(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143973
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20241003BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116943
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2023055882
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】▲蔭▼山 弘明
(72)【発明者】
【氏名】今田 有香
(72)【発明者】
【氏名】花岡 宏樹
【テーマコード(参考)】
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F142AA86
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD44
5F142DA14
5F142FA32
5F142FA34
5F142GA02
5F241AA46
5F241FF06
(57)【要約】
【課題】複数の素子を均一な強度で配線基板に接合できる発光装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】発光装置の製造方法は、第1接合部を含む複数の第1素子、及び、複数の第2接合部を含む配線基板を準備する工程と、前記第1接合部と前記第2接合部とを第1接合条件で接合することにより、前記複数の第1素子を前記配線基板に載置する工程と、前記複数の第1素子上に緩衝シートを配置し、前記緩衝シートを介して前記複数の第1素子を前記配線基板に向けて加圧することにより、前記第1接合部と前記第2接合部とを第2接合条件で接合する工程と、を備える。前記第2接合条件で接合する工程を複数回繰り返す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合部を含む複数の第1素子、及び、複数の第2接合部を含む配線基板を準備する工程と、
前記第1接合部と前記第2接合部とを第1接合条件で接合することにより、前記複数の第1素子を前記配線基板に載置する工程と、
前記複数の第1素子上に緩衝シートを配置し、前記緩衝シートを介して前記複数の第1素子を前記配線基板に向けて加圧することにより、前記第1接合部と前記第2接合部とを第2接合条件で接合する工程と、
を備え、
前記第2接合条件で接合する工程を複数回繰り返す発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記配線基板に載置する工程の後、前記第2接合条件で接合する工程の前に、
前記複数の第1素子の電気的特性を評価する工程と、
前記評価する工程により不良と判断された前記第1素子の前記第1接合部を前記第2接合部から離すことにより、前記不良と判断された前記第1素子を前記配線基板から除去する工程と、
前記配線基板における前記除去された第1素子が載置されていた領域に、第3接合部を含む第2素子を載置することにより、前記第3接合部と、前記除去された第1素子の第1接合部が接合されていた前記第2接合部とを接触させる工程と、
をさらに備え、
前記第2接合条件で接合する工程において、前記第3接合部と前記除去された第1素子の第1接合部が接合されていた第2接合部とを接合する請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記緩衝シートは塑性変形するシートであり、
少なくとも2回の前記第2接合条件で接合する工程において、異なる前記緩衝シートを用いるか、又は、同じ前記緩衝シートの異なる部分を用いる請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記緩衝シートは弾性変形するシートであり、
少なくとも2回の前記第2接合条件で接合する工程において、同じ前記緩衝シートを用いる請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2接合条件の荷重は前記第1接合条件の荷重よりも高い請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に印加する荷重は10MPa以上100MPa未満であり、前記第2接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に印加する荷重は10MPa以上440MPa以下である請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に荷重を印加する時間は、前記第1接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に荷重を印加する時間よりも長い請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に荷重を印加する時間は0.1秒間以上10秒間以下であり、前記第2接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に荷重を印加する時間は1分間以上10分間以下である請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2接合条件の温度は100℃以上200℃以下である請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1素子は、半導体部材、前記半導体部材の第1面に配置された前記第1接合部、及び、前記半導体部材の前記第1面の反対側に位置する第2面に配置された波長変換部材を含む請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1接合部及び前記第2接合部は金を含む請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
配線を有する配線基板と、
複数の第1素子と、
前記複数の第1素子を前記配線に接続する複数の接合部と、
を備え、
前記配線基板に対する前記複数の第1素子の接合強度の平均値に対する標準偏差の比の値は、0.1以下である発光装置。
【請求項13】
前記比の値が0.03以下である請求項12に記載の発光装置。
【請求項14】
配線を有する配線基板と、
複数の第1素子と、
前記複数の第1素子を前記配線に接続する複数の接合部と、
を備え、
平面視で、各前記第1素子の一辺の長さは500μm以上1500μm以下であり、
前記配線基板に対する前記複数の第1素子の接合強度の平均値が10kgf以上である発光装置。
【請求項15】
前記配線基板に対する前記複数の第1素子の接合強度の平均値に対する標準偏差の比の値は、0.1以下である請求項14に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1枚の配線基板に多数の半導体素子を配置した発光装置が開示されている。このような発光装置を製造する際には、多数の半導体素子を配線基板に一括して接合することにより高い生産性を実現できるが、一括して接合すると、半導体素子間で配線基板との接合強度にばらつきが生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一実施形態は、複数の素子間で配線基板との接合強度のばらつきを低減できる発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係る発光装置の製造方法は、第1接合部を含む複数の第1素子、及び、複数の第2接合部を含む配線基板を準備する工程と、前記第1接合部と前記第2接合部とを第1接合条件で接合することにより、前記複数の第1素子を前記配線基板に載置する工程と、前記複数の第1素子上に緩衝シートを配置し、前記緩衝シートを介して前記複数の第1素子を前記配線基板に向けて加圧することにより、前記第1接合部と前記第2接合部とを第2接合条件で接合する工程と、を備える。前記第2接合条件で接合する工程を複数回繰り返す。
