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特開2024-143782発色性組成物、パターニング材料、黒色組成物の製造方法、及び黒色パターンの形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143782
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発色性組成物、パターニング材料、黒色組成物の製造方法、及び黒色パターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20241003BHJP
   G03F 7/004 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C09B67/20 F
G03F7/004 507
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056657
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水村 理俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正弥
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AM23P
2H225AN32P
2H225AN47P
2H225AN49P
2H225AN53P
2H225AN62P
2H225AN63P
2H225AN68P
2H225AN82P
2H225BA17P
2H225BA18P
2H225CA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ベンゾジフラノン骨格を有する色材前駆体の有機溶剤に対する溶解性の向上を実現し得る発色性組成物、並びに、パターニング材料、黒色組成物の製造方法、及び黒色パターンの形成方法の提供。
【解決手段】式(1)で表される化合物及び塩基を含む発色性組成物及びその応用。

〔X、X、X、X、Y及びYは、O、S又はN-L;Lは、H、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基等;A、B及びCは、芳香環を表す。〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物及び塩基を含む発色性組成物。
【化1】


式(1)中、X、X、X、X、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はN-Lを表す。Lは、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアミノカルボニル基を表す。A、B及びCは、それぞれ独立に、芳香環を表す。
【請求項2】
前記式(1)中、X、X、X及びXは、酸素原子である請求項1に記載の発色性組成物。
【請求項3】
前記式(1)中、X、X、X、X及びYは、酸素原子である請求項1に記載の発色性組成物。
【請求項4】
さらに樹脂を含む請求項1に記載の発色性組成物。
【請求項5】
下記式(1)で表される化合物及び塩基を含むパターニング材料。
【化2】


式(1)中、X、X、X、X、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はN-Lを表す。Lは、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアミノカルボニル基を表す。A、B及びCは、それぞれ独立に、芳香環を表す。
【請求項6】
前記式(1)中、X、X、X及びXは、酸素原子である請求項5に記載のパターニング材料。
【請求項7】
下記式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物A1を準備した後、前記混合物A1と有機溶剤とを混合する工程A1、又は、下記式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物A2を準備した後、前記混合物A2と塩基とを混合する工程A2を含む黒色組成物の製造方法。
【化3】


式(1)中、X、X、X、X、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はN-Lを表す。Lは、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアミノカルボニル基を表す。A、B及びCは、それぞれ独立に、芳香環を表す。
【請求項8】
下記式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物a1を準備した後、前記混合物a1と有機溶剤とを混合することにより、第1の黒色組成物を得る工程a1、又は、下記式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物a2を準備した後、前記混合物a2と塩基とを混合することにより、第1の黒色組成物を得る工程a2と、
基材上に、前記第1の黒色組成物を付与して第1の黒色組成物層を形成する工程bと、
前記第1の黒色組成物層をパターン露光する工程cと、
前記第1の黒色組成物層を現像する工程dと、
をこの順に含み、
前記工程cの後に、前記第1の黒色組成物層を加熱することにより第2の黒色組成物層を得る工程eを含む黒色パターンの形成方法。
【化4】


式(1)中、X、X、X、X、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はN-Lを表す。Lは、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアミノカルボニル基を表す。A、B及びCは、それぞれ独立に、芳香環を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発色性組成物、パターニング材料、黒色組成物の製造方法、及び黒色パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材が知られている。
例えば、特許文献1には、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色顔料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/038083号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材は、有機溶剤に対する溶解性の低さから、染料としての利用がほとんどなされていない。有機溶剤に対する溶解性を高めることができれば、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材の利用の幅を広げることができる。特に、多方面での活用という点においては、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材の前駆体の有機溶剤に対する溶解性を高めることが望ましい。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材前駆体の有機溶剤に対する溶解性の向上を実現し得る発色性組成物、並びに、パターニング材料、黒色組成物の製造方法、及び黒色パターンの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される化合物及び塩基を含む発色性組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
式(1)中、X、X、X、X、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はN-Lを表す。Lは、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアミノカルボニル基を表す。A、B及びCは、それぞれ独立に、芳香環を表す。
【0009】
<2> 上記式(1)中、X、X、X及びXは、酸素原子である<1>に記載の発色性組成物。
<3> 上記式(1)中、X、X、X、X及びYは、酸素原子である<1>に記載の発色性組成物。
<4> さらに樹脂を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の発色性組成物。
【0010】
<5> 下記式(1)で表される化合物及び塩基を含むパターニング材料。
【0011】
【化2】

【0012】
式(1)中、X、X、X、X、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はN-Lを表す。Lは、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアミノカルボニル基を表す。A、B及びCは、それぞれ独立に、芳香環を表す。
【0013】
<6> 上記式(1)中、X、X、X及びXは、酸素原子である<5>に記載のパターニング材料。
【0014】
<7> 下記式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物A1を準備した後、上記混合物A1と有機溶剤とを混合する工程A1、又は、下記式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物A2を準備した後、上記混合物A2と塩基とを混合する工程A2を含む黒色組成物の製造方法。
【0015】
【化3】

【0016】
式(1)中、X、X、X、X、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はN-Lを表す。Lは、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアミノカルボニル基を表す。A、B及びCは、それぞれ独立に、芳香環を表す。
【0017】
<8> 下記式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物a1を準備した後、上記混合物a1と有機溶剤とを混合することにより、第1の黒色組成物を得る工程a1、又は、下記式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物a2を準備した後、上記混合物a2と塩基とを混合することにより、第1の黒色組成物を得る工程a2と、
基材上に、上記第1の黒色組成物を付与して第1の黒色組成物層を形成する工程bと、
上記第1の黒色組成物層をパターン露光する工程cと、
上記第1の黒色組成物層を現像する工程dと、
をこの順に含み、
上記工程cの後に、上記第1の黒色組成物層を加熱することにより第2の黒色組成物層を得る工程eを含む黒色パターンの形成方法。
【0018】
【化4】

【0019】
式(1)中、X、X、X、X、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はN-Lを表す。Lは、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアミノカルボニル基を表す。A、B及びCは、それぞれ独立に、芳香環を表す。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一実施形態によれば、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材前駆体の有機溶剤に対する溶解性の向上を実現し得る発色性組成物、並びに、パターニング材料、黒色組成物の製造方法、及び黒色パターンの形成方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示について詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0022】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0023】
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の成分の合計量を意味する。
【0024】
本開示において、2つ以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0025】
本開示において「固形分」とは、溶媒を除く成分を意味し、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
【0026】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0027】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アリル」は「メタアリル」及び「アリル」の両方を包含する用語である。
【0028】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0029】
本開示において、「光」とは、例えば、紫外線、可視光、赤外光等を指す。
本開示において、「紫外線」とは、200nm以上400nm未満の波長域の光を指し、「可視光」とは、400nm以上780nm未満の波長域の光を指し、「赤外光」とは、780nm以上1000nmの光を指す。
【0030】
本開示において、分子量分布がある場合の分子量は、特に断りがない限り、重量平均分子量(Mw;以下、同じ。)を表す。
【0031】
本開示における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
GPCによる測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8220GPC〔東ソー(株)製〕を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標) Super HZ2000〔4.6mmID×15cm、東ソー(株)製〕、TSKgel(登録商標) Super HZ4000〔4.6mmID×15cm、東ソー(株)製〕、及びTSKgel(登録商標) Super HZ-H〔4.6mmID×15cm、東ソー(株)製〕の3本を直列に接続し、溶離液としてN-メチルピロリドン(NMP)を用いる。測定条件としては、試料濃度を0.3質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、及び測定温度を40℃とし、検出器として、示差屈折率(RI:Refractive Index)検出器を用いる。検量線は、東ソー(株)製の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-80」、「F-20」、「F-4」、「F-2」、「A-5000」、及び「A-1000」の6サンプルから作製する。
【0032】
本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものとともに、置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(「無置換アルキル基」ともいう。)のみならず、置換基を有するアルキル基(「置換アルキル基」ともいう。)をも包含するものである。
【0033】
本開示における「置換基」は、特に限定されず、例えば、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、スルホ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシ基、カルバモイル基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールアゾ基、複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、及びホスフィニルアミノ基からなる置換基群の中から、任意に選択することができる。
