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特開2024-143693プレススルーパッケージ用シートおよびその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143693
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】プレススルーパッケージ用シートおよびその応用
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/34 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 63/10 20060101ALI20241003BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 27/30 20060101ALN20241003BHJP
   B32B 27/22 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B65D75/34
C08L27/06
C08L101/00
C08L67/02
C08L63/10
B65D65/02 E
B32B27/30 101
B32B27/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056482
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】西澤 保
(72)【発明者】
【氏名】木水 隆弘
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E067AB82
3E067AC12
3E067BA15A
3E067BB14A
3E067BC04A
3E067CA11
3E067EA06
3E067FB04
3E067FC01
3E067GD07
3E086AB01
3E086AD07
3E086BA15
3E086BB21
3E086BB51
3E086CA28
4F100AJ02
4F100AJ02A
4F100AK01B
4F100AK15
4F100AK15A
4F100AK41
4F100AK41A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA04A
4F100EH46B
4F100EJ94A
4F100EJ94B
4F100GB15
4F100JA04A
4F100JA06A
4F100JA07A
4F100JC00
4F100JC00A
4F100JK07
4F100JK07A
4F100YY00A
4J002AA002
4J002AB022
4J002BB032
4J002BB042
4J002BB122
4J002BB142
4J002BD031
4J002CD163
4J002CF003
4J002CF032
4J002CF062
4J002CF182
4J002CF192
4J002CL042
4J002EH096
4J002EH106
4J002EH126
4J002EW046
4J002FD023
4J002FD026
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】本発明は、バイオマス度が高く、熱安定性及び耐熱性に優れ、かつ表面ブリードの発生が抑制されたプレススルーパッケージ用シートを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、塩化ビニル樹脂、バイオマス樹脂及び可塑剤を含み、周波数10Hzの条件で粘弾性測定(引張法)して得られる損失正接tanδのピーク温度が75℃以上にある、プレススルーパッケージ用シートに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂、バイオマス樹脂及び可塑剤を含み、
周波数10Hzの条件で粘弾性測定(引張法)して得られる損失正接tanδのピーク温度が75℃以上にある、プレススルーパッケージ用シート。
【請求項2】
前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記バイオマス樹脂を10~25質量部含み、前記可塑剤を1~10質量部含む、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項3】
前記塩化ビニル樹脂の平均重合度が500~1000である、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項4】
前記バイオマス樹脂がブチレンサクシネート系樹脂である、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項5】
前記ブチレンサクシネート系樹脂が、ポリブチレンサクシネートまたはポリブチレンサクシネートアジペートである、請求項4に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項6】
前記ブチレンサクシネート系樹脂のMFRが5~30g/10分(190℃)である、請求項4に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項7】
前記ブチレンサクシネート系樹脂の融点が80~120℃である、請求項4に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項8】
