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特開2024-143839リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法及びリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143839
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法及びリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241003BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241003BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056746
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川橋 保大
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB02
4G048AB05
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB22
5H050CB25
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA10
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】Mgを含みつつ、良好な電池特性を示すリチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法及びリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【解決手段】組成式:LiaNi(1-b-c-d)CobMncMgd2
(前記式において、0.98≦a≦1.09、0.06≦b≦0.21、0.02≦c≦0.32、0.00005≦d≦0.003である。)
で表され、50%累積体積粒度D50が3.0~11.0μmであり、タップ密度が2.0~2.6g/ccであり、c軸格子定数が14.184~14.240Åである、リチウムイオン電池用正極活物質。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式:LiaNi(1-b-c-d)CobMncMgd2
(前記式において、0.98≦a≦1.09、0.06≦b≦0.21、0.02≦c≦0.32、0.00005≦d≦0.003である。)
で表され、50%累積体積粒度D50が3.0~11.0μmであり、タップ密度が2.0~2.6g/ccであり、c軸格子定数が14.184~14.240Åである、リチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項2】
BET比表面積が0.20~0.80m2/gである、請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリチウムイオン電池用正極活物質を含む、リチウムイオン電池用正極。
【請求項4】
請求項3に記載のリチウムイオン電池用正極及び負極を含む、リチウムイオン電池。
【請求項5】
(a)ニッケル塩、(b)コバルト塩、(c)マンガン塩及び(d)マグネシウム塩を含む水溶液、及び、(e)アンモニアを含む塩基性水溶液及び/またはアルカリ金属の塩基性水溶液、を含有する水溶液を反応液とし、前記反応液中のpHを10.0~11.5、アンモニウムイオン濃度を5~20g/L、液温を59~61℃に制御しながら晶析反応を行う工程を含む、
組成式:Ni(1-b-c-d)CobMncMgd(OH)2
(前記式において、0.06≦b≦0.21、0.02≦c≦0.32、0.00005≦d≦0.003である。)
で表され、50%累積体積粒度D50が3.0~11.0μmであり、タップ密度が1.8~2.3g/ccであり、BET比表面積が4.0~12.0m2/gである、リチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のリチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法で製造された前駆体と、リチウム源とを、Ni、Co、Mn及びMgからなる金属の原子数の和(Men)とリチウムの原子数(Lin)との比(Lin/Men)が0.98~1.09となるように混合して、リチウム混合物を形成する工程と、
前記リチウム混合物を、大気もしくは酸素雰囲気中450~750℃で2~15時間焼成した後、さらに700~900℃で2~15時間焼成する工程と、
を含む、リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法及びリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン等の小型電子機器の急速な拡大とともに、充放電可能な電源として、非水系電解質二次電池の需要が急激に伸びている。非水系電解質二次電池の正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)で代表されるリチウムコバルト複合酸化物とともに、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)で代表されるリチウムニッケル複合酸化物、マンガン酸リチウム(LiMnO2)で代表されるリチウムマンガン複合酸化物等が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、ニッケル及びコバルトは比較的高価な金属であり、特にコバルトは生産国が限られており、需給が不安定な金属として知られている。そのため、近年、特許文献1に開示されているように、廃棄電極、廃棄バッテリーからリチウム、ニッケル、コバルトなどの金属成分を高純度で回収し、再度正極活物質へとリサイクルする方法が試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-532575号公報
