(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143601
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】二次電池用バインダー組成物、電極用組成物、電極シート、二次電池、電極シートの製造方法、及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20241003BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20241003BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241003BHJP
C08F 220/56 20060101ALN20241003BHJP
C08L 33/26 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/134
H01M4/13
C08F220/56
C08L33/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056364
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198328
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】河野 景
(72)【発明者】
【氏名】水田 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】森 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 和博
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩隆
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
5H050
【Fターム(参考)】
4J002AB031
4J002AB033
4J002AB035
4J002CH022
4J002ED036
4J002EH076
4J002FD312
4J002FD316
4J002GQ02
4J002HA04
4J002HA06
4J100AL04Q
4J100AM15P
4J100AU39R
4J100BA03R
4J100BA08R
4J100BA59R
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA11
5H050EA23
5H050EA28
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】充放電時の体積変化の大きな電極活物質を用いた場合でも、得られる電極シートの密着性を十分に高め、かつ、得られる二次電池のサイクル特性を十分に高めることができる二次電池用バインダー組成物及び電極用組成物、上記電極用組成物を用いた電極シート及び二次電池、並びに上記電極シート及び二次電池の各製造方法を提供する。
【解決手段】
液媒体と共重合体Xとを含む二次電池用バインダー組成物であって、
上記二次電池用バインダー組成物が、(A)水溶性ビニル化合物成分と、(B)疎水性ビニル化合物成分とを上記共重合体Xの構成成分として含み、
上記(A)水溶性ビニル化合物成分からなる単独重合体aを想定した場合にこの単独重合体aのガラス転移温度が90℃以上であり、上記(B)疎水性ビニル化合物成分からなる単独重合体bを想定した場合にこの単独重合体bのガラス転移温度が0℃以下である、二次電池用バインダー組成物、電極用組成物、電極シート及び二次電池、並びに、これら電極シート及び二次電池の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液媒体と共重合体Xとを含む二次電池用バインダー組成物であって、
前記二次電池用バインダー組成物が、(A)水溶性ビニル化合物成分と、(B)疎水性ビニル化合物成分とを前記共重合体Xの構成成分として含み、
前記(A)水溶性ビニル化合物成分からなる単独重合体aを想定した場合に当該単独重合体aのガラス転移温度が90℃以上であり、前記(B)疎水性ビニル化合物成分からなる単独重合体bを想定した場合に当該単独重合体bのガラス転移温度が0℃以下である、二次電池用バインダー組成物。
【請求項2】
前記二次電池用バインダー組成物が(C)界面活性剤成分を含む、請求項1に記載の二次電池用バインダー組成物。
【請求項3】
前記(C)界面活性剤成分を前記共重合体Xの構成成分として含む、請求項2に記載の二次電池用バインダー組成物。
【請求項4】
前記(A)水溶性ビニル化合物成分が(メタ)アクリルアミド成分である、請求項1に記載の二次電池用バインダー組成物。
【請求項5】
前記共重合体Xの破断伸びが15%以上である、請求項1に記載の二次電池用バインダー組成物。
【請求項6】
前記二次電池用バインダー組成物が水溶性高分子を含む、請求項1に記載の二次電池用バインダー組成物。
【請求項7】
前記水溶性高分子が、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びキサンタンガムの少なくとも1種を含む、請求項6に記載の二次電池用バインダー組成物。
【請求項8】
前記液媒体が水である、請求項1に記載の二次電池用バインダー組成物。
【請求項9】
液媒体と共重合体Xと活物質とを含む電極用組成物であって、
前記共重合体Xが構成成分として(A)水溶性ビニル化合物成分と(B)疎水性ビニル化合物成分とを含み、
前記(A)水溶性ビニル化合物成分からなる単独重合体aを想定した場合に当該単独重合体aのガラス転移温度が90℃以上であり、前記(B)疎水性ビニル化合物成分からなる単独重合体bを想定した場合に当該単独重合体bのガラス転移温度が0℃以下である、電極用組成物。
【請求項10】
前記活物質がケイ素系活物質を含む、請求項9に記載の電極用組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の電極用組成物を用いて形成した層を有する電極シート。
【請求項12】
正極活物質層とセパレータと負極活物質層とをこの順で有する二次電池であって、
上記正極活物質層及び上記負極活物質層の少なくとも1つの層が、請求項9に記載の電極用組成物を用いて形成した層である、二次電池。
【請求項13】
請求項9に記載の電極用組成物を用いて電極活物質層を形成することを含む、電極シートの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の製造方法により得られた電極シートを二次電池の電極として組み込むことを含む、二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用バインダー組成物、電極用組成物、電極シート、二次電池、電極シートの製造方法、及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される二次電池は、パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等のポータブル電子機器の動力源として用いられている。最近では、二酸化炭素排出量削減という地球規模の環境課題を背景に、自動車等の輸送機器の動力電源として、また、夜間電力、自然エネルギー発電による電力等の蓄電用途としても普及してきている。
【0003】
二次電池の電極(正極及び負極)は、一般的には電極活物質層(正極活物質層及び負極活物質層)を有し、この電極活物質層は、充放電時にイオンを吸蔵ないし放出可能な電極活物質粒子を含む。また、電極活物質層は必要により導電助剤等を含む。電極活物質、導電助剤等はいわゆる固体粒子であり、二次電池の充放電(イオンの吸蔵放出)に伴う電極活物質粒子の膨張収縮により、固体粒子間の導通状態(密着状態)は損なわれやすい。導通状態が損なわれれば電池の内部抵抗が増大して電池容量が低下する。二次電池のサイクル特性を向上させる(サイクル寿命を長期化する)には、充放電を繰り返しても固体粒子間の導通状態を維持できることが重要であり、電極活物質層は通常、バインダーを含む。
【0004】
近年、二次電池の用途の拡大に伴い、二次電池には高エネルギー密度化(高容量化)及びサイクル特性の更なる向上が求められている。二次電池の更なる高容量化を実現するために、負極活物質としてケイ素系活物質を用いる検討が行われている。しかし、ケイ素系活物質は充電時にイオンを多量に吸蔵して大きく膨張するため、その分、放電時におけるケイ素系活物質の収縮幅も大きくなる。すなわち、負極活物質としてケイ素系活物質を用いた二次電池は、充放電時の負極活物質の体積変化が大きいものである。それゆえ、固体粒子(電極活物質、導電助剤等)間の導通状態が損なわれやすく、負極活物質層-集電体間の剥離も生じやすい。したがって、負極活物質としてケイ素系活物質を用いた高容量二次電池は、充放電の繰り返しにより電池性能が低下しやすく、サイクル特性の向上において制約がある。
【0005】
負極活物質層にケイ素系活物質を含む高容量二次電池において、上記のサイクル特性向上の制約に対処する試みがある。
例えば、特許文献1には、ガラス転移温度150℃以上の連鎖重合ポリマーからなるセグメントAと、ガラス転移温度150℃未満の連鎖重合ポリマーからなるセグメントBとをポリマー主鎖中に有する水溶性ブロックポリマーを含む二次電池用バインダーの発明が記載されている。特許文献1によれば、この二次電池用バインダーは固体粒子同士を強固に結着させることができ、この二次電池用バインダーを用いて電極を作製した二次電池において、充放電時の体積変化の大きな電極活物質を用いた場合でも、二次電池のサイクル寿命を十分に長期化することができるとされる。
【0006】
また、特許文献2には、単独重合体のガラス転移温度が80℃以上である第1単量体単位;単独重合体のガラス転移温度が70℃以下である第2単量体単位;および常温での水溶解度が5%未満である第3単量体単位を有する共重合体を含む、シリコン電極バインダーの発明が記載されている。特許文献2によれば、上記シリコン電極バインダーを、ケイ素系活物質(シリコン系活物質)を含む負極活物質層に適用することにより、活物質間の結着力を高め、また、負極活物質層の集電体への接着力を高めることができ、結果、充放電の繰り返しに伴う上記の問題に対処できるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2022/210737号
【特許文献2】特表2020-533771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ケイ素系活物質を負極活物質層に含む二次電池において、サイクル特性を向上させるためには、弾性率の高い(硬い)バインダーを用いて、電極活物質粒子の体積が変化しても、それが負極活物質層の体積に影響しにくくすることが考えられる。しかし、バインダーを高弾性にすると柔軟性が損なわれ、また、集電体との密着性も損なわれる傾向にある。したがって、高弾性バインダーの使用は、例えば捲回型二次電池を作製する場合に電極が損傷しやすくなるなど、電池製造のプロセス適性を低下させる傾向がある。特許文献1及び2記載の技術では、単独重合体が比較的高弾性となる水溶性アクリル系モノマー由来の構成成分を、他の構成成分とともにポリマー中に組み込んで、得られたポリマーをバインダーとして用いている。これらのバインダーを用いることにより、サイクル特性を向上させながら、電極の柔軟性もある程度担保することができる。他方、二次電池の用途の拡大に伴い、サイクル特性の向上(電池性能向上)とプロセス適性の向上(製造効率向上)の両立を、より高いレベルで実現することを求められるようになっている。
【0009】
