(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144073
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】プリプレグ、プリプレグの製造方法及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C08J5/04 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209103
(22)【出願日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2023053803
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 崇寛
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB22
4F072AD42
4F072AD45
4F072AD54
4F072AG03
4F072AG17
4F072AH06
4F072AH12
4F072AH16
4F072AH49
4F072AK02
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL16
(57)【要約】
【課題】ポリエーテルイミド樹脂を含むプリプレグを成形した成形体の曲げ強度を改善する。
【解決手段】強化繊維とポリエーテルイミド樹脂を含み、前記ポリエーテルイミド樹脂がGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)と、該ピークトップ(P1)よりも分子量の高いピークトップ(P2)とを有する、プリプレグによる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維とポリエーテルイミド樹脂を含み、前記ポリエーテルイミド樹脂がGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)と、該ピークトップ(P1)よりも分子量の高いピークトップ(P2)とを有する、プリプレグ。
【請求項2】
前記ポリエーテルイミド樹脂が、下記式(1)及び(2)のうちの少なくとも一方の構造単位を含むものである、請求項1に記載のプリプレグ。
【化1】
・・・(1)
【化2】
・・・(2)
【請求項3】
前記ピークトップ(P2)の重量平均分子量(Mp2)が1.0×106~1.0×108である、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記GPCクロマトグラムにおけるポリエーテルイミド樹脂由来のピークの総面積に対し、前記ピークトップ(P2)を含むピーク面積が0.10%以上である、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記ピークトップ(P1)の重量平均分子量(Mp1)が1.0×104~8.0×104である、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記強化繊維として炭素繊維を含む、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記ピークトップ(P1)と前記ピークトップ(P2)のそれぞれから求められる重量平均分子量の比(Mp2/Mp1)が20以上である、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項8】
前記ピークトップ(P1)と前記ピークトップ(P2)のそれぞれから求められる重量平均分子量の比(Mp2/Mp1)が100以下である、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項9】
請求項1または2に記載のプリプレグを用いた成形体。
【請求項10】
繊維基材にポリエーテルイミド樹脂フィルムを積層して加熱することにより、前記ポリエーテルイミド樹脂フィルムに含まれる樹脂を前記繊維基材に含浸させるプリプレグの製造方法であって、
前記ポリエーテルイミド樹脂フィルムは、厚さが10~100μmであり、
前記加熱時に380℃以上に加熱する、プリプレグの製造方法。
【請求項11】
前記ポリエーテルイミド樹脂が、下記式(1)及び(2)のうちの少なくとも一方の構造単位を含むものである、請求項10に記載のプリプレグの製造方法。
【化3】
・・・(1)
【化4】
・・・(2)
【請求項12】
前記加熱時に1分以上加熱する、請求項10または11に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項13】
前記ポリエーテルイミドフィルムのGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークトップ(F1)よりも分子量の高いピークトップ(F2)を少なくとも1つ有し、F2を含むピーク面積が0.1%以下である請求項10または11に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項14】
