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特開2024-143770電線経路規制部材を成形するための成形用具、電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143770
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電線経路規制部材を成形するための成形用具、電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241003BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02G3/04 075
B60R16/02 623Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056639
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 精一
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD16
(57)【要約】
【課題】3次元方向での電線の経路規制に優れた電線経路規制部材を成形するための成形用具を提供する。
【解決手段】電線の伸び方向の一部を支持する第1面を有するベース体と、前記電線の伸び方向の一部を前記ベース体に固定する電線固定体と、を備え、前記ベース体の一端に、他の前記ベース体と連結可能な連結部が設けられ、前記ベース体の他端に、他の前記ベース体の前記連結部と係合可能な係合部が設けられている、電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の伸び方向の一部を支持する第1面を有するベース体と、
前記電線の伸び方向の一部を前記ベース体に固定する電線固定体と、を備え、
前記ベース体の一端に、他の前記ベース体と連結可能な連結部が設けられ、前記ベース体の他端に、他の前記ベース体の前記連結部と係合可能な係合部が設けられている、電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【請求項2】
前記ベース体が、前記電線固定体の一方端が固定されている電線固定体固定部と、前記電線固定体の他方端が係止可能な電線固定体係止部と、を有する請求項1に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【請求項3】
前記連結部が、前記係合部に嵌合可能な球状部を有する連結挿入部を備え、前記係合部が、前記球状部と嵌合可能な空洞部を備える請求項1または2に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【請求項4】
前記ベース体の他端の端面が、前記第1面と前記第1面に対向した第2面の間に、前記ベース体の長さ方向への切り込みである第3スリット部を備え、前記ベース体の他端が、前記空洞部に前記球状部を締め付け固定する締付部を備える請求項3に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【請求項5】
前記係合部が、前記第1面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第1溝部を、さらに備える請求項4に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【請求項6】
前記係合部が、前記第2面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第2溝部を、さらに備える請求項4に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【請求項7】
前記係合部が、前記電線の伸び方向に沿った、前記第1面から前記空洞部まで連通した第1連通部と前記第2面から前記空洞部まで連通した第2連通部を有し、前記締付部が、前記第1連通部及び前記第2連通部を介して対向に配置されている請求項4に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【請求項8】
前記係合部が、前記第1面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第1溝部と、前記第2面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第2溝部と、を有する請求項4に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【請求項9】
前記ベース体が、前記電線固定体の他方端の前記電線固定体係止部への係止が解除される、電線固定体係止解除部をさらに備える請求項2に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【請求項10】
前記電線固定体を複数備える請求項1または2に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
【請求項11】
電線の伸び方向の一部を支持する第1面を有するベース体と、前記電線の伸び方向の一部を前記ベース体に固定する電線固定体と、を備えた、電線経路規制部材を成形するための成形用具を、複数準備する工程と、
前記ベース体の前記第1面に対向した第2面に設けられた支持体にて、前記電線の所定の経路規制に従って、前記第1面を3次元的に配置する工程と、
前記電線の伸び方向に沿って、光硬化性樹脂を有する部材を設ける工程と、
前記電線固定体に前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を挿通した状態とし、前記ベース体の前記第1面に、固定、支持する工程と、
前記電線固定体を締めて、前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を、3次元的に配置された前記第1面の経路に沿って追従させる工程と、
前記光硬化性樹脂を有する部材に光を照射して前記光硬化性樹脂を光硬化させて電線経路規制部材を形成する工程と、
前記電線固定体を緩めて、前記電線経路規制部材を備えた前記電線を前記第1面から解放する工程と、
を含む、電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法。
【請求項12】
電線の伸び方向の一部を支持する第1面を有するベース体と、前記電線の伸び方向の一部を前記ベース体に固定する電線固定体と、を備え、前記ベース体の一端に、他の前記ベース体と連結可能な連結部が設けられ、前記ベース体の他端に、他の前記ベース体の前記連結部と係合可能な係合部が設けられている、電線経路規制部材を成形するための成形用具を、複数準備する工程と、
前記ベース体の前記連結部に第1の他の前記ベース体の前記係合部を係合させる、及び/または前記ベース体の前記係合部に第2の他の前記ベース体の連結部を連結させて、前記電線の所定の経路規制に従って、前記第1面を3次元的に配置する工程と、
