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特開2024-144139表面処理組成物、表面処理方法、および半導体基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144139
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】表面処理組成物、表面処理方法、および半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241003BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 647B
H01L21/304 622Q
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020006
(22)【出願日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2023052687
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023117307
(32)【優先日】2023-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長野 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】吉野 努
(72)【発明者】
【氏名】西海 眞史
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA19
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158BA09
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED04
3C158ED05
3C158ED10
3C158ED24
5F057AA08
5F057AA27
5F057BA15
5F057BB15
5F057BB16
5F057BB19
5F057DA03
5F057EA03
5F057EA07
5F057EA26
5F057EA33
5F157AA96
5F157BC07
5F157BD02
5F157BD04
5F157BE33
5F157BF22
5F157BF23
5F157BF38
5F157BF45
5F157BF58
5F157BF63
5F157BF72
(57)【要約】
【課題】研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣をさらに低減しうる手段を提供する。
【解決手段】下記(A)~(C)成分を含み、pHが7.0を超える、表面処理組成物:(A)成分:下記式(a)で表され、pKaが前記表面処理組成物のpHより大きいアミノ基を2以上有する、ピペラジン系化合物、(B)成分:アニオン性高分子、(C)成分:式:A-COO-NH (Aは、炭素数1以上10以下のアルキル基またはフェニル基である)で示される緩衝剤:

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)成分を含み、pHが7.0を超える、表面処理組成物:
(A)成分:下記式(a)で表され、pKaが前記表面処理組成物のpHより大きいアミノ基を2以上有する、ピペラジン系化合物
【化1】

上記式(a)中、Rは、水素原子または第1級~第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基であり;Rは、第1級~第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基である、
(B)成分:アニオン性高分子
(C)成分:式:A-COO-NH (Aは、炭素数1以上10以下のアルキル基またはフェニル基である)で示される緩衝剤。
【請求項2】
前記(A)成分は、Rは、水素原子または第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基であり;Rは、第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項3】
前記(A)成分は、Rは、水素原子または第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上3以下のアルキル基であり;Rは、第1級アミノ基で置換された炭素数1以上3以下のアルキル基である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の含有量は、前記表面処理組成物に対して、0.10質量%以上である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
前記(A)成分は、前記ピペラジン系化合物に存在するアミノ基のpKaのうち最大のpKa(最大pKa)と前記表面処理組成物のpHとの差(=最大pKa-pH)が0.5以上であるアミノ基を有する、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
前記(A)成分は、前記ピペラジン系化合物に存在するアミノ基のpKaのうち最大のpKa(最大pKa)と前記表面処理組成物のpHとの差(=最大pKa-pH)が1.30を超えるアミノ基を有する、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
前記(B)成分は、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、およびポリ(カルボン酸-スルホン酸)、ならびにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
前記(C)成分は、酢酸アンモニウムを含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項9】
下記(D)成分をさらに含む、請求項1に記載の表面処理組成物:
(D)成分:ノニオン性高分子。
【請求項10】
前記(D)成分は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロースおよびブテンジオール-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のノニオン性高分子を含む、請求項9に記載の表面処理組成物。
【請求項11】
下記(E)成分をさらに含む、請求項1に記載の表面処理組成物:
(E)成分:pH調整剤。
【請求項12】
前記pH調整剤が、アンモニアまたは酢酸である、請求項11に記載の表面処理組成物。
【請求項13】
前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、水、ならびにpH調整剤およびノニオン性高分子からなる群より選択される少なくとも一種から実質的に構成される、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の表面処理組成物を用いて窒素-ケイ素結合を有する材料または酸化ケイ素を含む研磨済研磨対象物を表面処理して、前記研磨済研磨対象物の表面の残渣を低減する、表面処理方法。
【請求項15】
前記表面処理は、リンス研磨処理または洗浄処理により行われる、請求項14に記載の表面処理方法。
【請求項16】
前記残渣は、砥粒残渣および有機物残渣の少なくとも一方を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、
砥粒を含む研磨用組成物を用いて、窒素-ケイ素結合を有する材料または酸化ケイ素を含む研磨前半導体基板を研磨することによって、研磨済半導体基板を得、
請求項1~13のいずれか1項に記載の表面処理組成物を用いて、前記研磨済半導体基板を表面処理すること、
を含む半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理組成物、表面処理方法、および半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、デバイスを製造する際に、物理的に半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカ、アルミナ、セリア等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法であり、研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、酸化珪素、窒化珪素や、金属等からなる配線、プラグなどである。
【0003】
CMP工程後の半導体基板表面には、不純物(異物または残渣とも称する)が多量に残留している。不純物には、CMPで使用された研磨用組成物由来の砥粒、金属、防食剤、界面活性剤等の有機物、研磨対象物であるシリコン含有材料、金属配線やプラグ等を研磨することによって生じたシリコン含有材料や金属、さらには各種パッド等から生じるパッド屑等の有機物などが含まれる。
【0004】
半導体基板表面がこれらの不純物により汚染されると、半導体の電気特性に悪影響を与え、デバイスの信頼性が低下する可能性がある。したがって、CMP工程後に洗浄工程を導入し、半導体基板表面からこれらの不純物を除去することが望ましい。
【0005】
かような洗浄用組成物として、例えば、特許文献1には、特定の原子を含み、分子量が100以上である有機化合物と、pH調整剤と、0~1質量%の砥粒と、を含む研磨用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-189899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された研磨用組成物によれば、CMP後の研磨対象物の表面に残留する不純物を十分に除去することができる。しかしながら、半導体基板について要求される品質が高くなってきていることに伴い、半導体基板の表面において異物(砥粒残渣、有機物残渣等)をより低減することができる技術が求められている。
【0008】
したがって、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣をさらに低減しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、特定の構造を有するピペラジン系化合物、アニオン性高分子、および緩衝剤として作用するモノカルボン酸アンモニウムを含むアルカリ性の表面処理組成物により上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、上記目的は、下記(A)~(C)成分を含み、pHが7.0を超える、表面
処理組成物によって達成される:
(A)成分:下記式(a)で表され、pKaが前記表面処理組成物のpHより大きいアミノ基を2以上有する、ピペラジン系化合物
【0011】
【化1】
【0012】
上記式(a)中、Rは、水素原子または第1級、第2級もしくは第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基であり;Rは、第1級、第2級もしくは第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基である、
(B)成分:アニオン性高分子
(C)成分:式:A-COO-NH (Aは、炭素数1以上10以下のアルキル基またはフェニル基である)で示される緩衝剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣をさらに低減しうる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、下記(A)~(C)成分を含み、pHが7.0を超える、表面処理組成物を提供する:
(A)成分:下記式(a)で表され、pKaが前記表面処理組成物のpHより大きいアミノ基を2以上有する、ピペラジン系化合物
【0015】
【化2】
【0016】
上記式(a)中、Rは、水素原子または第1級、第2級もしくは第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基であり;Rは、第1級、第2級もしくは第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基である、
(B)成分:アニオン性高分子
(C)成分:式:A-COO-NH (Aは、炭素数1以上10以下のアルキル基またはフェニル基である)で示される緩衝剤。
【0017】
上記構成を有する表面処理組成物を、以下、「本発明に係る表面処理組成物」または「
本発明の一形態に係る表面処理組成物」とも称することがある。また、本明細書において、「pKaが表面処理組成物のpHより大きいアミノ基」を「大pKaアミノ基」または「本発明に係る大pKaアミノ基」とも称する。
【0018】
かような本発明に係る表面処理組成物によれば、研磨済研磨対象物(特に、窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)の表面に残留する残渣(例えば、砥粒残渣、有機物残渣)をさらに効率よく低減しうる。
【0019】
本発明者らは、かような構成によって、研磨済研磨対象物の表面における残渣を効率よく除去しうるメカニズムを以下のように推測している。
【0020】
本発明に係る表面処理組成物は、特定の(A)~(C)成分を含む。このうち、(A)成分は、上記式(a)で表され、pKaが表面処理組成物のpHより大きいアミノ基(大pKaアミノ基)を複数(2以上)有する。(A)成分の大pKaアミノ基は、表面処理組成物のpHより大きいpKaを有するため、アミノ基は表面処理組成物中で容易に解離して(水素イオンを受け取って)、より正に帯電する。研磨済研磨対象物(特に窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)の表面は、アルカリ条件下では、負に帯電する。このため、(A)成分は、研磨済研磨対象物(特に窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)の表面に対して相互作用(吸着)し、所謂保護膜のように働く。ここで、(C)成分として含まれるモノカルボン酸アンモニウム(特に、(C)成分に含まれるモノカルボン酸アニオン)は、(A)成分と相互作用することにより、研磨済研磨対象物(特に窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)の表面に対して(A)成分の吸着(保護膜の形成)を促進すると推測される。
【0021】
また、(B)成分は、アニオン性である(すなわち、表面処理組成物中で負に帯電する)。このため、(A)成分のアミノ基のうち研磨済研磨対象物と相互作用(吸着)しなかったアミノ基は、(B)成分に対しても相互作用(吸着)する。すなわち、正に帯電した(A)成分の大pKaアミノ基は、負に帯電した研磨済研磨対象物表面および(B)成分双方と相互作用し、(B)成分は(A)成分を介して研磨済研磨対象物上に強固に吸着し、研磨済研磨対象物上で保護膜(立体反発層)として作用する。加えて、(B)成分は、負に帯電しているので、研磨済研磨対象物(特に窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)のゼータ電位をさらに負側にシフトさせる。このため、研磨済研磨対象物(特に窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)と(B)成分との間の静電反発がより強くなる。このため、本発明に係る表面処理組成物によれば、残渣を効率よく除去することができる。
【0022】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみに限定されず、特許請求の範囲内で種々改変することができる。また、本明細書に記載される実施の形態は、任意に組み合わせることにより、他の実施の形態とすることができる。
【0024】
本明細書において、「(メタ)アクリル」との語は、アクリルおよびメタクリルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリル酸」との語は、アクリル酸およびメタクリル酸の双方を包含する。
【0025】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。本明細書において、「Aおよび/またはB」は、AおよびBの少なくとも一方を意味し、AおよびBの両方、または、AもしくはBのいずれか一方を包含する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0026】
[残渣]
本明細書において、残渣とは、研磨済研磨対象物の表面に付着した異物を表す。残渣の例は、特に制限されないが、例えば、研磨対象物由来の残渣、後述する有機物残渣、研磨用組成物に含まれる砥粒由来のパーティクル残渣(砥粒残渣)、パーティクル残渣および有機物残渣以外の成分からなる残渣、パーティクル残渣および有機物残渣の混合物等のその他の残渣等が挙げられる。これらのうち、本発明に係る表面処理組成物によれば、砥粒残渣(パーティクル残渣)や有機物残渣を特に効率よく除去できる。すなわち、本発明の一実施形態では、残渣は、砥粒残渣(パーティクル残渣)および有機物残渣の少なくとも一方を含む。
