(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144145
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】偏光膜形成用組成物、偏光膜、偏光板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20241003BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241003BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20241003BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
C08F20/10
C08F2/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022193
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2023056000
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023172826
(32)【優先日】2023-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】乾 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】小林 忠弘
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】転写性に優れ、ブロッキングを生じ難い偏光膜を形成し得る偏光膜形成用組成物を提供すること。
【解決手段】スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物、二色性色素、重合開始剤、および少なくとも2種の有機溶剤を含み、
前記重合開始剤の分子量が400以上であり、
前記有機溶剤が、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃以上50℃以下高い沸点を有する有機溶剤Aと、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高い沸点を有する有機溶剤Bとを含む偏光膜形成用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物、二色性色素、重合開始剤、および少なくとも2種の有機溶剤を含み、
前記重合開始剤の分子量が400以上であり、
前記有機溶剤が、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃以上50℃以下高い沸点を有する有機溶剤Aと、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高い沸点を有する有機溶剤Bとを含む偏光膜形成用組成物。
【請求項2】
偏光膜形成用組成物に含まれる全有機溶剤100質量部に対する有機溶剤Aの含有量が51~99質量部であり、有機溶剤Bの含有量が1~49質量部である、請求項1に記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項3】
有機溶剤Aがケトン系溶剤または芳香族系溶剤である、請求項1または2に記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項4】
有機溶剤Bが、ケトン系溶剤またはラクトン系溶剤である、請求項1または2に記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項5】
有機溶剤Bが、環状ケトン系溶剤またはラクトン系溶剤である、請求項1または2に記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項6】
分子量が400以上である重合開始剤の含有量が、重合性液晶化合物100質量部に対して1~10質量部である、請求項1または2に記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の偏光膜形成用組成物の硬化物であって、重合性液晶化合物および/またはその重合体がスメクチック液晶状態で配向している偏光膜。
【請求項8】
X線回折測定においてブラッグピークを示す、請求項7に記載の偏光膜。
【請求項9】
請求項7または8に記載の偏光膜および基材を備えてなる偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光膜形成用組成物、偏光膜、偏光板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偏光板は、フラットパネル表示装置(FPD)において、液晶セルや有機EL表示素子等の画像表示素子に貼合されて用いられている。このような偏光板として、重合性液晶化合物を基材上に塗布して重合させることにより得られる偏光膜を用いた薄型の偏光板が広く知られている。このような重合性液晶化合物から形成される偏光膜は、一般に、重合性液晶化合物や二色性色素を溶剤とともに含む偏光膜形成用組成物を、樹脂フィルム等の基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を加熱乾燥することにより重合性液晶化合物を液晶状態に相転移させる工程を経て作製される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、偏光膜形成用組成物の硬化時に生じ得る微結晶の析出に起因するドット抜けや配向欠陥を抑制することを目的として、偏光膜形成用組成物における溶剤として高沸点溶剤を用いることが開示されている。本発明者等は、このような高沸点溶剤が含まれる偏光膜形成用組成物から偏光膜を形成する場合に、高沸点溶剤を除去するための乾燥条件によって溶剤とともに重合開始剤が昇華し得ることを見出した。偏光膜の形成過程において重合開始剤が昇華してしまうと、十分に硬化した偏光膜を得ることが難しくなり、得られる偏光膜の転写性の低下やブロッキング発生の原因となり得る。
【0005】
本発明は、転写性に優れ、ブロッキングを生じ難い偏光膜を形成し得る偏光膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物、二色性色素、重合開始剤、および少なくとも2種の有機溶剤を含み、
前記重合開始剤の分子量が400以上であり、
前記有機溶剤が、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃以上50℃以下高い沸点を有する有機溶剤Aと、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高い沸点を有する有機溶剤Bとを含む偏光膜形成用組成物。
[2]偏光膜形成用組成物に含まれる全有機溶剤100質量部に対する有機溶剤Aの含有量が51~99質量部であり、有機溶剤Bの含有量が1~49質量部である、前記[1]に記載の偏光膜形成用組成物。
[3]有機溶剤Aがケトン系溶剤または芳香族系溶剤である、前記[1]または[2]に記載の偏光膜形成用組成物。