本発明は、充放電時の体積変化の大きな電極活物質を用いた場合でも、得られる電極シートの密着性(電極活物質層-集電体間の密着性)を十分に高め、かつ、得られる二次電池のサイクル特性を十分に高める(サイクル寿命を十分に長期化する)ことができる二次電池用バインダー組成物及び電極用組成物を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、上記電極用組成物を用いた電極シート及び二次電池を提供することを課題とする。さらに、本発明は、上記電極シート及び二次電池の各製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の上記課題は以下の手段により解決された。
〔1〕
液媒体と共重合体Xとを含む二次電池用バインダー組成物であって、
上記二次電池用バインダー組成物が、(A)水溶性ビニル化合物成分と、(B)疎水性ビニル化合物成分とを上記共重合体Xの構成成分として含み、
上記(A)水溶性ビニル化合物成分からなる単独重合体aを想定した場合にこの単独重合体aのガラス転移温度が90℃以上であり、上記(B)疎水性ビニル化合物成分からなる単独重合体bを想定した場合にこの単独重合体bのガラス転移温度が0℃以下である、二次電池用バインダー組成物。
〔2〕
上記二次電池用バインダー組成物が(C)界面活性剤成分を含む、〔1〕に記載の二次電池用バインダー組成物。
〔3〕
上記(C)界面活性剤成分を上記共重合体Xの構成成分として含む、〔2〕に記載の二次電池用バインダー組成物。
〔4〕
上記(A)水溶性ビニル化合物成分が(メタ)アクリルアミド成分である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の二次電池用バインダー組成物。
〔5〕
上記共重合体Xの破断伸びが15%以上である、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の二次電池用バインダー組成物。
〔6〕
上記二次電池用バインダー組成物が水溶性高分子を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の二次電池用バインダー組成物。
〔7〕
上記水溶性高分子が、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びキサンタンガムの少なくとも1種を含む、〔6〕に記載の二次電池用バインダー組成物。
〔8〕
上記液媒体が水である、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の二次電池用バインダー組成物。
〔9〕
液媒体と共重合体Xと活物質とを含む電極用組成物であって、
上記共重合体Xが構成成分として(A)水溶性ビニル化合物成分と(B)疎水性ビニル化合物成分とを含み、
上記(A)水溶性ビニル化合物成分からなる単独重合体aを想定した場合にこの単独重合体aのガラス転移温度が90℃以上であり、上記(B)疎水性ビニル化合物成分からなる単独重合体bを想定した場合にこの単独重合体bのガラス転移温度が0℃以下である、電極用組成物。
〔10〕
上記活物質がケイ素系活物質を含む、〔9〕に記載の電極用組成物。
〔11〕
〔9〕又は〔10〕に記載の電極用組成物を用いて形成した層を有する電極シート。
〔12〕
正極活物質層とセパレータと負極活物質層とをこの順で有する二次電池であって、
上記正極活物質層及び上記負極活物質層の少なくとも1つの層が、〔9〕又は〔10〕に記載の電極用組成物を用いて形成した層である、二次電池。
〔13〕
〔9〕又は〔10〕に記載の電極用組成物を用いて電極活物質層を形成することを含む、電極シートの製造方法。
〔14〕
〔13〕に記載の製造方法により得られた電極シートを二次電池の電極として組み込むことを含む、二次電池の製造方法。
【0011】
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、各成分は1種含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの一方又は両方を意味する。(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等についても同様である。
本発明において「二次電池」とは、充放電により電解質を介して正負極間をイオンが通過し、正負極においてエネルギーを貯蔵、放出するデバイス全般を意味する。すなわち、本発明において二次電池という場合、電池とキャパシタ(例えば、リチウムイオンキャパシタ)の両方を包含する意味である。エネルギー貯蔵量の観点から、本発明の二次電池は電池用途に用いること(キャパシタでないこと)が好ましい。
二次電池は、用いる電解質に応じて水系二次電池と非水系二次電池とに大別でき、本発明においては、非水系二次電池が好ましい。本発明において「水系二次電池」とは、電解質として水系電解液を用いた二次電池を意味する。本発明において「非水系二次電池」とは、非水電解液二次電池と全固体二次電池とを含む意味である。本発明において「非水電解液二次電池」とは、電解質として非水電解液を用いた二次電池を意味する。本発明において「非水電解液」とは、水を実質的に含まない電解液を意味する。水を実質的に含まない電解液とは、「非水電解液」が本発明の効果を妨げない範囲で微量の水を含んでいてもよいことを意味する。本発明において「非水電解液」は、水の濃度が200ppm(質量基準)以下であり、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましい。なお、非水電解液を完全に無水とすることは現実的に困難であり、通常は水が1ppm以上含まれる。本発明において「全固体二次電池」とは、電解質として液を用いず、無機固体電解質、固体状ポリマー電解質等の固体電解質を用いた二次電池を意味する。
本発明において、含有量又は含有割合を記載する場合に使用する「固形分」及び「全固形分」との用語は、後述する液媒体以外の成分を意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二次電池用バインダー組成物及び電極用組成物は、充放電時の体積変化の大きな電極活物質を用いた場合でも、得られる電極シートの密着性を十分に高め、かつ、得られる二次電池のサイクル特性を十分に高めることができる。本発明の電極用シートは、密着性に優れる。
本発明の電極シートの製造方法によれば、本発明の上記電極シートを得ることができる。また、本発明の二次電池の製造方法によれば、本発明の上記二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に係る二次電池の一実施形態について、基本的な積層構成を模式化して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[二次電池用バインダー組成物]
本発明の二次電池用バインダー組成物(以降、「本発明のバインダー組成物」とも称す。)は、液媒体と、特定の構成成分組成を有する共重合体である共重合体Xとを含有する。この共重合体Xは、(A)水溶性ビニル化合物成分と、(B)疎水性ビニル化合物成分とを構成成分として含み、上記(A)水溶性ビニル化合物成分からなる単独重合体aを想定した場合にこの単独重合体aのガラス転移温度が90℃以上であり、上記(B)疎水性ビニル化合物成分からなる単独重合体bを想定した場合にこの単独重合体bのガラス転移温度が0℃以下である。
本発明のバインダー組成物は、好ましくは非水系二次電池、より好ましくは非水電解液二次電池を構成する部材ないし構成層の形成材料として好適である。本発明のバインダー組成物は、液媒体として、好ましくは水を含有する。典型的には、本発明のバインダー組成物は、二次電池の電極における電極活物質層の形成に好適に用いることができる。例えば、本発明のバインダー組成物に電極活物質(正極活物質又は負極活物質、これらを合わせて、単に「活物質」とも称す。)を含有させて非水系二次電池の電極(正極又は負極)活物質層の形成に用いることができる。
【0015】
本発明のバインダー組成物が含有する共重合体Xは、例えば、本発明のバインダー組成物と固体粒子(電極活物質、導電助剤等)とを混合して形成した層中において、主として、これらの固体粒子同士を結着させる結着剤(バインダー)として機能すると考えられる。また、集電体と固体粒子とを結着させる結着剤としても機能しうる。共重合体Xの固体粒子及び集電体に対する吸着は、物理的吸着だけでなく、化学的吸着(化学結合の形成による吸着、電子の授受による吸着等)も含む。
【0016】
本発明のバインダー組成物は、例えば、活物質を含む形態で電極シートを作製して、これを二次電池の電極に適用することで、電極シートの密着性を高め、かつ、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。この理由は定かではないが、共重合体Xの構造中に水溶性ビニル化合物由来の成分と疎水性ビニル化合物由来の成分とを有していることにより、硬さと柔軟性とを合わせ持つ特異な物性を発現し、電極活物質層の体積変化を効果的に抑制しながら、得られる電極活物質層の集電体に対する密着性も十分に引き出すことができることが一因と考えられる。
【0017】
<共重合体X>
共重合体Xは、その構成成分として、(A)水溶性ビニル化合物成分と、(B)疎水性ビニル化合物成分とを含有する。すなわち、共重合体Xは、少なくとも、(A)水溶性ビニル化合物成分を導く水溶性ビニル化合物(以下、「水溶性ビニル化合物」又は「(A)水溶性ビニル化合物成分を導くモノマー」ということがある)と、(B)疎水性ビニル化合物成分を導く疎水性ビニル化合物(以下、「疎水性ビニル化合物」又は「(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマー」ということがある)とをモノマーとして共重合することにより得られる共重合体である。共重合体Xは、これらの構成成分以外に、さらに別の成分を含有していてもよい。別の成分としては、例えば、後述する(C)界面活性剤成分が挙げられる。
本発明において、「ビニル化合物」とは、不飽和二重結合を有する化合物を意味し、ビニル基を有する化合物だけでなく、R2C=CR2(Rは水素原子又は置換基)の構造を有する化合物を包含する意味である。「ビニル化合物」は典型的にはCH2=CH-*構造を有する化合物である(*は結合部である、以下も同様)。
本発明において、「水溶性ビニル化合物成分」とは、この水溶性ビニル化合物成分を導く水溶性ビニル化合物のClogP値が1.00未満である成分を意味する。また、本発明において「疎水性ビニル化合物成分」とは、この疎水性ビニル化合物成分を導く疎水性ビニル化合物のClogP値が1.00以上である成分を意味する。本発明において、上記ClogP値は、化合物の構造式からChemDraw(登録商標、分子構造式エディタソフトウェア、パーキンエルマー社製)を用いて計算し、計算値の小数点第三位を四捨五入した値である。ClogP値が小さいほど、親水性が高い。
共重合体Xは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0018】
-(A)水溶性ビニル化合物成分-
(A)水溶性ビニル化合物成分は、水溶性ビニル化合物由来の構成成分であり、かつ、この成分からなる単独重合体a(水溶性ビニル化合物の単独重合体)のガラス転移温度が90℃以上である成分であればよい。上記ガラス転移温度を示す水溶性ビニル化合物成分を含有させることにより、共重合体Xに所望の高弾性(硬さ)を付与することができる。
単独重合体aのガラス転移温度は、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましく、130℃以上がさらに好ましく、140℃以上がさらに好ましく、150℃以上がさらに好ましく、160℃以上が特に好ましい。
