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特開2024-144057積層フィルム、導電性フィルム、集電体及び電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144057
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】積層フィルム、導電性フィルム、集電体及び電池
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241003BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20241003BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20241003BHJP
   B29C 48/49 20190101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B27/18 J
B32B27/00 B
H01M4/66 A
B29C48/08
B29C48/21
B29C48/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023195560
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2023054849
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 芹奈
(72)【発明者】
【氏名】西岡 潤
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
5H017
【Fターム(参考)】
4F100AD11B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03B
4F100AK07B
4F100AK41A
4F100AK41C
4F100AK42A
4F100AK42C
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AL05C
4F100AL07B
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA23B
4F100EJ30A
4F100EJ30C
4F100GB41
4F100JB04B
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JG01B
4F100JK06B
4F100JL11B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F207AA03
4F207AA24
4F207AB18
4F207AB24
4F207AE03
4F207AG01
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB26
4F207KL84
5H017AA03
5H017EE06
5H017HH00
5H017HH03
(57)【要約】
【課題】厚み振れが小さく、水性液体の塗工性に優れ、外観が良好で、導電性が高い中間層を有し、中間層と両外層との剥離性にも優れる積層フィルムを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)を含有する樹脂組成物(A)からなる中間層[I]と、熱可塑性樹脂(b1)を含有する樹脂組成物(B)からなる両外層[II]とを有する積層フィルムであって、中間層[I]の厚み振れが±10μm未満であり、中間層[I]の少なくとも片面の表面濡れ指数が30dyne/cm以上である、積層フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)を含有する樹脂組成物(A)からなる中間層[I]と、熱可塑性樹脂(b1)を含有する樹脂組成物(B)からなる両外層[II]とを有する積層フィルムであって、
中間層[I]の厚み振れが±10μm未満であり、
中間層[I]の少なくとも片面の表面濡れ指数が30dyne/cm以上である、積層フィルム。
【請求項2】
樹脂組成物(A)が、カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)を含有する、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)の含有量が、樹脂組成物(A)中、5質量%以上50質量%以下である、請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
中間層[I]の厚み(X)が1μm以上100μm以下であり、
中間層[I]の厚み(X)に対する両外層[II]の各層の厚み(Y)の比(Y/X)が1以上5以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
中間層[I]と両外層[II]との剥離強度が0.1N/cm未満である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項6】
熱可塑性樹脂(a1)がポリオレフィン系樹脂である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項7】
導電性フィラー(a2)がカーボンナノチューブである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
熱可塑性樹脂(b1)がポリエステル系樹脂である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項9】
積層フィルムの厚みが20μm以上400μm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項10】
両外層[II]の各層の厚みが5μm以上150μm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項11】
導電性フィラー(a2)の含有量が、樹脂組成物(A)中、0.1質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の積層フィルムの両外層[II]が剥離除去された、導電性フィルム。
【請求項13】
熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)を含有する樹脂組成物(A)からなる導電性フィルムであって、
樹脂組成物(A)がカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)を含有する樹脂組成物であり、
導電性フィルムの厚み振れが±10μm未満であり、
導電性フィルムの少なくとも片面の表面濡れ指数が30dyne/cm以上である、導電性フィルム。
【請求項14】
請求項12に記載の導電性フィルムを用いた集電体。
【請求項15】
請求項12に記載の導電性フィルムを用いた電池。
【請求項16】
熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)を含有する樹脂組成物(A)からなる中間層[I]と、熱可塑性樹脂(b1)を含有する樹脂組成物(B)からなる両外層[II]とを有する積層フィルムであって、
