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特開2024-144142光ファイバ着色心線の製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144142
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光ファイバ着色心線の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/6226 20180101AFI20241003BHJP
   C03C 25/1065 20180101ALI20241003BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C03C25/6226
C03C25/1065
G02B6/44 311
G02B6/44 301B
G02B6/44 336
G02B6/44 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020422
(22)【出願日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2023053753
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】石附 邦彬
(72)【発明者】
【氏名】高力 啓孝
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 光洋
【テーマコード(参考)】
2H201
2H250
4G060
【Fターム(参考)】
2H201AX18
2H201AX20
2H201BB12
2H201BB23
2H201DD06
2H201DD07
2H201DD23
2H201DD33
2H201KK26A
2H201KK26B
2H201KK26C
2H201KK28A
2H201KK28B
2H201KK28C
2H201KK29A
2H201KK29B
2H201KK29C
2H201KK37A
2H201KK37B
2H201KK37C
2H201KK54C
2H201KK63
2H201KK72
2H201KK75
2H201MM03
2H201MM34
2H250AB03
2H250AD35
2H250AD36
2H250AE26
2H250BA03
2H250BA18
2H250BA19
2H250BA22
2H250BA25
2H250BA32
2H250BB07
2H250BB13
2H250BB14
2H250BB19
2H250BB33
2H250BC03
2H250BD02
2H250BD17
2H250BD18
4G060AA03
4G060AC15
4G060AD43
(57)【要約】
【課題】分離性および分岐性がよい光ファイバ着色心線の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による光ファイバ着色心線の製造方法は、プライマリ層およびセカンダリ層を有し、28.0℃以下の光ファイバ素線の表面に樹脂塗布装置によって樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、UV光源によって、前記樹脂に所定の波長の光を照射し、前記光ファイバ素線の前記表面に着色層を形成する紫外線照射工程と、を備え、前記紫外線照射工程において、前記着色層の表面温度は、63℃以上であることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマリ層およびセカンダリ層を有し、28.0℃以下の光ファイバ素線の表面に樹脂塗布装置によって樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、
UV光源によって、前記樹脂に所定の波長の光を照射し、前記光ファイバ素線の前記表面に着色層を形成する紫外線照射工程と、を備え、
前記紫外線照射工程において、前記着色層の表面温度は、63℃以上であることを特徴とする光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項2】
前記紫外線照射工程において、前記着色層の表面温度は、85℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項3】
前記UV光源は、発光ダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂は35℃以上に加熱されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂塗布装置の内部は35℃以上に加熱されることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂塗布工程において、前記樹脂は70℃以下に加熱される工程をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂塗布工程において、前記樹脂は70℃以下に加熱され、前記樹脂塗布装置の前記内部は70℃以下に加熱される工程をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂は、前記所定の波長の光に対して吸収を有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項9】
前記所定の波長は、UV領域にあることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項10】
前記着色層の表面の転化率は、83.5%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項11】
互いに略平行に配置された複数の前記光ファイバ着色心線をリボン層により被覆する工程をさらに備え、
前記リボン層の厚さまたは形状に応じて、紫外線照射工程後の前記着色層の表面温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項12】