前記可塑剤がエポキシ化植物油である、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項9】
前記エポキシ化植物油が、エポキシ化大豆油である、請求項8に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項10】
前記塩化ビニル樹脂の塩素化度が58%以上である、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項11】
バイオマス度が10%以上である、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項12】
医薬包装用である、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のプレススルーパッケージ用シートを巻回してなる、巻回体。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載されるプレススルーパッケージ用シートを備えたプレススルーパッケージ。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載のプレススルーパッケージ用シートをプラグ成形する、プレススルーパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレススルーパッケージ用シート、その巻回体、プレススルーパッケージ及びプレススルーパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の包装分野においては、カプセルや錠剤等の固形剤を包装したPTP(プレススルーパッケージ)が利用されている。
【0003】
PTPとは、例えば透明のシートに圧空成形や真空成形、プラグ成形等を施すことにより、カプセル等の固形剤を収納するポケット部を形成し、ポケット部にカプセル等を収納した後、例えばアルミ箔のように手で容易に引き裂いたり、容易に開封したりできる材質の箔やフィルムを蓋材として積層して一体化した形態の包装である。PTPを用いることで、透明なシートのポケットに収納された固形剤や食品等を開封前に直接肉眼で確認でき、開封する際には、ポケット部の固形剤等を指で押して蓋材を押し破ることで、内容物を容易に取り出すことができる。
【0004】
PTPに用いられるシートの原料としては、ポリ塩化ビニル樹脂が多用されている。例えば、特許文献1には、医薬品包装用樹脂シート(厚み250μm)を、温度230℃、圧力100kgfで加熱・加圧した時の、分光測色計を用いて測定したYI値(イエローインデックス)が20以下であり、蒸発残留物量が、20μg/ml以下である医薬品包装用樹脂シートが開示されており、ここでは、樹脂として塩化ビニル系樹脂が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-123558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プレススルーパッケージは使い捨て容器であるため、使用後にはゴミとして処分される。このため、環境負荷の低減のためにも、プレススルーパッケージ用シートは化石燃料由来の原料から形成されるよりも、バイオマス由来(植物由来)の原料から形成されることが好ましい。
【0007】
また、従来の塩化ビニル樹脂を含むプレススルーパッケージ用シートにおいては、熱安定性や耐熱性が不十分な場合があり、改善が求められている。さらに、塩化ビニル樹脂を含む樹脂シートにおいては、可塑剤や安定剤としてエポキシ化植物油が使用されることが多いが、製造工程においてエポキシ化植物油が表面にブリードしてくる場合があり問題となっていた。
【0008】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、バイオマス度が高く、熱安定性と耐熱性に優れたプレススルーパッケージ用シートを提供することを目的として検討を進めた。また、本発明者らは、プレススルーパッケージ用シートの製造工程において表面ブリードの発生を抑制することも目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の具体的な態様の例を以下に示す。
【0010】
[1] 塩化ビニル樹脂、バイオマス樹脂及び可塑剤を含み、
周波数10Hzの条件で粘弾性測定(引張法)して得られる損失正接tanδのピーク温度が75℃以上にある、プレススルーパッケージ用シート。
[2] 塩化ビニル樹脂100質量部に対して、バイオマス樹脂を10~25質量部含み、可塑剤を1~10質量部含む、[1]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[3] 塩化ビニル樹脂の平均重合度が500~1000である、[1]又は[2]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[4] バイオマス樹脂がブチレンサクシネート系樹脂である、[1]~[3]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[5] ブチレンサクシネート系樹脂が、ポリブチレンサクシネートまたはポリブチレンサクシネートアジペートである、[4]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[6] ブチレンサクシネート系樹脂のMFRが5~30g/10分(190℃)である、[4]又は[5]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[7] ブチレンサクシネート系樹脂の融点が80~120℃である、[4]~[6]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[8] 