【0006】
本開示の一実施形態に係る発光装置は、配線を有する配線基板と、複数の第1素子と、前記複数の第1素子を前記配線に接続する複数の接合部と、を備える。前記配線基板に対する前記複数の第1素子の接合強度の平均値に対する標準偏差の比の値は、0.1以下である。
【0007】
本開示の一実施形態に係る発光装置は、配線を有する配線基板と、複数の第1素子と、前記複数の第1素子を前記配線に接続する複数の接合部と、を備える。平面視で、各前記第1素子の一辺の長さは500μm以上1500μm以下である。前記配線基板に対する前記複数の第1素子の接合強度の平均値が10kgf以上である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、複数の素子間で配線基板との接合強度のばらつきを低減できる発光装置及びその製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】第1の実施形態における第1素子を示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態における配線基板を示す平面図である。
【
図4】
図3に示すIV-IV線による断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図7】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図8】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図9】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図10】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図11】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図12】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図13】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図14】第1の実施形態に係る発光装置を示す平面図である。
【
図16】第2の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図17】第3の実施形態に係る発光モジュールを示す平面図である。
【
図18】第3の実施形態における第1素子及び波長変換部材を示す一部拡大平面図である。
【
図19】試験例において接合強度を測定する測定装置を示す図である。
【
図20A】試験例において使用する測定装置の治具を示す正面図である。
【
図21】試験例における接合強度の測定方法を示す断面図である。
【
図22】実施例と比較例の接合強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。さらに、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、断面図として切断面のみを示す端面図を用いる場合もある。
【0011】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る発光装置の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
図2は、本実施形態における第1素子を示す断面図である。
図3は、本実施形態における配線基板を示す平面図である。
図4は、
図3に示すIV-IV線による断面図である。
図5~
図13は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【0012】
(第1素子及び配線基板を準備する工程)
図1のステップS1において、例えば
図2及び
図3に示すように、複数の第1素子10及び配線基板20を準備する。第1素子は第1接合部11を含む。配線基板20は複数の第2接合部21を含む。第1素子10を準備するタイミングと、配線基板20を準備するタイミングの順序は任意である。また、第1素子10及び配線基板20は製造することにより準備してもよく、他者から購入することにより準備してもよい。
【0013】
まず、第1素子10について説明する。
図2に示すように、第1素子10は、一対の第1接合部11、半導体部材12、及び、波長変換部材13を有する発光素子であり、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。
【0014】
半導体部材12においては、p型半導体層、活性層及びn型半導体層が積層されている。半導体部材12は、第1面12aと、第2面12bを有する。第2面12bは第1面12aの反対側の面である。一対の第1接合部11は、半導体部材12の第1面12aに配置されている。
【0015】
一対の第1接合部11のうちの一方は半導体部材12のp型半導体層に接続されており、他方は半導体部材12のn型半導体層に接続されている。これにより、一対の第1接合部11は、第1素子10のアノード電極又はカソード電極として機能する。なお、本明細書において「接続」とは電気的な接続をいう。また、「接合」とは、電気的な接続と共に機械的な連結が実現されている状態をいう。第1接合部11は金(Au)を含む。例えば、第1接合部11の少なくとも最表面は金からなる。第1接合部11の厚さは、例えば、0.01μm以上1μm以下である。
【0016】
波長変換部材13は、半導体部材12の第2面12bに配置されている。波長変換部材13は、例えば、透光性の樹脂材料又は無機材料からなる母材と、この母材中に配置された蛍光体を有する。蛍光体は、例えば、YAG(Yttrium Aluminum Garnet:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)である。例えば、第2面12b側から見て、波長変換部材13は半導体部材12よりも大きく、波長変換部材13の外縁は半導体部材12の外縁よりも外側に位置する。第2面12b側から見て、波長変換部材13の形状は例えば正方形であり、一辺の長さは例えば45μmである。また、波長変換部材13は、例えばサファイア等の透光性部材を介して、半導体部材12の第2面12bに配置されていてもよい。
【0017】
波長変換部材13における半導体部材12と対向する面の反対側の面は、光出射面13aとなっている。光出射面13aは、半導体部材12の第1面12a及び第2面12bに対して平行である。また、光出射面13aは平坦面であることが好ましい。但し、第1素子10の形状には不可避的にばらつきが発生する場合がある。例えば、波長変換部材13が反っていて、光出射面13aが凹状または凸状に湾曲している場合もある。
【0018】
一対の第1接合部11間に電力を供給することにより、例えば、半導体部材12は青色の光を出射する。波長変換部材13は半導体部材12から出射した光の一部を吸収して、黄色の光を放射する。これにより、第1素子10からは、青色の光と黄色の光が混色された白色の光が出射する。