前記リボン層の厚さが薄いほど、前記紫外線照射工程後の前記着色層の表面温度が高くなるように制御されることを特徴とする請求項11に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項13】
前記リボン層は、前記光ファイバ着色心線の半径方向の断面視において、前記複数の前記光ファイバ着色心線の外周に沿って形成されることを特徴とする請求項11に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項14】
前記紫外線照射工程は窒素雰囲気で行われ、
前記窒素雰囲気温度は、27.0℃±2.0℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ着色心線の製造方法。
【請求項15】
プライマリ層およびセカンダリ層を有し、28.0℃以下の光ファイバ素線の表面に樹脂を塗布する樹脂塗布装置と、
前記樹脂に所定の波長の光を照射し、前記光ファイバ素線の前記表面に着色層を形成するUV光源と、を備え、
前記UV光源による照射後において、前記着色層の表面温度は、63℃以上であることを特徴とする光ファイバ着色心線の製造装置。
【請求項16】
前記UV光源による照射後において、前記着色層の表面温度は、85℃未満であることを特徴とする請求項15に記載の光ファイバ着色心線の製造装置。
【請求項17】
前記樹脂は35℃以上に加熱されることを特徴とする請求項15に記載の光ファイバ着色心線の製造装置。
【請求項18】
前記樹脂塗布装置の内部は35℃以上に加熱されることを特徴とする請求項16に記載の光ファイバ着色心線の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ着色心線の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、光ファイバ着色心線の着色工程において、UV光源によって紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射する際に、紫外線硬化型樹脂に光開始剤を配合することによって、紫外線硬化型樹脂の硬化度を制御する硬化方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6197197号公報
【特許文献2】特許第6659048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の光ファイバ心線の製造方法を、室温の光ファイバ素線に対して着色層を形成する、いわゆる三層着色に適応しても、その光ファイバ着色心線を用いて製造した光ファイバリボンの分離性および分岐性が不十分になり得る。分離性および分岐性は着色層の硬化度にのみ着目しても改善するものではない。
なお、光ファイバリボンの分離性および分岐性は、複数の光ファイバ着色心線を備える光ファイバリボンから、それぞれの光ファイバ着色心線を分離および分岐する際の光ファイバ着色心線の分離のしやすさ(分離性)および分岐のしやすさ(分岐性)を意味する。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、光ファイバ着色心線の分離性および分岐性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、プライマリ層およびセカンダリ層を有し、28.0℃以下の光ファイバ素線の表面に樹脂塗布装置によって樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、UV光源によって、前記樹脂に所定の波長の光を照射し、前記光ファイバ素線の前記表面に着色層を形成する紫外線照射工程と、を備え、前記紫外線照射工程において、前記着色層の表面温度は、63℃以上であることを特徴とする光ファイバ着色心線の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分離性および分岐性がよい光ファイバ着色心線の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態における光ファイバ着色心線の断面図である。
図2図2は、本実施形態における光ファイバリボンの断面図である。
図3図3は、本実施形態における光ファイバ着色心線の製造装置の模式図である。
図4図4は、本実施形態における制御装置のブロック図である。
図5図5は、本実施形態におけるリボン化装置の模式図である。
図6図6は、本実施形態における光ファイバ着色心線および光ファイバリボンの製造方法のフローチャートである。
図7図7は、本実施形態における着色層の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。明細書全般における同じ参照符号は、実質的に同一の構成要素を意味する。
【0010】
図1は、本実施形態における光ファイバ着色心線1の断面図である。光ファイバ着色心線1は、光ファイバ裸線11と、プライマリ層12と、セカンダリ層13と、着色層14とを備える。光ファイバ裸線11は、例えば、石英系ガラス等で形成される。プライマリ層12は、紫外線硬化型樹脂で形成され、光ファイバ裸線11の外周に被覆される。セカンダリ層13は、紫外線硬化型樹脂で形成され、プライマリ層12の外周に被覆される。プライマリ層12およびセカンダリ層13は、それぞれ紫外線の照射により紫外線硬化型樹脂を硬化することにより形成される。なお、光ファイバ裸線11と、プライマリ層12と、セカンダリ層13とを合わせて、光ファイバ素線2と呼ぶ。
【0011】
着色層14は、紫外線硬化型樹脂で形成され、セカンダリ層13の外周に被覆される。着色層14は、プライマリ層12およびセカンダリ層13と同様に、紫外線の照射により紫外線硬化型樹脂を硬化することにより形成される。
【0012】
着色層14は、光ファイバ着色心線1の最外層であり、光ファイバ裸線11、プライマリ層12、セカンダリ層13を外力から保護する機能を有する。着色層14は、複数の光ファイバ着色心線1を識別することができるように、顔料または滑剤等を混合した着色剤により着色される。色の種類は、例えば、白色、黒色、灰色、紫色、青色、水色、緑色、茶色、黄色、橙色、桃色、赤色などでありうる。
【0013】
