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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143935
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】硬化物および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241004BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241004BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08K3/013
C08L71/12
C08K3/38
C08K5/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056893
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】三島 翔子
(72)【発明者】
【氏名】石川 信広
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CD051
4J002CH072
4J002DK007
4J002EN076
4J002FD146
4J002FD207
4J002GQ05
(57)【要約】
【課題】十分な放熱性を維持しながら、耐熱性や誘電特性にも優れた硬化物に関する技術を提供する。
【解決手段】本発明のある態様の硬化物は、エポキシ樹脂の硬化物を含む第1の相と、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを含む第2の相と、無機フィラーと、を含む。前記第1の相と前記第2の相とが相分離構造を形成し、無機フィラーが第1の相に偏在している。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂の硬化物を含む第1の相と、
分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを含む第2の相と、
無機フィラーと、
を含み、
前記第1の相と前記第2の相とが相分離構造を形成し、前記無機フィラーが前記第1の相に偏在している、硬化物。
【請求項2】
前記相分離構造が共連続構造、海島構造からなる群より選ばれる、請求項1に記載の硬化物。
【請求項3】
前記無機フィラーとして窒化ホウ素粒子を含む、請求項1または2に記載の硬化物。
【請求項4】
エポキシ樹脂と、
前記エポキシ樹脂の硬化剤と
分岐構造を有するポリフェニレンエーテルと、
無機フィラーと、
を含み、
硬化後に、前記エポキシ樹脂の硬化物を含む第1の相と、前記分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを含む第2の相との相分離構造を形成し、前記無機フィラーが前記第1の相に偏在する樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂の硬化剤としてアミン化合物を含む、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記相分離構造が共連続構造、海島構造からなる群より選ばれる、請求項4または5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記無機フィラーとして窒化ホウ素粒子を含む、請求項4または5に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物および樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子機器の小型化、高性能化に伴い、半導体などの部品の高密度化、高機能化が求められている。そのため、半導体を実装する回路基板も小型高密度のものが要求されている。
その結果、部品や回路基板の小型高密度化に伴い、放熱性が大きな課題となっている。
そのような課題を解決すべく、樹脂に無機フィラーを充填した放熱性に優れた樹脂組成物からなる放熱材料の開発が進められている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2016/125664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では、電子機器の小型化等の要求はさらに加速しており、放熱材料においてもさらなる高性能化が求められている。本発明者らは鋭意研究の結果、特に耐熱性や誘電特性にも優れた放熱材料が必要であり、従来の放熱材料ではかかる要求特性を十分に満足できないという新たな課題を見出した。
本発明はこのような課題を鑑みたものであり、十分な放熱性を維持しながら、耐熱性や誘電特性にも優れた硬化物および樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、硬化物である。当該硬化物は、エポキシ樹脂の硬化物を含む第1の相(エポキシ樹脂リッチな相)と、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを含む第2の相(分岐型ポリフェニレンエーテルリッチな相)と、無機フィラーと、を含み、前記第1の相と前記第2の相とが相分離構造を形成し、前記無機フィラーが前記第1の相に偏在している。
