(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143725
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/14 20060101AFI20241003BHJP
B41C 1/055 20060101ALI20241003BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241003BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41N1/14
B41C1/055 501
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G03F7/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056538
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 夏海
(72)【発明者】
【氏名】阪口 彬
(72)【発明者】
【氏名】榎本 和朗
(72)【発明者】
【氏名】花木 直幸
【テーマコード(参考)】
2H084
2H114
2H225
【Fターム(参考)】
2H084AA30
2H084AA32
2H084BB02
2H084CC05
2H114AA04
2H114AA23
2H114AA27
2H114AA28
2H114AA30
2H114DA04
2H114DA34
2H114DA47
2H114DA53
2H114DA61
2H114EA02
2H114EA04
2H114GA08
2H114GA09
2H114GA23
2H225AC34
2H225AC35
2H225AC57
2H225AC63
2H225AD20
2H225AM04P
2H225AM10N
2H225AM22N
2H225AM26N
2H225AM26P
2H225AM27P
2H225AM38N
2H225AM46N
2H225AM53N
2H225AM66P
2H225AM86P
2H225AM91N
2H225AM94P
2H225AM96N
2H225AN02N
2H225AN11P
2H225AN12P
2H225AN38P
2H225AN47P
2H225AN54P
2H225AN66P
2H225AN79P
2H225AN89P
2H225AN92P
2H225AP01N
2H225AP01P
2H225BA02P
2H225BA12P
2H225BA18P
2H225BA32P
2H225BA33P
2H225BA34N
2H225BA34P
2H225CA04
2H225CB01
2H225CC01
2H225CC13
2H225CD09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】透明インキの濁りを抑制し、発色性に優れた平版印刷版が得られる機上現像型平版印刷版原版の提供、及び、上記機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法又は平版印刷方法の提供。
【解決手段】支持体、及び、支持体上に画像記録層を有し、前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含む、機上現像型平版印刷版原版。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、及び、支持体上に画像記録層を有し、
前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含む、機上現像型平版印刷版原版。
【化1】
式(1)及び式(2)中、Ra
1及びRa
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Ra
1とRa
2とが連結して環構造を形成してもよく、Rb
1及びRb
3は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基を表し、Rb
2及びRb
4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、EWGは、それぞれ独立に、水素原子又は電子求引性基を表す。但し、式(1)中の4つのEWGのうち少なくとも1つは電子求引性基を表す。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1a)で表される化合物である、請求項1に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化2】
式(1a)中、Ra
1及びRa
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Ra
1とRa
2とが連結して環構造を形成してもよく、Rb
1は、置換又は無置換のアルキル基を表し、Rb
2は、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、EWGは、それぞれ独立に、水素原子又は電子求引性基を表す。但し、式(1a)中の2つのEWGのうち少なくとも1つは電子求引性基を表す。
【請求項3】
前記式(1)及び前記式(2)中の電子求引性基が、ハロゲン原子である請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項4】
前記重合開始剤が、下記式(Ia)で表される化合物Aと、下記式(Ib)で表される化合物及び下記式(Ic)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物Bと、を含む、請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化3】
式(Ia)~(Ic)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に、炭素数2~9の、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアルコキシ基であり、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つは、R
1又はR
2とは異なり、R
1及びR
2中の炭素原子の総数とR
3及びR
4中の炭素原子の総数との間の差は0~4であり、R
1及びR
2中の炭素原子の総数とR
5及びR
6中の炭素原子の総数との間の差は0~4であり、X
1、X
2及びX
3は、それぞれ独立に、対アニオンである。
【請求項5】
前記赤外線吸収剤が、下記式(X)で表される化合物を含む、請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化4】
式(X)中、Ar
11及びAr
12は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の芳香環を形成するか、又は、置換若しくは無置換のヘテロ芳香環を形成するのに必要な原子群を表し、R
11およびR
12は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基であり、R
13は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表し、R
14は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換ヘテロアリール基を表し、Yは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は>C(R
15R
16)で表されるジアルキルメチレン基を表し、R
15及びR
16は、それぞれ独立に置換若しくは無置換の炭素数1~4のアルキル基を表し、A
1及びA
2は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基を表すか、又は、互いに連結して、置換又は無置換の5員又は6員の非芳香族炭素環を形成するのに必要な2個又は3個の炭素原子を含む原子群を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【請求項6】
前記画像記録層が、下記式(Le-10)で表される化合物及び下記式(Z-4)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を更に含む請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化5】
式(Le-10)中、Ar
1はそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Ar
2はそれぞれ独立に、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基、又は、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するヘテロアリール基を表す。
【化6】
式(Z-4)中、Rza
1は、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rzb
1~Rb
4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rzb
1とRzb
2、Rzb
3とRzb
4とが連結して環構造を形成してもよく、Xは、O又はNRを示し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Y
1及びY
2はそれぞれ独立に、CH又はNを表す。
【請求項7】
前記画像記録層が、下記式(Ph)で表される化合物を更に含む請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化7】
式(Ph)中、X
PはO、S又はNHを表し、Y
PはN又はCHを表し、R
P1は水素原子又はアルキル基を表し、R
P2及びR
P3はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキル基、アリール基、アシルチオ基又はアシル基を表し、mp及びnpはそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。
【請求項8】
前記画像記録層が、下記式(I)で表される構成単位を有する重合体を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化8】
式(I)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R
13は水素原子又は一価の置換基を表し、L
11及びL
12はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Rhはケイ素原子を2個以上含む置換基を表す。
【請求項9】
前記重合性化合物が、7官能以上の重合性化合物を含む請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項10】
前記画像記録層が、オイル剤を更に含む請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項11】
前記支持体が、アルミニウム板と、前記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを有し、
前記陽極酸化皮膜が、前記アルミニウム板よりも前記画像記録層側に位置し、
前記陽極酸化皮膜が、前記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、
前記マイクロポアの前記陽極酸化皮膜表面における平均径が、10nmを超え100nm以下である請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項12】
前記マイクロポアが、前記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、前記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、
前記大径孔部の前記陽極酸化皮膜表面における平均径が、15nm~100nmであり、
前記小径孔部の前記連通位置における平均径が、13nm以下である請求項11に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項13】
請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
【請求項14】
請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
平版印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
また、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化、無処理化が指向されている。簡易な作製方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
本開示において、このような機上現像に用いることができる平版印刷版原版を、「機上現像型平版印刷版原版」という。
【0004】
従来の平版印刷版原版としては、例えば、特許文献1又は2に記載されたものが挙げられる。
特許文献1には、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、画像記録層にロイコ染料を含む機上現像型平版印刷版原版が開示されている。
特許文献2には、画像記録層に発色化合物として特定構造を有するロイコ染料を含む平版印刷版原版が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/019217号
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0078350号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、透明インキの濁りを抑制し、発色性に優れた平版印刷版が得られる機上現像型平版印刷版原版を提供することである。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、又は、平版印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
【0008】
<1> 支持体、及び、支持体上に画像記録層を有し、
前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含む、機上現像型平版印刷版原版。
【0009】
【0010】
式(1)及び式(2)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Ra1とRa2とが連結して環構造を形成してもよく、Rb1及びRb3は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基を表し、Rb2及びRb4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、EWGは、それぞれ独立に、水素原子又は電子求引性基を表す。但し、式(1)中の4つのEWGのうち少なくとも1つは電子求引性基を表す。
【0011】
<2> 前記式(1)で表される化合物が、下記式(1a)で表される化合物である、<1>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0012】
【0013】
式(1a)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Ra1とRa2とが連結して環構造を形成してもよく、Rb1は、置換又は無置換のアルキル基を表し、Rb2は、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、EWGは、それぞれ独立に、水素原子又は電子求引性基を表す。但し、式(1a)中の2つのEWGのうち少なくとも1つは電子求引性基を表す。
【0014】
<3> 前記式(1)及び前記式(2)中の電子求引性基が、ハロゲン原子である<1>又は<2>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0015】
<4> 前記重合開始剤が、下記式(Ia)で表される化合物Aと、下記式(Ib)で表される化合物及び下記式(Ic)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物Bと、を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0016】
【0017】
式(Ia)~(Ic)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、炭素数2~9の、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアルコキシ基であり、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、R1又はR2とは異なり、R1及びR2中の炭素原子の総数とR3及びR4中の炭素原子の総数との間の差は0~4であり、R1及びR2中の炭素原子の総数とR5及びR6中の炭素原子の総数との間の差は0~4であり、X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、対アニオンである。
【0018】
<5> 前記赤外線吸収剤が、下記式(X)で表される化合物を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0019】
【0020】
式(X)中、Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の芳香環を形成するか、又は、置換若しくは無置換のヘテロ芳香環を形成するのに必要な原子群を表し、R11およびR12は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基であり、R13は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表し、R14は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換ヘテロアリール基を表し、Yは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は>C(R15R16)で表されるジアルキルメチレン基を表し、R15及びR16は、それぞれ独立に置換若しくは無置換の炭素数1~4のアルキル基を表し、A1及びA2は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基を表すか、又は、互いに連結して、置換又は無置換の5員又は6員の非芳香族炭素環を形成するのに必要な2個又は3個の炭素原子を含む原子群を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【0021】
<6> 前記画像記録層が、下記式(Le-10)で表される化合物及び下記式(Z-4)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を更に含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0022】
【0023】
式(Le-10)中、Ar1はそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Ar2はそれぞれ独立に、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基、又は、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するヘテロアリール基を表す。
【0024】
【0025】
式(Z-4)中、Rza1は、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rzb1~Rb4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rzb1とRzb2、Rzb3とRzb4とが連結して環構造を形成してもよく、Xは、O又はNRを示し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、CH又はNを表す。
【0026】
<7> 前記画像記録層が、下記式(Ph)で表される化合物を更に含む<1>~<6>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0027】
【0028】
式(Ph)中、XPはO、S又はNHを表し、YPはN又はCHを表し、RP1は水素原子又はアルキル基を表し、RP2及びRP3はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキル基、アリール基、アシルチオ基又はアシル基を表し、mp及びnpはそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。
【0029】
<8> 前記画像記録層が、下記式(I)で表される構成単位を有する重合体を更に含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0030】
【0031】
式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R13は水素原子又は一価の置換基を表し、L11及びL12はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Rhはケイ素原子を2個以上含む置換基を表す。
【0032】
<9> 前記重合性化合物が、7官能以上の重合性化合物を含む<1>~<8>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<10> 前記画像記録層が、オイル剤を更に含む<1>~<9>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0033】
<11> 前記支持体が、アルミニウム板と、前記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを有し、
前記陽極酸化皮膜が、前記アルミニウム板よりも前記画像記録層側に位置し、
前記陽極酸化皮膜が、前記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、
前記マイクロポアの前記陽極酸化皮膜表面における平均径が、10nmを超え100nm以下である<1>~<10>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<12> 前記マイクロポアが、前記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、前記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、
前記大径孔部の前記陽極酸化皮膜表面における平均径が、15nm~100nmであり、
前記小径孔部の前記連通位置における平均径が、13nm以下である<11>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0034】
<13> <1>~<10>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
<14> <1>~<10>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
平版印刷方法。
【発明の効果】
【0035】
本開示の一実施形態によれば、透明インキの濁りを抑制し、発色性に優れた平版印刷版が得られる機上現像型平版印刷版原版を提供することができる。
また、本開示の他の実施形態によれば、上記機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法又は平版印刷版の印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。
【
図3】陽極酸化皮膜を有する支持体の製造方法における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換のアルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
特に限定しない限りにおいて、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
更に、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位の量は、組成物中に各成分、又は、ポリマー中の各構成単位に該当する物質又は構成単位が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質、又は、ポリマー中に存在する該当する複数の各構成単位の合計量を意味する。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
また、本開示において、化学構造式における「*」は、他の構造との結合位置を表す。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0038】
(機上現像型平版印刷版原版)
本開示に係る機上現像型平版印刷版原版(単に「平版印刷版原版」ともいう。)は、支持体、及び、支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含む。
以下、「式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物」を、総称して、「特定化合物」ともいう。
本開示に係る機上現像型平版印刷版原版は、赤外線露光により露光部が重合する、ネガ型平版印刷版原版である。
【0039】
本発明者らは、特許文献1又は2に記載されているような従来の平版印刷版原版では、透明インキの濁りを抑制し、発色性に優れた平版印刷版を得ることが困難であるといった知見を得た。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、上述の組成を有する画像記録層を有することにより、透明インキの濁りを抑制し、発色性に優れた平版印刷版が得られることを見いだした。
式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物(特定化合物)は、環構造が有する置換基の種類、環構造が有する置換基の数、及び環構造への置換基の導入位置により、露光による過度な開環が抑えられるものと推測される。そのため、開環体、つまり発色体の透明インキへの移行が抑えられ、透明インキの濁りを抑制しうる。
また、特定化合物は、環構造が有する置換基の種類、環構造が有する置換基の数、及び環構造への置換基の導入位置により、露光により開環した後の発色性に優れるものと推測される。
これらのことから、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版は、透明インキの濁りを抑制し、発色性に優れた平版印刷版が得られる。
【0040】
以下、本開示に係る平版印刷版原版における各構成要件の詳細について説明する。
【0041】
<画像記録層>
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含む。
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層であることが好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、機上現像性の観点から、画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能であることが好ましい。
【0042】
以下、画像記録層に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0043】
〔式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物(特定化合物)〕
画像記録層は、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含む。
これら特定化合物は、開環により発色する化合物(つまり、発色体)であることから、発色体前駆体に該当する。
【0044】
【0045】
式(1)及び式(2)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Ra1とRa2とが連結して環構造を形成してもよく、Rb1及びRb3は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基を表し、Rb2及びRb4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、EWGは、それぞれ独立に、水素原子又は電子求引性基を表す。但し、式(1)中の4つのEWGのうち少なくとも1つは電子求引性基を表す。
【0046】
ここで、上記置換アルキル基における置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、ヘテロアリーロキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。また、これら置換基は、これら置換基、アルキル基等により更に置換されていてもよい。
【0047】
上記Ra1及びRa2としては、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基が好ましく、無置換の炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、無置換の炭素数1~2のアルキル基が更に好ましい。
また、Ra1及びRa2は、同じ基であることが好ましい。
更に、Ra1とRa2とが連結して環構造を形成してもよい。つまり、Ra1とRa2とが連結してNを含む環構造が形成される。形成される環構造は5員環又は6員環が好ましく、6員環がより好ましい。
【0048】
上記Rb1及びRb3としては、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数1~8のアルキル基が好ましく、置換又は無置換の炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
Rb1及びRb3が置換アルキル基の場合、置換基としては、アリール基、又はアルコキシ基が好ましく、中でも、アリール基がより好ましい。
【0049】
上記Rb2及びRb4としては、それぞれ独立に、水素原子、又は、無置換の炭素数1~8のアルキル基が好ましく、水素原子、又は、無置換の炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
上記Rb2としては、水素原子、又は、無置換の炭素数1~2のアルキル基が特に好ましい。
上記Rb4としては、水素原子、又は、無置換の炭素数1~2のアルキル基が特に好ましい。
【0050】
EWGで表される電子求引性基としては、ハロゲン原子(即ち、ハロゲノ基)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリクロロメチル基等)、アシル基(例えば、ホルミル基)、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
中でも、EWGで表される電子供与性基としては、発色性の観点から、ハロゲン原子であることがより好ましく、塩素原子であることが更に好ましい。
【0051】
式(1)中の4つのEWGのうち少なくとも1つは電子供与性基であるが、4つのEDGのうち1つ又は2つが電子供与性基であることが好ましく、4つのEDGのうち1つが電子供与性基であることがより好ましい。
式(2)においては、4つのEWGのうち0~2つが電子供与性基であることが好ましく、4つのEDGのうち0又は2つが電子供与性基であることがより好ましい。
【0052】
上記式(1)で表される化合物は、発色性の観点から、下記式(1a)で表される化合物であることが好ましい。
【0053】
【0054】
式(1a)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Ra1とRa2とが連結して環構造を形成してもよく、Rb1は、置換又は無置換のアルキル基を表し、Rb2は、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、EWGは、それぞれ独立に、水素原子又は電子求引性基を表す。但し、式(1a)中の2つのEWGのうち少なくとも1つは電子求引性基を表す。
なお、式(1a)中におけるRa1、Ra2、Rb1、Rb2、及び、EWGは、上記式(1)におけるRa1、Ra2、Rb1、Rb2、及び、EWGと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0055】
特定化合物の具体例を以下に示す。但し、特定化合物で表される化合物はこれらに限定されるものではない。
【0056】
【0057】
式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物は、例えば、対応するo-アルコキシカルボニルベンズアルデヒドに対し、2当量のインドール系化合物を付加させてトリアリールメタン化合物を合成し、エステル加水分解及び酸化をおこなうことで得られる。
【0058】
特定化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特定化合物について2種以上を併用する場合、例えば、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを併用してもよい。
画像記録層中の特定化合物の総含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~10質量%が好ましく、1質量%~5質量%がより好ましい。
画像記録層中の特定化合物の総含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~10質量%が好ましく、1質量%~5質量%がより好ましい。
