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  • 特開-偏光フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144086
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】偏光フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20241003BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241003BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20241003BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241003BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241003BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
H10K50/86
H05B33/22 Z
H10K59/10
B32B7/023
G02F1/1335 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214229
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2023055920
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】北河 佑介
(72)【発明者】
【氏名】太田 陽介
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
2K009
3K107
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB02
2H149BA02
2H149BA14
2H149DB13
2H149EA19
2H149FA02Z
2H149FA03Z
2H149FA04Z
2H149FA05Z
2H149FA08Z
2H149FA13Z
2H149FA14Z
2H149FA15Z
2H149FA24W
2H149FA28W
2H149FA51W
2H149FA52W
2H149FA58W
2H149FA59W
2H149FC03
2H149FD03
2H149FD47
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA94X
2H291FA94Z
2H291FB05
2H291FC07
2H291FC33
2H291FD12
2H291GA01
2H291GA08
2H291PA44
2K009AA15
2K009BB24
2K009CC24
2K009DD02
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC33
3K107EE26
3K107FF06
3K107FF15
4F100AK02A
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CC00D
4F100EH46D
4F100EJ37A
4F100EJ94
4F100GB41
4F100JA20B
4F100JK12D
4F100JL04
4F100JN10C
4F100JN18A
4F100JN18C
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】入射光の界面反射による干渉ムラを抑制できる偏光フィルムを提供する。
【解決手段】基材2と、配向膜3と、偏光膜4とがこの順に積層された偏光フィルム1であって、基材2の遅相軸方向と偏光膜4の吸収軸方向とがなす角が45°±5°であり、可視光に対する偏光膜4と配向膜3との間の屈折率差が下記式(1)を満たし、可視光に対する配向膜3と基材2との間の屈折率差が下記式(2)を満たす。
|n(偏光膜)-n(配向膜)|≦0.06 …(1)
|n(配向膜)-n(基材)|≦0.06 …(2)
(式(1)中、n(偏光膜)は、偏光膜における透過軸方向の屈折率を表す。)
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、配向膜と、偏光膜とがこの順に積層された偏光フィルムであって、
前記基材の遅相軸方向と前記偏光膜の吸収軸方向とがなす角が45°±5°であり、
可視光に対する前記偏光膜と前記配向膜との間の屈折率差が下記式(1)を満たし、可視光に対する前記配向膜と前記基材との間の屈折率差が下記式(2)を満たす、偏光フィルム。
|n(偏光膜)-n(配向膜)|≦0.06 …(1)
|n(配向膜)-n(基材)|≦0.06 …(2)
(式(1)中、n(偏光膜)は、偏光膜における透過軸方向の屈折率を表す。)
【請求項2】
前記配向膜の厚さは、10nm~400nmである、請求項1記載の偏光フィルム。
【請求項3】
前記基材における前記配向膜と反対の面には、ハードコート層が隣接している、請求項1記載の偏光フィルム。
【請求項4】
前記基材、前記配向膜、及び前記偏光膜は、長尺である、請求項1~3のいずれか一項記載の偏光フィルム。
【請求項5】
長手方向と前記基材の遅相軸方向とがなす角は、0°±5°又は90°±5°である、請求項4記載の偏光フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、偏光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置などのフラットパネル表示装置には、光学補償を目的とする偏光フィルムが用いられている。偏光フィルムは、一般に、基材と、配向膜と、偏光膜とがこの順に積層されることによって構成されている。
【0003】
近年では、フラットパネル表示装置の薄型化の要求が強まり、これに伴って偏光フィルムの薄型化も求められている。薄型の偏光フィルムとしては、例えば特許文献1に記載の偏光フィルムがある。この従来の偏光フィルムは、重合性液晶化合物と、二色性色素とを含む組成物によって構成されている。薄型の偏光フィルムとしては、当該偏光フィルムの長手方向に対して斜め方向に吸収軸を有するものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007-510946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような偏光フィルムでは、偏光膜と配向膜との間及び配向膜と基材との間の入射光の界面反射が強まると、干渉ムラが目立ってしまうという課題があった。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、入射光の界面反射による干渉ムラを抑制できる偏光フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る偏光フィルムは、基材と、配向膜と、偏光膜とがこの順に積層された偏光フィルムであって、基材の遅相軸方向と偏光膜の吸収軸方向とがなす角が45°±5°であり、可視光に対する偏光膜と配向膜との間の屈折率差が下記式(1)を満たし、可視光に対する配向膜と基材との間の屈折率差が下記式(2)を満たす。
|n(偏光膜)-n(配向膜)|≦0.06 …(1)
|n(配向膜)-n(基材)|≦0.06 …(2)
(式(1)中、n(偏光膜)は、偏光膜における透過軸方向の屈折率を表す。)
【0008】
この偏光フィルムでは、配向膜と基材との間の屈折率差及び配向膜と基材との間の屈折率差を上記範囲に抑えることで、偏光膜と配向膜との間及び配向膜と基材との間の入射光の界面反射を抑えることができる。したがって、この偏光フィルムでは、入射光の界面反射による干渉ムラを抑制できる。
【0009】
配向膜の厚さは、好ましくは10nm~400nmである。この場合、配向膜の厚さが当該範囲の偏光フィルムにおいて、入射光の界面反射による干渉ムラを好適に抑制できる。
【0010】
基材における配向膜と反対の面には、ハードコート層が隣接していてもよい。偏光フィルムの作製にあたっては、偏光膜を硬化させる際の収縮に起因して基板に反りが生じ、得られた偏光フィルムに皺が生じることが考えられる。基材における配向膜と反対の面にハードコート層が隣接していることで、偏光フィルムを硬化させる際の収縮に対する基材の反りが抑えられ、得られた偏光フィルムに皺が生じることを抑制できる。
【0011】
基材、配向膜、及び偏光膜は、長尺であってもよい。この場合、入射光の界面反射による干渉ムラを抑制できる長尺の偏光フィルムを得ることができる。長尺の偏光フィルムから切り出された偏光フィルムを各種の表示装置に連続的に接合することで、入射光の界面反射による干渉ムラが抑制された偏光フィルムが適用された表示装置を効率的に製造できる。
【0012】
長手方向と基材の遅相軸方向とがなす角は、好ましくは0°±5°又は90°±5°である。これにより、高い楕円率を示す偏光フィルムが得られる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、入射光の界面反射による干渉ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態に係る偏光フィルムの層構成を示す模式的な図である。
