(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144104
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物、フィルム、積層フィルム、及び成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20241003BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L101/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004130
(22)【出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2023053415
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】江頭 巧
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA003
4J002AA052
4J002AA062
4J002AA072
4J002AC001
4J002BG042
4J002BG043
4J002BG044
4J002BG052
4J002BG053
4J002BG054
4J002BN121
4J002FA083
4J002FD202
4J002FD203
4J002FD204
4J002GC00
4J002GF00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】表面のきめ細かさを維持しながら、充分に光沢度を低くしてテカリを抑制できる樹脂組成物、並びにこの樹脂組成物を用いたフィルム、積層フィルム、及び成形品を提供する。
【解決手段】ゴム含有重合体(A)と、反応性非架橋重合体(B)と、架橋粒子(C)と、任意に非反応性非架橋重合体(D)とを含有し、前記反応性非架橋重合体(B)と前記架橋粒子(C)の合計質量に対する前記反応性非架橋重合体(B)の質量割合[(B)/(B+C)]が、25~95質量%である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム含有重合体(A)と、反応性非架橋重合体(B)と、架橋粒子(C)と、任意に非反応性非架橋重合体(D)とを含有し、
前記反応性非架橋重合体(B)と前記架橋粒子(C)の合計質量に対する前記反応性非架橋重合体(B)の質量割合[(B)/(B+C)]が、25~95質量%である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記架橋粒子(C)のコールター法による体積基準の平均粒子径が0.5~20μmである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ゴム含有重合体(A)と前記反応性非架橋重合体(B)と前記非反応性非架橋重合体(D)の合計質量に対する前記架橋粒子(C)の質量割合[(C)/(A+B+D)]が、0.5~20質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ゴム含有重合体(A)と前記反応性非架橋重合体(B)と前記非反応性非架橋重合体(D)の合計質量に対する前記反応性非架橋重合体(B)の質量割合[(B)/(A+B+D)]が、0.9~40質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記反応性非架橋重合体(B)が、カルボキシ基、ヒドロキシ基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、アミド基、アミノ基、シアノ基及びイ
ミン基よりなる群から選択される1種以上の反応性基を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
温度240℃で4分間加熱した後、JIS K7210に準拠し、温度240℃、荷重49Nの条件で測定されるメルトフローレート(M1)に対する、温度240℃で120分間加熱した後、JIS K7210に準拠し、温度240℃、荷重49Nの条件で測定されるメルトフローレート(M2)の割合であるMFR保持率(M2/M1)が60~115%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いた、フィルム。
【請求項8】
フィルム表面のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度が15%以下であり、85°表面光沢度が24%以下である、請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
フィルム表面のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度とJIS B0601-2001に準拠した二乗平均平方根傾斜RΔqの積(60°表面光沢度× RΔq)が、2.60以下である、請求項7に記載のフィルム。
【請求項10】
フィルム表面のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度が15%以下、85°表面光沢度が24%以下であり、かつフィルム表面のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度とJIS B0601-2001に準拠した二乗平均平方根傾斜RΔqの積(60°表面光沢度×RΔq)が、2.60以下である、フィルム。
【請求項11】
支持層の上に、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いた艶消層が積層された、積層フィルム。
【請求項12】
基材と、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆した請求項7に記載のフィルムを備える、成形品。
【請求項13】
基材と、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆した請求項11の積層フィルムを備える、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、フィルム、積層フィルム、及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品表面の意匠性を向上させるため、アクリル系マトリクスに艶消し剤を練り込んだ樹脂組成物をフィルム化して得られる艶消しフィルムが提案されている。
艶消し剤としては、反応性基を有する非架橋の直鎖状重合体、無機粒子、有機架橋粒子などが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
艶消しフィルムによって、成形品表面に深み感や高級感を付与するためには、光沢度を低くしてテカリを抑制するだけでなく、表面のきめ細かさも必要である。
しかし、従来艶消し剤として使用されていた無機粒子や有機架橋粒子は、粒子によって表面が粗くなりすぎ、きめ細かさが得られなかった。また、表面が粗くなりすぎないように配合量を抑制すると、充分なテカリ抑制効果が得られなかった。
【0005】
一方、反応性基を有する非架橋の直鎖状重合体を用いると、表面のきめ細かさは得られるものの、充分なテカリ抑制効果は得られなかった。
本発明は上記事情に鑑みて、表面のきめ細かさを維持しながら、充分に光沢度を低くしてテカリを抑制できる樹脂組成物、並びにこの樹脂組成物を用いたフィルム、積層フィルム、及び成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を進めた結果、艶消し剤として、反応性基を有する非架橋の直鎖状重合体と有機架橋粒子とを適切な比率で併用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、以下の[1]から[13]である。
【0007】
[1]ゴム含有重合体(A)と、反応性非架橋重合体(B)と、架橋粒子(C)と、任意に非反応性非架橋重合体(D)とを含有し、
前記反応性非架橋重合体(B)と前記架橋粒子(C)の合計質量に対する前記反応性非架橋重合体(B)の質量割合[(B)/(B+C)]が、25~95質量%である、樹脂組成物。
[2]前記架橋粒子(C)のコールター法による体積基準の平均粒子径が0.5~20μmである、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記ゴム含有重合体(A)と前記反応性非架橋重合体(B)と前記非反応性非架橋重合体(D)の合計質量に対する前記架橋粒子(C)の質量割合[(C)/(A+B+D)]が、0.5~20質量%である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記ゴム含有重合体(A)と前記反応性非架橋重合体(B)と前記非反応性非架橋重合体(D)の合計質量に対する前記反応性非架橋重合体(B)の質量割合[(B)/(A+B+D)]が、0.9~40質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記反応性非架橋重合体(B)が、カルボキシ基、ヒドロキシ基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、アミド基、アミノ基、シアノ基及びイミン基よりなる群から選択される1種以上の反応性基を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]温度240℃で4分間加熱した後、JIS K7210に準拠し、温度240℃、荷重49Nの条件で測定されるメルトフローレート(M1)に対する、温度240℃で120分間加熱した後、JIS K7210に準拠し、温度240℃、荷重49Nの条件で測定されるメルトフローレート(M2)の割合であるMFR保持率(M2/M1)が60~115%である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた、フィルム。
[8]フィルム表面のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度が15%以下であり、85°表面光沢度が24%以下である、[7]に記載のフィルム。
[9]フィルム表面のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度とJIS B0601-2001に準拠した二乗平均平方根傾斜RΔqの積(60°表面光沢度× RΔq)が、2.60以下である、[7]又は[8]に記載のフィルム。
[10]フィルム表面のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度が15%以下、85°表面光沢度が24%以下であり、かつフィルム表面のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度とJIS B0601-2001に準拠した二乗平均平方根傾斜RΔqの積(60°表面光沢度×RΔq)が、2.60以下である、フィルム。
[11]支持層の上に、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた艶消層が積層された、積層フィルム。
[12]基材と、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆した[7]~[10]のいずれかに記載のフィルムを備える、成形品。
[13]基材と、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆した[11]の積層フィルムを備える、成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物、フィルム又は積層フィルムによれば、表面のきめ細かさを維持しながら、充分に光沢度を低くしてテカリを抑制できる。
また、本発明の成形品は、表面のきめ細かさが維持されながら、充分に光沢度が低くなるので、深み感や高級感が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「X~Y」は、X以上Y以下であることを意味する。
「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの一方又は両方を意味し、特に断りのない限り反応性基を有しない。
(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の一方又は両方を意味する。
「ビニル単量体」とは、ビニル基を1つ有し、他に不飽和基を有さず、かつ反応性基を有しない単量体を意味する。