可塑剤がエポキシ化植物油である、[1]~[7]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[9] エポキシ化植物油が、エポキシ化大豆油である、[8]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[10] 塩化ビニル樹脂の塩素化度が58%以上である、[1]~[9]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[11] バイオマス度が10%以上である、[1]~[10]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[12] 医薬包装用である、[1]~[11]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シートを巻回してなる、巻回体。
[14] [1]~[12]のいずれかに記載されるプレススルーパッケージ用シートを備えたプレススルーパッケージ。
[15] [1]~[12]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シートをプラグ成形する、プレススルーパッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バイオマス度が高く、熱安定性及び耐熱性に優れ、かつ表面ブリードの発生が抑制されたプレススルーパッケージ用シートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。なお、以下の説明において使用される「フィルム」と「シート」は明確に区別されるものではなく、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0013】
(プレススルーパッケージ用シート)
本実施形態は、塩化ビニル樹脂、バイオマス樹脂及び可塑剤を含み、周波数10Hzの条件で粘弾性測定(引張法)して得られる損失正接tanδのピーク温度が75℃以上にある、プレススルーパッケージ用シート(以下「本プレススルーパッケージ用シート」ともいう)に関する。
【0014】
本プレススルーパッケージ用シートは、上記構成を有するため、バイオマス度が高く、熱安定性及び耐熱性に優れ、かつ表面ブリードの発生が抑制されたプレススルーパッケージ用シートを得ることができる。具体的に、本プレススルーパッケージ用シートは、熱安定性が高いため、例えば、成形加工時に高温環境下におかれた場合であっても着色等の劣化が抑制される。また、本プレススルーパッケージ用シートは、耐熱性に優れており、熱変形などが抑制される。そして、本プレススルーパッケージ用シートはその製造工程において、表面ブリードの発生が抑制されているため、製造工程の汚染が抑制されており、その結果、表面性状が良好なシートを得ることができる。
【0015】
また、本プレススルーパッケージ用シートは、耐熱性に優れており、熱変形などが抑制されている一方で、優れた成形性を有している。一般的に、プレススルーパッケージ用シートの耐熱性が高い場合には、その成形温度も高くなる傾向にあるため、耐熱性と成形性(低温成形性)は相反する性質である。しかしながら、本実施形態においては、塩化ビニル樹脂、バイオマス樹脂及び可塑剤を混合し、損失正接tanδのピーク温度を所定値以上とすることにより、耐熱性を高めつつも、成形温度を比較的低くすることができ、耐熱性と成形性(低温成形性)の両立が可能となっている。
【0016】
本明細書において成形性が良好であるということは、錠剤を収納するポケット天面やコーナー部等に潰れや変形等が無く適正に成形加工できる温度の範囲(成形可能温度範囲)が比較的低いことをいう。より具体的には、成形可能温度範囲の下限値が99℃以下である場合に、成形性が良好であると評価することができる。成形可能温度が低い場合、大量生産工程において、成形温度を低く設定することができるため、生産性効率を高めることができ、また、製造にかかるエネルギーコストを削減することも可能となる。
【0017】
本プレススルーパッケージ用シートのバイオマス度は10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。バイオマス度の上限値は特に限定されるものではないが、環境負荷低減の観点からすると100%であることが最も好ましい。。プレススルーパッケージ用シートのバイオマス度を高めることにより、環境への負荷をより効果的に低減することができる。
なお、本明細書におけるバイオマス度は、下記の方法により算出することができる。
「バイオマス度」(%)=「バイオマス原料のバイオマス度」(%)×「シート中のバイオマス原料の質量割合」
バイオマス原料のバイオマス度とは、バイオマス原料中のバイオマス由来の炭素濃度の指標であり、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物中のC14含有量は105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、バイオマス原料中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス原料のバイオマス度を算出することができる。