前記加熱時と同時に加圧をする、請求項10または11に記載のプリプレグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、プリプレグの製造方法及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルイミド(以下ポリエーテルイミド)樹脂は、ポリアミド樹脂やポリカーボネート樹脂等のエンジニアリングプラスチックを上回る難燃性、耐熱性、機械的特性を保有することから、金属代替用途への適用が進められている。そのため、更なる適用範囲の拡大を目的として、これらを含むマトリックス樹脂を強化繊維で補強した繊維強化複合材料が提案されている。
例えば特許文献1、2には、ポリエーテルイミド樹脂をマトリックス樹脂として用いた中間材、プリプレグ等の繊維強化複合材料が開示されている。また、ポリエーテルイミドを含むプリプレグを加熱溶融により製造する場合、前記樹脂の溶融粘度が高いため、ポリエーテルイミド樹脂を溶解する溶剤を用いて粘度を低下させプリプレグを製造する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-119506号公報
【特許文献2】特開2012-246442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の一つは、ポリエーテルイミド樹脂を含むプリプレグを成形した成形体の曲げ強度を改善することである。本発明の各態様により解決される課題は、本明細書中に明示的または黙示的に開示される場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプリプレグは以下[1]の態様を含み、本発明のプリプレグの製造方法は以下[2]の態様を含む。
[1]強化繊維とポリエーテルイミド樹脂を含み、前記ポリエーテルイミド樹脂がGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)と、該ピークトップ(P1)よりも分子量の高いピークトップ(P2)とを有するプリプレグ。
[2]繊維基材にポリエーテルイミド樹脂フィルムを積層して加熱することにより、前記ポリエーテルイミド樹脂フィルムに含まれる樹脂を前記繊維基材に含浸させるプリプレグの製造方法であって、前記ポリエーテルイミド樹脂フィルムは、厚さが10~100μmであり、前記加熱時に380℃以上に加熱する、プリプレグの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポリエーテルイミド樹脂を含むプリプレグを成形した成形体の曲げ強度が改善された成形体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<プリプレグ>
本発明のプリプレグは、強化繊維とポリエーテルイミド樹脂を含み、前記ポリエーテルイミド樹脂がGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)よりも分子量の高いピークトップ(P2)を少なくとも1つを有する。
【0008】
本発明のプリプレグは、ポリエーテルイミド樹脂及び強化繊維以外の成分(任意成分)をさらに含んでいてもよい。なお、プリプレグの形態としては、強化繊維を一方向に引き揃えたシート状の強化繊維束にポリエーテルイミド樹脂を含むマトリックス樹脂が含浸した一方向プリプレグ(UDプリプレグ)、強化繊維の織物にマトリックス樹脂が含浸したクロスプリプレグ、トウ(強化繊維束)に予めマトリックス樹脂が含浸したトウプレグ等が挙げられる。
【0009】
[ポリエーテルイミド樹脂]
本発明のプリプレグに用いるポリエーテルイミド樹脂は、エーテル結合とイミド結合を含む繰り返し単位を有する樹脂であり、本発明のプリプレグにおいてマトリックス樹脂となる。また、上記ポリエーテルイミド樹脂は脂肪族鎖または芳香族環並びにエーテル結合およびイミド結合を含む熱可塑性樹脂である。このポリエーテルイミドは本発明の効果を阻害しない範囲で、置換基を有してもよい。そのうち、本発明に用いるポリエーテルイミド樹脂は、下記式(3)で表される繰り返し単位(「繰り返し単位(3)」と称する場合がある。)を有することが好ましい。
【0010】
【0011】
式(3)中、Yは、-O-またはエーテル結合を有する2価の基を表す。Zは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。エーテル結合を有する2価の基としては、例えば以下に示される基が挙げられる。
【0012】
【0013】
本発明のポリエーテルイミド樹脂は以上の中でも、下記式(1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」と称する場合がある。)を有するポリエーテルイミド樹脂を含むことが好ましい。
【0014】
【0015】
上記式(1)において、n(繰り返し数)は、通常10~1000の範囲の整数であり、耐熱性と成形性のバランスに優れることから、20以上が好ましく、50以上がより好ましい。また、1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。