単独重合体aのガラス転移温度の上限は特に限定されないが、250℃が実際的である。したがって、単独重合体aのガラス転移温度は100~250℃が好ましく、110~250℃がより好ましく、120~250℃がさらに好ましく、130~250℃がさらに好ましく、140~250℃がさらに好ましく、150~250℃がさらに好ましく、160~250℃が特に好ましい。
【0019】
単独重合体aは、実施例に記載の方法により、(A)水溶性ビニル化合物を導くモノマーを重合して得ることができる。
単独重合体aのガラス転移温度は、実施例に記載の方法で決定することができる。
【0020】
(A)水溶性ビニル化合物成分は1種でも2種でもよい。(A)水溶性ビニル化合物成分を複数種使用する場合には、それぞれの水溶性ビニル化合物成分について、個々の上記ガラス転移温度(Tg)が90℃以上である。
水溶性ビニル化合物中のビニル基は、メタクリロイル基(CH2=C(CH3)-COO-*)、アクリロイル基(CH2=CHCOO-*)、又はアリル基(CH2=CH-CH2-*)の形態で含まれることが好ましい。
水溶性ビニル化合物は、親水性基を有するビニル化合物が好ましく、親水性基としては、ヒドロキシ基、アミノ基等が好ましい。
(A)水溶性ビニル化合物成分としては、例えば、アクリロニトリル成分、不飽和カルボン酸成分((メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びフマル酸など)、(メタ)アクリルアミド成分((メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミドなど)などが好ましい。また、不飽和カルボン酸成分は、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等の塩の態様(不飽和カルボン酸成分が有するカルボキシ基が塩構造を形成している態様)であってもよい。
(A)水溶性ビニル化合物成分は、(メタ)アクリルアミド成分であることが好ましく、アクリルアミド成分であることがより好ましい。
水溶性ビニル化合物は、その分子量(Mw)が50~200であることが好ましい。
【0021】
以下に、水溶性ビニル化合物の好ましい具体例を、Mw、Tg及びClogP値(Chemdrawによる計算値を小数点第二位までとなるよう四捨五入した値)と共に示す。
【0022】
【0023】
-(B)疎水性ビニル化合物成分-
(B)疎水性ビニル化合物成分を導く疎水性ビニル化合物は、疎水性であり、かつ、その単独重合体bのTgが0℃以下である成分であればよい。疎水性ビニル化合物成分は、共重合体Xに柔軟性を付与することに寄与すると考えられる。
単独重合体bのTgは、-20℃以下が好ましく、-30℃以下がより好ましく、-40℃以下がさらに好ましく、-50℃以下がさらに好ましく、-60℃以下がさらに好ましく、-70℃以下が特に好ましい。得られる電池の放電容量維持率を高める観点からは、Tgは低い方が好ましい。
単独重合体bのTgの下限は特に限定されないが、-80℃が実際的である。したがって、単独重合体bのTgは-80~-20℃が好ましく、-80~-30℃がより好ましく、-80~-40℃がさらに好ましく、-80~-50℃がさらに好ましく、-80~-60℃が特に好ましい。
(B)疎水性ビニル化合物成分は1種でも2種でもよい。(B)疎水性ビニル化合物成分を複数種使用する場合には、それぞれの疎水性ビニル化合物成分について、上記ガラス転移温度を測定するものとする。
単独重合体bは、実施例に記載の方法により、(B)疎水性ビニル化合物を導くモノマーを重合して得ることができる。
単独重合体bのガラス転移温度は、実施例に記載の方法で決定することができる。
【0024】
疎水性ビニル化合物中のビニル基は、メタクリロイル基(CH2=C(CH3)-COO-*)、アクリロイル基(CH2=CHCOO-*)、又はアリル基(CH2=CH-CH2-*)の形態で含まれることが好ましく、アクリロイル基(CH2=CHCOO-)の形態がより好ましい。
疎水性ビニル化合物としては、上記特性を示す成分を導くものであれば特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキルエステル部のアルキル基の炭素原子数は2~16であることが好ましく、4~14がより好ましく、6~14がさらに好ましい。アルキル基は置換基を有してもよい。置換基としては、アリール基又はアリールオキシ基が好ましい。
(B)疎水性ビニル化合物成分を導く疎水性ビニル化合物は、その分子量(Mw)が50~300であることが好ましい。
【0025】
以下に、疎水性ビニル化合物の好ましい具体例を、Mw、Tg及びClogP値(Chemdrawによる計算値を小数点第二位までとなるよう四捨五入した値)と共に示す。
【0026】
【0027】
共重合体Xは、(A)水溶性ビニル化合物成分及び(B)疎水性ビニル化合物成分以外の構成成分を含んでもよい。このような(A)水溶性ビニル化合物成分及び(B)疎水性ビニル化合物成分以外の構成成分として、例えば、(C)界面活性剤成分を共重合体X中に含有することができる。
(C)界面活性剤成分については、後述する。
【0028】
共重合体Xは、(A)水溶性ビニル化合物成分を導く水溶性ビニル化合物及び(B)疎水性ビニル化合物成分を導く疎水性ビニル化合物を組み合わせて共重合させること以外は、通常のポリマーの合成方法(重合方法)により得ることができる。合成の方法及び条件は、特に限定されず、通常の方法及び条件を、目的に応じて適宜に適用することができる。
上記合成は、後述する(C)界面活性剤成分の存在下で行われることが好ましい。界面活性剤(C)の存在下で合成を行うことにより、水溶性ビニル化合物と疎水性ビニル化合物の分散性を高め、合成反応(重合反応)をスムーズに行うことができる。そのため、共重合体Xの構造中に占める(B)疎水性ビニル化合物成分の割合をより高めることができる。この際、(C)界面活性剤成分は共重合体Xの構成成分((C-1)重合性界面活性剤成分)として存在していてもよい。また、(C)界面活性剤成分は共重合体Xとは異なる独立した成分((C-2)非重合性界面活性剤成分)として組成物中に存在してもよい。
【0029】
共重合体Xにおいて、(A)水溶性ビニル化合物成分と(B)疎水性ビニル化合物成分の合計に占める、(A)水溶性ビニル化合物成分の割合は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が特に好ましい。また、この割合は、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、55質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、45質量%以下がさらに好ましく、40質量%以下が特に好ましい。さらに、この割合は、1~99質量%が好ましく、5~95質量%がより好ましく、10~90質量%がさらに好ましく、15~80質量%がさらに好ましく、15~70質量%がさらに好ましく、20~60質量%がさらに好ましく、25~55質量%が特に好ましい。また、この割合は10~50質量%であることも好ましく、15~50質量%であることも好ましく、15~45質量%であることも好ましく、20~45質量%であることも好ましい。
共重合体Xにおいて、(A)水溶性ビニル化合物成分と(B)疎水性ビニル化合物成分の合計に占める、(B)疎水性ビニル化合物成分の割合は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、45質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上が特に好ましい。また、この割合は、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、85質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、75質量%以下が特に好ましい。さらに、この割合は、1~99質量%が好ましく、5~95質量%がより好ましく、10~90質量%がさらに好ましく、20~85質量%がさらに好ましく、30~85質量%がさらに好ましく、40~80質量%がさらに好ましく、45~75質量%が特に好ましい。また、この割合は50~90質量%であることも好ましく、50~85質量%であることも好ましく、55~85質量%であることも好ましく、55~80質量%であることも好ましい。
共重合体Xが(C-1)重合性界面活性剤成分を含む場合において、共重合体X中の(C-1)重合性界面活性剤成分の含有量は、共重合体Xにおける全構成成分の含有量の合計((A)水溶性ビニル化合物成分、(B)疎水性ビニル化合物成分、(C-1)重合性界面活性剤成分、及び、要すれば別の構成成分の合計)に対して、5質量%以下が好ましく、0.2~5質量%であることがより好ましく、0.4~3質量%であることがさらに好ましく、0.6~2質量%がさらに好ましい。
共重合体Xが(A)水溶性ビニル化合物成分、(B)疎水性ビニル化合物成分及び(C-1)重合性界面活性剤成分に加えて、さらに別の構成成分を含む場合には、別の構成成分の含有量は、共重合体Xにおける全構成成分の含有量の合計に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
【0030】
-共重合体Xの特性-
共重合体Xは破断伸びが5%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。得られる電極活物質層の体積変化を効果的に抑制して集電体との密着性を高める観点からは、破断伸びが高い方が好ましい。
破断伸びは、実施例に記載の方法で引張試験を行い、算出することができる。
【0031】
共重合体Xの重量平均分子量(Mw)は特に制限されず、100000~900000が好ましく、200000~500000がより好ましい。
【0032】
(重量平均分子量の測定)
本発明において、バインダー組成物に含まれるポリマーの分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定する。分子量は、ポリアクリル酸ナトリウム換算の重量平均分子量を意味し、下記測定条件1又は2により測定した値とする。ポリマーの種類によっては、適宜適切な溶離液を選定して用いることができる。
(測定条件1)
測定器:HLC-8220GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TOSOH TSKgel 5000PWXL(商品名、東ソー社製)、TOSOH TSKgel G4000PWXL(商品名、東ソー社製)、TOSOH TSKgel G2500PWXL(商品名、東ソー社製)をつなげる。
キャリア:200mM 硝酸ナトリウム水溶液
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.2質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
架橋がかかっている場合等、上記測定条件1で分子量が測れない場合は下記測定条件2で静的光散乱により、分子量を測定する。
(測定条件2)
測定器:DLS-8000(商品名、大塚電子社製)
測定濃度:0.25、0.50、0.75、1.00mg/mL
希釈液:0.1M NaCl水溶液
レーザー波長:633nm
ピンホール:PH1=Open、PH2=Slit
測定角度:60、70、80、90、100、110、120、130度
解析法:Zimm平方根プロットより、分子量を測定した。解析に必要なdn/dcはAbbe屈折率計で実測する。
【0033】