樹脂組成物(A)が、カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)を含有する、積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、導電性フィルム、集電体及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野において、高分子材料に求められる主要特性は製品や用途によって様々であるが、成形性、耐熱性、耐久性、高強度、耐薬品性、耐蝕性等があり、これらの要求を満たす樹脂としては、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリイミド等の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0003】
高分子材料へ導電性を付与するために、高分子材料に導電性材料を添加する方法が知られている。しかしながら、体積抵抗率が10Ω・cm以下の高導電性のフィルムを得るには、大量の導電性材料を高分子材料に添加しなければならず、押出成形性が悪くなる場合があった。そこで、数多くの検討が行われ報告されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、カーボン系フィラーを30重量部以上含有する高導電性熱可塑性樹脂組成物層を中間層とし、その両面に外側層として、該中間層に対する該外側層の180°方向への剥離に要する力が5~500g/15mm巾である剥離可能な熱可塑性樹脂層を共押出し、冷却後、両面の熱可塑性樹脂層を剥離することを特徴とする高導電性フィルムの製造方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂(A)に導電性フィラーが配合された導電性樹脂組成物よりなる中間層と、前記熱可塑性樹脂(A)との剥離性が良好な熱可塑性樹脂(B)がその両外層に配された多層フィルムを共押出法にて製膜し、前記多層フィルムを冷却後、両外層を剥離する高導電性フィルムの製造方法において、共押出しする際のドラフト比DとリップギャップLとの比D/Lが11以下であることを特徴とする高導電性フィルムの製造方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、導電性フィラー(A)および熱可塑性樹脂(B)を含む樹脂組成物(I)からなる中間層と、熱可塑性樹脂(C)を含む樹脂組成物(II)からなる両外層とを有し、樹脂組成物(I)のメルトフローレイト(MFR(I))と樹脂組成物(II)のメルトフローレイト(MFR(II))との比[MFR(I)/MFR(II)]が0.1以上3.5以下であり、樹脂組成物(I)の温度240℃、せん断速度10~100sec-1における第一法線応力差の平均値が-0.015MPa以上であり、かつ中間層の厚みが50μm以下である積層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61-82611号公報
【特許文献2】特開2014-030899号公報
【特許文献3】特開2020-157651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
積層フィルムを製造する方法として、例えば、押出し成形機を用い、導電性フィルムとなり得る中間層用の樹脂組成物と、外層用の樹脂組成物とを押出し機のホッパーにそれぞれ投入して、所定の温度で溶融可塑化し、Tダイの吐出口であるリップギャップから所定の製膜条件で共押出しを行い、所定の温度のキャストロールに導き、その後冷却固化して積層フィルムを得る方法が挙げられる。
【0009】
近年、電子部品の小型化、薄型化に伴い、その電子部品の一部として用いられる導電性フィルムにおいて、軽量化、薄膜化の要求レベルが高まっている。このため、所望する中間層の厚みを例えば100μm以下とすると、薄膜であるがゆえに、積層フィルムを製造する際、Tダイの吐出口から押し出される中間層用の樹脂組成物は、接触する吐出口周辺部材の影響を受け易くなる。この結果、中間層の厚み振れが大きくなり、中間層に流れムラや穴あきが見られるなど外観不良が生じる問題や、積層フィルムから外層を剥離する際、外層の剥離が安定せずスティックスリップ(引っ掛かり)が生じる問題などがあった。
【0010】
また、近年、導電性フィルムを負極用集電体の用途として用い、負極用集電体の表面に負極用塗料(例えば、負極活物質とバインダーと水系溶媒とを混合してなる負極用水系塗料)を塗布して負極層を形成し、電池を作製する試みが行われている。負極層を形成する際には、負極用集電体の表面に、負極用塗料(特に負極用水系塗料)が均一に塗布されることが求められるが、負極用塗料が負極用集電体の表面ではじかれてムラができ、負極用塗料を均一に塗布できない問題などがあった。
【0011】
特許文献1及び2に開示された高導電性フィルムの製造方法、及び特許文献3に開示された導電性フィルムとなり得る中間層を有する積層フィルムでは、より高い導電性を有するフィルムを得るための検討はなされている。しかしながら、特許文献1~3には、導電性フィルムを負極用集電体の用途で用いる場合、負極用集電体の表面特性を改質するなどして、負極用塗料を均一に塗布することについて、特段の検討はなされておらず、更なる検討の余地があった。
【0012】
そこで、本発明は、厚み振れが小さく、水性液体の塗工性に優れ、外観が良好で、導電性が高い中間層を有し、中間層と両外層との剥離性にも優れる積層フィルムを提供することを課題とする。
また、本発明は、厚み振れが小さく、水性液体の塗工性に優れ、外観が良好で、導電性が高い導電性フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、中間層の厚み振れを特定の範囲未満(±10μm未満)とし、中間層の少なくとも片面の表面濡れ指数を特定の値以上(30dyne/cm以上)とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の<1>~<16>を提供する。
<1>
熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)を含有する樹脂組成物(A)からなる中間層[I]と、熱可塑性樹脂(b1)を含有する樹脂組成物(B)からなる両外層[II]とを有する積層フィルムであって、中間層[I]の厚み振れが±10μm未満であり、中間層[I]の少なくとも片面の表面濡れ指数が30dyne/cm以上である、積層フィルム。
<2>
樹脂組成物(A)が、カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)を含有する、上記<1>に記載の積層フィルム。
<3>
カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)の含有量が、樹脂組成物(A)中、5質量%以上50質量%以下である、上記<2>に記載の積層フィルム。
<4>
中間層[I]の厚み(X)が1μm以上100μm以下であり、中間層[I]の厚み(X)に対する両外層[II]の各層の厚み(Y)の比(Y/X)が1以上5以下である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<5>
中間層[I]と両外層[II]との剥離強度が0.1N/cm未満である、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<6>
熱可塑性樹脂(a1)がポリオレフィン系樹脂である、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<7>
導電性フィラー(a2)がカーボンナノチューブである、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<8>
