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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143658
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】レーザ装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0687 20060101AFI20241003BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01S5/0687
H01S5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056436
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金堂 晃久
(72)【発明者】
【氏名】上村 和孝
(72)【発明者】
【氏名】木村 賢宜
(72)【発明者】
【氏名】征矢 直記
(72)【発明者】
【氏名】石川 慶
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173SA06
5F173SA26
5F173SA27
5F173SA32
5F173SE01
5F173SF03
5F173SF33
5F173SF42
(57)【要約】
【課題】互いに周波数が異なる複数のレーザ光を出力するレーザ装置において、発振周波数を制御するために適するレーザ装置およびその制御方法を提供すること。
【解決手段】レーザ装置は、レーザ発振周波数が互いに異なる複数の波長可変レーザと、入力する光の周波数に対して透過率または反射率が周期的に変化し、かつ互いに異なる周波数特性を有する複数の周波数フィルタと、前記複数の周波数フィルタのそれぞれに、前記複数の波長可変レーザのそれぞれから出力されたレーザ光を入力させる共通入力ポートと、前記共通入力ポートに入力させる前記レーザ光を切り替える切替部と、を備え、前記複数の周波数フィルタの周波数特性が経時的にまたは外的要因によって変化する場合は、周波数特性を表すカーブが、2次元グラフ上で同じ方向に変化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振周波数が互いに異なる複数の波長可変レーザと、
入力する光の周波数に対して透過率または反射率が周期的に変化し、かつ互いに異なる周波数特性を有する複数の周波数フィルタと、
前記複数の周波数フィルタのそれぞれに、前記複数の波長可変レーザのそれぞれから出力されたレーザ光を入力させる共通入力ポートと、
前記共通入力ポートに入力させる前記レーザ光を切り替える切替部と、
を備え、
前記複数の周波数フィルタの周波数特性が経時的にまたは外的要因によって変化する場合は、周波数特性を表すカーブが、2次元グラフ上で同じ方向に変化する
レーザ装置。
【請求項2】
前記複数の周波数フィルタは一体に構成されている
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記複数の周波数フィルタは同一基板上に搭載されている
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記複数の周波数フィルタは同一の温度調整素子上に搭載されている
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記複数の周波数フィルタは平面光波回路で構成されている
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記レーザ光のそれぞれが前記複数の周波数フィルタを透過または反射した後の第1強度を検出する複数の光検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記レーザ光のそれぞれの周波数の制御目標となる目標周波数を取得し、
前記レーザ光のそれぞれの強度に対する前記第1強度のそれぞれの比を取得し、
前記それぞれの比を前記レーザ光のそれぞれの周波数に相当するモニタ値として設定し、
前記目標周波数に相当する目標値を取得し、
前記目標値と前記モニタ値との差の絶対値が小さくなるように前記波長可変レーザのそれぞれを制御する
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載のレーザ装置の制御方法であって、
制御部は、いずれの前記周波数フィルタにおいても、入力される前記レーザ光が、一つの前記波長可変レーザからのレーザ光のみとなるタイミングが存在するように、前記切替部の切替を制御し、前記タイミングで入力された前記レーザ光に基づいて、当該レーザ光を出力した波長可変レーザを制御する