【0027】
総残渣数とは、種類によらず、全ての残渣の総数を表す。総残渣数は、ウェーハ欠陥検査装置を用いて測定することができる。また、残渣数とは、特定の残渣の総数を表す。残渣数の測定方法の詳細は、後述の実施例に記載する。
【0028】
本明細書において、有機物残渣とは、研磨済研磨対象物(表面処理対象物)表面に付着した異物のうち、有機低分子化合物や有機高分子化合物等の有機物や有機塩等からなる成分を表す。
【0029】
研磨済研磨対象物に付着する有機物残渣は、例えば、後述の研磨工程もしくはリンス研磨工程において使用したパッドから発生するパッド屑、または研磨工程において用いられる研磨用組成物もしくはリンス研磨工程において用いられる表面処理組成物に含まれる添加剤に由来する成分等が挙げられる。
【0030】
なお、有機物残渣とその他の異物とは色および形状が大きく異なることから、異物が有機物残渣であるか否かの判断は、SEM観察によって目視にて行うことができる。また、異物が有機物残渣であるか否かの判断は、必要に応じて、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)による元素分析にて判断してもよい。有機物残渣数は、ウェーハ欠陥検査装置、およびSEMまたはEDX元素分析を用いて測定することができる。
【0031】
[研磨済研磨対象物]
本明細書において、研磨済研磨対象物とは、研磨工程において研磨された後の研磨対象物を意味する。研磨工程としては、特に制限されないが、CMP工程であることが好ましい。
【0032】
本発明に係る研磨済研磨対象物に含まれる材料としては特に制限されないが、Si系材料がある。(A)成分および(B)成分、特に(B)成分の吸着による保護膜(立体反発層)の形成がより促進され、本発明の効果をより顕著に得ることができるとの観点から、研磨済研磨対象物は、窒化ケイ素(Si)等の窒素-ケイ素結合を有する材料を含む基板(研磨済研磨対象物)であることが好ましく、窒化ケイ素(Si)等の窒素-ケイ素結合を有する材料を含む表面(層、膜)に対して、本発明に係る表面処理組成物を用いた表面処理を施すことがより好ましく、窒化ケイ素(Si)等の窒素-ケイ素結合を有する材料から構成される表面(層、膜)に対して、本発明に係る表面処理組成物を用いた表面処理を施すことが特に好ましい。なお、研磨済研磨対象物は、複数の材料により構成されていてもよい。
【0033】
また、(A)成分および(B)成分、特に(B)成分の吸着による保護膜(立体反発層)の形成がより促進され、本発明の効果をより顕著に得ることができるとの観点から、研磨済研磨対象物は、酸化ケイ素(SiO)を含む基板(研磨済研磨対象物)であることが好ましく、オルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOSタイプ酸化ケイ素膜(以下、単に「TEOS」、「TEOS膜」とも称する)、HDP(High Density Plasma)膜、USG(Undoped Silicate Glass)膜、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、BPSG(Boron-Phospho Silicate Glass)膜、RTO(Rapid Thermal Oxidation)膜(層)に対して、本発明に係る表面処理組成物を用いた表面処理を施すことがより好ましく、TEOSタイプ酸化ケイ素膜(層)に対して、本発明に係る表面処理組成物を用いた表面処理を施すことが特に好ましい。なお、研磨済研磨対象物は、複数の材料により構成されていてもよい。
【0034】
[表面処理組成物]
本発明に係る表面処理組成物は、研磨済研磨対象物の表面における残渣(特に砥粒残渣および有機物残渣)を低減するために使用される。
【0035】
本明細書において、(A)成分としてのピペラジン系化合物を、単に「本発明に係るピペラジン系化合物」または「ピペラジン系化合物」とも称する。また、「pKaが表面処理組成物のpHより大きいアミノ基」を「大pKaアミノ基」または「本発明に係る大pKaアミノ基」とも称する。(B)成分としてのアニオン性高分子を、単に「本発明に係るアニオン性高分子」または「アニオン性高分子」とも称する。(C)成分としての式:A-COO-NH (Aは、炭素数1以上10以下のアルキル基またはフェニル基である)で示される緩衝剤を、単に「本発明に係る緩衝剤」または「本発明に係るモノカルボン酸アンモニウム」もしくは「モノカルボン酸アンモニウム」とも称する。
【0036】
<(A)成分>
本発明に係る表面処理組成物は、(A)成分として、下記式(a)で表され、pKa(酸解離定数)が表面処理組成物のpHより大きいアミノ基を2以上有する、ピペラジン系化合物を含む。
【0037】
【化3】
【0038】
上記式(a)において、Rは、水素原子または第1級、第2級もしくは第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。また、Rは、第1級、第2級もしくは第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。
【0039】
上記式(a)において、RおよびRは、互いに同じであっても、または異なっていてもよい。また、RおよびRとしての炭素数1以上10以下のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。
【0040】
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基が挙げられる。
【0041】
分岐鎖状アルキル基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、イソヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-イソプロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、1,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2-メチル-1-イソプロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチル-1-イソプロピルブチル基、2-メチル-1-イソプロピル基、1-tert-ブチル-2-メチルプロピル基、イソデシル基等が挙げられる。
【0042】
環状(脂環式)アルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数3以上10以下のシクロアルキル基が挙
げられる。
【0043】
なかでも、RおよびRとしてのアルキル基は、いずれも直鎖状または分岐鎖状であると好ましく、直鎖状であるとより好ましい。
【0044】
上記アルキル基について、炭素数の上限は、残渣低減効果をより向上するという観点から、8以下であると好ましく、6以下であるとより好ましく、5以下であるとさらに好ましく、3以下であると特に好ましい。一方、炭素数の下限は、2以上であると好ましい。ゆえに、一例として、RおよびRとしてのアルキル基の炭素数は、1以上8以下であると好ましく、1以上6以下であるとより好ましく、1以上5以下であるとさらに好ましく、1以上3以下であるとさらにより好ましく、2または3であると特に好ましく、3であると最も好ましい。
【0045】
上記アルキル基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基の少なくとも一のアミノ基で置換されていてもよいし、非置換であってもよい。なお、本明細書において、「第1級アミノ基」とは、-NHを意図する。同様に、「第2級アミノ基」とは、窒素原子上に水素原子および有機基をそれぞれ1つずつ有し、当該有機基を構成する炭素原子の1つと上記窒素原子との結合が単結合である構造の官能基(-NHR;ただし、Rは有機基を表す)を意図する。また、同様に、「第3級アミノ基」とは、窒素原子上に同一または異なる有機基を2つ有し、各有機基を構成する炭素原子の1つと上記窒素原子との結合がいずれも単結合である構造の官能基(-N(R)(R);ただし、RおよびRは、それぞれ独立して有機基を表す)を意図する。なお、上記第2級アミノ基(-NHR)を構成するR、ならびに上記第3級アミノ基(-N(R)(R))を構成するRおよびRとしての有機基とは、炭素原子を含む基を意味する。
【0046】
上記R、RまたはRは、それぞれ独立して、炭化水素基であると好ましく、アルキル基またはアリール基であるとより好ましく、アルキル基であるとより好ましい。
【0047】
上記R、RおよびRとしてのアルキル基の炭素数は、特に制限されないが、(A)成分自体の除去性に優れるという観点から、1以上10以下であると好ましい。ここで、炭素数1以上10以下のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。このようなアルキル基の各具体例は、上記RおよびRとしてのアルキル基について挙げた具体例と同様のものが挙げられる。
【0048】
上記アルキル基を有する第2級アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基などの炭素数1以上10以下のアルキルアミノ基が挙げられる。また、上記のようなアルキル基を有する第3級アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基などの炭素数2以上20以下のジアルキルアミノ基が挙げられる。
【0049】
上記式(a)において、RおよびRとしてのアルキル基が第1級~第3級アミノ基のいずれかで置換される場合、当該アルキル基は、第1級または第3級アミノ基で置換されていると好ましく、第1級アミノ基で置換されているとより好ましい。上記形態により、残渣をより効果的に低減できる。
【0050】
より具体的には、RおよびRとしてのアルキル基が第1級~第3級アミノ基のいずれかで置換される場合の、当該アルキル基は、第1級アミノ基(-NH)で置換されたメチル基、第1級アミノ基(-NH)で置換されたエチル基、第1級アミノ基(-NH)で置換されたn-プロピル基、ジメチルアミノ基で置換されたメチル基、ジメチルアミノ基で置換されたエチル基、またはジメチルアミノ基で置換されたn-プロピル基であることが好ましく、第1級アミノ基(-NH)で置換されたエチル基、第1級アミノ基(-NH)で置換されたn-プロピル基、またはジメチルアミノ基置換されたエチル基であることがより好ましく、第1級アミノ基(-NH)で置換されたエチル基、または第1級アミノ基(-NH)で置換されたn-プロピル基であることがさらに好ましく、第1級アミノ基(-NH)で置換されたn-プロピル基であることが特に好ましい。
【0051】
なお、上記式(a)において、RおよびRの少なくとも一方が第1級~第3級アミノ基のいずれかで置換されたアルキル基であるが、好ましくはRが水素原子でありかつRが第1級~第3級アミノ基のいずれかで置換されたアルキル基である、またはRおよびRの双方が第1級~第3級アミノ基のいずれかで置換されたアルキル基であり、より好ましくはRが水素原子でありかつRが第1級アミノ基で置換されたアルキル基である、またはRおよびRの双方が第1級または第3級アミノ基で置換されたアルキル基であり、特に好ましくはRが水素原子でありかつRが第1級アミノ基で置換されたアルキル基である、またはRおよびRの双方が第1級アミノ基で置換されたアルキル基である。上記形態により、残渣をより効果的に低減できる。
【0052】
具体的には、式(a)で表されるピペラジン系化合物としては、1-メチルピペラジン、1-エチルピペラジン、1-プロピルピペラジン、アミノメチルピペラジン、アミノエチルピペラジン、アミノプロピルピペラジン、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-エチルピペラジン、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-プロピルピペラジン、1-(2-ジエチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン、1-(2-ジエチルアミノエチル)-4-エチルピペラジン、1-(2-ジエチルアミノエチル)-4-プロピルピペラジン、1,4-ビス(3-アミノメチル)ピペラジン、1,4-ビス(3-アミノエチル)ピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジンなどが挙げられる。
【0053】
(A)成分としてのピペラジン系化合物は、pKaが表面処理組成物のpHより大きいアミノ基(大pKaアミノ基)を2以上有する。ここで、本発明に係るピペラジン系化合物中に存在する大pKaアミノ基の数が1であるまたは存在しないと、ピペラジン系化合物が研磨済研磨対象物の表面および(B)成分の一方のみしか相互作用できないまたは双方とも相互作用できない。このため、(B)成分の吸着による保護膜(立体反発層)が研磨済研磨対象物の表面上に十分形成できず、その結果、残渣を十分除去できない。残渣低減効果をより向上するという観点から、本発明に係るピペラジン系化合物中に存在する大pKaアミノ基の数は、2以上5以下であることが好ましく、2以上4以下であることがより好ましく、2または3であることがさらに好ましく、2であることが特に好ましい。
【0054】
また、(A)成分としてのピペラジン系化合物における、pKaと表面処理組成物のpHとの差はなるべく大きいことが残渣低減効果をより向上するという点で好ましい。具体的には、ピペラジン系化合物に存在するアミノ基のpKaのうち最大のpKa(最大pKa)と表面処理組成物のpHとの差(=最大pKa-pH)が、例えば、0.5以上であり、0.6以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.30を超えることがさらに好ましく、1.50以上であることがさらにより好ましく、1.60以上であることが特に好ましく、2.00以上であることが最も好ましい。ピペラジン系化合物に存在するアミノ基のpKaのうち最大のpKa(最大pKa)と表面処理組成物のpHとの差(=最大pKa-pH)は大きいほど好ましいため、上記差の上限は、特に制限されないが、例えば、4.0以下であり、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3.0以下である。
【0055】
pKa(酸解離定数)は、水中におけるピペラジン系化合物の25℃での酸解離平衡の各成分の濃度から算出される数値であり、具体的には下記式で算出される数値Kaを常用対数化した数値である。
【0056】
【数1】
【0057】
本明細書において、ピペラジン系化合物に存在するアミノ基のpKa(酸解離定数)は、構造式描写ソフトであるChemSketchを用いて算出した。詳細には、各化合物の構造式を書き出し、その構造からpKaを自動算出した。
【0058】
本明細書において、ピペラジン系化合物に存在するアミノ基のpKaのうち最大のpKa(最大pKa)は、上記にて測定された各アミノ基のpKaのうち、最大値となる値を採用する。
【0059】
残渣低減効果をより向上するという観点から、(A)成分は、上記式(a)で表され、pKaが前記表面処理組成物のpHより大きいアミノ基を2以上有する、ピペラジン系化合物(本発明に係るピペラジン系化合物)のみであることが好ましい。
【0060】
すなわち、(A)成分は、Rは、水素原子または第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)であり;Rは、第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物を含むことが好ましい。当該形態において、(A)成分は、Rは、水素原子または第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)であり;Rは、第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物のみであることがより好ましい。
【0061】
(A)成分は、Rは、水素原子または第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)であり;Rは、第1級もしくは第3級アミノ基で置換された炭素数1以上5以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物を含むことが好ましい。当該形態において、(A)成分は、Rは、水素原子または第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)であり;Rは、第1級もしくは第3級アミノ基で置換された炭素数1以上5以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物のみであることがより好ましい。
【0062】
