[ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)]:1.2部
・溶剤:o-キシレン 250部
【0155】
[積層体の作製]
実施例1と同様に、光吸収異方性膜形成用組成物(3)を用いて偏光板(3)を作製し、光吸収異方性膜形成用組成物(4)を用いて偏光板(4)を作製した。実施例9では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(3)、偏光板(4)、位相差板をこの順に積層して積層体とした。偏光板(3)及び偏光板(4)における偏光膜形成時(光硬化前)の重合性液晶化合物の液晶状態は、ネマチック相であった。
・偏光板(3) 0°方向
・偏光板(4) 90°方向
・位相差板 45°方向
【0156】
実施例9の外観評価では、偏光板(3)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈し、偏光板(3)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈した。実施例9のスペクトル測定では、極大吸収波長は526nm、半値幅は206nmであった。また、実施例9の反射防止特性は、「△」であった。
【0157】
<実施例10>
実施例10では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(3)、偏光板(4)、位相差板をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(3) 90°方向
・偏光板(4) 0°方向
・位相差板 45°方向
【0158】
実施例10の外観評価では、偏光板(3)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈し、偏光板(3)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈した。実施例10のスペクトル測定では、極大吸収波長は526nm、半値幅は206nmであった。また、実施例10の反射防止特性は、「△」であった。
【0159】
<実施例11>
実施例11では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、位相差板、偏光板(3)、偏光板(4)、をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(3) 0°方向
・偏光板(4) 90°方向
・位相差板 45°方向
【0160】
実施例11の外観評価では、偏光板(3)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈し、偏光板(3)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈した。実施例11のスペクトル測定では、極大吸収波長は524nm、半値幅は184nmであった。また、実施例11の反射防止特性は、「×」であった。
【0161】
<実施例12>
実施例12では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、位相差板、偏光板(3)、偏光板(4)、をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(3) 90°方向
・偏光板(4) 0°方向
・位相差板 45°方向
【0162】
実施例12の外観評価では、偏光板(3)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「赤色」を呈し、偏光板(3)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「青色」を呈した。実施例12のスペクトル測定では、極大吸収波長は528nm、半値幅は208nmであった。また、実施例12の反射防止特性は、「×」であった。
【0163】
<実施例13>
[光吸収異方性膜形成用組成物(5)の調製]
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することにより、光吸収異方性膜形成用組成物(5)を得た。
・重合性液晶化合物:(A-6) 75部
・重合性液晶化合物:(A-7) 25部
・二色性色素:(D-1) 2.5部
・二色性色素:(D-3) 2.5部
・重合開始剤:2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
・レベリング剤[ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)]:1.2部
・溶剤:o-キシレン 250部
【0164】
[光吸収異方性膜形成用組成物(6)の調製]
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することにより、光吸収異方性膜形成用組成物(6)を得た。
・重合性液晶化合物:(A-6) 75部
・重合性液晶化合物:(A-7) 25部
・二色性色素:(D-2) 2.5部
・二色性色素:(D-3) 2.5部
・重合開始剤:2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
・レベリング剤[ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)]:1.2部
・溶剤:o-キシレン 250部
【0165】
[積層体の作製]
実施例1と同様に、光吸収異方性膜形成用組成物(5)を用いて偏光板(5)を作製し、光吸収異方性膜形成用組成物(6)を用いて偏光板(6)を作製した。実施例13では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(5)、偏光板(6)、位相差板をこの順に積層して積層体とした。偏光板(5)及び偏光板(6)における偏光膜形成時(光硬化前)の重合性液晶化合物の液晶状態は、スメクチックB相であった。
・偏光板(5) 90°方向
・偏光板(6) 0°方向
・位相差板 45°方向
【0166】
実施例13の外観評価では、偏光板(5)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「緑色」を呈し、偏光板(5)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「橙色」を呈した。実施例13のスペクトル測定では、極大吸収波長は580nm、半値幅は146nmであった。また、実施例13の反射防止特性は、「○」であった。
【0167】
<実施例14>
実施例14では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(5)、偏光板(6)、位相差板をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(5) 0°方向
・偏光板(6) 90°方向
・位相差板 45°方向
【0168】