レーザ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチキャリア伝送用の光源として、互いに周波数が異なる複数のレーザ光を出力するレーザ装置が求められている。この種のレーザ装置では、レーザ光同士の相対的な周波数間隔の精度が高いことが望ましい。周波数間隔を高精度に保つには、複数のレーザ光の各周波数を共通の周波数モニタ部にてモニタし、各周波数を制御することが好ましい。なぜならば、複数のレーザ光の周波数を個別の周波数モニタ部でモニタし、制御する場合、周波数モニタ部の周波数特性が経時的にまたは外的要因によって変化すると、当該変化は周波数モニタ部ごとに独立に起こる場合があるためである。
【0003】
光源の発振波長を管理する装置としては、特許文献1に開示される装置が知られている。特許文献1に開示される装置では、複数のレーザ光の周波数(波長)を共通のモニタ部でモニタしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-60291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される装置は、互いに周波数が異なる複数のレーザ光を出力するレーザ装置において、発振周波数を制御するためには改善の余地がある。たとえば、特許文献1に開示される装置では、透過率および反射率が波長依存性を有する光波長フィルタを一つだけ備えるので、波長の変化に対する透過率または反射率の変化が小さい波長帯(不感帯とも呼ばれる)が存在する。このような不感帯では制御の精度が低下する。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、互いに周波数が異なる複数のレーザ光を出力するレーザ装置において、発振周波数を制御するために適するレーザ装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、レーザ発振周波数が互いに異なる複数の波長可変レーザと、入力する光の周波数に対して透過率または反射率が周期的に変化し、かつ互いに異なる周波数特性を有する複数の周波数フィルタと、前記複数の周波数フィルタのそれぞれに、前記複数の波長可変レーザのそれぞれから出力されたレーザ光を入力させる共通入力ポートと、前記共通入力ポートに入力させる前記レーザ光を切り替える切替部と、を備え、前記複数の周波数フィルタの周波数特性が経時的にまたは外的要因によって変化する場合は、周波数特性を表すカーブが、2次元グラフ上で同じ方向に変化するレーザ装置である。
【0008】
前記複数の周波数フィルタは一体に構成されているものでもよい。
【0009】
前記複数の周波数フィルタは同一基板上に搭載されているものでもよい。
【0010】
前記複数の周波数フィルタは同一の温度調整素子上に搭載されているものでもよい。
【0011】
前記複数の周波数フィルタは平面光波回路で構成されているものでもよい。
【0012】
前記レーザ光のそれぞれが前記複数の周波数フィルタを透過または反射した後の第1強度を検出する複数の光検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記レーザ光のそれぞれの周波数の制御目標となる目標周波数を取得し、前記レーザ光のそれぞれの強度に対する前記第1強度のそれぞれの比を取得し、前記それぞれの比を前記レーザ光のそれぞれの周波数に相当するモニタ値として設定し、前記目標周波数に相当する目標値を取得し、前記目標値と前記モニタ値との差の絶対値が小さくなるように前記波長可変レーザのそれぞれを制御するものでもよい。
【0013】
本発明の一態様は、前記レーザ装置の制御方法であって、制御部は、いずれの前記周波数フィルタにおいても、入力される前記レーザ光が、一つの前記波長可変レーザからのレーザ光のみとなるタイミングが存在するように、前記切替部の切替を制御し、前記タイミングで入力された前記レーザ光に基づいて、当該レーザ光を出力した波長可変レーザを制御するレーザ装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いに周波数が異なる複数のレーザ光を出力するレーザ装置において、発振周波数を制御するために適するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態1に係るレーザ装置の構成を示す図である。
図2図2は、周波数弁別カーブを示す図である。
図3図3は、周波数弁別カーブの変化の例を示す図である。
図4図4は、実施形態2に係るレーザ装置の構成を示す図である。
図5図5は、実施形態3に係るレーザ装置の構成を示す図である。