図2】実施例及び比較例に係る偏光フィルムの層構成を示す図である。
図3】実施例及び比較例に係る偏光フィルムの評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る偏光フィルムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本開示の一実施形態に係る偏光フィルムの層構成を示す模式的な図である。図1に示すように、偏光フィルム1は、基材2と、配向膜3と、偏光膜4とがこの順に積層されることによって構成されている。本実施形態では、基材2、配向膜3、及び偏光膜4は、いずれも長尺となっており、長尺の偏光フィルム1が構成されている。
【0017】
長尺には、ロール状に巻き取られた状態及びロールから繰り出された状態のいずれも含まれる。長尺の偏光フィルム1の長手方向(偏光フィルム1の延在方向)の長さは、例えば10m~3000mであり、好ましくは100m~200mである。長尺の偏光フィルム1の短手方向(偏光フィルム1の延在方向に直交する方向)の長さは、例えば0.1m~5mであり、好ましくは0.2m~2mである。
【0018】
長尺の偏光フィルム1は、必要なサイズに切り出され、各種の表示装置に用いられる。表示装置としては、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置、電子放出表示装置、電子ペーパー、圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。これらの表示装置は、2次元画像を表示するものであってもよく、3次元画像を表示するものであってもよい。
【0019】
基材2は、例えば樹脂によって構成されている。基材2は、特に可視光に対する透明性を有し、波長380nm~波長780nmの光に対する透過率が80%以上となっている。基材2の厚さは、実用的な取扱性と加工性とを考慮し、例えば5μm~300μmであり、好ましくは20μm~200μmである。
【0020】
基材2は、例えば1/4波長板としての機能を有する位相差フィルムである。位相差フィルムとしての基材2は、位相差を有しない状態の長尺の基材を延伸することによって得られる。基材2の遅相軸方向は、延伸方法によって異なる。延伸方法には、一軸延伸、二軸延伸、斜め延伸などが挙げられる。偏光フィルム1の長手方向と基材2の遅相軸方向とがなす角は、好ましくは0°±5°又は90°±5°である。
【0021】
基材2は、以下の式(1)及び式(2)で表される光学特性を有している。また、基材2は、以下の式(3)及び式(4)で表される光学特性を有していてもよい。下記式(1)~式(4)中、Re(λ)は、波長λnmの光に対する正面位相差値である。
100nm<Re(550)<160nm …(1)
130nm<Re(550)<150nm …(2)
Re(450)/Re(550)≦1.00 …(3)
1.00≦Re(650)/Re(550) …(4)
【0022】
正面位相差値は、下記式(5)によって決定される。式(5)中、dは厚さ、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。所望の正面位相差値を得るためには、dとΔn(λ)とを調整すればよい。正面位相差値の調整により、1/4波長板としての基材2を得ることができる。
Re(λ)=d×Δn(λ) …(5)
【0023】
基材2を構成する樹脂材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;及びポリフェニレンオキシド等が挙げられる。基材2は、好ましくは、環状オレフィン系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、ポリエチレンナフタレート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレンである。基材2は、更に好ましくは、環状オレフィン系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルである。
【0024】
基材2には、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば真空雰囲気下から大気圧雰囲気下でのコロナ又はプラズマ処理、レーザ処理、オゾン処理、ケン化処理、火炎処理、カップリング剤の塗布処理、プライマー処理、反応性モノマーや反応性を有するポリマーを表面に付着させた後に放射線、プラズマ、又は紫外線を照射して反応させるグラフト重合法による処理などが挙げられる。
【0025】
基材2における配向膜3と反対の面には、ハードコート層5が隣接していてもよい。ハードコート層5は、隣接する基材2よりも表面平滑性が高く、且つ、当該基材2から剥離可能な硬化樹脂層である。ハードコート層5は、基材2において所望の剥離力を確保し得る限り、当該分野において公知の材料から形成することができる。ハードコート層5は、例えば水溶性ポリマーを含む樹脂組成物から形成される層、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型の樹脂成分を含む樹脂組成物から形成される硬化樹脂層などが挙げられる。
【0026】
ハードコート層5を構成する樹脂組成物は、通常、樹脂成分(ポリマー)を含む。樹脂成分としては、例えば(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリビニルエーテル系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー等の樹脂成分(ポリマー)が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
樹脂組成物中における樹脂成分の含有量は、用いる樹脂成分の種類等に応じて適宜決定し得る。当該樹脂成分の含有量は、樹脂組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上である。また、当該樹脂成分の含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下である。
【0028】
ハードコート層5を構成する樹脂組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、当該分野で通常使用される架橋剤を用いることができる。架橋剤は、ハードコート層5を構成する樹脂成分、ハードコート層5と隣接する層の構成等に応じて適宜選択することができる。架橋剤としては、例えばメチロール化合物、多官能チオール化合物、多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ハードコート層5は、基材2の強度向上のための添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
配向膜3は、二色性色素を所望の方向に配向させる規制力を有する膜である。配向膜3は、偏光膜4を形成する組成物(偏光膜形成用組成物)に含まれる二色性色素を配向することで、偏光膜4の吸収軸方向を所望の方向に調整する。偏光膜4の吸収軸方向は、例えば配向膜3の規制力方向と同じ方向となる。偏光フィルム1の長手方向と配向膜3の規制力方向とがなす角は、例えば45°±5°となっている。
【0030】
配向膜3は、偏光膜形成用組成物の塗布等に対する耐溶解性を有していると共に、溶剤の除去及び二色性色素の配向のための加熱処理に対する耐熱性を有している。配向膜3としては、例えば光配向膜、配向性ポリマーを含む配向膜、表面に凹凸パターン或いは複数の溝を有するグルブ配向膜などが挙げられる。配向膜3の厚さは、配向規制力の十分な発現を考慮し、例えば10nm~1200nmであり、好ましくは10~400nmであり、さらに好ましくは10~200nmであり、特に好ましくは10nm~100nmである。この場合、配向膜3の厚さが当該範囲の偏光フィルム1において、入射光の界面反射による干渉ムラを好適に抑制できる。
【0031】
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステルが挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0032】
配向性ポリマーを含む配向膜3は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」とも称す)を基材2に塗布し、溶剤を除去すること、又は、配向性ポリマー組成物を基材2に塗布し、溶剤を除去し、ラビングすること(ラビング法)で得られる。
【0033】
溶剤としては、有機溶剤が好ましく、有機溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;及び、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤などが挙げられる。溶剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。溶剤の含有量は、配向性ポリマー組成物100質量部に対して、好ましくは100~1900質量部であり、より好ましくは150~900質量部であり、さらに好ましくは180~600質量部である。