紫外線硬化型樹脂は、紫外線の照射によって重合可能なものであれば、特に限定されるものではない。紫外線硬化型樹脂は、例えば、光ラジカル重合などにより重合可能な樹脂でありうる。紫外線硬化型樹脂は、例えば、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートおよびポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートのようなウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどのような紫外線により重合および硬化するエチレン性不飽和基などの重合性不飽和基を有する紫外線硬化型樹脂を含んでもよい。紫外線硬化型樹脂は、重合性不飽和基を少なくとも2つ有するものであることが好ましい。
【0014】
紫外線硬化型樹脂における重合性不飽和基として、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などのような不飽和二重結合を有する基、プロパルギル基などのような不飽和三重結合を有する基などがありうる。上記の中でも、アクリロイル基またはメタクリロイル基が重合性の面において重合性不飽和基に好ましい。
【0015】
紫外線硬化型樹脂は、紫外線の照射によって重合を開始し、硬化するモノマー、オリゴマー、またはポリマーでありうるが、紫外線硬化型樹脂はオリゴマーであることが好ましい。なお、オリゴマーは、重合度が2~100の重合体である。本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの一方または両方を意味する。紫外線硬化型樹脂は、紫外領域に感度を有する任意の光重合開始剤(以下、「光開始剤」と呼ぶ)を含む。
【0016】
ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリエーテル骨格を有するポリオールと、有機ポリイソシアネート化合物およびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応物のように、ポリエーテルセグメント、(メタ)アクリレートおよびウレタン結合を有する化合物である。また、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリエステル骨格を有するポリオールと、有機ポリイソシアネート化合物およびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応物のように、ポリエステルセグメント、(メタ)アクリレートおよびウレタン結合を有する化合物である。
【0017】
紫外線硬化型樹脂は、オリゴマーおよび光開始剤に加えて、例えば、希釈モノマー、光増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、連鎖移動剤、および各種添加剤を含んでもよい。希釈モノマーには、単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートが用いられる。ここで、希釈モノマーは、紫外線硬化型樹脂を希釈するためのモノマーを意味する。なお、UV-LEDに吸収を有する光開始剤および光増感剤を紫外線硬化型樹脂に添加することにより、UV-LEDを用いて紫外線硬化型樹脂のUV硬化をすることが可能になる。光開始剤は、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等でありうる。光増感剤は、例えば、2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン、2-イソプロピルチオキサントン等でありうる。
【0018】
紫外線硬化型樹脂は、メルカプト基含有化合物を含みうる。メルカプト基含有化合物は、1分子内に少なくとも1つのメルカプト基を有する化合物である。メルカプト基含有化合物は、紫外線硬化型樹脂に含まれるウレタン(メタ)アクリレートなどの重合性化合物とメルカプト基とが反応することにより、重合性化合物の重合を停止する効果を有する。メルカプト基含有化合物は、特に限定されるものではなく、例として、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、3-メルカプトプロピオン酸イソオクチル、1-ペンタンチオールのほか、エチルメルカプタン、1-ブタンチオール、1-ヘプタンチオール、1-ウンデカンチオール、4-ヒドロキシベンゼンチオール、(2-メルカプトエチル)ピラジン、2,3-ブタンジチオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、イソブチルメルカプタン、4-メトキシ-α-トルエンチオール、4,4′-ビフェニルジチオール、トリメチルシリルメタンチオール、1,4-ブタンジチオール、1,8-オクタンジチオール、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、3-エトキシベンゼンチオール、ペンタエリトリトールテトラ(3-メルカプトプロピオナート)等でありうる。
【0019】
紫外線の照射は、例えば、水銀ランプまたはUV-LEDなどを用いて、適切な照度および照射量にて行われる。なお、プライマリ層12と、セカンダリ層13と、着色層14とのヤング率は、光ファイバの製造条件(例えば、線速、UV照射強度、UV光源種、樹脂塗布温度など)に応じて変化するものであり、使用する紫外線硬化型樹脂によって一義的に決定しえない。
【0020】
プライマリ層12は、好ましくは0.1MPa以上2.0MPa以下のヤング率を有する軟質層であり、光ファイバ裸線11に加わる外力を緩衝する機能を有する。セカンダリ層13は、好ましくは500MPa以上2000MPa以下のヤング率を有する硬質層であり、光ファイバ裸線11およびプライマリ層12を外力から保護する機能を有する。
【0021】
光ファイバ裸線11の直径は、例えば、80μm以上150μm以下であり、好ましくは124μm以上126μm以下でありうる。プライマリ層12の厚さは、好ましくは5μm以上60μm以下でありうる。セカンダリ層13の厚さは、好ましくは5μm以上60μm以下でありうる。着色層14の厚さは、好ましくは数μm程度でありうる。ここで、光ファイバ素線2の直径は、光ファイバ裸線11の直径と、プライマリ層12の厚さの2倍の長さと、セカンダリ層13の厚さの2倍の長さとの和で定められうる。したがって、光ファイバ素線2の直径が、例えば190~250μm程度になるように、光ファイバ裸線11の直径と、プライマリ層12の厚さと、セカンダリ層13の厚さとがそれぞれ選択されうる。