前記電線の伸び方向に沿って、光硬化性樹脂を有する部材を設ける工程と、
前記電線固定体に前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を挿通した状態とし、前記ベース体の前記第1面に、固定、支持する工程と、
前記電線固定体を締めて、前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を、3次元的に配置された前記第1面の経路に沿って追従させる工程と、
前記光硬化性樹脂を有する部材に光を照射して前記光硬化性樹脂を光硬化させて電線経路規制部材を形成する工程と、
前記電線固定体を緩めて、前記電線経路規制部材を備えた前記電線を前記第1面から解放する工程と、
を含む、電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法。
【請求項13】
前記光の光源と前記光を反射する光反射部との間に、前記第1面に固定された状態である前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を配置する請求項11または12に記載の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ワイヤーハーネス等の電線の経路を規制し、また、電線を保護する部材を成形するための成形用具、前記成形用具を用いた電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ワイヤーハーネス等の電線を自動車に配索する際、ワイヤーハーネス等の電線と他の車両搭載部品との干渉を防止するため、ワイヤーハーネス等の電線の経路規制が必要となる場合がある。また、車両振動による衝撃、摩耗等からワイヤーハーネス等の電線を保護する必要がある。そこで、ワイヤーハーネス等の電線を保護するプロテクタにてワイヤーハーネス等の電線の経路規制を行うことがある。
【0003】
経路規制を行うプロテクタは、金型を用いて作製されるので、車種や経路に応じて金型を製作しなければならず、少量多品種が要求されるプロテクタの生産効率に劣るという問題があった。
【0004】
また、射出ノズルから金型へ樹脂を注入した後に冷やしてプロテクタを作製する際に、金型不良による、バリ、反り等の成形不良が発生しないよう、金型には精巧な寸法精度が要求されるので、金型の設計に多大な時間がかかり、金型の製造コストも上昇してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、ワイヤーハーネス本体部と、ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部の経路規制部分にその延在方向に沿って配設される複数の本体部材と、複数の本体部材のうちの隣り合う本体部材が任意の角度をなすように連結可能な連結部とを備えているワイヤーハーネスが提案されている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1では、隣り合う本体部材が任意の角度をなすように連結可能な連結部を備えていることで、車種や経路に応じて金型を設計する必要はなく、簡易に、ワイヤーハーネス本体部の経路規制を行うことができるとしている。
【0007】
一方で、ワイヤーハーネス等の電線は、車両内部の凹凸が形成された部位にも配索されることがあるので、3次元方向まで含めた経路規制が要求される場合がある。特許文献1における本体部材の連結部の構造は、本体部材の一端部における上端部に雌型連結部(凹部)が形成され、本体部材の他端部における上端部に雄型連結部(凸部)が形成されているので、2次元方向の経路規制には対応できるが、3次元方向まで含めた経路規制には十分な対応はできないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-99179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、3次元方向での電線の経路規制に優れた電線経路規制部材を成形するための成形用具、3次元方向での電線の経路規制に優れた電線経路規制部材にて経路規制された電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]電線の伸び方向の一部を支持する第1面を有するベース体と、
前記電線の伸び方向の一部を前記ベース体に固定する電線固定体と、を備え、
前記ベース体の一端に、他の前記ベース体と連結可能な連結部が設けられ、前記ベース体の他端に、他の前記ベース体の前記連結部と係合可能な係合部が設けられている、電線経路規制部材を成形するための成形用具。
[2]前記ベース体が、前記電線固定体の一方端が固定されている電線固定体固定部と、前記電線固定体の他方端が係止可能な電線固定体係止部と、を有する[1]に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
[3]前記連結部が、前記係合部に嵌合可能な球状部を有する連結挿入部を備え、前記係合部が、前記球状部と嵌合可能な空洞部を備える[1]または[2]に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
[4]前記ベース体の他端の端面が、前記第1面と前記第1面に対向した第2面の間に、前記ベース体の長さ方向への切り込みである第3スリット部を備え、前記ベース体の他端が、前記空洞部に前記球状部を締め付け固定する締付部を備える[3]に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
[5]前記係合部が、前記第1面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第1溝部を、さらに備える[4]に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
[6]前記係合部が、前記第2面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第2溝部を、さらに備える[4]に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
[7]前記係合部が、前記電線の伸び方向に沿った、前記第1面から前記空洞部まで連通した第1連通部と前記第2面から前記空洞部まで連通した第2連通部を有し、前記締付部が、前記第1連通部及び前記第2連通部を介して対向に配置されている[4]に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
[8]前記係合部が、前記第1面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第1溝部と、前記第2面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第2溝部と、を有する[4]に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