【0034】
本開示における置換基としては、より詳細には、例えば、ハロゲン基(例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、及びヨード基)、アルキル基(1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルキル基;例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-オクチル基、2-クロロエチル基、2-シアノエチル基、及び2-エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、シクロプロピル基、及びシクロペンチル基)、アルケニル基(2個~10個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルケニル基;例えば、ビニル基、アリル基、及びプレニル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、シクロペンテン-1-イル基)、アルキニル基(2個~10個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有するアルキニル基;例えば、エチニル基、及びプロパルギル基)、アリール基(6個~12個、好ましくは6個~8個の炭素原子を有するアリール基;例えば、フェニル基、p-トリル基、ナフチル基、3-クロロフェニル基、及び2-アミノフェニル基)、複素環基(5員環又は6員環の芳香族又は非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる、1個~12個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有する一価の基;例えば、1-ピラゾリル基、1-イミダゾリル基、2-フリル基、2-チエニル基、4-ピリミジニル基、及び2-ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基(1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルコキシ基;例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、2-ブテン-1-イルオキシ基、及び2-メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(6個~12個、好ましくは6個~8個の炭素原子を有するアリールオキシ基;例えば、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、4-t-ブチルフェノキシ基、及び3-ニトロフェノキシ基)、
【0035】
複素環オキシ基(1個~12個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有する複素環オキシ基;例えば、1-フェニルテトラゾール-5-オキシ-2-テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(1個~12個、好ましくは1個~8個の炭素原子を有するアシルオキシ基;例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、及びp-メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するカルバモイルオキシ基;例えば、N,N-ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N-ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、及びN,N-オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(2個~10個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシ基;例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t-ブトキシカルボニルオキシ基、及びn-オクチルオキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(7個~12個、好ましくは7個~10個の炭素原子を有するアリールオキシカルボニルオキシ基;例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、及びp-メトキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(アミノ基;1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するアルキルアミノ基;6個~12個、好ましくは6個~8個の炭素原子を有するアニリノ基;或いは1個~12個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有する複素環アミノ基;例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル-アニリノ基、ジフェニルアミノ基、イミダゾール-2-イルアミノ基、及びピラゾール-3-イルアミノ基を含む)、アシルアミノ基(1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するアルキルカルボニルアミノ基;6個~12個、好ましくは6個~8個の炭素原子を有するアリールカルボニルアミノ基;或いは2個~12個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有する複素環カルボニルアミノ基;例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ピリジン-4-カルボニルアミノ基、及びチオフェン-2-カルボニルアミノ基を含む)、アミノカルボニルアミノ基(1個~12個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するアミノカルボニルアミノ基;例えば、カルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ基、及びモルホリン-4-イルカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(2個~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルアミノ基;例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、及びt-ブトキシカルボニルアミノ基)、
【0036】
アリールオキシカルボニルアミノ基(7個~12個、好ましくは7個~9個の炭素原子を有するアリールオキシカルボニルアミノ基;例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ基、及び4-メトキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(0個~10個、好ましくは0個~6個の炭素原子を有するスルファモイルアミノ基;例えば、スルファモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ基、及びN-(2-ヒドロキシエチル)スルファモイルアミノ基)、アルキルスルホニルアミノ基(1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するアルキルスルホニルアミノ基;例えば、メチルスルホニルアミノ基、及びブチルスルホニルアミノ基)、アリールスルホニルアミノ基(6個~12個、好ましくは6個~8個の炭素原子を有するアリールスルホニルアミノ基;例えば、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5-トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、及びp-メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するアルキルチオ基;例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、及びブチルチオ基)、アリールチオ基(6個~12個、好ましくは6個~8個の炭素原子を有するアリールチオ基;例えば、フェニルチオ基、p-クロロフェニルチオ基、及びm-メトキシチオ基)、複素環チオ基(2個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有する複素環チオ基;例えば、2-ベンゾチアゾリルチオ基、及び1-フェニルテトラゾール-5-イルチオ基)、スルファモイル基(0個~10個、好ましくは0個~6個の炭素原子を有するスルファモイル基;例えば、スルファモイル基、N-エチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、N-アセチルスルファモイル基、及びN-ベンゾイルスルファモイル基)、アルキルスルフィニル基(1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するアルキルスルフィニル基;例えば、メチルスルフィニル基、及びエチルスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(6個~12個、好ましくは6個~8個の炭素原子を有するアリールスルフィニル基;例えば、フェニルスルフィニル基、及びp-メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基;例えば、メチルスルホニル基、及びエチルスルホニル基)、アリールスルホニル基(6個~12個、好ましくは6~8個の炭素原子を有するアリールスルホニル基;例えば、フェニルスルホニル基、及びp-クロロフェニルスルホニル基)、スルホ基、アシル基(ホルミル基;2個~10個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有するアルキルカルボニル基;或いは7個~12個、好ましくは7個~9個の炭素原子を有するアリールカルボニル基;例えば、アセチル基、ピバロイル基、2-クロロアセチル基、ベンゾイル基、及び2,4-ジクロロベンゾイル基)、
【0037】
アルコキシカルボニル基(2個~10個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基;例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、及びイソブチルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(7個~12個、好ましくは7個~9個の炭素原子を有するアリールオキシカルボニル基;例えば、フェノキシカルボニル-2-クロロフェノキシカルボニル基、3-ニトロフェノキシカルボニル基、及び4-t-ブチルフェノキシカルボニル基)、カルバモイル基(1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するカルバモイル基;例えば、カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル基、及びN-(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールアゾ基(6個~12個、好ましくは6個~8個の炭素原子を有するアリールアゾ基;例えば、フェニルアゾ基、及びp-クロロフェニルアゾ基)、複素環アゾ基(1個~10個、好ましくは1個~6個の炭素原子を有する複素環アゾ基;例えば、ピラゾール-3-イルアゾ基、チアゾール-2-イルアゾ基、及び5-メチルチオ-1,3,4-チアジアゾール-2-イルアゾ基)、イミド基(2個~10個、好ましくは4個~8個の炭素原子を有するイミド基;例えば、スクシンイミド基、及びフタルイミド基)、ホスフィノ基(2個~12個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有するホスフィノ基;例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、及びメチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(2個~12個の炭素原子、好ましくは2個~6個の炭素原子を有するホスフィニル基;例えば、ホスフィニル基、及びジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(2個~12個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有するホスフィニルオキシ基;例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、及びジブトキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(2個~12個、好ましくは2個~6個の炭素原子を有するホスフィニルアミノ基;例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、及びジメチルアミノホスフィニルアミノ基)が挙げられる。
【0038】
これらの基が更に置換され得る基である場合、これらの基は更に置換基を含むことができる。これらの基が二以上の置換基で置換される場合、これらの置換基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
[発色性組成物]
本開示に係る発色性組成物は、式(1)で表される化合物及び塩基を含む。
本開示に係る発色性組成物によれば、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材前駆体の有機溶剤に対する溶解性の向上を実現し得る。
【0040】
本発明者らは、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材に関し、鋭意検討を重ねる過程で、ある特定の条件で構造が変化して無色から黒色に発色する、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材前駆体である式(1)で表される化合物を開発するに至った。さらに、本発明者らは、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材前駆体である式(1)で表される化合物が、ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材とは異なり、有機溶剤に対する溶解性に比較的優れること、及び、式(1)で表される化合物が塩基と組み合わせて溶液状態になると高い溶解性を維持したまま発色することを見出し、本開示に係る発色性組成物を完成するに至った。
【0041】
ベンゾジフラノン骨格を有する黒色材前駆体である式(1)で表される化合物が、有機溶剤に対して高い溶解性を有し、かつ、塩基と組み合わせることで高い溶解性を維持したまま発色する理由について、本発明者らは、以下のように推測している。