【0018】
従来、塩化ビニル樹脂とバイオマス樹脂は相溶性が悪いものと考えられていたため、これらを混合したシートを形成することは検討されていなかった。また、バイオマス樹脂と可塑剤についてもその相溶性が低いものと考えられていたため、これらを混合することについてもほとんど検討がなされていなかった。そこで、本発明者らは、塩化ビニル樹脂を含むシートにおいて、敢えてバイオマス樹脂と可塑剤を組み合わせて用いることを検討した。その結果、塩化ビニル樹脂を含むシートにおいて、バイオマス樹脂と可塑剤を組み合わせて用い、かつシートの損失正接tanδのピーク温度を75℃以上とすることにより、上記効果が奏されるプレススルーパッケージ用シートが得られることを見出した。
【0019】
本プレススルーパッケージ用シートの周波数10Hzの条件で粘弾性測定(引張法)して得られる損失正接tanδのピーク温度は75℃以上であることが好ましく、77℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。損失正接tanδのピーク温度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、100℃以下であることが好ましい。なお、損失正接tanδは、弾性と粘性のバランスを評価する指標として知られており、以下の式で算出される。損失正接tanδは、、周波数10Hzの条件で測定された損失弾性率(E’’)と貯蔵弾性率(E’)の値から算出される。
損失正接tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’)
プレススルーパッケージ用シートの周波数10Hzの条件で粘弾性測定(引張法)して得られる損失正接tanδのピーク温度を上記範囲内とすることにより、プレススルーパッケージ用シートの耐熱性をより効果的に高めることができる。なお、プレススルーパッケージ用シートの上記損失正接tanδのピーク温度は、例えば、用いる塩化ビニル樹脂やバイオマス樹脂、可塑剤の種類を適宜選択したり、配合量を調整することで達成することができる。
【0020】
本プレススルーパッケージ用シートは透明性にも優れている。具体的に、本プレススルーパッケージ用シートにおいては、ヘーズ値が低く抑えられており、さらに、高い全光線透過率が達成されている。
【0021】
本プレススルーパッケージ用シートの全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。本プレススルーパッケージ用シートの全光線透過率の上限値は特に限定されるものではなく、100%であってもよい。プレススルーパッケージ用シートの全光線透過率が上記範囲内であれば、プレススルーパッケージの意匠性を高めることができ、さらに内容物の視認性等を高めることができる。本プレススルーパッケージ用シートの全光線透過率は、JIS K7136:2000に準拠して測定される値である。
【0022】
本プレススルーパッケージ用シートのヘーズは、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましく、35%以下であることが特に好ましい。本プレススルーパッケージ用シートのヘーズの下限値は特に限定されるものではなく、0%であってもよい。プレススルーパッケージ用シートのヘーズが上記範囲内であれば、プレススルーパッケージの意匠性を高めることができ、さらに内容物の視認性等を高めることができる。本プレススルーパッケージ用シートのヘーズは、JIS K7136:2000に準拠して測定される値である。
【0023】
本プレススルーパッケージ用シートの全体の厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。また、本プレススルーパッケージ用シートの全体の厚みは、500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましい。本プレススルーパッケージ用シートの全体の厚みを上記範囲内とすることにより、耐熱性と成形性をより効果的に高めることができる。
【0024】
本実施形態は、プレススルーパッケージ用シートを巻回してなる巻回体に関するものであってもよい。本プレススルーパッケージ用シートは適度な強度と柔軟性を有するため、ロール状体として、保管したり、流通させたりすることができる。
【0025】
<塩化ビニル樹脂>
本プレススルーパッケージ用シートは塩化ビニル樹脂を含む。塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルと共重合可能なその他の単量体との共重合体、塩化ビニル重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体などを挙げることができる。
【0026】