上記態様の硬化物において、前記相分離構造が共連続構造、海島構造からなる群より選ばれてもよい。また、前記無機フィラーとして窒化ホウ素粒子を含んでもよい。
本発明の他の態様は、樹脂組成物である。当該樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、前記エポキシ樹脂の硬化剤と、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルと、無機フィラーと、を含み、硬化後に、前記エポキシ樹脂の硬化物を含む第1の相(エポキシ樹脂リッチな相)と、前記分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを含む第2の相(分岐型ポリフェニレンエーテルリッチな相)との相分離構造を形成し、前記無機フィラーが前記第1の相に偏在する。
上記態様の樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂の硬化剤としてアミン化合物を含んでもよい。前記相分離構造が共連続構造、海島構造からなる群より選ばれてもよい。また、前記無機フィラーとして窒化ホウ素粒子を含んでもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、十分な放熱特性を維持しながら、耐熱性や誘電特性にも優れた硬化物および樹脂組成物に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の硬化物の断面SEM(走査型電子顕微鏡)像である。
図2】実施例2の硬化物の断面SEM像である。
図3】実施例3の硬化物の断面SEM像である。
図4】実施例4の硬化物の断面SEM像である。
図5】実施例5の硬化物の断面SEM像である。
図6】実施例6の硬化物の断面SEM像である。
図7】比較例1の硬化物の断面SEM像である。
図8】比較例2の硬化物の断面SEM像である。
図9】比較例3の硬化物の断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0009】
以下、本開示の樹脂組成物を説明した後、当該樹脂組成物を用いて得られる硬化物について説明する。
【0010】
(樹脂組成物)
本開示の樹脂組成物は、分岐構造を有するポリフェニレンエーテル(以下、分岐型PPEと呼ぶ場合がある)、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、無機フィラーを含む。当該樹脂組成物は、硬化後にエポキシ樹脂の硬化物を含む第1の相と、分岐型PPEを含む第2の相との相分離構造を形成する。以下、樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0011】
<分岐型PPE>
分岐型PPEとは、オルト位及びパラ位に水素原子を有するフェノール類を含む原料フェノールから製造されたポリフェニレンエーテルである。このようなフェノール類は、オルト位にも水素原子を有するため、フェノール類と酸化重合される際に、イプソ位及びパラ位のみならず、オルト位においてもエーテル結合が形成され得るため、かかるフェノール類を原料フェノール類として用いて得られるポリフェニレンエーテルは分岐鎖状の構造を形成することが可能となる。
【0012】
このような分岐型PPEは、溶剤への溶解性の他、樹脂組成物中の各成分との相溶性や反応性に優れる。
【0013】
分岐型PPEは、アリル基やビニル基等の不飽和炭素結合を有する官能基を含む従来公知のものであってもよく、不飽和炭素結合を有する炭化水素基を含むこともできる。
【0014】
不飽和炭素結合を有する官能基を含む分岐型PPE(以下、単に不飽和炭素結合含有ポリフェニレンエーテルともいう)は、例えば、国際公開第2020/017570号にて開示されたポリフェニレンエーテルが挙げられる。
【0015】
不飽和炭素結合含有ポリフェニレンエーテルにおける不飽和炭素結合を有する官能基の当量は、樹脂組成物の硬化性や用途等に応じて適宜変更可能である。
【0016】
不飽和炭素結合含有ポリフェニレンエーテルは、(方法1)不飽和炭素結合を有する官能基を含むフェノール類を原料フェノール類に用いてポリフェニレンエーテルを合成する方法、又は、(方法2)不飽和炭素結合を有する官能基を含まないフェノール類を原料フェノール類として使用してポリフェニレンエーテルを合成し、得られたポリフェニレンエーテルを変性してポリフェニレンエーテルに不飽和炭素結合を有する官能基を導入する方法、のいずれの方法によって得られたものであってもよい。また、(方法1)で得られたポリフェニレンエーテルをさらに変性して不飽和炭素結合を有する官能基を導入しても良い。
【0017】
不飽和炭素結合含有ポリフェニレンエーテルは、原料フェノール類の種類が異なる2種類以上のポリフェニレンエーテルの混合物であってもよい。
【0018】
ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は、1千以上15万以下が好ましく、3千以上13万以下がより好ましく、5千以上10万以下がさらに好ましい。当該重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって得られる標準ポリスチレン換算値である。
【0019】
また、ポリフェニレンエーテルは、多分散指数(PDI:重量平均分子量/数平均分子量)が、1.5~20であることが好ましい。
【0020】