(A)成分は、Rは、水素原子または第1級もしくは第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上3以下のアルキル基で(特に直鎖状のアルキル基)あり;Rは、第1級アミノ基で置換された炭素数1以上3以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物を含むことが特に好ましい。当該形態において、(A)成分は、Rは、水素原子または第1級もしくは第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上3以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)であり;Rは、第1級アミノ基で置換された炭素数1以上3以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物のみであることがより好ましい。
【0063】
(A)成分は、RおよびRは、それぞれ独立して、第1級アミノ基で置換された炭素数1以上3以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物を含むことが最も好ましい。当該形態において、(A)成分は、RおよびRは、それぞれ独立して、第1級アミノ基で置換された炭素数1以上3以下のアルキル基(特に直鎖状のアルキル基)である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物のみであることがより好ましい。
【0064】
(A)成分として用いられうるピペラジン系化合物は、合成によって製造されても、または市販品であってもよい。(A)成分としてのピペラジン系化合物は、1種単独でも、または2種以上組み合わせても用いることができる。
【0065】
表面処理組成物中の(A)成分の含有量は、使用する(A)成分の種類や所望の効果に応じて適宜設定される。(A)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、0.03質量%以上であることがさらにより好ましく、0.10質量%以上であることがさらに好ましく、0.25質量%超であることがさらにより好ましく、0.30質量%以上であることが特に好ましく、0.50質量%以上であることが最も好ましい。このような下限値とすることにより、(A)成分が研磨済研磨対象物(特に窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)に対してより効果的に(B)成分の相互作用(吸着)を向上し、保護膜(立体反発層)を形成できる。このため、残渣をより効率よく除去することができる。また、表面処理組成物中の(A)成分の含有量の上限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.2質量%以下がさらに好ましく、1.10質量%以下が特に好ましい。このような上限値とすることにより、(A)成分自体が残渣となることが抑制され、残渣を効率よく除去することができる。本発明の一実施形態では、(A)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.001質量%以上2.0質量%以下である。本発明の一実施形態では、(A)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.005質量%以上1.5質量%以下である。本発明の一実施形態では、(A)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.01質量%以上1.2質量%以下である。本発明の一実施形態では、(A)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.03質量%以上1.2質量%未満である。本発明の一実施形態では、(A)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.10質量%以上1.2質量%以下である。本発明の一実施形態では、(A)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.25質量%を超え1.2質量%以下である。本発明の一実施形態では、(A)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.30質量%以上1.2質量%以下である。本発明の一実施形態では、(A)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.50質量%以上1.10質量%以下である。なお、表面処理組成物が2種以上の(A)成分を含む場合、(A)成分の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0066】
<(B)成分>
本発明に係る表面処理組成物は、(B)成分として、アニオン性高分子を含む。ここでいう「アニオン性高分子」とは、分子内に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基またはその塩を有する高分子をいう。
【0067】
アニオン性高分子は、上記(A)成分と相互作用して(A)成分に吸着し、研磨済研磨対象物上に保護膜(立体反発層)を形成する。また、(B)成分は、負に帯電しているので、研磨済研磨対象物(特に窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)のゼータ電位をさらに負側にシフトさせる。このため、研磨済研磨対象物(特に窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)と(B)成分との間の静電反発がより強くなる。このため、本発明に係る表面処理組成物によれば、研磨済研磨対象物の表面における残渣の除去を促進する(砥粒残渣や有機物残渣等の付着や再付着を抑制する)ことができる。
【0068】
アニオン性高分子は、同一(単独重合体;ホモポリマー)または相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する高分子であって、典型的には重量平均分子量(Mw)が1,000以上の化合物であり得る。アニオン性高分子が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0069】
アニオン性高分子の例としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸共重合体、ポリ(アクリル酸-ポリメタクリル酸)共重合体、無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸等のポリカルボン酸;ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸共重合体、ポリナフタレンスルホン酸、アクリルアミド-t-ブチルスルホン酸等のポリスルホン酸;ポリ(カルボン酸-スルホン酸)(カルボン酸とスルホン酸とのコポリマー)、ならびにこれらの塩などが挙げられる。また、このような主鎖構造を有するもののみならず、アニオン性ポリマー構造を側鎖に有するグラフト共重合体も好適に用いることができる。
【0070】
アニオン性高分子が塩の形態である場合には、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸およびポリ(カルボン酸-スルホン酸)等の、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等の第2族元素の塩などが挙げられる。
【0071】
これらアニオン性高分子は、1種単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0072】
これらの中でも、残渣を除去する効果をさらに向上するという観点から、アニオン性高分子は、カルボン酸基、スルホン酸基またはその塩を有することが好ましく、カルボン酸基もしくはスルホン酸基またはそのアルカリ金属塩を有することがより好ましく、カルボン酸基またはスルホン酸基を有することがさらに好ましく、カルボン酸基を有することが特に好ましい。
【0073】
(B)成分として、上記アニオン性高分子(本発明に係るアニオン性高分子)以外の化合物を含んでもよい。残渣低減効果をより向上するという観点から、(B)成分は、上記アニオン性高分子(本発明に係るアニオン性高分子)のみであることが好ましい。
【0074】
すなわち、(B)成分は、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、およびポリ(カルボン酸-スルホン酸)(カルボン酸とスルホン酸とのコポリマー)、ならびにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子を含むことが好ましい。当該形態において、(B)成分は、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、およびポリ(カルボン酸-スルホン酸)(カルボン酸とスルホン酸とのコポリマー)、ならびにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子のみであることがより好ましい。
【0075】
(B)成分は、ポリ(メタ)アクリル酸およびポリスチレンスルホン酸、ならびにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子を含むことが好ましい。当該形態において、(B)成分は、ポリ(メタ)アクリル酸およびポリスチレンスルホン酸、ならびにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子のみであることがより好ましい。当該形態は、研磨済研磨対象物が窒素-ケイ素結合を有する材料を含む場合に特に適用される。
【0076】
(B)成分は、ポリ(メタ)アクリル酸およびポリスチレンスルホン酸、ならびにそれらのアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子を含むことが好ましい。当該形態において、(B)成分は、ポリ(メタ)アクリル酸およびポリスチレンスルホン酸、ならびにそれらのアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子のみであることがより好ましい。当該形態は、研磨済研磨対象物が窒素-ケイ素結合を有する材料を含む場合に特に適用される。
【0077】
(B)成分は、ポリ(メタ)アクリル酸およびそのアルカリ金属塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。当該形態において、(B)成分は、ポリ(メタ)アクリル酸およびそのアルカリ金属塩の少なくとも一方のみであることがより好ましい。当該形態は、研磨済研磨対象物が窒素-ケイ素結合を有する材料を含む場合に特に適用される。
【0078】
また、(B)成分は、ポリスチレンスルホン酸およびポリ(カルボン酸-スルホン酸)(カルボン酸とスルホン酸とのコポリマー)、ならびにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子を含むことが好ましい。当該形態において、(B)成分は、ポリスチレンスルホン酸およびポリ(カルボン酸-スルホン酸)(カルボン酸とスルホン酸とのコポリマー)、ならびにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子のみであることがより好ましい。当該形態は、研磨済研磨対象物が酸化ケイ素を含む場合に特に適用される。
【0079】
(B)成分は、ポリスチレンスルホン酸およびポリ(カルボン酸-スルホン酸)(カルボン酸とスルホン酸とのコポリマー)、ならびにそれらのアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子を含むことが好ましい。当該形態において、(B)成分は、ポリスチレンスルホン酸およびポリ(カルボン酸-スルホン酸)(カルボン酸とスルホン酸とのコポリマー)、ならびにそれらのアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子のみであることがより好ましい。当該形態は、研磨済研磨対象物が酸化ケイ素を含む場合に特に適用される。
【0080】
(B)成分は、ポリスチレンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。当該形態において、(B)成分は、ポリスチレンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩の少なくとも一方のみであることがより好ましい。当該形態は、研磨済研磨対象物が酸化ケイ素を含む場合に特に適用される。
【0081】
アニオン性高分子の重量平均分子量(Mw)の下限は、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることがさらに好ましく、10,000以上であることがさらにより好ましく、20,000以上であることがさらに好ましく、200,000以上であることが特に好ましく、200,000を超えることが最も好ましい。また、アニオン性高分子の重量平均分子量(Mw)の上限は、5,000,000以下であることが好ましく、3,000,000以下であることがより好ましく、2,000,000以下であることが特に好ましく、1,500,000以下であることが最も好ましい。一例として、アニオン性高分子の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上5,000,000以下であることが好ましく、2,000以上4,000,000以下であることがより好ましく、5,000以上2,000,000以下であることがさらに好ましく、10,000以上2,000,000以下であることがさらにより好ましく、20,000以上2,000,000以下であることがさらに好ましく、200,000以上2,000,000以下であることが特に好ましく、200,000を超え1,500,000以下であることが最も好ましい。
【0082】
なお、アニオン性高分子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いたポリエチレングリコール換算の値として測定することができ、測定方法の詳細は、後述の実施例に記載する。
【0083】
(B)成分として用いられうるアニオン性高分子は、合成によって製造されても、または市販品であってもよい。市販品の例としては、ポリアクリル酸(東亞合成株式会社製)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー・ファインケム株式会社製)、カルボン酸とスルホン酸とのコポリマー(ナトリウム塩)(東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
【0084】
(B)成分としてのアニオン性高分子は、1種単独でも、または2種以上組み合わせても用いることができる。
【0085】
表面処理組成物中の(B)成分の含有量は、使用する(B)成分の種類や所望の効果に応じて適宜設定される。(B)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上がさらに好ましく、0.01質量%以上が特に好ましく、0.02質量%以上が最も好ましい。また、表面処理組成物中の(B)成分の含有量の上限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。本発明の一実施形態では、(B)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.0001質量%以上1.0質量%以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.001質量%以上0.5質量%以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.005質量%以上0.3質量%以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.01質量%以上0.1質量%以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.02質量%以上0.1質量%以下である。なお、表面処理組成物が2種以上の(B)成分を含む場合、(B)成分の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0086】