【0019】
次に、配線基板20について説明する。
図3及び
図4に示すように、配線基板20は、1つの絶縁性の基体22と、複数の第2接合部21を含む。複数の第2接合部21は、基体22上に配置されている。第2接合部21は、金を含む。例えば、第2接合部21の少なくとも最表面は金からなる。
【0020】
複数の第2接合部21は、例えば、基体22の上面22aに行列状に配列されている。但し、第2接合部21の配置は行列状には限定されず、任意である。複数の第2接合部21のそれぞれは、第1素子10の半導体部材12の第1面12aを配線基板20の基体22の上面22aに対向させたときに、それぞれの第1接合部11が接触する位置に配置されている。
【0021】
図3及び
図4に示す例では、基体22の内部には、複数の配線23が配置されている。上面22aにおいては、基体22に複数の開口部24が形成されており、各開口部24において配線23が露出している。配線23の表面のうち、開口部24において露出していない領域は、基体22により覆われている。第2接合部21は、基体22の上面22a上及び開口部24内に配置されている。各第2接合部21は、開口部24の底部において各配線23に接続されている。
【0022】
(第1素子を配線基板に載置する工程)
次に、
図1のステップS2において、例えば
図5又は
図6に示すように、第1素子10の第1接合部11と配線基板20の第2接合部21とを第1接合条件で接合することにより、複数の第1素子10を配線基板20に載置する。
【0023】
第1素子10は配線基板20に1つずつ載置してもよい。具体的には、
図5に示すように、吸着ノズル101を用いて、第1素子10を1つずつ配線基板20上に載置する。このとき、第1素子10の第1接合部11と配線基板20の第2接合部21とを接触させ、第1接合条件により接合する。そして、吸着ノズル101を移動させて第1素子10を配線基板20上に載置する工程を繰り返すことにより、複数の第1素子10を1つの配線基板20上に載置する。なお、隣り合う第1素子10間の距離は、例えば5μmとする。
【0024】
または、複数の第1素子10を配線基板20に一括して載置してもよい。具体的には、
図6に示すように、支持基板111上に複数の第1素子10が配置された構造体110を準備する。次に、構造体110を配線基板20に対向させ、第1素子10の第1接合部11と配線基板20の第2接合部21とを接触させた後、第1接合条件により接合する。次に、支持基板111を第1素子10から離す。このようにして、複数の第1素子10を1つの配線基板20上に載置する。
【0025】
図5又は
図6に示す工程においては、第1素子10の波長変換部材13の光出射面13aの高さ、すなわち、配線基板20の基体22の上面22aからの距離が、複数の第1素子10間で均一になるようにし、光出射面13aが上面22aに対して平行になるようにする。
【0026】
但し、この工程においても不可避的にばらつきが発生し、光出射面13aの高さが第1素子10間でばらつく場合がある。また、光出射面13aが上面22aに対して傾斜する場合もある。さらに、光出射面13aが元々湾曲していて、光出射面13aが上面22aに対して平行にならない場合もある。
【0027】
本工程においては、第1接合条件により、第1接合部11と第2接合部21を加熱すると共に、相互に近づく方向に荷重を印加する。第1接合条件において、温度は80℃以上200℃以下とすることが好ましく、さらに好ましくは100℃以上150℃以下、例えば、140℃とする。第1接合部11と第2接合部21に印加する荷重は10MPa以上100MPa以下とすることが好ましく、10MPa以上40MPa以下とすることがさらに好ましい。また、第1接合条件において、第1接合部11と第2接合部21に荷重を印加する時間は0.1秒間以上10秒間以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.1秒間以上1秒間以下、例えば、0.5秒とする。第1接合条件において、超音波は印加しないことが好ましい。
【0028】
この工程では、第1接合部11及び第2接合部21は接合前の形状を概ね維持したまま、第1接合部11及び第2接合部21の表面の一部同士が接合する。第1接合部11と第2接合部21とを第1接合条件で接合することにより、第1接合部11と第2接合部21は接続されるが、機械的な接合強度は後述する第2接合条件による接合強度よりも低い。以下、第1接合条件によって実現したこのような状態を、「仮接合状態」という。これにより、複数の第1素子10が配線基板20に載置される。
【0029】
(第1素子の電気的特性を評価する工程)
次に、
図1のステップS3において、例えば
図7に示すように、配線基板20に仮接合した複数の第1素子10の電気的特性を評価する。
【0030】
具体的には、配線基板20を介して複数の第1素子10に電力を供給し、第1素子10の電気的特性を評価する。第1素子10が発光素子である場合には、評価する電気的特性は、例えば、所定の電圧を印加したときに発光素子から出射される光の輝度である。このような電気的特性を評価することにより、配線基板20に接合された複数の第1素子10を、良品と不良品とに分類する。
【0031】
例えば、基準値以上の輝度で発光した第1素子10を良品とし、基準値よりも低い輝度で発光した第1素子10及び発光しなかった第1素子10を不良品とする。以下、不良と判断された第1素子10を「第1素子10x」ともいう。また、第1素子10の電気的特性を評価する工程において不良と判断された第1素子10xが接合された第2接合部21を「第2接合部21r」という。
【0032】
(不良と判断された第1素子を配線基板から除去する工程)
図1のステップS4において、例えば
図8及び
図9に示すように、ステップS3に示す工程おいて不良と判断された第1素子10xの第1接合部11を第2接合部21rから分離することにより、不良と判断された第1素子10xを配線基板20から除去する。なお、ステップS3において不良と判断された第1素子10xが存在しない場合は、この工程は実施しない。
【0033】
本実施形態においては、例えば、第1素子10xにレーザ光104を照射することにより、第1素子10xを加熱する。これにより、第1接合部11と第2接合部21rとの界面に熱応力が印加され、第1素子10xの第1接合部11が第2接合部21rから分離する。第1素子10xが半導体部材を含む発光素子である場合には、この半導体部材の上面にレーザ光104を集光させる。これにより、レーザ光104が集光された半導体部材が熱膨張することで第2接合部21rとの間に熱応力が発生し、第1接合部11が第2接合部21rから分離する。
【0034】
なお、第1素子10xを配線基板20から取り外す方法は、上述のレーザ光104を用いる方法には限定されない。例えば、粘着性のある治具を第1素子10xに接着させて引き上げることにより、第1素子10xを配線基板20から除去してもよい。また、第1素子10xは、吸引器で吸引して除去してもよく、空気を吹き付けることで吹き飛ばして除去してもよい。
【0035】
(第2素子の第3接合部と第2接合部とを接触させる工程)
次に、
図1のステップS5において、第2素子15を準備する。第2素子15は、例えば、第1素子10と同じ構造を有する。第2素子15は、半導体部材12及び波長変換部材13に加えて、一対の第3接合部16を備える。第3接合部16は金を含む。第2素子15における第3接合部16の位置、構成、組成及び機能は、第1素子10における第1接合部11の位置、構成、組成及び機能と同様である。なお、ステップS3において不良と判断された第1素子10xが存在しない場合は、この工程は実施しない。