[9]前記ベース体が、前記電線固定体の他方端の前記電線固定体係止部への係止が解除される、電線固定体係止解除部をさらに備える[2]に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
[10]前記電線固定体を複数備える[1]または[2]に記載の電線経路規制部材を成形するための成形用具。
[11]電線の伸び方向の一部を支持する第1面を有するベース体と、前記電線の伸び方向の一部を前記ベース体に固定する電線固定体と、を備えた、電線経路規制部材を成形するための成形用具を、複数準備する工程と、
前記ベース体の前記第1面に対向した第2面に設けられた支持体にて、前記電線の所定の経路規制に従って、前記第1面を3次元的に配置する工程と、
前記電線の伸び方向に沿って、光硬化性樹脂を有する部材を設ける工程と、
前記電線固定体に前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を挿通した状態とし、前記ベース体の前記第1面に、固定、支持する工程と、
前記電線固定体を締めて、前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を、3次元的に配置された前記第1面の経路に沿って追従させる工程と、
前記光硬化性樹脂を有する部材に光を照射して前記光硬化性樹脂を光硬化させて電線経路規制部材を形成する工程と、
前記電線固定体を緩めて、前記電線経路規制部材を備えた前記電線を前記第1面から解放する工程と、
を含む、電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法。
[12]電線の伸び方向の一部を支持する第1面を有するベース体と、前記電線の伸び方向の一部を前記ベース体に固定する電線固定体と、を備え、前記ベース体の一端に、他の前記ベース体と連結可能な連結部が設けられ、前記ベース体の他端に、他の前記ベース体の前記連結部と係合可能な係合部が設けられている、電線経路規制部材を成形するための成形用具を、複数準備する工程と、
前記ベース体の前記連結部に第1の他の前記ベース体の前記係合部を係合させる、及び/または前記ベース体の前記係合部に第2の他の前記ベース体の連結部を連結させて、前記電線の所定の経路規制に従って、前記第1面を3次元的に配置する工程と、
前記電線の伸び方向に沿って、光硬化性樹脂を有する部材を設ける工程と、
前記電線固定体に前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を挿通した状態とし、前記ベース体の前記第1面に、固定、支持する工程と、
前記電線固定体を締めて、前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を、3次元的に配置された前記第1面の経路に沿って追従させる工程と、
前記光硬化性樹脂を有する部材に光を照射して前記光硬化性樹脂を光硬化させて電線経路規制部材を形成する工程と、
前記電線固定体を緩めて、前記電線経路規制部材を備えた前記電線を前記第1面から解放する工程と、
を含む、電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法。
[13]前記光の光源と前記光を反射する光反射部との間に、前記第1面に固定された状態である前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を配置する[11]または[12]に記載の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様では、電線の伸び方向の一部を支持する第1面を有するベース体を備え、前記ベース体の一端に他の前記ベース体と連結可能な連結部が設けられ、前記ベース体の他端に他の前記ベース体の前記連結部と係合可能な係合部が設けられていることにより、複数のベース体を連結部と係合部にて連結することでベース体の第1面を3次元方向に配列することが可能となる。
【0012】
従って、本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様によれば、3次元方向での電線の経路規制に優れた電線経路規制部材を成形することができる。その結果、電線経路規制部材をプロテクタとして備えたワイヤーハーネス等の電線が、3次元方向まで含めた所定の経路規制に従って、精度よく配索、固定される。また、本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具は、再利用可能であり、成形用具が再利用されることで、同じ成形用具で、電線経路規制部材で経路が規制された電線が複数生産されることが可能である。
【0013】
本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様では、前記ベース体が、前記電線固定体の他方端が係止可能な電線固定体係止部を有することにより、電線固定体の他方端がベース体に係止されている状態から解放されることで、電線のベース体への固定が解除される。従って、本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様によれば、前記成形用具の再利用が可能であり、環境負荷と電線経路規制部材を成形するための費用を低減することができる。
【0014】
本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様によれば、前記連結部が前記係合部に嵌合可能な球状部を有する連結挿入部を備え、前記係合部が前記球状部と嵌合可能な空洞部を備えることにより、ベース体の第1面を3次元方向に配列する自由度がさらに向上する。
【0015】
本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様によれば、前記ベース体の他端の端面が、前記第1面と前記第1面に対向した第2面の間に、前記ベース体の長さ方向への切り込みである第3スリット部を備え、前記ベース体の他端が、前記空洞部に前記球状部を締め付け固定する締付部を備えることにより、締付部の締め付け機能によって第1面と第2面の鉛直方向から連結部が係合部に嵌合された状態を効率よく固定化することができ、ベース体の3次元方向の位置関係の固定性が向上する。
【0016】