上記に代えてまたは上記に加えて、表面処理組成物中の(A)成分と(B)成分との混合比は、使用する(A)成分や(B)成分の種類ならびに所望の効果に応じて適宜設定される。(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、0.5以上であることが好ましく、1を超えることがより好ましく、2以上であることがさらに好ましく、2を超えることがさらにより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20を超えることが特に好ましく、25以上であることが最も好ましい。(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、110以下であることが好ましく、55以下であることがより好ましく、50未満であることがさらに好ましく、30以下であることが特に好ましい。本発明の一実施形態では、(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、0.5以上15以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、1を超え10以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、2以上110以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、2超110以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、10以上110以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、20超110以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、25以上55以下である。本発明の一実施形態では、(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、25以上50未満である。本発明の一実施形態では、(B)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(B)成分含有比)(質量比)は、25以上30以下である。なお、表面処理組成物が2種以上の(A)成分を含む場合、(A)成分の含有量は、これらの合計量を意図する。同様にして、表面処理組成物が2種以上の(B)成分を含む場合、(B)成分の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0087】
<(C)成分>
本発明に係る表面処理組成物は、上記(A)および(B)成分に加えて、(C)成分を含む。(C)成分は、式:A-COO-NH で示される緩衝剤(モノカルボン酸アンモニウム)を含む。本明細書において、「緩衝剤」とは、pHを一定に保つために表面処理組成物(溶液)に緩衝作用を付与する物質を意味する。
【0088】
(C)成分は、上記式:A-COO-NH で示される緩衝剤以外の成分(例えば、公知の緩衝剤)を含んでもよいが、本発明による効果のさらなる向上などの観点から、(
C)成分は、上記式:A-COO-NH で示される緩衝剤から構成される((C)成分は上記式:A-COO-NH で示される緩衝剤である)ことが好ましい。(C)成分の存在により、研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を効率よく除去しうる。すなわち、本発明の好ましい形態では、(C)成分が、上記式:A-COO-NH で示される緩衝剤から構成される((C)成分は上記式:A-COO-NH で示される緩衝剤である)。
【0089】
上記式:A-COO-NH において、Aは、炭素数1以上10以下のアルキル基またはフェニル基である。ここで、アルキル基としては、上記式(a)のRおよびRとしてのアルキル基について挙げた具体例と同様のアルキル基が例示される。これらのうち、本発明による効果のさらなる向上などの観点から、Aは、炭素数1以上8以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましく、メチル基(酢酸アンモニウム)またはエチル基(プロピオン酸アンモニウム)であることがさらに好ましく、メチル基(酢酸アンモニウム)であることが特に好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、緩衝剤は、Aが炭素数1以上8以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基である上記式:A-COO-NH で示される。本発明のより好ましい形態では、緩衝剤は、Aが炭素数1以上3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基である上記式:A-COO-NH で示される。本発明のさらなる好ましい形態では、緩衝剤は、Aがメチル基またはエチル基である上記式:A-COO-NH で示される(緩衝剤が酢酸アンモニウムまたはプロピオン酸アンモニウムである)。本発明の特に好ましい形態では、(C)成分(緩衝剤)は酢酸アンモニウムを含む。本発明の最も好ましい形態では、(C)成分(緩衝剤)は酢酸アンモニウムである。
【0090】
表面処理組成物中の(C)成分の含有量は、使用する(C)成分の種類や所望の効果に応じて適宜設定される。(C)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることが特に好ましい。また、表面処理組成物中の(C)成分の含有量の上限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下特に好ましい。本発明の一実施形態では、(C)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.001質量%以上0.5質量%以下である。本発明の一実施形態では、(C)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.005質量%以上0.3質量%以下である。本発明の一実施形態では、(C)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.01質量%以上0.1質量%以下である。なお、表面処理組成物が2種以上の(C)成分を含む場合、(C)成分の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0091】
上記に代えてまたは上記に加えて、表面処理組成物中の(A)成分と(C)成分との混合比は、使用する(A)成分や(C)成分の種類ならびに所望の効果に応じて適宜設定される。(C)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(C)成分含有比)(質量比)は、0.01以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、0.5を超えることがさらにより好ましく、5以上であることが特に好ましく、10以上であることが最も好ましい。(C)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(C)成分含有比)(質量比)は、50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、20以下であることが特に好ましい。本発明の一実施形態では、(C)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(C)成分含有比)(質量比)は、0.01以上50以下である。本発明の一実施形態では、(C)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(C)成分含有比)(質量比)は
、0.1以上40以下である。本発明の一実施形態では、(C)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(C)成分含有比)(質量比)は、0.5以上40以下である。本発明の一実施形態では、(C)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(C)成分含有比)(質量比)は、0.5超40以下である。本発明の一実施形態では、(C)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(C)成分含有比)(質量比)は、5以上40以下である。本発明の一実施形態では、(C)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(C)成分含有比)(質量比)は、10以上20以下である。なお、表面処理組成物が2種以上の(A)成分を含む場合、(A)成分の含有量は、これらの合計量を意図する。同様にして、表面処理組成物が2種以上の(C)成分を含む場合、(C)成分の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0092】
<(D)成分>
本発明に係る表面処理組成物は、上記(A)~(C)成分を必須に含むが、これらに加えて、さらにノニオン性高分子を含むことが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、表面処理組成物は、(D)成分をさらに含む:
(D)成分:ノニオン性高分子。
【0093】
ここでいう「ノニオン性高分子」とは、分子内に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基や、アミノ基、第四級アンモニウム基等のカチオン性基を有しない高分子をいう。
【0094】
ノニオン性高分子は、研磨済研磨対象物の表面の濡れ性を向上させることにより、研磨済研磨対象物の表面における残渣、特に有機物残渣の除去を促進する(有機物残渣等の付着や再付着を抑制する)ことができる。
【0095】
ノニオン性高分子は、同一(単独重合体;ホモポリマー)または相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する高分子であって、典型的には重量平均分子量(Mw)が1,000以上の化合物であり得る。ノニオン性高分子が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0096】
ノニオン性高分子の例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリビニルエーテル類(ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなど)、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性の多糖類、アルギン酸多価アルコールエステル、水溶性尿素樹脂、デキストリン誘導体、カゼイン等が挙げられる。また、このような主鎖構造を有するもののみならず、ノニオン性ポリマー構造を側鎖に有するグラフト共重合体も好適に用いることができる。さらに、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ブテンジオール-ビニルアルコール共重合体のような共重合体も用いることができる。これらノニオン性高分子は、1種単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0097】
残渣(特に有機物残渣)を除去する効果をさらに向上するという観点から、ノニオン性高分子の好適な例としては、以下のものが挙げられる:ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ブテンジオール-ビニルアルコール共重合体等。ゆえに、一実施形態において、(D)成分としてのノニオン性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロースおよびブテンジオール-ビニルアルコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含むと好ましい。さらに他の実施形態において、ノニオン性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリN-ビニルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1種を含むと好ましい。さらに他の実施形態において、ノニオン性高分子は、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンを含むと好ましい。さらに他の一実施形態において、ノニオン性高分子は、ポリビニルアルコールを含むと好ましい。これらのノニオン性高分子は、特に有機物残渣の付着・再付着が効果的に抑制され、残渣を除去する効果がさらに向上する。
【0098】
(D)成分として、上記ノニオン性高分子以外の化合物を含んでもよい。残渣低減効果をより向上するという観点から、(D)成分は、上記ノニオン性高分子のみであることが好ましい。
【0099】
ノニオン性高分子の重量平均分子量(Mw)の下限は、1,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、5,000を超えることがさらに好ましく、8,000以上であることが特に好ましく、10,000以上であることが最も好ましい。また、ノニオン性高分子の重量平均分子量(Mw)の上限は、1,000,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましく、80,000以下であることがさらに好ましく、50,000以下であることが特に好ましく、50,000未満であることが最も好ましい。一例として、ノニオン性高分子の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上1,000,000以下であることが好ましく、3,000以上100,000以下であることがより好ましく、5,000超80,000以下であることがさらに好ましく、8,000以上50,000以下であることが特に好ましく、10,000以上50,000未満であることが最も好ましい。
【0100】
なお、ノニオン性高分子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いたポリエチレングリコール換算の値として測定することができ、測定方法の詳細は、後述の実施例に記載する。
【0101】
(D)成分として用いられうるノニオン性高分子は、合成によって製造されても、または市販品であってもよい。市販品の例としては、JMR(登録商標)-10HH、JMR(登録商標)-3HH(いずれも日本酢ビ・ポバール株式会社)、ピッツコール(登録商標)K30A、K30L(いずれも第一工業製薬株式会社)、CMCダイセル(登録商標)1150、1170(いずれもダイセルミライズ株式会社)、GE191-104、107(いずれも昭和電工株式会社)などが挙げられる。
【0102】
(D)成分としてのノニオン性高分子は、1種単独でも、または2種以上組み合わせても用いることができる。
【0103】
表面処理組成物が(D)成分を含む際の、表面処理組成物中の(D)成分の含有量は、使用する(D)成分の種類や所望の効果に応じて適宜設定される。(D)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましく、0.03質量%以上が特に好ましい。また、表面処理組成物中の(D)成分の含有量の上限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以下が特に好ましい。本発明の一実施形態では、(D)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.0001質量%以上1.5質量%以下である。本発明の一実施形態では、(D)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.001質量%以上1.0質量%以下である。本発明の一実施形態では、(D)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.01質量%以上0.5質量%以下である。本発明の一実施形態では、(D)成分の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.03質量%以上0.3質量%以下である。なお、表面処理組成物が2種以上の(D)成分を含む場合、(D)成分の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0104】
上記に代えてまたは上記に加えて、表面処理組成物中の(A)成分と(D)成分との混合比は、使用する(A)成分や(D)成分の種類ならびに所望の効果に応じて適宜設定される。(D)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(D)成分含有比)(質量比)は、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましく、0.1を超えることがさらにより好ましく、1以上であることが特に好ましく、5以上であることが最も好ましい。(D)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(D)成分含有比)(質量比)は、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、3以下であることがさらにより好ましく、3未満であることが特に好ましい。本発明の一実施形態では、(D)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(D)成分含有比)(質量比)は、0.01以上10以下である。本発明の一実施形態では、(D)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(D)成分含有比)(質量比)は、0.05以上5以下である。本発明の一実施形態では、(D)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(D)成分含有比)(質量比)は、0.1以上3以下である。本発明の一実施形態では、(D)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(D)成分含有比)(質量比)は、0.1超3未満である。本発明の一実施形態では、(D)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(D)成分含有比)(質量比)は、1以上15以下である。本発明の一実施形態では、(D)成分に対する(A)成分の混合比((A)成分/(D)成分含有比)(質量比)は、5以上10以下である。なお、表面処理組成物が2種以上の(A)成分を含む場合、(A)成分の含有量は、これらの合計量を意図する。同様にして、表面処理組成物が2種以上の(D)成分を含む場合、(D)成分の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0105】