面状の悪化を抑制する観点からは、特定化合物の総含有量を、画像記録層の全質量に対し、10質量%とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。また、発色性の観点からは、特定化合物の総含有量を、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%以上とすることが好ましく、1質量%以上とすることがより好ましい。
【0059】
〔赤外線吸収剤〕
画像記録層は、赤外線吸収剤を含む。
赤外線吸収剤としては、特に制限はなく、例えば、顔料及び染料が挙げられる。
赤外線吸収剤として用いられる染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0060】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が挙げられる。中でも、シアニン色素が特に好ましい。
【0061】
上記赤外線吸収剤としては、メソ位に酸素又は窒素原子を有するカチオン性のポリメチン色素であることが好ましい。カチオン性のポリメチン色素としては、シアニン色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、アズレニウム色素等が好ましく挙げられ、入手の容易性、導入反応時の溶剤溶解性等の観点から、シアニン色素であることが好ましい。
【0062】
シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~0021、特開2002-040638号公報の段落0012~0037に記載の化合物、好ましくは特開2002-278057号公報の段落0034~0041、特開2008-195018号公報の段落0080~0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007-90850号公報の段落0035~0043に記載の化合物、特開2012-206495号公報の段落0105~0113に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5-5005号公報の段落0008~0009、特開2001-222101号公報の段落0022~0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~0076に記載の化合物が好ましい。
【0063】
また、上記赤外線吸収剤は、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤(分解型赤外線吸収剤)を含むことが好ましく、分解発色性赤外線吸収剤を含むことがより好ましい。
上記赤外線吸収剤として、分解型赤外線吸収剤を用いることにより、上記赤外線吸収剤又はその分解物が重合を促進し、また、上記赤外線吸収剤の分解物と重合性化合物とが相互作用することにより、UV耐刷性に優れると推定している。
上記分解型赤外線吸収剤は、赤外線露光により、赤外線を吸収し、分解して、発色する機能を有する赤外線吸収剤であることが好ましい。
以降、分解型赤外線吸収剤が、赤外線露光により、赤外線を吸収し、分解して形成される発色した化合物を、「分解型赤外線吸収剤の発色体」ともいう。
また、分解型赤外線吸収剤は、赤外線露光により、赤外線を吸収し、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有することが好ましい。
上記分解型赤外線吸収剤は、赤外線波長域(波長750nm~1mm)の少なくとも1部の光を吸収し、分解するものであればよいが、750nm~1,400nmの波長域に極大吸収波長を有する赤外線吸収剤であることが好ましく、760nm~900nmの波長域に極大吸収波長を有する赤外線吸収剤であることがより好ましい。
より具体的には、分解型赤外線吸収剤は、赤外線露光に起因して分解し、500nm~600nmの波長域に極大吸収波長を有する化合物を生成する化合物であることが好ましい。
【0064】
上記分解型赤外線吸収剤は、赤外線露光に起因する熱、電子移動又はその両方により分解する赤外線吸収剤であることが好ましく、赤外線露光に起因する電子移動により分解する赤外線吸収剤であることがより好ましい。ここで、「電子移動により分解する」とは、赤外線露光によって分解型赤外線吸収剤のHOMO(最高被占軌道)からLUMO(最低空軌道)に励起した電子が、分子内の電子受容基(LUMOと電位が近い基)に分子内電子移動し、それに伴って分解が生じることを意味する。
【0065】
また、赤外線吸収剤は、下記式1で表される化合物を含むことが好ましい。
【0066】
【0067】
式1中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R1及びR2は互いに連結して環を形成してもよく、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R7及びR8はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR0-又はジアルキルメチレン基を表し、R0は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、後述する式2で表される基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表し、A1は、-NR9R10、-X1-L1又は後述する式2で表される基を表し、R9及びR10はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はアリールスルホニル基を表し、X1は酸素原子又は硫黄原子を表し、L1は炭化水素基、ヘテロアリール基、又は、熱若しくは赤外線露光によりX1との結合が開裂する基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表し、Ar1及びAr2の少なくとも一方に、下記式2で表される基を有する。
-X 式2
式2中、Xは、ハロゲン原子、-C(=O)-X2-R11、-C(=O)-NR12R13、-O-C(=O)-R14、-CN、-SO2NR15R16、又は、パーフルオロアルキル基を表し、X2は、単結合又は酸素原子を表し、R11及びR14はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、R12、R13、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
【0068】
Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。上記ベンゼン環及びナフタレン環上には、-X以外の置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられるが、アルキル基であることが好ましい。
また、式1においては、Ar1及びAr2の少なくとも一方に、上記式2で表される基を有し、耐刷性、及び、視認性の観点から、Ar1及びAr2の両方に、上記式2で表される基を有することが好ましい。
【0069】
式2におけるXは、ハロゲン原子、-C(=O)-X2-R11、-C(=O)-NR12R13、-O-C(=O)-R14、-CN、-SO2NR15R16、又は、パーフルオロアルキル基を表し、耐刷性、視認性及び経時安定性の観点から、ハロゲン原子、-C(=O)-X2-R11、-C(=O)-NR12R13、-O-C(=O)-R14、CN、又は、-SO2NR15R16であることが好ましく、ハロゲン原子、-C(=O)-O-R11、-C(=O)-NR12R13、又は、-O-C(=O)-R14であることが好ましく、ハロゲン原子、-C(=O)-O-R11、又は、-O-C(=O)-R14であることが更に好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、-C(=O)OR17であることが特に好ましく、塩素原子、又は、臭素原子が最も好ましい。
【0070】
X2は、単結合又は酸素原子を表し、酸素原子であることが好ましい。
R11及びR14はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましい。
R12、R13、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることが更に好ましい。
R17は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましい。
【0071】
A1は、-NR9R10、-X1-L1又は-Xを表し、耐刷性、視認性及び経時安定性の観点から、-NR9R10又は-X1-L1であることが好ましく、-NR18R19、-S-R20であることがより好ましい。
また、A1は、UV版飛び抑制性、GLV適性及びUV耐刷性の観点からは、-Xであることが好ましく、ハロゲン原子であることがより好ましく、塩素原子、又は、臭素原子であることが更に好ましく、塩素原子であることが特に好ましい。
R9及びR10はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はアリールスルホニル基を表し、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましい。
X1は酸素原子又は硫黄原子を表し、L1が炭化水素基又はヘテロアリール基である場合は、硫黄原子であることが好ましく、L1が熱若しくは赤外線露光によりX1との結合が開裂する基であることが好ましい。
L1は炭化水素基、ヘテロアリール基、又は、熱若しくは赤外線露光によりX1との結合が開裂する基を表し、耐刷性の観点からは、炭化水素基又はヘテロアリール基が好ましく、アリール基又はヘテロアリール基がより好ましく、ヘテロアリール基が更に好ましい。
また、L1は、視認性及び経時における退色抑制性の観点からは、熱若しくは赤外線露光によりX1との結合が開裂する基が好ましい。
熱若しくは赤外線露光によりX1との結合が開裂する基については、後述する。
R18及びR19はそれぞれ独立に、アリール基を表し、炭素数6~20のアリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
R20は炭化水素基又はヘテロアリール基を表し、アリール基又はヘテロアリール基が好ましく、ヘテロアリール基がより好ましい。
【0072】
L1及びR20におけるヘテロアリール基としては、下記の基が好ましく挙げられる。
【0073】
【0074】
R1~R10、及びR0におけるアルキル基は、炭素数1~30のアルキル基が好ましく、炭素数1~15のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基が更に好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び、2-ノルボルニル基を挙げられる。
これらアルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が特に好ましい。
【0075】
また、上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0076】
R9、R10、R18、R19及びR0におけるアリール基としては、炭素数6~30のアリール基が好ましく、炭素数6~20のアリール基がより好ましく、炭素数6~12のアリール基が更に好ましい。
また、上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
上記アリール基としては具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、p-トリル基、p-クロロフェニル基、p-フルオロフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ジメチルアミノフェニル基、p-メチルチオフェニル基、p-フェニルチオフェニル基等が挙げられる。
これらアリール基の中で、フェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ジメチルアミノフェニル基、又は、ナフチル基が好ましい。
【0077】
R1及びR2は、連結して環を形成していることが好ましい。
R1及びR2が連結して環を形成する場合、好ましい環員数は5又は6員環が好ましく、6員環がより好ましい。また、R1及びR2が連結して形成される環は、エチレン性不飽和結合を有していてもよい炭化水素環であることが好ましい。
【0078】
Y1及びY2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR0-又はジアルキルメチレン基を表し、-NR0-又は ジアルキルメチレン基が好ましく、ジアルキルメチレン基がより好ましい。
R0は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、アルキル基であることが好ましい。
【0079】
R7及びR8は、同じ基であることが好ましい。
また、R7及びR8はそれぞれ独立に、直鎖アルキル基又は末端にスルホネート基を有するアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基又は末端にスルホネート基を有するブチル基であることがより好ましい。
また、上記スルホネート基の対カチオンは、式1中の窒素原子上のカチオンであってもよいし、アルカリ金属カチオンやアルカリ土類金属カチオンであってもよい。
更に、式1で表される化合物の水溶性をさせる観点から、R7及びR8はそれぞれ独立に、アニオン構造を有するアルキル基であることが好ましく、カルボキシレート基又はスルホネート基を有するアルキル基であることがより好ましく、末端にスルホネート基を注するアルキル基であることが更に好ましい。
また、式1で表される化合物の極大吸収波長を長波長化し、また、視認性及び平版印刷版における耐刷性の観点から、R7及びR8はそれぞれ独立に、芳香環を有するアルキル基であることが好ましく、末端に芳香環を有するアルキル基であることがより好ましく、2-フェニルエチル基、2-ナフタレニルエチル基、又は、2-(9-アントラセニル)エチル基であることが特に好ましい。
【0080】
R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、水素原子であることが好ましい。
【0081】
また、式1で表される化合物は、経時安定性、UV版飛び抑制性、GLV適性及びUV耐刷性の観点から、ハロゲン原子を1つ以上有することが好ましく、A1、Ar1及びAr2よりなる群から選ばれる少なくとも1つに、ハロゲン原子を1つ以上有することがより好ましく、A1、Ar1及びAr2がそれぞれハロゲン原子を1つ以上有することが特に好ましい。
更に、式1で表される化合物は、経時安定性、UV版飛び抑制性、GLV適性及びUV耐刷性の観点から、ハロゲン原子を2つ以上有することがより好ましく、ハロゲン原子を3つ以上有することが更に好ましく、ハロゲン原子を3つ以上6つ以下有することが特に好ましい。
また、上記ハロゲン原子としては、塩素原子、又は、臭素原子が好ましく挙げられる。
更にまた、式1で表される化合物は、経時安定性、UV版飛び抑制性、GLV適性及びUV耐刷性の観点から、Ar1及びAr2の少なくとも1方に、ハロゲン原子を有することが好ましく、Ar1及びAr2の少なくとも1方に、塩素原子、又は、臭素原子を有することがより好ましく、Ar1及びAr2の少なくとも1方に、臭素原子を有することが特に好ましい。
【0082】
Zaは、電荷を中和する対イオンを表し、アニオン種を示す場合は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、過塩素酸塩イオン、スルホンアミドアニオン、スルホンイミドアニオン等が挙げられる。カチオン種を示す場合は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンが更に好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はトリアルキルアンモニウムイオンが特に好ましい。
中でも、Zaは、耐刷性及び視認性の観点から、炭素原子を含む有機アニオンであることが好ましく、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンであることがより好ましく、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンであることが更に好ましく、スルホンイミドアニオンであることが特に好ましい。
R1~R8、R0、A1、Ar1、Ar2、Y1及びY2は、アニオン構造やカチオン構造を有していてもよく、R1~R8、R0、A1、Ar1、Ar2、Y1及びY2の全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンであるが、例えば、R1~R8、R0、A1、Ar1、Ar2、Y1及びY2に2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
また、式1において、Za以外の部分が電荷的に中性であれば、Zaはなくともよい。
【0083】
スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。
また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。
スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、Etはエチル基を、それぞれ表す。
【0084】
【0085】
上記熱又は赤外線露光によりX1との結合が開裂する基は、視認性の観点から、下記式(1-1)~式(1-7)のいずれかで表される基であることが好ましく、下記式(1-1)~式(1-3)のいずれかで表される基であることがより好ましい。
【0086】
【0087】
式(1-1)~式(1-7)中、●は、式1中のX1との結合部位を表し、R10はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、-OR14、-NR15R16又は-SR17を表し、R11はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R12はアリール基、-OR14、-NR15R16、-SR17、-C(=O)R18、-OC(=O)R18又はハロゲン原子を表し、R13はアリール基、アルケニル基、アルコキシ基又はオニウム基を表し、R14~R17はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R18はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、-OR14、-NR15R16又は-SR17を表し、Z1は電荷を中和する対イオンを表す。
【0088】
R10、R11及びR14~R18がアルキル基である場合の好ましい態様は、R2~R9及びR0におけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
R10及びR13におけるアルケニル基の炭素数は、1~30であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることが更に好ましい。
R10~R18がアリール基である場合の好ましい態様は、R0におけるアリール基の好ましい態様と同様である。
【0089】
視認性の観点から、式(1-1)におけるR10は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、-OR14、-NR15R16又は-SR17であることが好ましく、アルキル基、-OR14、-NR15R16又は-SR17であることがより好ましく、アルキル基又は-OR14であることが更に好ましく、-OR14であることが特に好ましい。
また、式(1-1)におけるR10がアルキル基である場合、上記アルキル基は、α位にアリールチオ基又はアルキルオキシカルボニル基を有するアルキル基であることが好ましい。
式(1-1)におけるR10が-OR14である場合、R14は、アルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、イソプロピル基又はt-ブチル基であることが更に好ましく、t-ブチル基であることが特に好ましい。
【0090】
視認性の観点から、式(1-2)におけるR11は、水素原子であることが好ましい。
また、視認性の観点から、式(1-2)におけるR12は、-C(=O)OR14、-OC(=O)OR14又はハロゲン原子であることが好ましく、-C(=O)OR14又は-OC(=O)OR14であることがより好ましい。式(1-2)におけるR12が-C(=O)OR14又は-OC(=O)OR14である場合、R14は、アルキル基であることが好ましい。
【0091】
視認性の観点から、式(1-3)におけるR11はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、また、式(1-3)における少なくとも1つのR11が、アルキル基であることがより好ましい。
また、R11におけるアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10のアルキル基であることがより好ましい。
更に、R11におけるアルキル基は、分岐を有するアルキル基、又は、シクロアルキル基であることが好ましく、第二級又は第三級アルキル基、又は、シクロアルキル基であることがより好ましく、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又は、t-ブチル基であることが更に好ましい。
また、視認性の観点から、式(1-3)におけるR13は、アリール基、アルコキシ基又はオニウム基であることが好ましく、p-ジメチルアミノフェニル基又はピリジニウム基であることがより好ましく、ピリジニウム基であることが更に好ましい。
R13におけるオニウム基としては、ピリジニウム基、アンモニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。オニウム基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられるが、アルキル基、アリール基及びこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
中でも、ピリジニウム基が好ましく、N-アルキル-3-ピリジニウム基、N-ベンジル-3-ピリジニウム基、N-(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)-3-ピリジニウム基、N-アルコキシカルボニルメチル-3-ピリジニウム基、N-アルキル-4-ピリジニウム基、N-ベンジル-4-ピリジニウム基、N-(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)-4-ピリジニウム基、N-アルコキシカルボニルメチル-4-ピリジニウム基、又は、N-アルキル-3,5-ジメチル-4-ピリジニウム基がより好ましく、N-アルキル-3-ピリジニウム基、又は、N-アルキル-4-ピリジニウム基が更に好ましく、N-メチル-3-ピリジニウム基、N-オクチル-3-ピリジニウム基、N-メチル-4-ピリジニウム基、又は、N-オクチル-4-ピリジニウム基が特に好ましく、N-オクチル-3-ピリジニウム基、又は、N-オクチル-4-ピリジニウム基が最も好ましい。
また、R13がピリジニウム基である場合、対アニオンとしては、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、p-トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましい。
【0092】
視認性の観点から、式(1-4)におけるR10は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、2つのR10のうち、一方がアルキル基、他方がアリール基であることがより好ましい。
視認性の観点から、式(1-5)におけるR10は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましく、p-メチルフェニル基であることが更に好ましい。
視認性の観点から、式(1-6)におけるR10はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、メチル基又はフェニル基であることがより好ましい。
視認性の観点から、式(1-7)におけるZ1は、電荷を中和する対イオンであればよく、化合物全体として、上記Zaに含まれてもよい。
Z1は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、又は、過塩素酸塩イオンであることが好ましく、p-トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンであることがより好ましい。
【0093】
また、上記熱若しくは赤外線露光によりX1との結合が開裂する基は、式(1-8)で表される基であることが特に好ましい。
【0094】
【0095】
式(1-8)中、●は、式1中のX1との結合部位を表し、R19及びR20はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、Za’は、電荷を中和する対イオンを表す。
【0096】
式(1-8)におけるピリジニウム環とR20を含む炭化水素基との結合位置は、ピリジニウム環の3位又は4位であることが好ましく、ピリジニウム環の4位であることがより好ましい。
R19及びR20におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、上記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルコキシ基、及び、末端アルコキシポリアルキレンオキシ基が好ましく挙げられる。
R19は、炭素数1~12のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~12の直鎖アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8の直鎖アルキル基であることが更に好ましく、メチル基又はn-オクチル基であることが特に好ましい。
R20は、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~8の分岐アルキル基であることがより好ましく、イソプロピル基又はt-ブチル基であることが更に好ましく、イソプロピル基であることが特に好ましい。
Za’は、電荷を中和する対イオンであればよく、化合物全体として、上記Zaに含まれてもよい。
Za’は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、又は、過塩素酸塩イオンであることが好ましく、p-トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンであることがより好ましい。
【0097】
また、上記分解型赤外線吸収剤は、露光部の視認性を高める観点から、赤外線露光により分解する基(具体的には、下記式1-1~式1-7におけるR1)を有する、シアニン色素であることが好ましい。
分解型赤外線吸収剤としては、露光部の視認性を高める観点から、下記式1-1で表される化合物であることがより好ましい。
【0098】
【0099】
式1-1中、R1は下記式2-1~式4-1のいずれかで表される基を表し、R11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-SRc、又は、-NRdReを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、A1、A2及び複数のR11~R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A1及びA2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は、窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は、-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0100】
【0101】
式2-1~式4-1中、R20、R30、R41及びR42はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、Zbは電荷を中和する対イオンを表し、波線は、上記式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
【0102】
式1-1で表される化合物は、赤外線で露光されると、R1-L結合が開裂し、Lは、=O、=S、又は=NR10となって、変色する。
【0103】
式1-1において、R1は上記式2-1~式4-1のいずれかで表される基を表す。
以下、式2-1で表される基、式3-1で表される基、及び式4-1で表される基についてそれぞれ説明する。
【0104】
式2-1中、R20は、アルキル基又はアリール基を表し、波線部分は、式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
R20で表されるアルキル基としては、炭素数1~30のアルキル基が好ましく、炭素数1~15のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基が更に好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
R20で表されるアリール基としては、炭素数6~30のアリール基が好ましく、炭素数6~20のアリール基がより好ましく、炭素数6~12のアリール基が更に好ましい。
R20としては、視認性の観点から、アルキル基であることが好ましい。
【0105】
また、分解性、及び、視認性の観点から、R20で表されるアルキル基としては、第二級アルキル基又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることが好ましい。
更に、分解性、及び、視認性の観点から、R20で表されるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~6の分岐状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基、又はtert-ブチル基が特に好ましく、tert-ブチル基が最も好ましい。
【0106】
以下に、上記式2-1で表される基の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、●は式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
【0107】
【0108】
式3-1中、R30は、アルキル基又はアリール基を表し、波線部分は、式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
R30で表されるアルキル基及びアリール基としては、式2-1中のR20で表されるアルキル基及びアリール基と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0109】
分解性、及び、視認性の観点から、R30で表されるアルキル基としては、第二級アルキル基又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることが好ましい。
また、分解性、及び、視認性の観点から、R30で表されるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~6の分岐状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基、又はtert-ブチル基が特に好ましく、tert-ブチル基が最も好ましい。
更に、分解性、及び、視認性の観点から、R30で表されるアルキル基は、置換アルキル基であることが好ましく、フルオロ置換アルキル基であることがより好ましく、パーフルオロアルキル基であることが更に好ましく、トリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
【0110】
分解性、及び、視認性の観点から、R30で表されるアリール基は置換アリール基であることが好ましく、置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~4のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)等が挙げられる。
【0111】
以下に、上記式3-1で表される基の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、●は式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
【0112】
【0113】
式4-1中、R41及びR42はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、Zbは電荷を中和する対イオンを表し、波線部分は、式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
R41又はR42で表されるアルキル基及びアリール基としては、式2-1中のR20で表されるアルキル基及びアリール基と同様であり、好ましい態様も同様である。
R41としては、分解性、及び、視認性の観点から、アルキル基であることが好ましい。
R42としては、分解性、及び、視認性の観点から、アルキル基であることが好ましい。
【0114】
分解性、及び、視認性の観点から、R41で表されるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
分解性、及び、視認性の観点から、R42で表されるアルキル基としては、第二級アルキル基又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることが好ましい。
また、分解性、及び、視認性の観点から、R42で表されるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~6の分岐状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基、又は、tert-ブチル基が特に好ましく、tert-ブチル基が最も好ましい。
【0115】
式4-1におけるZbは、電荷を中和するための対イオンであればよく、化合物全体として、式1-1におけるZaに含まれてもよい。