図6図6は、周波数フィルタ部の別の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0017】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るレーザ装置の構成を示す図である。レーザ装置100は、複数の波長可変レーザ1、2、3と、光合波器4と、光スイッチ5と、周波数フィルタ部6と、PD(Photo Diode)ユニット7と、制御部であるコントローラ8と、を備えている。周波数フィルタ部6とPDユニット7とは周波数モニタ部9を構成している。レーザ装置100は、さらに、光スイッチ5と周波数フィルタ部6とPDユニット7とを収容する筐体10と、波長可変レーザ1、2、3をそれぞれ収容する筐体11、12、13と、を備えている。
【0018】
波長可変レーザ1、2、3は、コントローラ8からの制御信号によってレーザ発振周波数(波長)を変更することができる。波長可変レーザ1、2、3は、互いにレーザ発振周波数が異なる。すなわち、波長可変レーザ1、2、3は、周波数が互いに異なるレーザ光L11、L12、L13をそれぞれ出力する。
【0019】
また、波長可変レーザ1は、レーザ光L11と周波数が同じであり、レーザ光L11の強度と対応する強度を有するレーザ光L21を出力する。同様に、波長可変レーザ2は、レーザ光L12と周波数が同じでありレーザ光L12の強度と対応する強度を有するレーザ光L22を出力し、波長可変レーザ3は、レーザ光L13と周波数が同じでありレーザ光L13の強度と対応する強度を有するレーザ光L23を出力する。レーザ光L21、L22、L23は、たとえばレーザ光L11、L12、L13の一部を光分岐器で取り出したレーザ光や、波長可変レーザ1、2、3のレーザ共振器から漏れ出したレーザ光である。光分岐器としては、ビームサンプラー、ビームスプリッタ、多モード干渉(MMI)カプラなどを利用できる。
【0020】
波長可変レーザ1、2、3は、たとえば、特開2021-129015号公報などに開示された公知のバーニア型の波長可変レーザであるが、特に限定はされず、分布帰還型(DFB)レーザを用いた波長可変レーザでもよい。
【0021】
光合波器4は、レーザ光L11、L12、L13を合波してレーザ光L10として出力する。光合波器4は、たとえばAWG(Arrayed Waveguide Grating)を含んで構成されている。
【0022】
切替部である光スイッチ5は、コントローラ8からの制御信号によって、レーザ光L21、L22、L23から選択された一つを、レーザ光L3として周波数フィルタ部6に出力する。
【0023】
周波数フィルタ部6は、平面光波回路(Planar Lightwave Circuit)で構成されており、光分岐部61と、光導波路62と、リング共振器型光フィルタである周波数フィルタ63aを有する光導波路63と、リング共振器型光フィルタである周波数フィルタ64aを有する光導波路64と、を備える。周波数フィルタ63a、64aは、複数の周波数フィルタの一例である。
【0024】
光分岐部61は、入力したレーザ光L3を3つのレーザ光L4、L5、L6に分岐する。光導波路62は、レーザ光L4をPDユニットにおける後述するPD(Photo Diode)73に導波する。光導波路63は、レーザ光L5をPDユニット7における後述するPD71に導波する。光導波路64は、レーザ光L6をPDユニット7における後述するPD72に導波する。
【0025】
このように、光分岐部61は、周波数フィルタ63a、63bのそれぞれに、波長可変レーザ1、2、3のそれぞれから出力されたレーザ光L21、L22、L23を入力させる共通入力ポートとして機能する。
【0026】
ここで、周波数フィルタ63aは、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、レーザ光L5をレーザ光L5の周波数に応じた透過率で透過する。そして、周波数フィルタ63aを透過したレーザ光L5は、PD71に入力する。すなわち、周波数フィルタ63aは、導波路型の周波数フィルタである。
【0027】
同様に、周波数フィルタ64aは、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、レーザ光L6をレーザ光L6の周波数に応じた透過率で透過する。そして、周波数フィルタ64aを透過したレーザ光L6は、PD72に入力する。
【0028】
周波数フィルタ63a、64aとは、互いに異なる周波数特性を有する。たとえば、周波数フィルタ63a、64aは、透過特性が互いに同じ周期であるが、位相が相対的にずれている。ただし、周波数フィルタ63a、64aの透過特性は互いに異なる周期であってもよい。また、周波数フィルタ63a、64aは、周波数フィルタ部6のPLC中に一体に構成されたものであり、かつ同一のPLC基板上に搭載されたものである。このように、周波数フィルタ63a、64aをPLC中に一体に構成することで、2つの周波数フィルタを個別に構成した場合のように光学的なアラインメントを個別に行うという手間が不要になる。