「架橋性単量体」とは、不飽和基を複数有する単量体を意味する。
「不飽和基」とは、分子末端にある炭素-炭素2重結合を意味する。
「反応性基」とは、互いに結合可能な官能基を意味する。
「主成分」とは、全成分の質量に対する割合が50質量%以上であることを意味する。
【0010】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、ゴム含有重合体(A)と、反応性非架橋重合体(B)と、架橋粒子(C)と、任意に非反応性非架橋重合体(D)とを含有する。
【0011】
[ゴム含有重合体(A)]
ゴム含有重合体(A)は、弾性重合体にグラフト鎖が結合した多層構造を有するグラフト共重合体である。ゴム含有重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として含むことが好ましい。
ゴム含有重合体(A)は、得られるフィルムや艶消層においてマトリクスを形成し、フィルムや艶消層に優れた耐衝撃性及び伸度を付与する作用を有する。
【0012】
ゴム含有重合体(A)は、弾性重合体を構成する単量体成分を重合して弾性重合体を得、得られた弾性重合体の存在下に、グラフト鎖を構成する単量体成分を重合させることにより得られる。
例えば、アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステル50~99.9質量%、架橋性単量体0.1~10質量%、及び他のビニル単量体0~49.9質量%からなる単量体成分を重合して弾性重合体を得、得られた弾性重合体100質量部の存在下に、アルキル基の炭素数が1~8のメタクリル酸アルキルエステル50~100質量%と、他のビニル単量体0~50質量%とからなる単量体成分10~400質量部を少なくとも1段以上で重合させることにより得られる。
【0013】
弾性重合体を構成する単量体成分は、アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルと、架橋性単量体と、任意に他のビニル単量体とを含むことが好ましい。
アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルを主成分として含むことにより、より優れた耐衝撃性および成形性が得られる。
【0014】
この単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1~7であることが好ましく、1~6であることがより好ましく1~4であることがさらに好ましい。炭素数が8以下であることにより、耐熱性がより向上する。
【0015】
アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチルが好ましい。特に、ガラス転移温度(Tg)が低いアクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸ブチルがより好ましい。Tgが低ければ、弾性重合体が良好な耐衝撃性を有し、かつ容易に成形できる。
弾性重合体を構成する単量体成分に含まれるアクリル酸アルキルエステルは、1種でも2種以上でもよい。
【0016】
弾性重合体を構成する単量体成分に占める、アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルの質量割合は、50~99.9質量%であることが好ましく、60~99.9質量%であることがより好ましく、70~99.9質量%であることがより好ましい。
アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルの質量割合が50質量%以上であることにより、フィルムの成形性がより良好となる。99.9質量%以下であることにより、充分な量の架橋性単量体を配合することができる。
【0017】
弾性重合体を構成する単量体成分に含まれる架橋性単量体は、不飽和基を複数有する。架橋性単量体の有する不飽和基の数は、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
不飽和基を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ブタンジオール、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルシンナメートが挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0018】
弾性重合体を構成する単量体成分に含まれる架橋性単量体の好ましい例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールトリアクリレート、アリルシンナメート等が挙げられる。
弾性重合体を構成する単量体成分に含まれる架橋性単量体は、1種でも2種以上でもよい。
【0019】
弾性重合体を構成する単量体成分に占める、架橋性単量体の質量割合は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.5~2質量%であることがさらに好ましい。
架橋性単量体の質量割合が0.1質量%以上であることにより、得られるフィルムや積層フィルムの耐成形白化性がより良好となり、透明性等の光学的物性を低下させずに成形することができる。架橋性単量体の質量割合が10質量%以下であることにより、得られるフィルムや積層フィルムに、より十分な柔軟性、強靭さを付与することができる。
【0020】
弾性重合体を構成する単量体成分に含まれる他のビニル単量体は、アクリル酸アルキルエステル、及び架橋性単量体と共重合可能である。
他のビニル単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
弾性重合体を構成する単量体成分に含まれる他のビニル単量体は、1種でも2種以上でもよい。
【0021】
弾性重合体を構成する単量体成分に占める、他のビニル単量体の質量割合は、0~49.9質量%であることが好ましく、0~20質量%であることがより好ましく、0~15質量%であることがさらに好ましい。
他のビニル単量体の質量割合が49.9質量%以下であることにより、得られるフィルムや積層フィルムの耐熱性がより向上する。他のビニル単量体は、弾性重合体を構成する単量体成分に含まれなくてもよい。
【0022】
弾性重合体は、耐成形白化性および耐衝撃性の観点から、ガラス転移温度(以下「Tg」という場合がある。)が0℃以下であることが好ましく、-60~-10℃であることがより好ましい。
弾性重合体は、2種以上を併用してもよく、2種以上の弾性重合体の存在下に、グラフト鎖を構成する単量体成分を重合させてもよい。
【0023】
グラフト鎖を構成する単量体成分は、アルキル基の炭素数が1~8のメタクリル酸アルキルエステルを含み、任意に他のビニル単量体を含むことが好ましい。
この単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のメタクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数が8以下であることにより、得られるフィルムや積層フィルムの耐候性がより向上する。
【0024】
具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
グラフト鎖を構成する単量体成分に含まれるメタクリル酸アルキルエステルは、1種でも2種以上でもよい。
【0025】
グラフト鎖を構成する単量体成分に占める、アルキル基の炭素数が1~8のメタアクリル酸アルキルエステルの質量割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に限定されず、100質量%以下である。
アルキル基の炭素数が1~8のメタアクリル酸アルキルエステルの質量割合が50質量%以上であることにより、得られるフィルムや積層フィルムの耐熱性がより向上する。
【0026】
グラフト鎖を構成する単量体成分に含まれる他のビニル単量体は、メタアクリル酸アルキルエステルと共重合可能である。
他のビニル単量体としては、アクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0027】
グラフト鎖を構成するための単量体成分に必要に応じて含まれるアクリル酸アルキルエステルは、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル等が挙げられる。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチルが好ましい。
グラフト鎖を構成する単量体成分に含まれる他のビニル単量体は、1種でも2種以上でもよい。
【0028】
グラフト鎖を構成する単量体成分に占める、他のビニル単量体の質量割合は、0~50質量%であることが好ましく、0~40質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
他のビニル単量体の質量割合が50質量%以下であることにより、得られるフィルムや積層フィルムの耐熱性がより向上する。他のビニル単量体は、グラフト鎖を構成する単量体成分に含まれなくてもよい。
【0029】
グラフト鎖を構成する単量体成分は、弾性重合体100質量部に対し、10~400質量部であり、20~200質量部であることが好ましい。グラフト鎖を構成する単量体成分を、弾性重合体100質量部に対し、10質量部以上で使用することにより、弾性重合体の凝集による透明性の悪化をより回避できる。弾性重合体100質量部に対し、400質量部以下で使用することにより、得られるフィルムや積層フィルムの耐衝撃性がより向上する。
【0030】
グラフト鎖を構成する単量体成分は、それのみで重合した場合のTgが15℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。Tgは高ければ高いほどよく上限は特に限定されないが、例えば200℃以下とすることができる。
グラフト鎖を構成する単量体成分のみで重合した場合のTgが好ましい下限値以上であることにより、得られるフィルムや積層フィルムの耐熱性がより向上する。好ましい上限値以下であることにより得られるフィルムや積層フィルムの耐衝撃性がより向上する。
グラフト鎖を構成する単量体成分のみで重合した場合のTgは用いるビニル単量体の種類により調整できる。
【0031】
グラフト鎖を構成する単量体成分は、2種以上を併用してもよく、1種又は2種以上の弾性重合体の存在下に、グラフト鎖を構成する2種以上の単量体成分を、順次重合させてもよい。
【0032】
ゴム含有重合体(A)は、動的光散乱法による質量平均粒子径が0.03~0.4μmであることが好ましい。ゴム含有重合体(A)の質量平均粒子径は、0.03μm以上が好ましく、0.07μm以上がより好ましく、0.09μm以上がさらに好ましい。また、フィルムの透明性の観点から、0.4μm以下が好ましく、0.30μm以下が好ましく、0.15μm以下がより好ましく、0.13μm以下がさらに好ましい。
【0033】
ゴム含有重合体(A)の質量平均粒子径が0.03μm以上であることにより、本実施形態の樹脂組成物を用いたフィルムが脆くならず、支持層上にも問題なく製膜できる積層フィルムをより得やすくなる。ゴム含有重合体(A)の質量平均粒子径が0.4μmを超えると、本実施形態の樹脂組成物を用いたフィルムの透明性が低下しやすい。
ゴム含有重合体(A)の質量平均粒子径は重合に用いる乳化剤の添加量により調整できる。
【0034】
ゴム含有重合体(A)はゲル含有率が40質量%以上99質量%以下であることが好ましく、50質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。
ゴム含有重合体(A)のゲル含有率が好ましい下限値以上であることにより、得られるフィルムや積層フィルムの機械的強度をより高くすることができ取扱いがより容易となる。
【0035】
ゴム含有重合体(A)のゲル含有率が40質量%以上である樹脂組成物を用いたフィルムや積層フィルムは、三次元形状の基材への積層が容易である。そのため、意匠性に優れた各種樹脂成形品、木工製品、金属成形品等が得られる。
【0036】
ゴム含有重合体(A)のゲル含有率が好ましい上限値以下であると、成形時の流動性及び熱安定性が低くなりすぎず、溶融粘度をより低く抑えることができる。また、成形機内での滞留をより少なくでき樹脂の熱劣化を抑えられるので好ましい。
ゴム含有重合体(A)のゲル含有率はゴム含有重合体(A)における弾性重合体の含有量により調整できる。
【0037】
ゴム含有重合体(A)はアセトン可溶分の質量平均分子量(Mw)が20,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましい。また、100,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましい。