Zbは、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、又は過塩素酸塩イオンが好ましく、テトラフルオロボレートイオン又はヘキサフルオロホスフェートイオンがより好ましい。
【0116】
以下に、上記式4-1で表される基の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、●は式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
【0117】
【0118】
式1-1において、Lは、酸素原子、又は-NR10-が好ましく、酸素原子が特に好ましい。
また、-NR10-におけるR10は、アルキル基が好ましい。R10で表されるアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。また、R10で表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
アルキル基の中では、メチル基又はシクロヘキシル基が好ましい。
-NR10-におけるR10がアリール基の場合、炭素数6~30のアリール基が好ましく、炭素数6~20のアリール基がより好ましく、炭素数6~12のアリール基が更に好ましい。また、これらアリール基は、置換基を有していてもよい。
【0119】
式1-1において、R11~R18は、それぞれ独立に、水素原子、-Ra、-ORb、-SRc、又は-NRdReであることが好ましい。
Ra~Reで表される炭化水素基は、炭素数1~30の炭化水素基が好ましく、炭素数1~15の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~10の炭化水素基が更に好ましい。
上記炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
上記炭化水素基としては、アルキル基が特に好ましい。
【0120】
上記アルキル基としては、炭素数1~30のアルキル基が好ましく、炭素数1~15のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基が更に好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び、2-ノルボルニル基が挙げられる。
アルキル基の中で、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が好ましい。
【0121】
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及びこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0122】
式1-1におけるR11~R14はそれぞれ独立に、水素原子、又は、-Ra(即ち炭化水素基)であることが好ましく、水素原子、又は、アルキル基であることがより好ましく、以下の場合を除き、水素原子であることが更に好ましい。
中でも、Lが結合する炭素原子と結合する炭素原子に結合するR11及びR13は、アルキル基が好ましく、両者が連結して環を形成することがより好ましい。上記形成される環としては、単環であってもよく、多環であってもよい。形成される環として、具体的には、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環等の単環、及び、インデン環、インドール環等の多環が挙げられる。
また、A1
+が結合する炭素原子に結合するR12はR15又はR16(好ましくはR16)と連結して環を形成することが好ましく、A2が結合する炭素原子に結合するR14はR17又はR18(好ましくはR18)と連結して環を形成することが好ましい。
【0123】
式1-1において、n13は1であり、R16は、-Ra(即ち炭化水素基)であることが好ましい。
また、R16は、A1
+が結合する炭素原子に結合するR12と連結して環を形成することが好ましい。形成される環としては、インドリウム環、ピリリウム環、チオピリリウム環、ベンゾオキサゾリン環、又はベンゾイミダゾリン環が好ましく、露光部の視認性を高める観点から、インドリウム環がより好ましい。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
式1-1において、n14は1であり、R18は、-Ra(即ち炭化水素基)であることが好ましい。
また、R18は、A2が結合する炭素原子に結合するR14と連結して環を形成することが好ましい。形成される環としては、インドール環、ピラン環、チオピラン環、ベンゾオキサゾール環、又はベンゾイミダゾール環が好ましく、露光部の視認性を高める観点から、インドール環がより好ましい。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
式1-1におけるR16及びR18は同一の基であることが好ましく、それぞれが環を形成する場合、A1
+及びA2を除き、同一の構造の環を形成することが好ましい。
【0124】
式1-1におけるR15及びR17は同一の基であることが好ましい。また、R15及びR17は、-Ra(即ち炭化水素基)であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、置換アルキル基であることが更に好ましい。
【0125】
式1-1により表される化合物において、水溶性を向上させる観点からは、R15及びR17は置換基アルキル基であることが好ましい。
R15又はR17で表される置換アルキル基としては、下記式(a1)~式(a4)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0126】
【0127】
式(a1)~式(a4)中、RW0は炭素数2~6のアルキレン基を表し、Wは単結合又は酸素原子を表し、nW1は1~45の整数を表し、RW1は炭素数1~12のアルキル基又は-C(=O)-RW5を表し、RW5は炭素数1~12のアルキル基を表し、RW2~RW4はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1~12のアルキレン基を表し、Mは水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、又は、オニウム基を表す。
【0128】
式(a1)において、RW0で表されるアルキレン基の具体例としては、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられ、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、又はn-ブチレン基が好ましく、n-プロピレン基が特に好ましい。
nW1は1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が特に好ましい。
RW1で表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はn-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、メチル基、又はエチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
RW5で表されるアルキル基は、RW1で表されるアルキル基と同様であり、好ましい態様もRW1で表されるアルキル基の好ましい態様と同様である。
【0129】
式(a1)で表される基の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Meはメチル基、Etはエチル基を表し、*は結合部位を表す。
【0130】
【0131】
式(a2)~式(a4)において、RW2~RW4で表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-オクチレン基、n-ドデシレン基等が挙げられ、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、又は、n-ブチレン基が好ましく、エチレン基、又は、n-プロピレン基が特に好ましい。
式(a3)において、2つ存在するMは同じでも異なってもよい。
【0132】
式(a2)~式(a4)において、Mで表されるオニウム基としては、アンモニウム基、ヨードニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。
式(a2)におけるCO2M、式(a2)におけるPO3M2、及び式(a4)におけるSO3Mは、いずれもMが解離したアニオン構造を有していてもよい。アニオン構造の対カチオンは、A1
+であってもよいし、式1-1中のR1-Lに含まれうるカチオンであってもよい。
【0133】
式(a1)~式(a4)で表される基の中で、式(a1)、式(a2)、又は式(a4)で表される基が好ましい。
【0134】
式1-1におけるn11及びn12は同一であることが好ましく、いずれも、1~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1又は2が更に好ましく、2が特に好ましい。
【0135】
式1-1におけるA1及びA2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、窒素原子が好ましい。
式1-1におけるA1及びA2は同一の原子であることが好ましい。
【0136】
式1-1におけるZaは、電荷を中和する対イオンを表す。
R11~R18及びR1-Lの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンとなる。但し、R11~R18及びR1-Lは、アニオン構造又はカチオン構造を有していてもよく、例えば、R11~R18及びR1-Lに2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
なお、式1-1で表されるシアニン色素が、Zaを除き、化合物の全体において電荷的に中性な構造であれば、Zaは必要ない。
Zaが対アニオンである場合、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、テトラフルオロボレートイオンが好ましい。
Zaが対カチオンである場合、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、スルホニウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンがより好ましい。
【0137】
分解型赤外線吸収剤としては、露光部の視認性を高める観点から、下記式1-2で表される化合物(即ち、シアニン色素)であることがより好ましい。
【0138】
【0139】
式1-2中、R1は上記式2-1~式4-1のいずれかで表される基を表し、R19~R22はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-CN、-SRc、又は-NRdReを表し、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、-Raを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、又は、R23とR24は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は、-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rd1~Rd4、W1及びW2はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0140】
式1-2におけるR1は、式1-1におけるR1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0141】
式1-2において、R19~R22は、それぞれ独立に、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、又は-CNであることが好ましい。
より具体的には、R19及びR21は、水素原子、又は-Raであることが好ましい。
また、R20及びR22は、水素原子、-Ra、-ORb、又は-CNであることが好ましい。
R19~R22で表される-Raとしては、アルキル基、又はアルケニル基が好ましい。
R19~R22のすべてが-Raである場合、R19とR20及びR21とR22が連結して単環又は多環を形成することが好ましい。
R19とR20又はR21とR22が連結して形成される環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0142】
式1-2において、R23とR24は、連結して単環又は多環を形成していることが好ましい。
R23とR24が連結して形成される環としては、単環であってもよく、多環であってもよい。形成される環として、具体的には、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環等の単環、及び、インデン環等の多環が挙げられる。
【0143】
式1-2において、Rd1~Rd4は、無置換のアルキル基であることが好ましい。また、Rd1~Rd4は、いずれも同一の基であることが好ましい。
無置換のアルキル基としては、炭素数1~4の無置換のアルキル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。
【0144】
式1-2において、W1及びW2はそれぞれ独立に、式1-2で表される化合物に水溶性を高める観点から、置換アルキル基であることが好ましい。
W1及びW2で表される置換アルキル基としては、式1-1における式(a1)~式(a4)のいずれかで表される基が挙げられ、好ましい態様も同様である。
また、W1及びW2はそれぞれ独立に、機上現像性の観点から、置換基を有するアルキル基であり、かつ、上記置換基として、-OCH2CH2-、スルホ基、スルホ基の塩、カルボキシ基、又は、カルボキシ基の塩を少なくとも有する基であることが好ましい。
【0145】
Zaは、分子内の電荷を中和する対イオンを表す。
R19~R22、R23~R24、Rd1~Rd4、W1、W2、及び、R1-Lの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンとなる。但し、R19~R22、R23~R24、Rd1~Rd4、W1、W2、及び、R1-Lは、アニオン構造又はカチオン構造を有していてもよく、例えば、R19~R22、R23~R24、Rd1~Rd4、W1、W2、及び、R1-Lに2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
なお、式1-2で表される化合物が、Zaを除き、化合物の全体において電荷的に中性な構造であれば、Zaは必要ない。
Zaが対アニオンである場合の例は、式1-1におけるZaと同様であり、好ましい態様も同様である。また、Zaが対カチオンである場合の例も、式1-1におけるZaと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0146】
分解型赤外線吸収剤としてのシアニン色素は、分解性、及び、視認性の観点から、下記式1-3~式1-7のいずれかで表される化合物であることが更に好ましい。
特に、分解性、及び、視認性の観点から、式1-3、式1-5、及び式1-6のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0147】
【0148】
式1-3~式1-7中、R1は上記式2-1~式4-1のいずれかで表される基を表し、R19~R22はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-CN、-SRc、又は、-NRdReを表し、R25及びR26はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、-Raを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、又は、R25とR26は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は、-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rd1~Rd4、W1及びW2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0149】
式1-3~式1-7におけるR1、R19~R22、Rd1~Rd4、W1、W2、及びLは、式1-2におけるR1、R19~R22、Rd1~Rd4、W1、W2、及びLと同義であり、好ましい態様も同様である。
式1-7におけるR25及びR26はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0150】
以下に、分解型赤外線吸収剤のシアニン色素の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0151】
【0152】
また、赤外線吸収剤は、発色性の観点から、分解型赤外線吸収剤として、下記式(X)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0153】
【0154】
式(X)中、Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の芳香環を形成するか、又は、置換若しくは無置換のヘテロ芳香環を形成するのに必要な原子群を表し、R11およびR12は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基であり、R13は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表し、R14は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換ヘテロアリール基を表し、Yは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は>C(R15R16)で表されるジアルキルメチレン基を表し、R15及びR16はそれぞれ独立に置換若しくは無置換の炭素数1~4のアルキル基を表し、A1及びA2は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基を表すか、又は、互いに連結して、置換又は無置換の5員又は6員の非芳香族炭素環を形成するのに必要な2個又は3個の炭素原子を含む原子群を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0155】
上記Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の芳香環を形成するか、又は、置換若しくは無置換のヘテロ芳香環を形成するのに必要な原子群を表すが、芳香環又はヘテロ芳香環の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、-COOR基、-SO3R基、又は-SO2R基(Rは、置換又は無置換のアルキル基を表す)が挙げられ、アルキル基、又はハロゲン原子が好ましい。
また、上記Ar11及びAr12としては、置換若しくは無置換の芳香族環を形成するのに必要な原子群であることが好ましく、置換若しくは無置換のベンゼン環又はナフタレン環を形成するのに必要な原子群であることがより好ましい。
【0156】
上記Yとしては、それぞれ独立に、>C(R15R16)で表されるジアルキルメチレン基であることが好ましく、>C(R15R16)で表され、R15及びR16が同一のジアルキルメチレン基であることが好ましい。このとき、R15及びR16はそれぞれ独立に置換若しくは無置換の炭素数1又は2のアルキル基であることが好ましい。
上記Yとしては、特に、>C(R15R16)で表され、R15及びR16がメチル基であるジアルキルメチレン基であることが好ましい。
【0157】
上記R11およびR12としては、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数1~12のアルキル基であることが好ましい。また、上記R11およびR12は、置換又は無置換の炭素数1~12のアルキル基の炭素鎖の途中に、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい。
【0158】
上記R13としては、置換又は無置換の炭素数1~12のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基が有する水素原子のうち1又は複数がハロゲン原子にて置換されたハロアルキル基であることがより好ましい。このとき、ハロゲン原子としては、塩素原子、又は、臭素原子が好ましく挙げられる。
中でも、上記R11およびR12としては、それぞれ独立に、パーフルオロアルキル基が好ましい。
【0159】
上記R14としては、水素原子、又は、1個もしくは8個の炭素原子を有する無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0160】
上記A1及びA2としては、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基を表すか、又は、互いに結合して、シクロペンテン環又はシクロヘキセン環を形成するのに必要な2個又は3個の炭素原子を含む原子群であることが好ましい。
【0161】
上記Zaが対アニオンの場合には、ハロゲン原子を含むアニオン、又は、ホウ素原子を含むアニオンが好ましい。Zaとして具体的には、ClO4
-、PF6
-、BF4
-、SbF6
-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、C6H5SO3
-、CH3C6H5SO3
-、HOC6H5SO3
-、ClC6H5SO3
-、CH3C6H5SO3
-、テトラアリールボレートアニオン(例えば、テトラフェニルボレートアニオン)等が挙げられる。
【0162】
上記Zaが対カチオンである場合、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、第三級アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、オニウムイオン(ヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオンなど)等が挙げられる。
【0163】
以下に、式(X)で表される化合物の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0164】
【0165】
また、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤としては、特表2008-544322号公報、又は、国際公開第2016/027886号に記載のものを好適に用いることができる。
また、分解型赤外線吸収剤であるシアニン色素としては、国際公開第2019/219560号に記載の赤外線吸収性化合物を好適に用いることができる。
【0166】
赤外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
上記画像記録層中の赤外線吸収剤の総含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~10.0質量%が好ましく、0.5質量%~5.0質量%がより好ましい。
【0167】
〔重合開始剤〕
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、重合開始剤を含むことが好ましい。
また、重合開始剤としては、感度、耐刷性、機上現像性、及び、着肉性の観点から、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましく、電子受容型重合開始剤、及び、電子供与型重合開始剤を含むことがより好ましい。
【0168】
-電子受容型重合開始剤-
上記画像記録層は、重合開始剤として、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましい。
電子受容型重合開始剤は、赤外線露光により赤外線吸収剤の電子が励起した際に、分子間電子移動で一電子を受容することにより、ラジカル等の重合開始種を発生する化合物である。
本開示に用いられる電子受容型重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルやカチオン等の重合開始種を発生する化合物であって、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを適宜選択して用いることができる。
電子受容型重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、オニウム塩化合物がより好ましい。
また、電子受容型重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤であることが好ましい。
電子受容型ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物が挙げられる。
【0169】
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0022~0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8-108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6-ビス(4-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61-166544号、特開2002-328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0028~0030に記載の化合物が好ましい。
【0170】
上記電子受容型重合開始剤の中でも好ましいものとして、硬化性の観点から、オキシムエステル化合物及びオニウム塩化合物が挙げられる。中でも、耐刷性の観点から、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物又はアジニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物又はスルホニウム塩化合物がより好ましく、ヨードニウム塩化合物が特に好ましい。
これら化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0171】
ヨードニウム塩化合物の例としては、ジアリールヨードニウム塩化合物が好ましく、特に電子供与性基、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩化合物がより好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩化合物が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0172】
スルホニウム塩化合物の例としては、トリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、特に電子求引性基、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩化合物が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)-4-メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=3,5-ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4-ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0173】
また、ヨードニウム塩化合物及びスルホニウム塩化合物の対アニオンとしては、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンが好ましく、スルホンイミドアニオンがより好ましい。
スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。
また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。
スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、Etはエチル基を、それぞれ表す。
【0174】
【0175】
重合開始剤は、上記電子受容型重合開始剤として、下記式(Ia)で表される化合物Aと、下記式(Ib)で表される化合物及び下記式(Ic)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物Bと、を含むことが好ましい。
【化30】
【0176】
式(Ia)~(Ic)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、炭素数2~9の、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアルコキシ基であり、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、R1又はR2とは異なり、R1及びR2中の炭素原子の総数とR3及びR4中の炭素原子の総数との間の差は0~4(すなわち、0、1、2、3又は4)であり、R1及びR2中の炭素原子の総数とR5及びR6中の炭素原子の総数との間の差は0~4であり、X1、X2及びX3は、同じか又は異なるアニオンである。
【0177】
上記R1、R2、R3、R4、R5及びR6としては、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数2~9のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数2~9のアルコキシ基であることが好ましく、置換若しくは無置換の炭素数3~6のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数3~6のアルコキシ基であることがより好ましく、置換若しくは無置換の炭素数3~6のアルキル基が更に好ましい。アルキル基アルコキシ基は、いずれも、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、分岐鎖状であることが好ましい。
置換又は無置換のアルキル基としては、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、t-ペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、sec-ヘキシル基、t-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、iso-オクチル基、2-エチルヘキシル基、及びn-ノニル基が挙げられる。
置換又は無置換のアルコキシ基としては、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、t-ブトキシ基、n-ブトキシ基及びn-オクチルオキシ基が挙げられる。
【0178】
上記X1、X2及びX3としては、ClO4
-、PF6
-、BF4
-、SbF6
-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、C6H5SO3
-、CH3C6H4SO3
-、HOC6H4SO3
-、ClC6H4SO3
-、及び以下の構造(Id)で表されるボレートアニオンが好ましい。
【0179】
B-(R1)(R2)(R3)(R4) 式(Id)
【0180】
式(Id)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基(ハロゲン置換アリール基を含む)、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、又は置換もしくは無置換の複素環基を表す。R1、R2、R3及びR4のうちの2つ以上が互いに連結して、ホウ素原子を含む置換もしくは無置換の複素環を形成してもよい。得られる複素環は、最大7個の炭素原子、窒素原子、酸素原子又は窒素原子を有する。
R1、R2、R3及びR4における置換基は、塩素原子、フッ素原子、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、及びアセトキシ基が挙げられる。
【0181】
上記R1、R2、R3及びR4としては、全て、置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましく、全て、無置換のフェニル基であることがより好ましい。
【0182】
上記X1、X2及びX3のうちの少なくとも1つが、同じか又は異なるアリール基を含むテトラアリールボレートアニオンであることが好ましく、1つもしくは複数がテトラフェニルボレートアニオンであることがより好ましく、X1、X2及びX3のそれぞれがテトラフェニルボレートアニオンであることがさらに好ましい。
【0183】
好ましい態様としては、化合物Bが、式(Ic)で表される化合物を含み、R1がR5と同じであり、R2がR6と同じであることが挙げられる。特に、R1はR2と同じであり、例えば、R1及びR2の両方が、iso-プロピル基、iso-ブチル基、又はt-ブチル基であることが好ましい。
【0184】
また、別の好ましい態様としては、化合物Bが、式(Ib)で表される化合物を含み、R1はR2と同じであり、R3はR4と同じであることが挙げられる。このとき、R1及びR2の両方が、iso-プロピル基、iso-ブチル基、又はt-ブチル基であることが好ましい。また、R1とR3との間の炭素原子数の差は1又は2であることが好ましい。
【0185】
なお、化合物Bは、式(Ib)で表される化合物と、式(Ic)で表される化合物との混合物であってもよい。
【0186】
式(Ia)~式(Ic)で表される化合物は、Sigma-Aldrich社等から入手してもよいし、既知の合成法及び容易に入手できる出発材料を使用して合成してもよい。
【0187】
化合物Aと化合物Bとのモル比は、10:90~90:10であることが好ましく、20:80~80:20であることがより好ましく、30:70~70:30であることがさらに好ましい。
【0188】
また、電子受容型重合開始剤は、現像性、及び、得られる平版印刷版におけるUV耐刷性の観点から、国際公開第2022/019217号の段落0186~0197に記載の式(II)で表される化合物を含んでいてもよい。
【0189】