また、高分子量体として含まれる場合、n(繰り返し数)は通常1000~100000の範囲の整数であり、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。前記下限値以上であることで、成形体の機械物性が向上する。
【0016】
上記式(1)で表される繰り返し単位は、イミド結合位置がメタ位にある。一方で、ポリエーテルイミド樹脂は下記式(2)で表される繰り返し単位のように、イミド結合位置がパラ位にあるものも存在する。本発明において用いるポリエーテルイミド樹脂としては、下記式(2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」と称する場合がある。)を有するポリエーテルイミド樹脂を含むものも同様に好ましい。従って、本発明に用いるポリエーテルイミド樹脂としては、式(1)及び式(2)のうちの少なくとも一方の構造単位を含むことが好ましい。
【0017】
【0018】
上記式(2)において、GPCクロマトグラムにおけるポリエーテルイミド樹脂由来の最大面積のピークに存在するポリエーテルイミド樹脂のn(繰り返し数)は10~1000の範囲の整数であり、耐熱性と成形性のバランスに優れることから、50以上が好ましく、100以上がより好ましい。また、1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。
また、高分子量体として含まれる場合、n(繰り返し数)は1000~100000の範囲の整数であり、2000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。前記下限値以上であることで、成形体の機械物性が向上する。
高分子量体を有することで、強化繊維とポリエーテルイミド樹脂との界面亀裂を抑制できるため、成形体の機械物性が向上する。
【0019】
本発明のプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂は、GPCクロマトグラムにおけるポリエーテルイミド樹脂由来の最大面積のピークのピークトップ(P1)よりも分子量の高いピークトップ(P2)を少なくとも1つ有する。ピークトップ(P2)を有することで、強化繊維とポリエーテルイミド樹脂との界面亀裂が抑制され、成形体の機械物性が向上する。
このGPCクロマトグラムにおいて、ポリエーテルイミド樹脂由来の総ピーク面積に対してピークトップ(P2)を含むピーク面積は、0.10%以上であることが好ましく、0.25%以上がより好ましく、0.30%以上がさらに好ましく、0.50%以上が特に好ましく、0.55%以上が格別好ましい。一方で5.0%以下が好ましく、3.0%以下がより好ましく、2.0%以下がさらに好ましい。前記下限値以上では高い成形体の強度が得られ、前記上限値以下では加熱時に軟化しやすく成形性が向上する。高分子量体の含有率は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)クロマトグラムのポリエーテルイミド樹脂由来のピーク面積全体に対し、前記クロマトグラムの最大面積のピークのピークトップ(P1)よりも分子量が高いピークトップを有するピーク面積の和との面積比から求められる。
【0020】
GPCクロマトグラムにおけるポリエーテルイミド樹脂由来の最大面積のピークに存在するポリエーテルイミド樹脂の分子量分布は1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が特に好ましい。また、分子量分布は8.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.0以下が特に好ましい。分子量分布が前記範囲内であれば、高分子量成分と低分子量成分が適量となり、機械特性、耐薬品性のバランスに優れる傾向となる。
【0021】
プリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおいて、最大面積のピークのピークトップの(P1)の重量平均分子量(Mp1)は、1.0×104以上であることが好ましく、3.0×104以上であることがより好ましく、一方で8.0×105以下であることが好ましく、6.0×105以下であることがより好ましい。前記下限値以上では成形体の機械特性に優れ、前記上限値以下ではプリプレグの生産性を上げることが出来る。また、本発明のプリプレグに用いるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおいて、最大面積のピークのピークトップ(P1)より分子量の高いピークトップ(P2)を少なくとも一つ有する。
また、そのピークトップ(P2)の重量平均分子量(Mp2)は、1.0×106以上が好ましく、1.5×106以上がより好ましく、2.0×106以上がさらに好ましく、通常1.0×108以下である。前記下限値以上で成形体の強度が向上する。
【0022】