式(1)で表される化合物には、式(1)中のラクトン環及び/又はラクタム環のケトンのα位の不斉炭素に由来するジアステレオマーが複数存在し得る。これら複数のジアステレオマーの存在により、式(1)で表される化合物は、有機溶剤に対する溶解性に優れると推測される。また、式(1)で表される化合物は、塩基と組み合わせることで、有機溶剤中において、ラクトン環及び/又はラクタム環のケトンのケト-エノール互変異性体の混合物として、より存在しやすくなると考えられる。このため、式(1)で表される化合物の有機溶剤に対する溶解性は、塩基と組み合わせることによって、高い状態で維持されると推測される。
【0042】
式(1)で表される化合物は、塩基と組み合わせて溶液状態になると、高い溶解性を維持したまま無色から黒色に変化する。式(1)で表される化合物の黒発色の機構の詳細は明らかではないが、本発明者らは、ベンゾジフラノン骨格のケト-エノール互変異性化が関係しているのではないかと推測している。詳細には、式(1)で表される化合物に塩基が作用することで、式(1)中のラクトン環及び/又はラクタム環のケトンのα位のプロトンが引き抜かれ、ケト体からエノール体に互変異性化し、黒発色するのではないかと推測している。
【0043】
なお、式(1)で表される化合物に起因する黒発色は、加熱によって促進される。本開示の発色性組成物は、有機溶剤に溶解させた後、加熱されることで、より明度の低い黒色を呈する。式(1)で表される化合物に起因する黒発色が加熱により促進される機構は定かではないが、本発明者らは、以下のように推測している。式(1)で表される化合物は、塩基の作用によりケト体からエノール体への互変異性化した後、空気中の酸素と反応して、式(1)中の4つのH(水素原子)が脱離して、水素原子間の単結合が二重結合となり、共役が伸びることで、吸収する光の波長がより可視領域に変化し、より明度の低い黒色を発色すると推測される。
発色を促進させる際の加熱温度は、溶媒、樹脂等の媒体に影響を及ぼさない温度であれば高いほど好ましく、例えば、溶媒の場合には、溶媒の沸点よりも低い温度であることが好ましく、樹脂の場合には、樹脂の分解温度よりも低い温度であることが好ましい。
【0044】
<式(1)で表される化合物>
本開示に係る発色性組成物は、下記式(1)で表される化合物を含む。
式(1)で表される化合物は、黒色材前駆体として機能する。
【0045】
式(1)で表される化合物に、互変異性体、幾何異性体及び光学異性体からなる群より選ばれる少なくとも1種の異性体が存在する場合、その存在する異性体は、式(1)で表される化合物に包含される。
なお、「互変異性体」とは、例えば、一つの化合物が容易に一方から他方に相互変換しうる2種以上の異性体として存在するものを指す。互変異性体としては、例えば、分子中の1個の原子に結合しているプロトンが他の原子に移動することによって生じる異性体、及び分子中の特定の原子に局在化した電価が他の原子に移動することによって生じる異性体が挙げられる。
【0046】
【化5】

【0047】
式(1)で表される化合物の詳細を説明する。
式(1)中、X、X、X、X、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はN-Lを表す。
【0048】
、X、X及びXは、発色性の観点から、酸素原子であることが好ましい。
【0049】
式(1)中、2つあるYは、同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。Yは、酸素原子であることが好ましい。
式(1)中、2つあるYは、同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。Yは、酸素原子又はN-Lであることが好ましく、酸素原子であることが好ましい。
【0050】
は、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアミノカルボニル基を表す。Lは、水素原子、アルキル基、アシル基、又はアルコキシカルボニル基であることが好ましく、アルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基であることがより好ましい。
【0051】
で表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。Lで表されるアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分枝を有するアルキル基であってもよく、環状構造を有するアルキル基であってもよい。
で表されるアルキル基は、炭素数1~30のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましい。
で表されるアルキル基としては、例えば、s-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、イソプロピル基、n-ペンチル基、2-エチルヘキシル基又は2-ブチルオクチル基が好ましい。
【0052】
で表されるアシル基は、炭素数2~30のアシル基であることが好ましく、炭素数2~15のアシル基であることがより好ましい。
で表されるアシル基としては、例えば、アセチル基、2-エチルヘキサノイル基、3,3,5-トリメチルヘキサノイル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基又はピバロイル基が好ましい。
【0053】
で表されるアルコキシカルボニル基は、アルコキシ部位の炭素数が1~30のアルコキシカルボニル基であることが好ましい。
で表されるアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基又は2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル基が好ましい。
【0054】
式(1)中、X、X、X、X及びYは、いずれも酸素原子であることが好ましく、Yは、N-Lであり、Lがアルキル基であることが好ましい。
【0055】
A、B及びCは、それぞれ独立に、芳香環を表す。
Aで表される芳香環と、Bで表される芳香環とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。A及びBで表される芳香環は、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。A及びBで表される芳香環は、例えば、芳香族炭化水素環であってもよく、芳香族複素環であってもよく、これらの縮合環であってもよい。
【0056】
A及びBで表される芳香環が芳香族炭化水素環である場合、A及びBで表される芳香族炭化水素環は、5員環又は6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
A及びBで表される芳香環が芳香族炭化水素環である場合、A及びBで表される芳香族炭化水素環は、炭素数6~30の芳香族炭化水素環であることが好ましく、炭素数6~20の芳香族炭化水素環であることがより好ましく、炭素数6~10の芳香族炭化水素環であることが更に好ましい。
A及びBで表される芳香環が芳香族炭化水素環である場合、Aで表される芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0057】
A及びBで表される芳香環が芳香族複素環である場合、A及びBで表される芳香族複素環は、5員環又は6員環であることが好ましく、5員環であることがより好ましい。
A及びBで表される芳香環が芳香族複素環である場合、A及びBで表される芳香族複素環は、環内に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれるヘテロ原子の一種以上を含む芳香族複素環であることが好ましい。芳香族複素環のヘテロ原子の数は、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
A及びBで表される芳香環が芳香族複素環である場合、A及びBで表される芳香族複素環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環又はピリジン環が好ましく、チオフェン環がより好ましい。
【0058】
Cで表される芳香環は、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。
Cで表される芳香環としては、例えば、ベンゼン環及び芳香族ヘテロ環が挙げられる。
ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環及びピラジン環が挙げられる。
Cで表される芳香環としては、ベンゼン環が好ましい。
【0059】
式(1)で表される化合物の好ましい態様は、X、X、X、X及びYが、酸素原子であり、A及びBが、ベンゼン環であり、Cがベンゼン環である態様である。
式(1)で表される化合物のより好ましい態様は、X、X、X、X及びYが、酸素原子であり、Yが、N-Lであり、Lが、アルキル基であり、A及びBが、ベンゼン環であり、Cがベンゼン環である態様である。
【0060】
以下に、式(1)で表される化合物の具体例を記載するが、本開示は、これらの例によって限定されるものではない。
【0061】
【化6】
【0062】
【化7】
【0063】
【化8】
【0064】
【化9】
【0065】
【化10】
【0066】
式(1)で表される化合物としては、上記具体例の中でも、化合物(1)~化合物(32)及び化合物(41)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、化合物(1)~化合物(16)及び化合物(41)からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、化合物(41)が更に好ましい。
【0067】
式(1)で表される化合物は、無色の化合物である。
本開示おいて、「無色」の化合物とは、下記の要件Aを満たす化合物を指す。
【0068】
(要件A)化合物1.1mgをテトラヒドロフラン(THF)50mLに溶解させる。得られた溶液を1cmセルに入れ、測定装置として分光光度計を用い、吸収スペクトルを測定する。測定した吸収スペクトルにおいて、波長400nm~700nmの範囲内のモル吸光係数(ε)が、100L/(mol・cm)以下であること。
【0069】
本開示において、化合物が「黒色」に発色している状態とは、下記の要件B及び要件Cを満たす状態を指す。
【0070】
(要件B)分光光度計を用いて測定した溶液状態の化合物の吸収スペクトルにおいて、極大吸収波長が波長400nm~700nmの範囲内にあること。
(要件C)分光光度計を用いて測定した溶液状態の化合物の吸収スペクトルにおいて、波長400nm~700nmの範囲内のモル吸光係数(ε)が、300L/(mol・cm)以上であること。
【0071】
本開示に係る発色性組成物は、式(1)で表される化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0072】
本開示に係る発色性組成物における式(1)で表される化合物の含有率は、特に限定されないが、例えば、発色性組成物の全固形分質量に対して、0.05質量%~50質量%であることが好ましく、0.25質量%~40質量%であることがより好ましく、0.5質量%~30質量%であることが更に好ましい。
【0073】
<<式(1)で表される化合物の製造方法>>
式(1)で表される化合物の製造方法は、特に限定されない。
式(1)で表される化合物は、公知の方法を参照することにより製造できる。
式(1)で表される化合物は、例えば、公知の文献を参考に、イサチンを出発物質としてイサチン誘導体を合成し、次いで、合成したイサチン誘導体と、3,7-Dihydrobenzo [1, 2-b :4,5-b'] difuran-2,6-dioneと、を酸触媒下、有機溶剤中で反応させ、次いで、反応により得られた化合物を、還元させることにより製造できる。
【0074】
イサチン誘導体の合成方法は、例えば、J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 15947-15956、Journal of Medicinal Chemistry, 2008, 51, 4932-4947、Chemistry-A European Journal, 2021, 27, 4302-4306、Org. Lett., 2021, 23, 2273-2278等の文献に記載がある。これらの文献の記載は、参照により本明細書に取り込まれる。
有機溶剤としては、例えば、エーテル系有機溶剤が挙げられ、テトラヒドロフラン(THF)及び/又は1,4-ジオキサンが好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。
反応により得られた化合物の還元方法としては、例えば、亜鉛粉末、トリフルオロ酢酸、酢酸、塩酸等の還元剤を用いた方法が挙げられる。また、還元は、パラジウム触媒を用いた接触還元であってもよい。還元方法としては、亜鉛粉末を用いた還元(所謂、亜鉛還元)又はパラジウム触媒を用いた接触還元が好ましく、亜鉛還元がより好ましい。
反応温度は、特に限定されないが、例えば、20℃~40℃であることが好ましく、30℃~40℃であることがより好ましい。
反応時間は、特に限定されないが、例えば、1時間~6時間であることが好ましく、1時間~2時間であることがより好ましい。
式(1)で表される化合物は、後述の実施例に記載の方法により好適に製造できる。
【0075】
<塩基>
本開示に係る発色性組成物は、塩基を含む。
塩基の種類は、特に限定されない。
塩基としては、例えば、無機塩基及び有機塩基が挙げられる。
無機塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カルシウム等のリン酸塩;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;酢酸ナトリウム等の酢酸塩;アンモニア;などが挙げられる。
有機塩基としては、エチルアミン等の第一級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン等の第二級アミン;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の第三級アミン;ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミン;ピロリジン、ピペリジン等の環状脂肪族アミン;などが挙げられる。
【0076】
塩基は、例えば、光塩基発生剤及び/又は熱塩基発生剤により発生する塩基であってもよい。光塩基発生剤は、光照射により塩基を発生し、熱塩基発生剤は、加熱により塩基を発生する。
【0077】
塩基は、発色性の観点から、有機溶剤に対する溶解性が高いことが好ましい。
塩基は、有機塩基であることが好ましく、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン及びピペリジンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0078】
本開示に係る発色性組成物は、塩基を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0079】
本開示に係る発色性組成物における塩基の含有量は、式(1)で表される化合物の含有量に対して、質量基準で、0.5倍量~10.0倍量であることが好ましく、1.0倍量~7.5倍量であることがより好ましく、1.2倍量~5.0倍量であることが更に好ましい。
【0080】
<樹脂>
本開示に係る発色性組成物は、さらに樹脂を含んでいてもよい。
本開示に係る発色性組成物を、例えば、膜(例えば、フィルム)を形成するための材料、又は、成形体を製造するための材料として用いる場合、樹脂は、バインダーとして機能し得る。
樹脂の種類は、特に限定されない。
樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。