【0034】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1%~20%であることが好ましく、0.1%~10%であることがさらに好ましい。配向性ポリマー組成物は、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、例えばサンエバー(登録商標、日産化学工業株式会社製)、オプトマー(登録商標、JSR株式会社製)などが挙げられる。
【0035】
配向性ポリマー組成物を基材2に塗布する方法としては、例えばスピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥、及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0036】
配向膜3に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、例えばラビング布が巻きつけられた状態で回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材2に塗布しアニールすることで基材2の表面に形成された配向性ポリマーの膜を接触させる方法が挙げられる。
【0037】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」とも称す)を基材2に塗布し、偏光(好ましくは偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0038】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応又は光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
【0039】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、及び、アゾキシベンゼン構造を有する基が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0040】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基及びカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0041】
光配向膜形成用組成物を基材2上に塗布することにより、基材2上に光配向誘起層を形成することができる。当該組成物に含まれる溶剤としては、「配向性ポリマー組成物」のところに記載の溶剤と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマー或いはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0042】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマー又はモノマーの含有量は、ポリマー又はモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲とすることがより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコ-ルやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0043】
光配向膜形成用組成物を基材2に塗布する方法としては、配向性組成物を基材2に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0044】
偏光を照射する方式は、基材2上に塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去したものに偏光UVを直接照射する方式でもよく、基材2側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する方式でもよい。当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。
【0045】
偏光照射に用いる光源としては、例えばキセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レ-ザ-などが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、及びメタルハライドランプが好ましい。前記光源からの光を適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、例えば偏光フィルターや、グラントムソン、グランテ-ラ-などの偏光プリズムや、ワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。なお、ラビング又は偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0046】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターン又は複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0047】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像及びリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材2へ移してから硬化する方法、及び、基材2に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0048】
偏光膜4は、二色性色素化合物を含んで構成されている。二色性色素化合物は、分子の長軸方向における吸光度と、分子の短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素化合物である。二色性色素化合物によって構成された偏光膜4は、所定の方向に吸収軸方向を有し、当該吸収軸方向に直交する透過軸方向を有している。また、二色性色素化合物によって構成された偏光膜4は、所定の波長範囲に極大吸収波長を有している。
【0049】
本実施形態では、上述したように、偏光フィルム1の長手方向と配向膜3の規制力方向とがなす角が45°±5°となっており、偏光膜4の吸収軸方向は、配向膜3の規制力方向に平行となっている。したがって、偏光フィルム1の長手方向と偏光膜4の吸収軸方向とがなす角は、45°±5°となっている。なお、ここでの角度とは、2つの軸がなす角度のうち小さい方の角度、すなわち、90°以下の角度を意味する。偏光膜4は、例えば380nm~780nmの範囲に極大吸収波長を有している。
【0050】
二色性色素としては、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素が挙げられ、中でも、アゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、及びスチルベンアゾ色素が挙げられ、中でも、ビスアゾ色素及びトリスアゾ色素が好ましい。
【0051】
アゾ色素としては、下記式(I)で表される化合物(以下、場合により「化合物(I)」と称す)が挙げられる。
(-N=N-K-N=N-K (I)
[式(I)中、K及びKは、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表わす。Kは、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基、又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表わす。pは1~4の整数を表わす。pが2以上の整数である場合、複数のKは互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0052】
1価の複素環基としては、例えばキノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、例えば前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0053】
及びKにおけるフェニル基、ナフチル基及び1価の複素環基、並びにKにおけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基及び2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基などの置換又は無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つ又は2つ有するアミノ基、或いは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は、-NHである。)が挙げられる。
【0054】
化合物(I)の中でも、式(I-1)~式(I-8)のいずれかで表される化合物が好ましく、式(I-1)~式(I-3)のいずれかで表される化合物がより好ましく、式(I-1)及び式(I-3)のいずれかで表される化合物がさらに好ましい。
【化1】