電子受容型重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電子受容型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましく、0.8質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0190】
-電子供与型重合開始剤-
重合開始剤は、平版印刷版における耐薬品性、及び、UV耐刷性の向上に寄与する観点から、電子供与型重合開始剤を含むことが好ましく、電子供与型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤の両方を含むことがより好ましい。
電子供与型重合開始剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素-ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート塩化合物等が挙げられる。
(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC-X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N-フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N-フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0191】
これら電子供与型重合開始剤の中でも、画像記録層は、ボレート塩化合物を含有することが好ましい。ボレート塩化合物としては、テトラアリールボレート塩化合物又はモノアルキルトリアリールボレート塩化合物が好ましく、化合物の安定性の観点から、テトラアリールボレート塩化合物がより好ましく、テトラフェニルボレート塩化合物が特に好ましい。
ボレート塩化合物が有する対カチオンとしては、特に制限はないが、アルカリ金属イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は、テトラブチルアンモニウムイオンであることがより好ましい。
【0192】
ボレート塩化合物として具体的には、ナトリウムテトラフェニルボレートが好ましく挙げられる。
【0193】
また、本開示に用いられる電子供与型重合開始剤の最高被占軌道(HOMO)は、耐薬品性及びUV耐刷性の観点から、-6.00eV以上であることが好ましく、-5.95eV以上であることがより好ましく、-5.93eV以上であることが更に好ましく、-5.90eVより大きいことが特に好ましい。
また、上限としては、-5.00eV以下であることが好ましく、-5.40eV以下であることがより好ましい。
【0194】
以下に電子供与型重合開始剤の好ましい具体例として、B-1~B-8及び他の化合物を示すが、これらに限定されないことは、言うまでもない。また、下記化学式において、Buはn-ブチル基を表し、Zは対カチオンを表す。
Z+で表される対カチオンとしては、Na+、K+、N+(Bu)4等が挙げられる。上記Buはn-ブチル基を表す。
また、Z+で表される対カチオンとしては、上記電子受容型重合開始剤におけるオニウムイオンも好適にあげられる。
【0195】
【0196】
【0197】
また、上記画像記録層は、視認性、UV耐刷性、及び、経時安定性の観点から、上記電子受容型重合開始剤として、オニウム塩化合物、及び、上記電子供与型重合開始剤として、ボレート塩化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、上記電子受容型重合開始剤として、オニウム塩化合物と、上記電子供与型重合開始剤として、ボレート塩化合物とを含むことがより好ましい。
また、上記画像記録層は、上記電子供与型重合開始剤として、ボレート塩化合物を含むことが好ましく、上記電子供与型重合開始剤として、ボレート塩化合物を含み、かつ上記赤外線吸収剤のHOMO-上記ボレート塩化合物のHOMOの値が、0.70eV以下であることがより好ましい。
上記各HOMOは、後述する方法にて算出するものとする。
【0198】
電子供与型重合開始剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
電子供与型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~30質量%が好ましく、0.05質量%~25質量%がより好ましく、0.1質量%~20質量%が更に好ましい。
【0199】
また、本開示における好ましい態様の一つは、上記電子受容型重合開始剤と、上記電子供与型重合開始剤と、が塩を形成している態様である。
具体的には、例えば、上記オニウム塩化合物が、オニウムイオンと、上記電子供与型重合開始剤におけるアニオン(例えば、テトラフェニルボレートアニオン)との塩である態様が挙げられる。また、より好ましくは、上記ヨードニウム塩化合物におけるヨードニウムカチオン(例えば、ジ-p-トリルヨードニウムカチオン)と、上記電子供与型重合開始剤におけるボレートアニオンとが塩を形成した、ヨードニウムボレート塩化合物が挙げられる。
上記電子受容型重合開始剤と上記電子供与型重合開始剤とが塩を形成している態様の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0200】
【0201】
本開示において、画像記録層が、オニウムイオンと、上述の電子供与型重合開始剤におけるアニオンと、を含む場合、画像記録層は電子受容型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤を含むものとする。
【0202】
〔電子供与型重合開始剤と、電子受容型重合開始剤と、赤外線吸収剤との関係〕
本開示における画像記録層は、上記電子供与型重合開始剤と、上記電子受容型重合開始剤と、上記赤外線吸収剤と、を含み、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが-6.0eV以上であり、かつ、上記電子受容型重合開始剤のLUMOが-3.0eV以下であることが好ましい。
上記電子供与型重合開始剤のHOMO、及び、上記電子受容型重合開始剤のLUMOのより好ましい態様は、それぞれ上述の通りである。
本開示における画像記録層において、上記電子供与型重合開始剤と、上記赤外線吸収剤の少なくとも1種と、上記電子受容型重合開始剤とは、例えば、下記化学式に記載のようにエネルギーの受け渡しを行っていると推測される。
そのため、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが-6.0eV以上であり、かつ、上記電子受容型重合開始剤のLUMOが-3.0eV以下であれば、ラジカルの発生効率が向上するため、耐薬品性及びUV耐刷性により優れやすいと考えられる。
【0203】
【0204】
UV耐刷性及び耐薬品性の観点から、上記赤外線吸収剤の少なくとも1種のHOMO-上記電子供与型重合開始剤のHOMOの値は、1.0eV以下であることが好ましく、0.70eV以下であることがより好ましく、0.60eV以下であることが特に好ましい。また、同様の観点から、上記赤外線吸収剤の少なくとも1種のHOMO-上記電子供与型重合開始剤のHOMOの値は、-0.200eV以上であることが好ましく、-0.100eV以上であることがより好ましい。なお、マイナスの値は、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが、上記赤外線吸収剤の少なくとも1種のHOMOよりも高くなることを意味する。
また、UV耐刷性及び耐薬品性の観点から、上記電子受容型重合開始剤のLUMO-上記赤外線吸収剤の少なくとも1種のLUMOの値は、1.00eV以下であることが好ましく、0.700eV以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、上記電子受容型重合開始剤のLUMO-上記赤外線吸収剤の少なくとも1種のLUMOの値は、-0.200eV以上であることが好ましく、-0.100eV以上であることがより好ましい。
また、同様の観点から、上記電子受容型重合開始剤のLUMO-上記赤外線吸収剤の少なくとも1種のLUMOの値は、1.00eV~-0.200eVであることが好ましく、0.700eV~-0.100eVであることがより好ましい。なお、マイナスの値は、上記赤外線吸収剤の少なくとも1種のLUMOが、上記電子受容型重合開始剤のLUMOよりも高くなることを意味する。
【0205】
〔重合性化合物〕
本開示における画像記録層は、重合性化合物を含むことが好ましい。
本開示において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物をいう。
重合性基としては、特に限定されず公知の重合性基であればよいが、エチレン性不飽和基であることが好ましい。また、重合性基としては、ラジカル重合性基であってもカチオン重合性基であってもよいが、ラジカル重合性基であることが好ましい。
ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルフェニル基、ビニル基等が挙げられ、反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性化合物の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は、50以上2,500未満であることが好ましい。
【0206】
本開示に用いられる重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であることがより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態をもつ。
中でも、上記重合性化合物としては、UV耐刷性の観点から、3官能以上の重合性化合物を含むことが好ましく、7官能以上の重合性化合物を含むことがより好ましく、10官能以上の重合性化合物を含むことが更に好ましい。また、上記重合性化合物は、得られる平版印刷版におけるUV耐刷性の観点から、3官能以上(好ましくは7官能以上、より好ましくは10官能以上)のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、3官能以上(好ましくは7官能以上、より好ましくは10官能以上)の(メタ)アクリレート化合物を含むことが更に好ましい。
【0207】
また、上記重合性化合物としては、機上現像性、及び、汚れ抑制性の観点から、2官能以下の重合性化合物を含むことが好ましく、2官能重合性化合物を含むことがより好ましく、2官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
2官能以下の重合性化合物(好ましくは2官能重合性化合物)の含有量は、耐刷性、機上現像性、及び、汚れ抑制性の観点から、上記画像記録層における重合性化合物の全質量に対し、5質量%~100質量%であることが好ましく、10質量%~100質量%であることがより好ましく、15質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0208】
<<オリゴマー>>
画像記録層に含まれる重合性化合物としては、オリゴマーである重合性化合物(以下、単に「オリゴマー」ともいう。)を含有することが好ましい。
本開示においてオリゴマーとは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が600以上10,000以下であり、かつ、重合性基を少なくとも1つ含む重合性化合物を表す。
耐薬品性、UV耐刷性に優れる観点から、オリゴマーの分子量としては、1,000以上5,000以下であることが好ましい。
【0209】
また、UV耐刷性を向上させる観点から、1分子のオリゴマーにおける重合性基数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましい。
また、オリゴマーにおける重合性基の上限値は、特に制限はないが、重合性基の数は20以下であることが好ましい。
【0210】
UV耐刷性、及び、機上現像性の観点から、オリゴマーとしては、重合性基の数が7以上であり、かつ、分子量が1,000以上10,000以下であることが好ましく、重合性基の数が7以上20以下であり、かつ、分子量が1,000以上5,000以下であることがより好ましい。
なお、オリゴマーを製造する過程で生じる可能性のある、ポリマー成分を含有していてもよい。
【0211】
UV耐刷性、視認性、及び、機上現像性の観点から、オリゴマーは、ウレタン結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物及びエポキシ残基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、ウレタン結合を有する化合物を有することが好ましい。
本開示においてエポキシ残基とは、エポキシ基により形成される構造を指し、例えば酸基(カルボン酸基等)とエポキシ基との反応により得られる構造と同様の構造を意味する。
【0212】
オリゴマーの例であるウレタン結合を有する化合物としては、例えば、下記式(Ac-1)又は式(Ac-2)で表される基を少なくとも有する化合物であることが好ましく、下記式(Ac-1)で表される基を少なくとも有する化合物であることがより好ましい。
【0213】
【0214】
式(Ac-1)及び式(Ac-2)中、L1~L4はそれぞれ独立に、炭素数2~20の二価の炭化水素基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
L1~L4としては、それぞれ独立に、炭素数2~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることが更に好ましい。また、上記アルキレン基は、分岐又は環構造を有していてもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
【0215】
式(Ac-1)又は式(Ac-2)における波線部はそれぞれ独立に、下記式(Ae-1)又は式(Ae-2)で表される基における波線部と直接結合することが好ましい。
【0216】
【0217】
式(Ae-1)及び式(Ae-2)中、Rはそれぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、波線部分は式(Ac-1)及び式(Ac-2)における波線部との結合位置を表す。
【0218】
また、ウレタン結合を有する化合物として、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、の反応により得られるポリウレタンに、高分子反応により重合性基を導入した化合物を用いてもよい。
例えば、酸基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られたポリウレタンオリゴマーに、エポキシ基及び重合性基を有する化合物を反応させることにより、ウレタン結合を有する化合物を得てもよい。
【0219】
オリゴマーの例であるエステル結合を有する化合物における重合性基の数は、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましい。
【0220】
オリゴマーの例であるエポキシ残基を有する化合物としては、化合物内にヒドロキシ基を含む化合物が好ましい。
また、エポキシ残基を有する化合物における重合性基の数は、2~6であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
上記エポキシ残基を有する化合物としては、例えば、エポキシ基を有する化合物にアクリル酸を反応することにより得ることができる。
【0221】
オリゴマーの具体例を下記表に示すが、本開示において用いられるオリゴマーはこれに限定されるものではない。
オリゴマーとしては、市販品を用いてもよく、UA510H、UA-306H、UA-306I、UA-306T(いずれも共栄社化学(株)製)、UV-1700B、UV-6300B、UV7620EA(いずれも日本合成化学工業(株)製)、U-15HA(新中村化学工業(株)製)、EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL885、EBECRYL800、EBECRYL3416、EBECRYL860(いずれもダイセルオルネクス(株)製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0222】
オリゴマーの含有量は、耐薬品性、UV耐刷性、及び機上現像カスの抑制性を向上させる観点から、画像記録層における重合性化合物の全質量に対し、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましい。
【0223】
<<低分子重合性化合物>>
重合性化合物は、上記オリゴマー以外の重合性化合物を更に含んでいてもよい。
オリゴマー以外の重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、低分子重合性化合物であることが好ましい。低分子重合性化合物としては、単量体、2量体、3量体又は、それらの混合物などの化学的形態であってもよい。
また、低分子重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、エチレン性不飽和基を3つ以上有する重合性化合物、及びイソシアヌル環構造を有する重合性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一方の重合性化合物であることが好ましい。
【0224】
本開示において低分子重合性化合物とは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)50以上600未満の重合性化合物を表す。
低分子重合性化合物の分子量としては、耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、100以上600未満であることが好ましく、300以上600未満であることがより好ましく、400以上600未満であることが更に好ましい。
【0225】
重合性化合物が、オリゴマー以外の重合性化合物として低分子重合性化合物を含む場合(2種以上の低分子重合性化合物を含む場合はその合計量)、耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性の観点から、上記オリゴマーと低分子重合性化合物との比(オリゴマー/低分子重合性化合物)は、質量基準で、10/1~1/10であることが好ましく、10/1~3/7であることがより好ましく、10/1~7/3であることが更に好ましい。
【0226】
また、低分子重合性化合物としては、国際公開第2019/013268号の段落0082~0086に記載の重合性化合物も好適に用いることができる。
【0227】
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、任意に設定できる。
中でも、画像記録層は、UV耐刷性の観点から、2種以上の重合性化合物を含むことが好ましい。
重合性化合物の含有量(重合性化合物を2種以上含む場合は、重合性化合物の総含有量)は、画像記録層の全質量に対して、5質量%~75質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、15質量%~60質量%であることが更に好ましい。
【0228】
〔式(Ph)で表される化合物〕
画像記録層は、発色性の観点から、下記式(Ph)で表される化合物を更に含んでいてもよい。
【0229】
【0230】
式(Ph)中、XPはO、S又はNHを表し、YPはN又はCHを表し、RP1は水素原子又はアルキル基を表し、RP2及びRP3はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキル基、アリール基、アシルチオ基又はアシル基を表し、mp及びnpはそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。
【0231】
上記XPとしては、S又はNHが好ましく、Sがより好ましい。
上記YPとしては、Nが好ましい。
Rp1としては、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0232】
Rp2とRp3としては、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のハロゲン原子、炭素数1~20のアルキルチオ基、フェニルチオ基、炭素数1~20のアルコキシ基、フェノキシ基、炭素数1~20のアルキル基、フェニル基、アセチルチオ基、又はアセチル基が好ましく、塩素原子、炭素数1又は2のアルキルチオ基、又はアセチル基がより好ましい。これらの基は、1つ以上の置換基を有していてもよい。
【0233】
mpおよびnpとしては、それぞれ独立に、0、1、又は2であることが好ましい。mp及びnpの両方が0であってもよいし、mpが0で、npが1又は2であってもよい。
【0234】
式(Ph)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0235】
【0236】
式(Ph)で表される化合物は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
式(Ph)で表される化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.5質量%~3質量%がより好ましい。
【0237】
〔式(I)で表される構成単位を有する重合体〕
画像記録層は、下記式(I)で表される構成単位を有する重合体(I)を更に含んでいてもよい。
以下、式(I)で表される構成単位を有する重合体(I)を、単に、「重合体(I)」ともいう。
【0238】
【0239】
式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R13は水素原子又は一価の置換基を表し、L11及びL12はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Rhはケイ素原子を2個以上含む置換基を表す。
【0240】
R11及びR12で表されるアルキル基は、例えば、炭素数1~18の直鎖状、炭素数3~18の分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
R11及びR12としては、いずれも、水素原子であることが好ましい。
【0241】
R13で表される一価の置換基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、炭素数3~18の分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、炭素数2~12のアルケニル基が挙げられる。上記アルケニル基としては、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、炭素数6~12のアリール基が挙げられる。上記アリール基としては、具体的には、フェニル基、α-メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
R13としては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0242】
L11で表される二価の連結基は、-C(=O)-O-(所謂、エステル結合)又は-C(=O)-NH-が挙げられる。
なお、L11で表される二価の連結基は、エステル結合である-C(=O)-O-であることが好ましい。
【0243】
L12で表される二価の連結基は、L11とRhとを連結しうる基であれば、特に制限はない。L12で表される二価の連結基としては、アルキレン基が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数2~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることがより好ましい。
【0244】
Rhで表されるケイ素原子を2個以上含む置換基は、置換基を構成する原子団中に、ケイ素原子が2個以上含まれていれば、特に制限はない。ケイ素原子を2個以上含む置換基は、機上現像性の観点から、ケイ素原子を、ケイ素-酸素結合(Si-O結合)として含むことが好ましい。ケイ素原子を2個以上含む置換基は、ケイ素-酸素結合を2個以上有することが好ましく、3個以上有することが好ましく、3個~12個有することが好ましい。ケイ素原子を2個以上含む置換基は、ケイ素-酸素結合をポリシロキサン構造として含むことが好ましい。
また、ケイ素原子を2個以上含む置換基は、機上現像性の観点から、分岐構造を有することが好ましく、ケイ素原子を中心に分岐する分岐構造を有することがより好ましい。
【0245】
具体的には、式(I)におけるRhは、下記式(a1)で表される構造を2個以上有する基であることが好ましい。
【0246】
【0247】
上記式(a1)中、*は結合位置を表し、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルキレンアリール基を表す。
【0248】
R1、R2、及びR3で表されるアルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、炭素数3~18の分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
R1、R2、及びR3で表されるアルケニル基としては、例えば、炭素数2~12のアルケニル基が挙げられる。上記アルケニル基としては、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
R1、R2、及びR3で表されるアリール基としては、例えば、炭素数6~12のアリール基が挙げられる。上記アリール基としては、具体的には、フェニル基、α-メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
R1、R2、及びR3で表されるアルキレンアリール基としては、例えば、炭素数7~30のアルキレンアリール基が挙げられる。
【0249】
式(a1)中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立にアルキル基であることが好ましく、全て同じアルキル基であることがより好ましく、全て炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、全てメチル基であることが特に好ましい。
【0250】
ケイ素原子を2個以上含む置換基は、上記式(a1)で表される構造を3個以上含む基であることが好ましく、3個~6個含む基であることがより好ましい。
【0251】
ケイ素原子を2個以上含む置換基は、下記式(a2)で表される基であることが好ましい。
【化40】
【0252】
上記式(a2)中、*は、結合位置を表し、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルキレンアリール基を表す。
式(a2)におけるR1、R2、及びR3は、上記式(a1)におけるR1、R2、及びR3と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0253】
式(I)で表される構成単位は、下記式(a3)で表される構成単位であることが好ましい。
【0254】
【0255】
式(a3)中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルキレンアリール基を表し、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R6は水素原子又は一価の置換基を表し、L1はp+1価の連結基を表し、pは2~12の整数を表す。
【0256】
式(a3)におけるR1、R2、及びR3は、上記式(a1)におけるR1、R2、及びR3と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0257】
R4及びR5で表されるアルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、炭素数3~18の分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
R4及びR5としては、いずれも、水素原子であることが好ましい。
【0258】
R6で表される一価の置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基が挙げられる。上記アルキル基、アルケニル基、及びアリール基は、R1、R2、及びR3で表されるアルキル基、アルケニル基、及びアリール基とそれぞれ同様であり、好ましい態様も同様である。
R6としては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0259】
L1で表されるp+1価の連結基は、例えば、炭素数1~10のp+1価の炭化水素基が挙げられる。p+1価の連結基としては、炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている炭化水素基も好適に用いられる。炭化水素基としては、飽和炭化水素基が好ましい。ここで、炭素原子の一部を置換するヘテロ原子としては、例えば、ケイ素原子、酸素原子、及び窒素原子が挙げられ、中でも、ケイ素原子又は酸素原子が好ましい。
L1で表されるp+1価の連結基は、分岐状の飽和炭化水素基であることが好ましく、分岐状の飽和炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子(好ましくはケイ素原子及び酸素原子)で置換されている分岐状の飽和炭化水素基も好ましい。
pは、2~12の整数であり、3~12の整数が好ましい。
【0260】
式(I)で表される構成単位を形成するためのモノマー単位の具体例としては、以下のK-1~K-12で表される単量体(モノマー)が挙げられる。式(I)で表される構成単位を形成するモノマー単位の具体例は、これに限定されるものではない。
以下の構造中、nは2~1000の整数である。
【0261】
【0262】
重合体(I)は、親水性基を側鎖に有する構成単位を更に有することが好ましい。親水性基を側鎖に有する構成単位としては、ポリアルキレンオキシ基を側鎖に有する構成単位であることが好ましい。つまり、重合体(I)は、ポリアルキレンオキシ基を側鎖に有する構成単位を更に有する共重合体であることが好ましい。
【0263】
重合体(I)における親水性基を側鎖に有する構成単位は、下記式(a4)で表される構成単位であることが好ましい。
【0264】
【0265】
式(a4)中、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R9は水素原子又は一価の置換基を表し、L2は-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-を表し、L3は単結合又は二価の連結基を表し、Xは親水性基を表す。
【0266】
R7及びR8で表されるアルキル基は、上記式(a3)におけるR4及びR5で表されるアルキル基と同様であり、好ましい態様も同様である。
R9で表される一価の置換基は、上記式(a3)におけるR6で表される一価の置換基と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0267】
L3で表される二価の連結基は、L2とXとを連結しうる基であれば、特に制限はない。L3で表される二価の連結基としては、アルキレン基が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数2~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることがより好ましい。
【0268】
Xで表される親水性基は、水酸基、リン酸基、ポリアルキレンオキシ基、又はこれらを2つ以上組み合わせた基等が挙げられる。ここで、ポリアルキレンオキシ基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリブチレンオキシ基、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0269】
親水性基を側鎖に有する構成単位を形成するためのモノマー単位の具体例としては、H-1~H-25で表される単量体(モノマー)が挙げられる。親水性基を側鎖に有する構成単位を形成するモノマー単位の具体例は、これに限定されるものではない。
以下の構造中、n及びmはそれぞれ独立に2~100の整数である。
以下の構造中、「random」との記載は、複数種のポリアルキレンオキシ基がランダムで並んでいることを意味する。
【0270】
【0271】
重合体(I)は、上記式(I)で表される構成単位(b1)を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
重合体(I)において、式(I)で表される構成単位(b1)の含有量は、重合体(I)の質量に対して、100質量%であってもよく、15質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましく、25質量%~50質量%であることが更に好ましい。
また、重合体(I)は、親水性基を側鎖に有する構成単位(b2)を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
重合体(I)において、親水性基を側鎖に有する構成単位(b2)の含有量は、重合体(I)の質量に対して、30質量%~85質量%であることが好ましく、40質量%~80質量%であることがより好ましく、50質量%~75質量%であることが更に好ましい。
【0272】
なお、重合体(I)は、更に他の構成単位を含んでいてもよい。
他の構成単位としては、例えば、カルボン酸基を側鎖に有する構成単位が挙げられる。カルボン酸基を側鎖に有する構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、イタコン酸誘導体等が挙げられる。カルボン酸基を側鎖に有する構成単位は、既述の親水性基を側鎖に有する構成単位とは別の構成単位として含まれることが好ましい。
他の構成単位としては、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数は1~24)、スチレン誘導体、無水マレイン酸、無水マレイミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルエーテル誘導体、アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。