塩化ビニルと共重合可能な単量体は、分子中に反応性二重結合を有するものであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα-オレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類、スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのN-置換マレイミド類などを挙げることができる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら塩化ビニル共重合体において、共重合体に占める塩化ビニル単量体由来の構成単位の割合は、60~99質量%であることが好ましい。共重合体中の塩化ビニル以外の構成単位の含有量を一定値以下として塩化ビニル単量体の割合を60質量%以上とすると、機械的特性が良好となる傾向がある。
【0027】
グラフト共重合体における塩化ビニル重合体以外の重合体は、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよい。このような重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどを挙げることができ、これらは単独でも2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0028】
本実施形態では塩化ビニル樹脂の塩素化度は58%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。塩化ビニル樹脂の塩素化度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば75%以下であることが好ましい。ここで、塩化ビニル樹脂の塩素化度は、塩化ビニル樹脂に含まれる塩素含有率である。なお、本明細書では、上記塩素化度を有する塩化ビニル樹脂を硬質塩化ビニル樹脂ともいう。塩化ビニル樹脂の塩素化度を上記範囲内とすることにより、本プレススルーパッケージ用シートの耐熱性をより効果的に高めつつも、良好な成形性を発揮することができる。
【0029】
塩化ビニル樹脂の平均重合度は500以上であることが好ましく、550以上であることがより好ましく、600以上であることがさらに好ましい。また、塩化ビニル樹脂の平均重合度は1000以下であることが好ましく、950以下であることがより好ましく、900以下であることがさらに好ましい。塩化ビニル樹脂の平均重合度を上記下限値以上とすることにより、プレススル-パッケージ用シートの機械物性を高めることができ、上記上限値以下とすることにより、フィルム成形時の機械負荷低減を低減することができ、透明性などを高めることができる。なお、塩化ビニル樹脂の平均重合度は、GPC法を用いて分子量分布を測定することにより算定することができる。
【0030】
本プレススルーパッケージ用シートにおける塩化ビニル樹脂の含有量は、プレススルーパッケージ用シートの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、本プレススルーパッケージ用シートにおける塩化ビニル樹脂の含有量は、プレススルーパッケージ用シートの全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
塩化ビニル樹脂の製造方法は、特に限定はされないが、従来公知の方法、例えば懸濁重合法などを採用することができる。また、塩素化度が58%以上の塩化ビニル樹脂は、通常の塩化ビニル樹脂に塩素をさらに反応させることで得てもよい。
【0032】
<バイオマス樹脂>
本プレススルーパッケージ用シートはバイオマス樹脂(植物由来樹脂)を含む。ここで、バイオマス樹脂とは、再生可能なバイオマス資源を原料に、化学的または生物学的に合成することで得られる樹脂を意味する。バイオマス樹脂は、これを焼却処分した場合でも、バイオマスのもつカーボンニュートラル性から、大気中の二酸化炭素濃度を上昇させないという特徴がある。
【0033】
バイオマス樹脂としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ブチレンサクシネート系樹脂(例えば、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネートラクテート(PBSL)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)等)、エチレンサクシネート系樹脂(例えば、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PESA)等)、ポリアミド系樹脂(例えば、ポリアミド4、ポリアミド11等)、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体等)等が挙げられる。また、バイオマス樹脂は、酢酸セルロースのようにバイオマス材料を主成分に化学的変性を加えた樹脂であってもよい。これらのバイオマス樹脂は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0034】
中でも、バイオマス樹脂はブチレンサクシネート系樹脂であることが好ましい。バイオマス樹脂としてブチレンサクシネート系樹脂を用いることにより、プレススルーパッケージ用シートの成形性(低温成形性)をより効果的に高めることができる。さらに、ブチレンサクシネート系樹脂は、ポリブチレンサクシネート(PBS)またはポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)であることがより好ましい。ブチレンサクシネート系樹脂としては市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、三菱化学製ポリブチレンサクシネート系樹脂「BioPBS」(登録商標)(ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート等)、昭和電工社製ポリブチレンサクシネート樹脂「ビオノーレ」(登録商標)、Shandong Fuwin New Material社製ポリブチレンサクシネート樹脂、BASF社製ポリブチレンアジペートテレフタレート系樹脂「エコフレックス」(登録商標)等が挙げられる。