本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様によれば、前記係合部が、前記第1面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第1溝部を、さらに備えることにより、締付部の締め付けによる係合部の変形を必要部分に留めることができる。また、本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様によれば、前記係合部が、前記第2面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第2溝部を、さらに備えることにより、締付部の締め付けによる係合部の変形を必要部分に留めることができる。また、本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様によれば、前記係合部が、前記電線の伸び方向に沿った、前記第1面から前記空洞部まで連通した第1連通部と前記第2面から前記空洞部まで連通した第2連通部を有し、前記締付部が、前記第1連通部及び前記第2連通部を介して対向に配置されていることにより、第1連通部及び第2連通部を境にベース体の幅方向両側において締付部の締め付け力を調整できるので、連結部が係合部に嵌合された状態を効率よく固定化することができる。また、本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様によれば、前記係合部が、前記第1面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第1溝部と、前記第2面に、前記ベース体の幅方向に沿って伸延した隙間である第2溝部と、を有することにより、締付部の締め付けによる係合部の変形をさらに確実に必要部分に留めることができる。
【0017】
本発明の電線経路規制部材を成形するための成形用具の態様によれば、前記ベース体が電線固定体係止解除部をさらに備えることにより、電線のベース体への固定を解除する作業性が向上する。
【0018】
本発明の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法の態様によれば、電線の伸び方向に沿って光硬化性樹脂を有する部材を設ける工程と、前記電線固定体に前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を挿通した状態とし、前記ベース体の前記第1面に、固定、支持する工程と、前記電線固定体を締めて、前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を前記第1面の経路に沿って追従させる工程と、前記光硬化性樹脂を有する部材に光を照射して前記光硬化性樹脂を光硬化させて電線経路規制部材を形成する工程と、を含むことにより、3次元方向での電線の経路規制に優れた電線経路規制部材を成形することができる。従って、3次元方向での経路規制に優れた電線経路規制部材にて経路規制された電線を製造することができる。また、本発明の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法では、成形用具は再利用可能であり、成形用具を再利用することで、同じ成形用具で、電線経路規制部材で経路が規制された電線を複数生産することができる。
【0019】
また、本発明の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法の態様によれば、光硬化性樹脂を光硬化させて形成した電線経路規制部材は、電線のプロテクタとして機能するので、車両振動による衝撃、摩耗等から、経路規制された電線を保護することができる。
【0020】
本発明の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法の態様によれば、前記光の光源と前記光を反射する光反射部との間に、前記第1面に固定された状態である前記光硬化性樹脂を有する部材が設けられた前記電線を配置することにより、光硬化性樹脂を有する部材全体を均一に光硬化することができる。また、光硬化性樹脂を有する部材の周方向全体を光硬化するには、複数の方向から光を照射する場合があるところ、本発明の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法では、光の光源と光を反射する光反射部との間に、光硬化性樹脂を有する部材が設けられた電線を配置することにより、1度の光硬化処理及び1つの光源にて光硬化性樹脂を有する部材の周方向全体を光硬化できるので、光硬化の工程を簡易化、短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具の他端側からの斜視図である。
図2】本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具について電線固定体の他方端がベース体に係止されている状態から解放された状態を説明する他端側からの斜視図である。
図3】本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具について電線固定体の他方端がベース体に係止されている状態から解放された状態を説明する一端側からの斜視図である。
図4】本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具同士の連結状態を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具の係合部の説明図である。
図6】本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具の使用方法例の説明図である。
図7】本発明の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法における光硬化処理の説明図である。
図8】本発明の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具について説明する。なお、図1は、本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具の他端側からの斜視図である。図2は、本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具について電線固定体の他方端がベース体に係止されている状態から解放された状態を説明する他端側からの斜視図である。図3は、本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具について電線固定体の他方端がベース体に係止されている状態から解放された状態を説明する一端側からの斜視図である。図4は、本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具同士の連結状態を示す説明図である。図5は、本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具の係合部の説明図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具1(以下、単に、「成形用具1」ということがある。)は、電線(図示せず)の伸び方向Lの一部を支持する第1面11を有するベース体10と、前記電線の伸び方向Lの一部をベース体10に固定する電線固定体20と、を備えている。
【0024】
ベース体10は、板状部材である。ベース体10は、一方の主表面である第1面11と、第1面11に対向した他方の主表面である第2面12と、を有している。ベース体10の第1面11に電線の周面が取り付けられることで、ベース体10は電線の伸び方向Lの一部を支持する。電線の伸び方向Lは、ベース体10の長さ方向でもある。また、ベース体10の第1面11に、電線をベース体10の第1面11に固定するための電線固定体20が取り付けられている。
【0025】