本開示において、熱可塑性樹脂とは、加熱すると軟化して可塑性を示し、冷却すると硬化する樹脂を意味する。
本開示において、熱硬化性樹脂とは、加熱すると硬化する樹脂を意味する。また、本開示において、熱硬化性樹脂には、加熱により架橋構造等を形成し、一部又は完全に硬化が完了した樹脂が含まれる。
【0081】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂が挙げられる。
【0082】
熱可塑性樹脂の融点は、特に限定されないが、例えば、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることが更に好ましい。熱可塑性樹脂の融点の上限は、特に制限されないが、例えば、200℃未満であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。
【0083】
熱可塑性樹脂の融点は、JIS K 7121:2012に準拠し、測定装置として示差走査熱量計を用い、熱可塑性樹脂を30℃から600℃まで、10℃/分の昇温速度で昇温することにより測定する。
示差走査熱量計としては、例えば、(株)日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計(型番:DSC7000X)を用いることができる。
【0084】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム及びシリコーンゴムが挙げられる。
【0085】
樹脂の詳細については、例えば、特開2009-263616号公報の段落[0075]~[0097]の記載を参酌することができ、この内容は、本明細書に取り込まれる。
【0086】
樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であってもよい。
本開示において、「アルカリ可溶性」とは、25℃の1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に可溶であることをいう。また、「可溶である」とは、100mLの溶剤に0.1g以上溶解することをいう。
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶性を促進する基(以下、「酸基」ともいう。)を有する樹脂であることが好ましい。
酸基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、及びフェノール性ヒドロキシ基が挙げられる。
これらの中でも、酸基としては、カルボキシ基が好ましい。
樹脂は、酸基を有する場合、酸基を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0087】
アルカリ可溶性樹脂は、側鎖にカルボキシ基を有するポリマーであることが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック型樹脂等のアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシ基を有する酸性セルロース誘導体、及び、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させたものが挙げられる。
【0088】
アルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとの共重合体〔所謂、(メタ)アクリル酸共重合体〕であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、及びビニル化合物が挙げられる。
(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、及びポリメチルメタクリレートマクロモノマーが挙げられる。
(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、特開平10-300922号公報に記載のN位置換マレイミド(例:N-フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミド)も挙げられる。
(メタ)アクリル酸共重合体において、(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0089】
アルカリ可溶性樹脂の具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、及びベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が挙げられる。
また、アルカリ可溶性樹脂としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、並びに、特開平7-140654号公報に記載された、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体も好ましい例として挙げられる。
【0090】
アルカリ可溶性樹脂の詳細については、例えば、特開2011-225806号公報、特開2012-208494号公報、及び特開2012-198408号公報の記載を参酌することができ、これらの内容は、本明細書に取り込まれる。
【0091】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、特に限定されないが、例えば、30mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましく、50mgKOH/g~150mgKOH/gであることがより好ましく、70mgKOH/g~120mgKOH/gであることが更に好ましい。
本開示において、酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法に従って、測定される値である。
【0092】
樹脂は、重合性基を有していてもよい。
本開示に係る発色性組成物は、重合性基を有する樹脂を含むと、例えば、より高い硬度を有する膜、成形体等を形成することが可能となる。
重合性基の具体例としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、及びビニルフェニル基が挙げられる。
【0093】
樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、1,000~200,000であることが好ましく、2,000~200,000であることがより好ましく、5,0,000~50,000であることが更に好ましい。
【0094】
本開示に係る発色性組成物は、樹脂を含む場合、樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0095】
本開示に係る発色性組成物が樹脂を含む場合、樹脂の含有率は、特に限定されないが、例えば、発色性組成物の全固形分質量に対して、5質量%~95質量%であることが好ましく、10質量%~90質量%であることがより好ましく、15質量%~85質量%であることが更に好ましい。
【0096】
<その他の成分>
本開示に係る発色性組成物は、その効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述の成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、重合開始剤、重合性化合物、架橋剤(例:硫黄)、酸化防止剤、パラフィンオイル等の滑剤、可塑剤防腐剤、防黴剤、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄及び可溶性硫黄が挙げられる。本開示に係る発色性組成物は、架橋剤として硫黄を含む場合、硫黄を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0097】
<<発色性組成物の用途>>
本開示に係る発色性組成物は、黒色材として好適に用いることができる。また、本開示に係る発色性組成物は、黒色を呈する膜を形成するための材料、又は、黒色を呈する成形体を製造するための材料として好適に用いることができる。
本開示に係る発色性組成物の具体的な用途としては、例えば、赤外線センサーに使用される赤外線(IR)透過黒色材が挙げられる。
また、本開示に係る発色性組成物の具体的な用途としては、例えば、表示素子用の黒色材、具体的には、液晶表示素子用カラーフィルタのブラックマトリックス(所謂、黒色隔壁)に使用される黒色材も挙げられる。本開示に係る発色性組成物は、有機溶剤に溶解させた状態では、比較的明度の高い黒色を呈し、さらに加熱することで、明度の低い黒色を呈することから、ブラックマトリックスの形成に使用できる。
【0098】
本開示に係る発色性組成物をブラックマトリックスの黒色材として使用する場合には、例えば、以下のようにして使用する。
まず、式(1)で表される化合物、塩基、樹脂、重合開始剤、重合性化合物等を含む本開示に係る発色性組成物を調製する。次いで、調製した発色性組成物に有機溶剤を加え、比較的明度の高い黒色を呈する着色組成物(所謂、黒色組成物)を得る。次いで、得られた着色組成物の塗膜を形成した後、フォトマスクを介して塗膜を露光する。次いで、露光後の塗膜を現像する。次いで、現像後の塗膜をポストベークし、硬化膜であるブラックマトリックスを得る。上記にて得られる着色組成物は、比較的明度の高い黒色を呈するため、塗膜は、光を透過し得る。一方、上記にて得られる硬化膜は、塗膜がポストベークの熱により加熱されることで、より明度の低い黒色を呈し、光を遮光できる。
【0099】
[パターニング材料]
本開示に係るパターニング材料は、式(1)で表される化合物及び塩基を含む。
本開示に係るパターニング材料は、本開示に係る発色性組成物の一態様である。
本開示に係るパターニング材料は、黒色パターンを形成するための材料として好適に用いることができる。本開示に係るパターニング材料は、ネガ型のパターニング材料であってもよく、ポジ型のパターニング材料であってもよいが、ネガ型のパターニング材料であることが好ましい。
【0100】
<式(1)で表される化合物>
本開示に係るパターニング材料は、式(1)で表される化合物を含む。
本開示に係るパターニング材料における式(1)で表される化合物は、本開示に係る発色性組成物における式(1)で表される化合物と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0101】
本開示に係るパターニング材料は、式(1)で表される化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0102】
本開示に係るパターニング材料における式(1)で表される化合物の含有率は、特に限定されないが、例えば、パターニング材料の全固形分質量に対して、0.05質量%~50質量%であることが好ましく、0.25質量%~40質量%であることがより好ましく、0.5質量%~30質量%であることが更に好ましい。
【0103】
<塩基>
本開示に係るパターニング材料は、塩基を含む。
本開示に係るパターニング材料における塩基は、本開示に係る発色性組成物における塩基と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0104】
本開示に係るパターニング材料は、塩基を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0105】
本開示に係るパターニング材料における塩基の含有量は、式(1)で表される化合物の含有量に対して、質量基準で、0.5倍量~10.0倍量であることが好ましく、1.0倍量~7.5倍量であることがより好ましく、1.2倍量~5.0倍量であることが更に好ましい。
【0106】
<樹脂>
本開示に係るパターニング材料は、樹脂を含んでいてもよい。
本開示に係るパターニング材料における樹脂は、本開示に係る発色性組成物における樹脂と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0107】
本開示に係るパターニング材料は、樹脂を含む場合、樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0108】
本開示に係るパターニング材料が樹脂を含む場合、樹脂の含有率は、特に限定されないが、例えば、パターニング材料の全固形分質量に対して、10質量%~95質量%であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、30質量%~85質量%であることが更に好ましい。
【0109】
<重合開始剤>
本開示に係るパターニング材料は、重合開始剤を含んでいてもよい。
本開示に係るパターニング材料は、例えば、式(1)で表される化合物、塩基、樹脂、重合開始剤及び重合性モノマーを含むことで、ネガ型のパターニング材料として用いることができる。
【0110】
重合開始剤は、エネルギー付与により重合反応に必要な開始種を発生し得る化合物であればよく、特に限定されない。重合開始剤としては、公知の重合開始剤を使用できる。
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤及び熱重合開始剤が挙げられる。
【0111】
光重合開始剤としては、例えば、紫外線領域から可視領域の光に対して感光性を有するものが好ましい。また、光重合開始剤は、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
【0112】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例:トリアジン骨格を有する化合物及びオキサジアゾール骨格を有する化合物)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物(例:オキシムエステル化合物)、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、アミノアセトフェノン化合物及びヒドロキシアセトフェノン化合物が挙げられる。
アシルホスフィン化合物としては、例えば、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィン系開始剤が挙げられる。
オキシム化合物としては、例えば、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、及び、特開2016-006475号公報の段落[0073]~[0075]に記載の化合物が挙げられる。オキシム化合物の中では、オキシムエステル化合物が好ましい。
アミノアセトフェノン化合物としては、例えば、特開2009-191179号公報に記載の化合物、及び、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤が挙げられる。
【0113】
式(1)で表される化合物は、例えば、200℃以上に加熱されると、着色するため、重合開始剤が熱重合開始剤の場合には、熱重合開始剤は、例えば、200℃未満の熱により重合反応に必要な開始種を発生し得る化合物であることが好ましい。
【0114】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物、有機過酸化物及び無機過酸化物が挙げられる。