前記ピークトップ(P1)と前記ピークトップ(P2)の重量平均分子量の比は、20以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、30以上であることがさらに好ましく、一方で100以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましく、60以下であることがさらに好ましい。P1とP2の重量平均分子量の比が前記範囲にあることで、成形体の強度と成形性が両立する。
【0023】
なお、本発明において、前記の質量平均分子量及び分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により以下の条件で測定して得られる値を示す。
【0024】
(GPC測定条件)
使用機器:東ソー(株)製HLC-8320GPCシステム
カラム:TSKgel guardcolumn SuperH-H(4.6mml.D.×3.5cm)+TSKgel SuperHM-H(6.0mml.D.×15cm)2本(東ソー(株)製)
溶離液:PFP(ペンタフルオロフェノール)(富士フィルム和光純薬製)/クロロホルム(富士フィルム和光純薬製HPLC級)=1/2(重量比)
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率計(RI検出器)、polarity=(+)
検量線:標準ポリスチレン(東ソー製)を用いた3次近似曲線(得られる値はポリスチレン換算分子量)
【0025】
ポリエーテルイミド樹脂としては市販品を用いることができ、SABIC Innovative Plastics社製の商品名「Ultem(登録商標。以下同様。) CRS5001」、「Ultem CRS5011」、「Ultem 1000」、「Ultem 1010」「Ultem 1040A」が挙げられる。
ポリエーテルイミド樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ポリエーテルイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)は、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、180℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度が上記下限値以上であることにより、プリプレグの耐熱性が十分なものとなる。また、300℃以下が好ましく、290℃以下がより好ましく、280℃以下が特に好ましい。ガラス転移温度が上記上限値以下であることにより、プリプレグが比較的低温で成形可能となる。プリプレグのガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)によって測定される貯蔵弾性率の変曲点(E‘-Tg:E‘-OnsetでのTg)を示し、ASTM D7028に準拠する方法によって測定できる。
【0027】
プリプレグは、強化繊維以外の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
プリプレグが添加剤を含む場合、ポリエーテルイミド樹脂と添加剤とを混合してポリエーテルイミド樹脂組成物を調製し、このポリエーテルイミド樹脂組成物を炭素繊維に含浸させればよい。
プリプレグが複数の強化繊維を含む場合、複数の強化繊維を含む強化繊維層にポリエーテルイミド樹脂又はポリエーテルイミド樹脂組成物を含浸させればよい。
【0029】
プリプレグ中における添加剤の体積含有率は、機械的強度保持の観点から5体積%以下が好ましく、1体積%以下がより好ましく、0.5体積%以下がより好ましい。
なお、プリプレグ中におけるマトリックス樹脂、炭素繊維、他の繊維及び添加剤の体積含有率の合計が100体積%である。
プリプレグ1枚の厚さは0.04mm以上が好ましく、0.07mm以上がより好ましい。一方で0.7mm以下が好ましく、0.4mm以下がより好ましい。
【0030】
[ポリエーテルイミド樹脂以外の熱可塑性樹脂]
本発明のプリプレグにおいて、ポリエーテルイミド樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、「他の樹脂」ともいう。)を本発明の効果を損なわない範囲でさらに含んでいてもよい。
他の樹脂としては、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂や、アクリロニトリルとスチレンの共重合体等が挙げられる。他の樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明のプリプレグに用いるポリエーテルイミド樹脂の含有量は、ポリエーテルイミド樹脂と他の樹脂との合計量(マトリックス樹脂の総質量)に対し、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。また、ポリエーテルイミド樹脂の含有量の上限は、マトリックス樹脂の総質量に対して通常100質量%である。ポリエーテルイミド樹脂の含有量が上記下限値以上であれば、成形体の耐薬品性がより向上する。ポリエーテルイミド樹脂の含有量が上記上限値以下であれば、炭素繊維へのマトリックス樹脂の含浸性を良好に維持できる。