【0036】
次に、例えば
図10に示すように、配線基板20における除去された第1素子10xが載置されていた領域に、吸着ノズル101によって、第2素子15を載置する。これにより、第2素子15の第3接合部16と第2接合部21rとを接触させる。なお、第2素子15の第3接合部16は、第1接合条件によって配線基板20の第2接合部21rに仮接合してもよい。この場合も、第2素子15の波長変換部材13の光出射面13aは湾曲している可能性があり、光出射面13aは上面22aに対して傾斜する可能性もあり、第2素子15の光出射面13aの高さが第1素子10の光出射面13aの高さとは異なる可能性もある。
【0037】
(第1接合部と第2接合部とを第2接合条件で接合する工程)
次に、
図1のステップS6において、例えば
図11に示すように、複数の第1素子10上に緩衝シート103を配置する。第2素子15が存在する場合には、第2素子15上にも緩衝シート103を配置する。緩衝シート103は塑性変形するシートであり、例えば、カーボンシートである。緩衝シート103の厚さは、例えば、0.1mm以上0.2mm以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.1mm以上0.15mm以下であり、例えば、0.13mmである。
【0038】
そして、プレス板102により、緩衝シート103を介して複数の第1素子10及び第2素子15を配線基板20に向けて押圧する。この工程における第1接合部11と第2接合部21との接合、及び、第3接合部16と第2接合部21rとの接合は、第2接合条件により行う。第2接合条件は、第1接合条件と比較して、より強い接合を実現するような条件である。
【0039】
これにより、仮接合状態にある第1接合部11と第2接合部21とが第2接合条件で接合される。また、第2素子15が存在する場合には、新たに載置された第2素子15の第3接合部16と、除去された第1素子10xの第1接合部11が接合されていた第2接合部21rとが、第2接合条件で接合される。
【0040】
以下、説明の便宜上、特段の記載がない限り、第2素子15の有無にかかわらず、第1素子10及び第2素子15を総称して「第1素子10」といい、第1接合部11及び第3接合部16を総称して「第1接合部11」といい、第2接合部21及び第2接合部21rを総称して「第2接合部21」という。
【0041】
以下、第2接合条件について説明する。
第2接合条件の荷重は、前記第1接合条件の荷重より高くしてもよい。例えば、前述の如く、第1接合条件において第1接合部11と第2接合部21に印加する荷重は10MPa以上100MPa以下とすることが好ましいのに対して、第2接合条件において第1接合部11と第2接合部21に印加する荷重は10MPa以上440MPa以下とすることが好ましい。
【0042】
または、第2接合条件において荷重を印加する時間は、第1接合条件において荷重を印加する時間より長くしてもよい。例えば、前述の如く、第1接合条件において第1接合部11と第2接合部21に荷重を印加する時間は、0.1秒間以上10秒間以下とすることが好ましいのに対して、第2接合条件において第1接合部11と第2接合部21に荷重を印加する時間は、1分間以上10分間以下であることが好ましい。
【0043】
または、第2接合条件の温度は第1接合条件の温度より高くしてもよい。例えば、前述の如く、第1接合条件において温度は80℃以上200℃以下とすることが好ましく、例えば140℃とすることがより好ましいのに対して、第2接合条件の温度は100℃以上200℃以下とすることが好ましく、例えば150℃とすることがより好ましい。また、第1接合条件と同様に、第2接合条件においても超音波を印加しないことが好ましい。その理由は、複数の第1素子10を配線基板20に一括で接合する場合に、複数の第1素子10に超音波を印加しても、個々の第1素子10に超音波の振動が安定して印加されにくく、接合強度にばらつきが生じる可能性があるからである。
【0044】
そして、本実施形態においては、このような第2接合条件で接合する工程を複数回繰り返す。このとき、少なくとも2回の第2接合条件で接合する工程において、異なる緩衝シート103を用いるか、又は、同じ緩衝シート103の異なる部分を用いる。これにより、第1接合部11と第2接合部21がより強固に接合されると共に、複数の第1素子10間で配線基板20との接合強度のばらつきを低減することができる。
【0045】
以下、これらの複数回の接合を、より具体的に説明する。
図1のステップS6~S9に示すように、本実施形態においては、第2接合条件で接合する工程(以下、「本接合工程」という)を4回繰り返す。各本接合工程の時間は例えば4分間とする。すなわち、合計で16分間の本接合工程を実施する。
【0046】
図1のステップS6である1回目の本接合工程においては、例えば
図11に示すように、第1素子10ごとに第1素子10の光出射面13aの高さ、傾斜または平坦度にばらつきがある。しかしながら、緩衝シート103は第1素子10の形状に合わせて塑性変形するため、光出射面13aの略全体に接触する。これにより、第1素子10を破壊することなく、光出射面13aの反りを矯正できると共に、第1素子10ごとの光出射面13aの高さのばらつき及び光出射面13aの傾斜も矯正できる。
【0047】
なお、「矯正」とは、光出射面13aを完全に平坦にし、複数の第1素子10間で光出射面13aの高さを均一にし、光出射面13aを基体22の上面22aに対して完全に平行にする場合には限定されず、矯正前と比較して、光出射面13aの反り、高さのばらつき及び傾斜が改善されていればよい。例えば、1回目の本接合工程後の光出射面13aは、その前の仮接合状態と比較して、光出射面13aの反り、高さのばらつき及び傾斜が低減されている。
【0048】
上述の如く、1回目の本接合工程の直前において、第1素子10ごとに第1素子10の光出射面13aの高さ、傾斜または平坦度にはばらつきがあるため、緩衝シート103から第1素子10に対して、応力が均一には印加されない。
【0049】
例えば、第1素子10ごとに光出射面13aの高さがばらついている場合は、光出射面13aが相対的に低い位置にある第1素子10は、光出射面13aが相対的に高い位置にある第1素子10と比較して、緩衝シート103から印加される応力が小さい。また、光出射面13aが傾斜している場合は、光出射面13aにおける配線基板20に近い部分は、光出射面13aにおける配線基板20から遠い部分と比較して、緩衝シート103から印加される応力が小さい。さらに、光出射面13aが凹状に湾曲している場合は、湾曲の底部は周辺部と比較して、緩衝シート103から印加される応力が小さい。光出射面13aが凸状に湾曲している場合は、湾曲の周辺部は頂部と比較して、緩衝シート103から印加される応力が小さい。
【0050】
第1素子10における緩衝シート103から印加される応力が小さい部分は、応力が大きい部分と比較して、第1接合部11と第2接合部21との接合強度が低くなる。この結果、1回目の本接合工程が終了した段階では、第1素子10と配線基板20との接合強度のばらつきが大きい。
【0051】
次に、
図12に示すように、プレス板102及び緩衝シート103を第1素子10から離す。緩衝シート103は第1素子10に押されて塑性変形するため、緩衝シート103の下面には第1素子10の形状を反映した凹み103aが形成される。
【0052】
次に、
図1のステップS7において、例えば