【0029】
PDユニット7は、複数の光検出部であるPD71、72、73を備える。PD73は、レーザ光L4を受光し、当該レーザ光L4の強度に応じた電気信号をコントローラ8に出力する。PD71は、周波数フィルタ63aを透過したレーザ光L5を受光して、レーザ光L5が周波数フィルタ63aを透過した後の第1強度を検出し、当該レーザ光L5の強度に応じた電気信号をコントローラ8に出力する。PD72は、周波数フィルタ64aを透過したレーザ光L6を受光して、レーザ光L6が周波数フィルタ64aを透過した後の第1強度を検出し、当該レーザ光L6の強度に応じた電気信号をコントローラ8に出力する。そして、PD71、72、73からそれぞれ出力された電気信号は、コントローラ8による周波数ロック制御(波長可変レーザ1、2、3から出力されるレーザ光L11、L12、L13のそれぞれの周波数を目標周波数にするための制御)に用いられる。
【0030】
コントローラ8は、プロセッサとメモリとを備えるマイクロコントロールユニット(MCU)を主体として構成されている。プロセッサは、コントローラ8が実行する制御のための各種演算処理を行うものである。メモリは、プロセッサが演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータ等が格納されたり、プロセッサが演算処理を行う際の作業スペースや演算処理の結果等を記憶する等のために使用されたりする。コントローラ8の制御機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。
【0031】
コントローラ8の機能について具体的に説明する。コントローラ8は、光スイッチ5を制御する。これにより、光スイッチ5は、レーザ光L21、L22、L23のうち、周波数フィルタ部6の光分岐部61(共通入力ポート)に入力させるレーザ光(レーザ光L3)を切り替える。
【0032】
コントローラ8は、いずれの周波数フィルタ63a、64aにおいても、入力されるレーザ光L3が、一つの波長可変レーザからのレーザ光のみとなるタイミングが存在するように、光スイッチ5の切替を制御する。すなわち、たとえば或るタイミングでは、周波数フィルタ63a、64aに入力されるレーザ光L3は、波長可変レーザ1からのレーザ光L21である。別のタイミングでは、周波数フィルタ63a、64aに入力されるレーザ光L3は、波長可変レーザ2からのレーザ光L22である。さらに別のタイミングでは、周波数フィルタ63a、64aに入力されるレーザ光L3は、波長可変レーザ3からのレーザ光L23である。
【0033】
周波数フィルタ63a、64aに入力されるレーザ光L3が波長可変レーザ1からのレーザ光L21であるタイミングの場合について説明する。コントローラ8は、このタイミングでは、レーザ光L21に基づいて、当該レーザ光L21を出力した波長可変レーザ1を制御する。
【0034】
レーザ光L21に基づく波長可変レーザ1の制御は、周波数ロック制御とも呼ばれ、以下のように行なわれる。
まず、コントローラ8は、たとえば上位の制御装置からの指示により、波長可変レーザ1のレーザ光L11の周波数の制御における目標値として目標周波数を取得して設定する。
【0035】
つづいて、コントローラ8は、設定された目標周波数を取得し、目標周波数に基づいて、第1周波数弁別カーブおよび第2周波数弁別カーブのいずれか一つを選択する。第1周波数弁別カーブは、周波数フィルタ63aの透過特性に相当する。第2周波数弁別カーブは、周波数フィルタ64aの透過特性に相当する。第1周波数弁別カーブおよび第2周波数弁別カーブはたとえはメモリに記憶されている。
【0036】
図2は、振幅値が0から1の間で変化するように規格化した第1周波数弁別カーブC1、第2周波数弁別カーブC2を示す図である。横軸は周波数であり、或る周波数を基準として弁別カーブの半周期で規格化したものである。縦軸はPD比である。ここで、PD比とは、第1周波数弁別カーブC1については、PD73から入力された電流値に対するPD71から入力された電流値の比に相当し、第2周波数弁別カーブC2については、PD73から入力された電流値に対するPD72から入力された電流値の比に相当する。なお、図2では第1周波数弁別カーブC1と第2周波数弁別カーブC2との位相ずれをπ/2に設定している。
【0037】
レーザ光L21の目標周波数が図2における-1に相当するとして説明する。コントローラ8は、その周波数にて周波数に対する比の変化率がより大きい第2周波数弁別カーブC2を選択する。
【0038】