【0032】
[強化繊維]
プリプレグに用いる強化繊維は 無機繊維または有機繊維、金属繊維が使用できる。無機繊維としては、炭素繊維;黒鉛繊維;炭化珪素繊維;ガラス繊維;アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ステンレス、鉄等の金属繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。
また上記繊維を組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維が挙げられる。ハイブリッド構成の強化繊維としては、金属を被覆した炭素繊維が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。強化繊維の形態としては連続繊維が強度や剛性の観点から好ましい。
以上で挙げた中でも、本発明のプリプレグは、強化繊維として炭素繊維を含むことが好ましい。
【0033】
(炭素繊維)
炭素繊維としては特に制限されないが、例えばポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維等が挙げられる。これらの中でも、PAN系炭素繊維が好ましい。炭素繊維は、連続繊維が好ましい。
炭素繊維は、典型的には、複数の単繊維(フィラメント)を束ねた炭素繊維束の形態で用いられる。炭素繊維束のフィラメント数は、1000~60000本が好ましく、1000~50000本がより好ましく、12000~48000本がさらに好ましい。上記範囲内であれば、工業的規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。得られた炭素繊維束を用いて、炭素繊維束が一方向に並んだ繊維形態や、織物形態(例えば平織、綾織、朱子織など)といった繊維基材とすることができる。炭素繊維のストランド弾性率は成形体の剛性と強度の観点から、200~400GPaが好ましく、250~380GPaがより好ましく、280~350GPaがより好ましい。炭素繊維束のストランド弾性率は、ASTM D4018に準拠した方法で測定される。
【0034】
プリプレグ中における強化繊維の体積含有率(Vf)は、20~75体積%が好ましく、40~70体積%がより好ましく、50~65体積%がより好ましい。強化繊維の体積含有率(Vf)が上記下限値以上であれば、強化繊維による補強効果が充分に発揮され、成形体の剛性や強度がより高まる。強化繊維の体積含有率(Vf)が上記上限値以下であれば、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性を充分に確保することができる。成形体の疲労特性がより優れる。なお、本明細書において、強化繊維の体積含有率(Vf)は、JIS K 7075に準拠する測定方法で得られる値である。
【0035】
(プリプレグの製造方法)
本発明のプリプレグの製造方法は、例えばポリエーテルイミド樹脂を10~100μm程度の厚さのフィルム状、繊維径が5~50μm程度の繊維状又は平均粒径が10~100μm程度のパウダー状に加工して炭素繊維に付着させ、加熱することにより含浸する方法が挙げられる。また、ポリエーテルイミド樹脂を適切な溶剤に溶解し、強化繊維に含浸させてプリプレグを製造法する方法がある。
この中では、ポリエーテルイミド樹脂を10~100μm程度の厚さのフィルムに加工して加熱溶融により強化繊維に含浸させる方法が、プリプレグ中の樹脂含有率が安定するため好ましい。フィルムの厚さは、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましく、一方、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましい。フィルムの厚さが前記範囲にあることで、厚みの安定したフィルムを効率よく製造できる。
【0036】
ポリエーテルイミド樹脂は加熱時の溶融粘度が高いため、効率的に強化繊維に含浸させるには、380℃以上に加熱する工程を含む必要があり、好ましくは400℃以上、より好ましくは420℃以上に加熱する工程を含むことが好ましい。
また高分子量体を十分に形成させるため、加熱工程は1分以上であることが好ましく、2分以上であることがより好ましく、4分以上であることがさらに好ましく、5分以上であることが特に好ましい。加熱工程は通常10分以下である。
【0037】
従って、本発明のプリプレグを製造する好ましい方法として、繊維基材にポリエーテルイミド樹脂フィルムを積層して加熱することにより、前記ポリエーテルイミド樹脂フィルムに含まれる樹脂を前記繊維基材に含浸させるプリプレグの製造方法であって、前記ポリエーテルイミド樹脂フィルムは厚さが10~100μmであり、前記加熱時に380℃以上に加熱するものが挙げられる。なお、この製造方法で好ましく用いられるポリエーテルイミド樹脂フィルムを構成する樹脂の種類及び繊維基材の種類については前述した通りである。
【0038】