ゴム含有重合体(A)の質量平均分子量(Mw)が好ましい下限値以上であることにより、得られるフィルムや積層フィルムの機械強度が向上し、成形加工時のクラックを抑制できる。また、得られるフィルムや積層フィルムの耐ストレス白化性が発現する。好ましい上限値以下であることにより、得られるフィルムや積層フィルムは柔軟性が高まり、加工性に優れる。得られるフィルムや積層フィルムを鋼板などの基材に貼り合せた後、曲げ加工する際に曲げ部で白化が発生せず、得られる各種成形品の外観が良好となる。
【0038】
ゴム含有重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は重合に用いる連鎖移動剤の添加量により調整できる。
ゴム含有重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法で測定することができる。また、アセトン可溶分とは、0.5gのゴム含有重合体(A)をアセトン50mLに溶解したアセトン溶液を、65℃で4時間還流させた際に得られたアセトン溶液中に含まれる重合体のことをいう。
【0039】
ゴム含有重合体(A)はTgが弾性重合体由来のTgと、グラフト鎖由来のTgの少なくとも2つ以上存在することが好ましい。弾性重合体由来のTg及びグラフト鎖由来のTgの好ましい値は上述した通りである。なお、Tgは、各単量体成分の単独重合体のTgの値(ポリマーハンドブック[Polymer Handbook, J. Brandrup, Interscience, 1989]に記載されているもの)を用いてFOXの式から算出される。
【0040】
また、Tgは以下の方法で測定することもできる(但し、上記FOXの式から算出した値と相違する場合は、上記FOXの式から算出した値を採用する。)。先ず、アクリル樹脂組成物を溶融してシート状に成形し、厚さ1mm、幅6mm、長さ65mmの寸法の試験片を切り出す。動的粘弾性測定装置を用いて、ISO6721-4に準拠して、初期チャック間距離2cm、測定周波数0.1Hz、測定温度範囲-90~150℃、昇温速度2℃/分、窒素気流200mL/分の条件で、引張モードで前記試験片の貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)を測定し、tanδ=E”/E’の式から各温度におけるtanδ(損失正接)を算出する。次にtanδの値を温度に対してプロットすると、二つ以上のピークが現れる。このうちの最も低温側に現れるピークに対応する温度を弾性重合体のTgとする。
【0041】
また、20℃より高温に現れるピークのうち、tanδの値が最大のピークに対応する温度をグラフト鎖のTgとする。なお、ここで得られるグラフト鎖のTgはゴム含有重合体の最外層であることが好ましい。
ゴム含有重合体(A)のTgは重合に用いる単量体の種類や添加量により調整できる。
【0042】
樹脂組成物に占める、ゴム含有重合体(A)の質量割合は、5.5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~75質量%であることがさらに好ましい。
樹脂組成物に占める、ゴム含有重合体(A)中の弾性重合体の質量割合は、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
【0043】
樹脂組成物に占める弾性重合体の質量割合が5質量%以上であることにより、本実施形態の樹脂組成物を用いたフィルムや積層フィルムが脆くなりにくく、フィルムや積層フィルムの耐衝撃性や製膜性がより向上する。
樹脂組成物に占める弾性重合体の質量割合が50質量%以下であることにより、フィルムや積層フィルムの厚み精度に優れフィルムや積層フィルムの生産性がより向上する。
【0044】
ゴム含有重合体(A)の製造方法は特に限定されないが、乳化重合、懸濁重合等の重合法により得られる。乳化重合による場合、乳化剤、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を用いることが好ましい。
【0045】
乳化剤としては、アニオン系、カチオン系又はノニオン系の界面活性剤が使用できる。特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤の具体例としては以下のものが挙げられる。ロジン酸石鹸、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩等。乳化液を調製する方法としては、例えば、(1)水中に単量体混合物を仕込んだ後界面活性剤を投入する方法、(2)水中に界面活性剤を仕込んだ後単量体混合物を投入する方法、(3)単量体混合物中に界面活性剤を仕込んだ後水を投入する方法がある。このうち、(1)及び(2)の方法が好ましい。
【0046】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;これらの過硫酸塩又は有機過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等。中でも、レドックス系開始剤が好ましく、特に、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート・ハイドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤がより好ましい。ラジカル重合開始剤は、水相及び単量体相の何れか一方又は両方に添加することができる。
【0047】
連鎖移動剤の具体例としては、炭素数2~20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素が挙げられる。連鎖移動剤は、グラフト鎖の重合 時に混在させることが好ましい。
重合温度は、重合開始剤の種類や量によって異なるが、好ましくは40~120℃、より好ましくは60~95℃である。
【0048】
乳化重合法を用いた場合、重合反応終了後のラテックスからゴム含有重合体(A)を粉体として回収することが好ましい。粉体として回収する方法としては、例えば、ラテックスを凝固剤と接触させて凝固あるいは塩析し、固液分離し、重合体の1~100質量倍程度の水で洗浄し、濾別等の脱水処理により湿潤状の粉体とし、更に、この湿潤状の粉体を圧搾脱水機や流動乾燥機等の熱風乾燥機で乾燥させる方法がある。その他、スプレードライ法によりラテックスを直接乾燥させてもよい。重合体の乾燥温度、乾燥時間は重合体の種類によって適宜決定できる。
【0049】
凝固剤の具体例としては、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の有機塩や、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム等の無機塩が挙げられる。中でも、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム塩が好ましい。特に、成形体の耐温水白化性の点、また回収される粉体の含水率を低くする点から、酢酸カルシウムがより好ましい。凝固剤は一種を単独で又は二種以上を併せて用いてもよい。凝固剤は、通常、水溶液として用いられる。凝固剤、好ましくは酢酸カルシウムの水溶液の濃度は、安定してアクリル樹脂組成物を凝固、回収できる点から、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、凝固剤、好ましくは酢酸カルシウムの水溶液の濃度は、回収した粉体に残存する凝固剤の量が少なく、特に耐温水白化性、着色性等の成形体の性能をほとんど低下させない点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。また、酢酸カルシウムは、濃度が20質量%を超えると10℃以下では飽和により酢酸カルシウムが析出することがある。
【0050】
ラテックスを凝固剤に接触させる方法としては、例えば、凝固剤の水溶液を攪拌しながら、そこにラテックスを連続的に添加して一定時間攪拌を継続する方法や、凝固剤の水溶液とラテックスとを一定の比率で攪拌機付きの容器に連続的に注入しながら接触させ、凝固した粉体と水とを含む混合物を容器から連続的に抜き出す方法がある。凝固剤の水溶液の量は、ラテックス100質量部に対して10質量部以上、500質量部以下が好ましい。凝固工程の温度は30℃以上、100℃以下が好ましい。
【0051】
[反応性非架橋重合体(B)]
反応性非架橋重合体(B)は、フィルム化や艶消層形成を行う前の樹脂組成物においては、架橋していない直鎖状重合体であり、フィルム化等の際の加熱により、架橋して微細な粒子となる成分である。
反応性非架橋重合体(B)は、表面のきめ細かさを維持しながら、艶消し効果を高める作用を有する。
【0052】
反応性非架橋重合体(B)は、例えば、アルキル基の炭素数が1~8であり反応性基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル1~80質量%、アルキル基の炭素数が1~13のメタクリル酸アルキルエステル10~99質量%、アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステル0~79質量%、及び他のビニル単量体0~50質量%からなる単量体成分を重合させることにより得られる。
【0053】
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8であり反応性基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1~4であることが好ましい。炭素数が8以下であることにより、良好な艶消し外観を発現する。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、これらの混合物のいずれでもよいが、耐熱性の観点から、メタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0054】
反応性非架橋重合体(B)が有する反応性基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、アミド基、アミノ基、シアノ基及びイミン基、アルデヒド基、及びスルホ基が挙げられる。中でも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、アミド基、アミノ基、シアノ基及びイミン基よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。特にヒドロキシ基が好ましい。
これらの反応性基は、樹脂組成物をフィルム化等する際の加熱(通常150℃以上)で互いに結合し、反応性非架橋重合体(B)を架橋することができる。例えば、ヒドロキシ基は、分子間脱水縮合等により互いに結合することができる。
【0055】
反応性基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、(メタ)アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルアルキル、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アクリル酸シアノエチル等が挙げられる。
これらのなかでも、得られるフィルムや成形体の艶消外観を良好にする点で、反応性非架橋重合体(B)は反応性基としてヒドロキシ基を含有する重合体であることが好ましく,具体的には、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを単量体単位として有する重合体であることが好ましい。
【0056】
応性基としてヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、すなわち、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。中でも、艶消し発現性が優れるという点から、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有する反応性基の数は、単量体1つあたり、1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有する反応性基の数が1つ以上あれば、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有する反応性基と結合できるので、フィルム化の際に反応性非架橋重合体(B)を架橋させることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有する反応性基の数が2以下であれば、フィルムの異物をより低減できる。