共重合体Xは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明のバインダー組成物中の共重合体Xの含有量は特に限定されない。例えば、バインダー組成物の固形分中に占める共重合体Xの割合(バインダー組成物の全固形分量に対する共重合体Xの含有量)を50質量%以上とすることができる。この割合は60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。バインダー組成物の固形分中に占める共重合体Xの割合は、50~90質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましく、65~80質量%がさらに好ましい。本発明において、バインダー組成物が、(C-2)非重合性界面活性剤成分を含有する場合には、上記共重合体Xの含有量は、共重合体Xと(C-2)非重合性界面活性剤成分の各含有量の合計を意味する。以降の「共重合体Xの含有量」についての説明においても特に断らない場合には同じである。
【0035】
<(C)界面活性剤成分>
本発明のバインダー組成物は、(C)界面活性剤成分を含有することができる。本発明において、(C)界面活性剤成分は、上述した(C-1)重合性界面活性剤成分として共重合体Xの構成成分として存在してもよく、共重合体Xとは別の独立した(C-2)非重合性界面活性剤成分として存在していてもよい。(C)界面活性剤成分が(C-1)重合性界面活性剤成分として共重合体Xの構成成分として存在する場合、(C-1)重合性界面活性剤成分は、上記(A)水溶性ビニル化合物成分には該当せず、かつ、(B)疎水性ビニル化合物成分にも該当しない構成成分である。(C-1)重合性界面活性剤成分は、この重合性界面活性剤成分を導く重合性界面活性剤(以下、「重合性界面活性剤」又は「(C-1)重合性界面活性剤成分を導くモノマー」ということがある)のClogP値が1.00未満(水溶性)であり、(C-1)重合性界面活性剤成分からなる単独重合体cを想定した場合に、この単独重合体cのガラス転移温度は90℃未満である。単独重合体cのガラス転移温度は、単独重合体aと同様にして決定することができる。
【0036】
(C-1)重合性界面活性剤成分は、重合性基(好ましくはビニル基)を有する界面活性剤由来の構成成分である。重合性界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤から選ばれるものが好ましく、エーテルサルフェート型のアニオン系界面活性剤及びエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤から選ばれるものがより好ましい。
構造の観点からは、構造中に、アルキレンオキサイド鎖を有する界面活性剤成分が好ましく、*―C(CH2ORx)HO(CH2CH2O)n-X基、又は、*-C(CH2-O-Ph-Ry)HO(CH2CH2O)n-X基(Rx及びRy:アルキル基、Ph:フェニレン基、X:SO3NH2又はH、n=10~40)を有する界面活性剤が好ましい。例えば、アデカリアソープSR、ER、SE、NEシリーズ(商品名、ADEKA社製)などを用いることができる。
【0037】
(C-2)非重合性界面活性剤成分としては、重合性基を有さないノニオン系、カチオン系、及びアニオン系界面活性剤の少なくともいずれかを、特に制限なく用いることができる。
(C-2)非重合性界面活性剤成分におけるノニオン系界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン-エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン-(プロピレンオキサイド-エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
(C-2)非重合性界面活性剤成分におけるノニオン系界面活性剤の好ましい具体例を、以下に示す。
下記具体例において、nは8~20である。
【0038】
【0039】
【0040】
(C-2)非重合性界面活性剤成分におけるカチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
(C-2)非重合性界面活性剤成分におけるカチオン系界面活性剤の好ましい具体例を、以下に示す。
【0041】
【0042】
(C-2)非重合性界面活性剤成分におけるアニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンアルキルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N-アルキル-N-オレイルタウリンナトリウム類、N-アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン-無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン-無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。この中で、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)がより好ましい。
(C-2)非重合性界面活性剤成分におけるアニオン系界面活性剤の好ましい具体例を、以下に示す。
【0043】
【0044】
本発明のバインダー組成物に含有される(C-2)非重合性界面活性剤成分の含有量は特に限定されず、共重合体Xの含有量(共重合体Xと(C-2)非重合性界面活性剤成分の各含有量の合計)に対して、0.5~5質量%であることが好ましく、0.6~3質量%であることがより好ましく、0.7~2質量%がさらに好ましい。
【0045】
<液媒体>
本発明のバインダー組成物は、液媒体を含有する。液媒体は、特に制限されず、水、又は、水と有機溶媒との混合液が好ましい。この有機溶媒は、水と混合したときに相分離せずに混じり合う有機溶媒(以下、水溶性有機溶媒と称す。)が好ましい。
水溶性有機溶媒としては、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン等が好ましく挙げられる。
本発明のバインダー組成物は、液媒体として水を含有することが好ましく、液媒体が水であることがより好ましい。
【0046】
本発明のバインダー組成物中の液媒体の含有量は、特に制限されず、例えば、10質量%以上とすることができ、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。本発明のバインダー組成物は、液媒体を60質量%以上含有していてもよく、70質量%以上含有していてもよく、80質量%以上含有していてもよい。本発明のバインダー組成物中の液媒体の含有量は、99.5質量%以下であることが実際的である。
本発明のバインダー組成物中の液媒体の含有量は、10~99.5質量%が好ましく、20~99.5質量%がより好ましく、30~99.5質量%がさらに好ましく、40~99.5質量%がさらに好ましく、50~98質量%がさらに好ましく、60~98質量%がさらに好ましく、70~98質量%がさらに好ましく、80~95質量%がさらに好ましい。
【0047】
<水溶性高分子>
本発明のバインダー組成物は、水溶性高分子を含有することができる。
本発明において、水溶性高分子は、上述の共重合体X及び(C)界面活性剤成分とは構造の異なる水溶性の高分子であり、二次電池の電極活物質層形成用スラリーの増粘剤として機能するものを広く用いることができる。
本発明において、「水溶性高分子」とは、20℃において水に対する溶解度が10g/L-H2O以上であるポリマー、すなわち、20℃において水1リットルに対して10g以上溶解するポリマーを意味する。「水溶性高分子」の溶解度は100g/L-H2O以上であることが好ましい。
水溶性高分子としては、セルロース化合物、天然多糖類等の多糖類が挙げられる。
セルロース化合物としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、トリエチルセルロース、シアノエチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシブチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)等が挙げられる。また、セルロース化合物は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩等の塩の態様であってもよい。
天然多糖類としては、例えばカラギナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドガム(タマリンドシードガム)、ダイユータンガム、ウェランガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、タラガム等が挙げられる。
これらの中でも、水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びキサンタンガムの少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明において、水溶性高分子は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明のバインダー組成物に含有される全てのポリマー(100質量%)に占める共重合体X及び水溶性高分子の各含有量の合計の割合は特に制限されない。例えば、80質量%以上とすることができ、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。また、本発明のバインダー組成物に含有されるポリマーの全てが共重合体X及び水溶性高分子で構成されることが好ましい。
本発明のバインダー組成物中、共重合体Xと水溶性高分子の各含有量の質量比(共重合体Xの含有量:水溶性高分子の含有量)は特に制限されず、60~90:10~40が好ましく、65~85:15~35がより好ましく、65~80:20~35がさらに好ましい。
【0049】
本発明のバインダー組成物は、共重合体X及び水溶性高分子以外に、電池用のバインダーとして用いられる、通常の、ポリマーを含有していてもよい。
【0050】
本発明のバインダー組成物は、共重合体X、液媒体、好ましく用いられる非重合性界面活性剤、水溶性高分子の他にも、目的に応じて他の成分を含有することができる。他の成分として、リチウム塩、イオン液体、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)等が挙げられる。
また、本発明のバインダー組成物は、共重合体X等の合成反応液を希釈する等により調製することもできる。そのため、本発明のバインダー組成物中には、共重合体X等の合成に使用した原料又はその反応後の副生成物等が含まれていてもよい。
【0051】
[電極用組成物]
本発明の電極用組成物は、上記の液媒体と共重合体Xと活物質とを含む。すなわち、本発明の電極用組成物は、液媒体と共重合体Xと活物質とを含む電極用組成物であって、共重合体Xが構成成分として(A)水溶性ビニル化合物成分と(B)疎水性ビニル化合物成分とを含み、(A)水溶性ビニル化合物成分からなる単独重合体aを想定した場合にこの単独重合体aのガラス転移温度が90℃以上であり、(B)疎水性ビニル化合物成分からなる単独重合体bを想定した場合にこの単独重合体bのガラス転移温度が0℃以下である、電極用組成物である。本発明の電極用組成物は、必要に応じて、本発明のバインダー組成物が含有し得る成分を適宜に含有することができる。すなわち、本発明のバインダー組成物と活物質とを混合することにより、本発明の電極用組成物を得ることができる。本発明の電極用組成物は、導電助剤を含有することも好ましい。
活物質は正極活物質でもよく、負極活物質でもよい。電極用組成物が正極活物質を含む場合、この電極用組成物を二次電池の正極活物質層形成用スラリーとして用いることができる。また、電極用組成物が負極活物質を含む場合、この電極用組成物を負極活物質層形成用スラリーとして用いることができる。本発明の電極用組成物は負極活物質を含むことが好ましく、負極活物質の少なくとも一部がケイ素系活物質であることがより好ましい。