前記ポリエーテルイミドフィルムは、GPCクロマトグラムでの最大面積のピーク(F1)よりも分子量の高いピーク(F2)を有し、前記F2のポリエーテルイミドの面積に対して占める割合は、0.1%以下が好ましく、0.09%以下が好ましく、0.08%以下がより好ましい。F2が占める割合が前記範囲にあることで強化繊維への含浸が容易になる。
【0039】
ポリエーテルイミドフィルムのGPCクロマトグラムでのマトリックス樹脂由来の最大ピーク(F1)の重量平均分子量(Mf1)は、1.0×104~8.0×104が好ましく、3.0×104 ~6.0×104がより好ましい。下限値以上では成形体の機械特性に優れ、上限値以下ではプリプレグの生産性を上げることが出来る。またポリエーテルイミドフィルムのGPCクロマトグラムでの最大ピーク(f1)より高分子量に存在する一つ以上のピーク(f2)の重量平均分子量(Mf2)は、1.0×106以上が好ましく、2.0×106がより好ましい。下限値以上で成形体の強度が向上する。ポリエーテルイミド樹脂のGPC分析では、溶離液としてPFP(ペンタフルオロフェノール)/クロロホルム=1/2(重量比)を用い、ポリスチレン換算値として重量平均分子量等を求めることができる。
【0040】
以下、プリプレグの製造方法の一実施形態について説明する。本実施形態のプリプレグの製造方法では、上述したマトリックス樹脂からなる樹脂フィルムを炭素繊維基材に積層して加熱加圧することにより、樹脂フィルムに含まれる樹脂を炭素繊維基材に含浸させ、プリプレグを製造する。具体的には炭素繊維基材と樹脂フィルムとを重ね、マトリックス樹脂の融点(または流動開始温度)以上に加熱した1つ以上の加熱ロールによってマトリックス樹脂を炭素繊維基材に含浸させ、冷却ロールに接触させることにより、マトリックス樹脂が固化したプリプレグを製造することができる。製造中に前記加熱ロール温度に対して耐熱性のある離型フィルムまたは離型紙を選択することが好ましい。また、前記加熱ロールで含浸することが難しいマトリックス樹脂は、金属ベルトと加熱ロールを組み合わせたダブルベルトプレスや、加熱プレスを用いてプリプレグを製造することもできる。加熱ロールと加熱プレス、冷却ロールと冷却プレスを組み合わせて製造してもよい。具体的には前記ロールと前記プレスが同一の製造装置に含まれていてもよく、加熱ロールを含む製造装置で部分含浸したプリプレグ前駆体を形成した後、加熱プレスを含む別の製造装置でプリプレグを製造してもよい。
【0041】
プリプレグを製造する場合、炭素繊維基材に重ねる樹脂フィルムは片面または上下面に重ねてもよく、樹脂フィルムは、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0042】
[成形体]
本発明の成形体は、上述した本発明のプリプレグを成形してなるものである。
本発明の成形体は、本発明のプリプレグを2枚以上積層した積層体が成形された成形体であることが好ましい。なお、本発明の成形体は、本発明のプリプレグと、本発明のプリプレグ以外の他のプリプレグとを組み合わせて積層した積層体が成形された成形体であってもよい。
【0043】
積層体におけるプリプレグの積層構成は、特に限定されない。
積層体におけるプリプレグの積層枚数は、プリプレグの厚さと成形体に求められる厚さに応じて適宜設定できる。プリプレグ中の強化繊維が一方向に引き揃えられたUDプリプレグの場合、積層する各UDプリプレグの炭素繊維の繊維方向は、成形体に求められる物性により適宜設定できる。
【0044】
(成形体の製造方法)
成形体は、本発明のプリプレグを成形することで得られる。
プリプレグの成形方法としては特に限定されないが、本発明のプリプレグ1枚を、又は本発明のプリプレグを複数枚積層したものを、金型プレス法、オートクレーブ法、熱間・冷間プレス法等で成形する方法が挙げられる。
プリプレグの積層方法としては、例えば、ロボットを活用した自動積層法等が挙げられる。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と、下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0046】
[90°曲げ強度の評価方法]
得られた成形板から試験片を取得し、ASTM D790に準じて、3点曲げ治具(圧子R=5.0mm、サポートR=3.2mm)を設置した万能試験機(INSTRON社製、INSTRON 5565)を用いて、サポート間距離(L)と試験片の厚さ(d)の比L/d=16、クロスヘッドスピード=(L2×0.01)/(6×d)の条件で、90°曲げ試験を行い、90°曲げ強度を測定した。また、測定に用いた試験片寸法は、幅12.7mm、長さ50mmとした。
【0047】
(材料)
本実施例で使用した炭素繊維及びポリエーテルイミド樹脂を以下に示す。
炭素繊維1:三菱ケミカル社製、商品名「MR50R」、ストランド弾性率:285GPa
炭素繊維2:三菱ケミカル社製、商品名「TR50S」、ストランド弾性率:235GPa
ポリエーテルイミド樹脂1:SABIC Innovative Plastics社製、商品名「UltemTM CRS5001」、(前記繰り返し単位(2)を有するポリエーテルイミド樹脂)
ポリエーテルイミド樹脂2:SABIC Innovative Plastics社製、商品名「UltemTM 1000」、(前記繰り返し単位(1)を有するポリエーテルイミド樹脂)