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれる反応性基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種でも2種以上でもよい。
【0058】
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に占める、反応性基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量割合は、1~80質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましく、20~50質量%であることがさらに好ましい。
反応性基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量割合が1質量%以上であることにより、艶消し効果がより高まる。80質量%以下であることにより、伸度が低下することや表面状態が不良となることを回避しやすい。
【0059】
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~13のメタクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1~8であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数が13以下であることにより、フィルムや積層フィルムの耐水性がより向上する。
【0060】
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のメタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の低級メタクリル酸アルキルエステルが好適で、中でもメタクリル酸メチルが好ましい。
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~13のメタクリル酸アルキルエステルは、1種でも2種以上でもよい。
【0061】
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に占める、メタクリル酸アルキルエステルの質量割合は、10~99質量%であることが好ましく、耐水性の観点から、30~95質量%であることがより好ましく、50~95質量%であることがさらに好ましい。
【0062】
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1~8であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数が8以下であることにより、フィルムや積層フィルムの耐熱分解性がより向上する。
【0063】
応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等の低級アクリル酸アルキルエステルが好適で、中でもアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが好ましい。
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルは、1種でも2種以上でもよい。
【0064】
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に占める、アクリル酸アルキルエステルの質量割合は、フィルムの耐水白化性を良好なものとするために、0~79質量%であることが好ましく、0~40質量%であることがより好ましく、熱分解性、耐水白化性の観点から0.1~25質量%が好ましく、0.1~20質量%がさらに好ましく、0.1~15質量%がより一層好ましい。
アクリル酸アルキルエステルは反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれなくてもよい。
【0065】
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれる他のビニル単量体は、アルキル基の炭素数が1~8であり反応性基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数が1~13のメタクリル酸アルキルエステル、及びアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルと共重合可能である。
【0066】
他のビニル単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等のビニル芳香族モノマー、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸および共重合可能なカルボン酸とそのエステル類のうちアルキル基の炭素数1~13メタクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数が9以上のアクリル酸アルキルエステル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリロニトリル等が挙げられる。
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれる他のビニル単量体は、1種でも2種以上でもよい。
【0067】
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に占める、他のビニル単量体の質量割合は、0~50質量%であることが好ましく、0~30質量%であることがより好ましく、0~15質量%であることがさらに好ましい。
他のビニル単量体の質量割合が50質量%以下であることにより、フィルムの耐水性がより向上する。他のビニル単量体は、反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれなくてもよい。
【0068】
反応性非架橋重合体(B)の製造方法は特に限定されないが、コスト面から懸濁重合による方法が好ましい。懸濁重合の開始剤としては通常の懸濁重合に使用されるものが用いられ、有機過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。懸濁安定剤としては通常用いられるものが用いられ、有機コロイド性高分子物質、無機コロイド性高分子物質、無機微粒子およびこれらと界面活性剤との組み合わせを挙げることができる。懸濁重合は通常懸濁安定剤の存在下に単量体成分を重合開始剤とともに水性懸濁して行われる。それ以外にも単量体成分に可溶な重合物をモノマーに溶かし込んで使用して行うこともできる。
【0069】
反応性非架橋重合体(B)の架橋前の固有粘度は、0.05~0.3L/gであることが好ましく、0.06~0.15L/gであることがより好ましい。この範囲であれば、樹脂組成物の成分を溶融混練する工程の条件、および得られた樹脂組成物をフィルム等の成形品に加工する工程の条件等の賦形条件によらず一定の良好な艶消し性を発現しやすい。
【0070】
固有粘度の調整には、メルカプタン等の重合度調節剤を用いることが好ましい。メルカプタンとしてはn-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン等が使用されるが、特にこれらのものに限定されず公知のものが使用可能である。
【0071】
反応性非架橋重合体(B)の質量平均分子量Mwは、30,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、一方、250,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましい。Mwが30,000以上であれば樹脂組成物中での分散性がより良好となり、一方、250,000以下であればきめの細かい艶消し外観を発現しやすくなる。
なお、反応性非架橋重合体(B)の質量平均分子量Mwは、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0072】
反応性非架橋重合体(B)は、特段の制限はないが、耐水白化性の観点から、架橋前のガラス転移温度Tgが30℃以上であることが好ましく、50℃を越えることがより好ましい。またコンパウンド工程における溶融混練時の分散性の観点からガラス転移温度Tgは120℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましい。重合体(B)のTgは、各単量体成分の単独重合体のTgの値(ポリマーハンドブック[Polymer Handbook,J.Brandrup,Interscience,1989]に記載されているもの)を用いてFOXの式から算出される。
【0073】
樹脂組成物に占める、反応性非架橋重合体(B)の質量割合は、0.9~40質量%であることが好ましく、1.4~20質量%であることがより好ましく、1.9~15質量%であることが更に好ましい。
反応性非架橋重合体(B)の添加量が、0.9質量部以上であれば十分な艶消外観が発現する。反応性非架橋重合体(B)の添加量が、40質量部以下であれば、成形時の流動性及び熱安定性が低くなりすぎず、溶融粘度をより低く抑えることができ、成形機内での滞留をより少なくでき樹脂の熱劣化を抑えられる。また、きめ細かさを維持しやすい。
【0074】
[架橋粒子(C)]
架橋粒子(C)は、フィルム化等する前の樹脂組成物において、既に架橋して微細な粒子とされている成分である。
架橋粒子(C)は、艶消し効果を高める作用を有する。
【0075】
架橋粒子(C)は、例えば、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50.0~99.9質量%、架橋性単量体0.1~20質量%、及び他のビニル単量体0~49.9質量%からなる単量体成分を重合させることにより得られる。
【0076】
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数が8以下であることにより、耐候性がより向上する。
【0077】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、これらの混合物のいずれでもよいが、耐水性がより良好となることから、メタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種でも2種以上でもよい。
【0078】
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に占める、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量割合は、50.0~99.9質量%であることが好ましく、耐熱性の観点から60~99.9質量%であることがより好ましく、70~99.9質量%であることがさらに好ましい。
【0079】
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に含まれる架橋性単量体は、不飽和基を複数有する。架橋性単量体の有する不飽和基の数は、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がより好ましい。
不飽和基を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、これら以外のビニル基などが挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0080】
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に含まれる架橋性単量体の好ましい例としては、トリメチロールプロパントリメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に含まれる架橋性単量体としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジブチレングリコールジメタクリレートなどのジアルキレングリコールジメタクリレートまたはこれらのメタクリレートをアクリレートにしたもの、ジビニルベンゼン、ジビニルアジペート等のビニル基含有多官能性単量体、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有多官能性単量体などが挙げられる。
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に含まれる架橋性単量体は、1種でも2種以上でもよい。
【0081】
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に占める、架橋性単量体の質量割合は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることがさらに好ましく、0.1~2質量%であることが特に好ましい。