ベース体10の第1面11は、電線固定体20の一方端22が固定されている電線固定体固定部15と、電線固定体20の他方端23が係止可能な電線固定体係止部16と、を有している。電線固定体固定部15と電線固定体係止部16は、ベース体10の幅方向W、すなわち、ベース体10の長さ方向Lに対して直交方向に略対向配置されている。
【0026】
電線固定体20は、ベース体10とは別部材であり、バンド形状の部材である。成形用具1では、電線固定体20は、略半円弧状に伸延した部材である。また、電線固定体20は、電線の伸び方向Lに対して略直交方向、すなわち、ベース体10の幅方向Wに伸延した部材である。
【0027】
成形用具1では、複数の電線固定体20が取り付けられている。具体的には、成形用具1では、2つの電線固定体20が、ベース体10の第1面11上に設けられている。成形用具1では、ベース体10の一端13側に電線固定体20-1が設けられ、ベース体10の他端14側に電線固定体20-2が設けられている。
【0028】
電線固定体20は、長手方向に沿って複数の係止爪21、21、21・・・が形成されている。上記から、電線固定体20としては、例えば、結束バンドが挙げられる。電線固定体20の他方端23に位置する所定の係止爪21が電線固定体係止部16の係止片に係止されることで、電線固定体20の他方端23が電線固定体係止部16に係止される。電線固定体20の他方端23が電線固定体係止部16に係止されることで、電線固定体20の他方端23がベース体10の第1面11に取り付けられる。
【0029】
また、電線固定体20の一方端22に位置する所定の係止爪21が電線固定体固定部15の固定部位に固定されることで、電線固定体20の一方端22がベース体10の第1面11に固定される。なお、電線固定体20の一方端22に位置する所定の係止爪21が電線固定体固定部15の固定部位(例えば、係止片)に係止されることで、電線固定体20の一方端22がベース体10の第1面11に固定されていてもよい。
【0030】
図2、3に示すように、電線固定体20の他方端23は、電線固定体係止部16への係止が解除可能となっている。電線固定体20の他方端23に位置する所定の係止爪21が電線固定体係止部16の係止片から解放されることで、電線固定体20の他方端23における電線固定体係止部16への係止が解除される。電線固定体20の他方端23における電線固定体係止部16への係止が解除されることで、電線固定体20の他方端23は、ベース体10の第1面11から解放されて、電線固定体20の他方端23は自由端となる。
【0031】
ベース体10は、必要に応じて、電線固定体20の他方端23の電線固定体係止部16への係止を解除させる、電線固定体係止解除部(図示せず)をさらに備えてもよい。ベース体10が電線固定体係止解除部をさらに備えることにより、電線固定体20の他方端23のベース体10への固定を解除する作業性が向上する。
【0032】
電線固定体係止解除部の構成としては、例えば、電線固定体20の他方端23が電線固定体係止部16へヒンジにより係止されている場合に、前記ヒンジを外す構成が挙げられる。また、電線固定体係止解除部の構成としては、電線固定体20の他方端23における結束バンドのバンド固定解除機構、電線固定体20の他方端23にU字型クランプ等を着脱可能に係止する機構等が挙げられる。
【0033】
電線固定体20の他方端23を自由端とし、後述するように、例えば、シート状の光硬化性樹脂を有する部材をベース体10の第1面11上に載置し、光硬化性樹脂を有する部材の上にさらに電線を載置し、略半円弧状に伸延した電線固定体20にて電線の周面に光硬化性樹脂を有する部材を筒状に巻き、電線固定体20の他方端23に位置する所定の係止爪21が電線固定体係止部16の係止片に係止されることで、略半円弧状に伸延した電線固定体20に光硬化性樹脂を有する部材が設けられた電線が挿通された状態とすることで、光硬化性樹脂を有する部材が設けられた電線が、ベース体10の第1面11に、固定、支持される。
【0034】
電線固定体20は長手方向に沿って複数の係止爪21、21、21・・・が形成されているので、電線固定体20の他方端23に位置する複数の係止爪21、21、21・・・のうち、所定の係止爪21を選択して電線固定体係止部16の係止片に係止することが可能である。このように、電線固定体20の他方端23に位置する複数の係止爪21、21、21・・・のうち、所定の係止爪21を選択して電線固定体係止部16の係止片に係止することで、光硬化性樹脂を有する部材が設けられた電線の径方向の寸法が異なっていても、光硬化性樹脂を有する部材が設けられた電線が、ベース体10の第1面11に、固定、支持される。
【0035】
電線固定体20に光硬化性樹脂を有する部材が設けられた電線が挿通された状態とする際に、電線固定体20の他方端23を自由端とする一方、電線固定体20の一方端22が電線固定体固定部15の固定部位に固定された状態としておくことで、ベース体10から電線固定体20が分離することを防止して、電線固定体20の紛失を回避することができる。
【0036】
図1~3に示すように、成形用具1には、ベース体10の一端13に、他のベース体10と連結可能な連結部30が設けられている。また、ベース体10の他端14に、他のベース体10の連結部30と係合可能な係合部40が設けられている。
【0037】
連結部30は、ベース体10の一端13の端面からベース体10の長さ方向Lに沿って突出した突出部である。連結部30は、係合部40に係合可能な球状部を有する連結挿入部31を備えている。連結挿入部31の球状部は、連結部30の先端に位置している。
【0038】
また、連結部30は、連結挿入部31とベース体10の一端13の端面とをつなぐ連結軸部32を備えている。連結軸部32は、ベース体10の長さ方向Lに沿って伸延した柱状部材である。連結軸部32は、連結挿入部31よりも縮径した形状となっている。球状部を有する連結挿入部31は、連結軸部32を介してベース体10の一端13と連設されている。
【0039】
係合部40は、ベース体の他端14の端面からベース体10の長さ方向Lに沿って窪んだ凹部である。係合部40は、連結挿入部31の球状部と係合可能な空洞部41を備えている。
【0040】
係合部40の空洞部41の内面形状は、連結挿入部31の球状部の外面形状に対応している。従って、空洞部41の内面形状は、略球状となっている。また、係合部40の空洞部41の大きさは、連結挿入部31の球状部の大きさに対応している。上記から、連結部30の連結挿入部31は、係合部40の空洞部41に嵌合可能な球状部を有している。また、係合部40の空洞部41は、連結挿入部31の球状部と嵌合可能である。
【0041】
図4に示すように、成形用具1におけるベース体10(10-1)の連結挿入部31の球状部が、隣接する他の成形用具1におけるベース体10(10-2)の係合部40の空洞部41に挿入、係合されることで、成形用具1のベース体10(10-1)と隣接する他の成形用具1のベース体10(10-2)が連結される。成形用具1では、成形用具1のベース体10(10-1)の連結挿入部31が、隣接する他の成形用具1のベース体10(10-2)の空洞部41に嵌合されることで、成形用具1のベース体10(10-1)と隣接する他の成形用具1のベース体10(10-2)が連結される。