[4]有機溶剤Bが、ケトン系溶剤またはラクトン系溶剤である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物。
[5]有機溶剤Bが、環状ケトン系溶剤またはラクトン系溶剤である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物。
[6]分子量が400以上である重合開始剤の含有量が、重合性液晶化合物100質量部に対して1~10質量部である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物。
[7]前記[1]~[6]のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物の硬化物であって、重合性液晶化合物および/またはその重合体がスメクチック液晶状態で配向している偏光膜。
[8]X線回折測定においてブラッグピークを示す、前記[7]に記載の偏光膜。
[9]前記[7]または[8]に記載の偏光膜および基材を備えてなる偏光板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転写性に優れ、ブロッキングを生じ難い偏光膜を形成し得る偏光膜形成用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0009】
<偏光膜形成用組成物>
本発明の偏光膜形成用組成物は、スメクチック液晶性を示す少なくとも1つの重合性基を有する重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ともいう)を含む。スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いることにより、配向秩序度の高い偏光膜を形成することができる。重合性液晶化合物(A)の示す液晶状態は、好ましくはスメクチック相(スメクチック液晶状態)である。より高い配向秩序度を実現し得る観点から、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相およびスメクチックL相を意味する。これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相およびスメクチックI相がさらに好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、重合性液晶化合物はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0010】
重合性液晶化合物(A)は、少なくとも1つの重合性基を有する液晶化合物である。ここで、重合性基とは、重合開始剤から発生した反応活性種、例えば活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性液晶化合物(A)の重合性基としては光重合性基が好ましく、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0011】
重合性液晶化合物(A)としては、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができる。そのような重合性液晶化合物としては、例えば、式(A1)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(A1)」ともいう)が挙げられる。
U1-V1-W1-(X1-Y1)n-X2-W2-V2-U2 (A1)
【0012】
式(A1)中、
X1およびX2は、互いに独立して、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基及びニトロ基からなる群から選択される置換基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子は、酸素原子または硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X1およびX2のうち少なくとも1つは、上記置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または上記置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。
Y1は、単結合または二価の連結基である。
nは1~3であり、nが2以上の場合、複数のX1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。X2は、複数のX1のうちのいずれかまたは全てと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数のY1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。液晶性の観点からnは2以上が好ましい。
U1は、水素原子または重合性基を表わす。
U2は、重合性基を表わす。
W1およびW2は、互いに独立して、単結合または二価の連結基である。
V1およびV2は、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-CO-、-S-またはNH-に置き換わっていてもよい。
【0013】
重合性液晶化合物(A1)において、X1およびX2は、互いに独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、X1およびX2のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基およびブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基および塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。
【0014】
また、重合性液晶化合物(A1)は、式(A1)中、式(A1-1):
-(X1-Y1)n-X2- (A1-1)
〔式中、X1、Y1、X2およびnはそれぞれ上記と同じ意味を示す。〕
で示される部分〔以下、部分構造(A1-1)と称する〕が非対称構造であることが、スメクチック液晶性を発現し易い点で、好ましい。
部分構造(A1-1)が非対称構造である重合性液晶化合物(A1)としては、例えば、
nが1であり、1つのX1とX2とが互いに異なる構造である重合性液晶化合物(A1)が挙げられる。また、
nが2であり、2つのY1が互いに同じ構造である化合物であって、2つのX1が互いに同じ構造であり、1つのX2はこれら2つのX1とは異なる構造である重合性液晶化合物(A1)、
2つのX1のうちのW1に結合するX1が、他方のX1およびX2とは異なる構造であり、他方のX1とX2とは互いに同じ構造である重合性液晶化合物(A1)も挙げられる。さらに、
nが3であり、3つのY1が互いに同じ構造である化合物であって、3つのX1および1つのX2のうちのいずれか1つが他の3つの全てと異なる構造である重合性液晶化合物(A1)が挙げられる。
【0015】