【0022】
図2は、本実施形態における光ファイバリボン3の断面図である。光ファイバリボン3は、N本の光ファイバ着色心線1A~1Nを備える。ここで、光ファイバ着色心線1の本数Nは、2以上の自然数である。光ファイバ着色心線1A~1Nは、リボン層31を介して帯状に束ねられる。光ファイバリボン3はさらに、隣り合う2本の光ファイバ着色心線が接する領域において、凹部32を備える。凹部32は、光ファイバ着色心線1A~1Nに沿って、光ファイバリボン3の長さ方向に延在する。光ファイバリボン3のリボン層31は、断面視において光ファイバ着色心線1A~1Nの外周に沿って形成される。光ファイバリボン3の厚さは、例えば、0.27~0.40mmでありうる。
【0023】
リボン層31は、紫外線硬化型樹脂で形成される。リボン層31を形成する紫外線硬化型樹脂は、プライマリ層12およびセカンダリ層13を形成する紫外線硬化型樹脂と同様の素材でありうる。
【0024】
本実施形態において、光ファイバ着色心線1A~1Nは、互いに異なる色の着色層14を有してもよく、複数本の光ファイバ着色心線1が同じ色の着色層14を有してもよい。光ファイバ着色心線1A~1Nは、光ファイバ着色心線1A~1Nが互いに分別可能であるような色の着色層14を有していることが望ましい。
【0025】
[ヤング率の測定]
プライマリ層12のヤング率は、ISM(In Situ Modulus)に相当する。以下の方法でプライマリ層12のヤング率を測定する。市販のストリッパを用いて、光ファイバの中間部のプライマリ層12およびセカンダリ層13を数mmの長さだけはぎ取る。被覆層が形成されている光ファイバの一端を接着剤でスライドガラス上に固定し、被覆層が形成されている光ファイバの他端に荷重Fを印加する。この状態において、被覆層をはぎ取った部分と被覆層が形成されている部分との境界におけるプライマリ層12の変位δを顕微鏡で読み取る。光ファイバの他端に印加する荷重Fを10、20、30、50、70gF(すなわち、98、196、294、490、686mN)とすることにより、変位δに対する荷重Fの変化の割合(傾き)を算出する。算出された傾きと、以下の式(1)とを用いて、プライマリ弾性率を算出する。プライマリ弾性率はISMに相当するので、以下ではプライマリ弾性率を適宜P-ISMと記載する。
P-ISM=(3F/δ)*(1/2πl)*ln(DP/DG)・・・(1)
【0026】
P-ISMの単位は[MPa]である。式(1)の右辺において、F/δは変位δ[μm]に対する荷重(F)[gF]の変化の割合(傾き)、lはサンプル長(例えば、10mm)、DP/DGはプライマリ層12の外径(DP)[μm]と光ファイバのクラッド部の外径(DG)[μm]との比である。したがって、F、δ、lと式(1)とを用いてP-ISMを算出する場合には、所定の単位変換が必要となる。なお、ファイバカッターにより切断した光ファイバの断面を顕微鏡で観察することにより、プライマリ層12の外径およびクラッド部の外径を計測することができる。
【0027】
セカンダリ層13のヤング率(S-ISM)を、以下の方法で測定する。液体窒素中に光ファイバを浸漬し、市販のストリッパを用いて、光ファイバの被覆層をはぎ取る。中空円柱状であり被覆層のみの試料を作成し、試料の末端部分をアルミ板に固定する。温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中において、テンシロン万能引張試験機を用いて、アルミ板部分をチャックする。幅6mm、標線間隔25mm、引張速度1mm/分で試料を引張り、2.5%伸長時における力を測定することで、セカンダリ層13の弾性率を算出する。なお、中空円柱状の試料にはプライマリ層12も含まれるが、P-ISMに対してS-ISMの値が十分に大きいので、S-ISMにおけるプライマリ層12の弾性率の影響を無視できるものとする。
【0028】
リボン層31のヤング率を、以下の方法で測定する。片刃の刃物等で光ファイバリボン3からリボン層31をはぎ取り、恒温恒湿(例えば、温度23℃、湿度50%)の一定状態において、はぎ取ったリボン層31を調整する。リボン層31を長さ25mmのサンプル片にし、引張速度1mm/minで引っ張り、2.5%ひずみにおけるヤング率を算出する。なお、サンプル片の断面積を顕微鏡で測定する。なお、本実施形態において、プライマリ層12のヤング率の範囲は0.1~2.0MPaであり、セカンダリ層13のヤング率の範囲は500~2000MPaであり、リボン層31のヤング率の範囲は1.0~2000MPaでありうる。
【0029】
[有効コア断面積とマイクロベンドロス]
光ファイバのマイクロベンドロスの生じやすさを表す指標として、有効コア断面積(実効コア断面積)Aeff(Effective Area)が挙げられる。有効コア断面積Aeffは、式(2)によって表される。なお、有効コア断面積Aeffは、例えば、1999年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会予稿集のC-3-76およびC-3-77等に記載されている。
Aeff=(πk/4)*(MFD)・・・(2)
【0030】
ここで、有効コア断面積Aeffは、波長1550nmにおける値であり、MFD(Mode-field diameter)はモードフィールド径(μm)、kは定数である。有効コア断面積Aeffは、光ファイバ裸線11の軸に直交する断面のうち、光が通過し所定の強度を有する部分の面積を表す。一般的に、光ファイバ裸線11の有効コア断面積Aeffが大きくなるほど、光ファイバ裸線11の断面における光学的閉じ込めが弱くなる。すなわち、光ファイバ裸線11の有効コア断面積Aeffが大きい場合、光ファイバ裸線11に加わる外力によって光ファイバ裸線11内の光が漏出しやすくなる。したがって、光ファイバ裸線11の有効コア断面積Aeffが大きくなると、光ファイバ着色心線1のマイクロベンドロスが生じやすくなる。
【0031】