つづいて、コントローラ8は、目標周波数を、選択した周波数弁別カーブに当てはめることによって、目標周波数に相当する目標値を取得する。たとえば、図2を参照すると、目標周波数が-1の場合は、第2周波数弁別カーブC2の点P1に当てはめて、点P1の縦軸の値に相当する目標値(0.5)を取得する。
【0039】
つづいて、コントローラ8は、PD73が検出した光強度に対するPD71が検出した光強度の比を取得し、レーザ光L21の周波数に相当するモニタ値として設定する。PD73が検出した光強度に対するPD71が検出した光強度の比は、レーザ光L21の強度に対する第1強度の比に相当する。
【0040】
つづいて、コントローラ8は、目標値とモニタ値との差の絶対値を算出して取得し、差の絶対値が小さくなるように波長可変レーザ1をフィードバック制御する。
【0041】
周波数フィルタ63a、64aに入力されるレーザ光L3が波長可変レーザ2からのレーザ光L22であるタイミングの場合も同様に、コントローラ8は、このタイミングでは、レーザ光L22に基づいて、当該レーザ光L22を出力した波長可変レーザ2を周波数ロック制御する。なお、レーザ光L22の目標周波数が図2における-0.5に相当するとすると、コントローラ8は、その周波数にて周波数に対する比の変化率がより大きい第1周波数弁別カーブC1を選択する。そして、コントローラ8は、目標周波数を、選択した第1周波数弁別カーブC1の点P2に当てはめることによって、点P2の縦軸の値に相当する目標値(0.5)を取得する。
【0042】
周波数フィルタ63a、64aに入力されるレーザ光L3が波長可変レーザ3からのレーザ光L23であるタイミングの場合も同様に、コントローラ8は、このタイミングでは、レーザ光L23に基づいて、当該レーザ光L23を出力した波長可変レーザ3を周波数ロック制御する。なお、レーザ光L23の目標周波数が図2における0に相当するとすると、コントローラ8は、その周波数にて周波数に対する比の変化率がより大きい第2周波数弁別カーブC2を選択する。そして、コントローラ8は、目標周波数を、選択した第2周波数弁別カーブC2の点P3に当てはめることによって、点P3の縦軸の値に相当する目標値(0.5)を取得する。
【0043】
このように構成されたレーザ装置100では、互いに異なる周波数特性を有する周波数フィルタ63a、64aを備えることによって、制御目標の周波数が不感帯と意図せずに重なってしまうことが抑制されるので、複数のレーザ光L11、L12、L13の周波数の制御精度の低下を抑制できる。
【0044】
さらに、レーザ装置100では、周波数フィルタ63a、64aが一体に構成され、かつ同一基板上に搭載されていることによって、周波数フィルタ63a、64aの周波数特性が経時的にまたは外的要因によって変化する場合は、周波数特性を表すカーブが、2次元グラフ上で同じ方向に変化する。ここで、経時的な変化とはたとえば経年劣化などであり、外的要因による変化とは環境温度による変化などである。
【0045】
図3は、周波数弁別カーブの変化の例を示す図である。図3に示す2次元グラフにおいて、第1周波数弁別カーブC1は周波数フィルタ63aの周波数特性を表し、第2周波数弁別カーブC2は周波数フィルタ64aの周波数特性を表している。
【0046】
第1周波数弁別カーブC1、第2周波数弁別カーブC2が経時的にまたは外的要因によって変化する場合、第1周波数弁別カーブC1は第1周波数弁別カーブC1Aのように変化し、第2周波数弁別カーブC2は第2周波数弁別カーブC2Aのように変化する。このような変化は、周波数軸上で高周波数側にシフトするような変化であり、同じ方向への変化である。
【0047】
図3に示すように、第1周波数弁別カーブC1の或る極大点を極大点P11、極大点P11に対応する第1周波数弁別カーブC1Aにおける極大点を極大点P11A、第2周波数弁別カーブC2の或る極大点を極大点P12、極大点P12に対応する第2周波数弁別カーブC2Aにおける極大点を極大点P12A、第1周波数弁別カーブC1と第2周波数弁別カーブC2との交点を交点P13、交点P13に対応する第1周波数弁別カーブC1Aと第2周波数弁別カーブC2Aとの交点を交点P13Aとする。
【0048】
第1周波数弁別カーブC1と第2周波数弁別カーブC2とが、周波数フィルタ63a、64aの周波数特性を表す2次元グラフ上で同じ方向に変化する場合、極大点P11と極大点P12と交点P13との周波数的な関係は、変化後の極大点P11Aと極大点P12Aと交点P13Aとにおいても変わらない。特に、極大点P11と極大点P11Aとの周波数差と、極大点P12と極大点P12Aとの周波数差と、交点P13と交点P13Aとの周波数差とが等しいことが好ましい。
【0049】
周波数フィルタ63a、64aの周波数特性を表すカーブが2次元グラフ上で同じ方向に変化することによって、レーザ光L11、L12、L13の相対的な周波数間隔の精度の低下が抑制される。
【0050】