【0035】
ブチレンサクシネート系樹脂のJIS K7210:2014に準拠して測定される190℃2.16kg荷重のメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう)は、MFRは1g/10分以上であることが好ましく、3g/10分以上であることがより好ましく、4g/10分以上であることがさらに好ましい。また、ブチレンサクシネート系樹脂のJIS K7210:2014に準拠して測定される190℃、2.16kg荷重のメルトフローレートは、30g/10分以下であることが好ましく、28g/10分以下であることがより好ましく、25g/10分以下であることがさらに好ましい。MFRが上記の範囲内にあれば、安定した製膜性が得られ、製品外観も良好なプレススルーパッケージ用シートが得られやすくなる。
【0036】
ブチレンサクシネート系樹脂の融点は、75℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、82℃以上であることがさらに好ましい。また、ブチレンサクシネート系樹脂の融点は、120℃以下であることが好ましく、115℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることがさらに好ましい。ブチレンサクシネート系樹脂の融点は、JIS K7121:2012に準拠して、DSCを用いる方法で測定される。ブチレンサクシネート系樹脂の融点を上記範囲内とすることにより、耐熱性と成形性に優れたプレススルーパッケージ用シートが得られやすくなる。
【0037】
本プレススルーパッケージ用シートにおけるバイオマス樹脂の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、12質量部以上であることが好ましく、14質量部以上であることがさらに好ましい。また、バイオマス樹脂の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、25質量部以下であることが好ましい。バイオマス樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、プレススルーパッケージ用シートのバイオマス度を高めつつ、プレススルーパッケージ用シートの熱安定性をより効果的に高めることができる。
【0038】
バイオマス樹脂の製造方法は、特に限定はされないが、従来公知の方法で製造することができる。また、バイオマス樹脂としては、市販品を用いることもでき、市販品としては、例えば、三菱ケミカル社製BioPBS等が挙げられる。
【0039】
<可塑剤>
本プレススルーパッケージ用シートは可塑剤を含む。可塑剤は、本プレススルーパッケージ用シートの柔軟性を高める働きをする。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル類;アジピン酸(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル類;トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリノルマルオクチル等のトリメリット酸エステル類;リン酸トリ(2-エチルヘキシル)、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル等のリン酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアート等の安息香酸エステル;その他ポリエステル系可塑剤やセバシン酸エステル、マゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、エポキシ化植物油等を挙げることができる。中でも、可塑剤はエポキシ化植物油であることが好ましい。エポキシ化植物油としては、エポキシ化大豆油及びエポキシ化亜麻仁油が挙げられるが、本実施形態では、エポキシ化大豆油を用いることが好ましい。可塑剤としてエポキシ化植物油を用いることで、本プレススルーパッケージ用シートの熱安定性をより効果的に高めることができる。また、可塑剤としてエポキシ化植物油を用いることで、本プレススルーパッケージ用シートのバイオマス度を高めることもできる。
【0040】
本プレススルーパッケージ用シートにおける可塑剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。また、可塑剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましい。可塑剤の含有量を上記範囲内とすることにより、プレススルーパッケージ用シートのバイオマス度を高めつつも、表面ブリードの発生が抑制されたプレススルーパッケージ用シートが得られやすくなる。
【0041】
可塑剤としては、市販品を用いることもでき、市販品としては、例えば、アデカ社製エポキシ化大豆油等が挙げられる。
【0042】
<任意成分>