アゾ系化合物の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、ジメチル-1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、及び、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、1,1-ジ(tert-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、tert-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシラウレート、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、クメンヒドロペルオキシド、及び、tert-ブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。
無機過酸化物の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム及び過酸化水素が挙げられる。
【0115】
重合開始剤は、合成品であってもよく、市販品であってもよい。
光重合開始剤の市販品の例としては、TR-PBG-304〔常州強力電子新材料有限公司社製〕、並びに、アデカアークルズ(登録商標) NCI-831、及び、アデカアークルズ(登録商標) NCI-930〔以上、(株)ADEKA製〕が挙げられる。
その他、ヒドロキシアセトフェノン化合物である光重合開始剤の市販品の例としては、Omnirad(登録商標) 184、Omnirad(登録商標) 1173、Omnirad(登録商標) 2959、及びOmnirad(登録商標) 127〔以上、IGM Resins B.V.社製〕が挙げられる。
アミノアセトフェノン化合物である光重合開始剤の市販品の例としては、Omnirad(登録商標) 907、Omnirad(登録商標) 369、Omnirad(登録商標) 369E、及び、Omnirad(登録商標) 379EG〔以上、IGM Resins B.V.社製〕が挙げられる。
アシルホスフィン化合物である光重合開始剤の市販品の例としては、Omnirad(登録商標) 819、及び、Omnirad(登録商標) TPO〔以上、IGM Resins B.V.社製〕が挙げられる。
オキシム化合物である光重合開始剤の市販品の例としては、IRGACURE(登録商標) OXE01、IRGACURE(登録商標) OXE02、及び、IRGACURE(登録商標) OXE03〔以上、BASFジャパン(株)製〕が挙げられる。
【0116】
本開示に係るパターニング材料は、重合開始剤を含む場合、重合開始剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0117】
本開示に係るパターニング材料が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、パターニング材料の全固形分質量に対して、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.2質量%~15質量%であることがより好ましく、0.3質量%~10質量%であることが更に好ましい。
【0118】
<重合性モノマー>
本開示に係るパターニング材料は、重合性モノマーを含んでいてもよい。
重合性モノマーは、エネルギー付与により重合硬化可能な化合物であればよく、特に限定されない。重合性モノマーとしては、公知の重合性モノマーを使用できる。
【0119】
重合性モノマーは、重合性基を有するモノマーであることが好ましい。
重合性基は、エチレン性不飽和結合を有する基であることが好ましい。
重合性基の具体例としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、及び、ビニルフェニル基が挙げられる。
重合性モノマーは、末端エチレン性不飽和結合を1個以上有するモノマーであることが好ましい。
【0120】
重合性モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、及び、不飽和カルボン酸のアミドが挙げられる。
不飽和カルボン酸の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸が挙げられる。
【0121】
重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アミド化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、及びスチレン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0122】
(メタ)アクリル酸アミド化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸アミド、N,N,-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、メチレンビス(アクリルアミド)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及び、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドが挙げられる。
【0123】
(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-(2-フェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシペンチル、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリグリセリンモノエチレンオキサイドポリアクリレート、ポリグリセリンポリエチレングリコールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、及び、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレートが挙げられる。
【0124】
スチレン化合物の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、t-ブトキシスチレン及びジビニルベンゼンが挙げられる。
【0125】
重合性モノマーについて、どのような構造を有する重合性モノマーを使用するか、単独で使用するか、或いは、2種以上を併用するか、含有量をどの程度にするか等、使用方法の詳細は、パターニング材料の最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。
例えば、感度の観点からは、重合性モノマーとしては、1分子あたりの重合性基量が多い構造を有するモノマーが好ましく、多くの場合は2官能以上のモノマーが好ましい。
例えば、膜強度の観点からは、重合性モノマーとしては、3官能以上の化合物〔例えば、6官能の(メタ)アクリル酸エステル化合物〕を使用してもよい。
例えば、パターニング材料に含まれる各成分との相溶性、分散性等を考慮し、重合性モノマーを選択することも有効である。
重合性モノマーとして、異なる官能数及び/又は異なる重合性基を有するモノマー〔例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、スチレン化合物及びビニルエーテル化合物〕を併用してもよい。
【0126】
重合性モノマーの分子量は、特に限定されないが、例えば、100以上1,000未満であることが好ましく、150以上1,000未満であることがより好ましい。
【0127】
パターニング材料は、重合性モノマーを含む場合、重合性モノマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0128】
パターニング材料が重合性モノマーを含む場合、重合性モノマーの含有率は、特に限定されないが、例えば、パターニング材料の全固形分質量に対して、5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0129】
<重合禁止剤>
本開示に係るパターニング材料をネガ型のパターニング材料として用いる場合、パターニング材料は、重合禁止剤を含んでいてもよい。
重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落[0018]に記載された熱重合防止剤を用いることができる。
重合禁止剤の具体例としては、p-メトキシフェノール、フェノチアジン、フェノキサジン及び4-メトキシフェノールが挙げられる。
【0130】
本開示に係るパターニング材料は、重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0131】
本開示に係るパターニング材料が重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、パターニング材料の全固形分質量に対して、0.01質量%~3.0質量%であることが好ましく、0.01質量%~1.0質量%であることがより好ましく、0.01質量%~0.8質量%であることが更に好ましい。
【0132】
<界面活性剤>
本開示に係るパターニング材料は、界面活性剤を含んでいてもよい。
本開示に係るパターニング材料が界面活性剤を含むと、例えば、塗布した際の塗布面状性、及び、膜を形成した際の基材に対する密着性をより向上できる傾向にある。
【0133】
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両イオン系界面活性剤が挙げられる。
これらの中でも、界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0134】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、フッ素原子を含む官能基を持つ分子構造を有しており、熱を加えるとフッ素原子を含む官能基の部分が切断されて、フッ素原子が揮発するアクリル系化合物を好適に用いることができる。また、フッ素系界面活性剤としては、例えば、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との共重合体も好適に用いることができる。また、フッ素系界面活性剤としては、例えば、ブロックポリマーも好適に用いることができる。また、フッ素系界面活性剤としては、例えば、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくは、エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは、5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位とを含む含フッ素高分子化合物も好適に用いることができる。また、フッ素系界面活性剤としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する含フッ素重合体も好適に用いることができる。
【0135】
フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用できる。
フッ素系界面活性剤の市販品の例としては、メガファック(登録商標) F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-563、F-565、F-568、F-575、F-780、F-781-F、EXP.MFS-330、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-718K、RS-72-K、RS-101、RS-102、及びDS-21〔以上、DIC(株)製〕、フロラード FC430、FC431、及びFC171〔以上、住友スリーエム(株)製〕、サーフロン(登録商標) SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-381、SC-383、SC-1068、S-382、S-393、及びKH-40〔以上、AGC(株)製〕、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、及びPF7002〔以上、OMNOVA社製〕、並びに、フタージェント(登録商標) 602A、650AC、601AD、601ADH2、209F、222F、245F、610FM、710FM、710FS、208G、710LA、730LM、212M、215M、250、251、及び681〔以上、(株)NEOS製〕が挙げられる。
【0136】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、並びに、側鎖及び/又は末端に有機基を導入した変性シロキサンポリマーが挙げられる。
【0137】
シリコーン系界面活性剤としては、市販品を使用できる。
シリコーン系界面活性剤の市販品の例としては、DC3PA、DC11PA、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、SH8400、及びDOWSIL(登録商標) 8032 ADDITIVE〔以上、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル(株)製〕、K354L、KF-351A、KF-355A、KF-640、KF-642、KF-643、KF-945、KF-6001、KF-6002、KF-6004、KP-341、X-22-4272、X-22-4515、X-22-4952、X-22-6191、及びX-22-6266〔以上、信越化学工業(株)製〕、F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4452、及びTSF-4460〔以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製〕、並びに、BYK307、BYK323、及びBYK330〔以上、ビックケミー社製〕が挙げられる。
【0138】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタン、並びに、これらのエトキシレート(例:グリセロールエトキシレート)及びプロポキシレート(例:グリセロールプロポキシレート)が挙げられる。
また、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及び、ポリオキシエチレンアルキルアミンが挙げられる。
【0139】
ノニオン系界面活性剤としては、市販品を使用できる。
ノニオン系界面活性剤の市販品の例としては、プルロニック(登録商標) L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、及び25R2〔以上、BASFジャパン(株)製〕、テトロニック(登録商標) 304、701、704、901、904、及び150R1〔以上、BASFジャパン(株)製〕、ソルスパース(登録商標) 20000〔以上、日本ルーブリゾール(株)製〕、NCW-101、NCW-1001、及びNCW-1002〔以上、富士フイルム和光純薬(株)製〕、パイオニン D-6112、D-6112-W、及びD-6315〔以上、竹本油脂(株)製〕、オルフィン(登録商標) E1010〔以上、日信化学工業(株)製〕、並びに、サーフィノール(登録商標)104、400、及び440〔以上、日信化学工業(株)製〕が挙げられる。
【0140】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステルが挙げられる。
【0141】
また、界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落[0017]に記載の界面活性剤、及び、特開2009-237362号公報の段落[0060]~[0071]に記載の界面活性剤も挙げられる。
【0142】
本開示に係るパターニング材料は、界面活性剤を含む場合、界面活性剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0143】