本開示に係る樹脂組成物中のエポキシ樹脂の固形分量100質量部に対する分岐型PPEの割合は、例えば1~100質量部とすることができ、15~95質量部が好ましく、25~95質量部がより好ましい。特に、エポキシ樹脂の硬化剤の種類に応じてエポキシ樹脂と分岐型PPEの配合比を適宜調整することによって、適切な相分離構造を形成することができる。例えば、エポキシ樹脂の硬化剤としてアミン化合物を用いた場合には、樹脂組成物中のエポキシ樹脂の固形分量100質量部に対する分岐型PPEの割合を15質量部以上とすることで樹脂組成物の硬化物が相分離構造を形成可能となり、15~95質量部とすることで共連続構造またはエポキシ樹脂の硬化物を含む相を海相とした海島構造を形成可能となる。
【0021】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては特に限定されず、2官能であってもよいし、3官能以上であってもよい。
【0022】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、水添(ビスフェノール)型樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどのエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
中でも、得られる硬化物の熱寸法安定性の観点から、ビフェニル型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂を、低誘電特性の観点から、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を、耐熱性の観点から、ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
<エポキシ樹脂の硬化剤>
エポキシ樹脂の硬化剤としては特に限定されず、従来公知の硬化剤を使用することができ、例えば、フェノール樹脂、ポリカルボン酸及びその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、メラミン化合物、アミン化合物、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物などが挙げられる。エポキシ樹脂の硬化剤を含むことによって、後述のように樹脂組成物の硬化時にエポキシ樹脂の分子量が大きく変化するため、硬化物とした際に相分離構造を形成する。これらの中でも、エポキシ樹脂との反応速度のバランスが良く、相分離構造を形成しやすい点でアミン化合物が好ましく、ジアミン化合物が特に好ましい。
<アミン化合物>
アミン化合物としては、例えば、アミノ基を二つ有するジアミン化合物やアミノ基を3つ以上有するポリアミン化合物が挙げられ、具体的には脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノシロキサン、脂肪族ポリアミンおよびこれらの混合物等が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基またはその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらのなかでも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン(脂肪族ポリアミン)」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。さらに、「ジアミノシロキサン」とは、シロキサン骨格の末端にアミノ基を有する化合物を表し、その構造の一部が炭化水素基によって置換されていてもよい。
【0026】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン、並びに1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミンおよび4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0027】
芳香族ジアミンとしては、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’DDSと略すことがある)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Rと略すことがある)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-Nと略すことがある)、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMBと記載することがある)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
【0028】
芳香族ジアミンは、好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’DDS)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-N)、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルである。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
【0029】