重合体(I)において、他の構成単位の含有量は、重合体(I)の質量に対して、0質量%~20質量%であることが好ましい。
【0273】
重合体(I)の重量平均分子量としては、面状に優れた画像記録層を得る観点から、5000~100000が好ましく、8000~60000がより好ましい。
【0274】
重合体(I)の具体例としては、以下のP-1~P-11が挙げられる。重合体(I)の具体例としては、これらの限定されるものではない。
【0275】
【0276】
重合体(I)の含有量は、画像記録層用塗布液の全質量に対し、0.001質量%~0.1質量%とすることが好ましく、0.002質量%~0.01質量%とすることがより好ましい。
【0277】
〔オイル剤〕
画像記録層は、オイル剤を更に含んでいてもよい。
本開示におけるオイル剤は、80℃において液体状態であり、かつ同じ質量の水と混合した際に混和せず分離する疎水的な化合物をいうものとする。
なお、2種以上のオイル剤を用いる場合は、融点が80℃以上の化合物を含んでいても、2種以上のオイル剤を混合した状態において、80℃において液体状態であればよい。
また、オイル剤は、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、分子量1,000未満の化合物であることが好ましく、分子量200~800の化合物であることがより好ましく、分子量300~500の化合物であることが特に好ましい。
更に、オイル剤は、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、1気圧における沸点が200℃以上の化合物であることが好ましく、1気圧における沸点が250℃以上の化合物であることがより好ましく、1気圧における沸点が300℃以上の化合物であることが更に好ましく、1気圧における沸点が400℃以上500℃以下の化合物であることが特に好ましい。
なお、本開示において、特に断りなく「沸点」という場合は、1気圧における沸点であるものとする。
また、オイル剤の1気圧における融点は、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、50℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましく、-200℃以上25℃以下であることが特に好ましい。
なお、本開示において、特に断りなく「融点」という場合は、1気圧における融点であるものとする。
【0278】
オイル剤としては、リン酸エステル化合物、芳香族炭化水素化合物、グリセリド化合物、脂肪酸化合物、芳香族エステル化合物等が挙げられる。
中でも、UV耐刷性、着肉性、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、リン酸エステル化合物、芳香族炭化水素化合物、グリセリド化合物、芳香族エステル化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましく、リン酸エステル化合物、芳香族炭化水素化合物、及び、グリセリド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物がより好ましく、リン酸エステル化合物、及び、芳香族炭化水素化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましく、リン酸エステル化合物が特に好ましい。
【0279】
リン酸エステル化合物としては、UV耐刷性、着肉性、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、リン酸トリエステル化合物が好ましく、リン酸トリアリールエステル化合物がより好ましく、リン酸トリクレジルであることが更に好ましく、リン酸トリクレジルのオルト体、メタ体及びパラ体の3種のうちの2種以上の混合物が特に好ましい。
芳香族炭化水素化合物としては、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、芳香環を2以上有する化合物が好ましく、縮環していないベンゼン環を2以上有する化合物であることがより好ましい。
グリセリド化合物としては、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、トリグリセリド化合物が好ましく、脂肪油であることがより好ましく、ひまし油等の25℃で液体である脂肪油が特に好ましい。
脂肪酸化合物としては、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数8~30の不飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数12~24の不飽和脂肪酸が特に好ましい。
芳香族エステル化合物としては、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、芳香族ジエステル化合物が好ましく、脂肪族環を有する芳香族ジエステル化合物がより好ましい。
脂肪族エステル化合物としては、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、分岐アルキル基を有する脂肪族エステル化合物が好ましく、分岐アルキル基を有し、かつ炭素数10~24である脂肪族エステル化合物がより好ましい。
【0280】
オイル剤としては、UV耐刷性、着肉性、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、リン原子を有するオイル剤を含むことが好ましく、リン原子を有するオイル剤であることがより好ましい。
また、オイル剤としては、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、芳香環を有するオイル剤を含むことが好ましく、芳香環を2以上有するオイル剤を含むことがより好ましく、縮環していないベンゼン環を2以上有するオイル剤を含むことが特に好ましい。
【0281】
オイル剤のclogP値は、UV耐刷性、着肉性、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、5.0以上であることが好ましく、5.50以上であることがより好ましく、5.50以上10.0以下であることが更に好ましく、5.60以上7.00以下であることが特に好ましい。
clogP値とは、1-オクタノールと水との分配係数Pの常用対数logPを計算によって求めた値である。clogP値の計算に用いる方法やソフトウェアについては公知の物を用いることができるが、特に断らない限り、本開示ではCambridge soft社のChemBioDraw Ultra 12.0に組み込まれたClogPプログラムを用いることとする。
【0282】
オイル剤として具体的には、例えば、リン酸トリクレジル、ジメチル(1-フェニルエチル)ベンゼン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、ジシクロヘキシルフタレート、ひまし油(castor oil)、α-リノレン酸、リン酸トリ(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0283】
オイル剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよいが、上記画像記録層は、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、異なる構造を有する2種以上のオイル剤を含むことが好ましい。
オイル剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.0001質量%~10.0質量%が好ましく、0.0002質量%~1.0質量%がより好ましく、0.0005質量%~0.5質量%が更に好ましく、0.001質量%~0.05質量%が特に好ましい。
【0284】
〔粒子〕
画像記録層は、粒子を含むことが好ましい。
粒子としては、有機粒子であっても、無機粒子であってもよいが、UV耐刷性の観点から、有機粒子を含むことが好ましく、ポリマー粒子を含むことがより好ましい。
無機粒子としては、公知の無機粒子を用いることができ、シリカ粒子、チタニア粒子等の金属酸化物粒子を好適に用いることができる。
【0285】
ポリマー粒子は、熱可塑性樹脂粒子、熱反応性樹脂粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)よりなる群から選ばれることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子又はミクロゲルが好ましい。特に好ましい実施形態では、ポリマー粒子は少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む。このようなポリマー粒子の存在により、露光部の耐刷性及び未露光部の機上現像性を高める効果が得られる。
また、ポリマー粒子は、UV耐刷性、及び、機上現像性の観点から、熱可塑性樹脂粒子であることが好ましい。
【0286】
熱可塑性樹脂粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、同9-131850号公報、同9-171249号公報、同9-171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー粒子が好ましい。
熱可塑性樹脂粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、又は、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。熱可塑性樹脂粒子の平均粒径は0.01μm~3.0μmが好ましい。
【0287】
熱反応性樹脂粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性ポリマー粒子は熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0288】
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好ましく挙げられる。
【0289】
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報、特開2001-277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部をマイクロカプセルに内包させたものである。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
【0290】
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、得られる平版印刷版原版の感度、及び、得られる平版印刷版の耐刷性の観点から好ましい。
【0291】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
【0292】
また、ポリマー粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性、耐汚れ性及び保存安定性の観点から、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られるものが好ましい。
上記多価フェノール化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンゼン環を複数有している化合物が好ましい。
上記活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又は、ポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物がより好ましく、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましい。
分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる樹脂の粒子としては、特開2012-206495号公報の段落0032~0095に記載のポリマー粒子が好ましく挙げられる。
【0293】
更に、ポリマー粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含むことが好ましい。
上記疎水性主鎖としては、アクリル樹脂鎖が好ましく挙げられる。
上記ペンダントシアノ基の例としては、-[CH2CH(C≡N)]-又は-[CH2C(CH3)(C≡N)]-が好ましく挙げられる。
また、上記ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又は、これらの組み合わせから容易に誘導することができる。
また、上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシド構造の繰り返し数は、10~100であることが好ましく、25~75であることがより好ましく、40~50であることが更に好ましい。
疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む樹脂の粒子としては、特表2008-503365号公報の段落0039~0068に記載のものが好ましく挙げられる。
【0294】
また、上記ポリマー粒子は、UV耐刷性、及び、機上現像性の観点から、親水性基を有することが好ましい。
上記親水性基としては、親水性を有する構造であれば、特に制限はないが、カルボキシ基等の酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ポリアルキレンオキシド構造等が挙げられる。
中でも、機上現像性、及び、UV耐刷性の観点から、ポリアルキレンオキシド構造が好ましく、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、又は、ポリエチレン/プロピレンオキシド構造がより好ましい。
また、機上現像性、及び、機上現像時の現像カス抑制性の観点からは、上記ポリアルキレンオキシド構造として、ポリプロピレンオキシド構造を有することが好ましく、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有することがより好ましい。
また、上記親水性基としては、耐刷性、着肉性、及び、機上現像性の観点から、シアノ基を有する構成単位、又は、下記式Zで表される基を含むことが好ましく、下記式(AN)で表される構成単位、又は、下記式Zで表される基を含むことがより好ましく、下記式Zで表される基を含むことが特に好ましい。
*-Q-W-Y 式Z
式Z中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0295】
【0296】
式(AN)中、RANは、水素原子又はメチル基を表す。
【0297】
上記ポリマー粒子に含まれるポリマーは、UV耐刷性の観点から、シアノ基を有する化合物により形成される構成単位を含むことが好ましい。
シアノ基は、通常、シアノ基を有する化合物(モノマー)を用いて、シアノ基を含む構成単位として樹脂に導入されることが好ましい。シアノ基を有する化合物としては、アクリロニトリル化合物が挙げられ、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。
シアノ基を有する構成単位としては、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリロニトリルにより形成される構成単位、すなわち、上記式(AN)で表される構成単位がより好ましい。
上記ポリマーが、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーを含む場合、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーにおけるシアノ基を有する構成単位、好ましくは上記式(AN)で表される構成単位の含有量は、UV耐刷性の観点から、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーの全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~60質量%であることが特に好ましい。
【0298】
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、及び、機上現像性の観点から、上記式Zで表される基を有するポリマー粒子を含むことが好ましい。
【0299】
上記式ZにおけるQは、炭素数1~20の二価の連結基であることが好ましく、炭素数1~10の二価の連結基であることがより好ましい。
また、上記式ZにおけるQは、アルキレン基、アリーレン基、エステル結合、アミド結合、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であることがより好ましい。
【0300】
上記式ZのWにおける親水性構造を有する二価の基は、ポリアルキレンオキシ基、又は、ポリアルキレンオキシ基の一方の末端に-CH2CH2NRW-が結合した基であることが好ましい。なお、RWは、水素原子又はアルキル基を表す。
上記式ZのWにおける疎水性構造を有する二価の基は、-RWA-、-O-RWA-O-、-RWN-RWA-NRW-、-OC(=O)-RWA-O-、又は、-OC(=O)-RWA-O-であることが好ましい。なお、RWAはそれぞれ独立に、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基、炭素数6~120のハロアルキレン基、炭素数6~120のアリーレン基、炭素数6~120のアルカーリレン基(アルキルアリール基から水素原子を1つ除いた二価の基)、又は、炭素数6~120のアラルキレン基を表す。
【0301】
上記式ZのYにおける親水性構造を有する一価の基は、-OH、-C(=O)OH、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基、又は、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基の他方の末端に-CH2CH2N(RW)-が結合した基であることが好ましい。
上記式ZのYにおける疎水性構造を有する一価の基は、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、炭素数6~120のハロアルキル基、炭素数6~120のアリール基、炭素数7~120のアルカーリル基(アルキルアリール基)、炭素数7~120のアラルキル基、-ORWB、-C(=O)ORWB、又は、-OC(=O)RWBであることが好ましい。RWBは、炭素数6~20を有するアルキル基を表す。
【0302】
上記式Zで表される基を有するポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、及び、機上現像性の観点から、Wが親水性構造を有する二価の基であることがより好ましく、Qがフェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であり、Wは、ポリアルキレンオキシ基であり、Yが、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基であることがより好ましい。
【0303】
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、及び、機上現像性の観点から、重合性基を有するポリマー粒子を含むことが好ましく、粒子表面に重合性基を有するポリマー粒子を含むことがより好ましい。
更に、上記ポリマー粒子は、耐刷性の観点から、親水性基及び重合性基を有するポリマー粒子を含むことが好まし
上記重合性基は、カチオン重合性基であっても、ラジカル重合性基であってもよいが、反応性の観点からは、ラジカル重合性基であることが好ましい。
上記重合性基としては、重合可能な基であれば特に制限はないが、反応性の観点から、エチレン性不飽和基が好ましく、ビニルフェニル基(スチリル基)、(メタ)アクリロキシ基、又は、(メタ)アクリルアミド基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基が特に好ましい。
また、重合性基を有するポリマー粒子におけるポリマーは、重合性基を有する構成単位を有することが好ましい。
更に、高分子反応によりポリマー粒子表面に重合性基を導入してもよい。
【0304】
また、上記画像記録層は、UV耐刷性、及び、機上現像性の観点から、上記ポリマー粒子として、分散性基を有する付加重合型樹脂粒子を含むことが好ましく、上記分散性基が、上記式Zで表される基を含むことがより好ましい。
【0305】
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、機上現像性、及び、機上現像時の現像カス抑制性の観点から、ウレア結合を有する樹脂を含むことが好ましく、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を有する樹脂を含むことがより好ましく、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を有し、かつポリオキシアルキレン構造として、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有する樹脂を含むことが特に好ましい。また、上記ウレア結合を有する樹脂を含む粒子は、ミクロゲルであることが好ましい。
【0306】
【0307】
式(Iso)中、nは0~10の整数を表す。
【0308】
上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水との反応の一例としては、下記に示す反応が挙げられる。なお、下記の例は、n=0、4,4-異性体を使用した例である。
下記に示すように、上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを反応させると、水によりイソシアネート基の一部が加水分解し、アミノ基が生じ、生じたアミノ基とイソシアネート基とが反応し、ウレア結合が生成し、二量体が形成される。また、下記反応が繰り返され、ウレア結合を有する樹脂が形成される。
また、下記反応において、アルコール化合物、アミン化合物等のイソシアネート基と反応性を有する化合物(活性水素を有する化合物)を添加することにより、アルコール化合物、アミン化合物等の構造をウレア結合を有する樹脂に導入することもできる。
上記活性水素を有する化合物としては、上述したミクロゲルにおいて記載したものが好ましく挙げられる。
【0309】
【0310】
また、上記ウレア結合を有する樹脂は、エチレン性不飽和基を有することが好ましく、下記式(PETA)で表される基を有することがより好ましい。
【0311】
【0312】
式(PETA)中、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
【0313】
また、上記画像記録層は、UV耐刷性、及び、機上現像性の観点から、熱可塑性樹脂粒子を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、それらの共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂はラテックス状態であってもよい。
本開示に係る熱可塑性樹脂は、後述する露光工程において生成された熱により、熱可塑性樹脂が溶融又は軟化することで、記録層を形成する疎水性の膜の一部又は全部を形成する樹脂であることが好ましい。
【0314】
上記熱可塑性樹脂としては、インキ着肉性及びUV耐刷性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、及び、シアノ基を有する構成単位を有する樹脂A含むことが好ましい。
【0315】
熱可塑性樹脂に含まれる樹脂Aは、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を有することが好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、芳香環にビニル基が結合した構造を有する化合物であればよいが、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物等が挙げられ、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、及びp-メトキシ-β-メチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましく挙げられる。
ビニルナフタレン化合物としては、1-ビニルナフタレン、メチル-1-ビニルナフタレン、β-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メトキシ-1-ビニルナフタレン等が挙げられ、1-ビニルナフタレンが好ましく挙げられる。
【0316】
また、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位としては、下記式A1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
【0317】
【0318】
式A1中、RA1及びRA2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Arは芳香環基を表し、RA3は置換基を表し、nは0以上Arの最大置換基数以下の整数を表す。
式A1中、RA1及びRA2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、いずれも水素原子であることが更に好ましい。
式A1中、Arはベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
式A1中、RA3はアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であることがより好ましく、メチル基又はメトキシ基であることが更に好ましい。
式A1中、RA3が複数存在する場合、複数のRA3は同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
式A1中、nは0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0319】
熱可塑性樹脂に含まれる樹脂Aにおいて、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量は、インキ着肉性の観点から、後述するシアノ基を有する構成単位の含有量よりも多いことが好ましく、熱可塑性樹脂の全質量に対し、15質量%~85質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが更に好ましい。
【0320】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、シアノ基を有する構成単位を含むことが好ましい。
シアノ基は、通常、シアノ基を有する化合物(モノマー)を用いて、シアノ基を含む構成単位として樹脂Aに導入されることが好ましい。シアノ基を有する化合物としては、アクリロニトリル化合物が挙げられ、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。
シアノ基を有する構成単位としては、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリロニトリルにより形成される構成単位がより好ましい。
【0321】
また、シアノ基を有する化合物により形成される構成単位としては、下記式B1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
【0322】
【0323】
式B1中、RB1は水素原子又はアルキル基を表す。
式B1中、RB1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0324】
樹脂Aにおけるシアノ基を有する構成単位の含有量は、インキ着肉性の観点から、上記芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量よりも少ないことが好ましく、樹脂Aの全質量に対し、55質量%~90質量%であることがより好ましく、60質量%~85質量%であることがより好ましい。
【0325】
また、熱可塑性樹脂に含まれる樹脂Aが芳香族ビニル化合物により形成される構成単位及びシアノ基を有する構成単位を含む場合、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位及びシアノ基を有する構成単位の含有量比(芳香族ビニル化合物により形成される構成単位:シアノ基を有する構成単位)としては、質量基準で5:5~9:1であることが好ましく、より好ましくは、6:4~8:2である。
【0326】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、UV耐刷性及び耐薬品性の観点から、N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位を更に有することが好ましい。
N-ビニル複素環化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロール、N-ビニルフェノチアジン、N-ビニルコハク酸イミド、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルカプロラクタム、及びN-ビニルイミダゾールが挙げられ、N-ビニルピロリドンが好ましい。
【0327】
また、N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位としては、下記式C1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
【0328】
【0329】
式C1中、ArNは窒素原子を含む複素環構造を表し、ArN中の窒素原子が*で示した炭素原子と結合する。
式C1中、ArNにより表される複素環構造は、ピロリドン環、カルバゾール環、ピロール環、フェノチアジン環、スクシンイミド環、フタルイミド環、カプロラクタム環、及びイミダゾール環であることが好ましく、ピロリドン環であることがより好ましい。
また、ArNにより表される複素環構造は公知の置換基を有していてもよい。
【0330】
樹脂Aにおける、N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位の含有量は、樹脂Aの全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましい。
【0331】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、酸性基を有する構成単位を含有してもよいが、機上現像性及びインキ着肉性の観点からは、酸性基を有する構成単位を含有しないことが好ましい。
具体的には、熱可塑性樹脂における酸性基を有する構成単位の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。上記含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
また、熱可塑性樹脂の酸価は、160mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以下であることがより好ましく、40mgKOH/g以下であることが更に好ましい。上記酸価の下限は特に限定されず、0mgKOH/gであってもよい。
本開示において、酸価はJIS K0070:1992に準拠した測定法により求められる。
【0332】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、インキ着肉性の観点から、疎水性基を含む構成単位を含有してもよい。
上記疎水性基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
疎水性基を含む構成単位としては、アルキル(メタ)アクリレート化合物、アリール(メタ)アクリレート化合物、又は、アラルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位がより好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アリール(メタ)アクリレート化合物におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。また、上記アリール基は公知の置換基を有していてもよい。アリール(メタ)アクリレート化合物としては、フェニル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
上記アラルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。また、上記アラルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。アラルキル(メタ)アクリレート化合物としては、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
【0333】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aにおける、疎水性基を有する構成単位の含有量は、樹脂Aの全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0334】
上記熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、親水性基を有することが好ましい。
親水性基としては、親水性を有する構造であれば、特に制限はないが、カルボキシ基等の酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ポリアルキレンオキシド構造等が挙げられる。
上記親水性基としては、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、ポリアルキレンオキシド構造を有する基、ポリエステル構造を有する基、又は、スルホン酸基であることが好ましく、ポリアルキレンオキシド構造を有する基、又は、スルホン酸基であることがより好ましく、ポリアルキレンオキシド構造を有する基であることが更に好ましい。
【0335】
上記ポリアルキレンオキシド構造としては、機上現像性の観点から、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、又は、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造であることが好ましい。