【0042】
成形用具1を所定数用意し、成形用具1の連結挿入部31が隣接する他の成形用具1の空洞部41に嵌合されて、成形用具1のベース体10(10-1)と隣接する他の成形用具1のベース体10(10-2)が連結されることで、所定数の成形用具1が連結される。従って、相互に連結される成形用具1の数を調整することで、成形用具1の配列の長さが調整可能である。上記から、相互に連結される成形用具1の数を調整することで、ベース体10の第1面11への支持が必要な電線の長さに成形用具1の配列の長さを適合させることができる。
【0043】
図1~5に示すように、係合部40は、電線の伸び方向Lに沿った、第1面11から空洞部41まで連通した第1連通部52を有する第1スリット部51を備えている。第1連通部52は、ベース体10の長さ方向Lに伸延している。第1連通部52は、ベース体10の他端14の端面から他端14側に位置する電線固定体20-2の他端14側手前まで伸延している。第1連通部52は、平面視にて空洞部41の略中央部に設けられている。
【0044】
さらに、第1スリット部51は、第1連通部52から連続して第1連通部52に対して直交方向に伸延した隙間である第1溝部53を有している。上記から、第1スリット部51は、第1連通部52と第1連通部52から連続した第1溝部53とを有している。
【0045】
第1溝部53は、ベース体10の幅方向Wに沿って伸延している。また、第1溝部53は、第1連通部52の電線固定体20-2側の端部から伸延している。また、第1溝部53は、第1連通部52を略中心にしてベース体10の幅方向Wに伸延している。上記から、第1スリット部51の平面視の形状は、略T字状である。
【0046】
なお、図5に示すように、係合部40は、電線の伸び方向Lに沿った、ベース体10の第2面12から空洞部41まで連通した第2連通部72を有する第2スリット部71を、さらに備えている。第2連通部72は、第1連通部52と同様に、ベース体10の長さ方向Lに伸延している。第2連通部72は、第1連通部52と同様に、ベース体10の他端14の端面から他端14側に位置する電線固定体20-2の他端14側手前まで伸延している。また、第2連通部72は、第1連通部52と同様に、平面視にて空洞部41の略中央部に設けられている。
【0047】
さらに、第2スリット部71は、第1スリット部51と同様に、第2連通部72から連続して第2連通部72に対して直交方向に伸延した隙間である第2溝部(図示せず)を有していてもよい。上記から、第2スリット部71は、第2連通部72と第2連通部72から連続した第2溝部とを有していてもよい。
【0048】
第2溝部は、第1溝部53と同様に、ベース体10の幅方向Wに沿って伸延している。また、第2溝部は、第1溝部53と同様に、第2連通部72の電線固定体20-2側の端部から伸延している。また、第2溝部は、第1溝部53と同様に、第2連通部72を略中心にしてベース体10の幅方向Wに伸延している。上記から、第2スリット部71の平面視の形状は、第1スリット部51と同様に、略T字状である。また、第2溝部は、平面視において第1溝部53と重なり合う位置に設けられている。
【0049】
ベース体10の他端14の端面は、ベース体10の第1面11と第2面12の間に、ベース体10の長さ方向Lへの切り込みである第3スリット部81を備えている。第3スリット部81は、ベース体10の幅方向Wに沿って伸延している。第3スリット部81は、空洞部41と連通している。また、第3スリット部81は、空洞部41を略中心にしてベース体10の幅方向Wに伸延している。
【0050】
図1~5に示すように、ベース体10の他端14は、空洞部41に連結挿入部31の球状部を締め付け固定する締付部60を備えている。締付部60は、第1溝部53とベース体10の他端14の端面との間に配置されている。また、成形用具1では、締付部60は、2つ設けられており、第1連通部52を介して対向に配置されている。また、成形用具1では、締付部60は、第2連通部72を介して対向に配置されている。
【0051】
図5に示すように、締付部60の構成としては、例えば、ベース体10の厚さ方向に設けた孔部62にネジ山を形成し、ネジ61を孔部62のネジ山に螺合する態様が挙げられる。
【0052】
ネジ61を孔部62のネジ山に螺合していくことで、第1スリット部51が形成された第1面11が第2面12方向へ変形し、第2スリット部71が形成された第2面12が第1面11方向へ変形する。第1面11が第2面12方向へ変形し、第2面12が第1面11方向へ変形することで、空洞部41に嵌合されている連結挿入部31は、空洞部41に締め付け固定される。
【0053】
ベース体10の材質としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオキシメチレン等の樹脂、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属が挙げられる。また、電線固定体20の材質としては、ポリアミド等の樹脂が挙げられる。
【0054】
次に、本発明の実施形態例に係る成形用具1の使用方法例を説明する。図6は、本発明の実施形態例に係る電線経路規制部材を成形するための成形用具の使用方法例の説明図である。
【0055】
図6に示すように、複数の成形用具1、1、1・・・を準備し、複数の成形用具1、1、1・・・を用いて、電線100の所定の経路規制に従って3次元的にベース体10の第1面11を配置する。ベース体10の連結部30を隣接する他の成形用具1の係合部40に係合させて成形用具1のベース体10と隣接する他の成形用具1のベース体10を連結さする際に、係合部40に対する連結部30の角度が3次元的に調整可能なので、係合部40に対する連結部30の角度を調整することで、電線100の所定の経路規制に従って、ベース体10の第1面11を3次元的に配置することができる。
【0056】
次に、例えば、シート状の光硬化性樹脂を有する部材101をベース体10の第1面11上に載置し、光硬化性樹脂を有する部材101の上にさらに電線100を載置し、略半円弧状に伸延した電線固定体20にて電線100の周面に光硬化性樹脂を有する部材101を筒状に巻き、電線固定体20の他方端23に位置する所定の係止爪21を電線固定体係止部16の係止片に係止することで、電線固定体20に光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を挿通した状態とし、光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を、ベース体10の第1面11に、固定、支持する。光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100をベース体10の第1面11に、固定、支持する際に、光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を3次元的に配置された第1面11の経路に追従させる。
【0057】