ジアミノシロキサンは、例えば、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(2-アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(4-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(5-アミノペンチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス[3-(2-アミノフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス[3-(4-アミノフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
【0030】
脂肪族ポリアミンは、例えばジエチレントリアミン、トリエチレントリアミンなど炭素数2~6のポリアルキレンポリアミンなどが挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
【0031】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の硬化剤の割合は、エポキシ樹脂のエポキシ当量:エポキシ樹脂の硬化剤の活性水素当量を1.0:0.5~1.0:1.5とすることが好ましく、1.0:0.7~1.0:1.3とすることがより好ましい。
【0032】
<無機フィラー>
無機フィラーとしては、特に限定されず、例えば、シリカ(無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ等)、アルミナ、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;タルク、マイカなどの粘土鉱物;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどのペロブスカイト型結晶構造を有するフィラー;窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。無機フィラーを含むことにより、硬化時の体積収縮を低減できるとともに、各種の無機フィラーが有する公知の特性を硬化物に付与することができる。
これらの無機フィラーのうち、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の熱伝導を向上させる観点から、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素、水酸化アルミニウム、を用いることが好ましく、窒化ホウ素を用いることが特に好ましい。
【0033】
樹脂組成物の全固形分体積に対する無機フィラーの体積の割合は、1~90体積%が好ましく、5~80体積%がより好ましく、10~70体積%がさらに好ましい。
【0034】
無機フィラーの平均粒径は、10~700nmが好ましく、20~600nmがより好ましく、30~550nmがさらに好ましい。なお、無機フィラーが鱗片状や楕円状など形状異方性を有する場合には、無機フィラーの長辺を粒径とする。無機フィラーの平均粒径を当該範囲とすることにより、樹脂組成物が相分離構造を形成する際に、相分離構造の大きさと無機フィラーの大きさのバランスが保たれるため、相分離構造を保ちながら無機フィラーが第1の相に偏在しやすくなる。
【0035】
(有機溶媒)
本開示の樹脂組成物は有機溶剤をさらに含んでいても良い。有機溶媒としては、各成分の溶解性が良好であり、硬化物を形成したときに、後述する相分離構造の形成を阻害しなければ、特に制限はない。有機溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(CA)等が挙げられる。溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
これらのうち、樹脂組成物中の各成分の溶解性が良いことから、シクロヘキサノンを用いることが好ましい。
【0036】
(その他の成分)
本開示の樹脂組成物は、本開示の効果を阻害しない範囲でその他の成分を含んでいてもよい。
【0037】
なお、本開示の樹脂組成物は、後述の通り硬化時にエポキシ樹脂のみが硬化し、エポキシ樹脂と分岐型PPEの相溶性が大きく変化することによって硬化物が相分離構造を形成する。従って、分岐型PPEが不飽和炭素結合を有する場合には、硬化時に不飽和炭素結合の架橋反応を進行させる成分、具体的には熱ラジカル発生剤を実質的に含まないことが好ましい。なお、実質的に含まないとは、分岐型PPEの架橋反応が進行しない範囲であれば特に限定されないが、例えば分岐型PPEの固形分量を100質量部とした場合に0.1質量部未満である。
【0038】
本開示の樹脂組成物が硬化した際に形成される相分離構造については後述する。
【0039】
(硬化物)
本開示の硬化物は、エポキシ樹脂の硬化物を含む第1の相と、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを含む第2の相と、無機フィラーと、を含む。上記第1の相と上記第2の相とが相分離構造を形成している。上記無機フィラーが第1の相に偏在している。
【0040】
本開示の硬化物が有するエポキシ樹脂の硬化物は、上述した樹脂組成物中のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤とが硬化反応した硬化物であり、分岐型PPE、無機フィラーの詳細は、上述した樹脂組成物と同様である。