図13に示すように、2回目の本接合工程を実施する。このとき、緩衝シート103は新しいシートを使用するか、1回目の本接合工程において使用した緩衝シート103の未使用部分を使用する。このため、緩衝シート103における第1素子10に当接する部分には、凹み103aが形成されていない。2回目の本接合工程においても、接合条件は第2接合条件とする。なお、1回目の本接合工程における第2接合条件に対して、2回目の本接合工程における接合条件を変更してもよい。
【0053】
2回目の本接合工程の直前においては、1回目の本接合工程によって光出射面13aの高さのばらつき、傾斜及び湾曲が矯正されている。また、使用する緩衝シート103には凹み103aが形成されていない。このため、2回目の本接合工程においては、1回目の本接合工程と比較して、緩衝シート103から第1素子10に均一に応力が印加される。
【0054】
この結果、2回目の本接合工程の後においては、1回目の本接合工程の直後と比較して、第1素子10と配線基板20との接合強度のばらつきが小さくなる。また、1回目の本接合工程において矯正しきれなかった光出射面13aの高さのばらつき、傾斜及び湾曲も、2回目の本接合工程において矯正される。
【0055】
次に、
図1のステップS8において、3回目の本接合工程を実施する。このとき、緩衝シート103は新しいシートを使用するか、2回目の本接合工程において使用した緩衝シート103の未使用部分を使用する。また、3回目の本接合工程における接合条件は第2接合条件とする。なお、1回目又は2回目の本接合工程における第2接合条件に対して、3回目の本接合工程における接合条件を変更してもよい。
【0056】
これにより、第1接合部11と第2接合部21がより強固に接合される。また、接合強度のばらつきがより小さくなる。さらに、1回目及び2回目の本接合工程において矯正しきれなかった光出射面13aの高さのばらつき、傾斜及び湾曲がある場合も、3回目の本接合工程において矯正される。
【0057】
次に、
図1のステップS9において、4回目の本接合工程を実施する。この場合も、緩衝シート103は新しいシートを使用するか、3回目の本接合工程において使用した緩衝シート103の未使用部分を使用する。また、4回目の本接合工程における接合条件は第2接合条件とするが、1回目、2回目又は3回目の本接合工程における第2接合条件に対して、4回目の本接合工程における接合条件を変更してもよい。これにより、第1接合部11と第2接合部21がより強固に接合され、接合強度のばらつきがより低減する。
【0058】
なお、本接合工程の回数は4回には限定されず、2回以上であればよく、5回以上であってもよい。また、各本接合工程において、毎回異なる緩衝シート103を用いるか、又は、同じ緩衝シート103の異なる部分を用いることが好ましいが、必ずしもこれには限定されない。但し、少なくとも2回の本接合工程において、異なる緩衝シート103を用いるか、又は、同じ緩衝シート103の異なる部分を用いることが好ましい。
【0059】
このように、複数回の本接合工程を実施することにより、対応する第1接合部11と第2接合部21は一体化し、第4接合部17となる。第4接合部17においては、第1接合部11と第2接合部21との界面の大部分が消滅する。また、界面に空隙が発生していた場合には、空隙の大部分が消滅する。これにより、第1素子10と配線基板20との機械的な接合強度は、仮接合状態よりも高くなる。この状態を「本接合状態」という。このようにして、発光装置1が製造される。
【0060】
(発光装置)
次に、製造された発光装置1の構成について説明する。
図14は、本実施形態に係る発光装置を示す平面図である。
図15は、
図14に示すXV-XV線による断面図である。
【0061】
図14及び
図15に示すように、本実施形態に係る発光装置1は、配線基板20と、複数の第1素子10と、複数の第4接合部17と、を有する。第1素子10には上述の第2素子15も含まれる。第1素子10の数は、例えば10個以上である。第1素子10は発光素子であり、例えば、発光ダイオードである。平面視で、第1素子10の形状は矩形であり、例えば、正方形である。
【0062】
第1素子10は、半導体部材12と、半導体部材12上に配置された波長変換部材13を有する。半導体部材12においては、p型半導体層、活性層及びn型半導体層が積層されている。平面視で、波長変換部材13は半導体部材12よりも大きく、波長変換部材13の外縁は半導体部材12の外縁の外側に位置している。配線基板20は、絶縁性の基体22と、基体22中に配置された導電性を有する複数の配線23を有する。複数の第1素子10は、配線基板20の上面22aにおいて、例えば、行列状に配列されている。
【0063】
第1素子10は第4接合部17を介して配線基板20の配線23に接続されると共に、機械的に連結されている。上述の如く、第4接合部17は、第1接合部11と第2接合部21が一体化して形成されたものである。したがって、第4接合部17は金を含む。例えば、第4接合部17は全体が金からなる。本実施形態においては、各第1素子10に2つの第4接合部17が接合されている。1つの第4接合部17は第1素子10のp型半導体層に接続されており、もう1つの第4接合部17は第1素子10のn型半導体層に接続されている。
【0064】
発光装置1において、複数の第1素子10と配線基板20との接合強度のばらつきが軽減される。また、波長変換部材13の光出射面13aの配線基板20からの高さは実質的に均一であり、光出射面13aは配線基板20の基体22の上面22aに対して平行である。なお、本明細書において、平行とは±5°以内の角度のずれは許容されるものとする。また、光出射面13aは実質的に平坦である。
【0065】
配線基板20に対する各第1素子10の接合強度の平均値(A)に対する標準偏差(σ)の比の値(σ/A)は、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.03以下である。接合強度とは、1個の第1素子10に配線基板20の基体22の上面22aに対して平行な方向に沿って力を印加したときに、この第1素子10が配線基板20から離れるときの力の大きさである。接合強度の平均値及び標準偏差は、発光装置1に含まれる全ての第1素子10の接合強度を測定して求めることが好ましいが、発光装置1に第1素子10が10個以上含まれているときは、少なくとも10個の第1素子10について接合強度を測定して求めればよい。
【0066】
発光装置1のサイズ及び強度の例を説明する。
第1の例においては、平面視で、第1素子10の一辺の長さ、すなわち、波長変換部材13の一辺の長さは40μm以上50μm以下であり、例えば45μmである。第1素子10間の距離は5μmである。
【0067】
第2の例においては、平面視で、第1素子10の一辺の長さ、すなわち、波長変換部材13の一辺の長さは500μm以上1500μm以下であり、例えば1000μmである。第1素子10間の距離は50μm以上150μm以下であり、例えば100μmである。この場合、第4接合部17の厚さは約1μmである。また、配線基板20に対する複数の第1素子10の接合強度の平均値は、10kgf以上である。
【0068】
(効果)
本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、