熱可塑性樹脂(b1)がポリエステル系樹脂である、上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<9>
積層フィルムの厚みが20μm以上400μm以下である、上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<10>
両外層[II]の各層の厚みが5μm以上150μm以下である、上記<1>~<9>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<11>
導電性フィラー(a2)の含有量が、樹脂組成物(A)中、0.1質量%以上50質量%以下である、上記<1>~<10>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<12>
上記<1>~<11>のいずれか1つに記載の積層フィルムの両外層[II]が剥離除去された、導電性フィルム。
<13>
熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)を含有する樹脂組成物(A)からなる導電性フィルムであって、樹脂組成物(A)がカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)を含有する樹脂組成物であり、導電性フィルムの厚み振れが±10μm未満であり、導電性フィルムの少なくとも片面の表面濡れ指数が30dyne/cm以上である、導電性フィルム。
<14>
上記<12>又は<13>に記載の導電性フィルムを用いた集電体。
<15>
上記<12>又は<13>に記載の導電性フィルムを用いた電池。
<16>
熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)を含有する樹脂組成物(A)からなる中間層[I]と、熱可塑性樹脂(b1)を含有する樹脂組成物(B)からなる両外層[II]とを有する積層フィルムであって、
樹脂組成物(A)が、カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)を含有する、積層フィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、厚み振れが小さく、水性液体の塗工性に優れ、外観が良好で、導電性が高い中間層を有し、中間層と両外層との剥離性にも優れる積層フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、厚み振れが小さく、水性液体の塗工性に優れ、外観が良好で、導電性が高い導電性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。ただし、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<用語の説明>
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【0017】
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)を含有する樹脂組成物(A)からなる中間層[I]と、熱可塑性樹脂(b1)を含有する樹脂組成物(B)からなる両外層[II]とを有する積層フィルムであって、中間層[I]の厚み振れが±10μm未満であり、中間層[I]の少なくとも片面の表面濡れ指数が30dyne/cm以上である。
【0018】
本発明によれば、厚み振れが小さく、水性液体の塗工性に優れ、外観が良好で、導電性が高い中間層を有し、中間層と両外層との剥離性にも優れる積層フィルムを提供することができる、という効果を奏する。また、本発明によれば、厚み振れが小さく、塗工性に優れ、外観が良好で、導電性が高い導電性フィルムを提供することができる、という効果を奏する。
この理由は必ずしも定かではないが、以下のように考えられる。
中間層の厚み振れを特定の範囲未満(±10μm未満)とすることによって、製膜される中間層と両外層との界面を安定化させることができ、中間層から外層をスムーズかつスピーディーに剥離させることができると考えられる。
また、導電フィルムとなり得る中間層の少なくとも片面の表面濡れ指数を特定の値以上(30dyne/cm以上)とすることによって、中間層に対して水性液体を塗布する際、中間層の界面表面張力を水性液体の表面張力に近付けることが可能となり、中間層の表面に水性液体が接触した時の接触角が小さくなり、中間層の表面に、水性液体を均一に塗布し易くすることができると考えられる。
ここで、導電性フィルムとなり得る中間層を負極用集電体の用途で用いる場合には、負極用水系塗料(例えば、負極活物質とバインダーと水系溶媒とを混合してなる負極用水系塗料)は水性液体に相当する。
【0019】
本発明では、中間層[I]の少なくとも片面の表面濡れ指数が30dyne/cm以上であり、好ましくは31dyne/cm以上、より好ましくは32dyne/cm以上である。なお、上限は特に限定されないが、通常60dyne/cm、好ましくは50dyne/cmである。
中間層[I]の少なくとも片面の表面濡れ指数は、中間層を構成する樹脂組成物(A)に含有させる樹脂の種類や量などを適宜調整することにより設定することができる。
濡れ指数が、特定の値以上(30dyne/cm以上)にあることで、中間層の表面で水性液体がはじかれ難くなり、中間層に対して水性液体を均一に塗布することができる。
一方、濡れ指数が、特定の値未満(30dyne/cm未満)になると、中間層の表面で水性液体がはじかれてムラができ易くなり、中間層に対して水性液体を均一に塗布できないおそれがある。
なお、中間層[I]の少なくとも片面の表面濡れ指数は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0020】
<中間層[I]>
(中間層[I]の厚み振れ)
積層フィルムにおいて、中間層[I]の厚み振れは、±10μm未満であり、好ましくは±8μm以下、より好ましくは±5μm以下、更に好ましくは±3μm以下である。
中間層[I]の厚み振れが、上記範囲にあることで、製膜される中間層と両外層との界面が安定化し、中間層の外観が良好となり、積層フィルムから外層を剥離する際、外層の剥離が安定化し、中間層と両外層との剥離性に優れる積層フィルムが得られ易くなる。
厚み振れは、通常%表記されるものであるが、本発明ではμm表記とする。
なお、中間層[I]の厚み振れは、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0021】
(中間層[I]の厚み(X))
積層フィルムにおいて、中間層[I]の厚み(X)は、好ましくは1μm以上200μm以下、より好ましくは3~180μm、更に好ましくは5~150μm、更により好ましくは5~100μmであり、更により好ましくは5~80μmである。
中間層[I]の厚み(X)が、上記範囲にあることで、製膜時のハンドリング性を良好にし、フィルムとしての機械的強度が得られ易くなり、軽量化、薄膜化が求められる導電性フィルムの用途で特に有利に用いることができる。
なお、中間層[I]の厚み(X)は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0022】
(中間層[I]に対する両外層[II]の厚み比(Y/X))
積層フィルムにおいて、中間層[I]の厚み(X)に対する両外層[II]の各層の厚み(Y)の比(Y/X)が、好ましくは1以上5以下であり、より好ましくは1~4.5、更に好ましくは1~4、更により好ましくは1~3.5である。ここで、両外層[II]の各層の厚みは、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