【0041】
本開示の技術では、樹脂組成物の段階では各成分が互いに相溶した均一な樹脂組成物となるが、硬化物の段階では相分離構造を形成する。硬化物において相分離構造を形成するメカニズムは必ずしも明らかではないが、硬化反応時に反応誘起相分離が起こっていると推測される。すなわち、硬化時に樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は硬化して分子量が大きく変化するため、硬化過程でエポキシ樹脂と分岐型PPEとの相溶性に変化が生じ、相分離構造を形成すると考えられる。
【0042】
第1の相は、いわゆるエポキシ樹脂リッチな相である。
第2の相は、いわゆる分岐型PPEリッチな相である。各相がエポキシ樹脂リッチな相であるか、分岐型PPEリッチな相であるかは、後述するように硬化物を有機溶剤へ浸漬することによって区別することができる。
【0043】
第1の相および第2の相によって形成される相分離構造は、共連続構造、海島構造(BCC構造ともいう)からなる群より選ばれる。
【0044】
第1の相および第2の相によって海島構造が形成される場合、海島構造における「海」の部分が第1の相であり、海島構造における「島」の部分が第2の相であることが好ましい。これにより、第1の相に含まれる無機フィラーが熱伝導経路を形成しやすくなる。
【0045】
本開示の硬化物が相分離構造を形成していること、および、無機フィラーが第1の相に偏在していることは、たとえば、本開示の硬化物の主表面と直交する断面(以下、厚み方向断面という)を走査型顕微鏡(SEM)により撮像することにより確認することができる。具体的には、本開示の硬化物の厚み方向断面をSEM観察すると、無機フィラーは、第1の相や第2の相等の他の部分に比べて相対的により白い領域として視認される。従って、無機フィラーがいずれかの相に偏在している場合には、前記相対的に白い領域と他の領域が共連続構造または海島構造を形成していることが確認できる。
また、第1の相は硬化するため有機溶剤に対して不溶であるが、第2の相は硬化していないため有機溶剤に対して可溶である。そのため、硬化物を有機溶剤(例えば、ジクロロメタン)に浸漬すると第2の相だけが溶解し、第1の相は溶解せずに残存する。従って、無機フィラーが第1の相に偏在している場合には、硬化物の断面試料を有機溶剤に浸漬した後に厚み方向断面をSEM観察すると溶解せずに残存した第1の相中に無機フィラーが分散していることが確認できる。別の観点では、硬化物の断面試料を有機溶剤に浸漬したときに不溶な領域を第1の相(エポキシ樹脂リッチな相)、硬化物の断面試料を有機溶剤に浸漬したときに可溶な領域を第2の相(分岐型PPEリッチな相)として、それぞれ確認することができる。
【0046】
無機フィラーが第1の相に偏在する要因としては、無機フィラーとエポキシ樹脂との親和性または相容性の度合いが、無機フィラーと分岐型PPEとの親和性または相容性の度合いより高いことが挙げられる。なお、無機フィラーとエポキシ樹脂との親和性を高める観点から、無機フィラーの表面にシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤やアルミネート系カップリング剤による表面処理等を施してもよい。
【0047】
このような構成とすることによって本開示技術の効果を得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下のように推測している。
分岐型PPEのみを用いた樹脂組成物に無機フィラーを配合した場合には、無機フィラーの分散性が悪く、十分な放熱特性を得ることが出来ない場合があることを本発明者らは見出した。一方、エポキシ樹脂のみを用いた場合には、フィラーの分散性には優れるものの、耐熱性や誘電特性が不十分であった。
この点、本開示の樹脂組成物では、硬化後に第1の相、即ちエポキシ樹脂の硬化物を含む相に無機フィラーが偏在するため、エポキシ樹脂が本来持つ良好な無機フィラー分散性が分岐型PPEと配合されても失われることなく維持される。他方、第2の相として分岐型PPEを含む相も同時に存在しているため、分岐型PPEが本来有する耐熱性や誘電特性がエポキシ樹脂と配合されても失われることなく維持される。これらの相乗効果によって、十分な放熱特性を発揮しつつ、耐熱性や誘電特性のバランスにも優れると推測される。
【0048】
(硬化物の製造方法)
本開示の硬化物は、上述した樹脂組成物を硬化させることにより得ることができる。本開示の硬化物の製造方法の一例を以下に記載する。
【0049】
まず、上述した所定量の各成分を混合、撹拌し、樹脂組成物を得る。各成分が十分に混合した樹脂組成物が得られれば、樹脂組成物の作製方法は特に限定されない。以下、樹脂組成物の作製方法の一例を示す。
まず、上述した有機溶媒と分岐型PPEとを混合し、撹拌して調整液Aを得る。このときの撹拌条件は特に制限されず、分岐型PPEが有機溶媒に十分に溶解すればよい。
次に、調整液Aに上述したエポキシ樹脂を添加し、撹拌して調整液Bを得る。このときの撹拌条件は特に制限されず、調整液B中の各成分が十分に混合されればよい。
次に、調整液Bに上述した無機フィラーを添加し、撹拌して調整液Cを得る。このときの撹拌条件は特に制限されず、調整液C中の各成分が十分に混合されればよい。
無機フィラーを添加する場合には、調整液Aに用いた有機溶媒と同一の有機溶媒に無機フィラーを分散させたスラリーとして添加することが好ましい。これによれば、調整液Cにおける無機フィラーの分散性を高めることができる。