<pH調整剤((E)成分)>
本発明に係る表面処理組成物は、上記(A)~(C)成分を必須に含み、上記(D)成分を含んでもよい。上記(D)成分に代えてまたは上記(D)成分に加えて、さらにpH調整剤を含むことが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、表面処理組成物は、(E)成分をさらに含む:
(E)成分:pH調整剤。
【0106】
pH調整剤は、特に制限されず、表面処理組成物の分野で用いられる公知のpH調整剤を用いることができ、公知の酸、塩基、またはこれらの塩等を用いることができる。pH調整剤の例としては、例えば、ギ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アミノ酸、アントラニル酸等のカルボン酸や、スルホン酸(イセチオン酸、カンファースルホン酸など)、有機ホスホン酸(ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸など)等の有機酸;硝酸、炭酸、塩酸、硫酸、リン酸、次亜リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸などの無機酸;水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)等のアルカリ金属の炭酸塩;第2族元素の水酸化物;アンモニア(水酸化アンモニウム);水酸化第四級アンモニウム化合物等の有機塩基等が挙げられる。pH調整剤は、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。また、これらpH調整剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0107】
これらのうち、(A)成分の含有量が比較的少なく、表面処理組成物のpHが低い場合には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアが好ましく、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアがより好ましく、アンモニアが特に好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、pH調整剤は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムおよびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である。本発明のより好ましい形態では、pH調整剤は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である。本発明の特に好ましい形態では、pH調整剤は、アンモニアである。
【0108】
一方、(A)成分の含有量が比較的多く、表面処理組成物のpHが高い場合には、酢酸、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
【0109】
本発明の一実施形態では、pH調整剤は、アンモニアまたは酢酸である。
【0110】
表面処理組成物中のpH調整剤の含有量は、下記に詳述される所望の表面処理組成物のpH値となるような量を適宜選択すればよい。
【0111】
<表面処理組成物のpH>
本発明に係る表面処理組成物のpHは、7.0を超える(本発明に係る表面処理組成物はアルカリ性である)。表面処理組成物のpHが7.0以下であると、研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分除去できない。本発明による効果のさらなる向上(特に、残渣のより効率的な除去)などの観点から、表面処理組成物のpHは、7.5以上であることが好ましく、7.5を超えることがより好ましく、8.0以上であることが特に好ましい。表面処理組成物のpHは、12.5未満であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましく、10.0未満であることがさらに好ましく、9.0以下であることがさらにより好ましく、9.0未満であることが特に好ましく、8.5未満であることが最も好ましい。すなわち、本発明の一実施形態では、表面処理組成物のpHは、7.5以上12.5未満である。本発明の一実施形態では、表面処理組成物のpHは、7.5超10.0以下である。本発明の一実施形態では、表面処理組成物のpHは、8.0以上10.0以下である。本発明の一実施形態では、表面処理組成物のpHは、8.0以上10.0未満である。本発明の一実施形態では、表面処理組成物のpHは、8.0以上9.0以下である。本発明の一実施形態では、表面処理組成物のpHは、8.0以上9.0未満である。本発明の一実施形態では、表面処理組成物のpHは、8.0以上8.5未満である。なお、表面処理組成物のpHは、実施例に記載の方法により測定した値を採用する。
【0112】
<溶媒>
本発明に係る表面処理組成物は、溶媒を含むことが好ましい。溶媒は、各成分を分散または溶解させる機能を有する。溶媒は、水を含むことが好ましく、水のみであることがより好ましい。また、溶媒は、各成分の分散または溶解のために、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。この場合、用いられる有機溶媒としては、例えば、水と混和する有機溶媒であるアセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの有機溶媒を水と混合せずに用いて、各成分を分散または溶解した
後に、水と混合してもよい。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0113】
水は、研磨済研磨対象物の汚染や他の成分の作用を阻害することを防ぐという観点から、残渣をできる限り含有しない水が好ましい。例えば、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下である水が好ましい。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる残渣イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。
【0114】
<シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体>
本発明に係る表面処理組成物は、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体をさらに含んでもよい。ここで、シクロデキストリンは、デンプンから酵素反応によって合成されるブドウ糖を構成単位とする環状オリゴ糖であり、ブドウ糖が6つ結合して環状構造となるα-シクロデキストリン、7つ結合して環状構造となるβ-シクロデキストリン、8つ結合して環状構造となるγ-シクロデキストリンがある。また、シクロデキストリン誘導体は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリンなどの、上記シクロデキストリンが有する水酸基を修飾したもの、メチル体、プロピル体、モノアセチル体、トリアセチル体及びモノクロロトリアジニル体等の、化学修飾体などが挙げられる。
【0115】
表面処理組成物がシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体を含む際の、表面処理組成物中のシクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体の含有量は、使用するシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体の種類や所望の効果に応じて適宜設定される。シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が特に好ましい。また、表面処理組成物中のシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体の含有量の上限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。このような量であれば、表面処理組成物の貯蔵安定性を高めることができる。なお、表面処理組成物が2種以上のシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体を含む場合、上記含有量は、これらの合計量を意図する。同様にして、表面処理組成物がシクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体を組み合わせて含む場合、上記含有量は、これらの合計量を意図する。
【0116】
<カルボン酸化合物>
本発明に係る表面処理組成物は、カルボン酸化合物をさらに含んでもよい。
【0117】
ここで、カルボン酸化合物としては、カルボキシ基を有するものであれば特に制限されない。具体的には、WO 2021/230127に記載されるような、下記式(I)で示されるカルボン酸化合物が好適に使用できる。
【0118】
【化4】
【0119】
上記式(I)において、Rは、水素原子またはヒドロキシ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基である。ここで、Rは、水素原子であっても、無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基であっても、ヒドロキシ基で置換された炭素数1以上10以下のアルキル基であっても、カルボキシ基で置換された炭素数1以上10以下のアルキル基であっても、またはヒドロキシ基およびカルボキシ基双方で置換された炭素数1以上10以下のアルキル基であってもよい。好ましくは、Rは、水素原子またはヒドロキシ基で置換されたアルキル基である。
【0120】
ここで、アルキル基としては、上記式(a)で例示されたものと同様のアルキル基が例示される。Rは、好ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基である。アルキル基は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基に加えて、他の置換基を更に有していてもよい。他の置換基としては、例えば、ハロゲン原子及びアミノ基などが挙げられる。
【0121】
がヒドロキシ基で置換された炭素数1以上10以下のアルキル基である場合の、アルキル基に存在するヒドロキシ基の数は、好ましくは1以上10以下であり、より好ましくは1以上5以下であり、さらに好ましくは2以上4以下である。また、Rがカルボキシ基で置換された炭素数1以上10以下のアルキル基である場合の、アルキル基に存在するカルボキシ基の数は、好ましくは1以上5以下であり、より好ましくは1以上3以下であり、さらに好ましくは1または2である。
【0122】
なお、式(I)のカルボン酸化合物は、塩(無機塩、有機塩)の形態であってもよいが、塩の形態でないことが好ましい。
【0123】
式(I)のカルボン酸化合物がヒドロキシ基を有する(式(I)中のRがヒドロキシ基で置換された炭素数1以上10以下のアルキル基である)場合、ヒドロキシ基数は、例えば、2以上であり、好ましくは3以上である。ヒドロキシ基数の上限は、例えば、10以下であり、好ましくは8以下であり、より好ましくは5以下である。
【0124】
式(I)のカルボン酸化合物がカルボキシ基を有する(式(I)中のRがカルボキシ基で置換された炭素数1以上10以下のアルキル基である)場合、カルボキシ基数は、好ましくは2以上である。カルボキシ基数の上限は、例えば、10以下であり、好ましくは5以下である。カルボキシ基数は、特に好ましくは1である。
【0125】
式(I)のカルボン酸化合物がヒドロキシ基及びカルボキシ基双方を有する(式(I)中のRがヒドロキシ基およびカルボキシ基双方で置換された炭素数1以上10以下のアルキル基である)場合、カルボキシ基の個数に対するヒドロキシ基の個数の比〔ヒドロキシ基の個数/カルボキシ基の個数〕は、2以上10以下であることが好ましく、3以上8以下であることがより好ましく、5以上6以下であることが特に好ましい。
【0126】
式(I)のカルボン酸化合物としては、例えば、グルコン酸、ムチン酸、グリセリン酸、ヘプトン酸などが挙げられる。これらのうち、グルコン酸、ムチン酸、グリセリン酸が好ましく、グルコン酸、ムチン酸がより好ましく、グルコン酸が特に好ましい。なお、式(I)のカルボン酸化合物は、1種単独でも、または2種以上組み合わせても用いることができる。
【0127】
表面処理組成物が式(I)のカルボン酸化合物を含む際の、表面処理組成物中の式(I)のカルボン酸化合物の含有量は、使用する式(I)のカルボン酸化合物の種類や所望の効果に応じて適宜設定される。式(I)のカルボン酸化合物の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.01質量%以上が好ま
しく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が特に好ましい。また、表面処理組成物中の式(I)のカルボン酸化合物の含有量の上限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。なお、表面処理組成物が2種以上の式(I)のカルボン酸化合物を含む場合、上記含有量は、これらの合計量を意図する。
【0128】
<アルカノールアミン化合物>
本発明に係る表面処理組成物は、アルカノールアミン化合物をさらに含んでもよい。ここで、アルカノールアミンは、分子内に1つ以上のアミノ基(第1級、第2級または第3級アミノ基、好ましくは第1級アミノ基)と、1つ以上のヒドロキシ基と、を有する脂肪族化合物である。
【0129】
アルカノールアミンとしては、例えば、WO 2021/230127に記載されるような、下記式(II)または(III)で示されるアルカノールアミン化合物が好適に使用できる。
【0130】
【化5】
【0131】
上記式(II)において、Lは、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキレン基を表す。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基などが挙げられる。また、アルキレン基がヘテロ原子を有する場合の、置換基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、及びこれらの組合せが挙げられる。これらのうち、Lは、無置換もしくは酸素原子を有する炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、無置換もしくはヒドロキシ基を有する炭素数1以上6以下のアルキレン基であることがより好ましく、無置換の炭素数1以上6以下のアルキレン基であることが特に好ましい。Lがヒドロキシ基を有するアルキレン基である場合のヒドロキシ基数は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることが特に好ましい。
【0132】
上記式(III)において、Lは、単結合またはヘテロ原子を有していてもよい炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、好ましくは単結合である。アルキレン基としては、上記Lにおけるのと同様のアルキレン基が挙げられる。また、アルキレン基がヘテロ原子を有する場合の、置換基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、及びこれらの組合せが挙げられる。これらのうち、Lは、無置換もしくは酸素原子を有する炭素数1以上6以下のアルキレン基が好ましく、無置換もしくはヒドロキシ基を有する炭素数1以上6以下のアルキレン基がより好ましく、無置換の炭素数1以上6以下のアルキレン基が特に好ましい。
【0133】
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよいメチル基もしくはエチル基を表す。この際、R~Rは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。これらのうち、R~Rは水素原子であり、かつR~Rはメチル基であることが好ましい。R~Rは、置換基を有していてもよい。置換基としては、例
えば、ヒドロキシ基、アミノ基、およびハロゲン原子などが挙げられ、ヒドロキシ基が好ましい。