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係るレーザ装置の構成を示す図である。実施形態2に係るレーザ装置100Aの、実施形態1に係るレーザ装置100との相違点は、コントローラ8の代わりに個別のコントローラ81、82、83を備えている点、周波数モニタ部9と光スイッチ5とが別個の筐体14、15に収容されている点、スイッチ21、22、23を備える点、および信号発生器30を備える点、である。
【0051】
コントローラ81、82、83は、それぞれ、波長可変レーザ1、2、3のそれぞれを個別に制御する。スイッチ21は、PD73からの電気信号をコントローラ81、82、83のいずれかに出力する。スイッチ22は、PD71からの電気信号をコントローラ81、82、83のいずれかに出力する。スイッチ23は、PD72からの電気信号をコントローラ81、82、83のいずれかに出力する。
【0052】
信号発生器30は、光スイッチ5、スイッチ21、22、23、およびコントローラ81、82、83に同期信号を出力する。これにより、光スイッチ5、スイッチ21、22、23、およびコントローラ81、82、83の動作のタイミングが所望のタイミングで行われる。
【0053】
すなわち、たとえば或るタイミングでは、周波数フィルタ63a、64aに入力されるレーザ光L3は、波長可変レーザ1からのレーザ光L21であり、スイッチ21、22、23は、レーザ光L21に基づく電流信号をコントローラ81に出力し、コントローラ81は、これらの電流信号に基づいて波長可変レーザ1を制御する。
【0054】
また、別のタイミングでは、周波数フィルタ63a、64aに入力されるレーザ光L3は、波長可変レーザ2からのレーザ光L22であり、スイッチ21、22、23は、レーザ光L22に基づく電流信号をコントローラ82に出力し、コントローラ82は、これらの電流信号に基づいて波長可変レーザ2を制御する。
【0055】
また、さらに別のタイミングでは、周波数フィルタ63a、64aに入力されるレーザ光L3は、波長可変レーザ3からのレーザ光L23であり、スイッチ21、22、23は、レーザ光L23に基づく電流信号をコントローラ83に出力し、コントローラ83は、これらの電流信号に基づいて波長可変レーザ3を制御する。
【0056】
このように構成されたレーザ装置100Aにおいても、互いに異なる周波数特性を有する周波数フィルタ63a、64aを備えることによって、制御目標の周波数が不感帯と意図せずに重なってしまうことが抑制されるので、複数のレーザ光L11、L12、L13の周波数の制御精度の低下を抑制できる。さらには、レーザ装置100Aにおいても、周波数フィルタ63a、64aの周波数特性が経時的にまたは外的要因によって変化する場合は、周波数特性を表すカーブが、2次元グラフ上で同じ方向に変化する。これにより、レーザ光L11、L12、L13の相対的な周波数間隔の精度の低下が抑制される。
【0057】
さらに、レーザ装置100Aでは、波長可変レーザ1、2、3が、それぞれ別個の筐体11、12、13に収容されており、周波数モニタ部9と光スイッチ5とが別個の筐体14、15に収容されている。
【0058】
(実施形態3)
図5は、実施形態5に係るレーザ装置の構成を示す図である。実施形態5に係るレーザ装置100Bの、実施形態1に係るレーザ装置100との相違点は、波長可変レーザ1、2、3の代わりに波長可変レーザ1B、2B、3Bを備えている点、光スイッチ5の代わりに光合波器5Bを備えている点、ならびに、波長可変レーザ1B、2B、3B、光合波器4、光合波器5B、周波数モニタ部9、およびPDユニット7が一つの筐体16に収容されている点、である。
【0059】
波長可変レーザ1B、2B、3Bは、それぞれ、切替部である光スイッチ1B1、2B1、3B1を備えている。光スイッチ1B1、2B1、3B1は、たとえば半導体光増幅器を含んで構成されている。半導体光増幅器は、順バイアス状態では入力された光を透過または増幅して出力し、逆バイアス状態では入力された光を吸収するように動作するので、光スイッチとして利用できる。光スイッチ1B1、2B1、3B1は、コントローラ8からの制御信号によって、レーザ光L21、L22、L23から選択された一つを光合波器5Bに出力する。
【0060】
光合波器5Bは、たとえばMMIカプラを含んで構成されており、入力されたレーザ光L21、L22、L23のいずれか一つをレーザ光L3として周波数フィルタ部6に出力する。
【0061】
このように構成されたレーザ装置100Bにおいても、レーザ装置100、100Aと同様に、複数のレーザ光L11、L12、L13の周波数の制御精度の低下を抑制でき、レーザ光L11、L12、L13の相対的な周波数間隔の精度の低下が抑制される。
【0062】