【0048】
(実施例1)
前記炭素繊維1を使用した一方向性繊維基材と、Tダイにて前記ポリエーテルイミド樹脂1を押出成形した23μm厚みのPEI樹脂1フィルムを熱融着により張り合わせ、炭素繊維目付(FAW)が64g/m2の未含浸繊維が残る繊維強化複合材料前駆体プリプレグを得た。
【0049】
油圧プレス内の金型を400~440℃に温調し、その中に2枚の加圧体(約3mm厚さのC/Cコンポジット板)を配置した。次に前記繊維強化複合材料前駆体プリプレグを3枚重ね、更にその両面に離型フィルム(宇部興産社製 ユーピレックス50S)を重ねたものを、前記加圧体の間に通し、前記油圧プレスにて平均圧力4.1MPa、5.0分間加圧後、冷却固化させて含浸した約0.2mm厚さ、繊維含有率約60体積%の一方向性プリプレグを得た。
【0050】
(GPC分析)
前記フィルム及びプリプレグをそれぞれ約9mg秤量し、GPC装置(東ソー社製 HLC-8320GPC)を用いてクロマトグラムを得た。前記フィルムから、GPCクロマトグラムからマトリックス樹脂由来のピークが検出された。面積が最も大きいピークをF1とし、F1よりも高分子量側に検出されるピークをF2とし、最大ピーク(F1)の重量平均分子量(Mf1)を得た。また前記フィルムに含まれる高分子量体の含有率を(F2の面積)/(ポリエーテルイミド由来のピークの総面積)として算出した。
次にプリプレグから、GPCクロマトグラムからポリエーテルイミド樹脂由来のピークが検出された。面積が最も大きいピークをP1とし、P1よりも高分子量側に検出されるピークをP2とし、最大ピーク(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量をそれぞれMp1、Mp2として得た。また前記プリプレグに含まれる高分子量体の含有率を(P2の面積)/(ポリエーテルイミド由来のピークの総面積)として算出した。
GPC測定の結果、前記フィルムと前記プリプレグを比較すると、フィルムの重量平均分子量(Mf1)、プリプレグの重量平均分子量は共に4.8×104であり、加熱工程を経たことによる分子量の低下は見られなかった。一方で高分子量体の含有率は、前記フィルム時に0.07%であり、プリプレグ時に0.67%となったことから、加熱工程を経たことにより高分子量体の増加が見られた。
【0051】
(成形体の製造)
プリプレグを118mm×198mmの寸法に11枚切断し、繊維方向が全て0°方向を向くように積層した積層体を作製した。得られた積層体を鋼製金型で挟み、加熱冷却二段プレス(神藤金属工業所社製、出力:50トン)の320℃に設定されたプレス機の加熱盤内で、5MPaの成形条件で15分間圧縮成形を行った。その後、80℃に設定したプレス盤面に金型を搬送し、約2分で150℃まで降温し、120mm×200mmの成形体(厚さ2mm)を得た。
得られた成形体から、ASTM D790に準拠する方法にて、90°曲げ強度を測定した結果を表1に記す。またMf1、Mp1、Mp2、フィルム及びプリプレグの高分子量体含有率を測定した結果を表1に示す。
【0052】
(実施例2)
加圧時間を6.7分に変更した以外、実施例1と同様の方法にて、プリプレグ、成形体を作製した。用いたフィルム及び得られたプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量(Mp1、Mp2)、プリプレグの高分子量体含有率、並びに成形板の90°曲げ強度を測定した。結果を表1に記す。
【0053】
(実施例3)
加圧時間を8.3分に変更した以外、実施例1と同様の方法にて、プリプレグ、成形体を作製した。用いたフィルム及び得られたプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量(Mp1、Mp2)、プリプレグの高分子量体含有率、並びに成形板の90°曲げ強度を測定した。結果を表1に記す。
【0054】
(実施例4)
加圧時間を3.0分に変更した以外、実施例1と同様の方法にて、プリプレグ、成形体を作製した。用いたフィルム及び得られたプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量(Mp1、Mp2)、プリプレグの高分子量体含有率、並びに成形板の90°曲げ強度を測定した。結果を表1に記す。
【0055】
(実施例5)
加圧時間を3.5分に変更した以外、実施例1と同様の方法にて、プリプレグ、成形体を作製した。用いたフィルム及び得られたプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量(Mp1、Mp2)、プリプレグの高分子量体含有率、並びに成形板の90°曲げ強度を測定した。結果を表1に記す。
【0056】
(実施例6)
油圧プレス内の金型を380~420℃、加圧時間を3.9分に変更した以外、実施例1と同様の方法にて、プリプレグ、成形体を作製した。用いたフィルム及び得られたプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量(Mp1、Mp2)、プリプレグの高分子量体含有率、並びに成形板の90°曲げ強度を測定した。結果を表1に記す。