【0134】
~Rは、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を有していてもよいメチル基またはエチル基であることが好ましく、無置換のメチル基またはエチル基であることがより好ましい。
【0135】
なお、上記式(II)または(III)で表されるアルカノールアミン化合物は、無機酸塩または有機酸塩であってもよい。
【0136】
具体的には、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、2-アミノ-2-メチルプロパンジオ-ル(AMPD)、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジエチレングリコールアミン(DEGA)、2-(メチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(N-MAMP)、2-(アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(AAE)、及び2-(2-アミノエトキシ)エタノールが挙げられる。
【0137】
上記アルカノールアミン化合物は、1種単独でも、または2種以上組み合わせても用いることができる。
【0138】
表面処理組成物がアルカノールアミン化合物を含む際の、表面処理組成物中のアルカノールアミン化合物の含有量は、使用するアルカノールアミン化合物の種類や所望の効果に応じて適宜設定される。アルカノールアミン化合物の含有量は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、3質量%以上が特に好ましい。また、表面処理組成物中のアルカノールアミン化合物の含有量の上限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。なお、表面処理組成物が2種以上のアルカノールアミン化合物を含む場合、上記含有量は、これらの合計量を意図する。
【0139】
<界面活性剤>
本発明に係る表面処理組成物は、界面活性剤((A)~(E)成分は除く)をさらに含んでもよい。界面活性剤の種類は、特に制限はなく、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、および両性の界面活性剤のいずれであってもよい。
【0140】
<キレート剤>
本発明に係る表面処理組成物は、キレート剤をさらに含んでもよい。キレート剤としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。
【0141】
<他の添加剤>
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、他の添加剤を任意の割合で含有していてもよい。ただし、本発明の一形態に係る表面処理組成物の必須成分以外の成分は、異物(残渣)の原因となりうることから、できる限り添加しないことが望ましい。ゆえに、他の添加剤の添加量はできる限り少ないことが好ましい。他の添加剤としては、例えば、防カビ剤(防腐剤)、溶存ガス、還元剤、酸化剤等が挙げられる。本発明に係る表面処理組成物は、ノニオン性高分子を含み、かつアルカリ性である。このため、これらのうち、本発明に係る表面処理組成物は、防カビ剤(防腐剤)を含むことが好ましい。本発明に係る表面処理組成物が防カビ剤(防腐剤)を含む場合に使用できる、防カビ剤(防腐剤)は、特に制限されず、ノニオン性高分子
((B)成分)の種類に応じて適切に選択できる。具体的には、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(BIT)等のイソチアゾリン系防腐剤、およびフェノキシエタノール等が挙げられる。
【0142】
本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、ならびにノニオン性高分子((D)成分)、pH調整剤((E)成分)、水、有機溶媒、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、下記式(I)で示されるカルボン酸化合物、アルカノールアミン化合物、キレート剤、界面活性剤および防カビ剤(防腐剤)からなる群より選択される少なくとも一種から実質的に構成される。
【0143】
【化6】
【0144】
本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、pH調整剤((E)成分)、水、ならびにノニオン性高分子((D)成分)、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、上記式(I)で示されるカルボン酸化合物、アルカノールアミン化合物、キレート剤、界面活性剤および防カビ剤(防腐剤)からなる群より選択される少なくとも一種から実質的に構成される。
【0145】
本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、ノニオン性高分子((D)成分)、pH調整剤((E)成分)、水、ならびにシクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、上記式(I)で示されるカルボン酸化合物、アルカノールアミン化合物、キレート剤、界面活性剤および防カビ剤(防腐剤)からなる群より選択される少なくとも一種から実質的に構成される。
【0146】
本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、水、ならびにノニオン性高分子((D)成分)およびpH調整剤((E)成分)からなる群より選択される少なくとも一種から実質的に構成される。
【0147】
本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、水、ならびにノニオン性高分子((D)成分)、pH調整剤((E)成分)および防カビ剤(防腐剤)からなる群より選択される少なくとも一種から実質的に構成される。
【0148】
本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、ノニオン性高分子((D)成分)、pH調整剤((E)成分)および水から実質的に構成される。
【0149】
本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、ノニオン性高分子((D)成分)、pH調整剤((E)成分)、防カビ剤(防腐剤)および水から実質的に構成される。
【0150】
本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、pH調整剤((E)成分)および水から実質的に構成される。
【0151】
本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、pH調整剤((E)成分)、防カビ剤(防腐剤)および水から実質的に構成される。
【0152】
上記形態において、「表面処理組成物が、Xから実質的に構成される」とは、Xの合計含有量が、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意味する。好ましくは、表面処理組成物は、Xから構成される(上記合計含有量=100質量%)。例えば、「表面処理組成物が、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、水、ならびにノニオン性高分子((D)成分)およびpH調整剤((E)成分)からなる群より選択される少なくとも一種から実質的に構成される」とは、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、水、ノニオン性高分子((D)成分)およびpH調整剤((E)成分)の合計含有量が、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意味する。表面処理組成物が、ピペラジン系化合物((A)成分)、アニオン性高分子((B)成分)、緩衝剤((C)成分)、水、ならびにノニオン性高分子((D)成分)およびpH調整剤((E)成分)の少なくとも一方から構成される(上記合計含有量=100質量%)ことが好ましい。
【0153】
残渣(異物)除去効果のさらなる向上のため、本発明に係る表面処理組成物は、砥粒を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「砥粒を実質的に含有しない」とは、表面処理組成物全体に対する砥粒の含有量が0.01質量%未満である場合をいう。すなわち、本発明の一実施形態では、砥粒の含有量が、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、0.01質量%未満(下限:0質量%)である。
【0154】
<表面処理組成物の製造方法>
本発明に係る表面処理組成物の製造方法は、特に制限されず、例えば、(A)成分(上記式(a)で表され、pKaが前記表面処理組成物のpHより大きいアミノ基を2以上有する、ピペラジン系化合物)と、(B)成分(アニオン性高分子)と、(C)成分(緩衝剤)と、ならびに必要に応じて添加される他の添加剤を攪拌混合することにより得ることができる。各成分の詳細は上記の通りである。
【0155】
上記実施形態において、各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0156】
[表面処理方法]
本発明に係る表面処理組成物によると、研磨済研磨対象物の表面(特に、窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)に残留する残渣(特に砥粒残渣、有機物残渣)を十分に除去できる。したがって、本発明は、本発明に係る表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物を表面処理することを含む、表面処理方法を提供する。本発明に係る表面処理方法は、窒素-ケイ素結合を含む材料(シリコン材料)または酸化ケイ素を含む研磨済研磨対象物の表面処理に対して特に有効である。すなわち、本発明は、本発明に係る表面処理組成物を用いて、窒素-ケイ素結合を有する材料または酸化ケイ素を含む研磨済研磨対象物を表面処理して、前記研磨済研磨対象物の表面の残渣を低減する、表面処理方法を提供する。なお、本明細書において、「表面処理方法」とは、研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減する方法をいい、広義の洗浄を行う方法である。
【0157】
本発明に係る表面処理方法によれば、研磨済研磨対象物の表面(特に、窒素-ケイ素結合を有するまたは酸化ケイ素を含む研磨済基板)に残留する残渣(特に砥粒残渣、有機物残渣)を十分に除去することができる。すなわち、本発明は、本発明に係る表面処理組成物を用いて、窒素-ケイ素結合を含む材料(シリコン材料)または酸化ケイ素を含む研磨済研磨対象物を表面処理することを有する、前記研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減する方法を提供する。また、本発明は、本発明に係る表面処理組成物を用いて、窒素-ケイ素結合を含む材料(シリコン材料)または酸化ケイ素を含む研磨済研磨対象物を表面処理することを有する、前記研磨済研磨対象物の表面における砥粒残渣および有機物残渣の少なくとも一方(好ましくは砥粒残渣および有機物残渣)を低減する方法を提供する。
【0158】
本発明に係る表面処理方法は、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させる方法により行われる。
【0159】
表面処理方法としては、主として、(I)リンス研磨処理による方法、(II)洗浄処理による方法が挙げられる。すなわち、本発明の一実施形態では、表面処理方法は、リンス研磨処理方法または洗浄処理方法である(上記表面処理は、リンス研磨処理または洗浄処理によって行われる)。リンス研磨処理および洗浄処理は、研磨済研磨対象物の表面上の異物(砥粒(パーティクル)残渣、高分子やパッド屑等の有機物残渣、金属汚染物など)を除去し、清浄な表面を得るために実施される。以下、上記(I)および(II)について説明する。
【0160】
(I)リンス研磨処理
本発明に係る表面処理組成物は、リンス研磨処理において好適に用いられる。すなわち、本発明に係る表面処理組成物は、リンス研磨用組成物として好ましく用いることができる。リンス研磨処理は、研磨対象物について最終研磨(仕上げ研磨)を行い、研磨済研磨対象物を得た後、この研磨済研磨対象物の表面上の異物の除去を目的として、研磨パッドが取り付けられた研磨定盤(プラテン)上で行われる。このとき、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させることにより、リンス研磨処理が行われる。その結果、研磨済研磨対象物表面の異物は、研磨パッドによる摩擦力(物理的作用)および表面処理組成物による化学的作用によって除去される。異物のなかでも、特に砥粒(パーティクル)残渣や有機物残渣は、物理的な作用により除去されやすい。したがって、リンス研磨処理では、研磨定盤(プラテン)上で研磨パッドとの摩擦を利用することで、砥粒(パーティクル)残渣や有機物残渣を効果的に除去することができる。ここで、本発明に係る表面処理組成物を用いた表面処理では、研磨パッドによる摩擦力(物理的作用)および表面処理組成物による化学的作用によって研磨済研磨対象物表面がエッチングされうる。そして、このエッチングと共に砥粒残渣や有機物残渣が除去されるため、これらの残渣の低減効率がさらに向上する。また、この際、研磨済研磨対象物の表面に対して均一にエッチングされることから、表面粗さもまた低減できる。
【0161】
すなわち、本明細書において、リンス研磨処理、リンス研磨方法およびリンス研磨工程とは、それぞれ、研磨パッドを用いて表面処理対象物の表面粗さおよび当該表面における残渣を低減する処理、方法および工程をいう。
【0162】
具体的には、リンス研磨処理は、研磨工程後の研磨済研磨対象物表面を研磨装置の研磨定盤(プラテン)に設置し、研磨パッドと研磨済研磨対象物とを接触させてその接触部分に表面処理組成物を供給しながら、研磨済研磨対象物と研磨パッドとを相対摺動させることにより行うことができる。
【0163】
研磨装置としては、研磨対象物を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0164】
リンス研磨処理は、片面研磨装置、両面研磨装置のいずれを用いても行うことができる。また、上記研磨装置は、研磨用組成物の吐出ノズルに加え、表面処理組成物の吐出ノズルを備えていることが好ましい。研磨装置のリンス研磨処理時の稼働条件は特に制限されず、当業者であれば適宜設定可能である。
【0165】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、表面処理組成物が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0166】
リンス研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転数、ヘッド(キャリア)回転数は、10rpm(0.17s-1)以上100rpm(1.67s-1)以下であることが好ましく、研磨済研磨対象物にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.4kPa)以上10psi(68.9kPa)以下であることが好ましい。研磨パッドに表面処理組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に表面処理組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。リンス研磨時間も特に制限されないが、5秒以上180秒以下であることが好ましい。
【0167】
本発明に係る表面処理組成物によるリンス研磨処理の後、研磨済研磨対象物(表面処理対象物)は、本発明に係る表面処理組成物をかけながら引き上げられ、取り出されることが好ましい。
【0168】
(II)洗浄処理
本発明に係る表面処理組成物は、洗浄処理において用いられてもよい。すなわち、本発明に係る表面処理組成物は、洗浄用組成物として好ましく用いることができる。洗浄処理は、研磨対象物について最終研磨(仕上げ研磨)を行った後、上記リンス研磨処理を行った後、または本発明に係る表面処理組成物以外のリンス研磨用組成物を用いた他のリンス研磨処理を行い、研磨済研磨対象物(洗浄対象物)を得た後、研磨済研磨対象物(洗浄対象物)の表面上の異物の除去を目的として行われることが好ましい。なお、洗浄処理と、上記リンス研磨処理とは、これらの処理を行う場所によって分類され、洗浄処理は、研磨定盤(プラテン)上ではない場所で行われる表面処理であり、研磨済研磨対象物を研磨定盤(プラテン)上から取り外した後に行われる表面処理であることが好ましい。洗浄処理においても、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させて、当該対象物の表面上の異物を除去することができる。
【0169】