本実施形態において、有効コア断面積Aeffが80μm以上である光ファイバ裸線11が用いられる。光ファイバにおいてAeffはマイクロベンド感度の指標になり、Aeffが大きいほどマイクロベンド感度が大きいことを示す。一般に、Aeff>100μmであれば、マイクロベンド感度が大きいと言われている。とりわけ、Aeffが130μm以上150μm以下であれば、マイクロベンド感度が問題なく大きい光ファイバである。
【0032】
マイクロベンドロスの測定方法は、様々なものがありうる。例えば、番手が#1000のサンドペーパーを巻いた大きめのボビンに、100gFの張力で400m以上の長さの光ファイバを、互いに重ならないように1層巻きに巻き付ける(状態A)。一方、サンドペーパーを巻いていないボビンに、状態Aにおける同じ張力で同じ長さの光ファイバを、互いに重ならないように1層巻きに巻き付ける(状態B)。状態Aにおける光ファイバの伝送損失と、状態Bにおける光ファイバの伝送損失との差をマイクロベンドロスの値として定義することができる。ここで、状態Bの光ファイバの伝送損失は、マイクロベンドロスを含まず、測定対象の光ファイバに固有の伝送損失であると考えられる。
【0033】
なお、上記の測定方法は、JIS C6823:2010に規定される固定径ドラム法に類似する測定方法であり、サンドペーパー法と呼ばれる。この測定方法では、波長1550nmにおける伝送損失を測定しているので、本実施形態において、波長1550nmにおけるマイクロベンドロスを測定する。
【0034】
本実施形態において、光ファイバ素線2および光ファイバ着色心線1のマイクロベンドロスは、0.1dB/km以下であることが好ましい。
【0035】
図3は、本実施形態における光ファイバ着色心線1の製造方法に用いる製造装置5の模式図である。製造装置5は、素線保持装置51、ガイドローラ52、着色層被覆装置53、ガイドローラ56、巻取り装置57、制御装置7を有する。素線保持装置51は、製造された光ファイバ素線2を巻き取り保持する。光ファイバ素線2は素線保持装置51から引き出され、ガイドローラ52に誘導され、着色層被覆装置53に搬送される。
【0036】
着色層被覆装置53は、樹脂塗布装置54、紫外線照射装置55を有する。樹脂塗布装置54は、顔料または滑剤等を混合した紫外線硬化型樹脂を保持し、光ファイバ素線2の外周に紫外線硬化型樹脂を塗布する。樹脂塗布装置54は、コーティングダイまたはダイス等と呼ばれる。紫外線照射装置55は、メタルハライドランプ、水銀ランプ、UV-LED等の任意のUV光源551を備え、樹脂塗布装置54の下流(図3において下部に相当)に設けられる。紫外線照射装置55は、硬化炉と呼ばれ、紫外線硬化型樹脂を塗布された光ファイバ素線2に紫外線を照射し、着色層14を形成する。UV光源551は、光ファイバ素線2の外周を囲うように設けられる。なお、UV光源551による紫外線照射の直後(図3において紫外線照射装置55の出口552)において後述する着色層14の表面温度を測定することにより、紫外線硬化型樹脂が硬化した直後の着色層14の温度を測定することができる。
【0037】
光ファイバ素線2が紫外線照射装置55の内部を通過する間に、UV光源によって紫外線が光ファイバ素線2に照射される。光ファイバ素線2の外周に塗布された紫外線硬化型樹脂が硬化することによって、着色層14が形成される。これにより、光ファイバ着色心線1が形成される。なお、紫外線照射装置55は、窒素雰囲気下において、光ファイバ素線2に紫外線を照射することが好ましい。光ファイバ着色心線1は、着色層被覆装置53から搬送され、ガイドローラ56を介して巻取り装置57に搬送され、巻き取られる。
【0038】
制御装置7は、例えば、ガイドローラ52およびガイドローラ56の搬送速度、着色層被覆装置53において紫外線硬化型樹脂を加圧供給する際の圧力、紫外線硬化型樹脂の温度、着色層被覆装置53の出口径、紫外線照射装置55のUV光源の強度、紫外線照射装置55の窒素雰囲気の温度、着色層被覆装置53の内部温度、巻取り装置57の巻き取りトルク等を制御する。
【0039】
図4は、本実施形態における制御装置7のブロック図である。制御装置7は、CPU(Ceentral Processing Unit)701、ROM(Read Only Memory)702、RAM(Random Access Memory)703、記憶装置704、ディスプレイ705、タッチセンサ706、入力装置707、通信I/F708、センサI/F709を有する。各部は、バス710を介して相互に接続される。
【0040】
CPU701は、アプリケーションプログラムにより製造装置5の各部を制御する。ROM702は、不揮発性メモリから構成され、製造装置5の各部を制御するためのアプリケーションプログラムを記憶する。RAM703は、CPU701の動作に必要なメモリ領域を提供する。記憶装置704は、ハードディスク、半導体メモリ等から構成される。
【0041】
ディスプレイ705は、例えば、液晶ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ等から構成される。ディスプレイ705の表面にはタッチセンサ706が配置される。タッチセンサ706は、静電容量式または抵抗式の検出回路を備える。入力装置707は、ユーザI/Fであり、例えば、キーボード、マウス等であり得る。
【0042】
通信I/F708は、データの送受信を行う通信部であり、制御装置7と製造装置5とを通信可能に接続する。通信I/F708を介した制御装置7と製造装置5との通信は、有線通信または無線通信のいずれでもよい。無線通信の方式は、例えば、第3世代移動通信、LTE(Long Term Evolution)、第4世代移動通信、第5世代移動通信、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信、Wi‐Fi等の無線LAN接続による無線通信等であり得る。
【0043】
センサI/F709は、製造装置5が備えるセンサ類から各種のデータを取得し、記憶装置704等に格納する。各種のデータは、例えば、紫外線硬化型樹脂を加圧供給する際の圧力、紫外線硬化型樹脂の温度、紫外線照射装置55のUV光源の強度、紫外線照射装置55の窒素雰囲気の温度、着色層被覆装置53の内部温度、光ファイバ着色心線1の表面温度等であり得る。
【0044】