また、機上現像性の観点からは、上記親水性基の中でもポリアルキレンオキシド構造として、ポリプロピレンオキシド構造を有することが好ましく、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有することがより好ましい。
上記ポリアルキレンオキシド構造におけるアルキレンオキシド構造の数は、機上現像性の観点から、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、5~200であることが更に好ましく、8~150であることが特に好ましい。
【0336】
また、機上現像性の観点から、上記親水性基として、上記式Zで表される基が好ましい。
【0337】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、UV耐刷性、耐薬品性及び機上現像性の向上の観点から、親水性基を有する構成単位を含むことが好ましい。
上記親水性基としては、-OH、-CN、-CONR1R2、-NR2COR1(R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を表す。R1とR2とは結合して環を形成してもよい。)-NR3R4、-N+R3R4R5X-(R3~R5は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基を表し、X-はカウンターアニオンを表す)、下記式POにより表される基、上記の熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂が好ましく有する親水性基等が挙げられる。
これら親水性基の中でも、-CONR1R2又は式POにより表される基が好ましく、式POにより表される基がより好ましい。
【0338】
【0339】
式PO中、LPはそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、RPは水素原子又はアルキル基を表し、nは1~100の整数を表す。
式PO中、LPはそれぞれ独立に、エチレン基、1-メチルエチレン基又は2-メチルエチレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
式PO中、RPは水素原子又は炭素数1~18のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
式PO中、nは1~10の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましい。
【0340】
樹脂Aにおける、親水性基を有する構成単位の含有量は、樹脂Aの全質量に対し、5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0341】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、その他の構成単位を更に含有してもよい。その他の構成単位としては、上述の各構成単位以外の構成単位を特に限定なく含有することができ、例えば、アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物等により形成される構成単位が挙げられる。
アクリルアミド化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル、などが挙げられる。
【0342】
熱可塑性樹脂における、その他の構成単位の含有量は、熱可塑性樹脂の全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0343】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、UV耐刷性及びインキ着肉性の観点から、60℃~150℃であることが好ましく、80℃~140℃であることがより好ましく、90℃~130℃であることが更に好ましい。
熱可塑性樹脂粒子が2種以上の熱可塑性樹脂を含む場合には、後述するFOX式により求められた値を、熱可塑性樹脂のガラス転移温度という。
【0344】
本開示において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行なう。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される樹脂のTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し,示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を作成する。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
【0345】
熱可塑性樹脂粒子が2種以上の熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂のTgは下記のように求められる。
1つ目の熱可塑性樹脂のTgをTg1(K)、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂成分の合計質量に対する1つ目の熱可塑性樹脂の質量分率をW1とし、2つ目のTgをTg2(K)とし、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂成分の合計質量に対する2つ目の樹脂の質量分率をW2としたときに、熱可塑性樹脂粒子のTg0(K)は、以下のFOX式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
また、熱可塑性樹脂粒子が3種の樹脂を含むか、含まれる熱可塑性樹脂種の異なる3種の熱可塑性樹脂粒子が前処理液に含有される場合、熱可塑性樹脂粒子のTgは、n個目の樹脂のTgをTgn(K)、熱可塑性樹脂粒子における樹脂成分の合計質量に対するn個目の樹脂の質量分率をWnとしたときに、上記と同様、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+(W3/Tg3)・・・+(Wn/Tgn)
【0346】
本明細書において、Tgは、示差走査熱量計(DSC:Differential scanning calorimetry)により測定される値である。示差走査熱量計(DSC)としては、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社のEXSTAR6220を用いることができる。
【0347】
熱可塑性樹脂粒子の算術平均粒子径は、UV耐刷性の観点から、1nm以上200nm以下であることが好ましく、3nm以上80nm未満であることがより好ましく、10nm以上49nm以下であることが更に好ましい。
【0348】
本開示における熱可塑性樹脂粒子における算術平均粒子径は、特に断りのない限り、動的光散乱法(DLS)によって測定された値を指す。DLSによる熱可塑性樹脂粒子の算術平均粒子径の測定は、Brookhaven BI-90(Brookhaven Instrument Company製)を用い、上記機器のマニュアルに沿って行われる。
【0349】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、3,000~300,000であることが好ましく、5,000~100,000であることがより好ましい。
【0350】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
例えば、スチレン化合物と、アクリロニトリル化合物と、必要に応じて上記N-ビニル複素環化合物、上記エチレン性不飽和基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、上記酸性基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、上記疎水性基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、及び、上記その他の構成単位の形成に用いられる化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、とを、公知の方法により重合することにより得られる。
【0351】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の具体例を下記表に示すが、本開示において用いられる熱可塑性樹脂はこれに限定されるものではない。
【0352】
【0353】
【0354】
また、上記具体例中、各構成単位の含有比は、上述の各構成単位の含有量の好ましい範囲に従って、適宜変更可能である。
また、上記具体例に示す各化合物の重量平均分子量は、上述の熱可塑性樹脂の重量平均分子量の好ましい範囲に従って、適宜変更可能である。
【0355】
上記粒子の平均粒径は、0.01μm~3.0μmが好ましく、0.03μm~2.0μmがより好ましく、0.10μm~1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。
本開示における上記粒子の平均一次粒径は、光散乱法により測定するか、又は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、平均値を算出するものとする。なお、非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を有する球形粒子の粒径値を粒径とする。
また、本開示における平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径であるものとする。
【0356】
上記画像記録層は、粒子、特にポリマー粒子を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
また、上記画像記録層における粒子、特にポリマー粒子の含有量は、機上現像性、及び、UV耐刷性の観点から、上記画像記録層の全質量に対し、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~90質量%であることがより好ましく、20質量%~90質量%であることが更に好ましく、50質量%~90質量%であることが特に好ましい。
また、上記画像記録層におけるポリマー粒子の含有量は、機上現像性、及び、UV耐刷性の観点から、上記画像記録層の分子量3,000以上の成分の全質量に対し、20質量%~100質量%が好ましく、35質量%~100質量%であることがより好ましく、50質量%~100質量%であることが更に好ましく、80質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0357】
-バインダーポリマー-
画像記録層は、バインダーポリマーを含んでいてもよい。バインダーポリマーとしては、機上現像型平版印刷版原版の画像記録層に用いられるバインダーポリマーを使用することができる。具体的には、バインダーポリマーとしては、国際公開第2022/019217号の段落0288~0317に記載のバインダーポリマーが好適に使用することができる。
【0358】
本開示において用いられる画像記録層においては、バインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーは、画像記録層中に任意な量で含有させることができるが、バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~80質量%であることがより好ましい。
また、本開示における画像記録層が他のバインダーポリマーを含む場合、上記熱可塑性樹脂粒子と他のバインダーポリマーとの合計質量に対する他のバインダーポリマーの含有量は、0質量%を超え99質量%以下であることが好ましく、20質量%~95質量%であることがより好ましく、40質量%~90質量%であることが更に好ましい。
【0359】
〔発色剤〕
上記画像記録層は、発色剤を含むことが好ましく、酸発色剤を含むことがより好ましい。
本開示で用いられる「発色剤」とは、光や酸等の刺激により発色又は消色し画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味し、また、「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色又は消色し画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
【0360】
このような酸発色剤の例としては、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(“クリスタルバイオレットラクトン”と称される。)、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1,2-ジメチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(9-エチルカルバゾール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(2-フェニルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-メチルピロール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、
【0361】
3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ピロリジノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-ジエチルアミノフェニル)フタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-N-エチル-N-フェニルアミノフェニル)フタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド等のフタリド類、
【0362】
4,4-ビス-ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-ハロフェニル-ロイコオーラミン、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン-B-アニリノラクタム、ローダミン-(4-ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン-B-(4-クロロアニリノ)ラクタム、3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4-ニトロベンゾイルメチレンブルー、
【0363】
3,6-ジメトキシフルオラン、3-ジメチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,7-ジメチルフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジ-n-ヘキシルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’,3’-ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、
【0364】
3-N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-エトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-モルホリノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-プロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-オクチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
【0365】
3-N-(2’-メトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-イソブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-テトラヒドロフルフリル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(4’-メチルフェニル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3’-メチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2-ビス〔4’-(3-N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチルフルオラン)-7-イルアミノフェニル〕プロパン、3-〔4’-(4-フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-〔4’-(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ-5,7-ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
【0366】
3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-n-プロポキシカルボニルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチル-4-ジn-ヘキシルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,7-ジアザフタリド、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ブトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド3-メチル-スピロ-ジナフトピラン、3-エチル-スピロ-ジナフトピラン、3-フェニル-スピロ-ジナフトピラン、3-ベンジル-スピロ-ジナフトピラン、3-メチル-ナフト-(3-メトキシベンゾ)スピロピラン、3-プロピル-スピロ-ジベンゾピラン-3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
【0367】
その他、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチル)アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン-3-オン、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、3’-N,N-ジベンジルアミノ-6’-N,N-ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、2’-(N-メチル-N-フェニル)アミノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オンなどが挙げられる。
【0368】
中でも、本開示に用いられる発色剤は、発色性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及び、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
【0369】
また、上記酸発色剤は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、ロイコ色素であることが好ましい。但し、ロイコ色素としては、既述の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物を除く。つまり、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版における画像記録層は、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物には該当しない、他のロイコ色素を併用してもよい。
上記ロイコ色素としては、ロイコ構造を有する色素であれば、特に制限はないが、スピロ構造を有することが好ましく、スピロラクトン環構造を有することがより好ましい。
また、上記ロイコ色素としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素であることが好ましい。
更に、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-1)~式(Le-3)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、下記式(Le-2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0370】
【0371】
式(Le-1)~式(Le-3)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X1~X4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、X5~X10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、C又はNを表し、Y1がNである場合は、X1は存在せず、Y2がNである場合は、X4は存在せず、Ra1は、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb1~Rb4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0372】
式(Le-1)~式(Le-3)のERGにおける電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基又はモノアリールモノヘテロアリールアミノ基であることが更に好ましく、モノアルキルモノアリールアミノ基であることが特に好ましい。
また、上記ERGにおける電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基又は少なくとも1つのオルト位に置換基を有するヘテロアリール基を有する二置換アミノ基であることが好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基を有する二置換アミノ基であることがより好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基とアリール基又はヘテロアリール基とを有するアミノ基であることが更に好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基と電子供与性基を有するアリール基又は電子供与性基を有するヘテロアリール基とを有するアミノ基であることが特に好ましい。
なお、本開示において、フェニル基以外のアリール基又はヘテロアリール基におけるオルト位は、アリール基又はヘテロアリール基の他の構造との結合位置を1位とした場合の上記1位の隣の結合位置(例えば、2位等)を言うものとする。
更に、上記アリール基又はヘテロアリール基が有する電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることがより好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0373】
式(Le-1)~式(Le-3)におけるX1~X4はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、又は、塩素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(Le-2)又は式(Le-3)におけるX5~X10はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、ヘテロアリーロキシカルボニル基又はシアノ基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるY1及びY2は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、少なくとも1方がCであることが好ましく、Y1及びY2の両方がCであることがより好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるRa1は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるRb1~Rb4はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0374】
また、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-4)~式(Le-6)のいずれかで表される化合物であることがより好ましく、下記式(Le-5)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0375】
【0376】
式(Le-4)~式(Le-6)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X1~X4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、C又はNを表し、Y1がNである場合は、X1は存在せず、Y2がNである場合は、X4は存在せず、Ra1は、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb1~Rb4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0377】
式(Le-4)~式(Le-6)におけるERG、X1~X4、Y1、Y2、Ra1、及び、Rb1~Rb4はそれぞれ、式(Le-1)~式(Le-3)におけるERG、X1~X4、Y1、Y2、Ra1、及び、Rb1~Rb4と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0378】
更に、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-7)~式(Le-9)のいずれかで表される化合物であることが更に好ましく、下記式(Le-8)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0379】
【0380】
式(Le-7)~式(Le-9)中、X1~X4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、C又はNを表し、Y1がNである場合は、X1は存在せず、Y2がNである場合は、X4は存在せず、Ra1~Ra4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb1~Rb4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Rc1及びRc2はそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0381】
式(Le-7)~式(Le-9)におけるX1~X4、Y1及びY2は、式(Le-1)~式(Le-3)におけるX1~X4、Y1及びY2と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(Le-7)又は式(Le-9)におけるRa1~Ra4はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
式(Le-7)~式(Le-9)におけるRb1~Rb4はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式(Le-8)におけるRc1及びRc2はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、フェニル基、又は、アルキルフェニル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
また、式(Le-8)におけるRc1及びRc2はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基、又は、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するヘテロアリール基であることが好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基であることがより好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するフェニル基であることが更に好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基であることが特に好ましい。Rc1及びRc2における上記置換基としては、後述する置換基が挙げられる。
また、式(Le-8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、X1~X4が水素原子であり、Y1及びY2がCであることが好ましい。
更に、式(Le-8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、Rb1及びRb2がそれぞれ独立に、アルキル基又はアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましい。
更にまた、式(Le-8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、Rb1及びRb2がそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましく、電子供与性基を有するアリール基であることが更に好ましく、パラ位に電子供与性基を有するフェニル基であることが特に好ましい。
また、Rb1、Rb2、Rc1及びRc2における上記電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることがより好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0382】
また、酸発色剤としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-10)で表される化合物及び下記式(Z-4)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含むことも好ましい。
つまり、本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、下記式(Le-10)で表される化合物及び下記式(Z-4)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を更に含むことが好ましい。
【0383】
【0384】
式(Le-10)中、Ar1はそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Ar2はそれぞれ独立に、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基、又は、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するヘテロアリール基を表す。
【0385】
式(Le-10)におけるAr1は、式(Le-7)~式(Le-9)におけるRb1及びRb2と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(Le-10)におけるAr2は、式(Le-7)~式(Le-9)におけるRc1及びRc2と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0386】
式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-10)におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~10であることがより好ましく、6~8であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-10)におけるアリール基として具体的には、置換基を有していてもよい、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、及び、フェナントレニル基等が挙げられる。
式(Le-1)~式(Le-10)におけるヘテロアリール基として具体的には、置換基を有していてもよい、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、及び、チオフェニル基等が挙げられる。
【0387】
また、式(Le-1)~式(Le-10)における一価の有機基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ジアルキルアニリノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基等の各基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、ヘテロアリーロキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。また、これら置換基は、更にこれら置換基により置換されていてもよい。
【0388】
【0389】
式(Z-4)中、Rza1は、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rzb1~Rb4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rzb1とRzb2、Rzb3とRzb4とが連結して環構造を形成してもよく、Xは、O又はNRを示し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、CH又はNを表す。
【0390】
式(Z-4)におけるRza1は、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましい。
式(Z-4)におけるRzb1及びRzb2はそれぞれ独立に、アルキル基であることが好ましい。
式(Z-4)におけるRzb3及びRzb4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、一方がアリール基であることが好ましい。
