(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144138
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241003BHJP
B05C 11/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
B05C11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019697
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2023052729
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】井手 裕幸
【テーマコード(参考)】
4F042
5F146
【Fターム(参考)】
4F042AA07
4F042AB00
4F042BA04
4F042BA05
4F042BA11
4F042BA25
4F042BA27
4F042CC07
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4F042DE01
4F042DF01
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4F042EB05
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4F042EB21
4F042EB24
4F042EB29
5F146JA05
5F146JA08
5F146LA06
5F146LA07
5F146LA14
(57)【要約】
【課題】カップ内排気時における基板周縁部の気流の流速を抑制する。
【解決手段】基板に処理液を供給して前記基板を処理する基板処理装置であって、前記基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板保持部が収容されたカップと、前記基板保持部の上方に形成された前記基板の受け渡しを行うための開口部と、を備え、前記カップは、外壁を構成する外カップと、前記外カップの内側に設けられた内カップと、前記外カップの内側において前記内カップの上方に設けられた中間カップと、を備え、前記外カップは、筒状の側壁と、前記側壁の上部から内周側に延びた上壁部と、を有し、前記中間カップは、上端が下端よりも内周側に位置するように傾斜し、前記中間カップの半径方向における当該中間カップの上端から下端までの長さの1/2の位置を中央部と定義したとき、前記上壁部の内周端は、前記中央部よりも外周側に位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理液を供給して前記基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部が収容されたカップと、
前記基板保持部の上方に形成された開口部と、を備え、
前記カップは、
外壁を構成する外カップと、
前記外カップの内側に設けられた内カップと、
前記外カップの内側において前記内カップの上方に設けられた中間カップと、を備え、
前記外カップは、筒状の側壁と、前記側壁の上部から内周側に延びた上壁部と、を有し、
前記中間カップは、上端が下端よりも内周側に位置するように傾斜し、
前記中間カップの半径方向における当該中間カップの上端から下端までの長さの1/2の位置を中央部と定義したとき、前記上壁部の内周端は、前記中央部よりも外周側に位置している、基板処理装置。
【請求項2】
基板に処理液を供給して前記基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部が収容されたカップと、
前記基板保持部の上方に形成された開口部と、を備え、
前記カップは、
外壁を構成する外カップと、
前記外カップの内側に設けられた内カップと、
前記外カップの内側において前記内カップの上方に設けられた中間カップと、を備え、
前記外カップは、筒状の側壁と、前記側壁の上部から内周側に延びた上壁部と、を有し、
前記中間カップは、
上端が下端よりも内周側に位置するように傾斜し、
前記上壁部までの最短距離が、当該中間カップの上端よりも短い部分を有する、基板処理装置。
【請求項3】
基板に処理液を供給して前記基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部が収容されたカップと、
前記基板保持部の上方に形成された開口部と、を備え、
前記カップは、
外壁を構成する外カップと、
前記外カップの内側に設けられた内カップと、
前記外カップの内側において前記内カップの上方に設けられた中間カップと、を備え、
前記外カップは、筒状の側壁と、前記側壁の上部から内周側に延びた上壁部と、を有し、
前記中間カップは、上端が下端よりも内周側に位置するように傾斜し、