[式(I-1)~(I-8)中、B~B30は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(置換アミノ基及び無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子又はトリフルオロメチル基を表わす。n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表わす。n1が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、n2が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、n3が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、n4が2以上である場合、複数のB14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0055】
前記アントラキノン色素としては、式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【化2】

[式(I-9)中、R~Rは、互いに独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR又はハロゲン原子を表わす。Rは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0056】
前記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化3】

[式(I-10)中、R~R15は、互いに独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR又はハロゲン原子を表わす。Rは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0057】
前記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化4】

[式(I-11)中、R16~R23は、互いに独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR又はハロゲン原子を表わす。Rは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0058】
上記式(I-9)、式(I-10)、及び式(I-11)において、Rの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基、及びナフチル基が挙げられる。
【0059】
前記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物及び式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化5】

[式(I-12)中、D及びDは、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表わす。
【化6】

n5は1~3の整数を表わす。]
【化7】

[式(I-13)中、D及びDは、互いに独立に、式(I-13a)~式(I-13h)のいずれかで表される基を表わす。
【化8】

n6は1~3の整数を表わす。]
【0060】
これらの二色性色素の中でも、配向性の観点から、アゾ色素が好ましい。
【0061】
偏光膜4は、二色性色素化合物を含む偏光膜形成用組成物を配向膜3上に塗布及び乾燥することで形成できる。塗布手法は、上述した光配向膜形成用組成物の塗布手法と同様の手法を用いることができる。偏光膜形成用組成物における二色性色素化合物の含有量は、二色性色素の配向を良好にする観点から、偏光膜形成用組成物の固形分100質量部に対して、0.1質量部~30質量部であることが好ましく、0.1質量部~20質量部であることがより好ましく、0.1質量部~10質量部であることが更に好ましく、0.1質量部~5質量部であることが特に好ましい。ここでの固形分とは、偏光膜形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計量である。
【0062】
偏光膜形成用組成物は、重合性液晶化合物、溶剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、及び重合性非液晶化合物などを含んでもよい。重合性液晶化合物を含む偏光膜4では、強度が向上すると共に、色ムラの減少も図られる。偏光膜形成用組成物に重合性液晶化合物が含まれる場合、偏光膜形成用組成物を乾燥して得られた乾燥膜を硬化させてもよい。硬化とは、当該乾燥膜に含まれる重合性液晶化合物を重合することである。重合方法としては、加熱、光照射などが挙げられる。硬化により、乾燥膜に含まれる二色性色素の配向状態を固定することができる。
【0063】
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ液晶性を示す化合物である。重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応し得る基である。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基などが挙げられる。液晶性を示す化合物としては、サーモトロピック性液晶、リオトロピック性液晶などが挙げられ、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。液晶性を示す化合物は、サーモトロピック液晶におけるネマチック液晶或いはスメクチック液晶であってもよい。また、重合性液晶化合物は、モノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0064】
重合性液晶化合物は、より高い偏光特性を得る観点から、スメクチック相を形成する液晶化合物が好ましい。スメクチック相としては、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相、スメクチックL相が挙げられ、スメクチックB相、スメクチックF相、又はスメクチックI相が好ましく、スメクチックB相がより好ましい。これらのスメクチック相は、これらの高次スメクチック相であってもよい。
【0065】
重合性液晶化合物によって形成される液晶相がこれらの高次スメクチック相である場合、より配向秩序の高い偏光膜4を得ることができる。配向秩序度の高い偏光膜4では、X線回折測定において、ヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。当該ブラッグピークは、分子配向の周期構造に由来するピークである。重合性液晶化合物によって形成される液晶相がこれらの高次スメクチック相である場合、分子配向の周期間隔が例えば3.0Å~6.0Åである偏光膜4を得ることができる。
【0066】
重合性液晶化合物としては、下記式(B1)で表される化合物及び該化合物の重合体(以下、該化合物及び該重合体を総称して、「重合性液晶化合物(B1)」と称す)が挙げられる。
-V-W-X-Y-X-Y-X-W-V-U (B1)
[式(B1)中、X、X及びXは、互いに独立に、2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を表す。該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X、X及びXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。Y及びYは、互いに独立に、単結合又は二価の連結基である。Uは、水素原子又は重合性基を表わす。Uは、重合性基を表わす。W及びWは、互いに独立に、単結合又は二価の連結基である。V及びVは、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-CO-、-S-又はNH-に置き換わっていてもよい。]
【0067】
重合性液晶化合物(B1)において、X、X、及びXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。特に、X及びXは、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であることが好ましく、該シクロへキサン-1,4-ジイル基は、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることがさらに好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基及び塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。また、Y及びYが同一構造である場合、X、X、及びXのうち少なくとも1つが異なる構造であることが好ましい。X、X、及びXのうち少なくとも1つが異なる構造である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0068】
及びYは、互いに独立して、-CHCH-、-CHO-、-CHCHO-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-、-CR=N-、又はCO-NR-が好ましい。R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表わす。Yは、-CHCH-、-COO-、又は単結合であることがより好ましく、Yは、-CHCH-又はCHO-であることがより好ましい。また、X、X、及びXが全て同一構造である場合、Y及びYが互いに異なる構造であることが好ましい。Y及びYが互いに異なる構造である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0069】