架橋性単量体の質量割合が0.1質量%以上であることにより、艶消し性がより向上する。20質量%以下であることにより、フィルムの耐衝撃性がより向上する。
【0082】
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に含まれる他のビニル単量体は、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び架橋性ビニル単量体と共重合可能である。
【0083】
他のビニル単量体としては、ゴム含有重合体(A)の弾性重合体を構成する単量体として挙げた他のビニル単量体と同様の単量体を用いることができる。
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に含まれる他のビニル単量体は、1種でも2種以上でもよい。
【0084】
架橋粒子(C)を構成する単量体成分に占める、他のビニル単量体の質量割合は、0~49.9質量%であることが好ましく、0~20質量%であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
他のビニル単量体の質量割合が49.9質量%以下であることにより、耐熱性がより向上する。他のビニル単量体は、架橋粒子(C)を構成する単量体成分に含まれなくてもよい。
【0085】
架橋粒子(C)は、コールター法による体積基準の平均粒子径が0.5~20μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましく、2~8μmであることがさらに好ましく、2~6μmであることが特に好ましい。
平均粒子径が好ましい下限値以上であることにより、艶消し効果が高まりやすい。平均粒子径が好ましい上限値以下であることにより、きめ細かさを維持しやすい。
【0086】
架橋粒子(C)の製造方法は特に限定されないが、例えば、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、これらの単量体と共重合しうる1分子当たり2個以上の非共役二重結合を有する架橋性単量体を用い、平均粒子径を0.5~20μmとするため、懸濁重合で製造するのが好ましい。
架橋粒子(C)は、このような共重合によって得られる重合体スラリーから、通常の洗浄、脱水、乾燥等の処理によって分離、回収される。
架橋粒子(C)の平均粒子径は架橋性単量体の含有量により調整できる。
【0087】
樹脂組成物に占める、架橋粒子(C)の質量割合は、0.5~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
樹脂組成物に占める架橋粒子(C)の質量割合が好ましい下限値以上であることにより、艶消し効果が高まりやすい。好ましい上限値以下であることにより、きめ細かさを維持しやすい。
【0088】
[非反応性非架橋重合体(D)]
非反応性非架橋重合体(D)は、反応性基を有しない非架橋重合体であり、得られるフィルムや艶消層において、ゴム含有重合体(A)と共にマトリクスを形成する任意成分である。
【0089】
非反応性非架橋重合体(D)は、例えば、アルキル基の炭素数が1~8のメタクリル酸アルキルエステル50~100質量%、アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステル0~50質量%、及び他のビニル単量体0~49質量%からなる単量体成分を重合させることにより得られる。
【0090】
非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のメタクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数が8以下であることにより、耐熱性がより向上する。
【0091】
非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のメタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の低級メタクリル酸アルキルエステルが好適で、中でもメタクリル酸メチルが好ましい。
非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のメタクリル酸アルキルエステルは、1種でも2種以上でもよい。
【0092】
非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に占める、メタクリル酸アルキルエステルの質量割合は、50~100質量%であることが好ましく、耐候性の点で50質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましく、92質量%以上が特に好ましい。一方、耐熱性の点で100質量%以下が好ましく、99.9質量%以下がより好ましい。
非反応性非架橋重合体(D)は、メタクリル酸アルキルエステルのみで構成されていてもよい。
【0093】
非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数が8以下であることにより、耐衝撃性がより向上する。
【0094】
非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等の低級アクリル酸アルキルエステルが好適で、中でもアクリル酸メチルが好ましい。
非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に含まれるアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルは、1種でも2種以上でもよい。
【0095】
非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に占める、アクリル酸アルキルエステルの質量割合は、0~50質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましく、0~8質量%であることがさらに好ましい。
アクリル酸アルキルエステルの質量割合が50質量%以下であることにより、フィルムや積層フィルムの艶消し外観がより向上する。アクリル酸アルキルエステルは非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に含まれなくてもよい。
【0096】
非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に含まれる他のビニル単量体は、アルキル基の炭素数が1~8のメタクリル酸アルキルエステル、及びアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルと共重合可能である。
【0097】
他のビニル単量体としては、ゴム含有重合体(A)の弾性重合体を構成する単量体として挙げた他のビニル単量体と同様の単量体が挙げられる。
反応性非架橋重合体(B)を構成する単量体成分に含まれる他のビニル単量体は、1種でも2種以上でもよい。
【0098】
非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に占める他のビニル単量体の質量割合は、フィルムの耐水白化性の観点から、0~49質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることがさらに好ましい。
他のビニル単量体は、非反応性非架橋重合体(D)を構成する単量体成分に含まれなくてもよい。
【0099】
非反応性非架橋重合体(D)の製造方法は特に限定されないが、例えば、乳化重合や懸濁重合による方法が好ましい。
【0100】
樹脂組成物に占める、非反応性非架橋重合体(D)の質量割合は、0~49、9質量%であることが好ましく、0~25質量%であることがより好ましい。
樹脂組成物に占める非反応性非架橋重合体(D)の質量割合が好ましい下限値以上であることにより、耐熱性が向上する。非反応性非架橋重合体(D)樹脂組成物に含まれなくてもよい。
【0101】
[配合比率]
本実施形態における樹脂組成物は、反応性非架橋重合体(B)と前記架橋粒子(C)の合計質量(100質量%)に対する前記反応性非架橋重合体(B)の質量割合[(B)/(B+C)]が、25~95質量%である。
[(B)/(B+C)]は、30~93質量%であることが好ましく、35~90質量%であることがより好ましく、50~90質量部であることが最も好ましい。
[(B)/(B+C)]が25質量%以上であることにより、表面のきめ細かさを維持できる。[(B)/(B+C)]が95質量%以下であることにより、充分に光沢度を低下させることができる。
【0102】
本実施形態における樹脂組成物は、ゴム含有重合体(A)と反応性非架橋重合体(B)と非反応性非架橋重合体(D)の合計質量(100質量%)に対する架橋粒子(C)の質量割合[(C)/(A+B+D)]が、0.5~20質量%であることが好ましい。
[(C)/(A+B+D)]は、1~15質量%であることがより好ましく、2~10質量%であることがさらに好ましい。
[(C)/(A+B+D)]が好ましい下限値以上であることにより、光沢度を低下させる効果がより高まる。[(C)/(A+B+D)]好ましい上限値以下であることにより、表面のきめ細かさを、より維持しやすくなる。
【0103】
本実施形態における樹脂組成物は、ゴム含有重合体(A)と反応性非架橋重合体(B)と非反応性非架橋重合体(D)の合計質量(100質量%)に対する反応性非架橋重合体(B)の質量割合[(B)/(A+B+D)]が、0.9~40質量%であることが好ましい。
[(B)/(A+B+D)]は、1.4~20質量%であることがより好ましく、1.9~15質量%であることがさらに好ましい。
[(B)/(A+B+D)]が好ましい下限値以上であることにより、艶消し効果が高まりやすい。[(B)/(A+B+D)]好ましい上限値以下であることにより、きめ細かさを維持しやすい。反応性非架橋重合体(B)の添加量が、0.9質量部以上であれば十分な艶消外観が発現する。反応性非架橋重合体(B)の添加量が、40質量部以下であれば、成形時の流動性及び熱安定性が低くなりすぎず、溶融粘度をより低く抑えることができ、成形機内での滞留をより少なくでき樹脂の熱劣化を抑えられるので好ましい。
【0104】
[その他の成分]
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤等を含むことができる。
【0105】
特に基材の保護の点では、耐候性を付与するために、紫外線吸収剤が添加されていることが好ましい。使用される紫外線吸収剤の分子量は300以上であることが好ましく、特に好ましくは400以上である。分子量が300より小さな紫外線吸収剤を使用すると、射出成形金型内で真空成形または圧空成形を施す際に揮発し、金型汚れを発生させることがある。紫外線吸収剤の種類は、特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系または分子量400以上のトリアジン系のものが特に好ましく使用でき、前者の具体例としては、BASFジャパン(株)のTinuvin(登録商標)234、(株)ADEKAのアデカスタブ(登録商標)LA-31、後者の具体例としては、BASFジャパン(株)のTinuvin1577等が挙げられる。紫外線吸収剤は樹脂組成物の総質量100質量%に対して0.1~5質量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0106】
また、耐候性の観点から光安定剤が添加されていることが好ましい。光安定剤としては、公知のものを用いることが出来るが、特にヒンダードアミン系光安定剤等のラジカル捕捉剤が好ましい。このような光安定剤の市販品として、BASFジャパン(株)のChimassorb(登録商標)944、Chimassorb2020、Tinuvin770、(株)ADEKAのアデカスタブLA-57G、アデカスタブLA-72が挙げられる(以上、全て商品名)。
【0107】
[MFR保持率]
本実施形態の樹脂組成物は、温度240℃で4分間加熱した後、JIS K7210に準拠し、温度240℃、荷重49Nの条件で測定されるメルトフローレート(M1)(100%)に対する、温度240℃で120分間加熱した後、JIS K7210に準拠し、温度240℃、荷重49Nの条件で測定されるメルトフローレート(M2)の割合であるMFR保持率(M2/M1)が60~115%であることが好ましい。
MFR保持率(M2/M1)は80~110質量%であることがより好ましく、85~105質量%であることがさらに好ましい。
【0108】
MFR保持率(M2/M1)が好ましい範囲内であれば、熱安定性に優れる。