次に、光硬化性樹脂を有する部材101に光を照射して光硬化性樹脂を光硬化させて光硬化性樹脂を有する部材101から電線経路規制部材102を形成する。その後、電線固定体20を緩めて、電線経路規制部材102を備えた電線100を第1面11から外すことで、電線経路規制部材102で経路が規制された電線100が得られる。
【0058】
電線経路規制部材を成形するための成形用具1では、3次元方向での電線100の経路規制に優れた電線経路規制部材102を成形することができるので、電線経路規制部材102をプロテクタとして備えたワイヤーハーネス等の電線100が、3次元方向まで含めた所定の経路規制に従って、精度よく配索、固定される。また、電線経路規制部材を成形するための成形用具1は、再利用可能であり、成形用具1が再利用されることで、同じ成形用具1で、電線経路規制部材102で経路が規制された電線100が複数生産されることが可能である。
【0059】
成形用具1では、ベース体10が、電線固定体20の他方端23が係止可能な電線固定体係止部16を有するので、電線固定体20の他方端23がベース体10に係止されている状態から解放されることで、電線100のベース体10への固定が解除される。従って、成形用具1では、成形用具1の再利用が可能であり、環境負荷と電線経路規制部材102を成形するための費用を低減することができる。
【0060】
成形用具1では、連結部30が係合部40に嵌合可能な球状部を有する連結挿入部31を備え、係合部40が連結挿入部31の球状部と嵌合可能である内面形状が略球状の空洞部41を備えることにより、ベース体10の第1面11を3次元方向に配列する自由度がさらに向上する。
【0061】
成形用具1では、ベース体10の他端14の端面が、第1面11と第1面11に対向した第2面12の間に、ベース体10の長さ方向Lへの切り込みである第3スリット部81を備え、ベース体10の他端14が、空洞部41に連結挿入部31の球状部を締め付け固定する締付部60を備えることにより、締付部60の締め付け機能によって第1面11と第2面12の鉛直方向から連結部30が係合部40に嵌合された状態を効率よく固定化することができるので、ベース体10の3次元方向の位置関係の固定性が向上する。
【0062】
成形用具1では、係合部40が、第1面11に、ベース体10の幅方向Wに沿って伸延した隙間である第1溝部53を、さらに備えるので、締付部60の締め付けによる係合部40の変形を必要部分に留めることができる。また、成形用具1では、係合部40が、第2面12に、ベース体10の幅方向Wに沿って伸延した隙間である第2溝部を、さらに備えるので、締付部60の締め付けによる係合部40の変形を必要部分に留めることができる。また、成形用具1では、係合部40が、電線100の伸び方向に沿った、第1面11から空洞部41まで連通した第1連通部52と第2面12から空洞部41まで連通した第2連通部72を有し、締付部60が、第1連通部52及び第2連通部72を介して対向に配置されているので、第1連通部52及び第2連通部72を境にベース体10の幅方向W両側において締付部60の締め付け力を調整できるので、連結部30が係合部40に嵌合された状態を効率よく固定化することができる。また、成形用具1では、係合部40が、第1面11に、ベース体10の幅方向Wに沿って伸延した隙間である第1溝部53と、第2面12に、ベース体10の幅方向Wに沿って伸延した隙間である第2溝部と、を有するので、締付部60の締め付けによる係合部40の変形をさらに確実に必要部分に留めることができる。
【0063】
次に、本発明の実施形態例に係る成形用具を用いて、電線経路規制部材で経路が規制された電線を製造する方法について、図1、6、7を用いながら説明する。なお、図7は、本発明の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法における光硬化処理の説明図である。
【0064】
成形用具1を用いた、電線経路規制部材102で経路が規制された電線100の製造方法は、成形用具準備工程と、成形用具配置工程と、光硬化性樹脂を有する部材及び電線準備工程と、光硬化性樹脂を有する部材を備えた電線取り付け工程と、光硬化性樹脂を有する部材を備えた電線追従工程と、光硬化性樹脂の光硬化処理工程と、電線経路規制部材を備えた電線取り外し工程とを有する。
【0065】
成形用具準備工程は、上記した本発明の実施形態例に係る成形用具1を準備する工程である。具体的には、電線100の伸び方向Lの一部を支持する第1面11を有するベース体10と、電線100の伸び方向Lの一部をベース体10に固定する電線固定体20と、を備え、ベース体10の一端13に、他のベース体10と連結可能な連結部30が設けられ、ベース体10の他端14に、他のベース体10の連結部30と係合可能な係合部40が設けられている、電線経路規制部材を成形するための成形用具1を、複数準備する工程である。
【0066】
成形用具配置工程は、ベース体10の連結部30に第1の他のベース体10の係合部40を係合させる、及び/またはベース体10の係合部40に第2の他のベース体10の連結部30を連結させて、電線100の所定の経路規制に従って、ベース体10の第1面11を3次元的に配置する工程である。
【0067】
光硬化性樹脂を有する部材及び電線準備工程は、電線100の伸び方向Lに沿って、光硬化性樹脂を有する部材101を設ける工程である。
【0068】
光硬化性樹脂を有する部材101を電線100に設ける方法としては、例えば、電線固定体20の他方端23を自由端として、光硬化性樹脂製の管材または繊維系素材の管体に光硬化性樹脂が塗布された管材に電線100を挿通してベース体10の第1面11上に載置する方法、ベース体10の第1面11上に光硬化性樹脂製のシートまたはシート状の繊維系素材に光硬化性樹脂が塗布されたシートを載置し、前記シート上にさらに電線100を載置する方法等が挙げられる。光硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等の不飽和二重結合のラジカル重合を用いる樹脂、エポキシなどのカチオン重合を用いる樹脂等を挙げることができる。
【0069】
光硬化性樹脂を有する部材を備えた電線取り付け工程は、略半円弧状に伸延した電線固定体20にて電線100の周面にシート状の光硬化性樹脂を有する部材101を筒状に巻き、電線固定体20の他方端23に位置する所定の係止爪21を電線固定体係止部16の係止片に係止する、または、電線100を挿通した上記管材を第1面11上に載置した状態で電線固定体20の他方端23に位置する所定の係止爪21を電線固定体係止部16の係止片に係止することで、電線固定体20に光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を挿通した状態とし、ベース体10の第1面11に、固定、支持する工程である。
【0070】
光硬化性樹脂を有する部材を備えた電線追従工程は、電線固定体20の他方端23を電線固定体係止部16に係止した電線固定体20を締めて、光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を、3次元的に配置された第1面11の経路に沿って追従させる工程である。
【0071】