なお、中間層[I]の厚み、及び両外層[II]の厚みは、樹脂組成物(A)及び(B)の押出量や押出速度、キャストロールの温度や引取速度、Tダイのリップギャップ、押出した際の樹脂温度などを適宜調整することにより設定することができる。
厚み比(Y/X)が、上記範囲にあることで、厚み振れが小さく、外観が良好で、導電性が高い中間層を有し、中間層と両外層との剥離性に優れる積層フィルムが得られ易くなる。
一方、厚み比(Y/X)が、上記範囲から外れると、厚み振れが大きく、フィルムに流れムラや穴あきが見られるなど外観が不良で、導電性が劣る中間層しか得られず、積層フィルムから外層を剥離する際、外層の剥離が安定せずスティックスリップ(引っ掛かり)が生じるなど、中間層と両外層との剥離性に劣る積層フィルムしか得られないおそれがある。
【0023】
(中間層[I]と両外層[II]との剥離強度)
本発明の積層フィルムにおける、温度25℃環境下において剥離速度100mm/minの条件でT型剥離した場合の中間層[I]と両外層[II]との剥離強度は、好ましくは0.1N/cm未満、より好ましくは0.08N/cm以下、更に好ましくは0.06N/cm以下、更により好ましくは0.04N/cm以下、更により好ましくは0.035N/cm以下である。なお、下限は特に限定されないが、好ましくは0.001N/cm、より好ましくは0.005N/cm、更に好ましくは0.01N/cmである。
なお、中間層[I]と両外層[II]との剥離強度は、中間層[I]の厚み(X)に対する両外層[II]の厚み(Y)の比(Y/X)を例えば1以上5以下としたり、導電性フィラー(a2)の種類、中間層[I]を構成する樹脂の種類、両外層[II]を構成する樹脂の種類、中間層[I]を構成する樹脂の溶融粘度、及び両外層[II]を構成する樹脂の溶融粘度などを適宜調整することにより設定することができる。
中間層と両外層との剥離強度が、上記範囲にあることで、中間層に両外層の一部が付着するなど剥離不良が抑制されるだけでなく、中間層から外層をスムーズかつスピーディーに剥離させることができる。これにより、導電性フィルムとなり得る中間層の表面品質を向上させることができ、更に、導電性フィルム、導電性フィルムを用いた集電体、及び導電性フィルムを用いた電池の生産性を向上させることができる。
また、中間層と両外層との剥離強度が、上記範囲にあることで、積層フィルムの巻き取り時に両外層が中間層から剥がれる不具合を抑えることができる一方で、積層フィルムから外層を剥離する際、中間層に両外層の一部が付着するなど剥離不良を防止することもできる。
なお、中間層と両外層との剥離強度は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0024】
(中間層[I]の体積抵抗率)
積層フィルムにおいて、中間層[I]の体積抵抗率は、好ましくは500Ω・cm以下、より好ましくは300Ω・cm以下、更に好ましくは200Ω・cm以下、更により好ましくは100Ω・cm以下、更により好ましくは80Ω・cm以下である。
中間層[I]の体積抵抗率が、上記範囲にあることで、導電性が高い中間層を有する積層フィルムが得られ、積層フィルムから両外層を剥離除去して得られる中間層を、導電性フィルムの用途で特に有利に用いることができる。
なお、中間層[I]の体積抵抗率は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0025】
(樹脂組成物(A))
中間層[I]は、熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)を含有する樹脂組成物(A)からなる層である。更に、樹脂組成物(A)は、好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)を含有する。
【0026】
(熱可塑性樹脂(a1))
熱可塑性樹脂(a1)は、特に限定されるものではなく、各種熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂のなかでも、フィルムの機械的強度を確保する観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン等の炭素数2~8程度のα-オレフィンの単独重合体;それらのα-オレフィンと、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等の炭素数2~12程度の他のα-オレフィンや、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、塩化ビニル等のビニル化合物等との共重合体;前記α-オレフィンの単独重合体や共重合体に前記ビニル化合物等をグラフトさせたグラフト重合体等が挙げられる。これらの中でも、製膜される中間層と両外層との界面を安定化させる観点から、好ましくはポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂であり、より好ましくはポリプロピレン系樹脂である。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体(プロピレンのホモポリマー)であってもよく、プロピレンと炭素数2~20のオレフィンとの共重合体であってもよい。プロピレンと共重合されるオレフィンは1種類でも2種類以上用いてもよい。プロピレン共重合体の具体例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、中間層の製膜性の観点から、好ましくはプロピレン単独重合体である。
【0029】
ポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体(エチレンのホモポリマー)であってもよく、エチレンとα-オレフィンやビニルモノマー等のコモノマー成分と共重合されていてもよい。エチレン共重合体の具体例としては、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率は、80~99%が好ましく、83~98%がより好ましく、85~97%が更に好ましい。
アイソタクチックペンタッド分率が低すぎると、フィルムとしての機械的強度が低下するおそれがある。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合においてはこの限りではない。アイソタクチックペンタッド分率とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素-炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。13C-NMRスペクトルのメチル基領域のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位から求められる。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al.(Macromol.8,687(1975))に準拠している。
【0031】