上記活物質、導電助剤等は、特に限定されるものではなく、二次電池の活物質、導電助剤等として使用可能なものから目的に応じて適宜選択して用いることができる。
【0052】
本発明の電極用組成物中、共重合体Xの含有量は特に制限されず、電極用組成物中の全固形分量に対して、0.3~15質量%が好ましく、0.5~12質量%が好ましく、1.0~10質量%がより好ましく、1.5~8質量%がさらに好ましく、2~6質量%が特に好ましい。
本発明の電極用組成物が水溶性高分子を含有する場合、本発明の電極用組成物中の共重合体X及び水溶性高分子の各含有量の合計は特に制限されない。例えば、本発明の電極用組成物中、共重合体X及び水溶性高分子の各含有量の合計の割合を1.5~15質量%とすることができ、1.5~12質量%が好ましく、2~10質量%がより好ましく、2.5~10質量%がさらに好ましく、3~8質量%が特に好ましい。
本発明の電極用組成物中において、共重合体Xと水溶性高分子の各含有量の質量比は、本発明のバインダー組成物における共重合体Xと水溶性高分子の各含有量の質量比と同じである。
【0053】
<活物質>
(正極活物質)
正極活物質は、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質であればよく、中でも可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、リチウム含有遷移金属酸化物、有機物、硫黄等のLiと複合化できる元素、硫黄と金属の複合物等でもよい。
中でも、正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はB等の元素)を混合してもよい。元素Mbの混合量としては、遷移金属元素Maの量100モル%に対して0~30モル%が好ましい。遷移金属元素Maに対するLiのモル比(Li/Ma)が0.3~2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
リチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
【0054】
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO2(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi2O2(ニッケル酸リチウム)、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])及びLiNi0.5Mn0.5O2(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn2O4(LMO)、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8及びLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4及びLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類並びにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩及びLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4、Li2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
【0055】
正極活物質の形状は特に制限されず、粒子状が好ましい。正極活物質の平均粒径(体積基準のメジアン径D50)は特に制限されない。例えば、0.1~50μmとすることができる。正極活物質を所定の粒子径にするには、粉砕機又は分級機を用い常法により調製すればよい。後述する負極活物質の所定の粒子径への調製方法も適用することができる。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液又は有機溶剤等にて洗浄した後使用してもよい。
市販品の正極活物質を用いる場合、正極活物質の平均粒径は製造元のカタログ記載の値を採用し、製造元の平均粒径の情報が入手できない場合又は合成した正極活物質を用いる場合は、後述の負極活物質に記載の方法により測定、算出された値を採用する。
【0056】
上記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
【0057】
正極活物質の表面は、別の金属酸化物等の酸化物、炭素系材料等で表面被覆されていてもよい。表面被覆材としては、後述する負極活物質の表面被覆に用いうる表面被覆材を用いることができる。
【0058】
また、正極活物質の表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
さらに、正極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
【0059】
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
【0060】
本発明の電極用組成物中における正極活物質の含有量は、特に限定されず、全固形分量に対して、10~99質量%が好ましく、30~98質量%がより好ましく、50~97質量%がさらに好ましく、55~95質量%が特に好ましい。
【0061】
(負極活物質)
負極活物質は、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン(好ましくはリチウムイオン)の挿入放出が可能な活物質であればよく、中でも可逆的にリチウムイオンを吸蔵及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、ケイ素系材料(ケイ素元素を含有する材料を意味する。)、スズ系材料(スズ元素を含有する材料を意味する。)、金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体、リチウム合金等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はケイ素系材料が信頼性の点から好ましく用いられる。
【0062】
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛(鱗片状黒鉛、塊状黒鉛等の天然黒鉛、気相成長黒鉛、繊維状黒鉛等の人造黒鉛、鱗片状黒鉛を特殊加工してなる膨張黒鉛等)、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂若しくはフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維及び活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー並びに平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
【0063】
負極活物質として用いられるスズ系材料(スズ系活物質)としては、例えば、Sn、SnO、SnO2、SnS、SnS2が挙げられる。
【0064】
負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な酸化物であれば特に制限されず、金属酸化物としては金属元素の酸化物(金属酸化物)及び、半金属元素の酸化物(半金属酸化物)が挙げられ、金属複合酸化物としては、金属元素の複合酸化物、金属元素と半金属元素との複合酸化物、及び、半金属元素の複合酸化物が挙げられる。
これらの金属酸化物及び金属複合酸化物としては、非晶質酸化物が好ましく、さらに金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイドも好ましく挙げられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°~40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物、又は上記カルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族~15(VB)族の元素(例えば、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb及びBi)のうちの1種単独若しくはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物もしくは複合酸化物、又はカルコゲナイドが特に好ましい。非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga2O3、GeO、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb2O4、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O8Bi2O3、Sb2O8Si2O3、Sb2O5、Bi2O3、Bi2O4、GeS、PbS、PbS2、Sb2S3及びSb2S5が好ましく挙げられる。
【0065】
金属(複合)酸化物及び上記カルコゲナイドは、構成成分として、チタン及びリチウムの少なくとも一方を含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。リチウムを含有する金属複合酸化物(リチウム複合金属酸化物)としては、例えば、酸化リチウムと上記金属(複合)酸化物若しくは上記カルコゲナイドとの複合酸化物、より具体的には、Li2SnO2が挙げられる。
【0066】
負極活物質はチタン元素を含有することも好ましい。より具体的にはTiNb2O7(チタン酸ニオブ酸化物[NTO])、Li4Ti5O12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制され、リチウムイオン二次電池のサイクル特性向上が可能となる点で好ましい。
【0067】
負極活物質としてのリチウム合金としては、二次電池の負極活物質として通常用いられる合金であれば特に制限されず、例えば、リチウムアルミニウム合金が挙げられる。
【0068】
ケイ素系材料(ケイ素系活物質)としては、ケイ素元素を含む負極活物質であり、例えば、Si、SiOx(0<x≦1.5)等のケイ素材料、さらには、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅若しくはランタンを含むケイ素含有合金(例えば、LaSi2、VSi2)、又は組織化した活物質(例えば、LaSi2/Si)、他にも、上述の金属酸化物及び金属複合酸化物の記載におけるケイ素元素を含む酸化物又は複合酸化物、SnSiO3、SnSiS3等のケイ素元素及びスズ元素を含む活物質等が挙げられる。
SiOxは、それ自体を負極活物質(半金属酸化物)として用いることができ、また、電池の稼働によりSiを生成するため、リチウムと合金形成可能な活物質(その前駆体物質)として用いることができる。
【0069】
上記では負極活物質を成分に着目して説明しているが、特性の観点からは、負極活物質は、リチウムと合金形成可能な負極活物質であることが好ましい。
リチウムと合金形成可能な負極活物質は、二次電池の負極活物質として通常用いられるものであれば特に制限されない。このような活物質として、上述のケイ素元素及び/又はスズ元素を含む負極活物質、Al及びIn等の各金属が挙げられる。より高い電池容量を可能とする点でケイ素系活物質が好ましく、ケイ素元素の含有量が全構成元素の40モル%以上であるケイ素系活物質がより好ましい。
一般的に、これらのリチウムと合金形成可能な負極活物質を含有する負極(例えば、ケイ素系活物質を含むSi負極、スズ系活物質を含むSn負極)は、炭素質材料のみからなる負極(黒鉛、カーボンブラック等)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量(エネルギー密度)を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。このように、ケイ素元素及び/又はスズ元素を含む負極活物質は、高容量活物質とも称される。