さらに、レーザ装置100Bでは、コントローラ8以外の要素が一つの筐体16に収容されているので、小型であり、取り扱いやすい。さらに、光スイッチ1B1、2B1、3B1が半導体光増幅器を備えるので、半導体光増幅器によってレーザ光L21、L22、L23を適度に光増幅できる。これにより、PD71、72、73に入力されるレーザ光の強度を高くできるので、周波数モニタにおけるS/N比を向上させることができる。さらに、半導体光増幅器によってレーザ光L21、L22、L23のうち遮断すべきレーザ光を吸収して確実に遮断できるので、モニタしたいレーザ光のみを確実に受光できるようになり、周波数モニタにおけるS/N比を向上させることができる。
【0063】
(周波数モニタ部の別の構成例)
上記実施形態では、平面光波回路で構成された周波数フィルタを用いているが、周波数フィルタはこれに限られない。
【0064】
図6は、周波数フィルタ部の別の構成例を示す図である。周波数フィルタ部6Cは、共通入力ポート6C1を有するプリズム6C2と、エタロンフィルタ6C3と、を備えている。
【0065】
プリズム6C2は、共通入力ポート6C1から入力されたレーザ光L3を3つのレーザ光L4、L5、L6に分岐する。レーザ光L4はPD73に入力される。
【0066】
エタロンフィルタ6C3は、厚さが互いに異なる2つの部分を有している。これにより、エタロンフィルタ6C3は、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、かつ互いに異なる周波数特性を有する2つの周波数フィルタが一体に構成されたものとして機能する。レーザ光L5、L6は、それぞれ異なる周波数フィルタの部分を透過してPD71、72に入力される。
【0067】
エタロンフィルタ6C3では、2つの周波数フィルタが一体に構成されていることによって、2つの周波数フィルタの周波数特性が経時的にまたは外的要因によって変化する場合は、周波数特性を表すカーブが、2次元グラフ上で同じ方向に変化する。
【0068】
周波数フィルタ部6Cは、実施形態1~3のレーザ装置100、100A、100Bのいずれにおいても、周波数フィルタ部6に置き換えることができる。
【0069】
なお、上記実施形態では、2つの周波数フィルタが一体化される、または同一基板上に搭載されることによって、2つの周波数フィルタの周波数特性が経時的にまたは外的要因によって変化する場合は、周波数特性を表すカーブが、2次元グラフ上で同じ方向に変化するが、このような同じ方向への変化は、他の構成によっても実現できる。たとえば、2つの周波数フィルタが同一の温度調整素子上に搭載されていたりする場合も、このような同じ方向への変化を実現することができる。また、2つの周波数フィルタが別体であっても、同一基板上に搭載されることによって、このような同じ方向への変化を実現することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、レーザ光L11、L12、L13を光合波器4で合波してレーザ光L10として出力しているが、光合波器4を設けずにレーザ光L11、L12、L13を別個に出力してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では周波数フィルタは透過型であるが、反射型でもよい。反射型の周波数フィルタとしては、入力する光の周波数に対して反射率が周期的に変化し、かつ互いに異なる周波数特性を有する周波数フィルタを利用できる。
【0072】
また、上記実施形態では波長可変レーザの数は3であるが、複数であればこれに限定されず、2または4以上でもよい。
【0073】
また、上記実施形態において波長可変レーザ1、2、3のレーザ光L11、L12、L13の出力側に光アイソレータを設けてもよい。
【0074】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1、2、3、1B、2B、3B :波長可変レーザ
1B1、2B1、3B1、5 :光スイッチ
4、5B :光合波器
6、6C :周波数フィルタ部
6C1 :共通入力ポート
6C2 :プリズム
6C3 :エタロンフィルタ
7 :PDユニット
8、81、82、83 :コントローラ
9 :周波数モニタ部
10、11、12、13、14、15、16 :筐体
21、22、23 :スイッチ
30 :信号発生器
61 :光分岐部
62、63、64 :光導波路
63a、64a :周波数フィルタ
100、100A、100B :レーザ装置
C1、C1A :第1周波数弁別カーブ
C2、C2A :第2周波数弁別カーブ
L3、L4、L5、L6、L10、L11、L12、L13、L21、L22、L23 :レーザ光
P11、P11A、P12、P12A :極大点
P13、P13A :交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6