洗浄処理を行う方法の例として、(i)研磨済研磨対象物を保持した状態で、洗浄ブラシを研磨済研磨対象物の片面または両面と接触させて、その接触部分に表面処理組成物を供給しながら洗浄対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法、(ii)研磨済研磨対象物を表面処理組成物中に浸漬させ、超音波処理や攪拌を行う方法(ディップ式)等が挙げられる。かかる方法において、研磨済研磨対象物表面の異物は、洗浄ブラシによる摩擦力または超音波処理や攪拌によって発生する機械的力、および表面処理組成物による化学的作用によって除去される。
【0170】
上記(i)の方法において、表面処理組成物の研磨済研磨対象物への接触方法としては
、特に限定されないが、ノズルから研磨済研磨対象物上に表面処理組成物を流しながら研磨済研磨対象物を高速回転させるスピン式、研磨済研磨対象物に表面処理組成物を噴霧して洗浄するスプレー式などが挙げられる。
【0171】
短時間でより効率的な汚染除去ができる点からは、洗浄処理は、スピン式やスプレー式を採用することが好ましく、スピン式であることがさらに好ましい。
【0172】
このような洗浄処理を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の研磨済研磨対象物を同時に表面処理するバッチ式洗浄装置、1枚の研磨済研磨対象物をホルダーに装着して表面処理する枚葉式洗浄装置などがある。洗浄時間の短縮等の観点からは、枚葉式洗浄装置を用いる方法が好ましい。
【0173】
さらに、洗浄処理を行うための装置として、研磨定盤(プラテン)から研磨済研磨対象物を取り外した後、当該対象物を洗浄ブラシで擦る洗浄用設備を備えている研磨装置が挙げられる。このような研磨装置を用いることにより、研磨済研磨対象物の洗浄処理を、より効率よく行うことができる。
【0174】
かような研磨装置としては、研磨済研磨対象物を保持するホルダー、回転数を変更可能なモーター、洗浄ブラシ等を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。なお、CMP工程の後、リンス研磨工程を行う場合、当該洗浄処理は、リンス研磨工程にて用いた研磨装置と同様の装置を用いて行うことが、より効率的であり好ましい。
【0175】
洗浄ブラシは、特に制限されないが、好ましくは、樹脂製ブラシである。樹脂製ブラシの材質は、特に制限されないが、PVA(ポリビニルアルコール)が好ましい。洗浄ブラシは、PVA製スポンジであることがより好ましい。
【0176】
洗浄条件にも特に制限はなく、表面処理対象物(研磨済研磨対象物)の種類、ならびに除去対象とする残渣の種類および量に応じて、適宜設定することができる。例えば、洗浄ブラシの回転数は10rpm(0.17s-1)以上200rpm(3.33s-1)以下であることが、洗浄対象物の回転数は10rpm(0.17s-1)以上100rpm(1.67s-1)以下であることが、それぞれ好ましい。洗浄ブラシに表面処理組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、洗浄ブラシおよび洗浄対象物の表面が常に表面処理組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。洗浄時間も特に制限されないが、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いる工程については5秒以上180秒以下であることが好ましい。このような範囲であれば、異物をより効果的に除去することが可能である。
【0177】
洗浄の際の表面処理組成物の温度は、特に制限されず、通常は室温でよいが、性能を損なわない範囲で、40℃以上70℃以下程度に加温してもよい。
【0178】
上記(ii)の方法において、浸漬による洗浄方法の条件については、特に制限されず、公知の手法を用いることができる。
【0179】
上記(I)または(II)の方法による表面処理を行う前に水による洗浄を行ってもよい。
【0180】
(後洗浄処理)
また、表面処理方法としては、本発明に係る表面処理組成物を用いた前記(I)または
(II)の表面処理の後、研磨済研磨対象物をさらに洗浄処理することが好ましい。本明細書では、この洗浄処理を「後洗浄処理」と称する。後洗浄処理としては、特に制限されないが、例えば、単に表面処理対象物に水を掛け流す方法、単に表面処理対象物を水に浸漬する方法等が挙げられる。また、上記説明した(II)の方法による表面処理と同様に、表面処理対象物を保持した状態で、洗浄ブラシと表面処理対象物の片面または両面とを接触させて、その接触部分に水もしくは水溶液(例えば、NH水溶液)を供給しながらまたは水および水溶液(例えば、NH水溶液)をいずれかの順番で供給(水を供給した後水溶液を供給または水溶液を供給した後水を供給)しながら、表面処理対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法(ブラシ洗浄)、表面処理対象物を水中に浸漬させ、超音波処理や攪拌を行う方法(ディップ式)等が挙げられる。これらの中でも、表面処理対象物を保持した状態で、洗浄ブラシと、表面処理対象物の片面または両面と、を接触させてその接触部分に水もしくは水溶液(例えば、NH水溶液)を供給しながらまたは水および水溶液(例えば、NH水溶液)をいずれかの順番で供給(水を供給した後水溶液を供給またはNH水溶液を供給した後水を供給)しながら、表面処理対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法であることが好ましい。なお、後洗浄処理の装置および条件としては、前述の(II)の表面処理の説明を参照することができる。ここで、後洗浄処理に用いる水としては、特に脱イオン水を用いることが好ましい。
【0181】
本発明の一形態に係る表面処理組成物で表面処理を行うことによって、残渣が極めて除去されやすい状態となる。このため、本発明の一形態の表面処理に係る表面処理組成物で表面処理を行った後、水を用いてさらなる洗浄処理を行うことで、残渣が極めて良好に除去されることとなる。
【0182】
[半導体基板の製造方法]
本発明に係る表面処理方法は、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板である場合に、好適に適用される。すなわち、本発明は、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、当該研磨済半導体基板を、上記表面処理方法によって当該研磨済半導体基板の表面における残渣を低減することを含む、半導体基板の製造方法をも提供する。
【0183】
この際、研磨済研磨対象物は、窒素-ケイ素結合を含む材料(シリコン材料)および酸化ケイ素の少なくとも一方を含むと好ましい。すなわち、本発明は、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、砥粒を含む研磨用組成物を用いて、窒素-ケイ素結合を有する材料または酸化ケイ素を含む研磨前半導体基板を研磨することによって、研磨済半導体基板を得る研磨工程と、本発明に係る表面処理組成物を用いて、前記研磨済半導体基板を表面処理する表面処理工程と、を含む半導体基板の製造方法をも提供する。
【0184】
かかる製造方法が適用される半導体基板の詳細については、上記表面処理組成物によって表面処理される研磨済研磨対象物の説明の通りである。
【0185】
また、半導体基板の製造方法は、研磨済半導体基板の表面を、本発明に係る表面処理組成物を用いて表面処理する工程(表面処理工程)を含むものであれば、特に制限されない。かかる製造方法として、例えば、研磨済半導体基板を形成するための研磨工程および洗浄工程を有する方法が挙げられる。また、他の一例としては、研磨工程および洗浄工程に加え、研磨工程および洗浄工程の間に、リンス研磨工程を有する方法が挙げられる。以下、これらの各工程について説明する。
【0186】
<研磨工程>
半導体基板の製造方法に含まれうる研磨工程は、半導体基板を研磨して、研磨済半導体基板を形成する工程である。
【0187】
研磨工程は、半導体基板を研磨する工程であれば特に制限されないが、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)工程であることが好ましい。また、研磨工程は、単一の工程からなる研磨工程であっても複数の工程からなる研磨工程であってもよい。複数の工程からなる研磨工程としては、例えば、予備研磨工程(粗研磨工程)の後に仕上げ研磨工程を行う工程や、1次研磨工程の後に1回または2回以上の2次研磨工程を行い、その後に仕上げ研磨工程を行う工程等が挙げられる。本発明に係る表面処理組成物を用いた表面処理工程は、上記仕上げ研磨工程後に行われると好ましい。
【0188】
研磨用組成物としては、半導体基板の特性に応じて、公知の研磨用組成物を適宜使用することができる。研磨用組成物としては、特に制限されないが、例えば、砥粒、水溶性高分子、pH調整剤、および溶媒を含む研磨用組成物等が挙げられる。
【0189】
研磨装置としては、研磨対象物を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。
【0190】
<表面処理工程>
表面処理工程とは、本発明に係る表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減する工程をいう。半導体基板の製造方法において、リンス研磨工程の後、表面処理工程としての洗浄工程が行われてもよいし、リンス研磨工程のみ、または洗浄工程のみが行われてもよい。
【0191】
(リンス研磨工程)
リンス研磨工程は、半導体基板の製造方法において、研磨工程および洗浄工程の間に設けられてもよい。リンス研磨工程は、本発明の一形態に係る表面処理方法(リンス研磨処理方法)によって、研磨済研磨対象物(研磨済半導体基板)の表面における異物を低減する工程である。
【0192】
リンス研磨工程で用いられるリンス研磨方法の詳細は、上記(I)リンス研磨処理に係る説明に記載の通りである。
【0193】
(洗浄工程)
洗浄工程は、半導体基板の製造方法において、研磨工程の後に設けられてもよいし、リンス研磨工程の後に設けられてもよい。洗浄工程は、本発明の一形態に係る表面処理方法(洗浄方法)によって、研磨済研磨対象物(研磨済半導体基板)の表面における異物を低減する工程である。
【0194】
洗浄工程で用いられる洗浄方法の詳細は、上記(後洗浄処理)におけるのと同様である。
【0195】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0196】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
【0197】
1.下記(A)~(C)成分を含み、pHが7.0を超える、表面処理組成物:
(A)成分:下記式(a)で表され、pKaが前記表面処理組成物のpHより大きいアミ
ノ基を2以上有する、ピペラジン系化合物
【0198】
【化7】
【0199】
上記式(a)中、Rは、水素原子または第1級~第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基であり;Rは、第1級~第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基である、
(B)成分:アニオン性高分子
(C)成分:式:A-COO-NH (Aは、炭素数1以上10以下のアルキル基またはフェニル基である)で示される緩衝剤。
【0200】
2.前記(A)成分は、Rは、水素原子または第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基であり;Rは、第1級もしくは第3級アミノ基で置換されていてもよい炭素数1以上5以下のアルキル基である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物を含む、上記1.に記載の表面処理組成物。
【0201】
3.前記(A)成分は、Rは、水素原子または第1級もしくは第3級アミノ基のいずれかで置換されていてもよい炭素数1以上3以下のアルキル基であり;Rは、第1級アミノ基で置換された炭素数1以上3以下のアルキル基である上記式(a)で表されるピペラジン系化合物を含む、上記1.または2.に記載の表面処理組成物。
【0202】
4.前記(A)成分の含有量は、前記表面処理組成物に対して、0.10質量%以上である、上記1.~3.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0203】
5.前記(A)成分は、前記ピペラジン系化合物に存在するアミノ基のpKaのうち最大のpKa(最大pKa)と前記表面処理組成物のpHとの差(=最大pKa-pH)が0.5以上であるアミノ基を有する、上記1.~4.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0204】
6.前記(A)成分は、前記ピペラジン系化合物に存在するアミノ基のpKaのうち最大のpKa(最大pKa)と前記表面処理組成物のpHとの差(=最大pKa-pH)が1.30を超えるアミノ基を有する、上記1.~5.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0205】
7.前記(B)成分は、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、およびポリ(カルボン酸-スルホン酸)、ならびにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性高分子を含む、上記1.~6.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0206】
8.前記(C)成分は、酢酸アンモニウムを含む、上記1.~7.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0207】
9.下記(D)成分をさらに含む、上記1.~8.のいずれかに記載の表面処理組成物

(D)成分:ノニオン性高分子。
【0208】
10.前記(D)成分は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロースおよびブテンジオール-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のノニオン性高分子を含む、上記9.に記載の表面処理組成物。
【0209】
11.下記(E)成分をさらに含む、上記1.~10.のいずれかに記載の表面処理組成物:
(E)成分:pH調整剤。
【0210】
12.前記pH調整剤が、アンモニアまたは酢酸である、上記11.に記載の表面処理組成物。
【0211】
13.前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、水、ならびにpH調整剤およびノニオン性高分子からなる群より選択される少なくとも一種から実質的に構成される、上記1.~8.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0212】
14.前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、水、ならびにpH調整剤、ノニオン性高分子および防カビ剤(防腐剤)からなる群より選択される少なくとも一種から実質的に構成される、上記1.~8.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0213】
15.前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、ノニオン性高分子、pH調整剤および水から実質的に構成される、上記1.~8.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0214】
16.前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、ノニオン性高分子、pH調整剤、防カビ剤(防腐剤)および水から実質的に構成される、上記1.~8.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0215】
17.前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、pH調整剤および水から実質的に構成される、上記1.~8.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0216】
18.前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、pH調整剤、防カビ剤(防腐剤)および水から実質的に構成される、上記1.~8.のいずれかに記載の表面処理組成物。
【0217】
19.上記1.~18.のいずれかに記載の表面処理組成物を用いて窒素-ケイ素結合を有する材料または酸化ケイ素を含む研磨済研磨対象物を表面処理して、前記研磨済研磨対象物の表面の残渣を低減する、表面処理方法。
【0218】
20.前記表面処理は、リンス研磨処理または洗浄処理により行われる、上記19.に記載の表面処理方法。
【0219】
21.前記残渣は、砥粒および有機物残渣の少なくとも一方を含む、上記19.または20.に記載の表面処理方法。
【0220】