前記上壁部は、前記カップの上方から当該カップ内への気体の取込口が形成された取込領域が、その内周側に環状に形成されている、基板処理装置。
【請求項4】
前記中間カップの上端は、前記基板保持部の上面よりも高い位置にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記中央部は、前記基板保持部の上面よりも低い位置にある、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記短い部分は、前記基板保持部の上面よりも低い位置にある、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項7】
鉛直方向に沿って切断した前記中間カップの断面形状が直線状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記上壁部の内周端に、下方に向かって延びた端部突起が設けられている、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記側壁よりも内周側、かつ、前記上壁部の内周端よりも外周側に、下方に向かって延びた中間突起が設けられている、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記外カップは、
前記上壁部の内周端から下方に向かって延びた端部突起と、
前記側壁よりも内周側、かつ、前記上壁部の内周端よりも外周側において、前記上壁部から下方に向かって延びた中間突起と、を有し、
前記中間突起の下端は、前記端部突起の下端よりも低い位置にある、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記側壁よりも内周側、かつ、前記上壁部の前記取込領域よりも外周側に、下方に向かって延びた中間突起が設けられている、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記開口部は、前記上壁部の内周端により形成され、
前記基板の直径が200mmであり、
前記開口部は、平面視で直径300mmより大きい円形に形成されている、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被処理基板を水平に保持すると共に、回転可能に保持する基板保持手段と、被処理基板に処理液を供給する処理液供給ノズルと、被処理基板に洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルと、上記基板保持手段に保持された被処理基板の周囲を包囲するカップと、を具備する液処理装置を開示している。この液処理装置においては、上記カップの上部開口部に、内方側が開口する環状のミスト回収部とミスト回収路が形成され、そのミスト回収路における近接部位に、気体供給源に接続する気体供給口と、ミスト回収部とミスト回収路を連通する吸引口が形成されている。また、この液処理装置は、上記被処理基板に洗浄液を供給後、上記基板保持手段が回転する際に、上記気体供給源から気体供給口に供給される気体の気流による負圧を利用して上記ミスト回収部及び吸引口を介して上記ミスト回収路内にミストを回収可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、カップ内排気時における基板周縁部の気流の流速を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板に処理液を供給して前記基板を処理する基板処理装置であって、前記基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板保持部が収容されたカップと、前記基板保持部の上方に形成された前記基板の受け渡しを行うための開口部と、を備え、前記カップは、外壁を構成する外カップと、前記外カップの内側に設けられた内カップと、前記外カップの内側において前記内カップの上方に設けられた中間カップと、を備え、前記外カップは、筒状の側壁と、前記側壁の上部から内周側に延びた上壁部と、を有し、前記中間カップは、上端が下端よりも内周側に位置するように傾斜し、前記中間カップの半径方向における当該中間カップの上端から下端までの長さの1/2の位置を中央部と定義したとき、前記上壁部の内周端は、前記中央部よりも外周側に位置している。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、カップ内排気時における基板周縁部の気流の流速を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態にかかるレジスト塗布装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図2】実施形態にかかるレジスト塗布装置の構成の概略を示す横断面図である。
【