図1のステップS6~S9に示すように、本接合工程を複数回実施することにより、第1素子10の光出射面13aが配線基板20の上面22aに対して、高さがばらついていたり、傾斜していたり、光出射面13aが湾曲している場合でも、これらの高さのばらつき、傾斜及び湾曲を矯正しながら、第1接続部11と第2接続部12に荷重を印加することができる。このため、第1接続部11と第2接続部12に均一に荷重を印加することができ、複数の第1素子10を均一な強度で配線基板20に接合できる。すなわち、上述の如く、配線基板20に対する各第1素子10の接合強度の平均値(A)に対する標準偏差(σ)の比の値(σ/A)を0.1以下とすることができ、例えば、0.03以下とすることができる。
【0069】
また、本実施形態においては、
図1のステップS2に示す工程において、第1接合条件により複数の第1素子10の第1接合部11を配線基板20の第2接合部21に仮接合した後、
図1のステップS3に示す工程において、各第1素子10の電気的特性を評価する工程を行い、不良と判断された第1素子10xを、ステップS4に示す工程において除去する。次に、ステップS5に示す工程において、配線基板20における第1素子10xが除去されたあとの領域に第2素子15を載置し、ステップS6~S9に示す複数回の本接合工程において、良品と判断された第1素子10の第1接合部11を第2接合部21に接合すると共に、新たに載置した第2素子15を不良と判断された第1素子10xが接合されていた第2接合部21rに接合する。
【0070】
これにより、複数の第1素子10を一括して配線基板20に仮接合し、配線基板20を介して複数の第1素子10の電気的特性を評価することができる。また、不良品の第1素子10xを良品の第2素子15に効率よく交換することができる。この結果、発光装置1の生産性が向上する。
【0071】
更に、本実施形態においては、仮接合工程を第1接合条件で行い、本接合工程を第2接合条件で行っている。第2接合条件は第1接合条件と比較して、接合強度が高くなるような条件である。これにより、第1接合条件による仮接合工程においては、第1接合部11は第2接合部21に対して接続されるが、機械的な接合強度は本接合状態よりも低い仮接合状態となる。この結果、第1素子10の電気的特性の評価を行いつつ、不良と判断された第1素子10xの除去が容易になる。一方、第2接合条件による本接合工程においては、第1接合部11と第2接合部21の接合強度は、仮接合状態よりも高くなる。この結果、第1素子10と配線基板20との接合強度を高くすることができるため、発光装置1の信頼性が向上する。
【0072】
更にまた、本実施形態においては、不良と判断された第1素子10xにレーザ光104を照射し、第1素子10xを加熱することにより、第1素子10xの第1接合部11と配線基板20の第2接合部21rとの間に熱応力を発生させている。これにより、配線基板20の損傷を抑制しつつ、第1接合部11と第2接合部21rとの接合を解除できる。また、第1素子10xのみにレーザ光104を照射することにより、複数の第1素子10のうち不良と判断された第1素子10xのみを精度よく加熱できる。
【0073】
更にまた、本実施形態においては、第1接合部11、第2接合部21及び第3接合部16が金を含む。仮接合工程において、第1接合部11の金を含む部分と第2接合部21の金を含む部分とが接合される。例えば、第1接合部11の金からなる最表面と第2接合部21の金からなる最表面とが接合される。その後、第1接合部11と第2接合部21の接合界面に熱応力を生じさせることで不良と判断された第1素子10xを除去する。
【0074】
これに対して、例えば、第1接合部11と第2接合部21とを錫(Sn)を含む接合材料を用いて仮接合することも考えられる。しかしながら、錫を含む接合材料は、接合後に除去することが難しいため、第1素子10xを除去した後、第2接合部21rの表面に接合材料の残渣が残る可能性がある。このため、接合材料の残渣により、第2素子15の第3接合部16と第2接合部21rとの接合強度が低くなる可能性がある。
【0075】
本実施形態においては、第1素子10xを除去する工程において、第1接合部11の金を含む部分と第2接合部21の金を含む部分との界面で結合が解除されるため、第2接合部21rの表面に残渣が残りづらい。このため、第2素子15の第3接合部16を第2接合部21rに高い強度で接合できる。
【0076】
なお、本実施形態において、第2素子15の第3接合部16を配線基板20の第2接合部21rに接触させた後、配線基板20を介して第2素子15の電気的特性を評価してもよい。この工程により第2素子15が不良と判断された場合は、第1素子10xと同様な方法により、第2素子15を除去してもよい。このとき、電気的特性を評価する前に、第3接合部16を第1接合条件により接合し、第3接合部16と第2接合部21rとの接合状態を仮接合状態としてもよい。
【0077】
また、本実施形態においては、第1素子10が波長変換部材13を有する例を示したが、第1素子10は波長変換部材を有していなくてもよい。更に、本実施形態においては、第1素子10が発光素子である例を示したが、これには限定されず、例えば、演算用素子であってもよく、データを記憶するメモリ素子であってもよく、電力制御用のスイッチング素子であってもよい。
【0078】
<第2の実施形態>
図16は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図16は、第1の実施形態の
図12に相当し、1回目の本接合工程と2回目の本接合工程の間の状態を示す。
【0079】
図16に示すように、本実施形態は、第1の実施形態と比較して、塑性変形する緩衝シート103の替わりに弾性変形する緩衝シート105を用いる点、及び、少なくとも2回の本接合工程において、同じ緩衝シート105の同じ部分を用いる点が異なっている。弾性変形する緩衝シート105は、例えば、シリコーンゴムからなるシートであり、その厚さは例えば0.1mm以上0.2mm以下であり、例えば、0.1mmである。
【0080】
本実施形態においては、緩衝シート105として弾性変形するシートを用いているため、本接合工程の後で、緩衝シート105に第1素子10の形状を反映した凹みが形成されない。このため、次の本接合工程において、同じ緩衝シート105の同じ部分を用いても、複数の第1素子10に均一に荷重を加えることができる。本実施形態における上記以外の方法、構成及び効果は、第1の実施形態と同様である。なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、少なくとも2回の本接合工程において、異なる緩衝シート105又は同じ緩衝シート105の異なる部分を用いてもよい。
【0081】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、前述の第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を用いて、発光モジュールを製造する例である。
【0082】
先ず、本実施形態に係る発光モジュールの構成について説明する。
図17は、本実施形態に係る発光モジュールを示す平面図である。
図18は、本実施形態における第1素子及び波長変換部材を示す一部拡大平面図である。
【0083】
図17及び
図18に示すように、本実施形態に係る発光モジュール201は、配線基板211を備えている。配線基板211の平面視の形状は、例えば、長方形である。配線基板211の上面には、複数の第1素子212が配置されている。各第1素子212には2つの接合部213が配置されており、接合部213を介して配線基板211に載置されている。接合部213は金を含む。
【0084】