実施例14の外観評価では、偏光板(5)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「橙色」を呈し、偏光板(5)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「緑色」を呈した。実施例14のスペクトル測定では、極大吸収波長は586nm、半値幅は164nmであった。また、実施例14の反射防止特性は、「○」であった。
【0169】
<比較例1>
[偏光膜形成用組成物の調製]
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することにより、偏光膜形成用組成物を得た。
・重合性液晶化合物:(A-6) 75部
・重合性液晶化合物:(A-7) 25部
・二色性色素:(D-1) 2.5部
・二色性色素:(D-2) 2.5部
・二色性色素:(D-3) 2.5部
・重合開始剤:2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
・レベリング剤[ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)]:1.2部
・溶剤:o-キシレン 250部
【0170】
[積層体の作製]
実施例1と同様に、偏光膜形成用組成物を用いて偏光板(7)を作製した。偏光板(7)における偏光膜形成時(光硬化前)の重合性液晶化合物の液晶状態は、スメクチックB相であった。比較例1では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(7)及び位相差板をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(7) 0°方向
・位相差板 45°方向
【0171】
比較例1の外観評価では、偏光板(7)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「黒色」を呈し、偏光板(7)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「無色」を呈した。この結果から、比較例1の積層体では、1画素で異なる色相の光を出力できていないことが確認できた。比較例1のスペクトル測定では、極大吸収波長は600nm、半値幅は>350nmであった。また、比較例1の反射防止特性は、「○」であった。
【0172】
<比較例6>
比較例2では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(7)及び位相差板をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(7) 90°方向
・位相差板 45°方向
【0173】
比較例2の外観評価では、偏光板(7)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「無色」を呈し、偏光板(7)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「黒色」を呈した。比較例2のスペクトル測定では、極大吸収波長は600nm、半値幅は>350nmであった。また、比較例2の反射防止特性は、「○」であった。
【0174】
<比較例3>
比較例3では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、位相差板及び偏光板(7)をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(7) 0°方向
・位相差板 45°方向
【0175】
比較例3の外観評価では、偏光板(7)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「黒色」を呈し、偏光板(7)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「無色」を呈した。比較例3のスペクトル測定では、極大吸収波長は600nm、半値幅は>350nmであった。また、比較例3の反射防止特性は、「×」であった。
【0176】
<比較例4>
比較例4では、吸収軸及び遅相軸が以下の通りになるように、偏光板(7)及び位相差板をこの順に積層して積層体とした。
・偏光板(7) 0°方向
・位相差板 45°方向
【0177】
比較例4の外観評価では、偏光板(7)に対して0°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「無色」を呈し、偏光板(7)に対して90°方向に吸収軸を有する偏光板を通して観察した場合に「黒色」を呈した。比較例4のスペクトル測定では、極大吸収波長は600nm、半値幅は>350nmであった。また、比較例2の反射防止特性は、「×」であった。
【0178】
本開示の要旨は、以下の[1]~[11]に示すとおりである。
[1]二色性色素化合物Aを有する水平配向光吸収異方性膜Aと、二色性色素化合物Bを有する水平配向光吸収異方性膜Bとを含み、前記水平配向光吸収異方性膜Aにおける吸収軸方向及び極大吸収波長と、前記水平配向光吸収異方性膜Bにおける吸収軸方向及び極大吸収波長とが互いに異なっている、積層体。
[2]前記二色性色素化合物A及び前記二色性色素化合物Bは、シアン、マゼンダ、イエローの群又はレッド、グリーン、ブルーの群のうちの異なる色相からそれぞれ選択されている、[1]記載の積層体。
[3]前記二色性色素化合物A及び前記二色性色素化合物Bは、シアン、マゼンダ、イエローの群又はレッド、グリーン、ブルーの群のうちの異なる色相からそれぞれ2種ずつ選択されている、[1]又は[2]記載の積層体。
[4]前記水平配向光吸収異方性膜A及び前記水平配向光吸収異方性膜Bは、いずれも重合性液晶化合物を有する光吸収異方性膜形成用組成物の硬化物である、[1]~[3]のいずれか記載の積層体。
[5]前記水平配向光吸収異方性膜A及び前記水平配向光吸収異方性膜Bの少なくとも一方において、前記重合性液晶化合物は、スメクチック相を形成する液晶化合物である、[1]~[4]のいずれか記載の積層体。
[6]前記水平配向光吸収異方性膜A及び前記水平配向光吸収異方性膜Bの双方において、前記重合性液晶化合物は、スメクチック相を形成する液晶化合物である、[1]~[5]のいずれか記載の積層体。
[7]位相差がπ/2であり、前記水平配向光吸収異方性膜A及び前記水平配向光吸収異方性膜Bのそれぞれの吸収軸に対して45°±5°の方位に遅相軸を有する位相差板を更に含む、[1]~[6]のいずれか記載の積層体。
[8]前記位相差板の正面位相差値Re(λ)が下記式(1)を満たす、[7]記載の積層体。
Re(450)<Re(550)<Re(650)…(1)
[9]前記水平配向光吸収異方性膜Aと、前記水平配向光吸収異方性膜Bと、前記位相差板とがこの順に積層されている、[7]又は[8]のいずれか記載の積層体。
[10]前記位相差板と、前記水平配向光吸収異方性膜Aと、前記水平配向光吸収異方性膜Bとがこの順に積層されている、[7]又は[8]記載の積層体。
[11][1]~[10]のいずれか記載の積層体と、前記積層体に向けて光を出力する光源と、を備える表示装置。
【符号の説明】
【0179】
1A,1B…表示装置、2…光源、3…積層体、11A,11B…積層板、12…位相差板。
図1
図2
図3
図4