本プレススルーパッケージ用シートは本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、顔料、染料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤などが挙げられる。また、耐衝撃改良剤として、ゴム、エラストマー等を添加してもよい。
【0043】
本プレススルーパッケージ用シートは、塩化ビニル樹脂、バイオマス樹脂及び可塑剤を含み、周波数10Hzの条件で粘弾性測定(引張法)して得られる損失正接tanδのピーク温度が75℃以上にある層からなるシートであってもよい。すなわち、本プレススルーパッケージ用シートは、単層のシートであってもよい。一方、本プレススルーパッケージ用シートには必要に応じて他の層が積層されていてもよい。例えば、他の層としては、表面層、バリア層、接着層等を挙げることができる。
【0044】
(プレススルーパッケージ用シートの製造方法)
本プレススルーパッケージ用シートの製造方法は、塩化ビニル樹脂、バイオマス樹脂及び可塑剤を混合し、シート化する工程を含む。シート化する工程では、カレンダ圧延法や押出法を採用することができる。例えば、カレンダ圧延法では、通常4~6本のカレンダロールなどの圧延装置により、塩化ビニル樹脂、バイオマス樹脂及び可塑剤のブレンド物を圧延、シート化する。その後、引取ロールで引き取られ、複数本の冷却ロールで次第に冷却することで所定の厚さのシートを形成することができる。
【0045】
本プレススルーパッケージ用シートは、無延伸シートであってもよく、一軸又は二軸方向に延伸してなる延伸シートであってもよい。但し、成形性の観点から、シートは、無延伸シートであることが好ましい。ここで、本明細書において無延伸シートとは、シートの強度を高める目的で積極的に延伸しないシートを意味し、例えば、押出成形の際に延伸ロールによって2倍未満に延伸されたものは無延伸シートに含むものとする。
【0046】
本プレススルーパッケージ用シートが多層構造である場合、例えば、塩化ビニル樹脂、バイオマス樹脂及び可塑剤を含み、周波数10Hzの条件で粘弾性測定(引張法)して得られる損失正接tanδのピーク温度が75℃以上にある層上に、他の層を形成する樹脂組成等を塗工することで他の層を形成してもよい。塗工方法としては、例えば、コンマコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、スライドコート法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法等を挙げることができる。
【0047】
(プレススルーパッケージの製造方法)
本プレススルーパッケージ用シートは、例えば真空成形、圧空成形、圧空真空成形、プレス成形、プラグ成形、その他の熱成形によって、各種形状の成形体に成形することができる。例えば、本プレススルーパッケージ用シートは、特に、耐熱性と成形性に優れているため、プレススルーパッケージ用として好適である。すなわち、本プレススルーパッケージ用シートはPTP(プレススルーパッケージ)用底材として好適である。PTPとは、「錠剤やカプセルを入れるための凹部(ポケット)を備えたシート状の底材と、当該凹部を密閉するシート状の蓋材からなり、凹部を押して開けて錠剤などを取り出すことができる包装材」である。
【0048】
プレススルーパッケージの製造方法は、本プレススルーパッケージ用シートにポケット部を構成する突出成形部(「凹部」とも称する)を多数形成する工程を有する。当該凹部の内径・深さについては特に制限はないが、例えば直径5~20mm、深さ1~10mm、典型的な一例としては、直径約9mm、深さ約4mmである。また、形成される凹部の個数は、500~5000個/mであることが好ましい。突出成形部(「凹部」とも称する)を形成する工程では、当該凹部を構成する面厚みを適宜コントロールしてもよく、例えば、側壁部の中央厚みを、該凹部を構成する天壁部(「底面部」とも称する)の中央厚みの30%~98%となるように成形してもよい。
【0049】
例えばPTP用底材を製造する場合には、本プレススルーパッケージ用シートを加熱軟化させた後、例えば、プラグ成形、圧空成形、真空成形等の各種成形方法を施す。本プレススルーパッケージ用シートは、径の小さな突出成形部であっても、精度をもって成形可能であるから、プラグ成形法を採用することが特に有用である。すなわち、プレススルーパッケージの製造方法は、本プレススルーパッケージ用シートをプラグ成形する工程を有することが好ましい。
【0050】
プラグを用いた成形法の中でも、予備成形としてエアーアシストとプラグ成形を組み合わせたエアーアシストプラグ成形法、及び、圧空注入時に適切なタイミングでプラグを上昇及び下降させて成形性を補助するプラグ圧空成形法を採用することが好ましい。この中でも、肉厚コントロールの観点から、エアーアシストプラグ成形法を採用することが特に好ましい。例えば、PTP用底材を製造する場合には、成形前に加熱板で本プレススルーパッケージ用シートを加熱軟化させ、成形型にて当該シートを挟み、圧空を注入するともに、プラグを上昇および下降させて、成形型の凹型に沿わせてシート面内に多数のポケット部(例えば、直径約9mm、深さ約4mm)を成形するようにすればよい。
【0051】
また、本プレススルーパッケージ用シートに熱成形を施すと共に、シート表面、あるいは、裏面又は両面にアルミ箔、アルミ蒸着フィルム、プラスチックフィルム(例えば二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム)などを積層することも可能である。なお、シート表面或いは裏面又は両面にアルミ箔や各種フィルムなどを積層して複合シートを形成した後、これを熱成形することも可能である。