【特許文献2】特開平11-354118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン二次電池の正極活物質に対する要求は増加しているが、優れた正極活物質には合成原料の純度や精製の条件の違いによりサイクル性能及び保存性が変動することが問題となる。このため、特許文献2に開示されているように、正極活物質中の純度の制御が必要である。
【0006】
廃棄電極や廃バッテリーには、缶体や発火防止のための難燃材に各種金属が含有されており、高純度のニッケル、コバルト、リチウムを回収するためには多大な精製コストを要し、結果的に正極活物質の生産コストが高額になってしまう。特にMgに関しては、精製抽出が困難で完全に除去するためには相応のリサイクルコストをかけなくてはいけない。
【0007】
このように、正極活物質中の純度を制御して電池特性を向上させるという観点からはMgのような不純物は排除したいが、一方で廃棄電極や廃バッテリーのリサイクルとして高純度のニッケル、コバルト、リチウムを回収する際に、Mgを除去するためのコストが問題となっている。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、Mgを含みつつ、良好な電池特性を示すリチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法及びリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記知見を基礎にして完成した本発明は以下で規定される。
1.組成式:LiaNi(1-b-c-d)CobMncMgd2
(前記式において、0.98≦a≦1.09、0.06≦b≦0.21、0.02≦c≦0.32、0.00005≦d≦0.003である。)
で表され、50%累積体積粒度D50が3.0~11.0μmであり、タップ密度が2.0~2.6g/ccであり、c軸格子定数が14.184~14.240Åである、リチウムイオン電池用正極活物質。
2.BET比表面積が0.20~0.80m2/gである、前記1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
3.前記1または2に記載のリチウムイオン電池用正極活物質を含む、リチウムイオン電池用正極。
4.前記3に記載のリチウムイオン電池用正極及び負極を含む、リチウムイオン電池。
5.(a)ニッケル塩、(b)コバルト塩、(c)マンガン塩及び(d)マグネシウム塩を含む水溶液、及び、(e)アンモニアを含む塩基性水溶液及び/またはアルカリ金属の塩基性水溶液、を含有する水溶液を反応液とし、前記反応液中のpHを10.0~11.5、アンモニウムイオン濃度を5~20g/L、液温を59~61℃に制御しながら晶析反応を行う工程を含む、
組成式:Ni(1-b-c-d)CobMncMgd(OH)2
(前記式において、0.06≦b≦0.21、0.02≦c≦0.32、0.00005≦d≦0.003である。)
で表され、50%累積体積粒度D50が3.0~11.0μmであり、タップ密度が1.8~2.3g/ccであり、BET比表面積が4.0~12.0m2/gである、リチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
6.前記5に記載のリチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法で製造された前駆体と、リチウム源とを、Ni、Co、Mn及びMgからなる金属の原子数の和(Men)とリチウムの原子数(Lin)との比(Lin/Men)が0.98~1.09となるように混合して、リチウム混合物を形成する工程と、
前記リチウム混合物を、大気もしくは酸素雰囲気中450~750℃で2~15時間焼成した後、さらに700~900℃で2~15時間焼成する工程と、
を含む、リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、Mgを含みつつ、良好な電池特性を示すリチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法及びリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明を実施するための形態を詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0012】
(リチウムイオン電池用正極活物質)
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質は、組成式:LiaNi(1-b-c-d)CobMncMgd2(前記式において、0.98≦a≦1.09、0.06≦b≦0.21、0.02≦c≦0.32、0.00005≦d≦0.003である。)で表される。正極活物質は、組成式においてリチウム組成を示すaが0.98≦a≦1.09に制御されている。リチウム組成を示すaが0.98以上であるため、リチウム欠損によるニッケルの還元を抑制することができる。また、リチウム組成を示すaが1.09以下であるため、電池とした際の抵抗成分となり得る、正極活物質粒子表面に存在する、炭酸リチウムや、水酸化リチウム等の残留アルカリ成分を抑制することができる。
【0013】
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質は、組成式においてニッケル組成が1-b-c-d(0.467≦1-b-c-d≦0.91995)に制御されており、ニッケル組成が0.467以上であるため、リチウムイオン電池の良好な電池容量を得ることができる。また、ニッケル組成が0.91995以下であるため、結晶構造が安定し、充放電に伴うリチウムの挿入・脱離による結晶格子の膨張収縮挙動を低減することでサイクル特性を向上させることができる。
【0014】
