(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143712
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】溝形状測定方法及び溝形状測定装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/20 20060101AFI20241003BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20241003BHJP
G01B 11/24 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B23Q17/20 Z
B23Q17/24 Z
G01B11/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056514
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】岩城 智
(72)【発明者】
【氏名】清水 翼
【テーマコード(参考)】
2F065
3C029
【Fターム(参考)】
2F065AA52
2F065BB02
2F065BB18
2F065CC19
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF51
2F065GG24
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM03
2F065MM07
2F065PP01
2F065PP12
2F065PP24
2F065QQ21
2F065QQ24
3C029BB01
3C029BB10
3C029EE20
(57)【要約】
【課題】処理負荷低減と、より確度の高い断面プロファイルの取得と、を実現可能な溝形状測定方法及び溝形状測定装置を提供する。
【解決手段】加工溝9を予め定めたピッチPで複数の測定領域60に区切り、さらに測定領域60ごとに測定領域60内にN個の小測定領域62を設定する設定ステップ(ステップS4)と、複数の測定領域60内の第M番目の小測定領域62における加工溝9の複数の座標データ(3次元座標データ50)を取得する座標データ取得ステップ(ステップS6)と、座標データ取得ステップで測定領域60ごとに取得した第M番目の小測定領域62に対応する座標データを2次元平面52上に投影して、断面プロファイル54を生成する断面プロファイル生成ステップ(ステップS7)と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置により被加工物に形成された加工溝の形状を測定する溝形状測定方法において、
前記加工溝を前記加工溝の長手方向に沿って予め定めたピッチで複数の測定領域に区切り、さらに2以上の自然数をNとした場合に前記測定領域ごとに前記測定領域内に前記長手方向に沿ってN個の小測定領域を設定する設定ステップと、
1から前記Nまでの任意の自然数をMとした場合に、前記複数の測定領域内の第M番目の前記小測定領域における前記加工溝の形状を表す複数の座標データを取得する座標データ取得ステップと、
前記座標データ取得ステップで取得した前記第M番目の前記小測定領域に対応する前記複数の座標データを2次元平面上に投影して、前記加工溝の断面プロファイルを生成する断面プロファイル生成ステップと、
を有する溝形状測定方法。
【請求項2】
前記設定ステップでは、前記測定領域ごとの前記第M番目の前記小測定領域の間隔を、前記ピッチに設定している請求項1に記載の溝形状測定方法。
【請求項3】
前記被加工物に対して予め定められた加工送り速度で相対移動される前記加工装置から前記被加工物へ照射されたパルスレーザ光により前記加工溝が形成される場合において、前記設定ステップでは、前記加工送り速度をV(mm/sec)とし、前記パルスレーザ光の周波数をf(Hz)とし、前記ピッチをPとした場合に前記ピッチをP=V/f(mm)又はV/f(mm)の整数倍に設定する請求項2に記載の溝形状測定方法。
【請求項4】
前記加工溝の前記座標データを測定する座標データ測定ステップを有し、
前記座標データ取得ステップでは、前記座標データ測定ステップで予め測定された前記座標データから、前記測定領域ごとの前記第M番目の前記小測定領域に対応する前記座標データを取得する請求項1から3のいずれか1項に記載の溝形状測定方法。
【請求項5】
前記断面プロファイル生成ステップでは、前記第M番目の前記小測定領域に対応する前記座標データを、前記長手方向に対して垂直な前記2次元平面上に投影する請求項1から3のいずれか1項に記載の溝形状測定方法。
【請求項6】
加工装置により被加工物に形成された加工溝の形状を測定する溝形状測定装置において、
前記加工溝を前記加工溝の長手方向に沿って予め定めたピッチで複数の測定領域に区切り、さらに2以上の自然数をNとした場合に前記測定領域ごとに前記測定領域内に前記長手方向に沿ってN個の小測定領域を設定する設定部と、
1から前記Nまでの任意の自然数をMとした場合に、前記複数の測定領域内の第M番目の前記小測定領域における前記加工溝の形状を表す複数の座標データを取得する座標データ取得部と、
前記座標データ取得部が前記測定領域ごとに取得した前記第M番目の前記小測定領域に対応する前記複数の座標データを2次元平面上に投影して、前記加工溝の断面プロファイルを生成する断面プロファイル生成部と、