本開示に係るパターニング材料が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、パターニング材料の全固形分質量に対して、0.05質量%~3質量%であることが好ましく、0.1質量%~2質量%であることがより好ましく、0.3質量%~1質量%であることが更に好ましい。
【0144】
<その他の成分>
本開示に係るパターニング材料は、その効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述の成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、増感剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0145】
[黒色組成物の製造方法]
本開示に係る黒色組成物の製造方法は、式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物A1を準備した後、上記混合物A1と有機溶剤とを混合する工程A1、又は、式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物A2を準備した後、上記混合物A2と塩基とを混合する工程A2を含む。
式(1)で表される化合物は、有機溶剤に対する溶解性に優れ、塩基と組み合わせて溶液状態になると、高い溶解性を維持したまま無色から黒色に変化する。本開示に係る黒色組成物の製造方法によれば、無色の黒色材前駆体である式(1)で表される化合物を、黒色材として有効に機能させることができる。
【0146】
<工程A1>
工程A1は、式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物A1を準備した後、上記混合物A1と有機溶剤とを混合する工程である。
工程A1によれば、黒色組成物を得ることができる。
【0147】
工程A1では、まず、式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物A1を準備する。「混合物A1を準備する」とは、混合物A1を使用可能な状態にすることを意味し、予め調製された混合物A1を入手により準備すること、及び、混合物A1を調製することを包含する。すなわち、本開示に係る黒色組成物の製造方法において使用される混合物A1は、予め調製された混合物A1であってもよく、工程A1において調製された混合物A1であってもよい。
【0148】
混合物A1は、式(1)で表される化合物を含む。
混合物A1における式(1)で表される化合物は、本開示に係る発色性組成物における式(1)で表される化合物と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0149】
混合物A1は、式(1)で表される化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0150】
混合物A1における式(1)で表される化合物の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物A1の全固形分質量に対して、2質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~70質量%であることがより好ましく、10質量%~60質量%であることが更に好ましい。
【0151】
混合物A1は、塩基を含む。
混合物A1における塩基は、本開示に係る発色性組成物における塩基と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0152】
混合物A1は、塩基を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0153】
混合物A1における塩基の含有量は、式(1)で表される化合物の含有量に対して、質量基準で、0.5倍量~10.0倍量であることが好ましく、1.0倍量~7.5倍量であることがより好ましく、1.2倍量~5.0倍量であることが更に好ましい。
【0154】
混合物A1は、樹脂を含んでいてもよい。
混合物A1における樹脂は、本開示に係る発色性組成物における樹脂と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0155】
混合物A1は、樹脂を含む場合、樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0156】
混合物A1が樹脂を含む場合、樹脂の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物A1の全固形分質量に対して、10質量%~95質量%であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、30質量%~85質量%であることが更に好ましい。
【0157】
混合物A1は、必要に応じて、既述の成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
混合物A1におけるその他の成分は、本開示に係る発色性組成物におけるその他の成分と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0158】
混合物A1を調製する方法は、特に限定されず、例えば、式(1)で表される化合物と、塩基と、必要に応じて、その他の成分とを撹拌により混合する方法が挙げられる。
【0159】
工程A1では、準備した混合物A1と有機溶剤とを混合する。
有機溶剤の種類は、特に限定されない。
有機溶剤としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、及び、芳香族炭化水素化合物が挙げられる。
これらの化合物の詳細については、国際公開第2015/166779号の記載を参酌することができ、これらの内容は、本明細書に取り込まれる。
【0160】
有機溶剤の具体例としては、クロロホルム、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、乳酸エチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、及び、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドが挙げられる。
有機溶剤としては、クロロホルム、メチルエチルケトン及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0161】
混合物A1と混合する有機溶剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0162】
有機溶剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、混合物A1の全質量に対して、5倍量~40倍量であることが好ましく、8倍量~35倍量であることがより好ましく、10倍量~30倍量であることが更に好ましい。
【0163】
混合物A1と有機溶剤とを混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
【0164】
<工程A2>
工程A2は、式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物A2を準備した後、上記混合物A2と塩基とを混合する工程である。
工程A2によれば、黒色組成物を得ることができる。
【0165】
工程A2では、まず、式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物A2を準備する。「混合物A2を準備する」とは、混合物A2を使用可能な状態にすることを意味し、予め調製された混合物A2を入手により準備すること、及び、混合物A2を調製することを包含する。すなわち、本開示に係る黒色組成物の製造方法において使用される混合物A2は、予め調製された混合物A2であってもよく、工程A2において調製された混合物A2であってもよい。
【0166】
混合物A2は、式(1)で表される化合物を含む。
混合物A2における式(1)で表される化合物は、本開示に係る発色性組成物における式(1)で表される化合物と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0167】
混合物A2は、式(1)で表される化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0168】
混合物A2における式(1)で表される化合物の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物A2の全固形分質量に対して、0.1質量%~40質量%であることが好ましく、0.2質量%~35質量%であることがより好ましく、0.3質量%~30質量%であることが更に好ましい。
【0169】
混合物A2は、有機溶剤を含む。
混合物A2における有機溶剤は、既述の混合物A1における有機溶剤と同義であるため、ここでは説明を省略する。
【0170】
混合物A2は、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0171】
混合物A2における有機溶剤の含有量は、混合物A2の全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、8質量%~45質量%であることがより好ましく、10質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0172】
混合物A2は、樹脂を含んでいてもよい。
混合物A2における樹脂は、本開示に係る発色性組成物における樹脂と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0173】
混合物A2は、樹脂を含む場合、樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0174】
混合物A2が樹脂を含む場合、樹脂の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物A2の全固形分質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、3質量%~40質量%であることがより好ましく、5質量%~30質量%であることが更に好ましい。
【0175】
混合物A2は、必要に応じて、既述の成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
混合物A2におけるその他の成分は、本開示に係る発色性組成物におけるその他の成分と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0176】
混合物A2を調製する方法は、特に限定されず、例えば、式(1)で表される化合物と、有機溶剤と、必要に応じて、その他の成分とを撹拌により混合する方法が挙げられる。
【0177】
工程A2では、準備した混合物A2と塩基とを混合する。
混合物A2と混合する塩基は、本開示に係る発色性組成物における塩基と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0178】
混合物A2と混合する塩基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0179】
塩基の使用量は、混合物A2に含まれる式(1)で表される化合物の含有量に対して、質量基準で、0.5倍量~10.0倍量であることが好ましく、1.0倍量~7.5倍量であることがより好ましく、1.2倍量~5.0倍量であることが更に好ましい。
【0180】
混合物A2と塩基とを混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
【0181】
<他の工程>
本開示に係る黒色組成物の製造方法は、工程A1又は工程A2以外の工程(「他の工程」ともいう。)を含んでいてもよい。
他の工程としては、例えば、工程A1又は工程A2において得られた混合物を加熱する工程Bが挙げられる。工程Bによれば、より明度の低い黒色を呈する黒色組成物を得ることができる。
【0182】
[黒色パターンの形成方法]
本開示に係る黒色パターンの形成方法は、式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物a1を準備した後、上記混合物a1と有機溶剤とを混合することにより、第1の黒色組成物を得る工程a1、又は、式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物a2を準備した後、上記混合物a2と塩基とを混合することにより、第1の黒色組成物を得る工程a2と、基材上に、上記第1の黒色組成物を付与して第1の黒色組成物層を形成する工程bと、上記第1の黒色組成物層をパターン露光する工程cと、上記第1の黒色組成物層を現像する工程dと、をこの順に含み、上記工程cの後に、上記第1の黒色組成物層を加熱することにより第2の黒色組成物層を得る工程eを含む。
本開示に係る黒色パターンの形成方法によれば、無色の黒色材前駆体である式(1)で表される化合物を、例えば、液晶表示素子用カラーフィルタのブラックマトリックス(所謂、黒色隔壁)に使用される黒色材として有効に機能させることができる。
【0183】
本開示に係る黒色パターンの形成方法は、式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物a1を準備した後、上記混合物a1と有機溶剤とを混合することにより、第1の黒色組成物を得る工程a1、又は、式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物a2を準備した後、上記混合物a2と塩基とを混合することにより、第1の黒色組成物を得る工程a2を含む。
式(1)で表される化合物は、有機溶剤に対する溶解性に優れ、塩基と組み合わせて溶液状態になると、高い溶解性を維持したまま無色から黒色に変化する。工程a1又は工程a2によれば、第1の黒色組成物を得ることができる。
【0184】
<工程a1>
工程a1は、式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物a1を準備した後、上記混合物a1と有機溶剤とを混合することにより、第1の黒色組成物を得る工程である。
【0185】
工程a1では、まず、式(1)で表される化合物と塩基とを含む混合物a1を準備する。「混合物a1を準備する」とは、混合物a1を使用可能な状態にすることを意味し、予め調製された混合物a1を入手により準備すること、及び、混合物a1を調製することを包含する。すなわち、本開示に係る黒色パターンの形成方法において使用される混合物a1は、予め調製された混合物a1であってもよく、工程a1において調製された混合物a1であってもよい。
【0186】
混合物a1は、式(1)で表される化合物を含む。
混合物a1における式(1)で表される化合物は、本開示に係る発色性組成物における式(1)で表される化合物と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0187】
混合物a1は、式(1)で表される化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0188】
混合物a1における式(1)で表される化合物の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物a1の全固形分質量に対して、2質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~70質量%であることがより好ましく、10質量%~60質量%であることが更に好ましい。