また、ポリプロピレン系樹脂の分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnは、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。一方、上限については、10.0以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnを1.5以上とすることで十分な押出成形性が得られ、工業的に大量生産が可能である。一方、Mw/Mnを10.0以下とすることで、フィルムとしての機械的強度を確保することができる。Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量を表し、Mw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって得られる。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、好ましくは1.0~30g/10分、より好ましくは5.0~20g/10分である。
メルトフローレイト(MFR)が、上記範囲にあることで、導電性フィラーを充填して粘度が上昇した場合にも、樹脂組成物(A)の成形加工時において十分な溶融粘度を有し、フィルムとしての機械的強度を確保することができる。
なお、メルトフローレイト(MFR)は、JIS K7210に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」「WINTEC」(日本ポリプロ社製)、「ノティオ」「タフマーXR」(三井化学社製)、「ゼラス」「サーモラン」(三菱ケミカル社製)、「住友ノーブレン」「タフセレン」(住友化学社製)、「プライムPP」「プライムTPO」(プライムポリマー社製)、「Adflex」「Adsyl」「HMS-PP(PF814)」(サンアロマー社製)、及び「バーシファイ」「インスパイア」(ダウケミカル社製)などの市販品を使用できる。
【0034】
熱可塑性樹脂(a1)の含有量は、樹脂組成物(A)中、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~98質量%、更に好ましくは70~97質量%である。
熱可塑性樹脂(a1)の含有量が、上記範囲にあることで、導電性フィラー(a2)の分散性が良好となり、フィルムとしての機械的強度が確保され、積層フィルムから外層を剥離する際、外層の剥離が安定化し、中間層と両外層との剥離性にも優れる積層フィルムが得られ易くなる。
【0035】
(導電性フィラー(a2))
導電性フィラー(a2)は、特に限定されるものではないが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトカーボン、及び炭素繊維等のカーボンフィラー;粉末又は繊維状の金属;金属酸化物;金属窒化物;等が挙げられる。これらの中でも、カーボンフィラーが好ましく、カーボンナノチューブ、及びカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、樹脂組成物(A)に含有させる導電性フィラーを少量としても良好な導電性が得られ、中間層と両外層との剥離強度を特定の範囲未満(0.1N/cm未満)にし易くする観点から、カーボンナノチューブが更に好ましい。また、一方では、経済性の観点から、カーボンブラックが好ましい。
【0036】
カーボンナノチューブとしては、単層のカーボンナノチューブ、多層のカーボンナノチューブのいずれでもよい。また、カーボンナノチューブの製造方法も特に限定されるものではなく、熱CVD、プラズマCVDなどの熱分解法、アーク放電法、レーザー蒸発法等いずれを用いてもよい。
なお、本発明においては、例えば特開2018-127397号公報で説明されたカーボンナノチューブ等を用いることができる。
【0037】
一方、カーボンブラックとして、具体的には、ケッチェンブラック;アセチレンブラック;ファーネスブラック;チャンネルブラック;ナフサなどの炭化水素を水素及び酸素の存在下で部分酸化して、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを製造する際に副生するカーボンブラック、あるいはこれを酸化または還元処理したカーボンブラック;などが挙げられ、アセチレンブラック、ケッチェンブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0038】
カーボンブラックは、アスペクト比が1~5である粒子状の形態であることが好ましい。なお、アスペクト比とは、カーボンブラックが粒子状の形態である場合、カーボンブラックのストラクチャーを構成する球状成分の長軸の長さを球状成分の短軸の長さで割った値を指す。一方、カーボンブラックが繊維状の形態である場合、繊維長を繊維径で割った値を指す。
【0039】
カーボンブラックの平均一次粒子径は10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。一方、上限については、60nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。カーボンブラックの平均一次粒子径を10nm以上とすることで、樹脂組成物(A)に対する分散性を良好にし、カーボンブラックの未分散による凝集塊を生じ難くさせることができる。一方、カーボンブラックの平均一次粒子径を60nm以下とすることで、樹脂組成物(A)へ分散したときの導電性の指標となる体積抵抗率を小さくすることができ、良好な導電性を得ることができる。
【0040】
カーボンブラックのDBP吸油量は、下限については50ml/100g以上が好ましく、100ml/100g以上がより好ましい。一方、上限については750ml/100g以下が好ましく、400ml/100g以下がより好ましい。DBP吸油量が、50ml/100g以上であるとストラクチャーが大きく、良好な導電性を得ることができる。一方、DBP吸油量が、750ml/100g以下であると、樹脂組成物(A)に対する分散性を良好にし、カーボンブラックの未分散による凝集塊を生じ難くさせることができる。
なお、DBP吸油量とは、カーボンブラック粒子間の空隙を満たすことに用いられるDibutyl phthalate(DBP)の量により、粒子が化学的または物理的結合により凝集した構造であるストラクチャーの程度を示すものであり、カーボンブラック100g当りに包含することのできるDBPの量(ml)である。
【0041】
カーボンブラックとしては、例えば、商品名「BLACK PEARLS」「VULCAN」「STERLING」(キャボット社製)、「ケッチェンブラックEC」(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、「デンカブラック」(電気化学工業社製)、「トーカブラック」(東海カーボン社製)、「旭カーボンブラック」(旭カーボン社製)、及び「三菱カーボンブラック」(三菱ケミカル社製)などの市販品を使用できる。
【0042】
導電性フィラー(a2)の含有量は、樹脂組成物(A)中、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下、より好ましくは1~40質量%、更に好ましくは2~30質量%である。
導電性フィラー(a2)の含有量が、上記範囲にあることで、樹脂組成物(A)に対する分散性を良好にし、導電性フィラーの未分散による凝集塊を生じ難くさせることができ、外観が良好で、導電性が高い中間層を有する積層フィルムが得られ易くなる。
中でも、導電性フィラー(a2)がカーボンナノチューブである場合には、カーボンナノチューブの含有量は、樹脂組成物(A)中、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.3~20質量%、更に好ましくは0.5~10質量%、更により好ましくは1~8質量%である。