を備える溝形状測定装置。
【請求項7】
前記被加工物に対して予め定められた加工送り速度で相対移動される前記加工装置から前記被加工物へ照射されたパルスレーザ光により前記加工溝が形成される場合において、前記設定部が、前記加工送り速度をV(mm/sec)とし、前記パルスレーザ光の周波数をf(Hz)とし、前記ピッチをPとした場合に前記ピッチをP=V/f(mm)又はV/f(mm)の整数倍に設定する請求項6に記載の溝形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置により被加工物に形成された加工溝の断面プロファイルを測定する溝形状測定方法及び溝形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等のワークは、複数のデバイスが格子状のストリートによって格子状に区画されている。このようなワークに対してレーザ光学系をストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつレーザ光学系からパルスレーザ光をストリートに照射することでストリートに沿って加工溝を形成するレーザ加工(アブレーション溝加工ともいう)を実行するレーザ加工装置が知られている(特許文献1参照)。このレーザ加工装置では、加工溝の加工品質の良否判定、デブリの検出、及び加工溝の加工位置のずれ量の検出などのために、加工溝(カーフともいう)の断面プロファイルを測定している。
【0003】
例えば特許文献1に記載のレーザ加工装置は、共焦点顕微鏡をZ方向に移動させながらX方向(加工送り方向)に沿って形成された加工溝のXY平面画像の撮影を繰り返し行った後、各XY平面画像をZ方向に積み重ねて加工溝の3次元データ(3次元モデルともいう)を構成する。また、特許文献1に記載のレーザ加工装置は、白色干渉顕微鏡あるいはレーザ変位計を用いて加工溝の形状を表す3次元座標データを測定して、この3次元座標データに基づいて加工溝の3次元データを構成する。そして、特許文献1に記載のレーザ加工装置は、加工溝の3次元データからある断面を切り出すことで加工溝の断面プロファイルを演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のレーザ加工装置は、加工溝の3次元データを構成する必要があり、この構成処理を行うレーザ加工装置の制御装置、例えばPC(Personal Computer)等の処理負荷が増加してしまう。
【0006】
処理負荷を軽減するための方法として、取得した加工溝のデータから3次元データを構成せず、加工溝のある一断面のデータのみを抜き出して処理することにより断面プロファイルを求める方法がある。この方法に依れば、最小のデータ処理量で断面プロファイルを求めることができる。
【0007】
図12は、従来技術の課題を説明するための説明図であり、パルスレーザ光によるレーザ加工後の加工溝9をワークWの上面側から見た図である。なお、図中の加工溝9内の黒丸表示及び白丸表示はチッピング或いはデブリ等を示す。また、
図13は、
図12中の領域100における加工溝9の断面プロファイル100Aと、領域102における加工溝9の断面プロファイル102Aとを示したグラフである。
【0008】
図12に示すようにレーザ加工後のワークにはチッピングやデブリなどが生じ得る。また、パルスレーザ光を用いたレーザ加工では、各パルスの照射エネルギー、照射時間に微小なばらつきがあり、その影響で
図13に示すように加工溝9内の形状が変化し得る(
図13の断面プロファイル100A参照)。
【0009】
図14は、従来技術の課題を説明するための説明図であり、パルスレーザ光によるレーザ加工後の加工溝9をワークWの上面側から見た図である。また、
図15は、
図14中の立体領域200における加工溝9の断面プロファイル200Aを示したグラフである。
【0010】
図14に示すように、処理負荷を軽減するための他の方法として、加工溝9の所定の立体領域200の断面データを抜き出し、その平均を計算する等統計的な手法を用いて
図15に示すような断面プロファイル200Aを求める方法がある。この方法を使えば、前記形状変化を統計的な手法で取り除くことができる可能性がある。
【0011】
しかしながら、パルスレーザ光を用いたレーザ加工では、ストリートに沿ったパルスレーザ光の照射の繰り返しによって加工溝9を形成するので、加工溝9には周期的な形状が出現し得る。このため、前述の所定の立体領域200の断面データを抜き出して統計的な手法により取得した断面プロファイル200Aは、所定の立体領域200内で平均化されたプロファイルとなる。そのため、このような統計的な手法では、特定の周波数のパルスレーザ光で形成された加工溝9の断面プロファイルを取得することが困難である。また、例えば、このような統計的な手法では、代表的な周波数のパルスレーザ光で形成された加工溝9の断面プロファイルを取得することが困難である。統計的な手法により取得した場合、断面プロファイルの確度が低下する虞がある(