MFR保持率(M2/M1)が60%以上であれば、成形時の熱安定性をより高くし樹脂の熱劣化による溶融粘度の上昇をより低く抑えることができ、成形機内での滞留をより少なくでき、樹脂の熱劣化を抑えられるので好ましい。
MFR保持率(M2/M1)が115%以下であれば、成形時の熱安定性をより高くし樹脂の熱分解をより低く抑えることができ、副反応による樹脂の熱劣化を抑えられるため好ましい。
【0109】
MFR保持率(M2/M1)が60%以上115%以下の樹脂組成物を用いたフィルムや積層フィルムは、熱劣化物に起因するフィッシュアイと呼ばれる欠陥が経時的に増加する等の不具合が生じにくい。
また、長時間に亘って溶融押出を継続してフィルムや積層フィルムを得ることが可能である。
【0110】
<フィルム>
本実施形態のフィルムは樹脂組成物を用いたフィルムである。樹脂組成物としては、上記本実施形態の樹脂組成物を用いることが好ましい。
本実施形態のフィルムの製造法としては、Tダイ法、インフレーション法などのいずれの方法を用いてもよいが、経済性の点からTダイ法が好ましい。
【0111】
特に、溶融状態にある樹脂組成物を冷却固化する際に、二本の金属ロールに挟まれることなく、またそれにより厚み規制、表面転写されることなく、同時に1本の金属ロールのみに接触し、冷却固化することによって製造することが好ましい。金属ロールに接触させない面が表面(艶消し面)となる。
得られたフィルムの裏面(金属ロールに接触した側)に印刷を施してもよい。
【0112】
フィルムの厚みは、フィルムの取扱い性、ラミネート性が良好となる点から、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。また、フィルム状に成形する製膜性、加工性が良好となる点から、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。
フィルムの厚みが好ましい下限値以上であれば、成形品の外観に充分な深みを与えやすい。フィルムの厚みが好ましい上限値以下であれば、剛性が過大とならず、ラミネート性や二次加工性が良好なフィルムとすることができる。また、単位面積あたりの質量を抑えられるので、経済的にも有利である。
また、好ましい範囲内であれば、製膜が容易で、安定してフィルムを製造しやすい。
【0113】
本実施形態のフィルムは、フィルムの光の透過率としては、JIS K7361-1に準じて測定した全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。全光線透過率が80%以上であれば、フィルムの裏面に印刷された加飾層を、加飾層が印刷されていない表面(艶消し面)から視認した際に美麗である。
【0114】
本実施形態のフィルムは、特に制限されないが、艶消しフィルムとしての外観の美麗さの点から、全体ヘイズが95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。フィルムの全体ヘイズは、JIS K7136に準じて測定した値である。
【0115】
本実施形態のフィルムは、フィルム表面(艶消性を有する面)のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度が15%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。また、フィルム表面のJIS Z8741に準拠した85°表面光沢度が24%以下であることが好ましく、23.5%以下であることがより好ましい。
60°表面光沢度と85°表面光沢度が好ましい上限値以下であることにより、テカリを抑制できる。
【0116】
本実施形態のフィルムは、フィルム表面のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度とJIS B0601-2001に準拠した二乗平均平方根傾斜RΔqの積(60°表面光沢度×RΔq)が、2.60以下であることが好ましく、2.42以下であることがより好ましい。
60°表面光沢度と二乗平均平方根傾斜RΔqの積が好ましい上限値以下であれば、表面のきめ細かさを維持しながら、充分に光沢度が低くなるので、深み感や高級感が得られる。
【0117】
<積層フィルム>
本実施形態の積層フィルムは、支持層の上に樹脂組成物を用いた艶消層が積層された積層フィルムである。樹脂組成物としては、上記本実施形態の樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0118】
支持層としては、特に限定されるものではなく、艶消性を発現せず、成型が可能であり、主成分として透明な樹脂を含む組成物であることが好ましい。特に透明なアクリル樹脂を含む組成物であれば、艶消性を発現せず、艶消し層の艶消性を阻害せず、製膜が容易であり、艶消層との層間密着性が良いため好ましい。
【0119】
支持層としては、本実施形態の樹脂組成物における反応性非架橋重合体(B)と、架橋粒子(C)等の艶消成分を含有しないアクリル樹脂組成物が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物におけるゴム含有重合体(A)、非反応性非架橋重合体(D)と、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、及び各種添加剤等を含有するアクリル樹脂組成物を好適に用いることができる。
【0120】
積層フィルムの厚みは300μm以下が好ましく、200μm以下がさらに好ましい。また、15μm以上が好ましく、40μm以上がさらに好ましい。厚みが15μm以上であると、成形品外観において十分な深みが得られるため好ましい。また特に、複雑な形状に成形する場合、延伸によって十分な厚みが得られる。一方、厚みが300μm以下であると、適度な剛性を有することになるので、ラミネート性、二次加工性等が向上する傾向にあり好ましい。また、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利になる。さらには、製膜性が安定してフィルムの製造が容易になる。
【0121】
積層フィルムにおける、艶消層と支持層の層厚みの比率は、特に制限されない。ただし、アクリル艶消樹脂積層フィルムの透明性、艶消外観及び印刷適性の観点から、1/99~99/1が好ましく、50/50~10/90(艶消アクリル樹脂層/透明アクリル樹脂層)がより好ましい。また、好ましい範囲内であれば、製膜が容易で、安定して積層フィルムを製造しやすい。
【0122】
本実施形態の積層フィルムは、積層フィルム全体の全光線透過率が90%以上であることが好ましい。全光線透過率が90%以上であれば、積層フィルムを三次元形状の各種樹脂成形品、木工製品、又は金属成形品の表面への積層した際の意匠性に優れる。
【0123】
本実施形態の積層フィルム全体の全体ヘイズは特に制限されないが、艶消しフィルムとしての外観の美麗さの点から、95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。なお、フィルムの全体ヘイズは、JIS K7136に準じて測定した値である。
【0124】
本実施形態の積層フィルムは、フィルム表面(艶消層の支持層と反対側の表面)のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度が15%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。また、フィルム表面のJIS Z8741に準拠した85°表面光沢度が24%以下であることが好ましく、23.5%以下であることがより好ましい。
60°表面光沢度と85°表面光沢度が好ましい上限値以下であることにより、テカリを抑制できる。
【0125】
本実施形態の積層フィルムは、フィルム表面(艶消層の支持層と反対側の表面)のJIS Z8741に準拠した60°表面光沢度とJIS B0601-2001に準拠した二乗平均平方根傾斜RΔqの積(60°表面光沢度×RΔq)が、2.60以下であることが好ましく、2.42以下であることがより好ましい。
60°表面光沢度と二乗平均平方根傾斜RΔqの積が好ましい上限値以下であれば、表面のきめ細かさを維持しながら、充分に光沢度が低くなるので、深み感や高級感が得られる。
【0126】
支持層の上に艶消層を積層する方法に特に限定はないが、単層のアクリル艶消樹脂フィルムと、透明アクリル樹脂フィルム(透明アクリル樹脂層)とをラミネートすることで製造してもよいし、艶消性を有するアクリル樹脂組成物と、透明アクリル樹脂層を形成する組成物とを、共押出成形してもよい。中でも共押出成形法が好ましい。
【0127】
<成形品(P1)>
本実施形態の成形品(P1)は、基材と、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆したフィルムを備える成形品である。表面の少なくとも一部を被覆するフィルムは、上記実施形態に係るフィルムである。
【0128】
基材としては、上記実施形態のフィルムと溶融接着可能な材質で構成されたものが好ましい。溶融接着可能な材質としては、ABS樹脂、AS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂あるいはこれらを主成分とする樹脂が挙げられる。
【0129】
中でも、接着性に優れる点でABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂あるいはこれらの樹脂を主成分とする樹脂が好ましく、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂あるいはこれらを主成分とする樹脂を用いることがより好ましい。
フィルムを接着剤で基材に接着する場合は、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、木、紙などのセルロース類なども使用できる。
【0130】
成形品(P1)の製造方法としては、フィルムに射出成形金型内で真空成形または圧空成形を施し、その後基材である樹脂を射出成形する方法、フィルムを基材樹脂シートに加熱プレスする方法等が好ましい。
また、フィルムと溶融接着できない基材を用いる場合は、接着剤を用いて、基材の表面にフィルムを接着する。
なお、フィルムは、裏面側(金属ロールに接触した側)を基材に向けて接着する。
【0131】
<成形品(P2)>
本実施形態の成形品(P2)は、基材と、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆した積層フィルムを備える成形品である。表面の少なくとも一部を被覆する積層フィルムは、上記実施形態に係る積層フィルムである。
基材としては、成形品(P1)で挙げたものと同様のものが使用できる。また、成形品(P2)は、フィルムに代えて積層フィルムを用いる他は、成形品(P1)と同様にして製造できる。
なお、積層フィルムは、支持体側を基材に向けて接着する。
【実施例0132】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明する。尚、以下の説明において、量比に関連する「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味し、略記号/略称は表1に記載の化合物名を意味する。
先ず、評価方法、ゴム含有重合体(A)、及び反応性非架橋重合体(B)の製造例を説明する。
【0133】
【0134】
<評価方法>
[ゴム含有重合体(A)の質量平均粒子径]
大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS-700(商品名)を用い、動的光散乱法でゴム含有重合体(A)の質量平均粒子径を測定した。
【0135】
[アクリルゴム含有重合体(A)のゲル含有率]
抽出前質量Mとして0.5gのゴム含有重合体(A)をアセトン50mLに溶解したアセトン溶液を、65℃で4時間還流させる。得られた抽出液に対し、高速冷却遠心機(日立工機(株)製、商品名:CR21G)を用いて、4℃において14000rpmの回転数で、30分間遠心分離を行う。溶液をデカンテーションで取り除き、残存した固体を得る。この固体に対し、還流、遠心分離、デカンテーションを再度繰り返し、得られた固体を50℃で24時間乾燥して得られたアセトン不溶分の質量を、抽出後質量mとして測定した。抽出前質量Mおよび抽出後質量mから下記式(1)によりゴム含有重合体(A)のゲル含有率G(%)を算出した。
ゲル含有率G(%)=(抽出後質量m(g)/抽出前質量M(g))×100
・・・式(1)
【0136】
[アクリルゴム含有重合体(A)、反応性非架橋重合体(B)の質量平均分子量(Mw)]