は、重合性基である。Uは、水素原子又は重合性基であり、好ましくは重合性基である。U及びUがともに重合性基であることが好ましく、ともに光重合性基であることが好ましい。光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことを意味する。
【0070】
で示される光重合性基とUで示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基がさらに好ましく、アクリロイルオキシ基がさらにより好ましい。
【0071】
及びVで表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、及びイコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。V及びVは、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基及びハロゲン原子が挙げられるが、アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換且つ直鎖状のアルカンジイル基であることがより好ましい。W及びWとしては、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、又はOCOO-が好ましく、より好ましくは単結合又は-O-である。
【0072】
重合性液晶化合物(B1)としては、下記式(B-1)~式(B-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(B1)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】
【0073】
これらの中でも、式(B-2)、式(B-3)、式(B-4)、式(B-5)、式(B-6)、式(B-7)、式(B-8)、式(B-13)、式(B-14)、式(B-15)、式(B-16)、及び式(B-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0074】
例示した重合性液晶化合物は、単独又は組み合わせて、使用することができる。2種以上の重合性液晶化合物を組み合わせる場合には、少なくとも1種が重合性液晶化合物であると好ましく、2種以上が重合性液晶化合物であるとより好ましい。組み合わせることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度でも一時的に液晶性を保持することができる場合がある。2種類の重合性液晶化合物を組み合わせる場合の混合比は、通常、1:99~50:50であり、好ましくは5:95~50:50であり、より好ましくは10:90~50:50である。
【0075】
重合性液晶化合物は、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)、特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造される。
【0076】
光吸収異方性膜形成用組成物の固形分における重合性液晶化合物の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。本明細書において、光吸収異方性膜形成用組成物における固形分とは、光吸収異方性膜形成用組成物から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量をいう。
【0077】
溶剤としては、「配向性ポリマー組成物」のところに記載の溶剤と同様のものが挙げられ、溶剤の含有量は、光吸収異方性膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは100~1900質量部、より好ましくは150~900質量部、さらに好ましくは180~600質量部である。
【0078】
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤として、通常、波長300nm~380nmに光吸収を有する光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温下で重合反応を開始できる。具体的には、吸収した光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0079】
光重合開始剤としては、例えばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩、及びスルホニウム塩が挙げられる。これらの重合開始剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0080】
ベンゾイン化合物としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びベンゾインイソブチルエーテルが挙げられる。
【0081】
ベンゾフェノン化合物としては、例えばベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノンが挙げられる。
【0082】
アルキルフェノン化合物としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーが挙げられる。
【0083】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0084】
トリアジン化合物としては、例えば2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチ_ル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0085】
光重合開始剤には、市販のものを用いることができる。市販の重合開始剤としては、”イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907”、”イルガキュア(登録商標)184”、”イルガキュア(登録商標)651”、”イルガキュア(登録商標)819”、”イルガキュア(登録商標)250”、”イルガキュア(登録商標)369”(チバ・ジャパン(株));”セイクオール(登録商標)BZ”、”セイクオール(登録商標)Z”、”セイクオール(登録商標)BEE”(精工化学(株));”カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100”(日本化薬(株));”カヤキュアー(登録商標)UVI-6992”(ダウ社製);”アデカオプトマーSP-152”、”アデカオプトマーSP-170”((株)ADEKA);”TAZ-A”、”TAZ-PP”(日本シイベルヘグナー社);及び”TAZ-104”(三和ケミカル社)が挙げられる。
【0086】
重合開始剤の含有量は、光吸収異方性膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。重合開始剤の含有量が上記の下限値以上であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合できる。また、重合開始剤の含有量が上記の上限値以下であると、長期保管安定性を向上でき、得られる偏光膜の配向欠陥の発生をより抑制又は防止しやすい。
【0087】
増感剤としては、光増感剤が好ましい。光増感剤としては、例えばキサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレンが挙げられる。増感剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0088】
光吸収異方性膜形成用組成物が増感剤を含有する場合、当該組成物に含有される重合性液晶化合物の重合反応をより促進することができる。増感剤の使用量は、重合開始剤及び重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0089】
光吸収異方性膜形成用組成物の重合反応をより安定的に進行させるために、当該組成物に適量の重合禁止剤を含有してもよい。これにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いを制御しやすくなる。
【0090】
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコールなど)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカルなどのラジカル補足剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類及びβ-ナフトール類が挙げられる。
【0091】
光吸収異方性膜形成用組成物が重合禁止剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物の種類及びその量、並びに増感剤の使用量などに応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合禁止剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0092】