図15の断面プロファイル200A参照)。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、処理負荷低減と、より確度の高い断面プロファイルの取得と、を実現可能な溝形状測定方法及び溝形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的を達成するための溝形状測定方法は、加工装置により被加工物に形成された加工溝の形状を測定する溝形状測定方法において、加工溝を加工溝の長手方向に沿って予め定めたピッチで複数の測定領域に区切り、さらに2以上の自然数をNとした場合に測定領域ごとに測定領域内に長手方向に沿ってN個の小測定領域を設定する設定ステップと、1からNまでの任意の自然数をMとした場合に、複数の測定領域内の第M番目の小測定領域における加工溝の形状を表す複数の座標データを取得する座標データ取得ステップと、座標データ取得ステップで測定領域ごとに取得した第M番目の小測定領域に対応する複数の座標データを2次元平面上に投影して、加工溝の断面プロファイルを生成する断面プロファイル生成ステップと、を有する。
【0014】
この溝形状測定方法によれば、加工溝の3次元データを用いた3次元画像を生成するよりも処理負荷を軽減して、確度の高い断面プロファイルを取得することが可能である(
図13の断面プロファイル100A参照)。
【0015】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、設定ステップでは、測定領域ごとの第M番目の小測定領域の間隔を、上述のピッチに設定している。これにより、特定の条件のパルスレーザ光で形成した確度の高い断面プロファイルを取得することが可能となる。
【0016】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、設定ステップでは、N個の測定領域ごとの第M番目の小測定領域の間隔を用いて断面プロファイルを得る。これにより、パルスレーザ光の各パルスのばらつきに起因する周期的ではない形状差異は平均化される。
【0017】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、被加工物に対して予め定められた加工送り速度で相対移動される加工装置から被加工物へ照射されたパルスレーザ光により加工溝が形成される場合において、設定ステップでは、加工送り速度をV(mm/sec)とし、パルスレーザ光の周波数をf(Hz)とし、ピッチをPとした場合にピッチをP=V/f(mm)又はV/f(mm)の整数倍に設定する。これにより、加工溝の断面プロファイルを測定する際に加工溝の長手方向に沿った周期的な形状が平均化されることが防止される。
【0018】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、加工溝の座標データを測定する座標データ測定ステップを有し、座標データ取得ステップでは、座標データ測定ステップで予め測定された座標データから、測定領域ごとの第M番目の小測定領域に対応する座標データを取得する。
【0019】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、断面プロファイル生成ステップでは、第M番目の小測定領域に対応する座標データを、長手方向に対して垂直な2次元平面上に投影する。
【0020】
本発明の目的を達成するための溝形状測定装置は、加工装置により被加工物に形成された加工溝の形状を測定する溝形状測定装置において、加工溝を加工溝の長手方向に沿って予め定めたピッチで複数の測定領域に区切り、さらに2以上の自然数をNとした場合に測定領域ごとに測定領域内に長手方向に沿ってN個の小測定領域を設定する設定部と、1からNまでの任意の自然数をMとした場合に、複数の測定領域内の第M番目の小測定領域における加工溝の形状を表す複数の座標データを取得する座標データ取得部と、座標データ取得部が測定領域ごとに取得した第M番目の小測定領域に対応する複数の座標データを2次元平面上に投影して、加工溝の断面プロファイルを生成する断面プロファイル生成部と、を備える。
【0021】
本発明の他の態様に係る溝形状測定装置において、被加工物に対して予め定められた加工送り速度で相対移動される加工装置から被加工物へ照射されたパルスレーザ光により加工溝が形成される場合において、設定部が、加工送り速度をV(mm/sec)とし、パルスレーザ光の周波数をf(Hz)とし、ピッチをPとした場合にピッチをP=V/f(mm)又はV/f(mm)の整数倍に設定する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、処理負荷低減と、より確度の高い断面プロファイルの取得と、を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】レーザ光学系によるレーザ加工を説明するための説明図である。
【
図4】処理部により加工溝の断面プロファイルを演算する際の課題を説明するための説明図である。
【
図5】設定部が加工溝をX方向に沿って複数の測定領域に区切る処理を説明するための説明図である。
【
図6】設定部が各測定領域内に複数の小測定領域を設定する処理を説明するための説明図である。
【
図7】座標データ取得部による三次元座標データの取得、及び断面プロファイル生成部による断面プロファイルの生成を説明するための説明図である。
【
図8】断面プロファイル生成部が各測定領域の第1番目の小測定領域に対応する3次元座標データに基づいて生成した断面プロファイルと、形状測定範囲内の全ての3次元座標データを2次元平面上に投影して生成した断面プロファイルである比較例と、を比較したグラフである。
【
図9】加工溝の各測定領域の第1番目の小測定領域と、加工溝の立体領域とを示した図である。