本実施形態においては、説明の便宜上、XYZ直交座標を採用する。配線基板211の長手方向を「X方向」とし、短手方向を「Y方向」とし、厚さ方向を「Z方向」とする。Z方向のうち、配線基板211から第1素子212に向かう方向を「上」ともいい、その逆方向を「下」ともいうが、この表現も便宜的なものであり、重力の方向とは無関係である。
【0085】
配線基板211の上面において、第1素子212は、例えば、2列に配列されている。各列は配線基板211の長手方向、すなわち、X方向に延びている。第1列221においては、例えば20個の第1素子212が配列されており、第2列222においては、例えば22個の第1素子212が配列されている。したがって、発光モジュール201には、合計で42個の第1素子212が配置されている。一例では、各第1素子212の平面視の形状は正方形であり、一辺の長さは500μm以上1000μm以下である。
【0086】
各第1素子212上には、それぞれ波長変換部材214が配置されている。波長変換部材214は、例えば、蛍光体としてYAGを含む板状の部材である。一例では、各波長変換部材214の平面視の形状は正方形であり、一辺の長さは550μm以上1100μmである。各列において隣り合う波長変換部材214間の距離は、一例では、30μm以上70μm以下である。波長変換部材214の数は第1素子212の数と同じである。
【0087】
配線基板211上には、樹脂部材215が配置されている。樹脂部材215は、配線基板211の上面の中央部を覆っている。樹脂部材215は、第1素子212の側面及び波長変換部材214の側面を覆い、波長変換部材214の上面を覆っていない。したがって、波長変換部材214の上面は樹脂部材215から露出している。樹脂部材215においては、例えば、透光性樹脂中に光反射性物質が含有されている。樹脂は、例えば、シリコーン樹脂である。光反射性物質は、例えば、酸化チタンである。
【0088】
配線基板211の上面における樹脂部材215に覆われた領域のY方向両側には、パッド216が配置されている。パッド216は、配線基板211のX方向に延びる端縁に沿って、2列に配列されている。パッド216の第3列223は、第1素子212の第1列221側に配置されている。パッド216の第4列224は、第1素子212の第2列222側に配置されている。
【0089】
各列に属するパッド216の数は、対応する列に属する第1素子212の数よりも1つ多い。すなわち、第3列223には21個のパッド216が配列されており、第4列224には23個のパッド216が配列されている。第3列に属する21個パッド216と第1列に属する20個の第1素子212は、交互に直列に接続されている。同様に、第4列に属する23個パッド216と第2列に属する22個の第1素子212は、交互に直列に接続されている。
【0090】
次に、本実施形態に係る発光モジュールの製造方法について説明する。
図17に示すように、配線基板211を準備する。配線基板211の上面には、パッド216が配置されている。本実施形態の配線基板211は、第1の実施形態の配線基板20に相当する。次に、配線基板211上に複数の第1素子212を載置する。本実施形態の第1素子212は、第1の実施形態の第1素子10において、波長変換部材13を除いた構成に相当する。
【0091】
このとき、第1の実施形態において説明したように、配線基板211に第1素子212を仮接合状態で接合し、第1素子212の電気的特性、例えば輝度を評価し、不良と判断された第1素子212は除去する。そして、不良と判断された第1素子212が除去されたあとの領域に、新たな第1素子212を載置し、全ての第1素子212を一括して本接合状態で接合する。本実施形態における新たな第1素子212は、第1の実施形態における第2素子15に相当する。これにより、不良品の第1素子212が良品に交換される。また、配線基板211と第1素子212との間に、接合部213が形成される。接合部213は、第1の実施形態の第4接合部17に相当する。
【0092】
また、第1の実施形態と同様に、本接合工程は複数回繰り返す。本接合工程においては、塑性変形する緩衝シート103を使用し、少なくとも2回、できれば毎回、異なる緩衝シート103を用いるか、同じ緩衝シート103の異なる部分を用いる。なお、第2の実施形態と同様に、弾性変形する緩衝シート105を使用し、複数回の本接合工程において、同じ緩衝シート105の同じ部分を用いてもよい。
【0093】
次に、それぞれの第1素子212上に波長変換部材214を配置する。本実施形態における波長変換部材214は、第1の実施形態における波長変換部材13に相当する。次に、配線基板211の上面、第1素子212の側面、及び、波長変換部材214の側面を覆うように、樹脂部材215を形成する。このようにして、本実施形態に係る発光モジュール201が製造される。
【0094】
配線基板211に対する各第1素子212の接合強度の平均値に対する標準偏差の比の値は、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.03以下である。また、接合強度の平均値は10kgf以上であることが好ましい。
【0095】
前述の各実施形態は、本発明を具現化した例であり、本発明はこれらの実施形態には限定されない。例えば、前述の各実施形態において、いくつかの構成要素又は工程を追加、削除又は変更したものも本発明に含まれる。
【0096】
<試験例>
次に、第1の実施形態の効果を示す試験例について説明する。
図19は、本試験例において接合強度を測定する測定装置を示す図である。
図20Aは本試験例において使用する測定装置の治具を示す正面図であり、
図20Bはその側面図であり、
図20Cは
図20Bの領域XXCを示す一部拡大側面図である。
図21は、本試験例における接合強度の測定方法を示す断面図である。
図22は、実施例と比較例の接合強度を示すグラフである。なお、本グラフは、横軸にサンプルの種類をとり、縦軸に第1素子と配線基板との接合強度をとって、本接合を複数回繰り返すことによる効果を示す。
【0097】
図19に示すように、接合強度の測定装置300においては、荷重センサ301と、荷重センサ301に取り付けられた治具302と、が設けられている。
図20A~
図20Cに示すように、治具302においては、本体部303と先端部304が一体的に形成されている。治具302は超硬合金からなる。本体部303の形状は略円柱形である。本体部303の上部の太さは均一であり、下部は下端部に向かうほど細くなっている。先端部304は本体部303の下端部から延出している。先端部304の形状は板状である。先端部304の幅aは約1mm、厚さbは約0.2mm、高さcは約0.2mmである。
【0098】
本試験例においては、実施例として、第1の実施形態において説明した方法により本接合を行ったサンプルを用意した。接合の回数は4回とし、接合時間は1回当たり4分間とした。すなわち、合計の接合時間は16分間とした。緩衝シート103として、厚さが0.13mmのカーボンシートを使用した。一方、比較例として、本接合を1回のみ行ったサンプルを用意した。接合の時間は15分間とした。実施例及び比較例における温度は200℃とし、荷重は44MPaとした。
【0099】
図21に示すように、測定装置300の治具302の先端部304を第1素子10間に挿入し、1個の第1素子10の波長変換部材13の側面に対向させた。このとき、配線基板20と治具302とのクリアランスdは30μmとした。そして、測定装置300を配線基板20の上面22aに平行な方向に沿って移動させた。移動速度vは、100μm/sとした。測定装置300を移動させることにより、治具302の先端部304が1個の第1素子10の波長変換部材13の側面に当接し、この第1素子10に力を印加した。そして、荷重センサ301により、この第1素子10が配線基板20から脱離したときの荷重を測定し、これを結合強度とした。