アクリルゴム含有重合体(A)及び反応性非架橋重合体(B)の質量平均分子量(Mw)は、GPCカラムとしてTSKgel(登録商標)SuperMultiporeHZ-N、TSKgel guardcolumn SuperMP(HZ)-H、TSKgel Super H-RCを連結したものをセットした高速GPC装置HLC-8420GPC(東ソー社製)を使用し、溶媒THFにて、ポリスチレン換算で測定した。
【0137】
[アクリルゴム含有重合体(A)及び反応性非架橋重合体(B)のTg]
Tgは、各単量体成分の単独重合体のTgの値(ポリマーハンドブック[Polymer Handbook, J. Brandrup, Interscience, 1989]に記載されているもの)を用いてFOXの式から算出した。
【0138】
[反応性非架橋重合体(B)の固有粘度]
クロロホルム溶媒中、25℃において、サン電子工業製AVL-2C自動粘度計により反応性非架橋重合体(B)の固有粘度を測定した。
【0139】
[メルトフローレート(M1)]
メルトインデクサー(立山科学工業(株)製、型式:L227-42(L220タイプ))を用い、JIS K7210(A法)に従い、サンプル量4gを温度240℃及び荷重49Nの条件で測定される加熱時間4分間のメルトフローレート(M1)を測定した。
試料切り取り時間間隔は試料のメルトフローレート(M1)に応じ30秒~120秒とすることで単位時間当たりの吐出量を測定し、単位がg/10minのメルトフローレート(M1)を算出した。
【0140】
[メルトフローレート(M2)]
メルトインデクサー(立山科学工業(株)製、型式:L227-42(L220タイプ))を用い、JIS K7210(A法)に従い、サンプル量4gを温度240℃及び荷重49Nの条件で測定される加熱時間120分間のメルトフローレート(M2)を測定した。試料切り取り時間間隔は試料のメルトフローレート(M2)に応じ30秒~120秒とすることで単位時間当たりの吐出量を測定し、単位がg/10minのメルトフローレート(M2)を算出した。
【0141】
[MFR保持率(M2/M1)]
MFR保持率(M2/M1)は、温度240℃で4分間加熱した後、JIS K7210に準拠し、温度240℃、荷重49Nの条件で測定されるメルトフローレート(M1)に対する、温度240℃で20分間加熱した後、JIS K7210に準拠し、温度240℃、荷重49Nの条件で測定されるメルトフローレート(M2)の割合として算出した。
【0142】
[フィルムの透明性(全光線透過率、全体ヘイズ)]
ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、商品名:Haze Meter NDH4000)を用い、光源D65、温度25℃の条件で、全光線透過率はJIS K7361-1に従い測定し、全体ヘイズはJIS K7136に従い測定した。
なお、積層フィルムの全光線透過率と全体ヘイズは、支持層も含めた積層フィルム全体の全光線透過率と全体ヘイズである。
【0143】
[フィルムの厚み]
膜厚計(株式会社ミツトヨ製、商品名:ABSデジマチックインジケータ)を用い、フィルム幅方向(TD)に5点測定し、平均値を算出することで膜厚を測定した。
積層フィルムの各層の厚みについては、ミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製、商品名:EM-UC7)を用いて、幅方向(TD)に沿って切断した積層フィルム断面を観察することで求めた。具体的には、光学顕微鏡((株)ハイロックスジャパン製、商品名:KH-8700)を用いて積層フィルム断面を観察し、得られた画像をKH-8700の画像解析画面にて手動で測定することにより求めた。
【0144】
[60°表面光沢度]
光沢計(コニカミノルタ(株)製、商品名:GM-268Plus)を用い、JIS Z8741に従い、フィルム表面(単層フィルムの艶消性を有する面、積層フィルムの艶消層の表面。以下同じ)の長手方向(MD)、及び幅方向(TD)をそれぞれ5点ずつ測定し、平均値を算出することで60°表面光沢度を測定した。また、MDとTDの60°表面光沢度の平均値を算出した。
【0145】
[85°表面光沢度]
光沢計(コニカミノルタ(株)製、商品名:GM-268Plus)を用い、JIS Z8741に従い、フィルム表面の長手方向(MD)、及び幅方向(TD)をそれぞれ5点ずつ測定し、平均値を算出することで85°表面光沢度を測定した。また、MDとTDの85°表面光沢度の平均値を算出した。
[0267]
[輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)]
表面粗さ測定機((株)東京精密製、商品名:SURFCOM(登録商標)1400D)を用い、JIS B0601-2001に従い、フィルム表面の測定長さ4.0mm、評価長さ4.0mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.3mm/sの条件で測定される二乗平均平方根傾斜(RΔq)を測定した。
【0146】
輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)は、基準長さにおける局部傾斜dZ/dXの二乗平均平方根を表したものであり、次の式(2)によって求められる。ここで言う局部傾斜は、高さZ(x)を微分したものである。
【0147】
【0148】
[60°表面光沢度×RΔq]
上述する手法でフィルム表面の60°表面光沢度及び輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)を測定し、それぞれMD、TDの平均値を算出した。60°表面光沢度の平均値と輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)の平均値の積を、「60°表面光沢度×RΔq」とした。
【0149】
[外観のきめ細かさ]
フィルム表面を目視で観察し、次の基準で評価した。
〇:フィルム表面の垂線から60°の角度から目視で観察した際に、表面の凹凸が細かく、均一であり、なめらかに見える。
×:フィルム表面の垂線から60°の角度から目視で観察した際に、表面の凹凸が粗く、ザラつき感があるように見える。
【0150】
[フィルムのテカリ]
フィルム表面を目視で観察し、次の基準で評価した。
〇:フィルム表面の垂線から60°、および85°の角度から目視で観察した際に、いずれも良好な低光沢感を示し、物や蛍光灯等の映りがない。
×:フィルム表面の垂線から60°、および85°の角度から目視で観察した際に、少なくとも一方で物や蛍光灯等が映り込んでおり、それらの輪郭が認識できる。
【0151】
<ゴム含有重合体(A)>
[製造例1:ゴム含有重合体(A1)の製造]
攪拌機を備えた容器内に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA0.3部、n-BA4.5部、BDMA0.2部、AMA0.05部及びCHP0.025部からなる単量体成分(a)を投入し、室温下にて攪拌混合した。次いで、攪拌しながら、RS610 1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して「乳化液1」を調製した。
【0152】
次に、還流冷却器付き重合容器内に脱イオン水156.0部を投入し、74℃に昇温した。さらに、脱イオン水4.5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部及びEDTA0.0003部を加えた混合物を調製し、この混合物を前記重合容器内に投入した。次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら、前記乳化液1を9分間にわたって重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させ、第一弾性重合体(I-a)の重合を完結した。
【0153】
続いて、MMA9.6部、n-BA14.4部、BDMA1部、AMA0.25部及びCHP0.016部からなる単量体成分(b)を、90分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、第二弾性重合体(I-b)を生成させた。このようにして第一弾性重合体(I-a)及び第二弾性重合体(I-b)含む弾性重合体(I)を得た。
なお、単量体成分(a)及び単量体成分(b)を、それぞれ単独で、前記と同条件で重合した場合、第一弾性重合体(I-a)のTgは-48℃、第二弾性重合体(I-b)のTgは-10℃であった。
【0154】
続いて、MMA6部、MA4部、AMA0.075部及びCHP0.013部からなる単量体成分(c)を、45分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間重合体(II)のグラフト鎖を形成させた。なお、単量体成分(c)を、単独で前記と同条件で重合した場合、中間重合体(II)のTgは60℃であった。
【0155】
続いて、MMA57部、MA3部、t-BHP0.075部及びn-OM0.264部からなる単量体成分(d)を140分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、硬質重合体(III)のグラフト鎖を形成して、ゴム含有重合体(A1)の重合体ラテックスを得た。得られたラテックス状のゴム含有重合体(A1)の平均粒子径は0.11μmであった。なお、単量体成分(d)を、単独で前記と同条件で重合した場合、硬質重合体(III)のTgは99℃であった。
【0156】
得られたゴム含有重合体(A1)の重合体ラテックスを、濾材にSUS製のメッシュ(平均目開き:54μm)を取り付けた振動型濾過装置を用い、濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(A1)を得た。表2に各単量体成分の一覧を示す。尚、ゴム含有重合体(A1)のゲル含有率は70%、Mwは58,000であった。
【0157】
[製造例2:ゴム含有重合体(A2)の製造]
各単量体成分を表2に示すように変更し、グラフト化を一段で行う下記の方法により、ゴム含有重合体(A2)を製造した。
還流冷却器付き重合容器内に脱イオン水186.3部を投入し、79℃に昇温した。さらに、脱イオン水3.4部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.25部、硫酸第一鉄0.000025部及びEDTA0.000075部を加えた混合物を調製し、この混合物を前記重合容器内に投入した。
【0158】
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら、MMA11.25部、n-BA12.5部、St1.25部、BDMA0.75部、AMA0.09部及びCHP0.044部からなる単量体成分(a)とRS610 0.75部との混合物の1/10仕込みを4分間にわたって重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させ、その後、前記混合物の残りの9/10仕込みを108分間にわたって重合容器内に滴下した後、40分間反応時点にてソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.125部を投入し、55分間反応を継続させ、第一弾性重合体(I-a)の重合を完結した。
【0159】
続いて、n-BA30.94部、St6.56部、BDMA0.09部、AMA0.66部及びCHP0.106部からなる単量体成分(b)を、180分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、105分間反応時点にてソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.125部を投入し、120分間反応を継続させ、第二弾性重合体(I-b)を生成させた。このようにして第一弾性重合体(I-a)及び第二弾性重合体(I-b)含む弾性重合体(I)を得た。
【0160】
続いて、MMA35.63部、MA1.88部、t-BHP0.064部及びn-OM0.113部からなる単量体成分(d)を120分間にわたって前記重合容器内に滴下し、硬質重合体(III)のグラフト鎖を形成して、ゴム含有重合体(A2)の重合体ラテックスを得た。得られたラテックス状のゴム含有重合体(A2)の平均粒子径は0.26μmであった。
【0161】
得られたゴム含有重合体(A2)の重合体ラテックスを、濾材にSUS製のメッシュ(平均目開き:54μm)を取り付けた振動型濾過装置を用い、濾過した後、酢酸カルシウム5.0部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(A2)を得た。表2に各単量体成分の一覧を示す。尚、ゴム含有重合体(A2)のゲル含有率は90%、Mwは45,000であった。