【
図10】
図9中の第1番目の小測定領域における断面プロファイル(本実施例)と、立体領域における断面プロファイル(比較例)とを示したグラフである。
【
図11】レーザ加工装置によるレーザ加工後の加工溝の形状測定処理の流れを示したフローチャートである。
【
図12】従来技術の課題を説明するための説明図であり、パルスレーザ光によるレーザ加工後の加工溝をワークの上面側から見た図である。
【
図13】
図12中の領域100における加工溝の断面プロファイルと、領域102における加工溝の断面プロファイルとを示したグラフである。
【
図14】従来技術の課題を説明するための説明図であり、パルスレーザ光によるレーザ加工後の加工溝をワークの上面側から見た図である。
【
図15】
図14中の立体領域における加工溝の断面プロファイルを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[レーザ加工装置の構成]
図1は、本発明の加工装置に相当するレーザ加工装置10のブロック図である。なお、図中のXYZ方向は互いに直交し、このうちX方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(ワークWの厚み方向)である。またθ方向は、Z方向を回転軸とする回転方向である。
【0025】
図1に示すように、レーザ加工装置10は、半導体ウェーハなどのワークW(本発明の被加工物に相当)を複数のチップに分割する割断プロセスの前工程として、後述の
図2に示すようにワークWのストリートCに沿って加工溝9を形成するレーザ加工を実行する。また、レーザ加工装置10は、レーザ加工により形成された加工溝9の断面形状を表す断面プロファイル54(
図8参照)を測定する機能を有する。このレーザ加工装置10は、吸着ステージ12と、ステージ駆動部14と、加工ヘッド16と、制御装置18と、を備える。
【0026】
吸着ステージ12は、ワークWの表面とは反対側の裏面を吸着保持する。これにより、ワークWはその表面側が加工ヘッド16に対向するように吸着ステージ12に保持される。
【0027】
ステージ駆動部14は、モータ駆動機構及びリニアモータなどの公知のアクチュエータにより構成されており、吸着ステージ12をXYZ方向に移動させると共にθ方向に回転させる。これにより、吸着ステージ12上のワークWに対して加工ヘッド16をXYZθ方向に相対移動させることができる。なお、ワークWに対して加工ヘッド16をXYZθ方向に相対移動させる方法は特に限定されず、加工ヘッド16を移動させたり、或いは吸着ステージ12及び加工ヘッド16の双方を移動させたりしてもよい。
【0028】
加工ヘッド16は、ワークWのストリートC(
図2参照)のレーザ加工に用いられ、吸着ステージ12のZ方向上方側の位置(ワークWの表面に対向する位置)に配置されている。この加工ヘッド16は、レーザ光学系20、アライメント用顕微鏡22、及び白色干渉顕微鏡24を備える。なお、本実施形態ではレーザ光学系20、アライメント用顕微鏡22、及び白色干渉顕微鏡24が別体で設けられているが、これらの一部又は全てが一体化されていてもよい。また、アライメント用顕微鏡22及び白色干渉顕微鏡24が加工ヘッド16とは別体で設けられていてもよい。
【0029】
図2は、レーザ光学系20によるレーザ加工を説明するための説明図である。
図2及び既述の
図1に示すように、レーザ光学系20は、後述の制御装置18の制御の下、ワークWのストリートCに向けてパルスレーザ光Lを照射する。なお、レーザ光学系20の構成及びパルスレーザ光Lの種類について公知技術であるので、ここでは詳細な説明は省略する(例えば上記特許文献1及び特開2022-071402号公報等参照)。
【0030】
レーザ光学系20からストリートCに向けて周波数f(Hz)のパルスレーザ光Lを照射した状態で、ステージ駆動部14により吸着ステージ12(ワークW)を加工送り方向であるX方向に加工送り速度[v(mm/sec)]移動させる。これにより、
図2の符号2Aに示すようにストリートCに沿って照射されるパルスレーザ光Lのパルスピッチはv/f(mm)となる。そして、このパルスピッチv/f(mm)のパルスレーザ光Lの照射によって、
図2の符号2Bに示すようにストリートCに沿って加工溝9が形成される。このようにストリートCに沿ったパルスレーザ光Lの照射の繰り返しによって加工溝9を形成する場合には、周期的な形状が加工溝9の進行する方向に繰り返し形成される。
【0031】
アライメント用顕微鏡22(照明光源、カメラを含む)は、後述の制御装置18の制御の下、ワークWのレーザ加工前にこのワークWに形成されているアライメント基準(パターン等)の撮影を実行する。アライメント用顕微鏡22がレーザ加工前に撮影したアライメント基準の撮影画像に基づいてワークWに対するレーザ光学系20のアライメントが実行される。
【0032】
白色干渉顕微鏡24は、例えば、公知のミラウ型白色干渉計又はマイケルソン型白色干渉計であり、不図示のZキャリッジによりZ方向に移動自在に保持されている。白色干渉顕微鏡24は、加工溝9の形状(立体形状)を表す3次元座標データ50(3次元座標データ群又は点群データともいう、
図4参照)の測定に用いられる。なお、白色干渉顕微鏡24の代わりに、レーザ顕微鏡(レーザ変位計)などの各種被測定物の形状測定に使用される各種顕微鏡を用いてもよい。
【0033】