Y1は、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH2CH2O-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CRa=CRb-、-C≡C-、-CRa=N-または-CO-NRa-が好ましい。RaおよびRbは、互いに独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。Y1は、-CH2CH2-、-COO-または単結合であることがより好ましく、複数のY1が存在する場合、X2と結合するY1は、-CH2CH2-またはCH2O-であることがより好ましい。X1およびX2が全て同一構造である場合、互いに異なる結合方式である2以上のY1が存在することが好ましい。互いに異なる結合方式である複数のY1が存在する場合には、非対称構造となるため、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0016】
U2は、重合性基である。U1は、水素原子または重合性基であり、好ましくは重合性基である。U1およびU2がともに重合性基であることが好ましく、ともにラジカル重合性基であることが好ましい。重合性基としては、重合性液晶化合物(A)が有する重合性基として先に例示した基と同様のものが挙げられる。U1で示される重合性基とU2で示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。また、重合性基は重合している状態であってもよいし、未重合の状態であってもよいが、好ましくは未重合の状態である。
【0017】
V1およびV2で表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基およびイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。V1およびV2は、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
【0018】
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子等が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0019】
W1およびW2は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-または-OCOO-が好ましく、単結合または-O-がより好ましい。
【0020】
スメクチック液晶性を示しやすい構造として、分子構造中に非対称性の分子構造を有することが好ましく、具体的には下記式(A-a)~式(A-i)により示される構造を有する重合性液晶化合物であるとスメクチック液晶性を示しやすく、重合性液晶化合物(A)として好適である。さらに、高次スメクチック液晶性を示しやすいという観点から式(A-a)、式(A-b)または式(A-c)により示される構造を有することがより好ましい。なお、下記式(A-a)~式(A-i)において、*は結合手(単結合)を表す。
【0021】
【0022】
重合性液晶化合物(A1)としては、具体的には例えば、式(A-1)~式(A-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(A1)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
これらの中でも、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)および式(A-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(A1)として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
重合性液晶化合物(A1)は、Lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)、または特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造できる。
【0028】
本発明の偏光膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、重合性液晶化合物(A)以外の他の重合性液晶化合物を含んでいてもよい。配向秩序度の高い偏光膜を得る観点から、偏光膜形成用組成物における全重合性液晶化合物の総質量に対する重合性液晶化合物(A)の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上の重合性液晶化合物が重合性化合物(A)であり、全て(100質量%)が重合性液晶化合物(A)であってもよい。
【0029】
本発明の偏光膜形成用組成物が2種以上の重合性液晶化合物(A)を含む場合、そのうちの少なくとも1種が重合性液晶化合物(A1)であることが好ましく、偏光膜形成用組成物に含まれる全てが重合性液晶化合物(A1)であってもよい。
【0030】
本発明の偏光膜形成用組成物における重合性液晶化合物の含有量は、偏光膜形成用組成物の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99.9質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。本明細書において、固形分とは、偏光膜形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0031】
本発明の偏光膜形成用組成物は二色性色素を含む。ここで、二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を意味する。本発明において用い得る二色性色素は、上記性質を有するものであれば特に制限されず、染料であっても、顔料であってもよい。2種以上の染料または顔料をそれぞれ組み合わせて用いてもよいし、染料と顔料とを組み合わせて用いてもよい。二色性色素は単独で用いても、組み合わせて用いてもよいが、可視光全域で吸収を得るためには、2種類以上の二色性色素を組み合わせるのが好ましく、3種類以上の二色性色素を組み合わせるのがより好ましい。特に吸収波長の異なる2種以上の二色性色素を混合することで、様々な色相の偏光膜を作製することができ、可視光全域に吸収を有する偏光膜とすることができる。
【0032】
二色性色素としては、可視光を吸収する特性を有することが好ましく、300~700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素およびアントラキノン色素等が挙げられる。中でもアゾ色素が好ましい。
【0033】
アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素およびトリスアゾ色素が好ましく、例えば、式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう。)が挙げられる。
【0034】
K1(-N=N-K2)p-N=N-K3 (I)