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質は、組成式においてコバルト組成を示すb及びマンガン組成を示すc、マグネシウム組成を示すdの合計が0.08005≦b+c+d≦0.533であることから、サイクル特性が向上し、充放電に伴うリチウムの挿入・脱離による結晶格子の膨張収縮挙動を低減することができる。コバルト組成、マンガン組成及びマグネシウム組成の合計が0.533を超えると、コバルト、マンガン及びマグネシウムの添加量が多過ぎて初期放電容量の低下が大きくなる、或いは、コスト面で不利になるおそれがある。
【0015】
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質は、マグネシウム組成を示すdが0.00005≦d≦0.003に制御されている。マグネシウム組成を示すdが0.00005以上であるため、サイクル特性が向上し、充放電に伴うリチウムの挿入・脱離による結晶格子の膨張収縮挙動を低減することができる。マグネシウム組成を示すdが0.003を超えると、マグネシウムの添加量が多過ぎて初期放電容量の低下が大きくなる。このように、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質は、Mgを含有しつつも、それを用いたリチウムイオン電池の電池特性が良好である。このため、廃棄電極や廃バッテリーのリサイクルとして高純度のニッケル、コバルト、リチウムを回収する際に、Mgを除去するためのコストを抑制しながら、当該リチウムイオン電池用正極活物質を用いて良好な電池特性を有するリチウムイオン電池を作製することができる。
【0016】
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質は、大部分が複数の一次粒子が凝集した二次粒子の形態を有しており、部分的に二次粒子として凝集しない状態の一次粒子が含まれる形態であってもよい。二次粒子を構成する一次粒子、及び、単独で存在する一次粒子の形状については特に限定されず、例えば、略球状、略楕円状、略板状、略針状等の種々の形状であってもよい。また、複数の一次粒子が凝集した形態についても特に限定されず、例えば、ランダムな方向に凝集する形態や、中心部からほぼ均等に放射状に凝集して略球状や略楕円状の二次粒子を形成する形態等の種々の形態であってもよい。
【0017】
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質は、50%累積体積粒度D50が3.0~11.0μmである。ここで、50%累積体積粒度D50は、体積基準の累積粒度分布曲線において、50%累積時の体積粒度である。リチウムイオン電池用正極活物質の50%累積体積粒度D50が3.0μm以下であるとタップ密度が低下し、体積当たりのエネルギー密度が低下する。リチウムイオン電池用正極活物質の50%累積体積粒度D50が11.0μm以上であると粗大粒が増え、集電帯にスラリー化させた正極活物質を塗工する際に塗布性が悪化してしまう。リチウムイオン電池用正極活物質の50%累積体積粒度D50は、4.0~11.0μmであるのがより好ましく、7.0~10.0μmであるのが更により好ましい。上記50%累積体積粒度D50の測定方法としては、まず、正極活物質のサンプル(粉末)100mgを、Microtrac社製レーザー回折型粒度分布測定装置「MT3300EXII」を用いて、50%流速中、40Wの超音波を60秒間照射して分散後、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。次に、得られた累積粒度分布曲線において、50%累積時の体積粒度を、正極活物質の粉末の50%累積体積粒度D50とすることができる。なお、測定の際の水溶性溶媒は0.02μmのフィルターを通し、溶媒屈折率を1.333、粒子透過性条件を透過、粒子屈折率を1.81、形状を非球形とし、測定レンジを0.021~2000μm、測定時間を30秒とすることができる。
【0018】
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質は、タップ密度が2.0~2.6g/ccである。正極活物質のタップ密度が2.0g/cc以上であると、体積当たりのエネルギー密度が高い電池を構成することができる。正極活物質のタップ密度は、2.1~2.6g/ccであるのが好ましく、2.3~2.6g/ccであるのがより好ましい。正極活物質のタップ密度は、例えば、正極活物質(粉末)5gを、10ccのメスシリンダーに投入し、株式会社セイシン企業製の粉体密度測定器「KYT-4000K」に設置し、ストローク長55mmのタップを1500回行った後、メスシリンダーの目盛を読み取る。次に、「サンプル投入量(5g)/メスシリンダーの目盛り読み値(cc)」を算出し、これをタップ密度(g/cc)とする。
【0019】
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質は、c軸格子定数が14.184~14.240Åに制御されている。正極活物質のc軸格子定数が14.184Å以上であると、リチウムイオン電池用正極活物質の結晶構造を安定化させLiの挿入脱離を担保することができる。正極活物質のc軸格子定数が14.240Åを超えると、結晶格子が歪んでLiの移動度低下による負荷特性の低下の影響で、リチウムイオン電池の充放電容量が悪化するおそれがある。正極活物質のc軸格子定数は、14.185~14.238Åであることが好ましく、14.190~14.235Åであることがより好ましい。正極活物質のc軸格子定数は、例えば、以下のXRD回折装置を用いて、以下の条件によって測定することができる。
・XRD回折装置:SmartLab(株式会社リガク製)
・線源:CuKα(λ=1.5406Å)
・ガラス製のサンプルホルダ(2cm×1.5cm、深さ0.3mm)に試料(正極活物質)を塗る
・検出器:D/tex
・測定範囲:2θ=10°~80°
・スキャン軸:2θ/θ、スキャン速度:1degree min-1
・ステップ幅:0.01degree
・スリット幅:IS(DS)1/4°、RS1 10mm、RS2 10mm
c軸格子定数は、上記条件で測定したXRD回折パターンの(003)、(101)、(012)、(104)、(015)、(107)、(018)、(110)、(113)の合計9つの結晶面に由来するピークから、解析ソフト「(株)リガク、PDXL」を用いて算出することができる。