制御装置18は、PCなどの公知の演算装置であり、レーザ加工装置10の各部を統括制御する。この制御装置18は、ワークWのレーザ加工時には、ワークWのストリートCに対するレーザ光学系20のアライメント及びストリートCのレーザ加工を制御する。また、制御装置18は、加工溝9の断面プロファイル54(
図8参照)の測定時には、加工溝9の3次元座標データ50(
図4参照)の測定及び断面プロファイル54の演算を制御する。
【0034】
[制御装置の機能]
図3は、制御装置18の機能ブロック図である。
図3に示すように、制御装置18は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置18の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0035】
制御装置18は、不図示の制御プログラムを実行することで、アライメント制御部30、加工制御部32、測定制御部34、データ格納部36、及び処理部38として機能する。
【0036】
アライメント制御部30は、ワークWのストリートCに対するレーザ光学系20のアライメントを制御する。アライメント制御部30は、最初に、ステージ駆動部14を駆動してアライメント用顕微鏡22の撮影範囲内にワークWのアライメント基準が含まれるようにワークWの位置調整を行った後、アライメント用顕微鏡22によるアライメント基準の撮影を実行させる。次いで、アライメント制御部30は、アライメント用顕微鏡22から出力されたアライメント基準の撮影画像に基づいて公知の方法で各ストリートCとレーザ光学系20とのXYZ方向の相対位置関係を検出する。そして、アライメント制御部30は、この相対位置関係の検出結果に基づいて、ステージ駆動部14を駆動してストリートCの加工開始位置にレーザ光学系20の光軸を位置合わせするアライメントを実行する。
【0037】
加工制御部32は、レーザ光学系20によるワークWの各ストリートCに対するレーザ加工を制御する。加工制御部32は、アライメント完了後にレーザ光学系20からストリートCに対してパルスレーザ光Lを照射させながら、ステージ駆動部14を駆動してワークWをX方向に移動させることで、ストリートCに沿って加工溝9を形成する。そして、制御装置18は、1ストリート分のレーザ加工が完了すると、ステージ駆動部14を駆動して次のストリートCの加工開始位置にレーザ光学系20の光軸を位置合わせした後、レーザ光学系20からのパルスレーザ光Lの照射と、ステージ駆動部14によるワークWのX方向の移動と、を繰り返し実行させる。以下同様にして、制御装置18は全てのストリートのレーザ加工を実行させる。
【0038】
測定制御部34は、上述のレーザ加工により形成された加工溝9の断面プロファイル54(
図8参照)の測定時において、白色干渉顕微鏡24を用いた加工溝9の形状測定、より具体的には加工溝9の3次元座標データ50(
図4参照)の測定を制御する。
【0039】
例えば測定制御部34は、ステージ駆動部14を駆動して、加工溝9のZ方向上方側に白色干渉顕微鏡24が位置するようにワークWに対する白色干渉顕微鏡24の位置調整を実行する。次いで、測定制御部34は、不図示のZキャリッジを制御して、白色干渉顕微鏡24をZ方向に走査させながら、白色干渉顕微鏡24による加工溝9への白色光の照射と、白色干渉顕微鏡24の2次元撮像素子による干渉光(加工溝9からの反射光及び参照面からの参照光)の撮像と、を連続的に実行させる。なお、測定制御部34は、加工溝9の形状測定範囲が白色干渉顕微鏡24の測定可能範囲よりも広い場合には、ワークWに対する白色干渉顕微鏡24の位置を相対的にX方向に変化させた後、上述の白色干渉顕微鏡24のZ方向の走査と、白色干渉顕微鏡24による照明光の照射及び干渉光の撮像と、を繰り返し実行させる。
【0040】
また、測定制御部34は、白色干渉顕微鏡24から出力される干渉光の撮像信号と、不図示のZキャリッジから出力される白色干渉顕微鏡24のZ位置情報と、に基づいて、公知の方法で加工溝9の形状の各点の座標データを表す3次元座標データ50(XYZ座標データ、
図4参照)を取得する。
【0041】
データ格納部36は、測定制御部34が取得した加工溝9の3次元座標データ50(
図4参照)を記憶する。
【0042】
図4は、処理部38により加工溝9の断面プロファイル54を演算する際の課題を説明するための説明図である。
図4及び既述の
図3に示すように、処理部38は、本発明の溝形状測定装置に相当する。この処理部38は、データ格納部36に格納されている加工溝9の3次元座標データ50に基づいて、加工溝9の3次元画像(3次元モデル)の構成処理を実行することなく、加工溝9の断面プロファイル54を生成する。
【0043】
このような断面プロファイル54の生成処理とは、符号4Aに示す3次元座標データ群のイメージ図に示すような加工溝9の3次元座標データ50を加工溝9の長手方向(又は進行方向)であるX方向に対して垂直な仮想の2次元平面52上(YZ平面上)に投影することで、符号4Bに示すような加工溝9の断面プロファイル54を生成する処理である。なお、
図4では断面プロファイル54を簡略的に図示している。
【0044】
このように3次元座標データ50を2次元平面52上に投影することで、従来のように加工溝9の3次元データを生成することなく、加工溝9の断面プロファイル54を生成することができる。
【0045】
この際にパルスレーザ光Lを用いた加工溝9のレーザ加工では、既述の