図3】外カップの上壁部の位置について説明するためのカップの部分拡大図である。
【
図4】外カップの上壁部の位置について説明するための他の形状のカップの部分拡大図である。
【
図5】外カップの上壁部の位置について説明するための別の形状のカップの部分拡大図である。
【
図6】カップ内排気時の気流を模式的に示した説明図である。
【
図7】中間カップの位置について説明するためのカップの部分拡大図である。
【
図8】外カップの構成例を説明するためのカップの部分拡大図である。
【
図9】外カップの構成例を説明するためのカップの部分拡大図である。
【
図10】中間カップの構成例を説明するためのカップの部分拡大図である。
【
図11】外カップの構成例を説明するためのカップの部分拡大図である。
【
図12】外カップの構成例を説明するための上面図である。
【
図13】取込口の例を説明するための上面図である。
【
図14】外カップの構成例を説明するためのカップの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイス等の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、基板としての半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)の上に所定の塗布液を塗布し、反射防止膜やレジスト膜といった塗布膜を形成する塗布処理が行われる。
【0009】
上述した塗布処理においては、いわゆるスピン塗布法が広く用いられており、回転中のウェハの中心部にノズルから塗布液を供給し、遠心力によってウェハ上の塗布液を拡散させることでウェハ上に塗布膜が形成される。スピン塗布法を行うための回転式の塗布処理装置には、回転するウェハの表面から、塗布液が周囲に飛散することを抑制するために、カップと呼ばれる容器が設けられる。
【0010】
ウェハを回転させた際には、ウェハの周縁部からミスト状にレジスト液が飛散することがあるため、そのミストがカップの上方に舞い上がってカップ外を汚染することがないように、塗布処理装置においては、カップ底部からの排気が行われる。塗布処理装置の処理容器内においては、上述したカップ底部からの排気によって、カップの上方からカップ底部に設けられた排気口に向かう気流(ダウンフロー)が生じる。
【0011】
この気流は、ウェハ周縁部に形成された排気流路から吸引されるが、カップ上方の空間に対して狭い排気流路に気流が流入することになるため、ウェハ周縁部における気流の流速がウェハ中心部よりも大きくなる。特に、塗布処理中のウェハは回転状態にあることから、ダウンフローによってウェハの中心部に引き込まれた気体は、ウェハの回転によってウェハの周縁部に向かって吐き出されることになり、ウェハの周縁部では流速が上昇し易い。
【0012】
すなわち、カップ内排気時においては、ウェハ周縁部とウェハ中心部の流速差が大きくなり、ウェハ周縁部においてはウェハ中心部よりも流速が大きいことによって塗布膜の膜厚がウェハ中心部よりも厚くなる傾向がある。ウェハ周縁部の流速を抑えるためには、カップ内排気時の排気圧を下げる対策も考えられるが、ウェハ周縁部とウェハ中心部における相対的な流速差を十分に低減させることはできない。
【0013】
以上のように、従来のカップにおいては、ウェハの周縁部と中心部における気流の流速差が原因となって膜厚の面内均一性に改善の余地があった。
【0014】
そこで、本開示にかかる技術は、カップ内排気時における基板周縁部の気流の流速を抑制する。
【0015】
以下、本実施形態にかかる基板処理装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかる基板処理装置としてのレジスト塗布装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図2は、本実施形態にかかるレジスト塗布装置の構成の概略を示す横断面図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、レジスト塗布装置1は、内部を密閉可能な処理容器10を有している。処理容器10の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成されている。
【0018】
処理容器10内には、基板としてのウェハWを保持して回転させる基板保持部としてのスピンチャック20が設けられている。スピンチャック20は、例えばモータなどのチャック駆動部21により所定の速度に回転できる。チャック駆動部21には、例えばシリンダなどの昇降駆動機構が設けられており、スピンチャック20は昇降自在になっている。
【0019】
また、処理容器10内には、スピンチャック20を収容し、底部から排気されるカップ30が設けられている。カップ30は、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止めて回収する容器である。