【0020】
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質は、BET比表面積が0.20~0.80m2/gであるのが好ましい。BET比表面積が0.20m2/g以上であると、正極活物質の接触面積が大きくなり、Liイオンの伝導性が良好となる。このため、高容量のリチウムイオン電池の作製が可能となる。また、BET比表面積が0.80m2/g以下であると、充放電を繰り返すうちに正極活物質中の残留アルカリからリチウムイオンの析出反応が促進される。析出したリチウム化合物が電池の内部抵抗となり、充放電容量を低下させる。BET比表面積は、0.3~0.70m2/gがより好ましい。BET比表面積は以下の方法で測定することができる。すなわち、まず、正極活物質(粉末)1.0gをガラスセルに秤量し、脱気装置にセットし、窒素ガスでガラスセル内を充填した後、窒素ガス雰囲気中、40℃で20分間熱処理し、脱気する。その後、脱気後のサンプル(粉末)が入ったガラスセルをQuantachrome社製比表面積測定装置「Monosorb Model MS-21」へセットし、吸着ガスとしてHe:70at%-N2:30at%混合ガスを流しながら、BET法(1点法)によって、比表面積Xを測定する。
【0021】
(リチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法について詳述する。
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の前駆体は、組成式:Ni(1-b-c-d)CobMncMgd(OH)2
(前記式において、0.06≦b≦0.21、0.02≦c≦0.32、0.00005≦d≦0.003である。)
で表され、50%累積体積粒度D50が3.0~11.0μmであり、タップ密度が1.8~2.3g/ccであり、BET比表面積が4.0~12.0m2/gである、リチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の前駆体の製造方法は、まず、(a)ニッケル塩、(b)コバルト塩、(c)マンガン塩及び(d)マグネシウム塩を含む水溶液、及び、(e)アンモニアを含む塩基性水溶液及び/またはアルカリ金属の塩基性水溶液、を含有する水溶液を準備する。(a)ニッケル塩としては、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルまたは塩酸ニッケル等が挙げられる。(b)コバルト塩としては、硫酸コバルト、硝酸コバルトまたは塩酸コバルト等が挙げられる。(c)マンガン塩としては、硫酸マンガン、硝酸マンガンまたは塩酸マンガン等が挙げられる。(d)マグネシウム塩としては、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムまたは塩酸マグネシウムが挙げられる。なお、当該マグネシウム塩は、原料として添加してもよく、不純物として混入しているものであってもよい。(e)アンモニアを含む塩基性水溶液としては、アンモニア水溶液、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩酸アンモニウム等が挙げられる。アルカリ金属の塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸塩等の水溶液であってもよい。また、当該炭酸塩の水溶液としては、例えば、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液などの炭酸基の塩を用いた水溶液が挙げられる。
【0022】
また、当該水溶液の組成は、製造する前駆体の組成によって適宜調整することができるが、(a)30~150g/Lのニッケルイオンを含む水溶液、(b)3~25g/Lのコバルトイオンを含む水溶液、(c)1~32g/Lのマンガンイオンを含む水溶液、(d)0.001~0.1g/Lのマグネシウムイオンを含む水溶液、(e)7~28質量%のアンモニアを含む塩基性水溶液及び/またはアルカリ金属濃度10~30質量%の塩基性水溶液であることが好ましい。
【0023】
次に、上述の(a)ニッケル塩、(b)コバルト塩、(c)マンガン塩及び(d)マグネシウム塩を含む水溶液、及び、(e)アンモニアを含む塩基性水溶液及び/またはアルカリ金属の塩基性水溶液、を含有する水溶液を反応液とし、反応液中のpHを10.0~11.5、アンモニウムイオン濃度を5~20g/L、液温を59~61℃に制御しながら晶析反応を行う。このとき、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩、及び、マグネシウム塩の混合水溶液を入れたタンク、アンモニアを含む塩基性水溶液を入れたタンク、及び、アルカリ金属の塩基性水溶液を入れたタンクの3つのタンクから、それぞれ薬液を反応槽に送液してもよい。共沈反応時の反応液中のpHを10.0~11.5、アンモニウムイオン濃度を5~20g/L、液温を59~61℃に制御しながら晶析反応を行うことで、反応液中の金属溶解度を制御し、マグネシウムを均一に分散した粒子を作製することができ、放電特性が良好な本発明の実施形態に係る正極活物質の前駆体を作製することができる。また、上述のように前駆体である金属水酸化物の反応条件を最適化することで、焼成後に得られた正極活物質の表面への不純物の付着が良好に抑制されるため、洗浄が不要となる。さらに、共沈反応時のキレート材や金属酸化物コートが不要となる。この結果、製造効率が向上する。
【0024】
(リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法について詳述する。本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法は、まず、上述のようにして作製した本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の前駆体に、リチウム源を、Ni、Co、Mn及びMgからなる金属の原子数の和(Men)とリチウムの原子数(Lin)との比(Lin/Men)が0.98~1.09となるように混合して、リチウム混合物を形成する。リチウム源としては、炭酸リチウムまたは水酸化リチウム等が挙げられる。混合方法としては、各原料の混合割合を調整してヘンシェルミキサー、自動乳鉢またはV型混合器等で乾式混合することが好ましい。