【0070】
負極活物質の表面は、別の金属酸化物等の酸化物、炭素系材料等で表面被覆されていてもよい(以下、炭素系材料で表面被覆されていることを「カーボンコートされた」と記載することがある)。表面被覆材としてはTi、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、さらに具体的には、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、LiTaO3、LiNbO3、LiAlO2、Li2ZrO3、Li2WO4、Li2TiO3、Li2B4O7、Li3PO4、Li2MoO4、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、Li2SiO3、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、B2O3等が挙げられる。また、C、SiC、炭素添加シリコン酸化物等の炭素系材料も表面被覆材として用いることができる。
【0071】
また、負極活物質の表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
さらに、負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
【0072】
負極活物質は、金属元素をドープされていてもよい。金属元素をドープされた負極活物質において、ドープされる金属元素は、Li、Ni及びTiの少なくともいずれか1種であることが好ましく、Liであることがより好ましい。
【0073】
本発明においては、負極活物質として、ケイ素系活物質を用いることが好ましく、酸化ケイ素(SiOx(0<x≦1.5))又はカーボンコートされた酸化ケイ素(カーボンコートされたSiOx(0<x≦1.5))を用いることがより好ましく、酸化ケイ素を用いることがさらに好ましい。酸化ケイ素又はカーボンコートされた酸化ケイ素は、さらに金属元素をドープされていてもよい。
酸化ケイ素又はカーボンコートされた酸化ケイ素は市販品を用いてもよい。また、カーボンコートされた酸化ケイ素は、例えば特開2019-204686号公報を参照して、酸化ケイ素をカーボンコートすることにより調製することもできる。
本発明においては、負極活物質として、金属元素をドープされたケイ素系材料を用いることも好ましく、Li、Ni及びTiの少なくともいずれか1種をドープされたケイ素系材料がより好ましく、Liをドープされたケイ素系材料がさらに好ましい。金属元素のドープに付されるケイ素系材料としては、酸化ケイ素又はカーボンコートされた酸化ケイ素が好ましく、酸化ケイ素がより好ましい。
金属元素をドープされた酸化ケイ素、並びに、金属元素のドープ及びカーボンコートの両方が施された酸化ケイ素としては、市販品を用いてもよい。また、例えば、特開2022-121582号公報、国際公開第14/188851号及び特開2021-150077号公報等を参照して、酸化ケイ素又はカーボンコートされた酸化ケイ素に金属元素をドープすること、又は、酸化ケイ素に金属元素をドープし、必要に応じてさらにカーボンコートを施すことにより調製することもできる。
【0074】
負極活物質の形状は特に制限されず、粒子状が好ましい。負極活物質の平均粒径(体積基準のメジアン径D50)は、0.1~60μmが好ましい。さらに、負極活物質が酸化ケイ素又はカーボンコートされた酸化ケイ素である場合、平均粒径は5~20μmがより好ましい。所定の粒子径にするには、粉砕機又は分級機を用い常法により調製することができる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等が好適に用いられる。粉砕時には水又はメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては、特に限定はなく、篩、風力分級機等を所望により用いることができる。分級は乾式及び湿式ともに用いることができる。
市販品の負極活物質を用いる場合、負極活物質の平均粒径は製造元のカタログ記載の値を採用する。
製造元の平均粒径の情報が入手できない場合又は合成した負極活物質を用いる場合は、負極活物質を水中で分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、HORIBA社製のParticle LA-960V2(商品名))で測定して得られる平均粒径の値(水中での体積基準のメジアン径D50)を採用する。
【0075】
負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その中でも、ケイ素系活物質と炭素質材料との組み合わせが好ましく、ケイ素系活物質と黒鉛との組み合わせがより好ましく、酸化ケイ素又はカーボンコートされた酸化ケイ素と黒鉛との組み合わせがさらに好ましい。酸化ケイ素及びカーボンコートされた酸化ケイ素は、それぞれ、上述の金属元素のドープが施された酸化ケイ素及び金属元素のドープ及びカーボンコートの両方が施された酸化ケイ素であってもよい。ドープされる金属元素は、Li、Ni及びTiの少なくともいずれか1種であることが好ましく、Liであることがより好ましい。
ケイ素系活物質と黒鉛とを組み合わせる場合、黒鉛に対するケイ素系活物質の質量比率(ケイ素系活物質/黒鉛)は2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。黒鉛に対するケイ素系活物質の質量比率の下限値に特に制限はないが、0.05以上が実際的である。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
【0076】
負極活物質の、本発明の電極用組成物中における含有量は、特に限定されず、全固形分量に対して、10~99質量%であることが好ましく、30~98質量%がより好ましく、45~97質量%がさらに好ましく、55~95質量%が特に好ましい。
【0077】
(導電助剤)
本発明の電極用組成物は、導電助剤を含有することもでき、特に負極活物質としてのケイ素系活物質は導電助剤と併用されることが好ましい。
導電助剤としては、特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック類、ニードルコークス等の無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブ等の炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレン等の炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケル等の金属粉、金属繊維でもよく、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体等の導電性高分子を用いてもよい。
本発明において、活物質と導電助剤とを併用する場合、上記の導電助剤のうち、電池を充放電した際にLiの挿入と放出が起きず、活物質として機能しないものを導電助剤とする。したがって、導電助剤の中でも、電池を充放電した際に活物質層中において活物質として機能しうるものは、導電助剤ではなく活物質に分類する。電池を充放電した際に活物質として機能するか否かは、一義的ではなく、活物質との組み合わせにより決定される。
【0078】
導電助剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、カーボンブラック類とカーボンナノチューブ類とを組み合わせて用いることが好ましい。
導電助剤の、本発明の電極用組成物中の含有量は、全固形分量に対して、0.5~60質量%が好ましく、0.5~50質量%がより好ましく、0.5~40質量%がより好ましく、0.5~35質量%がより好ましく、0.5~20質量%がより好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、0.8~5.0質量%がさらに好ましく、1.0~2.0質量%が特に好ましい。
【0079】
導電助剤の形状は、特に制限されず、粒子状が好ましい。導電助剤の平均粒径(体積基準のメジアン径D50)は、特に限定されず、例えば、0.01~50μmが好ましく、0.02~10.0μmがより好ましい。
市販品の導電助剤を用いる場合、導電助剤の平均粒径は製造元のカタログ記載の値を採用する。
製造元の平均粒径の情報が入手できない場合又は合成した導電助剤を用いる場合は、導電助剤の平均粒径は、前述した負極活物質の平均粒径(水中での体積基準のメジアン径D50)の測定方法を適用して得られた値を採用すればよい。
【0080】
(他の添加剤)
本発明の電極用組成物は、上記各成分以外の他の成分として、所望により、リチウム塩、イオン液体、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。
上記活物質、導電助剤、他の添加剤に関し、例えば、国際公開第2019/203334号、特開2015-46389号公報等を参照することができる。
【0081】
[二次電池用バインダー組成物及び電極用組成物の調製方法]
本発明のバインダー組成物は、液媒体及び共重合体X、好ましくは、水溶性高分子、(C-2)非重合性界面活性剤、さらには適宜に、任意の他の成分を、例えば通常用いる各種の混合機で混合することにより、混合物として、好ましくはスラリーとして、調製することができる。本発明の電極用組成物の場合は、上記に加えて活物質、好ましくは導電助剤、さらには適宜に他の添加剤を混合する。
混合方法は特に制限されず、一括して混合してもよく、順次混合してもよい。また、複数の成分を混合して得られる混合物を他の成分と混合してもよく、例えば、活物質、導電助剤、水溶性高分子及び液媒体を混合した後、共重合体X及び液媒体を加えてさらに混合して電極用組成物を得ることもできる。
【0082】
[電極シート]
本発明の電極シートは、本発明の電極用組成物を用いて形成された層(電極活物質層、すなわち、負極活物質層又は正極活物質層)を有する。本発明の電極シートは、本発明の電極用組成物を用いて形成された電極活物質層を有する電極シートであればよく、電極活物質層が、集電体等の基材上に形成されているシートでも、基材を有さず、電極活物質層(負極活物質層又は正極活物質層)だけで形成されているシートであってもよい。この電極シートは、通常、集電体上に電極活物質層を積層した構成のシートである。本発明の電極シートは、他の層として、例えば、剥離シート等の保護層、コート層を有してもよい。
本発明の電極シートは、二次電池の負極活物質層又は正極活物質層を構成する材料、あるいは、負極集電体と負極活物質層の積層体(負極層)又は正極集電体と正極活物質層の積層体(正極層)として好適に用いることができる。
【0083】
本発明の電極シートが集電体を有する場合、本発明の電極シートを構成する集電体は、電子伝達体であり、通常はフィルムシート状である。集電体は、活物質に応じて適宜選択することができる。
正極集電体の構成材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン等が挙げられ、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。なお、正極集電体としては、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン又は銀を処理させ、コート層(薄膜)を形成したものも挙げられる。
負極集電体の構成材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン等が挙げられ、アルミニウム、銅、銅合金、又は、ステンレス鋼が好ましい。なお、負極集電体としては、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン又は銀を処理させ、コート層(薄膜)を形成したものも挙げられる。