【0020】
カップ30は、スピンチャック20の外側に配置された外カップ31と、外カップ31の内側に位置する円環状の内カップ32と、内カップ32の上方に位置する円環状の中間カップ33と、を有する。
【0021】
外カップ31は、カップ30の外壁を構成する略円筒状の部品であり、円筒状の側壁34と、側壁34の上部から内周側に延びた円環状の上壁部35と、を有している。この外カップ31は、スピンチャック20に保持されたウェハWの側方を囲むように配置されている。
【0022】
上壁部35は、外周側から内周側に向かって上方に傾斜した傾斜壁35aと、傾斜壁35aの内周端から鉛直方向上方に向かって延びた鉛直壁35bで構成されている。なお、
図1においては、外カップ31を構成する側壁34と傾斜壁35aと鉛直壁35bが一体物として示されているが、外カップ31は複数部品で構成されてもよい。
【0023】
内カップ32の外周端部の下方には、筒状の壁体36が設けられている。この壁体36と外カップ31の側壁34との間には排出路をなす隙間が形成されている。また、内カップ32の下方には、円環状の水平部材37、筒状の内周鉛直部材38、筒状の外周鉛直部材39、底部に位置する円環状の底面部材40によって屈曲路が形成されている。この屈曲路によって、気液分離部が構成されている。
【0024】
外カップ31と外周鉛直部材39との間における底面部材40には、回収した液体を排出する排液口41が形成されており、この排液口41には排液管42が接続されている。一方、内周鉛直部材38と外周鉛直部材39との間における底面部材40には、ウェハWの周辺の雰囲気を排出する排気口43が形成されており、この排気口43には排気管44が接続されている。
【0025】
スピンチャック20の上方には、スピンチャック20との間でウェハWの受け渡しを行うために、上方に開放された開口部45が形成されている。開口部45はカップ30に設けられており、上壁部35の内周端により例えば平面視円形に形成される。
【0026】
中間カップ33は、上端33aが下端33bよりも内周側に位置し、内周側から外周側に向かって下方に傾斜した円環状の部品である。中間カップ33の内周端すなわち上端は、スピンチャック20の上面よりも高い位置にあり、具体的には、スピンチャック20の上面に保持されるウェハWよりも高い位置にある。また、中間カップ33の内周端は、ウェハWの周縁よりも外方に位置している。
【0027】
図2に示すように、中間カップ33の下端33bは、外カップ31の内周面に設けられた複数の支持部46によって支持されている。これらの複数の支持部46は、外カップ31の周方向に沿って間隔をおいて配置されている。なお、中間カップ33を支持する構造は特に限定されず、中間カップ33は、例えば内カップ32に固定されてもよい。
【0028】
外カップ31のX方向負側には、Y方向に沿って延伸したレール100が形成されている。レール100は、例えば外カップ31のY方向負側の外方からY方向正側の外方まで形成されている。レール100には、アーム101が設けられている。
【0029】
アーム101には、処理液としてのレジスト液を供給するノズル102が支持されている。アーム101は、ノズル駆動部103によってレール100上を移動自在である。これにより、ノズル102は、外カップ31のY方向負側の外方に設置された待機部104から外カップ31内のウェハWの中心部上方まで移動できる。また、ノズル駆動部103によって、アーム101は昇降自在であり、ノズル102の高さを調節できる。
【0030】
(上壁部の内周端の位置)
次に、外カップ31における上壁部35の内周端の位置について、
図2に加えて更に
図3を参照して説明する。
図3は、カップ30の部分拡大図である。
【0031】
先ず、
図2及び
図3に示すように、中間カップ33の半径方向(
図3では水平方向)における中間カップ33の上端33aから下端33bまでの長さをLとする。なお、中間カップ33の上端33aとは、中間カップ33の上面側の傾斜面と下面側の傾斜面のうち、上面側傾斜面の上端のことであり、中間カップ33の下端33bとは、上面側傾斜面の下端のことである。
【0032】
次に、中間カップ33の傾斜した部分における上記の長さLの1/2の位置を中間カップ33の中央部Pと定義する。本実施形態では、中間カップ33の中央部Pは、スピンチャック20の上面よりも低い位置にある。
【0033】
外カップ31の上壁部35の内周端(本実施形態では鉛直壁35bの内周面)は、上記の中間カップ33の中央部Pよりも外周側に位置している。なお、上壁部35の内周端が側壁34近傍に位置すると、レジスト液の回収機能が低下するため、外カップ31の側壁34と中間カップ33の中央部Pとの間における上壁部35の内周端の位置は、要求されるレジスト液の回収能力等に応じて適宜設定される。
【0034】