また、導電性フィラー(a2)がカーボンブラックである場合には、カーボンブラックの含有量は、樹脂組成物(A)中、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは3~40質量%、更に好ましくは5~35質量%、更により好ましくは5~30質量%、更により好ましくは5~25質量%である。
【0043】
(カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3))
樹脂組成物(A)は、中間層[I]に対する水性液体の塗布性を向上させる観点から、カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)を含有することが好ましい。
カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)は、ポリオレフィン系樹脂をカルボン酸変性したものである。
カルボン酸変性されるポリオレフィン系樹脂としては、熱可塑性樹脂(a1)として述べたポリオレフィン系樹脂と同様のものであってもよい。
カルボン酸変性に用いられるカルボン酸化合物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水酢酸、及び無水コハク酸等の酸無水物、メタクリル酸、マレイン酸、及びアクリル酸が挙げられるが、中でも、無水マレイン酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びアクリル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)は、ポリオレフィン系樹脂の原料モノマーと、カルボン酸化合物との共重合反応により形成されてもよく、ポリオレフィン系樹脂に、カルボン酸化合物が付加反応して形成されてもよい。
カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)としては、好ましくはマレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂、より好ましくはマレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂又はマレイン酸変性ポリエチレン系樹脂であり、更に好ましくはマレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂である。
なお、カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)に用いられるポリオレフィン系樹脂と、熱可塑性樹脂(a1)に用いられるポリオレフィン系樹脂とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)の酸価は、中間層[I]に対する水性液体の塗布性を向上させる観点から、好ましくは1~70mgKOH/g、より好ましくは10~65mgKOH/g、更に好ましくは20~60mgKOH/gである。
カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)の酸価が、上記範囲にあることで、中間層[I]の少なくとも片面の表面濡れ指数を特定の値以上とすることができ、中間層[I]の表面に、水性液体を均一に塗布し易くすることができる。
【0045】
カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)としては、例えば、商品名「ユーメックス1001」、及び「ユーメックス1010」(三洋化成工業社製)などの市販品を使用できる。
【0046】
カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)の含有量は、樹脂組成物(A)中、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは5~40質量%、更に好ましくは5~30質量%、更により好ましくは7~25質量%である。
カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)の含有量が、上記範囲にあることで、中間層[I]の少なくとも片面の表面濡れ指数を特定の値以上とすることができ、中間層[I]の表面に、水性液体を均一に塗布し易くすることができる。
【0047】
(添加剤)
樹脂組成物(A)には、中間層[I]の特性が阻害されない範囲で、熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)、更に好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)以外に、各種添加剤を必要に応じて含有させることができる。
添加剤としては、例えば、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤等が挙げられる。
添加剤を用いる場合は、その含有量は、樹脂組成物(A)中、通常30質量%以下であり、好ましくは0.0001~20質量%、より好ましくは0.001~15質量%、更に好ましくは0.01~10質量%である。
【0048】
<両外層[II]>
両外層[II]は、中間層[I]である導電性フィルムを使用時まで剥がさずに保護する保護フィルムとして機能することができる。
【0049】
(両外層[II]の厚み(Y))
積層フィルムにおいて、両外層[II]の各層の厚み(Y)は、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10~150μm、更に好ましくは20~130μm、更により好ましくは25~100μmである。ここで、両外層[II]の厚みは、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
両外層[II]の各層の厚み(Y)が、上記範囲にあることで、中間層と両外層との界面が安定に形成され、中間層の外観が良好となり、積層フィルムから外層を剥離する際、外層の剥離が安定し、中間層と両外層との剥離性に優れる積層フィルムが得られ易くなる。
なお、両外層[II]の各層の厚み(Y)は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0050】
(樹脂組成物(B))
両外層[II]は、熱可塑性樹脂(b1)を含む樹脂組成物(B)からなる層である。
【0051】
(熱可塑性樹脂(b1))
熱可塑性樹脂(b1)は、特に限定されるものではなく、積層フィルムから外層を剥離する際、外層の剥離が安定し、中間層と両外層との剥離性を良好にする観点から、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリスチレン系樹脂から選ばれる1種以上が好ましい。
特に、中間層[I]を構成する熱可塑性樹脂(a1)として、ポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン系樹脂)を用いる場合には、熱可塑性樹脂(b1)は、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリスチレン系樹脂から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0052】
(添加剤)
樹脂組成物(B)には、両外層[II]の特性が阻害されない範囲で、熱可塑性樹脂(b1)以外に、各種添加剤を必要に応じて含有させることができる。添加剤としては、例えば、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤等が挙げられる。