式(Z-4)におけるXはOであり、Y1及びY2がCHであることが好ましい。
【0391】
式(Z-4)におけるアルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
式(Z-4)におけるアルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~5であることが更に好ましい。
式(Z-4)におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~10であることがより好ましく、6~8であることが特に好ましい。
式(Z-4)におけるアルキル基、アリール基等の各基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。また、これら置換基は、更にこれら置換基により置換されていてもよい。
【0392】
好適に用いられる上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素としては、以下の化合物が挙げられる。なお、Meはメチル基を表す。
【0393】
【0394】
【0395】
【0396】
【0397】
【0398】
【0399】
【0400】
【0401】
発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H-3035、BLUE203、ATP、H-1046、H-2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE-DCF、Vermilion-DCF、PINK-DCF、RED-DCF、BLMB、CVL、GREEN-DCF、TH-107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB-2、ODB-4、ODB-250、ODB-BlackXV、Blue-63、Blue-502、GN-169、GN-2、Green-118、Red-40、Red-8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、H-3035、ATP、H-1046、H-2114、GREEN-DCF、Blue-63、GN-169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
【0402】
これらの発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
発色剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0403】
〔連鎖移動剤〕
画像記録層は、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、機上現像型平版印刷版原版の画像記録層に用いられる連鎖移動剤を使用することができる。具体的には、連鎖移動剤としては、国際公開第2022/019217号の段落0388~0393に記載の連鎖移動剤が好適に使用することができる。
【0404】
連鎖移動剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%が好ましく、0.05質量%~40質量%がより好ましく、0.1質量%~30質量%が更に好ましい。
【0405】
〔感脂化剤〕
画像記録層は、インキ着肉性を向上させるために、感脂化剤を含んでいてもよい。感脂化剤としては、機上現像型平版印刷版原版の画像記録層に用いられる感脂化剤を使用することができる。具体的には、感脂化剤としては、国際公開第2022/019217号の段落0395~0404に記載の感脂化剤が好適に使用することができる。
【0406】
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%~40.0質量%が好ましく、2質量%~25.0質量%がより好ましく、3質量%~20.0質量%が更に好ましい。
【0407】
画像記録層は、感脂化剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示において用いられる画像記録層の好ましい態様の一つは、感脂化剤として、2種以上の化合物を含有する態様である。
具体的には、本開示において用いられる画像記録層は、機上現像性及び着肉性を両立させる観点から、感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーと、を併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーと、を併用することがより好ましい。
【0408】
〔現像促進剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、現像促進剤を更に含むことが好ましい。
現像促進剤は、SP値の極性項の値が6.0~26.0であることが好ましく、6.2~24.0であることがより好ましく、6.3~23.5であることが更に好ましく、6.4~22.0であることが特に好ましい。
【0409】
本開示におけるSP値(溶解度パラメーター、単位:(cal/cm3)1/2)の極性項の値は、ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターにおける極性項δpの値を用いるものとする。ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものであるが、本開示においては上記極性項δpを用いる。
δp[cal/cm3]はHansen 溶解度パラメーター双極子間力項、V[cal/cm3]はモル体積、μ[D]は双極子モーメントである。δpとしては、一般的にはHansenとBeerbowerによって簡素化された下記式が用いられている
【0410】
【0411】
現像促進剤としては、親水性高分子化合物又は親水性低分子化合物であることが好ましい。
本開示において、親水性とは、SP値の極性項の値が6.0~26.0であることをいい、親水性高分子化合物とは分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が3,000以上の化合物をいい、親水性低分子化合物とは分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が3,000未満の化合物をいう。
【0412】
親水性高分子化合物としては、セルロース化合物等が挙げられ、セルロース化合物が好ましい。
セルロース化合物としては、セルロース、又は、セルロースの少なくとも一部が変性された化合物(変性セルロース化合物)が挙げられ、変性セルロース化合物が好ましい。
変性セルロース化合物としては、セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基により置換された化合物が好ましく挙げられる。
上記セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基により置換された化合物の置換度は、0.1~6.0であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。
変性セルロース化合物としては、アルキルセルロース化合物又はヒドロキシアルキルセルロース化合物が好ましく、ヒドロキシアルキルセルロース化合物がより好ましい。
アルキルセルロース化合物としては、メチルセルロースが好ましく挙げられる。
ヒドロキシアルキルセルロース化合物としては、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく挙げられる。
【0413】
親水性高分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、3,000~5,000,000であることが好ましく、5,000~200,000であることがより好ましい。
【0414】
親水性低分子化合物としては、グリコール化合物、ポリオール化合物、有機アミン化合物、有機スルホン酸化合物、有機スルファミン化合物、有機硫酸化合物、有機ホスホン酸化合物、有機カルボン酸化合物、ベタイン化合物等が挙げられ、ポリオール化合物、有機スルホン酸化合物又はベタイン化合物が好ましい。
【0415】
グリコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びこれらの化合物のエーテル又はエステル誘導体類が挙げられる。
ポリオール化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
有機アミン化合物としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等及びその塩が挙げられる。
有機スルホン酸化合物としては、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等及びその塩が挙げられ、アルキル基の炭素数が1~10のアルキルスルホン酸が好ましく挙げられる。
有機スルファミン化合物としては、アルキルスルファミン酸等及びその塩が挙げられる。
有機硫酸化合物としては、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等及びその塩が挙げられる。
有機ホスホン酸化合物としては、フェニルホスホン酸等及びその塩、が挙げられる。
有機カルボン酸化合物としては、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸等及びその塩が挙げられる。
ベタイン化合物としては、ホスホベタイン化合物、スルホベタイン化合物、カルボキシベタイン化合物等が挙げられ、トリメチルグリシンが好ましく挙げられる。
【0416】
親水性低分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、100以上3,000未満であることが好ましく、300~2,500であることがより好ましい。
【0417】
現像促進剤は、環状構造を有する化合物であることが好ましい。
環状構造としては、特に限定されないが、ヒドロキシ基の少なくとも一部が置換されていてもよいグルコース環、イソシアヌル環、ヘテロ原子を有していてもよい芳香環、ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族環等が挙げられ、グルコース環又はイソシアヌル環が好ましく挙げられる。
グルコース環を有する化合物としては、上述のセルロース化合物が挙げられる。
イソシアヌル環を有する化合物としては、上述のトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
芳香環を有する化合物としては、上述のトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族環を有する化合物としては、上述のアルキル硫酸であって、アルキル基が環構造を有する化合物等が挙げられる。
【0418】
また、上記環状構造を有する化合物は、ヒドロキシ基を有することが好ましい。
ヒドロキシ基を有し、かつ、環状構造を有する化合物としては、上述のセルロース化合物、及び、上述のトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが好ましく挙げられる。
【0419】
また、現像促進剤としては、オニウム塩化合物であることが好ましい。
オニウム塩化合物としては、アンモニウム化合物、スルホニウム化合物等が挙げられ、アンモニウム化合物が好ましい。
オニウム塩化合物である現像促進剤としては、トリメチルグリシン等が挙げられる。
また、上記電子受容型重合開始剤におけるオニウム塩化合物はSP値の極性項の値が6.0~26.0ではない化合物であり、現像促進剤には含まれない。
【0420】
画像記録層は、現像促進剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示において用いられる画像記録層の好ましい態様の一つは、現像促進剤として、2種以上の化合物を含有する態様である。
具体的には、本開示において用いられる画像記録層は、機上現像性及び着肉性の観点から、現像促進剤として、上記ポリオール化合物及び上記ベタイン化合物、上記ベタイン化合物及び上記有機スルホン酸化合物、又は、上記ポリオール化合物及び上記有機スルホン酸化合物を含むことが好ましい。
【0421】
画像記録層の全質量に対する現像促進剤の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0422】
〔その他の成分〕
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008-284817号公報の段落0114~段落0159の記載を参照することができる。
【0423】
〔画像記録層の形成〕
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~段落0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、0.3g/m2~3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1質量%~50質量%であることが好ましい。
塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3g/m2~3.0g/m2が好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層の膜厚は、0.1μm~3.0μmであることが好ましく、0.3μm~2.0μmであることがより好ましい。
本開示において、平版印刷版原版における各層の膜厚は、平版印刷版原版の表面に対して垂直な方向に切断した切片を作製し、上記切片の断面を走査型顕微鏡(SEM)により観察することにより確認される。
【0424】
<支持体>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体を有する。
支持体としては、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。
支持体としては、親水性表面を有する支持体(以下、「親水性支持体」ともいう。)が好ましい。
【0425】
本開示における支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。即ち、本開示における支持体は、アルミニウム板とアルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化被膜とを有することが好ましい。
【0426】
また、上記支持体は、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを有し、上記陽極酸化皮膜が、上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜が、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、上記マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、10nmを超え100nm以下であることが好ましい。
更に、上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、上記大径孔部の上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、15nm~100nmであり、上記小径孔部の上記連通位置における平均径が、13nm以下であることが好ましい。
【0427】
図1は、アルミニウム支持体12aの一実施形態の模式的断面図である。
アルミニウム支持体12aは、アルミニウム板18とアルミニウムの陽極酸化皮膜20a(以後、単に「陽極酸化皮膜20a」とも称する)とをこの順で積層した積層構造を有する。なお、アルミニウム支持体12a中の陽極酸化皮膜20aが、アルミニウム板18よりも画像記録層側に位置する。つまり、本開示に係る平版印刷版原版は、アルミニウム板上に、陽極酸化皮膜、画像記録層、及び水溶性樹脂層をこの順で少なくとも有することが好ましい。
【0428】
-陽極酸化皮膜-
以下、陽極酸化被膜20aの好ましい態様について説明する。
陽極酸化皮膜20aは、陽極酸化処理によってアルミニウム板18の表面に作製される皮膜であって、この皮膜は、皮膜表面に略垂直であり、かつ、個々が均一に分布した極微細なマイクロポア22aを有する。マイクロポア22aは、画像記録層側の陽極酸化皮膜20a表面(アルミニウム板18側とは反対側の陽極酸化皮膜20a表面)から厚み方向(アルミニウム板18側)に沿ってのびる。
【0429】
陽極酸化皮膜20a中のマイクロポア22aの陽極酸化皮膜表面における平均径(平均開口径)は、10nmを超え100nm以下であることが好ましい。中でも、耐刷性、耐汚れ性、及び、画像視認性のバランスの点から、15nm~60nmがより好ましく、20nm~50nmが更に好ましく、25nm~40nmが特に好ましい。ポア内部の径は、表層よりも広がっても狭まってもよい。
平均径が10nmを超える場合、耐刷性及び画像視認性に優れる。また、平均径が100nm以下である場合、耐刷性に優れる。
マイクロポア22aの平均径は、陽極酸化皮膜20a表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの径(直径)を50箇所測定し、平均した値である。
なお、マイクロポア22aの形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
【0430】
マイクロポア22aの形状は特に制限されず、
図1では、略直管状(略円柱状)であるが、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状であってもよい。また、マイクロポア22aの底部の形状は特に制限されず、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
【0431】
支持体において、上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面からある深さの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置からある深さの位置までのびる小径孔部とから構成されていてもよい。
例えば、
図2に示すように、アルミニウム支持体12bが、アルミニウム板18と、大径孔部24と小径孔部26とから構成されるマイクロポア22bを有する陽極酸化皮膜20bとを含む形態であってもよい。
例えば、陽極酸化皮膜20b中のマイクロポア22bは、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1000nm(深さD:
図2参照)の位置までのびる大径孔部24と、大径孔部24の底部と連通し、連通位置から更に深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部26とから構成される。具体的には、例えば、特開2019-162855号公報の段落0107~0114に記載の態様を使用することができる。
【0432】
-支持体の製造方法-
本開示に用いられる支持体の製造方法としては、例えば、以下の工程を順番に実施する製造方法が好ましい。
・粗面化処理工程:アルミニウム板に粗面化処理を施す工程
・陽極酸化処理工程:粗面化処理されたアルミニウム板を陽極酸化する工程
・ポアワイド処理工程:陽極酸化処理工程で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させ、陽極酸化皮膜中のマイクロポアの径を拡大させる工程
以下、各工程の手順について詳述する。
【0433】
<<粗面化処理工程>>
粗面化処理工程は、アルミニウム板の表面に、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施す工程である。本工程は、後述する陽極酸化処理工程の前に実施されることが好ましいが、アルミニウム板の表面がすでに好ましい表面形状を有していれば、特に実施しなくてもよい。特開2019-162855号公報の段落0086~0101に記載された方法で行うことができる。
【0434】
<<陽極酸化処理工程>>
陽極酸化処理工程の手順は、上述したマイクロポアが得られれば特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
陽極酸化処理工程においては、硫酸、リン酸、及び、シュウ酸等の水溶液を電解浴として用いることができる。例えば、硫酸の濃度は、100g/L~300g/Lが挙げられる。
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって適宜設定されるが、例えば、液温5℃~70℃(好ましくは10℃~60℃)、電流密度0.5A/dm2~60A/dm2(好ましくは1A/dm2~60A/dm2)、電圧1V~100V(好ましくは5V~50V)、電解時間1秒~100秒(好ましくは5秒~60秒)、及び、皮膜量0.1g/m2~5g/m2(好ましくは0.2g/m2~3g/m2)が挙げられる。
【0435】
<<ポアワイド処理>>
ポアワイド処理は、上述した陽極酸化処理工程により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径(ポア径)を拡大させる処理(孔径拡大処理)である。
ポアワイド処理は、上述した陽極酸化処理工程により得られたアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させることにより行うことができる。接触させる方法は特に制限されず、例えば、浸せき法及びスプレー法が挙げられる。
【0436】
支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5-45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6-35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
【0437】
<下塗り層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性の低下を抑制しながら現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
【0438】
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
【0439】
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO3H2、-OPO3H2、-CONHSO2-、-SO2NHSO2-、-COCH2COCH3が好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
【0440】
具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号、特開2005-125749号、特開2006-239867号、特開2006-215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005-125749号及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0441】
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol~10.0mmol、より好ましくは0.2mmol~5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万~30万がより好ましい。
【0442】
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)等を含有してもよい。
【0443】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m2~100mg/m2が好ましく、1mg/m2~30mg/m2がより好ましい。
【0444】
<最外層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の、支持体側とは反対の側の面上に最外層(「保護層」又は「オーバーコート層」と呼ばれることもある。)を有していてもよい。
また、本開示に係る平版印刷版原版は、支持体と、画像記録層と、最外層とをこの順で有することが好ましい。
最外層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有していてもよい。
【0445】
最外層は、機上現像型平版印刷版原版における公知の最外層(「保護層」又は「オーバーコート層」)を使用することができる。具体的には、最外層としては、国際公開第2022/019217号の段落0444~0462に記載の最外層が好適に使用することができる。
【0446】
本開示に係る平版印刷版原版は、上述した以外のその他の層を有していてもよい。
その他の層としては、特に制限はなく、公知の層を有することができる。例えば、支持体の画像記録層側とは反対側には、必要に応じてバックコート層が設けられていてもよい。
【0447】
(平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法)
本開示に係る平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を作製することができる。
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程(以下、「機上現像工程」ともいう。)と、を含むことが好ましい。
本開示に係る平版印刷方法は、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版を画像様に露光する工程(露光工程)と、印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程(機上現像工程)と、得られた平版印刷版により印刷する工程(印刷工程)と、を含むことが好ましい。
【0448】
また、本開示に係る平版印刷版の作製方法は、機上現像型平版印刷版原版を赤外線レーザーによって画像様に露光する工程と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含み、上記機上現像型平版印刷版原版が、支持体、及び、上記支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、上記開始剤に電子供与可能な赤外線吸収剤、及び、発色体前駆体を含み、波長830nmの赤外線レーザー露光のエネルギー密度110mJ/cm2で上記画像記録層を露光した場合における上記画像記録層の上記露光前後の明度変化ΔLが、3.0以上である平版印刷版の作製方法であることが好ましい。
更に、本開示に係る平版印刷版の作製方法は、機上現像型平版印刷版原版を赤外線レーザーによって画像様に露光する工程と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含み、上記機上現像型平版印刷版原版が、支持体、及び、上記支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、開始剤、赤外線吸収剤、及び、発色体前駆体を含み、上記画像記録層が、下記式Lを満たす平版印刷版の作製方法であることが好ましい。
2.0≦L1-L0 式L
式L中、L1は、上記画像記録層の視認性を表し、L0は、上記発色体前駆体を除いた以外は上記画像記録層と同一である層の視認性を表す。
また、本開示に係る平版印刷方法についても、これらの態様にそれぞれ、上記印刷工程を更に含む態様が好ましく挙げられる。
【0449】
以下、本開示に係る平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本開示に係る平版印刷版原版は、現像液によっても現像可能である。
以下、平版印刷版の作製方法における露光工程及び機上現像工程について説明するが、本開示に係る平版印刷版の作製方法における露光工程と、本開示に係る平版印刷方法における露光工程とは同様の工程であり、本開示に係る平版印刷版の作製方法における機上現像工程と、本開示に係る平版印刷方法における機上現像工程とは同様の工程である。
【0450】
<露光工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。本開示に係る平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
光源の波長は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。波長750nm~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm2~300mJ/cm2であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
【0451】
<機上現像工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する機上現像工程を含むことが好ましい。
以下に、機上現像方式について説明する。
【0452】
〔機上現像方式〕
機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給し、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製されることが好ましい。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、何らの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インキ及び水性成分のいずれか又は両方によって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インキでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された画像記録層の成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が好適に用いられる。
【0453】
上記本開示に係る平版印刷版原版を画像露光するレーザーとしては、光源の波長は300nm~450nm又は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。300nm~450nmの光源の場合は、この波長領域に吸収極大を有する増感色素を画像記録層に含有する平版印刷版原版が好ましく用いられ、750nm~1,400nmの光源は上述したものが好ましく用いられる。300nm~450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。
【0454】
<印刷工程>
本開示に係る平版印刷方法は、平版印刷版に印刷インキを供給して記録媒体を印刷する印刷工程を含む。
印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性インキ又は紫外線硬化型インキ(UVインキ)が好ましく挙げられる。
また、上記印刷工程においては、必要に応じ、湿し水を供給してもよい。
また、上記印刷工程は、印刷機を停止することなく、上記機上現像工程に連続して行われてもよい。
記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
【0455】
本開示に係る平版印刷版原版からの平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度及び耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用することが好ましく、100℃~500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
【0456】
<式(1b)で表される化合物、及び、式(2a)で表される化合物>
既述の式(1b)で表される化合物、及び、式(2a)で表される化合物は、いずれも、新規化合物であり、発色剤前駆体として好適に用いることができる。
新規化合物としての式(1b)で表される化合物、及び、式(2a)で表される化合物の詳細及び好ましい態様は、既述の本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層に用いる発色組成物における式(1b)で表される化合物、及び、式(2a)で表される化合物の詳細及び好ましい態様と同じである。
【実施例0457】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
【0458】
<特定化合物の合成>
以下、特定化合物の合成例を示す。なお、特定化合物及びこれを得るまでの中間体の構造同定は、いずれも、NMRにて行った。
【0459】
[化合物C-1の合成]
(1-ブチル-5-クロロ-2-メチルインドールの合成)
まず、以下のようにして、1-ブチル-5-クロロ-2-メチルインドールを得た。
【0460】
【0461】
5-クロロ-2-メチルインドール:2.0g(12.1mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド:30.2mLを加え、氷浴下で水素化ナトリウム(60% in oil):0.58g(14.5mmol;1.2eq.)を少しずつ添加し、室温で30分撹拌した。氷浴下、1-ブロモブタン:1.99g(14.5mmol;1.2eq.)をゆっくり滴下し、室温で2時間反応させた。水30mLを少しずつ添加し、EtOAc(酢酸エチル):30mLを加えて分液し、水層をEtOAc:30mLで抽出し、合わせた有機層を水:30mLで洗浄を3回繰り返し、brine(塩水):30mLで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane-EtOAc;TLC Rf = 0.74(Hexane-EtOAc 4:1))で精製して、1-ブチル-5-クロロ-2-メチルインドールの透明oil:2.25gを得た。収率は84%であった。
1H NMR (CDCl3) δ0.94(t, J=7.6Hz, 3H), 1.36(sextet, J=7.6Hz, 2H), 1.66-1.74(m, 2H), 2.41(d, J=0.8Hz, 3H), 4.02(t, J=7.6Hz, 2H), 6.17(s, 1H), 7.06(dd, J=2.0 and 8.8Hz, 1H), 7.16(d, J=8.4Hz, 1H), 7.46(d, J=2.0Hz, 1H).