【0162】
【0163】
<反応性非架橋重合体(B)>
[製造例3:ヒドロキシ基含有重合体の製造]
還流冷却器付き重合容器内に脱イオン水262部、第三リン酸カルシウム10%スラリー13.8部、MMA60.0部、MA10.0部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル30.0部、n-ドデシルメルカプタン0.25部及びラウロイルパーオキサイド0.52部からなる単量体成分を投入し、重合容器内の雰囲気を充分に窒素ガスで置換した。次に、単量体成分を攪拌しながら78℃に昇温し、窒素雰囲気下で2時間反応させた。
続いて、重合容器内の液温度を85℃に昇温した後、過硫酸カリウム0.022部を添加し、更に90分保持して重合体のビーズを得た。得られた重合体のビーズを150メッシュ(目開き100μm)の条件で篩別を行ない、メッシュを通過したビーズを脱水、乾燥して水酸基含有重合体のビーズを得た。得られたヒドロキシ基含有重合体のTgは77℃であり、固有粘度は、0.069L/g、平均粒子径は90μm、質量平均分子量は158,300であった。
【0164】
<架橋粒子(C)>
架橋粒子(C)として、市販品の下記架橋粒子(日本触媒(株)製、商品名:エポスター(登録商標)MV1002、エポスターMV1004、エポスターMV1006、エポスターMV1010)を用いた。なお、以下の平均粒子径は、いずれもカタログ値であり、平均粒子径はコールター法による体積基準の平均粒子径である。
【0165】
エポスターMV1002:体積基準の平均粒子径2.5μm(ポリメチルメタクリレート架橋体99~100%)。
エポスターMV1004:体積基準の平均粒子径3.6μm(ポリメチルメタクリレート架橋体99~100%)。
エポスターMV1006:体積基準の平均粒子径6.3μm(ポリメチルメタクリレート架橋体99~100%)。
エポスターMV1010:体積基準の平均粒子径10.2μm(ポリメチルメタクリレート架橋体99~100%)。
【0166】
<透明アクリル樹脂>
[製造例4:透明アクリル樹脂組成物の製造]
製造例1で得られたゴム含有重合体(A1)を80部、及び製造例2で得られたゴム含有重合体(A2)を10部、非反応性非架橋重合体(D)としてメタクリル酸アルキル-アクリル酸アルキル共重合体(三菱ケミカル(株)製;商品名:ダイヤナール(登録商標)BR-75)を10部、添加剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブ(登録商標)LA-31RG)を1.1部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製;商品名:Chimassorb(登録商標)2020 FDL)を0.2部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブAO-60)を1部、リン系酸化防止剤(城北化学工業(株)製;商品名:JP-333E)を0.4部添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。その後、二軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM-35B、以下同様)を用いてシリンダー温度180~240℃及びダイヘッド温度240℃の条件で、スクリーンメッシュ(日本精線(株)製、商品名:NF-12T、公称ろ過径40μm)で夾雑物を取り除きながらストランド状に押出し、水槽を通し冷却後に切断して透明アクリル樹脂組成物のペレットを得た。
【0167】
<実施例1>
表3に示す配合で、艶消性を有する樹脂組成物のペレットを調製した。具体的には、アクリルゴム含有重合体(A)として製造例1で得られたゴム含有重合体(A1)を75部、非反応性非架橋重合体(D)としてメタクリル酸アルキル-アクリル酸アルキル共重合体(三菱ケミカル(株)製;商品名:アクリペット(登録商標)VH(MMA/MA=97/3))を11部、反応性非架橋重合体(B)として製造例3で得られたヒドロキシ基含有重合体を14部、架橋粒子(C)としてアクリル系微粒子(日本触媒(株)製;商品名:エポスターMV1002)を3部、アクリル系高分子外部滑剤(三菱ケミカル(株)製;商品名:メタブレン(登録商標)L-1000)を0.8部、および、高分子量アクリル重合体(三菱ケミカル(株)製;商品名:メタブレンP-551A)を3部、添加剤として、リン系酸化防止剤(城北化学工業(株)製;商品名:JP-333E)を1部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブLA-31RG)を1.1部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製;商品名:Chimassorb 2020 FDL)を0.3部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブAO-60)を0.7部、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]フルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレン,BPEF(大阪ガスケミカル(株)製;商品名:オグソール(登録商標)MF-11)を2.5部混合した。
【0168】
その後、二軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM-35B)を用いてシリンダー温度170~240℃及びダイヘッド温度240℃の条件で、200メッシュのスクリーンメッシュで夾雑物を取り除きながらストランド状に押出し、水槽を通し冷却後に切断してペレット化した。スクリュー回転数300rpm、吐出量20.0kg/hでのダイス出口樹脂温度は294℃であった。得られたペレットのメルトフローレート(M1)は1.44g/10min、メルトフローレート(M2)は1.22g/10min、MFR保持率(M2/M1)は86%であった、評価結果を表3に示す。
【0169】
得られたペレットを用いて、単層フィルムを作成した。具体的には、85℃でペレットを一昼夜除湿乾燥し、500mm幅のTダイを取り付けた200メッシュのスクリーンメッシュを設けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=33)を用いて、シリンダー温度200~240℃、Tダイ温度245℃の条件で、厚み40μmの単層フィルムを製膜した。
【0170】
得られた単層フィルムの60°表面光沢度はMDが7.2%、及びTDが7.7%、85°表面光沢度はMDが20.6%、及びTDが20.1%、輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)はMDが0.152、及びTDが0.176であった。評価結果を表3に示す。
【0171】
<実施例2~12、比較例1~3>
樹脂組成物のペレットを表3~表5に示す配合とした以外は、実施例1と同様に実施した。得られたペレットと単層フィルムの評価結果を表3~表5に示す。
なお、比較例3の樹脂組成物のペレットは、MFR保持率(M2/M1)が59%と低位であり、熱安定性に劣るものであったため、フィルムの製造は行わなかった。
【0172】
<実施例13>
艶消層を構成する樹脂組成物として実施例1で得られたペレットを用い、支持層を構成する樹脂組成物として製造例4で得られたペレットを用いた。これらのペレットを85℃で一昼夜除湿乾燥した。200メッシュのスクリーンメッシュを設けた30mmφのノンベントスクリュー型押出機を用いて、シリンダー温度200~240℃の条件で艶消層を構成する樹脂組成物を可塑化し、他方、200メッシュのスクリーンメッシュを設けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機を用いて、シリンダー温度220~240℃の条件で、支持層を構成する樹脂組成物を可塑化し、次いで245℃に設定した500mm幅の2種2層用マルチマニホールドTダイで、支持層を構成する樹脂組成物側が鏡面冷却ロールに接するようにして厚さ75μmの積層フィルムを作製した。
【0173】
積層フィルムの断面を観察したところ、艶消層の厚みは7.5μm、支持層の厚みは67.5μmであった。また、艶消層の表面(支持層が積層されていない側)の60°表面光沢度はMDが12.6%、及びTDが13.7%、85°表面光沢度はMDが20.5%、及びTDが20.5%、輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(RΔq)はMDが0.180、及びTDが0.177であった。得られたペレットと積層フィルムの評価結果を表5に示す。
【0174】
<実施例14~19、比較例4~7>
艶消層を構成するペレットを表6~表8に示す配合の樹脂組成物としたこと以外は、実施例13と同様にしてペレットを作製し、実施例9と同様にして積層フィルムを作製した。
得られた艶消層を構成するペレットと積層フィルムの評価結果を表6~表8に示す。
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
上記の実施例及び比較例より、次のことが明らかとなった。
本発明の樹脂組成物を用いた単層フィルム、及び積層フィルム(実施例1~19)は、反応性非架橋重合体(B)および架橋粒子(C)を併用することで、比較例の単層フィルム、及び積層フィルム(比較例1~7)のフィルムに比べて、60°表面光沢度および85°表面光沢度を効果的に低下させることができ、テカリを抑制できることが示された。
さらに、60°表面光沢度×RΔqが2.6以下となり、きめ細やかな外観を有するフィルムが得られた。実施例1~19のアクリル艶消樹脂フィルムは、テカリの無いキメの細かい外観を有しており、艶消外観の高級感や深み感等の意匠性や加飾性が良好であった。
【0182】
反応性非架橋重合体(B)の有無以外は、同様の組成の単層フィルム(実施例1~12)と比較例1の単層フィルムを比較すると、比較例1ではきめが粗く、艶消し効果が不十分なため60°表面光沢度が低下せずにテカリのある外観となった。
さらに、比較例1では、実施例と同等の60°表面光沢度の値を発現させるためには、架橋粒子(C)をさらに多量添加する必要があると思われ、非経済的であった。
【0183】
反応性非架橋重合体(B)の有無以外は、同様の組成および層構成を有する積層フィルム(実施例13~19)と比較例5~7の積層フィルムを比較すると、比較例5~7ではきめが粗く、艶消し効果が不十分なため60°表面光沢度が低下せずにテカリのある外観となった。
【0184】
また、架橋粒子(C)の有無以外は、同様の組成の実施例1~12と比較例2の単層フィルムを比較すると、比較例2では艶消し効果が不十分なため85°表面光沢度が低下せずにテカリのある外観となった。
また、架橋粒子(C)の有無以外は、同様の組成および層構成を有する実施例13~119と比較例4の積層フィルムを比較すると、比較例4では艶消し効果が不十分なため85°表面光沢度が低下せずにテカリのある外観となった。
本発明の樹脂組成物は、テカリの原因となる60°表面光沢度および85°表面光沢度を共に低下させることができ、キメの細かい艶消外観を有し、種々の用途に適用し得るアクリル艶消し樹脂フィルムを提供することができる。
本発明の樹脂組成物から製造されるフィルム、積層フィルム、成形品は、特に車輌用途、建材用途に適している。具体例としては、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用途、ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用途、AV機器や家具製品のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等の用途、携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の用途、さらには家具用外装材用途、壁面、天井、床等の建築用内装材用途、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材用途、窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材用途、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途、あるいは電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用途、瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器及び材料、景品や小物等の雑貨等のその他各種用途等に好適に使用することができる。