光吸収異方性膜形成用組成物は、1以上のレベリング剤を含んでいてよい。レベリング剤は、光吸収異方性膜形成用組成物の流動性を調整し、該組成物を塗布することにより得られる塗布膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0093】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、”BYK-350”、”BYK-352”、”BYK-353”、”BYK-354”、”BYK-355”、”BYK-358N”、”BYK-361N”、”BYK-380”、”BYK-381”及び”BYK-392”[BYK Chemie社]が挙げられる。
【0094】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、”メガファック(登録商標)R-08”、同”R-30”、同”R-90”、同”F-410”、同”F-411”、同”F-443”、同”F-445”、同”F-470”、同”F-471”、同”F-477”、同”F-479”、同”F-482”及び同”F-483”[DIC(株)];”サーフロン(登録商標)S-381”、同”S-382”、同”S-383”、同”S-393”、同”SC-101”、同”SC-105”、”KH-40”及び”SA-100”[AGCセイミケミカル(株)];”E1830”、”E5844”[(株)ダイキンファインケミカル研究所];”エフトップEF301”、”エフトップEF303”、”エフトップEF351”及び”エフトップEF352”[三菱マテリアル電子化成(株)]が挙げられる。
【0095】
光吸収異方性膜形成用組成物がレベリング剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。レベリング剤の含有量が上記の範囲内であると、得られる偏光膜がより平滑化しやすく、ムラも生じにくい傾向がある。
【0096】
<偏光膜>
本開示は、前記偏光膜形成用組成物の硬化物である偏光膜を包含する。本開示の偏光膜は、偏光機能を有する膜(フィルム)であり、配向状態の重合性液晶に二色性色素が包摂されている。本開示の偏光膜は、前記偏光膜形成用組成物から形成されるため、配向欠陥が殆ど又は全くなく、優れた偏光性能を有する。
【0097】
本開示の偏光膜は、例えば前記偏光膜形成用組成物の塗膜を形成し、該塗膜から有機溶剤を乾燥除去する工程(ii)、及び重合性液晶化合物をスメクチック液晶相の状態で配向硬化させる工程(iii)を含む方法により製造することができる。
【0098】
工程(ii)は、後述の基材、配向膜又は他の層(例えば機能層)上に前記偏光膜形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で、有機溶剤を乾燥除去し、乾燥被膜を得る工程である。偏光膜は基材や他の層(例えば機能層)上に直接塗布してもよいが、配向規則力を有する配向膜上に塗布することが好ましい。
【0099】
工程(ii)において、乾燥方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法が挙げられる。重合性液晶化合物が重合性スメクチック液晶化合物である場合、乾燥被膜に含まれる重合性スメクチック液晶化合物の液晶状態をネマチック相(ネマチック液晶状態)にした後、スメクチック相に転移させることが好ましい。ネマチック相を経由してスメクチック相を形成させるためには、例えば乾燥被膜に含まれる重合性スメクチック液晶化合物がネマチック相の液晶状態に相転移する温度以上に乾燥被膜を加熱し、次いで重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を示す温度まで冷却するといった方法が採用される。
【0100】
工程(iii)は、乾燥皮膜中の重合性液晶化合物をスメクチック液晶相の状態で配向硬化させる工程である。以下に、工程(ii)で乾燥被膜中の重合性液晶化合物の液晶状態をスメクチック相にした後、スメクチック相の液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を光重合させる方法について説明する。光重合において、乾燥被膜に照射する光としては、当該乾燥被膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する光重合基の種類)及びその量に応じて適宜選択される。
【0101】
その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線及びγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって光重合可能なように重合性液晶組成物に含有される重合性液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥被膜を冷却しながら光照射することにより、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても適切に偏光膜を形成できる。光重合の際、マスキングや現像などによって、パターニングされた偏光膜を得ることもできる。
【0102】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0103】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cmである。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分、より好ましくは5秒~3分、さらに好ましくは10秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回又は複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm、好ましくは50~2,000mJ/cm、より好ましくは100~1,000mJ/cmである。
【0104】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、偏光膜が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる偏光膜は、前記二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光膜、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる偏光膜と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点がある。
【0105】
偏光膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.1~5μm、より好ましくは0.3~4μm、さらに好ましくは0.5~3μmである。
【0106】
以上のような偏光フィルム1では、可視光に対する偏光膜4と配向膜3との間の屈折率差が下記式(6)を満たし、可視光に対する配向膜3と基材2との間の屈折率差が下記式(7)を満たしている。式(6)中、n(偏光膜)は、偏光膜における透過軸方向の屈折率を表す。
|n(偏光膜)-n(配向膜)|≦0.06 …(6)
|n(配向膜)-n(基材)|≦0.06 …(7)
【0107】
可視光に対する偏光膜4と配向膜3との間の屈折率差は、好ましくは0.04以下であり、さらに好ましくは0.02以下である。可視光に対する配向膜3と基材2との間の屈折率差は、好ましくは0.04以下であり、さらに好ましくは0.02以下である。
【0108】
このような偏光フィルム1では、配向膜3と基材2との間の屈折率差及び配向膜3と基材2との間の屈折率差を上記範囲に抑えることで、偏光膜4と配向膜3との間及び配向膜3と基材2との間の入射光の界面反射を抑えることができる。したがって、入射光の界面反射による干渉ムラを抑制できる。
【0109】
本実施形態では、配向膜3の厚さが10nm~400nmとなっている。この場合、配向膜3の厚さが当該範囲の偏光フィルム1において、入射光の界面反射による干渉ムラを好適に抑制できる。
【0110】
本実施形態では、基材2における配向膜3と反対の面にハードコート層5が隣接している。偏光フィルム1の作製にあたっては、偏光膜4を硬化させる際の収縮に起因して基材2に反りが生じ、得られた偏光フィルム1に皺が生じることが考えられる。これに対し、基材2がハードコート層5を有することで、偏光フィルム1を硬化させる際の収縮に対する基材2の反りが抑えられ、得られた偏光フィルム1に皺が生じることを抑制できる。
【0111】
本実施形態では、基材2、配向膜3、及び偏光膜4は、長尺となっている。すなわち、本実施形態では、偏光フィルム1は、入射光の界面反射による干渉ムラを抑制できる長尺の偏光フィルム1となっている。長尺の偏光フィルム1から切り出された偏光フィルム1を各種の表示装置に連続的に接合することで、入射光の界面反射による干渉ムラが抑制された偏光フィルム1が適用された表示装置を効率的に製造できる。
【0112】
本実施形態では、長手方向と基材2の遅相軸方向とがなす角が0°±5°又は90°±5°となっており、基材2の遅相軸方向と偏光膜4の吸収軸方向とがなす角が45°±5°となっている。これにより、高い楕円率を示す偏光フィルム1が得られる。
【0113】
[実施例]
以下、実施例により本開示を更に詳細に説明する。下記実施例中の「%」及び「部」は、特記が無い限り、「質量%」及び「質量部」である。各実施例及び比較例における偏光フィルムの構成及び評価結果を図2及び図3にまとめる。
【0114】
[光配向膜形成用組成物の調製]
以下の成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物(1)を得た。
・光配向性ポリマー:2部
【化14】