添加剤を用いる場合は、その含有量は、樹脂組成物(B)中、通常30質量%以下であり、好ましくは0.0001~20質量%、より好ましくは0.001~15質量%、更に好ましくは0.01~10質量%である。
【0053】
(積層フィルムの層構成)
本発明における積層フィルムは、中間層[I]の両面に外層[II]を積層して構成されるものであれば、特に限定されるものではないが、本発明の効果を損なわない範囲で、両外層[II]の少なくとも一方に他の層[III]を積層させる4層以上の構成とすることもできる。他の層[III]としては、具体的には、強度保持層、耐熱層、粘着層、バリア層等が挙げられる。本発明における積層フィルムの層構成としては、例えば、以下に示す態様が挙げられる。
・外層[II]/中間層[I]/外層[II]
・外層[II]/中間層[I]/外層[II]/他の層[III]
・他の層[III]/外層[II]/中間層[I]/外層[II]/他の層[III]
本発明の積層フィルムは、中間層[I]の両面に外層[II]が積層された3層からなる構成が好ましいが、層の総数は用途や使用目的に応じて、適宜調整することができる。
【0054】
(積層フィルムの厚み)
積層フィルムの厚みは、限定されるものではないが、好ましくは20μm以上400μm以下、より好ましくは25~400μm、更に好ましくは30~350μm、更により好ましくは50~300μmである。
【0055】
[積層フィルムの製造方法]
本発明における積層フィルムの製造方法は、中間層の厚み振れを特定の範囲未満(±10μm未満)とすることができる方法であれば、特に限定されるものではない。
積層フィルムを製造する方法として、例えば、押出し機、ダイ、冷却機、引取り機(キャストロール)、及び切断機を備える押出し成形機を用い、中間層用の樹脂組成物(A)と、外層用の樹脂組成物(B)とを、押出し機の別々のホッパーにそれぞれ投入して、所定の温度で溶融可塑化し、Tダイの吐出口であるリップギャップから所定の製膜条件で共押出しを行い、所定の温度のキャストロールに所定の速度で導き、その後冷却固化して積層フィルムを得る方法が挙げられる。なお、各層の積層には、マルチマニホールドダイ、及びフィードブロックを用いることができる。
【0056】
積層フィルムの製造方法において、共押出する際のリップ部における中間層[I]の厚み(x1)と、製膜後の積層フィルムにおける中間層[I]の厚み(X)との比(x1/X)は、0.5~40であり、好ましくは1~35、より好ましくは2~30、更に好ましくは3~25、特に好ましくは9~20である。
厚み比(x1/X)が、上記範囲にあることで、製膜される中間層と両外層との界面が安定化し、厚み振れが小さく、外観が良好で、中間層と両外層との剥離性に優れる積層フィルムが得られる易くなる。
なお、リップ部における中間層[I]の厚み(x1)、及び製膜後の積層フィルムにおける中間層[I]の厚み(X)は、樹脂組成物の押出量や押出速度、キャストロールの温度や引取速度、Tダイのリップギャップ、押出した際の樹脂温度などの製膜条件により適宜調整することができる。
【0057】
また、共押出する際のリップ部における中間層[I]の厚み(x1)は、好ましくは100μm以上500μm以下、より好ましくは120~400μm、更に好ましくは130~350μm、更により好ましくは120~300μmである。
リップ部における中間層[I]の厚み(x1)が、上記範囲にあることで、製膜時のハンドリング性を良好にし、製膜後の積層フィルムにおける中間層[I]の厚みを特定の範囲(好ましくは1μm以上200μm以下)に調整し易くなる。
なお、リップ部における中間層[I]の厚み(x1)は、全層の押出量に対する中間層の押出量の比率から、リップ部における中間層の断面積比が求まり、その断面積比とリップギャップの積から中間層厚みが算出できる。式にすると、リップ部における中間層[I]の厚み(x1)=(中間層の押出量/全層の押出量)×リップギャップにより求めることができる。
【0058】
製膜後の積層フィルムにおける中間層[I]の厚み(X)は、好ましくは1μm以上200μm以下、より好ましくは3~180μm、更に好ましくは5~150μm、更により好ましくは5~100μmであり、更により好ましくは5~80μmである。
中間層[I]の厚み(X)が、上記範囲にあることで、製膜時のハンドリング性を良好にし、フィルムとしての機械的強度が得られ易くなり、軽量化、薄膜化が求められる導電性フィルムの用途で特に有利に用いることができる。
なお、中間層[I]の厚み(X)は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0059】
押出し機の別々のホッパーにそれぞれ投入された中間層用の樹脂組成物(A)、及び両外層用の樹脂組成物(B)を溶融可塑化する温度は、好ましくは190~350℃、より好ましくは195~300℃、更に好ましくは200~280℃である。
溶融可塑化する温度が、上記範囲にあることで、製膜時のハンドリング性を良好にし、樹脂組成物の流動性、成形加工性を良好とすることができる。
【0060】
キャストロールの温度は、好ましくは70~150℃、より好ましくは80~140℃、更に好ましくは90~130℃である。また、キャストロールの引取速度は、好ましくは1.0~20m/min、より好ましくは2.0~15m/min、更に好ましくは3.0~15m/minである。
キャストロールの温度や引取速度が、上記範囲にあることで、中間層[I]の厚み、両外層[II]の厚みを所望の範囲とすることができる。
【0061】
(積層フィルムの加工)
本発明の積層フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、機械的強度の向上などの物性面の改善、用途、使用目的に応じて、延伸加工、またコロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工を施してもよい。
【0062】
[導電性フィルム]
本発明の導電性フィルムは、熱可塑性樹脂(a1)及び導電性フィラー(a2)を含有する樹脂組成物(A)からなる導電性フィルムであって、好ましくは、樹脂組成物(A)がカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)を含有する樹脂組成物であり、導電性フィルムの厚み振れが±10μm未満であり、導電性フィルムの少なくとも片面の表面濡れ指数が30dyne/cm以上である。
本発明の導電性フィルムは、積層フィルムの両外層を剥離除去することによって得られる。導電性フィルムは、積層フィルムの製造直後に両外層を剥離除去して得てもよいし、積層フィルムの状態で保管した後、必要に応じて両外層を剥離除去して得てもよい。導電性フィルムは、輸送時のハンドリング性を向上させる観点から、積層フィルムの状態で保管することが好ましい。
【0063】
[集電体及び電池]
本発明の導電性フィルムは、厚み振れが小さく、水性液体の塗工性に優れ、外観が良好で、導電性が高いことから、集電体の用途、及び電池(例えばリチウムイオン電池)の用途として好適に用いることができる。
【実施例0064】
次に、実施例および比較例を示し、本発明の積層フィルムについて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