次に、調整液Cに上述したエポキシ樹脂の硬化剤を添加し、撹拌して樹脂組成物を得る。このときの撹拌条件は特に制限されず、樹脂組成物中の各成分が十分に混合されればよい。
【0050】
次に、得られた樹脂組成物を用いて所望の膜厚の塗膜(樹脂層)を形成する。塗膜形成方法は特に限定されない。
塗膜形成方法の一例は、スピンコート法を用いた塗膜の形成である。この場合、得られた樹脂組成物の所定量をSi基板などの基板上にスピンコート法を用いて塗布する。スピンコート時の回転速度・時間などの諸条件は、特に制限されず、基板上に樹脂組成物の所望膜厚の塗膜が形成されればよい。
塗膜形成方法の他の例は、アプリケーターを用いた塗膜の形成である。この場合、得られた樹脂組成物の所定量を銅箔などの金属箔上にアプリケーターを用いて塗布する。塗布時の諸条件は、特に制限されず、基板上に樹脂組成物の所望膜厚の塗膜が形成されればよい。
【0051】
次に、得られた塗膜を加熱・硬化させる。加熱条件は、各成分の含有量、塗膜の厚さに応じて適宜調整されうる。加熱条件の一例は、80~100℃、1~10分のソフトベーク工程の後、160~200℃、1~3時間の加熱工程を経て、180~220℃、3~5時間の加熱工程を実施する手順が挙げられる。
【0052】
以上説明した本開示の硬化物によれば、十分な放熱性を維持しながら、耐熱性や誘電特性もバランスよく得ることができる。
【0053】
(電子部品)
本開示の硬化物は、絶縁性と優れた熱伝導性とを有することから、電子部品における放熱部材として使用可能である。
具体的には、本開示の硬化物を半導体チップの少なくとも一部を覆う封止材として使用することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0055】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(原料)
表1に示す原料の詳細は以下のとおりである。
エポキシ樹脂:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)、エポキシ当量:189g/eq、三菱ケミカル社製、jER828
エポキシ樹脂の硬化剤(ジアミン化合物):4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)、東京化成工業社製
分岐型PPE:下記合成例1によって得られた分岐型PPE
(合成例1)
500mLのセパラブルフラスコに、原料フェノール類として、2,6-ジメチルフェノール19.8g(0.162mol%)と、2-アリルフェノール2.42g(0.018mol%)と、をトルエン261gに溶解させ原料溶液を調製した。さらに、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリド(Cu/TMEDA)が0.18wt%、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が0.16wt%となるように調整し、反応液中に乾燥空気を75mL/minの流量で吹込みながら、攪拌速度200rpmにて攪拌、40℃で8時間反応させ、ポリフェニレンエーテルを含む反応液を得た。
反応液の加温、並びに、乾燥空気の吹込みを停止した後、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリド(Cu/TMEDA)を濾過にて取り除き、メタノール1,200mL、濃塩酸4.0mL、H2O27.0mLの混合液で再沈殿させて減圧濾過にて取り出し、メタノールで洗浄後、80℃で24時間乾燥させ、PPE―1を得た。PPE-1は、数平均分子量が14,200であり、重量平均分子量が54,400であった。
窒化ホウ素:ナノ窒化ホウ素(平均粒径=509nm)スラリー、株式会社トクシキ社製、LDBN-0001C
【0057】
(樹脂組成物の作製)
(実施例1)
表1に示す分岐型PPEと有機溶媒を配合した調整液Aを作製した。得られた調整液Aを、攪拌機(シンキー社製、あわとり練太郎ARV-310P、以下では単に攪拌機とよぶ)を用いて2000rpmで5分間撹拌した。
次に、撹拌後の調整液Aにエポキシ樹脂を添加し、調整液Bを作製した。得られた調整液Bを、攪拌機を用いて2000rpmで5分間撹拌した。
次に、撹拌後の調整液Bにスラリー(無機フィラー40質量%を含むシクロヘキサン溶液)を添加し、調整液Cを作製した。得られた調整液Cを、攪拌機を用いて2000rpmで5分間撹拌した。
次に、撹拌後の調整液Cにジアミン化合物を添加し、攪拌機を用いて2000rpmで5分間撹拌して樹脂組成物を作製した。
【0058】
(実施例2~6、比較例3)
樹脂組成物の各成分を表1に記載の配合量としたことを除いて、実施例1と同様な手順で、樹脂組成物を得た。
【0059】
(比較例1)
調整液Aの作製段階においてエポキシ樹脂を用い、調整液Aに対してスラリーを添加して調整液Cを作製したことを除いて、実施例1と同様な手順で、樹脂組成物を得た。
【0060】
(比較例2)
上記調整液Aに対してスラリーを添加して調整液Cを作製したこと、ジアミン化合物を添加しなかったことを除いて実施例1と同様な手順で、樹脂組成物を得た。
【0061】
(スピンコート膜の作製)
作製した各樹脂組成物をSiウエハ上に滴下した後、スピンコータを用いて、500rpm、20秒間の条件でスピン塗布を行い、Siウエハ上に樹脂組成物からなる樹脂層が積層された積層体を形成した。
次に、得られた積層体に対して90℃、5分間のソフトベーク(SB)を実施した。