【0025】
次に、リチウム混合物を、大気雰囲気中、好ましくは酸素雰囲気中、大気もしくは酸素雰囲気中450~750℃で2~15時間焼成した後、さらに700~900℃で2~15時間焼成する。その後、必要であれば、焼成体を、例えば、パルベライザー等を用いて解砕することにより正極活物質の粉末を得ることができる。
【0026】
(リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池)
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極は、例えば、上述の構成のリチウムイオン電池用正極活物質と、導電助材と、バインダーとを混合して調製した正極合剤を集電体の片面または両面に設けた構造を有している。また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池は、このような構成のリチウムイオン電池用正極と、公知のリチウムイオン電池用負極とを備えている。
【0027】
導電助材としては、金属系導電助材(アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等)、炭素系導電助材(グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック)等)、及び、これらの混合物等が挙げられる。これらの導電助材は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金または金属酸化物として用いられてもよい。なかでも、電気的安定性の観点から、より好ましくはアルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、炭素系導電助材及びこれらの混合物であり、更に好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及び炭素系導電助材であり、特に好ましくは炭素系導電助材である。またこれらの導電助材としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(好ましくは、上記した導電助材のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。導電助材の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電助材として実用化されている形態であってもよい。
【0028】
バインダーとしては、リチウムイオン電池用正極合剤に一般的に使用されている物質が挙げられるが、フッ化ビニリデンに由来する構造を有する共重合体やポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン(TEF)に由来する構造を有する共重合体または単独重合体、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)に由来する構造を有する共重合体または単独重合体であるのが好ましい。具体的にはPVDF-HFP、PVDF-HFP-TEF、PVDF-TEF、TEF-HFP等が挙げられる。
【0029】
正極合剤は、リチウムイオン電池用正極活物質と、導電助材と、バインダーとを溶媒に混合して正極合剤スラリーとし、集電体の片面または両面に塗布した後、乾燥などを経て集電体上に設けられ、正極活物質層を構成する。
【0030】
正極合剤スラリーの溶媒としては、公知の有機溶媒、例えば、炭化水素系有機溶媒、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機硫黄化合物、環式有機リン化合物等を、単独溶媒として、または、混合溶媒として使用することができる。炭化水素系有機溶媒としては、飽和炭化水素、不飽和炭化水素または芳香族炭化水素が使用できる。飽和炭化水素としては、ヘキサン、ペンタン、2-エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられる。不飽和炭化水素しては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。これらのうち、特にトルエン、キシレンが好ましい。
【0031】
集電体を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等が挙げられる。なかでも、軽量化、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウムである。また集電体は、導電性高分子材料からなる樹脂集電体であることが好ましい。集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の集電体、及び、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。集電体の厚さは、特に限定されないが、1~30μmであることが好ましい。樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては例えば、導電性高分子や、樹脂に必要に応じて導電剤を添加したものを用いることができる。
【0032】
リチウムイオン電池用正極の厚みは、電池性能の観点から、10~100μmであることが好ましく、20~50μmであることがより好ましい。
【0033】
リチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池は、対極となる負極を組み合わせて、セパレータと共にセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することで得られる。また、集電体の一方の面に正極を形成し、もう一方の面に負極を形成してバイポーラ(双極)型電極を作製し、バイポーラ(双極)型電極をセパレータと積層してセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することでも得られる。