また、外カップ31の内周端が上述の中央部Pよりも外周側に位置する場合においても、外カップ31の内周端とスピンチャック20に保持されるウェハWの周縁との間隔は、スピンチャック20に対するウェハWの受け渡しが可能となる間隔に設定される。例えば、外カップ31の内周端とスピンチャック20に保持されるウェハWの周縁との間隔は80mm以上に設定される。
【0035】
なお、
図3に示した例では、鉛直方向に切断した中間カップ33の断面形状が直線状であるが、例えば
図4に示すように、中間カップ33は、下端33bから上端33aまでの間に傾斜角度が異なる複数の傾斜面を含むように形成されることもある。中間カップ33がそのように屈曲部を有する形状においても、中央部Pは、中間カップ33の断面形状が直線状である場合と同様に定義される。また、中間カップ33は、
図5に示すように、断面形状が上側に突出する曲線状であってもよい。中間カップ33がそのように断面視曲線状である場合においても、中央部Pは、中間カップ33の断面形状が直線状である場合と同様に定義される。なお、中間カップ33は、液だまりが生じない形状(具体的には、上面が水平に延びる水平部や外周側に向かって上方に傾斜する上方傾斜部がない形状)であれば、断面形状が下側に突出する曲線状であってもよいし、断面形状が波状(S字状を含む。)であってもよい。
【0036】
図6は、カップ内排気時の気流を模式的に示した説明図であり、図中の黒太線の矢印は気流の向きを示し、矢印の太さは流速の大きさを示している。なお、
図6(a)は従来のカップにおける気流を示し、
図6(b)は本実施形態にかかるカップにおける気流を示している。
【0037】
図6(a)に示すように、従来のカップにおいては、外カップ31の上壁部35の内周端が中間カップ33の上端近傍に位置していることによって、上壁部35の内周端と中間カップ33の上端との間に形成される間隙が小さい。このため、その間隙に向けて気流が流入することによって、気流の流速が上昇し、ウェハWの周縁部近傍においても流速が上昇し易い。
【0038】
一方、
図6(b)に示すように、本実施形態にかかるカップにおいては、上壁部35の内周端が中間カップ33の中央部Pよりも外周側に位置していることにより、上壁部35の内周端と中間カップ33の上端との間隙が十分に大きい。
図6(b)に示す場合であっても、上壁部35と中間カップ33の間隙に気流が流入することで流速は上昇するが、間隙が大きいことによって、従来のカップと比較して流速が上昇し難い。加えて、流速の上昇箇所は、従来のカップよりもウェハWの周縁部から離れた箇所となる。
【0039】
このため、
図6(b)に示したカップ30においては、ウェハWの周縁部における気流の流速を抑制することができ、ウェハWの周縁部と中心部における流速差を低減できる。その結果、ウェハWに形成されるレジスト膜の面内均一性が向上する。
【0040】
なお、従来のカップは、ウェハWの周縁部から飛散するレジスト液を回収するために、上壁部35の内周端をウェハWの周縁部に可能な限り近接させるという技術思想に基づいて設計されていた。しかしながら、本実施形態のように、上壁部35の内周端が中間カップ33の中央部Pよりも外周側に位置していたとしても、レジスト液を十分に回収することは可能である。
【0041】
以上、本実施形態にかかるカップ30を備えるレジスト塗布装置1について説明した。このレジスト塗布装置1においては、外カップ31の上壁部35の内周端が、中間カップ33の中央部Pよりも外周側に位置していることによって、カップ内排気時のウェハWの周縁部における気流の流速を抑制できる。これによって、ウェハWの周縁部と中心部との流速差を低減でき、膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0042】
なお、レジスト塗布処理時におけるウェハWは、所定の回転数で回転するが、例えば直径200mmのウェハを用いる場合の回転数は、直径300mmのウェハを用いる場合の回転数よりも高回転に設定されることが通常である。このため、直径200mm以下のウェハを用いた処理においては、ウェハの周縁部と中心部で流速差が拡大し易い。したがって、本実施形態にかかるカップ30は、直径200mm以下のウェハを用いる場合の処理に適用することが有用である。
【0043】
(中間カップ33の位置と距離D1との関係の説明)
上述したウェハ周縁部の流速を抑制する効果は、中間カップ33の位置を当該中間カップ33の上端から外カップ31の上壁部35までの最短距離である距離D1により特定することによっても得ることができる。
【0044】
従前のカップにおいては、中間カップが、上壁部35までの最短距離が距離D1よりも短い部分を有していない。すなわち、中間カップの中で、その内周端である上端が、上壁部35までの最短距離が最も短くなっている。それに対し、本実施形態にかかるカップ30は、中間カップ33が、上壁部35までの最短距離が当該中間カップ33の内周端である上端33aよりも短い部分を有する。そのため、上壁部35と中間カップ33との間隙に形成される流路において、最も気流が集中する位置が、中間カップ33の内周端である上端33aよりも外側であり、すなわち、ウェハWの周縁部に近い当該流路の入口から離れている。したがって、カップ内排気時のウェハWの周縁部における気流の流速を抑制できる。