図2に示したように、パルスピッチv/f(mm)のパルスレーザ光Lの照射によって加工溝9に進行方向に沿って周期的な形状が出現する。このため、
図4に示したように加工溝9の形状測定範囲内の全ての3次元座標データ50を2次元平面52上に投影して生成した断面プロファイル54では、加工溝9のX方向に沿った周期的な形状が平均化されてしまう。その結果、必ずしも加工溝9の確度の高い断面プロファイル54が得られない虞がある。
【0046】
そこで処理部38は、以下に詳述するように、加工溝9の周期的な形状が平均化されない方法で、3次元座標データ50の2次元平面52上への投影及び断面プロファイル54の生成を実行する。言い換えると、周期的な周波数の内の特定の周波数のレーザで形成した加工溝9の複数の位置の断面プロファイルを用いて加工溝9の断面プロファイル54を生成する。この場合には処理部38は、設定部40、座標データ取得部42、及び断面プロファイル生成部44として機能する。
【0047】
図5は、設定部40が加工溝9をX方向に沿って複数の測定領域60に区切る処理を説明するための説明図である。なお、図中の符号Gは加工溝9の形状測定範囲(断面プロファイル54の演算対象となるX方向範囲)を示す。
図6は、設定部40が各測定領域60内に複数の小測定領域62を設定する処理を説明するための説明図である。
【0048】
図5に示すように、最初に設定部40は、加工溝9の形状測定範囲GをX方向に沿って予め定めたピッチPで区切る。このピッチPは、上述のパルスピッチv/f(mm)に合わせて設定される。これにより、形状測定範囲GがX方向に沿って複数の矩形状(短冊状)の測定領域60に区切られる。各測定領域60は、それぞれX方向においてピッチP[P=v/f(mm)]に相当する幅を有している。
【0049】
次いで、
図6に示すように、設定部40は、各測定領域60内にそれぞれX方向に沿ってN(Nは2以上の自然数)個の矩形状の小測定領域62を設定する。なお、
図6ではN=4個の場合を例に挙げて説明している。これにより、各測定領域60内には、X方向に沿って第1番目の小測定領域62、第2番目の小測定領域62、…第N番目(ここではN=4)の小測定領域62がそれぞれ設定される。そして、1からNまでの任意の自然数をMとした場合に、各測定領域60の第M番目の小測定領域62は、形状測定範囲G内においてX方向にピッチPに相当する間隔で設定される(
図7参照)。なお、各測定領域60内において、第1番目から第N番目の小測定領域62が隙間なく設定されていてもよいし、或いは間隔をあけて設定されていてもよい。
【0050】
図7は、座標データ取得部42による3次元座標データ50の取得、及び断面プロファイル生成部44による断面プロファイル54の生成を説明するための説明図である。
図8は、断面プロファイル生成部44が各測定領域60の第1番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50に基づいて生成した断面プロファイル54と、既述の形状測定範囲G内の全ての3次元座標データ50を2次元平面52上に投影して生成した断面プロファイル54である比較例54Aと、を比較したグラフである。
【0051】
図7及び既述の
図3に示すように、座標データ取得部42は、少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内の第M番目、例えば、第1番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50(小測定領域62のX方向のピクセル数が1の場合には2次元座標データでも可)をデータ格納部36から取得して、断面プロファイル生成部44へ出力する。
【0052】
断面プロファイル生成部44は、最初に座標データ取得部42から入力された少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内の第1番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50を、
図7中の矢印A1に示すように2次元平面52上に投影して2次元投影データを生成する。次いで、
図8に示すように、断面プロファイル生成部44は、2次元投影データに対してノイズ除去処理等を施すことで、少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内の第1番目の小測定領域62に対応する断面プロファイル54(本実施例)を生成する。
【0053】
このように少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内の第1番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50のみを2次元平面52上に投影して生成した断面プロファイル54(本実施例)では、形状測定範囲G内の全ての3次元座標データ50を2次元平面52上に投影して生成した比較例54Aとは異なり、加工溝9の断面形状が平均化されない。その結果、加工溝9の断面形状の凹凸が測定可能になる。
【0054】
図9は、加工溝9の各測定領域60の第1番目の小測定領域62と、既述の
図14に示した加工溝9の立体領域200とを示した図である。
図10は、
図9中の小測定領域62における断面プロファイル54(本実施例)と、既述の