13C NMR (CDCl3) δ12.83, 13.85, 20.25, 32.27, 43.15, 99.51, 109.89, 118.99, 120.42, 124.72, 128.99, 135.01, 137.84.
【0462】
(化合物C-1の合成)
続いて、以下のようにして、式(1)で表される化合物である化合物C-1を得た。
【0463】
【0464】
1-ブチル-5-クロロ-2-メチルインドール:0.65g(2.9mmol)、2-[p-(ジメチルアミノ)ベンゾイル]-5-(ジメチルアミノ)安息香酸(MH-BCA):1.0g(3.2mmol;1.1eq.)をトルエン:6.5mLと混合し、90℃に加熱し、無水酢酸:0.42mL(4.4mmol;1.5eq.)を添加し、90℃で100分間反応させた。80℃に冷却して、水:1.39mLを添加し、室温に冷却しながら撹拌した。1mol/LのNaOH水溶液を添加してpHを12に調整し、有機層を水洗し、brine洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane-EtOAc;TLC Rf = 0.35(Hexane-EtOAc 2:1))で精製し、Hexane懸濁洗浄し、減圧乾燥(70℃)して、化合物C-1の白色固体:1.32gを得た。収率87%。
HPLC純度は、99.131area%(254nm)であった。
1H NMR (DMSO-d6) δ0.87(t, J=7.2Hz, 3H), 1.28(sextet, J=7.2Hz, 2H), 1.53-1.60(m, 2H), 1.97(s, 3H), 2.89(s, 6H), 2.98(s, 6H), 4.09(t, J=7.2Hz, 2H), 6.50(d, J=2.0Hz, 1H), 6.70(d, J=8.8Hz, 2H), 7.01-7.04(m, 2H), 7.12-7.15(m, 3H), 7.34(d, J=8.8Hz, 1H), 7.45(d, J=8.8Hz, 1H).
13C NMR (DMSO-d6) δ11.07,13.07,18.89,31.03, (39.32), 39.62, 89.23, 104.94, 109.73, 110.62, 111.43, 118.03, 118.54, 119.58, 123.04, 123.79, 124.97, 126.19, 126.37, 128.72, 133.51, 136.74, 140.00, 149.47, 150.56, 169.57.
【0465】
[化合物C-2~C-6の合成]
化合物C-1の合成法を参考に、化合物C-2~C-6を合成した。
【0466】
(実施例A1~A7、並びに、比較例A1~A4)
<支持体の準備>
0.4μmの平均粗さ(Ra)を得るために塩酸溶液中で電解粗面化処理を施したアルミニウム板を用意した。ついで、このアルミニウム板に対し、水性リン酸溶液中で陽極酸化処理を施して1.1g/m2の酸化膜を形成し、続いて、ポリ(アクリル酸)の後処理水性溶液を用いて0.03g/m2の乾燥厚さを有するコーティング膜を得た。
このようにして支持体を得た。
【0467】
<画像記録層の形成>
次に、支持体の表面に、バーコーターを使用して、下記組成の画像記録層塗布液(1)を塗布した。その後、250℃で60秒間乾燥させ、乾燥膜厚が0.9g/m2である画像記録層を得た。
これにより、実施例A1~A7、並びに、比較例A1~A4の機上現像型平版印刷版原版を得た。
【0468】
-画像記録層塗布液(1)-
・特定化合物又は比較化合物(下記表1に記載の化合物):下記表1に記載の量
・ポリマー分散液:0.675部
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース5質量%水溶液(ヒドロキシプロピルメチルセルロース:30%メトキシ化、10%ヒドロキシプロポキシ化、粘度5mPa・s(20℃の2質量%水溶液))::0.400部
・モノマー1:0.333部
・モノマー2:0.167部
・赤外線吸収剤1:0.020部
・界面活性剤1:0.045部
・重合開始剤(ヨードニウム塩化合物1):0.06部
・1-プロパノール:2.6部
・2-ブタノン:3.5部
・1-メトキシ-2-プロパノール:0.92部
・δ-ブチロラクトン:0.10部
・水:1.16部
【0469】
画像記録層塗布液(1)で用いた各成分の詳細は、以下の通りである。
ポリマー分散液:欧州特許第1,765,593号明細書の実施例10に従って調製されたもの(重量比80:20のn-プロパノール/水中に、23.5質量%のポリマーを含む)
モノマー1:Bayer社製DESMODUR(登録商標) N100(ウレタンアクリレート:ヒドロキシエチルアクリレート:ペンタエリスリトールトリアクリレート=1:1.5:1.5(モル比)の40質量%2-ブタノン溶液)
モノマー2:ビスフェノールAエチレンオキサイド10モル付加物のアクリレート体の40質量%2-ブタノン溶液
赤外線吸収剤1:下記構造
界面活性剤1:(Byk Chemie社製BYK 302(25質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液)
ヨードニウム塩化合物1:下記構造
【0470】
【0471】
表1に記載の特定化合物、及び比較化合物の詳細は、以下のとおりである。
【0472】
【0473】
【0474】
(実施例A8)
画像記録層塗布液(1)において、ヨードニウム塩化合物1の量を0.025部に変更し、更に、下記構造のヨードニウム塩化合物2を0.025部添加した以外は、実施例A2と同様にして、機上現像型平版印刷版原版を得た。
【0475】
【0476】
(実施例A9)
画像記録層塗布液(1)において、赤外線吸収剤1を下記構造の赤外線吸収剤2に変更した以外は、実施例A2と同様にして、機上現像型平版印刷版原版を得た。
【0477】
【0478】
(実施例A10)
画像記録層塗布液(1)において、赤外線吸収剤1を下記構造の赤外線吸収剤3に変更した以外は、実施例A2と同様にして、機上現像型平版印刷版原版を得た。
【0479】
【0480】
(実施例A11)
画像記録層塗布液(1)において、式(Le-10)で表される化合物である下記構造の発色剤(ロイコ色素1)を更に0.010部添加した以外は、実施例A2と同様にして、機上現像型平版印刷版原版を得た。
【0481】
【0482】
(実施例A12)
画像記録層塗布液(1)において、式(Ph)で表される化合物である下記構造のフェノチアジンを更に0.025部添加した以外は、実施例A2と同様にして、機上現像型平版印刷版原版を得た。
【0483】
【0484】
[評価]
1.発色性(視認性)の評価
得られた機上現像型平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにより、出力11.5W、外面ドラム回転数220rpm、解像度2,400dpi(dots per inch、1inch=25.4mm)の条件で露光した。露光は25℃、50%RHの環境下で行った。
露光直後の平版印刷版原版の発色を測定した。測定は、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM2600dとオペレーションソフトCM-S100Wとを用い、SCE(正反射光除去)方式で行った。視認性(発色性)は、L*a*b*表色系のL*値(明度)を用い、露光部のL*値と未露光部のL*値との差ΔL’により評価した。ΔL’の値が大きい程、発色性が優れるといえる。評価結果を表1に示す。
【0485】
2.透明インキ濁りの評価
得られた機上現像型平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のイーストマンコダック社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm2相当)した。露光画像にはベタ画像を含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズ(636mm×939mm)のハイデルベルグ社製印刷機SX-74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S-Z1(富士フイルム(株)製)2.0質量%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとして紫外線硬化型インキ(UVインキ)であるT&K メジウムインキを用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(連量:76.5kg、三菱製紙(株)製)紙300枚に印刷を行った。上記印刷を始める前の紙面ベタ部のインキ色と10版繰り返した後のベタ部のインキ色の色差ΔEからインキ濁り抑制性を評価した。ΔEの値が小さいほど、インキの濁りが少なく、インキ濁り抑制性に優れる。評価結果を表1に示す。
【0486】
【0487】
(実施例B1~B9、並びに、比較例B1~B4)
<支持体の準備>
(a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/m2であった。
【0488】
(b)酸性水溶液を用いたデスマット処理(第1デスマット処理)
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
【0489】
(c)電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dm2であった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dm2であり、電解処理は112.5C/dm2ずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
【0490】
(d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/m2であった。その後、水洗処理を行った。
【0491】
(e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。
【0492】
(f)第1段階の陽極酸化処理
図3に示す構造の直流電解による陽極酸化処理装置610を用いて、第1段階の陽極酸化処理(第1陽極酸化処理ともいう)を行った。具体的には、下記表2に示す「第1陽極酸化処理」欄の条件にて第1陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
以下、
図3に示す陽極酸化処理装置610について説明する。
図3に示す陽極酸化処理装置610において、アルミニウム板616は、
図3中矢印で示すように搬送される。電解液618が貯溜された給電槽612にてアルミニウム板616は給電電極620によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板616は、給電槽612においてローラ622によって上方に搬送され、ニップローラ624によって下方に方向変換された後、電解液626が貯溜された電解処理槽614に向けて搬送され、ローラ628によって水平方向に方向転換される。次いで、アルミニウム板616は、電解電極630によって(-)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽614を出たアルミニウム板616は後工程に搬送される。陽極酸化装置610において、ローラ622、ニップローラ624、及びローラ628によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板616は、給電槽612と電解処理槽614との槽間部において、上記ローラ622、624及び628により、山型及び逆U字型に搬送される。給電電極620と電解電極630とは、直流電源634に接続されている。
【0493】
(g)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度40℃、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に下記表2に示す条件で浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0494】
(h)第2陽極酸化処理
図3に示す構造の直流電解による陽極酸化処理装置610を用いて、第2段階の陽極酸化処理(第2陽極酸化処理ともいう)を行った。具体的には、下記表2に示す「第2陽極酸化処理」欄の条件にて第2陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0495】
以上のようにして、支持体を作製した。
得られた支持体の、マイクロポアの陽極酸化皮膜表面のL*a*b*表色系における明度L*、マイクロポアにおける大径孔部の酸化皮膜表面における平均径及び深さ、マイクロポアにおける小径孔部の連通位置における平均径(nm)及び深さ、大径孔部及び小径孔部の深さ(nm)、マイクロポア密度、並びに、小径孔部の底部からアルミニウム板表面までの陽極酸化皮膜の厚み(皮膜厚ともいう)を、表3にまとめて示す。
なお、表2中、第1陽極酸化処理欄の皮膜量(AD)量と第2陽極酸化処理欄の皮膜量(AD)とは、各処理で得られた皮膜量を表す。なお、使用される電解液は、表2中の成分を含む水溶液である。
【0496】
【0497】
【0498】
<下塗り層の形成>
得られた支持体上に、下記組成の下塗り層塗布液を乾燥塗布量が0.1g/m2になるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0499】
-下塗り層用塗布液-
・下塗り層用化合物(下記U-1、11%水溶液):0.10502部
・グルコン酸ナトリウム:0.0700部
・界面活性剤(エマレックス(登録商標) 710、日本エマルジョン(株)):0.00159部
・防腐剤(バイオホープL、ケイ・アイ化成(株)):0.00149部
・水:3.29000部
【0500】
【0501】
<画像記録層の形成>
下塗り層上に、下記画像記録層塗布液(2)をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成した。
【0502】
-画像記録層塗布液(2)-
・特定化合物又は比較化合物(下記表4に記載の化合物):下記表4に記載の量
・赤外線吸収剤4:0.0175部
・発色剤(S-22):0.0120部
・電子受容型重合開始剤(IA-1):0.0981部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.0270部
・重合性化合物(M-1):0.3536部
・トリクレシルホスフェート:0.0450部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.0162部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.0042部
・2-ブタノン:5.3155部
・1-メトキシ-2-プロパノール:2.8825部
・メタノール:2.3391部
・ミクロゲル液1:2.8779部
【0503】
画像記録層塗布液(2)に用いた成分の詳細は以下のとおりである。
赤外線吸収剤4:非分解型赤外線吸収剤、下記構造の化合物、λmax=794nm
赤外線吸収剤5:非分解型赤外線吸収剤、下記構造の化合物、λmax=819nm
【0504】
【0505】
発色剤(S-22):既述の発色剤(S-22)
発色剤(S-16):既述の発色剤(S-16)
電子受容型重合開始剤(IA-1):下記化合物、LUMO=-3.02eV
電子供与型重合開始剤(TPB):テトラフェニルホウ酸ナトリウム、HOMO=-5.90eV
【0506】
【0507】
〔重合性化合物(M-1)の合成方法〕
タケネートD-160N(ポリイソシアネート トリメチロールプロパンアダクト体、三井化学(株)製、4.7部)、アロニックスM-403(東亞合成(株)製、タケネートD-160NのNCO価とアロニックスM-403の水酸基価が1:1となる量)、t-ブチルベンゾキノン(0.02部)、及びメチルエチルケトン(11.5部)の混合溶液を65℃に加熱した。反応溶液に、ネオスタンU-600(ビスマス系重縮合触媒、日東化成(株)製、0.11部)を加え、65℃で4時間加熱した。反応溶液を室温(25℃)まで冷却し、メチルエチルケトンを加えることで、固形分が50質量%のウレタンアクリレート(M-1)溶液を合成した。リサイクル型GPC(機器:LC908-C60、カラム:JAIGEL-1H-40及び2H-40(日本分析工業(株)製))を用いて、テトラヒドロフラン(THF)の溶離液にて、ウレタンアクリレート溶液の分子量分画を実施した。重量平均分子量は20,000であった。
【0508】
アニオン界面活性剤(A-1):下記化合物
フッ素系界面活性剤(W-1):下記化合物
【0509】
【0510】
【0511】
〔ミクロゲル液1の合成方法〕
-油相成分の調製-
多官能イソシアネート化合物(PM-200:万華化学社製):6.66gと、三井化学(株)製の「タケネート(登録商標)D-116N(トリメチロールプロパン(TMP)とm-キシリレンジイソシアネート(XDI)とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(EO90)との付加物(下記構造)」の50質量%酢酸エチル溶液:5.46gと、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.24gと、酢酸エチル:14.47gと、竹本油脂(株)製のパイオニン(登録商標)A-41-C:0.45gを混合し、室温(25℃)で15分撹拌して油相成分を得た。
【0512】
【0513】
-水相成分の準備-
水相成分として、蒸留水47.2gを準備した。
【0514】
-マイクロカプセル形成工程-
油相成分に水相成分を添加して混合し、得られた混合物を、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで16分間乳化させて乳化物を得た。
得られた乳化物に蒸留水16.8gを添加し、得られた液体を室温で10分撹拌した。
次いで、撹拌後の液体を45℃に加熱し、液温を45℃に保持した状態で4時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルを留去した。次いで、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.12gを加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を20質量%になるように調整し、ミクロゲル1の水分散液が得られた。ミクロゲル1の体積平均粒径はレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-920((株)堀場製作所製)により測定したところ、165nmであった。
【0515】
<最外層の形成>
画像記録層上に、下記最外層塗布液をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量が0.41g/m2の最外層を形成した。
以上の工程を経て、機上現像型平版印刷版原版を得た。
【0516】
-最外層塗布液-
下記に示す各成分を、イオン交換水で溶解又は分散し、固形分が20質量%になるように調製し、最外層塗布液を作製した。
・水溶性ポリマー(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製Mowiol 4-88):250質量部
・疎水性ポリマー(ポリ塩化ビニリデン水性ディスパージョン、Solvin社製Diofan(登録商標) A50):250質量部
・界面活性剤(ノニオン界面活性剤、BASF社製Lutensol(登録商標) A8):10質量部
【0517】
(実施例B10~B12)
実施例B1~B3の画像記録層塗布液(2)において、フッ素系界面活性剤(W-1)を式(I)で表される構成単位を有する重合体である下記構造の重合体(W-2)に変更した以外は、実施例B1~B3とそれぞれ同様にして、機上現像型平版印刷版原版を得た。
【0518】
【0519】
(実施例B13)
画像記録層塗布液(2)において、上記構造の赤外線吸収剤5を更に0.0013部添加した以外は、実施例B1と同様にして、機上現像型平版印刷版原版を得た。
【0520】
[評価]
実施例A1と同様の方法で、1.発色性(視認性)の評価、及び、2.透明インキ濁りの評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0521】
3.面状の評価
得られた機上現像型平版印刷版原版を、40cm×62cmに加工した。得られたサンプルの最外層側の表面を、750~1500Luxの白灯照射下で目視観察し、以下基準に沿って面状を評価した。評価結果を表2に示す。
-評価基準-
A:全面的に面状のムラが視認されない。
B:部分的に面状のムラが視認される。
C:Bよりも広い領域にて部分的に面状のムラが視認される。
【0522】
【0523】
表1及び表4から明らかなように、実施例に係る平版印刷版原版は、透明インキの濁りを抑制し、発色性に優れる平版印刷版が得られることが分かる。
12a,12b:アルミニウム支持体、14:下塗り層、16:画像記録層、18:アルミニウム板、20a,20b:陽極酸化皮膜、22a,22b:マイクロポア、24:大径孔部、26:小径孔部、D:大径孔部の深さ、610:陽極酸化処理装置、612:給電槽、614:電解処理槽、616:アルミニウム板、618,26:電解液、620:給電電極、622,628:ローラ、624:ニップローラ、630:電解電極、632:槽壁、634:直流電源