制御装置7は、オペレータの操作によって製造装置5の制御パラメータを受け付け、製造装置5を制御する。また、制御装置7は、センサI/F709を介して製造装置5に設けられたセンサ(図示せず)から情報を受信し、ガイドローラ52およびガイドローラ56の搬送速度、光ファイバ着色心線1の表面温度、着色層被覆装置53の内部温度等を計算して、製造装置5の制御に反映することもできる。
【0045】
図5は、本実施形態におけるリボン化装置8の模式図である。リボン化装置8は、樹脂塗布装置81および紫外線照射装置82を有する。複数の光ファイバ着色心線1は、それぞれの着色層14の色ごとに所定の順序で並べられ、リボン化装置8に搬送される。樹脂塗布装置81は、紫外線硬化型樹脂を保持し、複数の光ファイバ着色心線1の外周に紫外線硬化型樹脂を塗布する。紫外線照射装置82は、メタルハライドランプ、水銀ランプ、UV-LED等の任意のUV光源を備え、樹脂塗布装置81の下部に設けられる。紫外線照射装置82は、紫外線硬化型樹脂を塗布された複数の光ファイバ着色心線1に紫外線を照射し、リボン層31を形成する。複数の光ファイバ着色心線1がリボン層31を介して帯状に束ねられ、光ファイバリボン3が形成される。
【0046】
図6は、本実施形態における光ファイバ着色心線1および光ファイバリボン3の製造方法のフローチャートである。まず、光ファイバ母材を線引き装置(図示せず)に設置する(ステップS101)。光ファイバ母材をヒータで加熱し、光ファイバ裸線11を線引きする(ステップS102)。線引きした光ファイバ裸線11の外周に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線を照射することで、プライマリ層12を形成する(ステップS103)。プライマリ層12の外周に紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線を照射することで、セカンダリ層13を形成する(ステップS104)。ステップS101~S104までの工程によって、光ファイバ素線2が得られる。製造された光ファイバ素線2は、素線保持装置51に巻き取られる。
【0047】
製造装置5は素線保持装置51から着色層被覆装置53に光ファイバ素線2を搬入し、着色層被覆装置53が光ファイバ素線2に着色層14を形成する(ステップS105)。光ファイバ素線2の外周に着色層14を形成することによって、光ファイバ着色心線1が得られる。光ファイバ着色心線1は、巻取り装置57に巻き取られる。なお、ステップS105における着色層14の具体的な形成工程を、図7で詳細に説明する。
【0048】
リボン化装置8は複数の光ファイバ着色心線1を搬送し、複数の光ファイバ着色心線1の外周に紫外線硬化型樹脂を塗布する。さらに、リボン化装置8は紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射し、複数の光ファイバ着色心線1を連結する(ステップS106)。ステップS106の工程によって、光ファイバリボン3が得られる。
【0049】
図7は、本実施形態における着色層14の製造方法のフローチャートである。まず、製造装置5は、樹脂塗布装置54に保持される紫外線硬化型樹脂が所定の温度になるように、紫外線硬化型樹脂を加熱する(ステップS201)。紫外線硬化型樹脂は、樹脂塗布装置54の内部において加熱されてもよく、紫外線硬化型樹脂を収納し、樹脂塗布装置54に紫外線硬化型樹脂を供給するタンク(図示せず)等において加熱されてもよい。光ファイバ素線2に紫外線硬化型樹脂を塗布する際に、紫外線硬化型樹脂の温度が一定であるように加熱されることが好ましい。さらに、製造装置5は、樹脂塗布装置54の内部が所定の温度になるように、樹脂塗布装置54の内部を加熱する(ステップS202)。紫外線硬化型樹脂の温度および樹脂塗布装置54の内部の温度は、熱電対型の温度計を用いて測定される。紫外線硬化型樹脂の温度および樹脂塗布装置54の内部の温度は、オペレータ等が制御装置7を介して設定する。所定の温度は、例えば、35℃~70℃の範囲でありうる。
【0050】
紫外線硬化型樹脂の温度および樹脂塗布装置54の内部の温度が所定の温度に達すると、製造装置5は、素線保持装置51に巻き取られた光ファイバ素線2を着色層被覆装置53に搬送する。着色層被覆装置53は、樹脂塗布装置54において光ファイバ素線2の外周に紫外線硬化型樹脂を塗布する(ステップS203)。さらに、紫外線照射装置55は、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射し、着色層14を形成する(ステップS204)。紫外線照射装置55に設けられるUV光源は、例えば、UV-LED等でありうる。
【0051】
ステップS201~S204の工程により、光ファイバ素線2に着色層14が形成され、光ファイバ着色心線1が得られる。ステップS201およびステップS202において、紫外線硬化型樹脂および樹脂塗布装置54の内部が加熱されることにより、ステップS204において紫外線硬化型樹脂が硬化反応する際の温度を制御することができる。例えば、紫外線硬化型樹脂の温度および樹脂塗布装置54の内部の温度が35℃である場合、紫外線を照射した直後の着色層14の表面温度は約63.4℃でありうる。紫外線硬化型樹脂の温度および樹脂塗布装置54の内部の温度が70℃である場合、紫外線を照射した直後の着色層14の表面温度は約84.9℃でありうる。すなわち、紫外線硬化型樹脂の温度および樹脂塗布装置54の内部の温度が35℃~70℃の範囲である場合、紫外線を照射した直後の着色層14の表面温度は約63℃~約85℃の範囲でありうる。なお、着色層14の表面温度は、光ファイバ着色心線1が紫外線照射装置55から搬出される際に図3に示す紫外線照射装置55の出口552において、非接触式の温度計を用いて測定される。
【0052】