【0084】
本発明の電極シートを構成する正極活物質層の厚さは特に制限されず、例えば、5~500μmとすることができ、20~200μmが好ましい。
また、本発明の電極シートを構成する正極集電体の厚さは特に制限されず、例えば、10~100μmとすることができ、10~50μmが好ましい。
【0085】
本発明の電極シートを構成する負極活物質層の厚さは特に制限されず、例えば、5~500μmとすることができ、20~200μmが好ましい。
また、本発明の電極シートを構成する負極集電体の厚さは特に制限されず、例えば、10~100μmとすることができ、10~50μmが好ましい。
【0086】
[電極シートの製造方法]
本発明の電極シートは、本発明の電極用組成物を用いて電極活物質層を形成することにより得ることができる。例えば、本発明の電極用組成物を用いて製膜することにより、本発明の電極シートを製造することができる。具体的には、集電体等を基材として、その上(他の層を介していてもよい)に本発明の電極用組成物を塗布して塗膜を形成し、これを乾燥して、基材上に活物質層(塗布乾燥層)を有する電極シートを得ることができる。
【0087】
[二次電池及び二次電池の製造方法]
本発明の二次電池は、正極活物質層とセパレータと負極活物質層とをこの順で有する二次電池であって、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも1つの層が、本発明の電極用組成物を用いて形成された層である。好ましくは、本発明の二次電池は、正極活物質層とセパレータと負極活物質層とをこの順で有し、上記負極活物質層が、本発明の電極用組成物を用いて形成された層である。
本発明の二次電池について、非水電解液二次電池の形態を例にして説明するが、本発明の二次電池は非水電解液二次電池に限定されるものではなく、二次電池全般を広く包含するものである。
【0088】
本発明の好ましい一実施形態である非水電解液二次電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に配されたセパレータとを含む構成を有する。正極は、正極集電体と、この正極集電体に接する正極活物質層とを有し、負極は、負極集電体と、この負極集電体に接する負極活物質層とを有する。本発明の非水電解液二次電池は、上記正極活物質層及び上記負極活物質層の少なくとも1つの層が、本発明の電極用組成物を用いて形成されている。なお、本発明の非水電解液二次電池には、正極活物質層及び負極活物質層のいずれか一方のみを有し、この有する電極活物質層が本発明の電極用組成物を用いて形成されている構成の非水電解液二次電池も含まれる。本発明の非水電解液二次電池は、正極と負極との間に非水電解液を満たすことにより、充放電により二次電池として機能する。
【0089】
図1は、一般的な非水電解液二次電池10の積層構造を、電池として作動させる際の作動電極も含めて、模式化して示す断面図である。非水電解液二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、セパレータ3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する積層構造を有している。負極活物質層2と正極活物質層4との間は非水電解液(図示せず)で満たされ、かつセパレータ3で分断されている。セパレータ3は空孔を有し、通常の電池の使用状態では電解液及びイオンをこの空孔により透過しながら正負極間を絶縁する正負極分離膜として機能する。このような構造により、例えばリチウムイオン二次電池であれば、充電時には外部回路を通って負極側に電子(e
-)が供給され、同時に電解液を介して正極からリチウムイオン(Li
+)が移動してきて負極に蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li
+)が電解液を介して正極側に戻され、作動部位6には電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
本発明において、負極集電体1と負極活物質層2とを合わせて負極と称し、正極活物質層4と正極集電体5とを合わせて正極と称している。
【0090】
本発明の二次電池は、本発明の電極用組成物を用いて形成された正極活物質層及び負極活物質層の少なくともいずれかを具備してなること以外は、電解液(水系電解液、非水電解液)又は固体電解質材料等の電解質、セパレータ等の各材料ないし各部材は、特に制限されない。これらの材料及び部材等は、通常の二次電池に用いられるものを適宜に適用することができる。また、本発明の二次電池の作製方法についても、本発明の電極用組成物を用いて正極活物質層及び負極活物質層の少なくともいずれか1つを形成すること以外は、通常の方法を適宜に採用することができる。これらの二次電池に通常使用される部材及び作製方法については、例えば、特開2016-201308号公報、特開2005-108835号公報、特開2012-185938号公報及び国際公開第2020/067106号等を適宜に参照することができる。
【0091】
本発明の二次電池は、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカード等の電子機器に搭載することができる。また、民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機等)等に搭載することができる。さらに、各種軍需用、及び、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【実施例0092】
実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は本発明で規定すること以外は、これらの実施例により限定して解釈されるものではない。また、室温とは、特段の断りのない限り、27℃を意味する。組成比、配合量比、含有量については、特段の断りのない限り、質量基準を意味する。
【0093】
[共重合体Xの合成]
(1)共重合体X1の合成
(A)水溶性ビニル化合物成分を導くモノマーとしてアクリルアミド(AAm)(富士フイルム和光純薬社製)15.8g(重合比20質量%)、(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマーとしてアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)(富士フイルム和光純薬社製)63.4g(重合比80質量%)、(C-1)重合性界面活性剤成分を導くモノマーとしてアデカリアソープSE-10N(ADEKA社製)(重合性界面活性剤)0.40g、蒸留水40.0gを撹拌して混合して、溶液Iを得た。
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、蒸留水282.2gを加えた。流速200mL/minにて窒素ガスを導入しながら、80℃に昇温した。昇温後、窒素ガスを30分間導入した後、ペルオキソ二硫酸カリウム(富士フイルム和光純薬社製)0.52g、アデカリアソープSE-10N(ADEKA社製)0.40gを添加した。次いで、溶液Iを2時間かけて滴下した。滴下完了後、80℃で1時間撹拌を続けた。次に、90℃まで昇温し、90℃で1時間撹拌を続けた。室温まで冷却し、共重合体X1の水分散液を得た。固形分濃度は20質量%であった。共重合体X1の合成において、(C-1)重合性界面活性剤成分を導くモノマーの含有量は、合計で0.80gであり、共重合体X1における全構成成分の含有量の合計((A)水溶性ビニル化合物成分を導くモノマー、(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマー、及び(C-1)重合性界面活性剤成分を導くモノマーの各含有量の合計)に対して1質量%である。
こうして、AAmと2EHAとSE-10Nとの共重合体である共重合体X1の水分散液を得た。
【0094】
(2)共重合体X2~X12及びCX1~CX3の合成
上記共重合体X1の合成において、(A)水溶性ビニル化合物成分を導くモノマーと、(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマーと、(C-1)重合性界面活性剤成分を導くモノマー又は(C-2)非重合性界面活性剤成分とを、表1に記載する重合比又は含有量としたこと以外は、共重合体X1と同様にして、共重合体X2~X12及びCX1~CX3の水分散液を、それぞれ得た。その際、(C-1)重合性界面活性剤成分及び(C-2)非重合性界面活性剤成分(DBS:デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)は、溶液Iに表1に記載の半量を加え、三ツ口フラスコに残りの半量を加えた。
【0095】
[ガラス転移温度の測定]
表1に示す(A)水溶性ビニル化合物成分を導くモノマー及び(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマーの単独重合体を下記のようにそれぞれ調製し、得られた単独重合体のガラス転移温度を下記条件で測定した。得られた結果を、表1の「Tg」欄に示す。
<単独重合体の調製方法>
-(A)水溶性ビニル化合物成分を導くモノマーの場合-
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、VA-057(商品名:富士フイルム和光純薬社製)(水溶性アゾ重合開始剤)0.40g、(A)水溶性ビニル化合物成分を導くモノマー50.0g、蒸留水350.0gを加えた。流速200mL/minにて窒素ガスを30分間導入した後に、80℃に昇温した。昇温後、80℃で5時間撹拌を続けて、(A)水溶性ビニル化合物成分を導くモノマーの単独重合体を調製した。
-(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマーの場合-
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、V-601(商品名:富士フイルム和光純薬社製)(油溶性アゾ重合開始剤)0.40g、(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマー50.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200.0gを加えた。流速200mL/minにて窒素ガスを30分間導入した後に、80℃に昇温した。昇温後、80℃で5時間撹拌を続けて、(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマーの単独重合体を調製した。
<ガラス転移温度の測定>
ガラス転移温度(Tg)は、上記で得られた各単独重合体を用いて、示差走査熱量計:X-DSC7000(商品名、SII・ナノテクノロジー社製)を用いて下記測定条件で測定して算出した。測定は同一の試料で二回実施し、二回目の測定結果を採用した。
-測定条件-
測定室内の雰囲気:窒素ガス(50mL/min)
昇温速度:5℃/min
測定開始温度:-80℃
測定終了温度:250℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算出:DSC(示差走査熱量測定)チャートの下降開始点と下降終了点の中間温度(下降終了点の温度+[(下降開始点の温度-下降終了点の温度)/2])の小数点以下を四捨五入することでTgを算出した。
【0096】
上記で得られた各共重合体Xについて、以下のようにして引張試験を行い、破断伸びを算出した。得られた結果を、表1に示す。
【0097】
[引張試験:共重合体Xの破断伸びの算出]