【0034】
負極としては、負極活物質、導電助材及び集電体等を含むものが挙げられる。負極活物質としては、公知のリチウムイオン電池用負極活物質が使用でき、炭素系材料(黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等)、珪素系材料(珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/または炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子または酸化珪素粒子の表面を炭素及び/または炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等)、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。また、導電助材は、上述した正極と同様の導電助材を好適に用いることができる。
【0035】
集電体としては、上述した正極を構成する集電体と同様のものが挙げられ、軽量化、耐食性、高導電性の観点から、銅であることが好ましい。また、樹脂集電体であってもよく、上述した正極を構成する集電体と同様のものを好適に用いることができる。集電体の厚さは、特に限定されないが、10~60μmであることが好ましい。
【0036】
セパレータとしては、ポリエチレンまたはポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)またはガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用のセパレータが挙げられる。
【実施例0037】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0038】
(実施例1)
まず、Ni:Co:Mn=50:20:30となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.007g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが10.6、アンモニウムイオン濃度が10.3g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.06となるように炭酸リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、大気雰囲気下、750℃で2時間焼成した後、900℃まで加熱し、当該温度で8時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0039】
(実施例2)
まず、Ni:Co:Mn=50:20:30となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.008g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが10.4、アンモニウムイオン濃度が11.5g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.09となるように炭酸リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、大気雰囲気下、750℃で2時間焼成した後、900℃まで加熱し、当該温度で8時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0040】
(実施例3)
まず、Ni:Co:Mn=50:20:30となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.006g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが10.3、アンモニウムイオン濃度が8.2g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.06となるように炭酸リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、大気雰囲気下、750℃で2時間焼成した後、880℃まで加熱し、当該温度で8時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0041】
(実施例4)
まず、Ni:Co:Mn=50:20:30となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.007g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが10.1、アンモニウムイオン濃度が11.2g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.06となるように炭酸リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、大気雰囲気下、750℃で2時間焼成した後、900℃まで加熱し、当該温度で8時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0042】
(実施例5)
まず、Ni:Co:Mn=50:20:30となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.007g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが10.2、アンモニウムイオン濃度が11.3g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.06となるように炭酸リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、大気雰囲気下、750℃で2時間焼成した後、800℃まで加熱し、当該温度で8時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0043】