次に、SB後の積層体に対して、180℃、2時間の硬化工程Aに続いて、200℃、4時間の硬化工程Bを実施し、硬化物(スピンコート膜)を得た。
【0062】
(単独膜の作製)
厚さ18μmの銅箔の光沢面に、各樹脂組成物を乾燥後の膜厚が25μmになるようにアプリケーターにて塗布し、熱風式循環式乾燥炉で90℃で5分乾燥した。次いで、熱風式循環式乾燥炉で上記と同様に硬化工程Aおよび硬化工程Bを実施し、銅箔をエッチングすることで各樹脂組成物からなる硬化物(単独膜)を得た。
【0063】
(断面SEM観察)
実施例・比較例の各スピンコート膜をイオンミリング加工することにより断面試料を作製した。当該断面試料の断面をSEM観察した結果、各実施例の硬化物では、図1~6に示すように共連続構造またはエポキシ樹脂リッチな第1の相が「海」となり分岐型PPEリッチな第2の相が「島」となるような海島構造が形成されていることが確認された。また、各硬化物をジクロロメタンに浸漬した後に断面をSEM観察することで、第1の相に、窒化ホウ素が偏在していることが確認された。
一方、各比較例の硬化物では、図7~9に示すように相分離構造は観察されなかった。なお、比較例2の硬化物では無機フィラーが偏在している様子が確認できるが、分岐型PPEのみを用いた硬化物であるため、相分離構造に起因して無機フィラーが偏在しているのではなく、無機フィラーが凝集することによって偏在していると考えられる。従って比較例2の硬化物は相分離構造を形成していないと判断した。
【0064】
(密度)
各硬化物の成分および含有量に基づいて、密度を計算した。得られた結果を表1に示す。計算に用いた各成分の密度は以下の通りである。
エポキシ樹脂:1.17g/cm
ジアミン化合物:1.15g/cm
分岐型PPE:1.00g/cm
窒化ホウ素:2.1g/cm
シクロヘキサノン:0.948g/cm
【0065】
(DSC測定)
各実施例・比較例の単独膜について示差走査熱量計(DSC、日立ハイテクサイエンス社製、DSC600)を用いて、-20℃まで急冷した後、330℃まで昇温(昇温速度10℃/分)し、-20℃まで降温(降温速度:10℃/分)した後のセカンド昇温(昇温速度:10℃/分)における各硬化物のオンセットTg(℃)を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたガラス転移温度(オンセットTg)について、以下のガラス転移温度評価基準にしたがって評価した。
<ガラス転移温度評価基準>
A:200℃以上
B:150℃以上200℃未満
C:150℃未満
(A、Bを合格、Cを不合格とする)
また、変調DSC(周波数:0.016Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、定圧比熱容量Cpを測定した。得られた結果を表1に示す。
【0066】
(TGA測定)
各実施例・比較例の単独膜について熱重量測定装置(TGA、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、TGA5500)を用いて、各硬化物の重量減少率5%の温度Td5を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたTd5について、以下のTd5評価基準により評価した。
<Td5評価基準>
A:400℃以上
B:300℃以上400℃未満
C:300℃未満
(A、Bを合格、Cを不合格とする)
【0067】
(熱拡散率・熱伝導率測定)
各実施例・比較例の単独膜について室温における厚み方向の熱拡散率αを薄膜用超高感度熱拡散率測定装置(ai-phase社製、ai-phase Mobile M3 Type1)を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
各硬化物の厚み方向の熱伝導率λを下記式を用いて算出した。
λ=αρCp
α:熱拡散率、ρ:密度、Cp:定圧比熱容量(上述した変調DSCにより測定)
得られた結果を表1に示す。また、算出された熱伝導率について、以下の熱伝導率評価基準により評価した。
<熱伝導率評価基準>
A:0.450W/(m・K)以上
B:0.350W/(m・K)以上0.450W/(m・K)未満
C:0.300W/(m・K)以上0.350W/(m・K)未満
D:0.300W/(m・K)未満
(A、B、Cを合格、Dを不合格とする)
【0068】
(誘電率測定)
各実施例・比較例の単独膜を長さ80mm、幅35mmに切断したものを試験片として、SPDR(Split Post Dielectric Resonator)共振器法により誘電正接Dfを測定した。測定器には、キーサイトテクノロジー合同会社製のベクトル型ネットワークアナライザE5071C、SPDR共振器を用い、計算プログラムとしてQWED社製のものを用いた。条件は、周波数19.8GHz、測定温度25℃とした。得られた誘電正接Dfについて、それぞれ、以下の評価基準にしたがって評価した。
<Df評価基準>
A:0.0130未満
B:0.0130以上0.0150未満
C:0.0150以上
(A、Bを合格、Cを不合格とする)
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、実施例1~6の硬化物は、十分な放熱性を維持しながら、耐熱性や誘電特性もバランスよく発揮することが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9