【0045】
中間カップ33における、上壁部35までの最短距離が当該中間カップ33の内周端である上端33aよりも短い部分は、ウェハWの上面よりも低い位置にある。これにより、当該部分で気流が停滞しても、停滞した気流がウェハW上に逆流するリスクを低減させることができる。
【0046】
また、外カップ31の内周端は、平面視で、中間カップ33の上端33aよりも、上記短い部分に近い位置にある。
【0047】
図7の例では、中間カップ33の中央部Pから上壁部35までの最短距離である距離D
2が、中間カップ33の上端33aから外カップ31の上壁部35までの最短距離である距離D
1よりも短い。また、
図7に示した例においては、距離D
1は、中間カップ33の上端33aから鉛直壁35bの内周面の下端までの距離であり、距離D
2は、中間カップ33の中央部Pから鉛直壁35bの内周面の下端までの距離である。なお、中間カップ33の中央部Pは、前述した中央部Pと同様に定義されたものである。
【0048】
従前のカップにおいては、距離D
1が距離D
2よりも短いが、
図7のカップ30においては、距離D
2が距離D
1よりも短く、すなわち、距離D
1が距離D
2よりも長い。そのため、
図7のカップ30では、上壁部35と中間カップ33との間隙が従前のカップより大きい。これによって、その間隙に流入する気流の流速が抑制され、ウェハWの周縁部における流速も抑えることができる。距離D
2が距離D
1よりも短い場合は、この観点でもウェハWの周縁部における流速も抑えることができる。
【0049】
(開口部45の大きさ)
ウェハWの直径が200mmの場合、例えば、開口部45を平面視で直径が300mmより大きい円形に形成することで、以下の(A)、(B)を実現できる。
(A)外カップ31の上壁部35の内周端が、中間カップ33の中央部Pよりも外周側に位置する。
(B)中間カップ33が、上壁部35までの最短距離が当該中間カップ33の内周端である上端33aよりも短い部分を有する。
【0050】
平面視で円形の開口部45の直径が300mm以下であっても、上記(A)、(B)を実現可能であるが、300mmより大きくすることにより、ウェハWの周縁部における流速をより効果的に抑えることができることを、本発明者らは確認している。
【0051】
直径200mmのウェハWの処理に、平面視での直径が300mmを超える開口部を有する外カップを設けると、レジスト塗布装置の大型化、それに伴うレジスト塗布装置の塗布・現像システムへの搭載数の減少による処理効率の低下を招く懸念がある。そのため、直径200mmのウェハWの処理に、平面視での直径が300mmを超える開口部45を有する外カップ31を採用しにくい側面がある。しかし、直径200mmのウェハW用のカップ30の外カップ31に、平面視での直径が300mmを超える開口部45を設け、外カップ31の外径を200mmのウェハW用の従来のカップと同じとした場合に、ウェハWの周縁部における流速を効果的に抑えることができることを、本発明者らは確認している。
【0052】
なお、200mmのウェハ用のカップ30における開口部45の直径を300mmより大きくする場合、当該直径は400mm以下とすることが好ましい。レジスト塗布装置の大型化を抑制するためである。
【0053】
(外カップの端部突起)
図8に示すように、外カップ31においては、上壁部35の内周端部から下方に向かって延びた筒状(例えば円筒状)の突起として端部突起47を設けることが好ましい。
図8に示した例では、上壁部35の鉛直壁35bの下端に端部突起47が形成されている。
【0054】
図8中の点線矢印は、排気流に含まれるレジスト液のミストを示している。
図8に示すように、端部突起47が設けられた場合には、外カップ31の内方から上昇するミストが端部突起47に接触するため、排気流の上流側へのミストの逆流を抑制することができる。
【0055】
(外カップの中間突起)
図8に示すように、外カップ31においては、側壁34よりも内周側、かつ、上壁部35の内周端部よりも外周側に、上壁部35から下方に向かって延びた筒状(例えば円筒状)の突起として中間突起48を設けることが好ましい。
図8に示した例では、傾斜壁35aの中央付近に中間突起48が形成されている。中間突起48が設けられる場合も、排気流に含まれるミストの逆流を抑制する効果が得られる。
【0056】
ミストの逆流抑制効果を高める観点では、以上で説明した端部突起47と中間突起48の両方を設けることが好ましい。また、各突起47、48の両方を設ける場合には、中間突起48の下端は、端部突起47の下端よりも低い位置にあることが好ましい。これにより、外カップ31の側壁34近傍において上昇するミストが中間突起48に接触し易くなり、ミストの逆流抑制効果を高めることができる。