(実施例6)
まず、Ni:Co:Mn=50:20:30となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.048g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが10.1、アンモニウムイオン濃度が9.3g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.06となるように炭酸リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、大気雰囲気下、750℃で2時間焼成した後、880℃まで加熱し、当該温度で8時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0044】
(実施例7)
まず、Ni:Co:Mn=50:20:30となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.008g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが10.6、アンモニウムイオン濃度が14.8g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.06となるように炭酸リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、大気雰囲気下、750℃で2時間焼成した後、880℃まで加熱し、当該温度で8時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0045】
(実施例8)
まず、Ni:Co:Mn=82:15:3となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.001g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが11.2、アンモニウムイオン濃度が13.5g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.01となるように水酸化リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、酸素雰囲気下、500℃で8時間焼成した後、740℃まで加熱し、当該温度で4時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0046】
(実施例9)
まず、Ni:Co:Mn=90:7:3となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.002g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが11.0、アンモニウムイオン濃度が7.2g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を820rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.01となるように水酸化リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、酸素雰囲気下、500℃で8時間焼成した後、720℃まで加熱し、当該温度で4時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0047】
(実施例10)
まず、Ni:Co:Mn=90:7:3となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.001g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが11.0、アンモニウムイオン濃度が10.0g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が0.98となるように水酸化リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、酸素雰囲気下、500℃で8時間焼成した後、720℃まで加熱し、当該温度で4時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0048】
(実施例11)
まず、Ni:Co:Mn=50:20:30となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.094g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが10.2、アンモニウムイオン濃度が10.5g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.06となるように炭酸リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、大気雰囲気下、750℃で2時間焼成した後、880℃まで加熱し、当該温度で8時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0049】
(比較例1)
まず、Ni:Co:Mn=50:20:30となるように硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを所定量秤量して1.5mol/Lの混合金属塩溶液を調製した。この混合金属塩溶液のMg濃度は0.13g/Lであった。
次に、撹拌翼付属の反応槽へ混合金属塩溶液と、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが10.2、アンモニウムイオン濃度が11.1g/Lになるように反応槽へ送液し、晶析反応させて、ニッケル-コバルト-マンガンの複合水酸化化合物を沈殿させた。このとき、反応槽の撹拌翼の回転数を1000rpm、反応槽の液温が60℃で保持されるように、ウォータージャケットにて保温した。