(特開2013-033249号公報に記載のポリマー、数平均分子量:約28200、Mw/Mn:1.82)
・溶剤:o-キシレン 98部
【0115】
[偏光膜形成用組成物の調製]
以下の各成分を混合し、8 0 ℃ で1 時間攪拌することにより偏光膜形成用組成物(1)を得た。二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ色素を用いた。
・重合性液晶化合物:A1 90部
【化15】

(A1)
・重合性液晶化合物:A2 10部
【化16】

(A2)
・二色性色素:アゾ色素A 2.5部
【化17】

・二色性色素:アゾ色素B 2.5部
【化18】

・二色性色素:アゾ色素C 2.5部
【化19】

・光重合開始剤:2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製) 6部
・レベリング剤:ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2部
・溶剤:メチルエチルケトン 400部
【0116】
[基材の作製]
環状オレフィン系樹脂の保護フィルム(日本ゼオン株式会社製、ゼオノアフィルムZMシリーズ(登録商標))を用いて実施例1,3~5,7に係る偏光フィルムの基材とした。環状オレフィン系樹脂の保護フィルム(日本ゼオン株式会社製、ゼオノアフィルムZTシリーズ(登録商標))を用いて実施例2に係る偏光フィルムの基材とした。
【0117】
環状オレフィン系樹脂の保護フィルム(日本ゼオン株式会社製、ゼオノアフィルムZDシリーズ(登録商標))を用いて実施例6に係る偏光フィルムの基材とした。比較例1に係る偏光フィルムでは、一軸延伸フィルムWRF-S(変性ポリカーボネート樹脂)を基材とした。得られた基材の厚さは50μm、波長550nmにおける面内位相差値は144.6nmであった。
【0118】
[ハードコート層形成用組成物の調製]
以下の各成分を混合し、50℃で4時間攪拌することによりハードコート層形成用樹脂組成物(1)を得た。
・下記構造の多官能アクリレート化合物:50部(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学(株)製、「NKエステル A-DPH」)、分岐構造中のアクリロイル基に最も近い分岐点と、当該アクリロイル基とを連結する鎖の原子数は2である。)
【化20】