【0057】
(外カップの外周突起)
図9に示すように、外カップ31においては、上壁部35の外周面には、当該外周面から上方に向かって延びた筒状(例えば円筒状)の突起として外周突起49が設けられていてもよい。
図9に示した例では、傾斜壁35aの外周端部に外周突起49が形成されている。外周突起49は外周側から内周側に向かって上方に傾斜していてもよい。
【0058】
外周突起49が設けられる場合、開口部45からカップ30の外部に漏れたミストを外周突起49により回収することができ、上記ミストが外周突起49より外側に到達するのを抑制することができる。外周突起49により回収され液体化したミストは、例えば、上壁部35における外周突起49の内周側の根元部分に形成された貫通孔(図示せず)を介して、カップ30内に導かれ、排液口41を介して排出される。
【0059】
(中間カップ33の変形例)
図10に示すように、中間カップ33は、上側に位置する第1中間カップ51と下側に位置する第2中間カップ52とを含み、第1中間カップ51及び第2中間カップ52それぞれが、上端が下端よりも内周側に位置するように傾斜していてもよい。
【0060】
第1中間カップ51と第2中間カップ52との間にはほとんど気流が流れないよう、例えば、第1中間カップ51と第2中間カップ52との外周端同士が接続されている。また、第1中間カップ51と第2中間カップ52との間に回収された液体は、第2中間カップ52の外周部に形成された貫通孔(図示せず)を介して、内カップ32上に落下し、排液口41を介して排出される。
【0061】
なお、第1中間カップ51と第2中間カップ52とを有する中間カップ33の中央部Pとは、第1中間カップ51の中央部である。具体的には、第1中間カップ51の半径方向における第1中間カップ51の上端から下端までの長さをLとしたとき、第1中間カップ51の傾斜した部分における上記の長さLの1/2の位置が、第1中間カップ51の中央部であり、中間カップ33の中央部Pである。
【0062】
(外カップ31の変形例)
図11及び
図12に示すように、外カップ31の上壁部35は、取込領域ARが、その内周側に環状に設けられていてもよい。取込領域ARは、カップ30の上方から当該カップ30内への気体の取込口35cが形成された領域である。
【0063】
取込口35cは、例えば、取込領域ARに、外カップ31の周方向に沿って複数設けられ、それぞれが平面視で外カップ31の周方向に延びる円弧状に形成される。
【0064】
図11及び
図12の外カップ31は、上壁部35に上述のように取込領域ARが設けられているため、取込領域ARが設けられていない場合と比較して、実質的に上壁部35の内周端が外周側に位置している。そのため、
図11及び
図12の外カップ31は、取込領域ARが設けられていないものと比較して、上壁部35と中間カップ33との間隙に流入する気流の流速が上昇し難い。
【0065】
また、
図11及び
図12の外カップ31は、カップ30の上方から当該カップ30に向かって流れる気体を、開口部45とは別に設けられている取込口35cを介してカップ30内に取り込んでいる。そのため、カップ30の上方から開口部45を通りカップ30内に流れる気流の流速を抑えることができる。
【0066】
したがって、
図11及び
図12の外カップ31は、カップ内排気時のウェハWの周縁部における気流の流速を抑制できる。
【0067】
なお、取込口35cの内周端は、外カップ31の強度が確保できる範囲で極力内側に位置することが好ましい。また、取込領域ARの開口率は、外カップ31の強度が確保できる範囲で大きいことが好ましい。
取込口35cの外周端は、中間カップ33の中央部Pよりも外周側に位置していてもよい。
【0068】
(取込口35cの変形例)
図13に示すように、取込口35cは、取込領域ARに、外カップ31の周方向及び径方向それぞれに沿って複数設けられていてもよく、すなわち、取込口35cの取込領域ARがメッシュ状に形成されてもよい。
【0069】
(外カップの端部突起)
図8に示すように、外カップ31においては、上壁部35の内周端部から下方に向かって延びた筒状(例えば円筒状)の突起として端部突起47を設けることが好ましい。
図8に示した例では、上壁部35の鉛直壁35bの下端に端部突起47が形成されている。
【0070】
図8中の点線矢印は、排気流に含まれるレジスト液のミストを示している。
図8に示すように、端部突起47が設けられた場合には、外カップ31の内方から上昇するミストが端部突起47に接触するため、排気流の上流側へのミストの逆流を抑制することができる。
【0071】
(外カップの中間突起)
図14に示すように、取込領域ARが設けられた外カップ31においては、側壁34よりも内周側、かつ、上壁部35の取込領域ARよりも外周側に、上壁部35から下方に向かって延びた筒状(例えば円筒状)の突起として中間突起50を設けることが好ましい。中間突起50が設けられる場合、排気流に含まれるミストの逆流を抑制する効果が得られる。