図15に示した立体領域200における断面プロファイル200A(比較例)とを示したグラフである。
【0055】
図9及び
図10に示すように、少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内の第1番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50のみを2次元平面52上に投影して生成した断面プロファイル54(本実施例)では、立体領域200内の全ての3次元座標データ50を2次元平面52上に投影して生成した断面プロファイル200A(比較例)とは異なり、加工溝9の断面形状が平均化されない。その結果、確度の高い断面プロファイル54を取得可能である。
【0056】
また、少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内の第1番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50のみを2次元平面52上に投影して生成した断面プロファイル54(本実施例)では1個の小測定領域を2次元平面52上に投影して生成した場合とは異なり、パルスレーザ光の各パルスのばらつきに起因する周期的ではない形状差異は平均化される。つまり、特定の周波数のレーザで形成した複数の位置の加工溝9の断面形状を平均化した断面プロファイルを取得することができる。
【0057】
[本実施形態の作用]
図11は、本発明の溝形状測定方法に係る、レーザ加工装置10によるレーザ加工後の加工溝9の形状測定処理の流れを示したフローチャートである。
【0058】
図11に示すように、加工対象のワークWが吸着ステージ12に吸着保持されると、制御装置18のアライメント制御部30が作動する。アライメント制御部30は、ステージ駆動部14及びアライメント用顕微鏡22を制御して、ワークWのアライメント基準の撮影画像データを取得する。そして、アライメント制御部30は、この撮影画像データを解析して、ワークWの各ストリートCの位置を検出するアライメント検出を行う(ステップS1)。
【0059】
アライメント検出が完了すると加工制御部32が作動して、ストリートCのレーザ加工を開始する。最初に加工制御部32は、アライメント制御部30によるアライメント検出結果に基づいて、ステージ駆動部14を駆動して、レーザ光学系20の光軸を第1番目のストリートCの加工開始位置に位置合わせするアライメントを実行する。このアライメントが完了すると、加工制御部32は、レーザ光学系20を制御して、周波数f(Hz)のパルスレーザ光LをワークWの表面のストリートCに集光させる。これにより、レーザ加工が開始されて、少なくとも1つのストリートC上に少なくとも1つの加工溝9が形成される(ステップS2)。
【0060】
次いで、加工制御部32は、ステージ駆動部14を駆動して吸着ステージ12をX方向に加工送り速度[v(mm/sec)]で移動させることで、ワークWに対して加工ヘッド16をX方向に相対移動させる。これにより、ワークWの表面の第1番目のストリートCに沿って加工溝9が形成される。そして、以下同様に残りのストリートCに沿った加工溝9の形成(レーザ加工)が繰り返し実行される。
【0061】
ワークWのレーザ加工の完了後(レーザ加工中でも可)に、測定制御部34が作動して白色干渉顕微鏡24による加工溝9の3次元座標データ50の測定が開始される。最初に測定制御部34は、ステージ駆動部14を駆動して加工溝9の形状測定範囲GのZ方向上方側に白色干渉顕微鏡24をセットする。
【0062】
次いで、測定制御部34は、不図示のZキャリッジを制御して、白色干渉顕微鏡24をZ方向に走査させながら、白色干渉顕微鏡24による加工溝9への白色光の照射と、白色干渉顕微鏡24の2次元撮像素子による干渉光の撮像と、を連続的に実行させる。そして、測定制御部34は、白色干渉顕微鏡24から出力される干渉光の撮像信号と、不図示のZキャリッジから出力される白色干渉顕微鏡24のZ位置情報と、に基づいて、公知の方法で加工溝9の形状測定範囲Gにおける3次元座標データ50を測定する(ステップS3、本発明の座標データ測定ステップに相当)。そして、測定制御部34は、3次元座標データ50をデータ格納部36に格納させる。
【0063】
なお、加工溝9の形状測定範囲Gが白色干渉顕微鏡24の測定可能範囲よりも広い場合には、ワークWに対する白色干渉顕微鏡24の位置を相対的にX方向に変化させた後、上述の白色干渉顕微鏡24のZ方向の走査と、白色干渉顕微鏡24による白色光の照射及び干渉光の撮像と、を繰り返し実行させる。
【0064】
3次元座標データ50の測定完了後に設定部40が、既述の
図5に示したように少なくとも1つの加工溝9の形状測定範囲GをX方向に沿って予め定めたピッチP[P=v/f(mm)]で区切る。次いで、設定部40が、既述の
図6に示したように、少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内にそれぞれX方向に沿ってN個の小測定領域62を設定する(ステップS4、本発明の設定ステップに相当)。
【0065】
各小測定領域62の設定が完了すると、座標データ取得部42が、少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内の第M番目、例えば、第1番目(M=1)の小測定領域62に対応する3次元座標データ50をデータ格納部36から選択・取得して、断面プロファイル生成部44へ出力する(ステップS5,S6、本発明の座標データ取得ステップに相当)。