【0189】
混合物a1は、塩基を含む。
混合物a1における塩基は、本開示に係る発色性組成物における塩基と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0190】
混合物a1は、塩基を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0191】
混合物a1における塩基の含有量は、式(1)で表される化合物の含有量に対して、質量基準で、0.5倍量~10.0倍量であることが好ましく、1.0倍量~7.5倍量であることがより好ましく、1.2倍量~5.0倍量であることが更に好ましい。
【0192】
混合物a1は、樹脂を含んでいてもよい。
混合物a1における樹脂は、本開示に係る発色性組成物における樹脂と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0193】
混合物a1は、樹脂を含む場合、樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0194】
混合物a1が樹脂を含む場合、樹脂の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物a1の全固形分質量に対して、10質量%~95質量%であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、30質量%~85質量%であることが更に好ましい。
【0195】
混合物a1は、重合開始剤を含んでいてもよい。
混合物a1における重合開始剤は、本開示に係るパターニング材料における重合開始剤と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0196】
混合物a1は、重合開始剤を含む場合、重合開始剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0197】
混合物a1が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物a1の全固形分質量に対して、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.03質量%~8質量%であることがより好ましく、0.05質量%~5質量%であることが更に好ましい。
【0198】
混合物a1は、重合性モノマーを含んでいてもよい。
混合物a1における重合性モノマーは、本開示に係るパターニング材料における重合性モノマーと同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0199】
混合物a1は、重合性モノマーを含む場合、重合性モノマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0200】
混合物a1が重合性モノマーを含む場合、重合性モノマーの含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物a1の全固形分質量に対して、5質量%~60質量%であることが好ましく、7質量%~50質量%であることがより好ましく、10質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0201】
混合物a1は、重合禁止剤を含んでいてもよい。
混合物a1における重合禁止剤は、本開示に係るパターニング材料における重合禁止剤と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0202】
混合物a1は、重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0203】
混合物a1が重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物a1の全固形分質量に対して、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.005質量%~5質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0204】
混合物a1は、界面活性剤を含んでいてもよい。
混合物a1における界面活性剤は、本開示に係るパターニング材料における界面活性剤と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
混合物a1は、界面活性剤を含む場合、界面活性剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0205】
混合物a1は、必要に応じて、既述の成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
混合物a1におけるその他の成分は、本開示に係るパターニング材料におけるその他の成分と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0206】
混合物a1を調製する方法は、特に限定されず、例えば、式(1)で表される化合物と、塩基と、必要に応じて、その他の成分とを撹拌により混合する方法が挙げられる。
【0207】
工程a1では、準備した混合物a1と有機溶剤とを混合する。
混合物a1と混合する有機溶剤は、本開示に係る黒色組成物の製造方法における有機溶剤と同義であるため、ここでは説明を省略する。
【0208】
混合物a1と混合する有機溶剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0209】
有機溶剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、混合物a1の全質量に対して、10倍量~95倍量であることが好ましく、20倍量~90倍量であることがより好ましく、30倍量~85倍量であることが更に好ましい。
【0210】
混合物a1と有機溶剤とを混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
【0211】
<工程a2>
工程a2は、式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物a2を準備した後、上記混合物a2と塩基とを混合することにより、第1の黒色組成物を得る工程である。
【0212】
工程a2では、まず、式(1)で表される化合物と有機溶剤とを含む混合物a2を準備する。「混合物a2を準備する」とは、混合物a2を使用可能な状態にすることを意味し、予め調製された混合物a2を入手により準備すること、及び、混合物a2を調製することを包含する。すなわち、本開示に係る黒色パターンの形成方法において使用される混合物a2は、予め調製された混合物a2であってもよく、工程a2において調製された混合物a2であってもよい。
【0213】
混合物a2は、式(1)で表される化合物を含む。
混合物a2における式(1)で表される化合物は、本開示に係る発色性組成物における式(1)で表される化合物と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0214】
混合物a2は、式(1)で表される化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0215】
混合物a2における式(1)で表される化合物の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物a2の全固形分質量に対して、0.1質量%~40質量%であることが好ましく、0.2質量%~35質量%であることがより好ましく、0.3質量%~30質量%であることが更に好ましい。
【0216】
混合物a2は、有機溶剤を含む。
混合物a2における有機溶剤は、本開示に係る黒色組成物の製造方法における有機溶剤と同義であるため、ここでは説明を省略する。
【0217】
混合物a2は、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0218】
混合物a2における有機溶剤の含有量は、混合物a2の全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、8質量%~45質量%であることがより好ましく、10質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0219】
混合物a2は、樹脂を含んでいてもよい。
混合物a2における樹脂は、本開示に係る発色性組成物における樹脂と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0220】
混合物a2は、樹脂を含む場合、樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0221】
混合物a2が樹脂を含む場合、樹脂の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物a2の全固形分質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、3質量%~40質量%であることがより好ましく、5質量%~30質量%であることが更に好ましい。
【0222】
混合物a2は、重合開始剤を含んでいてもよい。
混合物a2における重合開始剤は、本開示に係るパターニング材料における重合開始剤と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0223】
混合物a2は、重合開始剤を含む場合、重合開始剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0224】
混合物a2が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物a2の全固形分質量に対して、0.01質量%~10質量%あることが好ましく、0.03質量%~8質量%であることがより好ましく、0.05質量%~5質量%であることが更に好ましい。
【0225】
混合物a2は、重合性モノマーを含んでいてもよい。
混合物a2における重合性モノマーは、本開示に係るパターニング材料における重合性モノマーと同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0226】
混合物a2は、重合性モノマーを含む場合、重合性モノマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0227】
混合物a2が重合性モノマーを含む場合、重合性モノマーの含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物a2の全固形分質量に対して、5質量%~60質量%であることが好ましく、7質量%~50質量%であることがより好ましく、10質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0228】
混合物a2は、重合禁止剤を含んでいてもよい。
混合物a2における重合禁止剤は、本開示に係るパターニング材料における重合禁止剤と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0229】
混合物a2は、重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0230】
混合物a2が重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物a2の全固形分質量に対して、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.005質量%~5質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0231】
混合物a2は、界面活性剤を含んでいてもよい。
混合物a2における界面活性剤は、本開示に係るパターニング材料における界面活性剤と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
混合物a2は、界面活性剤を含む場合、界面活性剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0232】
混合物a2は、必要に応じて、既述の成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
混合物a2におけるその他の成分は、本開示に係るパターニング材料におけるその他の成分と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0233】
混合物a2を調製する方法は、特に限定されず、例えば、式(1)で表される化合物と、有機溶剤と、必要に応じて、その他の成分とを撹拌により混合する方法が挙げられる。
【0234】
工程a2では、準備した混合物a2と塩基とを混合する。
混合物a2と混合する塩基は、本開示に係る発色性組成物における塩基と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0235】
混合物a2は、塩基を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0236】
混合物a2における塩基の含有量は、式(1)で表される化合物の含有量に対して、質量基準で、0.5倍量~10.0倍量であることが好ましく、1.0倍量~7.5倍量であることがより好ましく、1.2倍量~5.0倍量であることが更に好ましい。
【0237】
混合物a2と混合する塩基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0238】
塩基の使用量は、特に限定されないが、混合物a2に含まれる式(1)で表される化合物の含有量に対して、質量基準で、0.5倍量~10.0倍量であることが好ましく、1.0倍量~7.5倍量であることがより好ましく、1.2倍量~5.0倍量であることが更に好ましい。
【0239】
混合物a2と塩基とを混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
【0240】
<工程b>
工程bは、基材上に、上記第1の黒色組成物を付与して第1の黒色組成物層を形成する工程である。
【0241】
基材としては、ガラス基材又は樹脂基材が好ましい。
基材の屈折率は、1.50~1.52が好ましい。
基材は、透明であることが好ましく、透明な樹脂基材であることがより好ましい。
ガラス基材としては、例えば、コーニング社製のゴリラガラス(登録商標)等の強化ガラスが挙げられる。
樹脂基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド(PI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の樹脂からなる基材が挙げられる。
樹脂基材の厚さは、5μm~200μmであることが好ましく、10μm~100μmであることがより好ましい。
基材の材質としては、例えば、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報、及び、特開2010-257492号公報に記載されている材質を好適に用いることができる。
【0242】
基材上に、第1の黒色組成物を付与する方法は、特に限定されないが、例えば、塗布法であることが好ましい。
第1の黒色組成物の塗布法としては、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、及び、ダイコート法(即ち、スリットコート法)が挙げられる。
【0243】