【0072】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲、後述の本開示の技術的範囲に属する構成例及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0073】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0074】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)基板に処理液を供給して前記基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部が収容されたカップと、
前記基板保持部の上方に形成された開口部と、を備え、
前記カップは、
外壁を構成する外カップと、
前記外カップの内側に設けられた内カップと、
前記外カップの内側において前記内カップの上方に設けられた中間カップと、を備え、
前記外カップは、筒状の側壁と、前記側壁の上部から内周側に延びた上壁部と、を有し、
前記中間カップは、上端が下端よりも内周側に位置するように傾斜し、
前記中間カップの半径方向における当該中間カップの上端から下端までの長さの1/2の位置を中央部と定義したとき、前記上壁部の内周端は、前記中央部よりも外周側に位置している、基板処理装置。
(2)基板に処理液を供給して前記基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部が収容されたカップと、
前記基板保持部の上方に形成された開口部と、を備え、
前記カップは、
外壁を構成する外カップと、
前記外カップの内側に設けられた内カップと、
前記外カップの内側において前記内カップの上方に設けられた中間カップと、を備え、
前記外カップは、筒状の側壁と、前記側壁の上部から内周側に延びた上壁部と、を有し、
前記中間カップは、
上端が下端よりも内周側に位置するように傾斜し、
前記上壁部までの最短距離が、当該中間カップの上端よりも短い部分を有する、基板処理装置。
(3)基板に処理液を供給して前記基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部が収容されたカップと、
前記基板保持部の上方に形成された開口部と、を備え、
前記カップは、
外壁を構成する外カップと、
前記外カップの内側に設けられた内カップと、
前記外カップの内側において前記内カップの上方に設けられた中間カップと、を備え、
前記外カップは、筒状の側壁と、前記側壁の上部から内周側に延びた上壁部と、を有し、
前記中間カップは、上端が下端よりも内周側に位置するように傾斜し、
前記上壁部は、前記カップの上方から当該カップ内への気体の取込口が形成された取込領域が、その内周側に環状に形成されている、基板処理装置。
(4)前記中央部は、前記基板保持部の上面よりも低い位置にある、(1)に記載の基板処理装置。
(5)前記短い部分は、前記基板保持部の上面よりも低い位置にある、(2)に記載の基板処理装置。
(6)前記上壁部の内周端に、下方に向かって延びた端部突起が設けられている、(1)(2)、(4)または(5)に記載の基板処理装置。
(7)前記側壁よりも内周側、かつ、前記上壁部の内周端よりも外周側に、下方に向かって延びた中間突起が設けられている、(1)、(2)、(4)~(6)のいずれかに記載の基板処理装置。
(8)前記外カップは、
前記上壁部の内周端から下方に向かって延びた端部突起と、
前記側壁よりも内周側、かつ、前記上壁部の内周端よりも外周側において、前記上壁部から下方に向かって延びた中間突起と、を有し、
前記中間突起の下端は、前記端部突起の下端よりも低い位置にある、(1)、(2)、(4)または(5)に記載の基板処理装置。
(9)前記側壁よりも内周側、かつ、前記上壁部の前記取込領域よりも外周側に、下方に向かって延びた中間突起が設けられている、(3)に記載の基板処理装置。
(10)前記開口部は、前記上壁部の内周端により形成され、
前記基板の直径が200mmであり、
前記開口部は、平面視で直径300mmより大きい円形に形成されている、前記(1)、(2)、(4)~(8)のいずれか1に記載の基板処理装置。
(11)前記中間カップの上端は、前記基板保持部の上面よりも高い位置にある、(1)~(10)のいずれかに記載の基板処理装置。
(12)鉛直方向に沿って切断した前記中間カップの断面形状が直線状である、(1)~(11)のいずれかに記載の基板処理装置。
【符号の説明】
【0075】
1 レジスト塗布装置
20 スピンチャック
30 カップ
31 外カップ
32 内カップ
33 中間カップ
34 側壁
35 上壁部
45 開口部
D1 中間カップの上端から上壁部までの最短距離
L 中間カップの上端から下端までの半径方向における長さ
P 中央部
W ウェハ