熱可塑性樹脂(a1)としてポリプロピレン系樹脂:76質量%、導電性フィラー(a2)としてカーボンナノチューブ:4質量%、及びカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)としてマレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂(三洋化成工業社製、「ユーメックス 1001」:酸価26mgKOH/g):20質量%を含有する樹脂組成物(A)を用い、熱可塑性樹脂(b1)としてポリエステル系樹脂であるポリエチレンテレフタレート(商品名:ECOZEN T110、SKケミカル社製)からなる樹脂組成物(B)を用いた。
押出し成形機で用いるダイとして、作動ボルト方式のリップギャップ調整機構を有するTダイを用い、Tダイの吐出口であるリップギャップを、0.7mmに設定した。各層の積層には、マルチマニホールドダイ、及びフィードブロックを用いた。
押出し機、ダイ、冷却機、引取り機(キャストロール)、及び切断機を備える押出し成形機を用い、押出し機のホッパーに樹脂組成物(A)を投入し、別の押出し機のホッパーに樹脂組成物(B)を投入し、ヒータの温度を240℃に設定し、それぞれの樹脂組成物を押出し機内で溶融可塑化して、Tダイのリップ部から表1に示す製膜条件にて共押出しを行い、100℃のキャストロールに導き、その後冷却固化して積層フィルム([II]/[I]/[II])を得た。なお、中間層の両面に配置される外層の厚みはそれぞれ同じであった。
更に、得られた積層フィルムに対し、多軸巻取りスリッターにより、両外層[II]を剥離除去し、中間層[I](導電性フィルム)を得た。
得られた中間層[I](導電性フィルム)、及び両外層[II]について、以下に示す方法で評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0066】
(実施例2)
熱可塑性樹脂(a1)としてポリプロピレン系樹脂:86質量%、導電性フィラー(a2)としてカーボンナノチューブ:4質量%、及びカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)としてマレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂(三洋化成工業社製、「ユーメックス 1010」:酸価52mgKOH/g):10質量%を含有する樹脂組成物(A)を用い、熱可塑性樹脂(b1)としてポリエステル系樹脂であるポリエチレンテレフタレート(商品名:ECOZEN T110、SKケミカル社製)からなる樹脂組成物(B)を用い、表1に示す製膜条件にて、実施例1と同様にして、積層フィルム([II]/[I]/[II])を得た。
【0067】
(比較例1)
熱可塑性樹脂(a1)としてポリプロピレン樹脂:96質量%、及び導電性フィラー(a2)としてカーボンブラック:4質量%を含有する樹脂組成物(A)を用い、熱可塑性樹脂(b1)としてポリエステル系樹脂であるポリエチレンテレフタレート(商品名:ECOZEN T110、SKケミカル社製)からなる樹脂組成物(B)を用い、表1に示す製膜条件にて、実施例1と同様にして、積層フィルム([II]/[I]/[II])を得た。
【0068】
(濡れ指数)
積層フィルム(幅:400mm、長さ:400mm)から両外層を剥離除去して得られた中間層(導電性フィルム)を測定対象とし、JIS K6768:1999に準拠して、導電性フィルム表面の濡れ指数を測定した。
【0069】
(塗工性評価)
積層フィルム(幅:400mm、長さ:400mm)から両外層を剥離除去して得られた中間層(導電性フィルム)を測定対象とし、導電性フィルムに対して負極用水系塗料(負極活物質とバインダーと水系溶媒とを混合してなる負極用水系塗料)を塗布し、その塗布状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
A:導電性フィルムの表面に生じたはじきが10%未満である。
B:導電性フィルムの表面に生じたはじきが10%以上50%未満である。
C:導電性フィルムの表面に生じたはじきが50%以上である。
【0070】
(中間層の厚み(X)、中間層の厚み振れ)
積層フィルム(幅:400mm、長さ:400mm)から両外層を剥離除去して得られた中間層(導電性フィルム)を測定対象とし、1/1000mmのダイヤルゲージにて、フィルムの幅方向(TD)の中心点を不特定に3箇所、また中心点から幅方向左右にそれぞれ100mmの位置を不特定に6箇所、計9箇所において厚みを測定し、その平均値を中間層の厚み(X)とした。
計9箇所において測定した中間層の各厚みの値と、計9箇所において測定した中間層の厚みの平均値との差を算出し、算出により求めた最大値と最小値との差を2で除した値を厚み振れとした。
【0071】
(両外層の厚み(Y))
積層フィルムから剥離除去された両方の外層を測定対象とし、上記した中間層の厚み(X)と同様にして両外層の厚み(Y)を求めた。
【0072】
(中間層と両外層との剥離強度)
積層フィルムから両外層のうち片方の外層のみを剥離除去したフィルムを、フィルムの長手方向(MD)が長軸となるように短冊状(幅:25mm、長さ:200mm)に切り出した。この短冊状フィルムを同様にして計5つ準備し、測定対象とした。
測定対象とする短冊状フィルムの外層を長さ50mmまでT型剥離した後、残りの外層(長さ150mm)を、温度25℃環境下において剥離速度100mm/minの条件でT型剥離して引張応力を測定し、その最大値を剥離強度とした。計5つの短冊状フィルムの剥離強度の平均値を求め、中間層と両外層との剥離強度とした。
【0073】
(導電性フィルムの体積抵抗率)
導電性フィルムの体積抵抗率は、導電性フィルムを縦100mm×横100mmに切り出したサンプルについて、JIS K7194に準拠し、商品名:ロレスタAP(三菱ケミカル社製)を用いて四端子法にて測定した。なお、導電性フィルムの体積抵抗率が100Ω・cm以下であれば実用上問題ないため「A」と評価した。
【0074】
(導電性フィルムの外観評価)
導電性フィルムは、外観を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
・穴あき
A:フィルムの長手方向(MD)において、長さ1mあたりで穴あきが見られない。
B:フィルムの長手方向(MD)において、長さ1mあたりで穴あきが2ヶ所未満見られる。
C:フィルムの長手方向(MD)において、長さ1mあたりで穴あきが2ヶ所以上見られる。
・流れムラ
A:フィルムの表面に凹凸が見られない。
B:フィルムの長手方向(MD)及びフィルムの幅方向(TD)のどちらか一方において、凹凸が見られる(縦スジあり)。
C:フィルムの長手方向(MD)及びフィルムの幅方向(TD)のどちらにおいても、凹凸が見られる。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示される結果から、以下のことが確認された。
実施例1~2で得られた積層フィルムは、濡れ指数が30dyne/cm以上となる中間層(導電性フィルム)を有し、導電性フィルムに対する水性液体の塗工性に優れ、厚み振れが小さく、外観が良好で、導電性が高く、中間層と両外層との剥離性にも優れることが確認された。
一方、比較例1で得られた積層フィルムは、濡れ指数が30dyne/cm未満となる中間層(導電性フィルム)を有し、導電性フィルムに対する水性液体の塗工性が実施例よりも劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、厚み振れが小さく、水性液体の塗工性に優れ、外観が良好で、導電性が高い中間層を有し、中間層と両外層との剥離性にも優れる積層フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、厚み振れが小さく、水性液体の塗工性に優れ、外観が良好で、導電性が高い導電性フィルムを提供することができる。