光ファイバ着色心線1の製造において、素線保持装置51に光ファイバ素線2を長時間保存した後に着色層14が形成される場合がある。これにより、光ファイバ着色心線1を色ごとに管理する必要がなくなるため、製造時の在庫管理を容易にすることができる。この場合、着色層14を形成する工程における光ファイバ素線2の温度は、光ファイバ素線2の製造直後の温度から室温まで下がっている。ここで、室温は、21.0℃以上28.0℃以下でありうる。一方、プライマリ層12を形成する工程において、光ファイバ母材の溶融によって引き出された光ファイバ裸線11は室温よりも高く、プライマリ層12は、高温の光ファイバ裸線11を被覆した状態で形成される。このため、プライマリ層12の硬化温度は室温よりも高くなる。また、セカンダリ層13を形成する工程において、プライマリ層12は紫外線照射時に生じる硬化熱によって加熱され、セカンダリ層13は、高温のプライマリ層12を被覆した状態で硬化される。このため、セカンダリ層13の硬化温度は室温よりも高くなる。このため、着色層14の硬化温度が低くなることによって光ファイバ着色心線1の分離性および分岐性が不十分になりうる。上述したように、本実施形態において、光ファイバ素線に紫外線硬化型樹脂を塗布する際に、紫外線硬化型樹脂および樹脂塗布装置を適切な温度範囲で加熱している。これにより、紫外線硬化型樹脂を適切に硬化し、光ファイバ着色心線の分離性および分岐性を向上させることができる。
【0053】
また、水銀ランプのUV光に比べて、UV-LEDのUV光はIR光を含まず、着色層の硬化温度が低くなり、硬化反応性が低下し得る。このため、UV-LEDを用いて着色層を硬化させる場合、着色層を適切に硬化させることが困難となり、光ファイバ着色心線の分離性および分岐性が悪化し得る。本実施形態においては、着色層の硬化温度を適切な温度範囲に制御することにより、UV-LEDを用いて着色層を硬化させる場合においても、光ファイバ着色心線の分離性および分岐性を向上させることができる。
【0054】
[実施例および比較例]
表1は、光ファイバ着色心線1の製造時における光ファイバ素線2の表面温度、紫外線硬化型樹脂の温度、樹脂塗布装置54(コーティングダイ)の内部の温度、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して着色層14を形成した直後の着色層14の表面温度(図3の紫外線照射装置55の出口552において測定)、光ファイバ着色心線1の転化率(硬化度)、光ファイバ着色心線1を用いた光ファイバリボン3の分離性および分岐性の評価を示す表である。
【0055】
図6および図7に示す光ファイバ着色心線1および光ファイバリボン3の製造方法に基づき、図2に示す光ファイバ着色心線1と図2に示す光ファイバリボン3とを製造した。さらに、製造した光ファイバリボン3の分離性および分岐性を評価した。本実施例において、4本(N=4)の光ファイバ着色心線1を備える光ファイバリボン3を用いた。なお、光ファイバリボン3を製造する際、光ファイバ着色心線1の表面温度は、室温(24.0~28.0℃)に等しかった。
【0056】
紫外線照射に用いるUV-LEDの波長は、395±10nmであった。熱電対型の温度計を用いて紫外線硬化型樹脂の温度および樹脂塗布装置54の温度を測定し、非接触式の温度計を用いて光ファイバ素線2および着色層14の表面温度を測定した。非接触式の温度計は、放射率を0.96に設定したサーモグラフィであった。
【0057】
光ファイバ着色心線1の転化率は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR:Fourier Transform Infrared Spectroscopy)の顕微ATR(Attenuated Total Reflection)法で測定した。転化率は1500cm-1付近のピーク面積を基準として、810cm-1付近のピーク面積がUV硬化前の紫外線硬化型樹脂の状態からUV硬化後にどの程度減少するかを測定した。
【0058】
光ファイバリボン3に関して、光ファイバリボン3の長手方向の中間部において専用工具(テープ分離工具)を用いて複数の光ファイバ着色心線1を単心に分離できるか否かを評価した(分離性および分岐性の評価方法)。すなわち、光ファイバ着色心線1A、1B、1C、1Dについて、それぞれがなす凹部32において専用工具を用いて、複数の光ファイバ着色心線1をそれぞれ単心に分離した。複数の光ファイバ着色心線1をそれぞれ単心に分離する際に、着色層14の剥がれがなく、光ファイバ素線2の断線がなく、光ファイバ着色心線1にリボン層31の残留物が残ることなく、光ファイバ着色心線1をリボン層31から分離することができれば、分離性および分岐性の評価に合格するもの(OK評価)とした。
【0059】
【表1】
【0060】
[実施例1]
紫外線硬化型樹脂を35.0℃に加熱し、樹脂塗布装置54の内部を35.0℃に加熱し、光ファイバ素線2に紫外線硬化型樹脂を塗布した。その後、UV-LEDを備える紫外線照射装置55を用いて紫外線硬化型樹脂を硬化し、着色層14を形成した。UV-LEDを照射した直後の着色層14の表面温度は63.4℃であり、光ファイバ着色心線1の転化率は83.6%であった。上記の条件により得られた光ファイバ着色心線1を用いて光ファイバリボン3を製造し、前述の評価方法により分離性および分岐性の評価を行った。光ファイバリボン3の分離性および分岐性の評価はOKであった。
【0061】
[実施例2]
紫外線硬化型樹脂を40.0℃に加熱し、樹脂塗布装置54の内部を40.0℃に加熱し、光ファイバ素線2に紫外線硬化型樹脂を塗布した。その後、UV-LEDを備える紫外線照射装置55を用いて紫外線硬化型樹脂を硬化し、着色層14を形成した。UV-LEDを照射した直後の着色層14の表面温度は65.2℃であり、光ファイバ着色心線1の転化率は83.5%であった。上記の条件により得られた光ファイバ着色心線1を用いて光ファイバリボン3を製造し、前述の評価方法により分離性および分岐性の評価を行った。光ファイバリボン3の分離性および分岐性の評価はOKであった。
【0062】
[実施例3]
紫外線硬化型樹脂を45.0℃に加熱し、樹脂塗布装置54の内部を45.0℃に加熱し、光ファイバ素線2に紫外線硬化型樹脂を塗布した。その後、UV-LEDを備える紫外線照射装置55を用いて紫外線硬化型樹脂を硬化し、着色層14を形成した。UV-LEDを照射した直後の着色層14の表面温度は65.9℃であり、光ファイバ着色心線1の転化率は85.8%であった。上記の条件により得られた光ファイバ着色心線1を用いて光ファイバリボン3を製造し、前述の評価方法により分離性および分岐性の評価を行った。光ファイバリボン3の分離性および分岐性の評価はOKであった。
【0063】
[実施例4]