【0052】
さらに、製品の意匠性や二次加工性等を高める目的で、シート表面にエンボス加工や、艶消し加工等の加工を行ってもよい。この場合、一旦鏡面状のシートを作製してからエンボスロールや艶消しロールで加工を施すようにしてもよく、押出成形の際にキャストロールをエンボスロールや艶消しロールに変更して加工を施してもよい。本発明の趣旨を損なわない限り、シート表面に帯電防止剤、シリコーン、ワックスなどをコーティングしてもよい。また、傷付着防止などの目的で表面保護シートを用いて皮膜を形成してもよく、印刷層を設けることも可能である。なお、印刷層の形成手段は公知の手段を採用することができる。
【0053】
上記のようにして製造されるPTP用底材は、蓋材と組み合わされることにより、PTPとすることができる。
【0054】
蓋材としては、一般的にPTPに使用される材料、例えば、アルミニウム箔やフィルム等、従来公知のものを用いることができる。また、PTPの内容物は、錠剤やカプセル剤等、ポケット部に収納できるものであれば、特に限定されない。
【0055】
(プレススルーパッケージ)
本実施形態は、上述したプレススルーパッケージ用シートを備えたプレススルーパッケージに関するものでもある。プレススルーパッケージは、プレススルーパッケージ用シートに形成したポケット部にカプセル等の内容物を収納した後、蓋材でポケット部を密封し一体化することで得られる包装体である。
【0056】
プレススルーパッケージに収納される内容物は錠剤やカプセル剤等、ポケット部に収納できるものであれば、特に限定されるものではない。内容物としては、例えば、医薬や食品、サプリメント等を挙げることができる。中でも、プレススルーパッケージの内容物は医薬であることが好ましく、本プレススルーパッケージ用シートは医薬包装用であることが好ましい。本プレススルーパッケージ用シートは、特に、バリア性、成形性、透明性に優れているため、医薬包装用として好適である。
【実施例0057】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0058】
(実施例1)
塩化ビニル樹脂1 50質量部、塩化ビニル樹脂2 50質量部、エポキシ化大豆油 4質量部、ポリブチレンサクシネート 19質量部を撹拌混合し、180℃に加熱したオープンロールに投入し、厚み0.3mmのプレススルーパッケージ用シートを形成した。
【0059】
(実施例2~5及び比較例1~4)
シートを構成する原料を表1に記載の種類及び配合に変更した以外は実施例1と同様にして、プレススルーパッケージ用シートを形成した。
【0060】
なお、使用した原料は以下のとおりである。
塩化ビニル樹脂1:塩素化度56%、平均重合度800
塩化ビニル樹脂2:塩素化度65%、平均重合度600
塩化ビニル樹脂3:塩素化度67%、平均重合度500
エポキシ化大豆油:アデカ社製エポキシ化大豆油
ポリブチレンサクシネート:三菱ケミカル社製BioPBS、融点115℃、MFR(190℃)5g/10分
ポリブチレンサクシネートアジペート:三菱ケミカル社製BioPBS、融点84℃、MFR(190℃)4g/10分
【0061】
(測定・評価)
<損失正接tanδのピーク温度>
損失正接tanδは、、周波数10Hzの条件で測定された損失弾性率(E’’)と貯蔵弾性率(E’)の値を用いて、以下の式で算出した。
損失正接tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’)
【0062】
<熱安定性>
実施例及び比較例で得たシートを190℃に熱したオーブンに投入し、15分後に、その際の着色を目視評価した。15分後に黄色く着色した場合=B、着色していなかった場合=Aとした。
【0063】
<表面ブリード性>
実施例及び比較例のシートを形成する際に、シートが巻き付いていないバックロールの汚れの有無を目視評価した。バックロールに汚れが付着したもの=B、バックロールに汚れが付着していないもの=Aとした。
【0064】
<耐熱性>
実施例及び比較例で得られたシートについて、23℃、周波数10Hzの条件で、-100℃から200℃まで3℃/minの速度にて昇温しながら粘弾性測定(引張法)を行った。粘弾性測定(引張法)で得られる損失正接tanδのピーク温度が75℃以上であるもの=A、75℃未満であるもの=Bとした。
【0065】
<バイオマス度>
バイオマス原料として販売されている原料のバイオマス度と添加量を乗じた数値を、シート全質量で除して得られた数値をバイオマス度とした。バイオマス度が10%以上のもの=A、バイオマス度が10%未満のもの=Bとした。
【0066】
<成形性>
実施例及び比較例で得たシートを190℃、12分間、3MPaの条件にてプレスすることで、厚み0.3mmのプレスシートとした。その後、PTP成形機を使用しプラグ成形した。成形型への追従や製品外観の破れ等が無く、問題なく成形できた時の加熱板の設定温度を記載した。成形開始可能な温度が99℃以下のもの=A、それ以上のもの=Bとした。
【0067】
【表1】
【0068】
比較例に比べて実施例では、バイオマス度が高く、熱安定性及び耐熱性に優れ、かつ表面ブリードの発生が抑制されていた。また、実施例で得られたシートは、優れた耐熱性を有しつつも、成形性に優れており、耐熱性と成形性といった相反する特徴を両立していた。