工程bでは、基材上に第1の黒色組成物の塗布膜を形成し、形成した塗布膜を乾燥させることにより、第1の黒色組成物層を形成することが好ましい。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、及び減圧乾燥が挙げられ、これらの乾燥方法を単独で又は複数を組み合わせて適用できる。
塗布膜の乾燥方法としては、加熱乾燥及び/又は減圧乾燥が好ましい。
本開示において、「乾燥」とは、第1の黒色組成物に含まれる有機溶剤の少なくとも一部を除去することを意味する。
乾燥温度は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。また、乾燥温度は、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。温度を連続的に変化させて乾燥させてもよい。
乾燥時間は、20秒以上であることが好ましく、40秒以上であることがより好ましい。また、乾燥時間は、600秒以下が好ましく、300秒以下がより好ましい。
【0244】
<工程c>
工程cは、工程bにて形成した第1の黒色組成物層をパターン露光する工程である。
「パターン露光」とは、パターン状に露光する形態、すなわち、露光部と非露光部とが存在する形態の露光を指す。パターン露光における露光領域と未露光領域との位置関係は、特に限定されず、適宜調整される。
例えば、第1の黒色組成物層が、ネガ型である場合は、基材上の第1の黒色組成物層のうち、パターン露光における露光部が硬化され、最終的に硬化膜となる。一方、基材上の第1の黒色組成物層のうち、パターン露光における非露光部は硬化せず、後述の工程dにおいて、現像液によって溶解されて除去される。非露光部は、現像工程後、硬化膜の開口部を形成し得る。
【0245】
パターン露光の光源としては、第1の黒色組成物層を硬化し得る波長域の光(例えば、365nm又は405nm)を照射できるものであれば、適宜選定して用いることができる。パターン露光の露光光の主波長は、365nmであることが好ましい。主波長とは、最も強度が高い波長を意味する。
【0246】
光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、及びメタルハライドランプが挙げられる。
露光量は、5mJ/cm~200mJ/cmであることが好ましく、10mJ/cm~200mJ/cmであることがより好ましい。
【0247】
パターン露光は、マスクを介した露光であってもよく、レーザー等を用いたデジタル露光であってもよい。
マスクを介して露光する場合のマスクの基材としては、例えば、石英マスク、ソーダライムガラスマスク及びフィルムマスクが挙げられる。
石英マスクは、寸法精度に優れる点が好ましい。
フィルムマスクは、大サイズ化が容易である点で好ましい。
フィルムマスクの基材は、ポリエステルフィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることがより好ましい。
フィルムマスクの基材の具体例としては、XPR-7S SG〔富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)製〕が挙げられる。
【0248】
露光に使用する光源、露光量及び露光方法の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落[0146]~[0147]に記載があり、これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0249】
<工程d>
工程dは、パターン露光後の第1の黒色組成物層を現像する工程である。
工程dでは、パターン露光後の第1の黒色組成物層を現像することで、第1の黒色組成物層のパターンが形成される。
パターン露光後の第1の黒色組成物層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
現像液としては、アルカリ性水溶液が好ましい。
アルカリ性水溶液に含まれ得るアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、及び、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)が挙げられる。
アルカリ性水溶液の25℃におけるpHは、8~13であることが好ましく、9~12であることがより好ましく、10~12であることが更に好ましい。
アルカリ性水溶液におけるアルカリ性化合物の含有率は、アルカリ性水溶液の全質量に対して、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~3質量%であることがより好ましい。
現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落[0194]に記載があり、この内容は、本明細書に組み込まれる。
【0250】
現像の方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、シャワー現像、スピン現像、ディップ現像等の方式が挙げられる。
好適な現像方式としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落[0195]に記載の現像方式が挙げられる。
【0251】
工程dは、パターン露光後の第1の黒色組成物層を現像する段階と、現像によって得られた第1の黒色組成物層のパターンを加熱処理(「ポストベーク」ともいう。)する段階と、を含んでいてもよい。
ポストベークの温度は、例えば、80℃~260℃であることが好ましい。ポストベークの時間は、例えば、5分間~30分間であることが好ましい。
【0252】
<工程e>
工程eは、工程cの後に、第1の黒色組成物層を加熱することにより第2の黒色組成物層を得る工程である。
工程eでは、第1の黒色組成物層を加熱することで、第1の黒色組成物層をより明度の低い黒色を呈する第2の黒色組成物物層に変化させる。
工程eは、工程cの後であればよく、例えば、工程dの前であってもよく、工程d中であってもよく、工程eの後であってもよい。
工程eは、工程d中であることが好ましい。工程eが工程d中である場合とは、例えば、現像により得られた第1の黒色組成物層のパターンをポストベークする場合である。
【0253】
第1の黒色組成物層を加熱する方法は、特に限定されず、公知の加熱方法を採用できる。加熱手段としては、例えば、オーブン、熱板及びヒートロールが挙げられる。
加熱温度は、例えば、より明度の低い黒色を呈する黒色パターンを形成する観点から、80℃~260℃であることが好ましい。
加熱時間は、特に限定されず、発色の程度に応じて、適宜設定できる。第1の黒色組成物層が熱可塑性樹脂を含む場合には、パターンの形状の保持を考慮し、加熱時間は、短くする等、適宜調整することが好ましい。
【実施例0254】
以下、実施例により本開示を詳細に説明する。但し、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0255】
[化合物(41)の合成]
下記のスキームに基づき、下記の化合物(41)を合成した。
なお、スキーム中のN-Rは、式(1)中のYに対応する。
【0256】
【化11】

【0257】
【化12】

【0258】
J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 15947-15956を参考に、イサチンを出発物質として、5-(ブロモメチル)ウンデカンを用い、上記スキーム中の黒色化合物に相当する化合物〔下記の化合物(100)〕を合成した。200mLの3つ口フラスコに、テトラヒドロフラン(THF)〔安定剤含有、和光一級、富士フイルム和光純薬(株)製〕40mLを加えた後、合成した化合物(100)4.7gと亜鉛粉末〔和光特級、富士フイルム和光純薬(株)製〕3.9gとを加えた。上記3つ口フラスコを氷水に浸して内温を5℃以下に維持し、トリフルオロ酢酸〔和光特級、富士フイルム和光純薬(株)製〕を3mL滴下した。滴下終了後、外設を除去し内温が40℃以上にならないように水浴中で2時間反応させた。反応液をセライトろ過した後、デカンテーションにより、上澄み液を200mLの3つ口フラスコに移した。上澄み液が入った3つ口フラスコを外設した設定温度55℃のオイルバスに浸けて、窒素雰囲気下で上澄み液を濃縮し、黒色オイルを得た。3つ口フラスコをオイルバスから取り出し、室温(25℃;以下、同じ。)に冷却した。冷却後、黒色オイルが入った3つ口フラスコにメタノール100mLを添加し、室温で2時間撹拌させた。析出した固体を吸引ろ過し、白色固体を得た。得られた白色固体を、設定温度50℃の送風乾燥機を用いて12時間乾燥させ、化合物(41)を2.3g得た(収率48%)。
【0259】
【化13】

【0260】
H-NMRにより、得られた化合物(41)の構造が上記した化合物(41)の構造であることを確認した。得られた化合物(41)のNMRデータを以下に示す。
【0261】
<化合物(41)のNMRデータ>
H-NMR(CDCl3) δ = 0.83-0.89(m, 12H), 0.90-1.50(m, 32H), 1.60-1.78(brs×2, 2H), 3.38-3.60(m, 4H), 4.25-4.48 (m, 4H), 6.23-6.50 (m, 2H), 6.82-7.07 (m, 6H), 7.33-7.40 (m, 2H)
【0262】
[着色組成物の調製]
<実施例1A>
化合物(41)〔式(1)で表される化合物〕0.053質量部、PBMA(ポリブチルメタクリレート)-PMMA(ポリメチルメタクリレート)共重合体〔商品名:ポリ(ブチルメタクリレート-co-メチルメタクリレート)、重量平均分子量150000、Sigma-Aldrich社製〕0.53質量部、及び、クロロホルム10.0質量部を室温下で15分間撹拌混合した。得られた混合物に、トリエチルアミン〔和光一級、富士フイルム和光純薬(株)製〕0.265質量部を加え、室温下で60分間撹拌混合し、実施例1A着色組成物を得た。
【0263】
<実施例2A~実施例9A>
実施例2A~実施例9Aでは、化合物の種類及び配合量、塩基の種類及び配合量、有機溶剤の種類及び配合量、並びに、樹脂の種類及び配合量を、表1に示すとおりにしたこと以外は、実施例1Aと同様の操作を行い、実施例2A~実施例9Aの各着色組成物を得た。
【0264】
<比較例1A>
化合物(100)0.053質量部、PBMA(ポリブチルメタクリレート)-PMMA(ポリメチルメタクリレート)共重合体〔商品名:ポリ(ブチルメタクリレート-co-メチルメタクリレート)、重量平均分子量150000、Sigma-Aldrich社製〕0.53質量部、及び、クロロホルム(CHCl)〔和光一級、富士フイルム和光純薬(株)製〕10.0質量部を室温下で15分間撹拌混合し、比較例1Aの着色組成物を調製した。
【0265】
<比較例2A>
化合物(100)0.053質量部、PBMA(ポリブチルメタクリレート)-PMMA(ポリメチルメタクリレート)共重合体〔商品名:ポリ(ブチルメタクリレート-co-メチルメタクリレート)、重量平均分子量150000、Sigma-Aldrich社製〕5.3質量部、及び、テトラヒドロフラン(THF)〔和光一級、富士フイルム和光純薬(株)製〕10.0質量部を室温下で15分間撹拌混合し、比較例2Aの着色組成物を調製した。
【0266】
<比較例3A>
化合物(100)0.053質量部、PBMA(ポリブチルメタクリレート)-PMMA(ポリメチルメタクリレート)共重合体〔商品名:ポリ(ブチルメタクリレート-co-メチルメタクリレート)、重量平均分子量150000、Sigma-Aldrich社製〕5.3質量部、及び、メチルエチルケトン(MEK)〔和光一級、富士フイルム和光純薬(株)製〕10.0質量部を室温下で15分間撹拌混合し、比較例3Aの着色組成物を調製した。
【0267】
<比較例4A>
化合物(100)0.053質量部、PBMA(ポリブチルメタクリレート)-PMMA(ポリメチルメタクリレート)共重合体〔商品名:ポリ(ブチルメタクリレート-co-メチルメタクリレート)、重量平均分子量150000、Sigma-Aldrich社製〕0.53質量部、及び、クロロホルム〔和光一級、富士フイルム和光純薬(株)製〕10.0質量部を室温下で15分間撹拌混合した。得られた混合物に、トリエチルアミン〔和光一級、富士フイルム和光純薬(株)製〕0.133質量部を加え、室温下で60分間撹拌混合し、比較例4Aの着色組成物を調製した。
【0268】
実施例1A~実施例9A及び比較例1A~比較例4Aの着色組成物の組成を、表1に示す。表1中に記載の「-」は、その欄に該当するものがないことを意味する。
【0269】
【表1】
【0270】
[着色組成物の評価]
1.着色組成物の色
(1)目視による確認
実施例1A~実施例9A及び比較例1A~比較例4Aの着色組成物の色を、目視により観察し、判断した。結果を表2に示す。
【0271】
(2)吸収スペクトルによる確認
実施例1A~実施例9Aの着色組成物を、それぞれ1cmセルに入れ、測定装置として、分光光度計〔商品名:U-4100、(株)日立製作所製〕を用い、吸収スペクトルを測定した。その結果、実施例1A~実施例9Aの着色組成物は、いずれも極大吸収波長が波長400nm~700nmの範囲内にあり、かつ、波長400nm~700nmの範囲内のモル吸光係数(ε)が300L/(mol・cm)以上であった。
【0272】
2.溶解性
実施例1A~実施例9A及び比較例1A~比較例4Aの着色組成物を目視により観察し、溶け残りの有無を確認した。結果を表2に示す。
【0273】
【表2】
【0274】
表2に示すように、実施例1A~実施例9A及び比較例1A~比較例4Aの着色組成物は、いずれも黒色を呈しており、所謂、黒色組成物であることが確認された。
また、表2に示すように、実施例1A~実施例9Aの着色組成物には、溶け残りがないことが確認された。一方、比較例1A~比較例4Aの着色組成物には、溶け残りがあることが確認された。
【0275】
[フィルムの作製]
<実施例1B>
実施例1Aの着色組成物100μlを、5cmのガラス基板上にスピンコート法〔回転数:500rpm(revolution per minute)、回転時間:15秒〕により塗布した後、自然乾燥させることにより、実施例1Bのフィルムを作製した。
【0276】
<実施例2B~実施例9B>
実施例2B~実施例9Bでは、それぞれ実施例2A~実施例9Aの着色組成物を用いたこと以外は、実施例1Bと同様の操作を行い、実施例2B~実施例9Bの各フィルムを作製した。
【0277】
<比較例1B~比較例4B>
比較例1B~比較例4Bでは、それぞれ比較例1A~比較例4Aの着色組成物を用いたこと以外は、実施例1Bと同様の操作を行い、比較例1B~比較例4Bの各フィルムを作製した。
【0278】
[フィルムの評価]
1.フィルムの色
実施例1B~実施例9B及び比較例1B~比較例4Bのフィルムの色を、目視により観察し、判断した。結果を表3に示す。
【0279】
2.面状
実施例1B~実施例9B及び比較例1B~比較例4Bのフィルムの表面を目視により観察し、析出物の有無を確認した。結果を表3に示す。
【0280】
【表3】
【0281】
表3に示すように、実施例1B~実施例9B及び比較例1B~比較例4Bのフィルムの色は、いずれも黒であった。
また、表3に示すように、実施例1B~実施例9Bのフィルムの表面には、析出物がないことが確認された。一方、比較例1B~比較例4Bのフィルムの表面には、析出物があることが確認された。
【0282】
以上の結果から、本開示の発色性組成物によれば、ベンゾジフラノン骨格を有する色材前駆体の有機溶剤に対する溶解性の向上を実現し得ることが明らかとなった。本開示の発色性組成物を有機溶剤に溶解させて得られる着色組成物は、黒色を呈する黒色組成物であり、良好な面状を有するフィルムを形成できることが明らかとなった。