紫外線硬化型樹脂を50.0℃に加熱し、樹脂塗布装置54の内部を50.0℃に加熱し、光ファイバ素線2に紫外線硬化型樹脂を塗布した。その後、UV-LEDを備える紫外線照射装置55を用いて紫外線硬化型樹脂を硬化し、着色層14を形成した。UV-LEDを照射した直後の着色層14の表面温度は68.0℃であり、光ファイバ着色心線1の転化率は87.7%であった。上記の条件により得られた光ファイバ着色心線1を用いて光ファイバリボン3を製造し、前述の評価方法により分離性および分岐性の評価を行った。光ファイバリボン3の分離性および分岐性の評価はOKであった。
【0064】
[実施例5]
紫外線硬化型樹脂を60.0℃に加熱し、樹脂塗布装置54の内部を60.0℃に加熱し、光ファイバ素線2に紫外線硬化型樹脂を塗布した。その後、UV-LEDを備える紫外線照射装置55を用いて紫外線硬化型樹脂を硬化し、着色層14を形成した。UV-LEDを照射した直後の着色層14の表面温度は78.7℃であり、光ファイバ着色心線1の転化率は88.6%であった。上記の条件により得られた光ファイバ着色心線1を用いて光ファイバリボン3を製造し、前述の評価方法により分離性および分岐性の評価を行った。光ファイバリボン3の分離性および分岐性の評価はOKであった。
【0065】
[実施例6]
紫外線硬化型樹脂を70.0℃に加熱し、樹脂塗布装置54の内部を70.0℃に加熱し、光ファイバ素線2に紫外線硬化型樹脂を塗布した。その後、UV-LEDを備える紫外線照射装置55を用いて紫外線硬化型樹脂を硬化し、着色層14を形成した。UV-LEDを照射した直後の着色層14の表面温度は84.9℃であり、光ファイバ着色心線1の転化率は90.1%であった。上記の条件により得られた光ファイバ着色心線1を用いて光ファイバリボン3を製造し、前述の評価方法により分離性および分岐性の評価を行った。光ファイバリボン3の分離性および分岐性の評価はOKであった。
【0066】
[比較例1]
一方、比較例として、紫外線硬化型樹脂および樹脂塗布装置54の内部の温度がいずれも室温である状態で、光ファイバ素線2に紫外線硬化型樹脂を塗布した。その後、UV-LEDを備える紫外線照射装置55を用いて紫外線硬化型樹脂を硬化し、着色層14を形成した。UV-LEDを照射した直後の着色層14の表面温度は60.9℃であり、光ファイバ着色心線1の転化率は85.4%であった。上記の条件により得られた光ファイバ着色心線1を用いて光ファイバリボン3を製造し、前述の評価方法により分離性および分岐性の評価を行った。光ファイバリボン3の分離性および分岐性の評価はNGであった。
【0067】
実施例1~6に示すように、紫外線硬化型樹脂の温度を35.0℃~70℃の範囲内で加熱し、樹脂塗布装置54の内部の温度を35.0℃~70℃の範囲内で加熱し、光ファイバ素線2に着色層14を形成した。着色層14を形成した直後の着色層14の表面温度は約63℃~約85℃であり、転化率(硬化度)は約83%~90%であった。実施例1~6の条件で製造した光ファイバ着色心線1を用いた光ファイバリボン3の分離性および分岐性の評価はOKであった。このように、光ファイバ素線2に紫外線硬化型樹脂を塗布する際に、紫外線硬化型樹脂および樹脂塗布装置を適切な温度範囲に加熱することにより、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射する際の着色層14の温度を適切な温度範囲に制御し、紫外線硬化型樹脂を適切に硬化することができる。これにより、分離性および分岐性がよい光ファイバ着色心線の製造方法を提供することができる。
【0068】
なお、紫外線硬化型樹脂が硬化し、着色層14が形成される際に、硬化温度(着色層14の表面温度)が高過ぎると、紫外線硬化反応における停止反応などの副反応が優位になり、着色層14の特性が悪化(例えば、表面硬化不良など)する可能性がある。したがって、紫外線硬化型樹脂の温度および樹脂塗布装置54の内部の温度は35℃~70℃であることが好ましく、UV-LEDを照射した直後の着色層14の表面温度は63℃~85℃であることが望ましいことがわかった。
【0069】
なお、上記の実施例において、紫外線硬化型樹脂の加熱温度および樹脂塗布装置54の加熱温度を制御し、着色層14を形成した直後の着色層14の表面温度を制御したが、光ファイバ素線2を加熱し、着色層14を形成した直後の着色層14の表面温度を制御してもよい。例えば、素線保持装置51に巻き取られた光ファイバ素線2を加熱してもよく、着色層被覆装置53に光ファイバ素線2が搬入される前に光ファイバ素線2にIR光を照射することによって光ファイバ素線2を加熱してもよい。紫外線硬化型樹脂の供給管(ノズル)等のように紫外線硬化型樹脂が通過する部分を加熱してもよい。着色層被覆装置53に光ファイバ素線2を搬入する際の線速を制御して着色層14を形成した直後の着色層14の表面温度を制御してもよく、UV光源551の出力を制御して着色層14を形成した直後の着色層14の表面温度を制御してもよい。着色層14に紫外線を照射する際の周囲環境温度を一定温度以上にすることで、硬化熱の発散を防ぎ着色層14の表面温度を制御してもよい。例えば、室温の光ファイバ素線2に対して実施例1に使用した紫外線硬化型樹脂を室温で塗布して(紫外線硬化型樹脂も装置内部も室温)、紫外線を照射する際の窒素雰囲気温度を27.0±2℃に制御することで、UV-LEDを照射した直後の着色層14の表面温度は63.0℃以上となった。上記の条件により得られた光ファイバ着色心線1を用いて光ファイバリボン3を製造し、前述の評価方法により分離性および分岐性の評価を行った。光ファイバリボン3の分離性および分岐性の評価はOKであった。一方で、紫外線を照射する際の窒素雰囲気温度を20.5±2℃にすると、UV-LEDを照射した直後の着色層14の表面温度は63.0℃以下となり、条件により得られた光ファイバ着色心線1を用いて製造した光ファイバリボン3の分離性および分岐性は悪化した。また、上記の実施例において、UV光源551に395nmの波長を備えるUV-LEDを用いたが、例えば、275nm、365nm等の波長を備えるUV-LEDを用いてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 :光ファイバ着色心線
2 :光ファイバ素線
3 :光ファイバリボン
5 :製造装置
54:樹脂塗布装置
55:紫外線照射装置
7 :制御装置
8 :リボン化装置
81:樹脂塗布装置
82:紫外線照射装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7