また、当該晶析反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
次に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、箱型乾燥機を用いて、120℃にて12時間乾燥した。これによって、正極活物質の前駆体を製造した。
次に、正極活物質の前駆体のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.06となるように炭酸リチウムと正極活物質の前駆体とを混合して、自動乳鉢で30分間混合し、混合粉を得た。次に、混合粉をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉にて、大気雰囲気下、750℃で2時間焼成した後、880℃まで加熱し、当該温度で8時間保持することで焼成を行い、正極活物質を得た。
【0050】
(組成)
実施例1~11、比較例1の前駆体及び正極活物質の粉体について、それぞれ組成を以下のようにして測定した。
ニッケル、コバルト、マンガン組成については得られた各前駆体、及び、各正極活物質のサンプル(粉体)を規定量はかり取り、アルカリ溶融法で分解後、日立ハイテク社製の誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)「PS7800」を用いて、組成分析を行った。
また、前駆体及び正極活物質のマグネシウム組成については、得られた各前駆体、及び、各正極活物質のサンプル(粉体)を規定量はかり取り、酸分解で溶液化した後、SIIナノテクノロジー社製のICP質量分析装置(ICP-MS)「SPQ9700」を用いて、組成分析を行った。
【0051】
(平均粒径D50)
実施例1~11、比較例1の前駆体及び正極活物質の粉体について、それぞれ平均粒径D50を以下のようにして測定した。
得られた各前駆体、及び、各正極活物質のサンプル(粉体)100mgを、Microtrac社製レーザー回折型粒度分布測定装置「MT3300EXII」を用いて、50%流速中、40Wの超音波を60秒間照射して分散後、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得た。得られた累積粒度分布曲線において、50%累積時の体積粒度を、正極活物質の粉末の50%累積体積粒度D50(平均粒径D50)とした。なお、測定の際の水溶性溶媒は0.02μmのフィルターを通し、溶媒屈折率を1.333、粒子透過性条件を透過、粒子屈折率を1.81、形状を非球形とし、測定レンジを0.021~2000μm、測定時間を30秒とした。
【0052】
(タップ密度)
実施例1~11、比較例1の前駆体及び正極活物質の粉体について、それぞれタップ密度を以下のようにして測定した。
得られた各前駆体、及び、各正極活物質のサンプル(粉体)5gを、10ccのメスシリンダーに投入し、株式会社セイシン企業製の粉体密度測定器「KYT-4000K」に設置し、ストローク長55mmのタップを1500回行った後、メスシリンダーの目盛を読み取った。次に、「サンプル投入量(5g)/メスシリンダーの目盛り読み値(cc)」を算出し、これをタップ密度(g/cc)とした。
【0053】
(BET比表面積)
実施例1~11、比較例1の前駆体及び正極活物質の粉体について、それぞれBET比表面積を以下のようにして測定した。
得られた各前駆体、及び、各正極活物質のサンプル(粉体)1.0gをガラスセルに秤量し、脱気装置にセットし、窒素ガスでガラスセル内を充填した後、窒素ガス雰囲気中、40℃で20分間熱処理し、脱気した。その後、脱気後のサンプル(粉末)が入ったガラスセルをQuantachrome社製比表面積測定装置「Monosorb Model MS-21」へセットし、吸着ガスとしてHe:70at%-N2:30at%混合ガスを流しながら、BET法(1点法)によって、比表面積Xを測定した。
【0054】
(c軸格子定数)
実施例1~11、比較例1の正極活物質の粉体について、それぞれc軸格子定数を以下のようにして測定した。
以下のXRD回折装置及び条件を用いた。
・XRD回折装置:SmartLab(株式会社リガク製)
・線源:CuKα(λ=1.5406Å)
・ガラス製のサンプルホルダ(2cm×1.5cm、深さ0.3mm)に試料(正極活物質)を塗る
・検出器:D/tex
・測定範囲:2θ=10°~80°
・スキャン軸:2θ/θ、スキャン速度:1degree min-1
・ステップ幅:0.01degree
・スリット幅:IS(DS)1/4°、RS1 10mm、RS2 10mm
c軸格子定数は、上記条件で測定したXRD回折パターンの(003)、(101)、(012)、(104)、(015)、(107)、(018)、(110)、(113)の合計9つの結晶面に由来するピークから、解析ソフト「(株)リガク、PDXL」を用いて算出した。
【0055】
(放電容量)
実施例1~11、比較例1の正極活物質の粉体について、それぞれ放電容量を以下のようにして測定した。
上述の実施例1~11、比較例1の製造条件及び評価結果を表1、2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
(評価結果)
実施例1~11の正極活物質は、いずれも下記の組成式を有していた。なお、表1、2の「Li/Me比」は、正極活物質のNi、Co、Mn及びMgの合計に対するLiの組成比を示す。
組成式:LiaNi(1-b-c-d)CobMncMgd2
(前記式において、0.98≦a≦1.09、0.06≦b≦0.21、0.02≦c≦0.32、0.00005≦d≦0.003である。)
また、実施例1~11の正極活物質は、いずれも50%累積体積粒度D50が3.0~11.0μmであり、タップ密度が2.0~2.6g/ccであり、c軸格子定数が14.184~14.240Åを満たし、電池特性(放電容量)が良好であった。
比較例1の正極活物質は、Mgの組成dが0.003を超えており、電池特性(放電容量)が実施例1~11に比べて劣っていた。