22.研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、
砥粒を含む研磨用組成物を用いて、窒素-ケイ素結合を有する材料または酸化ケイ素を含む研磨前半導体基板を研磨することによって、研磨済半導体基板を得、
上記1.~18.のいずれかに記載の表面処理組成物を用いて、前記研磨済半導体基板を表面処理すること、
を含む半導体基板の製造方法。
【実施例0221】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件下で行った。
【0222】
[(A)~(E)成分の準備]
下記の(A)~(E)成分を準備した。
【0223】
<(A)成分:ピペラジン系化合物>
・アミノエチルピペラジン(式(a)中、R=H、R=アミノエチル基(-CHCHNH))(東京化成工業株式会社製 製品名N-(2-Aminoethyl)piperazine;分子量=129;pKa=10.11、8.78、1.74)
・1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン(式(a)中、R、R=アミノプロピル基(-CHCHCHNH))(東京化成工業株式会社製 製品名1,4-Bis(3-aminopropyl)piperazine;分子量=200;pKa=10.69、10.09、6.50、2.37)
・1-エチルピペラジン(式(a)中、R=H、R=エチル基(-CHCH))(東京化成工業株式会社製 製品名1-Ethylpiperazine;分子量=114;pKa=9.27、8.13)
・1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン(式(a)中、R=メチル基(-CH)、R=ジメチルアミノエチル基(-CHCHN(CH))(東京化成工業株式会社製 製品名1-(2-Dimethylaminoethyl)-4-methylpiperazine;
分子量=171;pKa=9.50、9.20、8.17)
<(A’)成分:その他のアミン化合物>
・無水ピペラジン(式(a)中、R、R=H)(東京化成工業株式会社製 製品名Piperazine anhydrous;分子量=86;pKa=9.55、5.30)
・1-アミノ-4-メチルピペラジン(式(a)中、R=メチル基(-CH)、R=第1級アミノ基(-NH))(東京化成工業株式会社製 製品名1-Amino-4-methylpiperazine;分子量=115;pKa=7.64、7.19、6.80)
<(B)成分:アニオン性高分子>
・ポリアクリル酸(東亞合成株式会社製 製品名:ジュリマーAC-10SH;重量平均分子量(Mw)=1,000,000)(ポリアクリル酸1)
・ポリアクリル酸(東亞合成株式会社製 製品名:ジュリマーAC-10L;重量平均分子量(Mw)=20,000~30,000)(ポリアクリル酸2)
・ポリアクリル酸(東亞合成株式会社製 製品名:アロンA-10H;重量平均分子量(Mw)=200,000)(ポリアクリル酸3)
・ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー・ファインケム株式会社製 製品名:ポリナスPS-1;重量平均分子量(Mw)=20,000)
・カルボン酸とスルホン酸とのコポリマー(ナトリウム塩)(東亞合成株式会社製 製品名:アロンA-6012;重量平均分子量(Mw)=10,000)
<(C)成分:pH緩衝剤>
・酢酸アンモニウム(関東化学株式会社製;分子量:77)
<(D)成分:ノニオン性高分子>
・ポリビニルアルコール(PVA)(日本酢ビ・ポバール株式会社製 製品名JMR(登録商標)-10HH;重量平均分子量(Mw)=10,000)
<(E)成分:pH調整剤>
・アンモニア(関東化学株式会社製 製品名:ELアンモニア水;分子量:17)
・酢酸(関東化学株式会社製 製品名:酢酸;分子量:60)
上記の(B)成分および(D)成分の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定した。
【0224】
[重量平均分子量(Mw)の測定]
(B)成分および(D)成分の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量(ポリエチレングリコール換算)の値を用いた。重量平均分子量は、下記の装置および条件によって測定した:
GPC装置:株式会社島津製作所製
型式:Prominence + ELSD検出器(ELSD-LTII)
カラム:VP-ODS(株式会社島津製作所製)
移動相 A:MeOH
B:酢酸1%水溶液
流量:1mL/分
検出器:ELSD temp.40℃、Gain 8、NGAS 350kPa
オーブン温度:40℃
注入量:40μL。
【0225】
[表面処理組成物のpHの測定]
表面処理組成物(液温:25℃)のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA(登録商標))によって確認した。なお、以下で説明する研磨用組成物のpHも、同様の方法により測定した。
【0226】
[表面処理組成物の調製]
実施例1
(A)成分としてのアミノエチルピペラジンと、(B)成分としてのポリアクリル酸(Mw=1,000,000)と、(C)成分としての酢酸アンモニウムと、(D)成分としてのポリビニルアルコール(Mw=10,000)と、(E)成分としてのアンモニアと、溶媒としての蒸留水とを、25℃で5分間攪拌混合することにより、表面処理組成物1を調製した。
【0227】
ここで、各成分の含有量は、以下の通りとした:表面処理組成物1の総量に対して、(A)成分の含有量は0.03質量%(0.3g/L)とし、(B)成分の含有量は0.01質量%(0.1g/L)とし、(C)成分の含有量は0.03質量%(0.3g/L)とし、(D)成分の含有量は0.06質量%(0.6g/L)とし、(E)成分(pH調整剤)の含有量は表面処理組成物1のpHが8.0となる量とした。
【0228】
実施例2~24、比較例1~20
(A)/(A’)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分およびpHを表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、表面処理用組成物2~24、比較表面処理組成物1~20を調製した。なお、比較例20は調液時にpH8に調整したものの、調整後のpH値が経時的に低下、表面処理用組成物の安定した性能が発揮できないと判断し、検討を中止した(洗浄データなし)。なお、表1において、「-」は、該当する成分を添加しなかったことを示す。
【0229】
なお、上記にて調製した表面処理組成物1~24および比較表面処理組成物1~19は、砥粒を含まない(砥粒の含有量=0質量%)。
【0230】
各表面処理組成物の組成を下記表1に要約する。以下の表1において、「pKa」の項目では、(A)成分または(A’)成分に存在するアミノ基のpKa値を示し、各表面処理組成物のpHより大きいpKaを太字にて示す。また、以下の表1において、(A)成分または(A’)成分に存在するアミノ基のpKa値と各表面処理組成物のpHとの差(=pKa-pH)が正である場合には、その差を「pKa-pH」にて数字で示し、上記差(=pKa-pH)が0以下である場合には「-」にて示す。
【0231】
【表1-1】
【0232】
【表1-2】
【0233】
【表1-3】
【0234】
【表1-4】
【0235】
【表1-5】
【0236】
[評価1]
下記方法によって、窒化ケイ素(Si)基板での欠陥数(砥粒残渣数および有機
物残渣数)を測定し、結果を下記表2に示す。なお、下記表2において、砥粒残渣数および有機物残渣数の総数を、「総数」と記載する。
【0237】
[研磨済研磨対象物の準備]
下記の化学的機械的研磨(CMP)工程によって研磨された後の研磨済研磨対象物(研磨済窒化ケイ素基板)を準備した。
【0238】
(CMP工程)
研磨対象物として、表面に厚さ2500Åの窒化ケイ素膜をCVDで形成したシリコンウェーハ(窒化ケイ素基板)(300mm、ブランケットウェーハ、株式会社アドバンテック製)、および表面に厚さ10000ÅのTEOS膜を形成したシリコンウェーハ(TEOS基板)(300mm、ブランケットウェーハ、株式会社アドバンテック製)を準備した。
【0239】
シリカスラリー(組成:コロイダルシリカ(平均一次粒子径:35nm、平均二次粒子径:70nm) 10質量%、ポリビニルピロリドン(ピッツコール(登録商標) K30A、第一工業製薬株式会社、Mw=45,000) 0.25質量%、ELアンモニア水(濃度:28.0%~30.0%(NHとして)(関東化学株式会社) 0.33質量%(NHとして)、溶媒:蒸留水)を準備した。上記シリカスラリーを蒸留水で5倍希釈することによって、研磨用組成物を調製した。得られた研磨用組成物のpHは、10.0であった。
【0240】
上記で準備した窒化ケイ素基板およびTEOS基板について、上記にて得られた研磨用組成物を用いて下記の条件にて研磨を行い、研磨済研磨対象物(研磨済窒化ケイ素基板および研磨済TEOS基板)を得た。
【0241】
<研磨装置および研磨条件>
研磨装置:株式会社荏原製作所製 FREX300E
研磨パッド:富士紡ホールディングス株式会社製 発泡ポリウレタンパッド
H800-Type1
コンディショナー(ドレッサー):ナイロンブラシ(3M社製)
研磨圧力:2.0psi(1psi=6894.76Pa、以下同じ)
研磨定盤回転数:80rpm
ヘッド回転数:80rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物供給量:200mL/分
研磨時間:30秒間。
【0242】
(リンス研磨)
上記CMP工程にて研磨対象物表面を研磨した後、研磨済研磨対象物を研磨定盤(プラテン)上から取り外した。続いて、同じ研磨装置内で、研磨済研磨対象物を別の研磨定盤(プラテン)上に取り付け、下記の条件にて、各表面処理組成物(表面処理組成物1~24および比較表面処理組成物1~19)を用いて、研磨済研磨対象物表面に対してリンス研磨処理を行った。
【0243】
<リンス研磨装置およびリンス研磨条件>
研磨装置:株式会社荏原製作所製 FREX300E
研磨パッド:富士紡ホールディングス株式会社製 発泡ポリウレタンパッド
H800-Type1
コンディショナー(ドレッサー):ナイロンブラシ(3M社製)
研磨圧力:1.0psi
定盤回転数:80rpm
ヘッド回転数:80rpm
表面処理組成物の供給:掛け流し
表面処理組成物供給量:300mL/分
研磨時間:60秒間。
【0244】
(後洗浄処理)
リンス研磨処理後、0.3%NH水溶液を用いて20秒間、研磨済研磨対象物表面のブラシ洗浄を行い、その後、脱イオン水による洗浄を40秒間行うことで、リンス研磨済研磨対象物(リンス研磨済研磨対象物1~24および比較リンス研磨済研磨対象物1~19)を得た。
【0245】
(残渣評価)
ケーエルエー・テンコール株式会社製、光学検査機Surfscan(登録商標)SP5を用いて、リンス研磨済研磨対象物(リンス研磨済研磨対象物1~24および比較リンス研磨済研磨対象物1~19)について、表面上の残渣数を評価した。
【0246】
具体的には、各リンス研磨済研磨対象物の片面の外周端部から幅5mmの部分(外周端部を0mmとしたときに、0mmから5mmまでの領域)を除外した残りの部分について、直径70nmを超える残渣の数(研磨対象物が窒化ケイ素基板である場合)および直径50nmを超える残渣の数(研磨対象物がTEOS基板である場合)をカウントした。その後、上記リンス研磨済研磨対象物に関して、砥粒残渣数および有機物残渣数を、株式会社日立ハイテク製Review SEM RS6000を使用し、SEM観察によって測定した。まず、SEM観察にて、各リンス研磨済研磨対象物の片面の外周端部から幅5mmの部分を除外した残りの部分に存在する残渣を100個サンプリングした。次いで、サンプリングした100個の残渣の中から、目視によるSEM観察にて残渣の種類(砥粒または有機物残渣)を判別し、砥粒残渣(SiO残渣)および有機物残渣(パッド屑や高分子など)のそれぞれについて、その個数を測定した。
【0247】
砥粒残渣(SiO残渣)数は、なるべく少ない方が好ましい。一例として、研磨対象物が窒化ケイ素基板である場合には、砥粒残渣(SiO残渣)数は、50未満であれば許容でき、45以下であることが好ましく、35未満であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましく、25以下であることが特に好ましい。また、研磨対象物がTEOS基板である場合には、砥粒残渣(SiO残渣)数は、2480未満であれば許容でき、2400以下であることが好ましく、2200以下であることがより好ましく、2000以下であることがさらに好ましく、1500以下であることが特に好ましい。
【0248】
また、有機物残渣(パッド屑や高分子など)数も、なるべく少ない方が好ましい。一例として、研磨対象物が窒化ケイ素基板である場合には、有機物残渣(パッド屑や高分子など)数は、20未満であれば許容でき、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることが特に好ましい。また、研磨対象物がTEOS基板である場合には、有機物残渣(パッド屑や高分子など)数は、30以下であれば許容でき、25以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることが特に好ましい。
【0249】
さらに、砥粒残渣(SiO残渣)数および有機物残渣(パッド屑や高分子など)数の合計数(表2中の「総数」)もまた、なるべく少ない方が好ましい。一例として、研磨対象物が窒化ケイ素基板である場合には、砥粒残渣(SiO残渣)数および有機物残渣(パッド屑や高分子など)数の合計数は、75以下であれば許容でき、60以下であることが好ましく、35以下であることがより好ましく、27以下であることが特に好ましい。また、研磨対象物がTEOS基板である場合には、砥粒残渣(SiO残渣)数および有機物残渣(パッド屑や高分子など)数の合計数は、2990未満であれば許容でき、2800以下であることが好ましく、2600以下であることがより好ましく、2000以下であることが特に好ましい。
【0250】
[評価2]
下記方法によって、表面処理組成物に含まれる成分の吸着量を測定し、結果を下記表2(表中の「Si 吸着量[ng/cm]」)に示す。
【0251】
(QCM法による吸着量測定)
水晶振動子マイクロバランス法(Quartz crystal microbalance法:QCM法)を用いて、窒化ケイ素(Si)表面またはTEOS表面に対する、表面処理組成物中に含まれる成分の吸着量を測定した。なお、測定には、QCM-D測定装置Q-Sense-Pro(アルテック株式
会社製)を用いた。
【0252】
測定手順は以下の通りである:まず、180μLの純水を測定装置にセットし、25℃で安定させた。その後、各表面処理組成物を20μL/minの流量で5分間流し、Si電極表面またはTEOS電極表面に対する(単位面積当たりの)、表面処理組成物に含まれる成分の吸着量(ng/cm)を測定した。
【0253】
上述のように、本発明に係る表面処理組成物を用いると、(A)成分および(B)成分が基板表面に吸着することにより、残渣の低減効果が得られると推測される。表面処理組成物の含有成分の吸着量が大きいことは、その基板表面に対して(A)成分や(B)成分が吸着しやすいことを示す。したがって、上記吸着量測定において大きな数値を示すことは、上記メカニズムのように(A)成分および(B)成分が働いていることを支持していると考えられる。
【0254】
[評価3]
下記方法によって、各表面処理組成物中の窒化ケイ素(Si)のゼータ電位(ζ電位)を測定し、結果を下記表2(表中の「Si ゼータ電位[mV]」)に示す。
【0255】
各表面処理組成物を用いてリンス研磨中の窒化ケイ素(Si)のゼータ電位を、以下のようなモデル実験で測定された値とした。
【0256】
ゼータ電位の測定には、表面に厚さ2500Åの窒化ケイ素膜をCVDで形成したシリコンウェーハ(窒化ケイ素基板)(300mm ブランケットウェーハ、株式会社アドバンテック製)を60mm角に切断したものを、測定対象物として用いた。上記測定対象物をアントンパールジャパン株式会社製の固体ゼータ電位測定器SurPASS3(ゼータ電位計)に設置した。次いで、上記で調製した各表面処理組成物をそれぞれ測定対象物に通液させて、これらの測定対象物のゼータ電位(mV)をそれぞれ測定した。
【0257】
【表2-1】
【0258】
【表2-2】
【0259】
【表2-3】
【0260】
上記表2から明らかなように、実施例の表面処理組成物によれば、比較例の表面処理組成物と比べて、窒化ケイ素基板およびTEOS基板上の残渣を十分に除去できることがわかる。
【0261】
また、実施例1と実施例8、比較例1と比較例18、比較例2と比較例19、実施例2~4と実施例9~11、実施例12と実施例13の各比較から、(D)成分としてポリビニルアルコールを存在させることにより、有機物残渣数を有意に低減できることがわかる。
【0262】
上記は、表面処理組成物製造直後に評価した結果であるが、長期間保存または貯蔵する場合には、防カビ剤(防腐剤)を含むことが好ましい。なお、防カビ剤(防腐剤)は上記結果に影響をほとんど及ぼさないまたは及ぼさないので、防カビ剤(防腐剤)を含む表面処理組成物も上記と同様の結果となると考察される。