【0100】
実施例については、12個の第1素子10について接合強度を測定した。比較例については、24個の第1素子10について接合強度を測定した。測定結果を
図22に示す。実施例及び比較例における接合強度の平均値(A)、最大値(Max)、最小値(Min)及び標準偏差(σ)、並びに、平均値に対する標準偏差の比の値(σ/A)を表1に示す。
【0101】
【0102】
表1及び
図22に示すように、比較例に係るサンプルの接合強度の平均値は6.01kgfであったのに対して、実施例に係るサンプルの接合強度の平均値は12.43kgfであり、接合強度が高かった。また、比較例に係るサンプルの平均値に対する標準偏差の比の値(σ/A)は0.22であったのに対して、実施例に係るサンプルの比の値(σ/A)は0.02であり、ばらつきが小さかった。
【0103】
本発明は、以下の態様を含む。
【0104】
(付記1)
第1接合部を含む複数の第1素子、及び、複数の第2接合部を含む配線基板を準備する工程と、
前記第1接合部と前記第2接合部とを第1接合条件で接合することにより、前記複数の第1素子を前記配線基板に載置する工程と、
前記複数の第1素子上に緩衝シートを配置し、前記緩衝シートを介して前記複数の第1素子を前記配線基板に向けて加圧することにより、前記第1接合部と前記第2接合部とを第2接合条件で接合する工程と、
を備え、
前記第2接合条件で接合する工程を複数回繰り返す発光装置の製造方法。
【0105】
(付記2)
前記配線基板に載置する工程の後、前記第2接合条件で接合する工程の前に、
前記複数の第1素子の電気的特性を評価する工程と、
前記評価する工程により不良と判断された前記第1素子の前記第1接合部を前記第2接合部から離すことにより、前記不良と判断された前記第1素子を前記配線基板から除去する工程と、
前記配線基板における前記除去された第1素子が載置されていた領域に、第3接合部を含む第2素子を載置することにより、前記第3接合部と、前記除去された第1素子の第1接合部が接合されていた前記第2接合部とを接触させる工程と、
をさらに備え、
前記第2接合条件で接合する工程において、前記第3接合部と前記除去された第1素子の第1接合部が接合されていた第2接合部とを接合する付記1に記載の発光装置の製造方法。
【0106】
(付記3)
前記緩衝シートは塑性変形するシートであり、
少なくとも2回の前記第2接合条件で接合する工程において、異なる前記緩衝シートを用いるか、又は、同じ前記緩衝シートの異なる部分を用いる付記1または2に記載の発光装置の製造方法。
【0107】
(付記4)
前記緩衝シートは弾性変形するシートであり、
少なくとも2回の前記第2接合条件で接合する工程において、同じ前記緩衝シートを用いる付記1または2に記載の発光装置の製造方法。
【0108】
(付記5)
前記第2接合条件の荷重は前記第1接合条件の荷重よりも高い付記1~4のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【0109】
(付記6)
前記第1接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に印加する荷重は10MPa以上100MPa未満であり、前記第2接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に印加する荷重は10MPa以上440MPa以下である付記1~5のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【0110】
(付記7)
前記第2接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に荷重を印加する時間は前記第1接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に荷重を印加する時間よりも長い付記1~6のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【0111】
(付記8)
前記第1接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に荷重を印加する時間は0.1秒間以上10秒間以下であり、前記第2接合条件において前記第1接合部と前記第2接合部に荷重を印加する時間は1分間以上10分間以下である付記1~7のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【0112】
(付記9)
前記第2接合条件の温度は100℃以上200℃以下である付記1~8のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【0113】
(付記10)
前記第1素子は、半導体部材、前記半導体部材の第1面に配置された前記第1接合部、及び、前記半導体部材の前記第1面の反対側に位置する第2面に配置された波長変換部材を含む付記1~9のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【0114】
(付記11)
前記第1接合部及び前記第2接合部は金を含む付記1~10のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【0115】
(付記12)
配線を有する配線基板と、
複数の第1素子と、
前記複数の第1素子を前記配線に接続する複数の接合部と、
を備え、
前記配線基板に対する前記複数の第1素子の接合強度の平均値に対する標準偏差の比の値は、0.1以下である発光装置。
【0116】
(付記13)
前記比の値が0.03以下である付記12に記載の発光装置。
【0117】
(付記14)
配線を有する配線基板と、
複数の第1素子と、
前記複数の第1素子を前記配線に接続する複数の接合部と、
を備え、
平面視で、各前記第1素子の一辺の長さは500μm以上1500μm以下であり、
前記配線基板に対する前記複数の第1素子の接合強度の平均値が10kgf以上である発光装置。
【0118】
(付記15)
前記配線基板に対する前記複数の第1素子の接合強度の平均値に対する標準偏差の比の値は、0.1以下である付記14に記載の発光装置。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の実施形態は、例えば、車両用の前照灯及び表示装置の光源等に利用することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 発光装置
10 第1素子
11 第1接合部
12 半導体部材
12a 第1面
12b 第2面
13 波長変換部材
13a 光出射面
15 第2素子
16 第3接合部
17 第4接合部
20 配線基板
21 第2接合部
22 基体
22a 上面
23 配線
24 開口部
101 吸着ノズル
102 プレス板
103 緩衝シート
103a 凹み
104 レーザ光
105 緩衝シート
110 構造体
111 支持基板
201 発光モジュール
211 配線基板
212 第1素子
213 接合部
214 波長変換部材
215 樹脂部材
216 パッド
221 第1列
222 第2列
223 第3列
224 第4列
300 測定装置
301 荷重センサ
302 治具
303 本体部
304 先端部
a 先端部304の幅
b 先端部304の厚さ
c 先端部304の高さ
d 配線基板20と治具302とのクリアランス
v 測定装置300の移動速度