・ウレタンアクリレートポリマー:ウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製「エベクリル4858」、官能基数は2、重量平均分子量Mwは450、単位分子量あたりの官能基数は、44.4×10-4である。) 50部
・ラジカル重合開始剤:2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(BASF社製、「イルガキュア907」) 3部
・溶剤:メチルエチルケトン 10部
【0119】
[ハードコート層の形成]
ハードコート層形成用組成物(1)をバーコート法(#2 30mm/s)により基材に塗布した。得られたハードコート層形成用組成物(1)の塗膜に、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて露光量500mJ/cm(365nm基準)の紫外線を照射することにより、ハードコート層付き基材を得た。レーザ顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)により測定したところ、ハードコート層の厚さは、1.5μmであった。
【0120】
[偏光膜の作製]
ハードコート層付き基材の基材表面にコロナ処理を施した後、光配向膜形成用組成物(1)をバーコート法により塗布し、これを120℃で乾燥して乾燥塗膜を得た。次いで、乾燥塗膜上に偏光UVを照射して光配向膜を形成し、ハードコート層/基材/光配向膜をこの順に有する積層体を得た。レーザ顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)により測定したところ、実施例1~3,6,7では、光配向膜の厚さが100nmであり、実施例4では光配向膜の厚さが200nmであった。また、実施例5では、光配向膜の厚さが400nmであった。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用い、波長365nmでの測定強度が100mJの条件で実施した。
【0121】
得られた積層体における光配向膜の表面に、偏光膜形成用組成物(1)をバーコート法により塗布し、120℃の乾燥オーブンにて1分間の加熱乾燥を行うことにより重合性液晶化合物を液体相に相転移させた後、室温まで冷却して当該重合性液晶化合物をスメクチック液晶状態に相転移させた。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用い、露光量1000mJ/cm(365nm基準)の紫外線を、偏光膜形成用組成物(1)によって形成された塗膜に照射した。これにより、乾燥塗膜に含まれる重合性液晶化合物を、当該重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま重合させ、ハードコート層/基材/光配向膜/偏光膜をこの順に有する偏光フィルムを得た。レーザ顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)により測定したところ、偏光膜の厚さは、2.3μmであった。
【0122】
[長尺偏光フィルムの作製]
各実施例及び比較例に係る長尺偏光フィルムをRoll tо Roll方式により連続的に作製した。各実施例及び比較例に係る長尺の基材を連続的に巻き出し、基材の表面にプラズマ処理を施した。その後、スロットダイコータを用いて光配向膜形成用組成物(1)を基材の中央部に吐出し、第1塗布膜を形成した。さらに、第1塗布膜が形成された基材を100℃に設定した通風乾燥炉中を2分間かけて搬送することで溶媒を除去し、第1乾燥膜を形成した。第1乾燥膜が形成された基材の長手方向に対し、所定方向の偏光UV光を20mJ/cm(313nm基準)の強度で照射し、第1乾燥膜に配向規制力を付与することで、長尺光配向膜を形成した。
【0123】
次に、得られた長尺光配向膜にスロットダイコータを用いて偏光膜形成用組成物を基材の中央部に吐出し、第2塗布膜を形成した。さらに、第2塗布膜が形成された基材を110℃に設定した通風乾燥炉中を2分間かけて搬送することで溶媒を除去し、第2乾燥膜を形成した。第2乾燥膜が形成された基材に対し、UV光を1000mJ/cm(365nm基準)で照射し、第2乾燥膜に含まれる重合性液晶化合物を硬化させることで、長尺偏光膜を形成した。
【0124】
その後、連続的にロール状に巻き上げ、各実施例及び比較例に係る200mの長尺偏光フィルムを得た。長尺偏光フィルムにおける長手方向と基材の遅相軸方向とがなす角は、実施例1,3~5,7及び比較例1では0°、実施例2では90°、実施例6では45°であった。長尺偏光フィルムにおける長手方向と偏光膜の吸収軸方向とがなす角は、実施例1,3~5及び比較例1では45°、実施例2では45°、実施例6では0°、実施例7では46°であった。
【0125】
[屈折率の測定]
基材、光配向膜、及びハードコート層の屈折率(波長589nmにおける平均屈折率を屈折率計(株式会社アタゴ製「多波長アッベ屈折計DR-M4」)を用いて測定した。実施例1~7における基材の屈折率は、いずれも1.53であった。比較例1における基材の屈折率は、1.62であった。実施例1~7及び比較例1における光配向膜の屈折率は、いずれも1.55であった。実施例3におけるハードコート層の屈折率は、1.53であった。
【0126】
偏光膜の透過軸方向の屈折率については、各実施例及び比較例に対する屈折率評価用の偏光膜のサンプルを以下のとおり作製した。まず、色素を除いた組成にて屈折率評価用の偏光膜形成用組成物を調整した。基材には、厚さ23μm、面内位相差値が0である未延伸環状オレフィン系樹脂の保護フィルム(日本ゼオン株式会社製、ゼオノアフィルム(登録商標))を用いた。これら以外は、上記実施例と同様の手順にて、各実施例及び比較例に対する屈折率評価用の偏光膜のサンプルを成膜した。
【0127】
屈折率評価用の偏光膜のサンプルに対し、王子計測機器株式会社製の自動複屈折計KOBRA-WPRを使用し、サンプルへの光の入射角を変化させて、正面位相差値と、進相軸中心に40°傾斜させたときの位相差値とをそれぞれ測定した。各波長における平均屈折率は、日本分光株式会社製のエリプソメータM-220を用いて測定した。偏光膜の膜厚は、浜松ホトニクス株式会社製の光学ナノゲージ膜厚計C12562-01を用いて測定した。得られた正面位相差値、進相軸中心に40°傾斜させたときの位相差値、平均屈折率、及び膜厚の値に基づき、王子計測機器技術資料(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/reference.html)を参照して3次元屈折率を算出した。
【0128】
実施例1~7及び比較例1における偏光膜の透過軸方向の屈折率は、いずれも1.53であった。その結果、実施例1~7及び比較例1では、|n(偏光膜)-n(配向膜)|は、いずれも0.02となった。また、実施例1~7では、|n(配向膜)-n(基材)|は、いずれも0.02となったが、比較例1では、|n(配向膜)-n(基材)|は、0.07となった。
【0129】
[外観検査]
各実施例及び比較例で作製した長尺偏光フィルムのそれぞれを70mm×150mm角で切り出し、偏光膜側に感圧式粘着剤を介してλ/4波長板を貼り合わせ、更にλ/4波長板側に感圧式粘着剤を介してアルミ板を貼り合わせることで、各実施例及び比較例に係る外観検査用サンプルを得た。得られた外観検査用サンプルについて、正面鉛直方向から20°傾斜した位置から干渉ムラの有無を目視で検査した。
【0130】
外観検査では、干渉ムラが視認された領域がサンプル面積の2%未満であったものを「A」、干渉ムラが視認された領域がサンプル面積の2%以上5%未満であったものを「B」、干渉ムラが視認された領域がサンプル面積の5%以上15%未満であったものを「C」、干渉ムラが視認された領域がサンプル面積の15%以上であったものを「D」と評価した。
【0131】
実施例1~3,6,7では「A」、実施例4では、「B」、実施例5では「C」、比較例1では、「D」であった。この結果から、配向膜と基材との間の屈折率差及び配向膜と基材との間の屈折率差を0.06以下に抑えることで、偏光膜と配向膜との間及び配向膜と基材との間の入射光の界面反射を抑えられ、偏光フィルムにおいて入射光の界面反射による干渉ムラを抑制できることが確認できた。
【0132】
[カール評価]
各実施例及び比較例で作製した長尺偏光フィルムのそれぞれを70mm×150mm角に切り出し、ラミネータを用いて偏光膜側に感圧式粘着剤を介してλ/4波長板を貼り合わせることで、各実施例及び比較例に係るカール評価用サンプルを得た。得られたカール評価用サンプルの形状を目視で観察した。
【0133】
カール評価では、パネルへの貼り合わせの作業性が良好となることから、基材側に緩やかな凸形状となったものを「A」評価とし、フラットな形状となったものを「B」評価とした。基材における配向面と反対の面にハードコート層が隣接している実施例3では「A」、ハードコート層を有しない実施例1,2,4~7及び比較例1では「B」となった。
【0134】
[巻き癖試験]
各実施例及び比較例で作製した長尺偏光フィルムのそれぞれを幅50mm、長さ300mm(長尺方向)に切り出し、直径6mmの鉄棒にフィルムを長尺方向に巻き付けた後、140℃のオーブンに投入し、3分間静置した。各フィルムを室温環境に取り出した後、鉄棒を取り除き、各フィルムの巻き癖を確認した。
【0135】
巻き癖試験は、長尺偏光フィルムのロールを長期間、高温環境下で保管することを想定した試験である。長期間の保管の安定性の観点から、巻き癖試験では、フィルムの幅方向における中心軸がフィルムの長辺と平行となるような巻き癖が付いたものを「A」評価とし、フィルムの幅方向における中心軸がフィルムの長辺と平行とならないような巻き癖が付いたものを「B」評価とした。その結果、実施例1~5,7及び比較例1では「A」、実施例6では「B」となった。
【0136】
本開示の要旨は、以下の[1]~[5]に示すとおりである。
[1]基材と、配向膜と、偏光膜とがこの順に積層された偏光フィルムであって、前記基材の遅相軸方向と前記偏光膜の吸収軸方向とがなす角が45°±5°であり、可視光に対する前記偏光膜と前記配向膜との間の屈折率差が下記式(1)を満たし、可視光に対する前記配向膜と前記基材との間の屈折率差が下記式(2)を満たす、偏光フィルム。
|n(偏光膜)-n(配向膜)|≦0.06 …(1)
|n(配向膜)-n(基材)|≦0.06 …(2)
(式(1)中、n(偏光膜)は、偏光膜における透過軸方向の屈折率を表す。)
[2]前記配向膜の厚さは、10nm~400nmである、[1]記載の偏光フィルム。
[3]前記基材における前記配向膜と反対の面には、ハードコート層が隣接している、[1]又は[2]記載の偏光フィルム。
[4]前記基材、前記配向膜、及び前記偏光膜は、長尺である、[1]~[3]のいずれか記載の偏光フィルム。
[5]長手方向と前記基材の遅相軸方向とがなす角は、0°±5°又は90°±5°である、[4]記載の偏光フィルム。
【符号の説明】
【0137】
1…偏光フィルム、2…基材、3…配向膜、4…偏光膜、5…ハードコート層。
図1
図2
図3