剥離性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(縦5cm、横0.5cm、膜厚0.1mm)に、上記で得られた各共重合体Xの水分散液を塗布して乾燥させることにより、PETフィルム上に共重合体Xのポリマーシートを形成した。PETフィルムから、ポリマーシートを剥離して、試験片(縦5cm、横0.5cm、膜厚0.030~0.150mm)を得た。試験片の縦(長さ)方向において、端から1cmの位置及び他方の端から1cmの位置をそれぞれ治具に固定し、引張試験機(商品名:FGS-TV、日本電産シンポ社製)を用いて引張試験を行った。この試験は23℃、引張速度5mm/分で行った。下記式に基づき破断伸びを算出した。得られた破断伸びを下記評価ランクに当てはめて評価した。
破断伸び(%)=100×(L-Lo)/Lo
上記式中、Loは引張試験前の試験片の長さ(治具間距離)であり、Lは破断時の試験片の長さ(破断した試験片を突き合わせて測定される治具間距離)である。
-破断伸びの評価ランク-
4: 15%以上
3: 5%以上、15%未満
2: 2%以上、5%未満
1: 2%未満
【0098】
上記で得られた各共重合体Xを用いて、バインダー組成物、電極用組成物、及び電極シートを調製し、得られた電極活物質層の集電体への密着性を評価した。さらに、この電極シートを用いた二次電池を調製し、放電容量維持率を評価した。
【0099】
[バインダー組成物の調製]
(1)バインダー組成物101の調製
後記表1に記載するバインダー組成物101を調製した。
具体的には、60mLの軟膏容器(馬野化学社製)に、上記共重合体X1の水分散液2.80g(固形分量0.56g)、水溶性高分子(カルボキシメチルセルロース(CMC))の水溶液11.4g(固形分量0.24g)を加え、あわとり練太郎(商品名、THINKY社製)を用いて2000rpmで4分間分散した。バインダー組成物101において、共重合体X1と水溶性高分子の各含有量の質量比は、共重合体X1の含有量(水分散液中の固形分量):水溶性高分子の含有量(水溶液中の固形分量)=70:30である。
こうして、液媒体(水)と共重合体Xと水溶性高分子とを含むバインダー組成物101を得た。
【0100】
(2)バインダー組成物102~112、C101~103)の調製
バインダー組成物101を、表1に記載の組成に変更したこと以外は、バインダー組成物101の調製と同様にして、バインダー組成物102~112及びC101~103をそれぞれ得た。
なお、バインダー組成物が(C-2)非重合性界面活性剤成分を含有する場合には、共重合体X及び(C-2)非重合性界面活性剤成分の各含有量の合計値と水溶性高分子の含有量の質量比が70:30となるように調製した。
【0101】
【0102】
<表1の注>
AAm:アクリルアミド
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
BA:n-ブチルアクリレート
PO-A:フェノキシエチルアクリレート(ライトアクリレートPO-A(商品名)、共栄社化学社製)
AA:アクリル酸
St:スチレン
SE-10N:アデカリアソープSE-10N(商品名)(ADEKA製)(重合性界面活性剤)
DBS:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(非重合性界面活性剤)
CMC:カルボキシメチルセルロース(CMCダイセル(商品名)、品番:1140、ダイセルミライズ社製)
AA及びStは、(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマーではないが、便宜上、(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマー欄に記載している。
“-”は該当する成分が含まれていないことを示す。
「重合比」は、(A)水溶性ビニル化合物成分を導くモノマーと(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマーの各含有量の合計を100質量%として示している。
(C-1)重合性界面活性剤成分を導くモノマーの「含有量」は、共重合体Xにおける全構成成分の含有量の合計、すなわち、(A)水溶性ビニル化合物成分を導くモノマー、(B)疎水性ビニル化合物成分を導くモノマー、及び(C-1)重合性界面活性剤成分を導くモノマーの各含有量の合計を100質量%として示している。
(C-2)非重合性界面活性剤の「含有量」は、共重合体X及び(C-2)非重合性界面活性剤成分の各含有量の合計を100質量%として示している。
「樹脂組成比」は、バインダー組成物中の共重合体X及び水溶性高分子の各含有量の合計を100質量%としたときの、共重合体X及び水溶性高分子の各含有量(質量%)を示す。バインダー組成物が、(C-2)非重合性界面活性剤成分を含有する場合には、共重合体Xの「樹脂組成比」は、(C-2)非重合性界面活性剤成分の含有量を含めた値である。
【0103】
[電極用組成物の調製]
60mLの軟膏容器(馬野化学社製)にリチウムドープされた酸化ケイ素(LiSiO)(粒径:7μm、商品名:KSC-7134、信越化学工業社製)1.43g、黒鉛(商品名:G49、Zichen社製)8.08g、アセチレンブラック(AB)(商品名:デンカブラック、デンカ社製)0.09g、カーボンナノチューブ(CNT)(商品名:Lamiful WPB-030、楠本化成社製)2.50g(固形分量0.01g)、水溶性高分子としてCMC(商品名:CMCダイセル、品番:1140、ダイセルミライズ社製)5.69g(固形分量0.12g)を加え、泡取り練太郎(THINKY社製)を用いて2000rpmで6分間分散した。分散した液に蒸留水を0.22g加え、泡取り練太郎(THINKY社製)を用いて2000rpmで12分間分散した。さらに、分散した液に各共重合体Xの水分散液(表2の「バインダー」欄に記載したバインダー組成物に対応する共重合体Xの水分散液)1.40g(固形分量0.28g)を加え、泡取り練太郎(THINKY社製)を用いて2000rpmで3分間分散した。
こうして、表2に示す電極用組成物(負極用組成物)C-1~C-12及びBC-1~BC-3を、それぞれ得た。これらの電極用組成物は、それぞれ、表1に示す各バインダー組成物と同じ成分を対応する比率で含んでいる。表2の「バインダー、種類」欄に、対応するバインダー組成物No.を示す。
【0104】
[負極シートの作製]
得られた各電極用組成物を厚み20μmの銅箔上に、任意のクリアランスを有するアプリケーターにより塗布し、80℃1時間で乾燥させた。その後、プレス機を用いて加圧したのちに100℃真空で10時間乾燥することで、負極活物質層の厚さが25μmの電極シート(負極シート)を得た。
【0105】
[集電体密着性:負極活物質層の密着性の評価]
作製した負極シートから、横10mm、縦50mmの試験片を3枚切り出した。切り出した3枚の試験片の各々の負極活物質層に、粘着テープ(横10mm、縦50mm、商品名:ナイスタック ビジネスパック、両面テープ、ニチバン社製)を貼り、この粘着テープを介して、各試験片をガラス板に貼り付けた。ガラス板が下側になるようにして置き、90°の角度、100mm/minの速度で負極活物質層から銅箔(集電体)を引き剥がした際の平均応力を3枚の各試験片について測定した。得られた各平均応力の合計を3で割って得られた値(単位:N)を、下記評価ランクに当てはめて評価した。結果を後記表2の「集電体密着性」欄に示す。
-密着性の評価ランク-
4: 0.20N以上
3: 0.12N以上、0.20N未満
2: 0.05N以上、0.12N未満
1: 0.05N未満
【0106】
[サイクル特性の評価]
<非水電解液二次電池(2032型コイン電池)の作製>
上記各負極シートを用いた非水電解液二次電池を作製した。
具体的には、上記各負極シートから直径13.0mmの円板を切り出し、負極の形成に用いた。リチウム箔(厚み50μm、直径14.5mm)、ポリプロピレン製セパレータ(厚み25μm、直径16.0mm)の順番に重ね、電解液II(LiPF6をエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(体積比1対2)に溶解した電解液(濃度1M))を200μLセパレータに浸み込ませた。セパレータの上にさらに上記電解液IIを200μL浸み込ませて、負極シートを負極活物質層面がセパレータに接するようにして重ねた。その後、2032型コインケースをかしめることで、非水電解液二次電池(Li箔-セパレータ-負極活物質層-銅箔からなる積層体を有する電池)を作製した。
【0107】
<サイクル特性>
各コイン電池について、充放電サイクル後の放電容量維持率を、充放電評価装置:TOSCAT-3000(商品名、東洋システム社製)により決定した。
まず、Cレート(Capacityレート)0.2C(5時間で満充電になる速度)で電池電圧が0.02Vに達するまで充電した。次いで、Cレート0.2Cで電池電圧が1.5Vに達するまで放電した。この充電1回と放電1回とを充放電1サイクルとして3サイクル充放電を繰り返して、各コイン電池を初期化した。
初期化後、充電を0.5Cで0.02Vに達するまで行った。次いで、放電を0.5Cで1.5Vに達するまで行った。この充電1回と放電1回を充放電1サイクルとして、80サイクル充放電を繰り返した。
初期化後1サイクル目の放電容量(初期放電容量)を100%としたとき、80サイクル目の放電容量維持率(100×「80サイクル目の放電容量」/「初期放電容量」)を算出し、下記評価ランクに当てはめサイクル特性を評価した。結果を後記表2の「サイクル特性」欄に記載する。
-サイクル特性(放電容量維持率)の評価ランク-
6: 90%以上
5: 85%以上、90%未満
4: 80%以上、85%未満
3: 70%以上、80%未満
2: 50%以上、70%未満
1: 50%未満
【0108】
【0109】
<表2の注>
含有量(%):電極用組成物に含まれる各成分(固形分)の合計に占める各成分(固形分)の割合を質量基準で示したものである。ただし、「バインダー」欄の「含有量」は、バインダー組成物に対応する成分(固形分)が電極用組成物の各成分(固形分)の合計に占める割合である。バインダー組成物に対応する成分には、共重合体X及び水溶性高分子、(C)界面活性剤成分が含有されている場合には、(C)界面活性剤成分を含む。
LiSiO:リチウムドープされた酸化ケイ素(KSC-7134(商品名)、信越化学工業社製)
黒鉛:黒鉛(G49(商品名)、Zichen社製)
AB:アセチレンブラック(デンカブラック(商品名)、デンカ社製)
CNT:カーボンナノチューブ(Lamiful WPB-030(商品名)、楠本化成社製)
【0110】
表1及び2から以下のことが分かる。
バインダー組成物C101~C103は(B)疎水性ビニル化合物成分に相当する成分を構成成分として含まない共重合体CX1~CX3を含むバインダー組成物である。これらのバインダー組成物C101~C103と同じ成分を同じ比率で含み、さらにケイ素系活物質を含有する電極用組成物BC-1~BC-3は、得られる電極シートの密着性が0.12N未満と低く、得られる二次電池の放電容量維持率も70%未満であった。
バインダー組成物101~112は(A)水溶性ビニル化合物成分と(B)疎水性ビニル化合物成分とを構成成分として含む共重合体X1~X12を含むバインダー組成物である。これらのバインダー組成物101~112と同じ成分を同じ比率で含み、さらにケイ素系活物質を含有する電極用組成物C-1~C-12は、いずれも、得られる電極シートの密着性が0.12N以上であり、得られる二次電池の放電容量維持率も80%以上であった。本発明のバインダー組成物及び電極用組成物によれば、電極シートの密着性及び二次電池のサイクル特性を高めることができることがわかる。
中でも、界面活性剤成分を含むバインダー組成物とすると、得られる電極シートの密着性及び得られる二次電池のサイクル特性に優れる傾向であった。