【0057】
(実施例7)
加圧時間を4.6分に変更した以外、実施例6と同様の方法にて、プリプレグ、成形体を作製した。用いたフィルム及び得られたプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量(Mp1、Mp2)、プリプレグの高分子量体含有率、並びに成形板の90°曲げ強度を測定した。結果を表1に記す。
【0058】
(実施例8)
平均圧力を5.8MPa、加圧時間を2.8分に変更した以外、実施例6と同様の方法にて、プリプレグ、成形体を作製した。用いたフィルム及び得られたプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量(Mp1、Mp2)、プリプレグの高分子量体含有率、並びに成形板の90°曲げ強度を測定した。結果を表1に記す。
【0059】
(実施例9)
前記炭素繊維2を使用した一方向性繊維基材と、Tダイにて前記マトリックス樹脂2を押出成形した23μm厚みのPEI樹脂2フィルムを熱融着により張り合わせ、炭素繊維目付(FAW)が64g/m2の未含浸繊維が残る繊維強化複合材料前駆体プリプレグを得た。
【0060】
油圧プレス内の金型を390~410℃に温調し、実施例1と同様の方法で、前記油圧プレスにて平均圧力4.1MPa、2.3分間加圧後、冷却固化させて含浸した約0.2mm厚さ、繊維含有率約60体積%の一方向性プリプレグを得た。
【0061】
(GPC分析)
前記マトリックス樹脂2を用いたフィルムと前記プリプレグは実施例1と同様にGPCクロマトグラムからマトリックス樹脂由来のピークが2つ検出された。GPC測定の結果、前記フィルムと前記プリプレグを比較すると、フィルムの重量平均分子量(Mf1)は5.8×104、プリプレグの重量平均分子量は5.5×104であり、加熱工程を経たことによる大きな分子量の低下は見られなかった。一方で高分子量体の含有率は、前記フィルム時に0.08%であり、プリプレグ時に1.67%となったことから、加熱工程を経たことにより高分子量体の増加が見られた。
【0062】
実施例1と同様の方法で得られた成形体から、ASTM D790に準拠する方法にて、90°曲げ強度を測定した結果を表1に記す。またMf1、Mp1、Mp2、フィルム及びプリプレグの高分子量体含有率を測定した結果を表1に示す。
【0063】
(実施例10)
油圧プレス内の金型を400~440℃、加圧時間を1.0分に変更した以外、実施例9と同様の方法にて、プリプレグ、成形体を作製した。用いたフィルム及び得られたプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量(Mp1、Mp2)、プリプレグの高分子量体含有率、並びに成形板の90°曲げ強度を測定した。結果を表1に記す。
【0064】
(実施例11)
前記炭素繊維1を使用した一方向性繊維基材と、実施例1と同条件にてTダイにて前記ポリエーテルイミド樹脂1を押出成形した15μm厚みのフィルムを熱融着により張り合わせ、炭素繊維目付(FAW)が40g/m2の未含浸繊維が残る繊維強化複合材料前駆体プリプレグを得た。
【0065】
実施例1と同様に油圧プレス内の金型を400~440℃に温調し、その中に2枚の加圧体(約3mm厚さのC/Cコンポジット板)を配置した。次に前記繊維強化複合材料前駆体プリプレグを4枚重ね、更にその両面に離型フィルム(宇部興産社製 ユーピレックス50S)を重ねたものを、前記加圧体の間に通し、前記油圧プレスにて平均圧力4.1MPa、1.0分間加圧後、冷却固化させて含浸した約0.15mm厚さ、繊維含有率約60体積%の一方向性プリプレグを得た。
【0066】
(成形体の製造)
プリプレグを14枚切断し、実施例1と同様の方法で成形体(厚さ2mm)を得た。実施例11で用いたフィルムは、実施例1で用いたフィルムと厚みが異なるものの、同条件で作製しており、GPCクロマトグラムはほぼ同じと考えられる。得られたプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量(Mp1、Mp2)、プリプレグの高分子量体含有率、並びに成形板の90°曲げ強度を測定した。結果を表1に記す。
【0067】
(実施例12)
油圧プレス内の金型を380~420℃、加圧時間を1.3分に変更した以外、実施例11と同様の方法にて、プリプレグ、成形体を作製した。得られたプリプレグに含まれるポリエーテルイミド樹脂のGPCクロマトグラムにおける最大面積のピークのピークトップ(P1)及び高分子量ピーク(P2)の重量平均分子量(Mp1、Mp2)、プリプレグの高分子量体含有率、並びに成形板の90°曲げ強度を測定した。結果を表1に記す。
【0068】
実施例1~12からプリプレグがP1及びP2を有することで良好な曲げ強度の成形体が得られる。更にプリプレグの高分子量体含有率が0.25面積%以上であると、より曲げ強度の成形体が得られる。
【0069】
本発明のプリプレグは、耐薬品性及び機械特性に優れる成形体を得ることができる。よって、本発明のプリプレグ及び成形体は、スポーツ用品、自動車、航空機、産業機器等に用いる部材として有用である。