【0066】
次いで、断面プロファイル生成部44が、座標データ取得部42から入力された少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内の第1番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50を、既述の
図7に示したように2次元平面52上に投影する。これにより、形状測定範囲G内においてピッチPの整数倍に相当する間隔で設定された少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60の各第1番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50のみが2次元平面52上に投影される。この投影後に断面プロファイル生成部44が、既述の
図8に示したように少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内の第1番目の小測定領域62に対応する断面プロファイル54を生成する(ステップS7、断面プロファイル生成ステップに相当)。
【0067】
以上のように本実施形態のレーザ加工装置10では、少なくとも1つの加工溝9の複数の測定領域60内の特定の小測定領域62に対応する3次元座標データ50を2次元平面52上に投影して断面プロファイル54を生成することで、加工溝9のX方向に沿った周期的な形状が平均化されることが防止され、加工溝9の確度の高い断面プロファイル54が得られる。また、本実施形態のレーザ加工装置10では、従来のように加工溝9の3次元データを生成してこの3次元データから断面を切り出す必要が無くなるので、制御装置18の処理負荷が低減され、断面プロファイル54の測定速度が向上する。その結果、レーザ加工装置10では、処理負荷低減と、加工溝9の確度の高い断面プロファイル54の取得と、が実現される。
【0068】
なお、レーザ加工装置10により生成された各断面プロファイル54に基づいて、加工溝9の加工品質の良否判定、デブリの検出、及び加工溝9の加工位置のずれ量の検出などの各種評価を実行して、この評価結果に基づいたレーザ加工の補正等(フィートバック制御)を実行してもよい。例えば、断面プロファイル54ごとに加工溝9の底面の粗さのピークツーピーク値の最大値を求め、さらに断面プロファイル54ごとの粗さの最大値の中の最大値を加工溝9の底面の粗さを示す値として決定して、この値に基づいてフィードバック制御を実行する。
【0069】
[その他]
上記実施形態では、設定部40が加工溝9の形状測定範囲GをX方向に沿ってピッチP[P=v/f(mm)]で区切っているが、例えば形状測定範囲GをX方向に沿ってv/f(mm)の整数倍のピッチPで区切り、このピッチP(mm)で区切られた各測定領域60にそれぞれN個の小測定領域62を設定してもよい。さらに、加工溝9の形状測定範囲GをX方向に沿って区切る場合のピッチPは、必ずしもv/f(mm)[その整数倍も含む]に限定されるものではなく、v/f(mm)の近傍の値或いは任意の値であってもよい。
【0070】
上記実施形態では、各測定領域60内の第M番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50をX方向に垂直な2次元平面52上に投影しているが、2次元平面52がX方向に対して略垂直であってもよい。また、格子状のストリートCの交差部では、X方向に平行な加工溝9の断面プロファイル54と、Y方向に平行な加工溝9の断面プロファイル54と、を同時に測定可能である。この場合には、各測定領域60内の第M番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50を、加工溝9の長手方向(X方向又はY方向)に垂直な2次元平面52上に投影する。
【0071】
例えば、各測定領域60内の第M番目の小測定領域62に対応する3次元座標データ50の取得と断面プロファイル54の生成とを1回だけ実行してもよい。或いは、各測定領域60の第1番目から第N番目の小測定領域62の中で予め定めた複数の番号(例えば偶数番、奇数番等)の小測定領域62に対応する3次元座標データ50の取得と断面プロファイル54の生成とを繰り返し実行してもよい。
【0072】
上記実施形態では、レーザ加工装置10によるレーザ加工で形成された加工溝9の断面プロファイル54を測定する場合を例に挙げて説明を行ったが、ブレードを用いてワークWのストリートCに対して切削加工を行うブレードダイサ(加工装置)により形成された加工溝9の断面プロファイル54の測定にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
9…加工溝、10…レーザ加工装置、12…吸着ステージ、14…ステージ駆動部、16…加工ヘッド、18…制御装置、20…レーザ光学系、22…アライメント用顕微鏡、24…白色干渉顕微鏡、30…アライメント制御部、32…加工制御部、34…測定制御部、36…データ格納部、38…処理部、40…設定部、42…座標データ取得部、44…断面プロファイル生成部、50…3次元座標データ、52…2次元平面、54…断面プロファイル、60…測定領域、62…小測定領域、C…ストリート、CP1…切り出し位置、CP2…切り出し位置、G…形状測定範囲、L…パルスレーザ光、W…ワーク