光硬化性樹脂の光硬化処理工程は、光硬化性樹脂を有する部材101に光を照射して光硬化性樹脂を光硬化させて電線経路規制部材102を形成する工程である。
【0072】
図7に示すように、光硬化処理の方法としては、例えば、紫外線等の光200の光源201と光200を反射するミラー等の光反射部202との間に、ベース体10の第1面11に固定された状態である光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を配置する方法が挙げられる。
【0073】
光源201と光反射部202との間に、光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を配置することにより、光硬化性樹脂を有する部材101全体を均一に光硬化することができる。また、光硬化性樹脂を有する部材101の周方向全体を光硬化するには、複数の方向から光を照射する場合があるところ、光源201と光反射部202との間に、光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を配置することにより、1度の光硬化処理及び1つの光源201にて光硬化性樹脂を有する部材101の周方向全体を光硬化できるので、光硬化処理工程を簡易化、短縮化することができる。
【0074】
電線経路規制部材を備えた電線取り外し工程は、電線固定体20の他方端23を自由端とすることで電線固定体20を緩めて、電線経路規制部材102を備えた電線100をベース体10の第1面11から解放する工程である。
【0075】
次に、電線経路規制部材で経路が規制された電線の他の製造方法について説明する。なお、図8は、本発明の電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法の説明図である。
【0076】
図8に示すように、電線経路規制部材で経路が規制された電線の他の製造方法では、本発明の実施形態例に係る成形用具1に代えて、連結部30が設けられておらず、ベース体10の第2面12に支持体35が設けられている成形用具1’が使用されている。他の製造方法では、支持体35の長さと配置を選択することで、ベース体10の第1面11を3次元的に配置する。
【0077】
従って、電線経路規制部材で経路が規制された電線の他の製造方法では、電線100の伸び方向の一部を支持する第1面11を有するベース体10と、電線100の伸び方向の一部をベース体10に固定する電線固定体20と、を備えた、電線経路規制部材を成形するための成形用具1’を、複数準備する工程と、ベース体10の第1面11に対向した第2面12に設けられた支持体35にて、電線100の所定の経路規制に従って、第1面11を3次元的に配置する工程と、電線100の伸び方向に沿って、光硬化性樹脂を有する部材101を設ける工程と、略半円弧状に伸延した電線固定体20にて電線100の周面にシート状の光硬化性樹脂を有する部材101を筒状に巻き、電線固定体20の他方端23に位置する所定の係止爪21を電線固定体係止部16の係止片に係止する、または、電線100を挿通した上記管材を第1面11上に載置した状態で電線固定体20の他方端23に位置する所定の係止爪21を電線固定体係止部16の係止片に係止することで、電線固定体20に光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を挿通した状態とし、ベース体10の第1面11に、固定、支持する工程と、電線固定体20の他方端23を電線固定体係止部16に係止した電線固定体20を締めて、光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を、3次元的に配置された第1面11の経路に沿って追従させる工程と、光硬化性樹脂を有する部材101に光を照射して光硬化性樹脂を光硬化させて電線経路規制部材102を形成する工程と、電線固定体20を緩めて、電線経路規制部材102を備えた電線100を第1面11から解放する工程と、を含む。
【0078】
上記した電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法及び他の製造方法では、光硬化性樹脂を有する部材及び電線準備工程と、電線固定体20に光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を挿通した状態とし、ベース体10の第1面11に、固定、支持する工程と、電線固定体20を締めて、光硬化性樹脂を有する部材101が設けられた電線100を、3次元的に配置された第1面11の経路に沿って追従させる工程と、光硬化性樹脂を光硬化させて光硬化性樹脂を有する部材101から電線経路規制部材102を形成する工程と、を含むことにより、3次元方向での電線100の経路規制に優れた電線経路規制部材102を成形することができる。従って、3次元方向での経路規制に優れた電線経路規制部材102にて経路規制された電線100を製造することができる。また、成形用具1、1’は再利用可能であり、成形用具1、1’を再利用することで、同じ成形用具1、1’で、電線経路規制部材102で経路が規制された電線100を複数生産することができる。
【0079】
また、上記した電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法及び他の製造方法では、光硬化性樹脂を光硬化させて形成した電線経路規制部材102は、電線100のプロテクタとして機能するので、車両振動による衝撃、摩耗等から、経路規制された電線100を保護することができる。
【0080】
また、上記した電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法及び他の製造方法では、光硬化性樹脂を光硬化させて光硬化性樹脂を有する部材101から電線経路規制部材102を形成する際に、3次元方向で経路規制された電線100に対する電線経路規制部材102の位置決めがされるので、別途、テープ等を用いて電線100に電線経路規制部材102を固定する固定処理が不要となり、作業性が向上する。
【0081】
また、上記した電線経路規制部材で経路が規制された電線の製造方法及び他の製造方法では、電線の外周面に設けられた光硬化性樹脂を有する部材101を光硬化処理して電線経路規制部材102を形成するので、車体に電線100を取り付ける際の固定点間の距離が離れていても電線経路規制部材102が重力方向下方へ撓むのを防止できるので、車体に電線100を取り付ける際の固定点の設置数を低減することができる。
【0082】
また、上記した電線経路規制部材で経路が規制された電線の他の製造方法では、支持体35の長さと配置を選択することで、ベース体10の第1面11を3次元的に配置するので、ベース体10の第1面11を3次元方向に配列する自由度がさらに向上する。
【符号の説明】
【0083】
1 成形用具
10 ベース体
11 第1面
12 第2面
13 一端
14 他端
15 電線固定体固定部
16 電線固定体係止部
20 電線固定体
30 連結部
31 連結挿入部
40 係合部
41 空洞部
51 第1スリット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8