[式(I)中、K1およびK3は、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよい安息香酸フェニルエステル基または置換基を有していてもよい1価の複素環基を表わす。K2は、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基、置換基を有していてもよい4,4’-スチルベニレン基または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表わす。pは0~4の整数を表わす。pが2以上の整数である場合、複数のK2は互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0035】
1価の複素環基としては、例えば、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0036】
K1およびK3におけるフェニル基、ナフチル基、安息香酸フェニルエステル基および1価の複素環基、並びにK2におけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、4,4’-スチルベニレン基および2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、重合性基を有する炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~4のアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~20のアルコキシ基;重合性基を有する炭素数1~20のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基などの置換または無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、重合性基を有する炭素数1~6のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は-NH2である。)等が挙げられる。なお、前記重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられる。
【0037】
化合物(I)の中でも、以下の式(I-1)~式(I-8)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化5】
[式(I-1)~(I-8)中、
B
1~B
30は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換または無置換のアミノ基(置換アミノ基および無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子またはトリフルオロメチル基を表わす。
n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表わす。
n1が2以上である場合、複数のB
2は互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のB
6は互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のB
9は互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB
14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0038】
前記アントラキノン色素としては、式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【化6】
[式(I-9)中、
R
1~R
8は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0039】
前記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化7】
[式(I-10)中、
R
9~R
15は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0040】
前記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化8】
[式(I-11)中、
R
16~R
23は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
式(I-9)、式(I-10)および式(I-11)において、R
xの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基等が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基およびナフチル基等が挙げられる。
【0041】
前記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物および式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化9】
[式(I-12)中、
D
1およびD
2は、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表わす。
【化10】
n5は1~3の整数を表わす。]
【化11】
[式(I-13)中、
D
3およびD
4は、互いに独立に、式(1-13a)~式(1-13h)のいずれかで表される基を表わす。
【化12】
n6は1~3の整数を表わす。]
【0042】
本発明の偏光膜形成用組成物における二色性色素の含有量は、用いる二色性色素の種類などに応じて適宜決定し得るが、偏光膜形成用組成物の固形分に対して、好ましくは1~60質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは1~15質量%である。二色性色素の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、高い配向秩序度を有する偏光膜を得ることができる。
【0043】
本発明の偏光膜形成用組成物は、少なくとも2種の有機溶剤を含む。該2種の有機溶剤としては、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃以上50℃以下高い沸点を有する有機溶剤A、および、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高い沸点を有する有機溶剤Bが少なくとも含まれる。偏光膜の形成過程には、通常、偏光膜形成用組成物の塗膜を加熱乾燥して重合性液晶化合物を液晶状態に相転移させる工程(以下、「加熱乾燥工程」ともいう)が含まれる。かかる工程において、重合性液晶化合物が液晶状態へ相転移する前に塗膜から溶剤が揮発してしまうと、重合性液晶化合物が微結晶として析出しやすくなる。微結晶が析出すると、その後の加熱乾燥工程において重合性液晶化合物と二色性色素との良好な混合包摂状態を得ることが難しく、得られる偏光膜にドット抜けを生じる原因となる。このような微結晶の析出は、一般的なネマチック液晶と比較してスメクチック液晶が結晶により近い構造を有することに起因すると考えられ、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物から形成される偏光膜において特に問題となり得る。本発明の偏光膜形成用組成物は上記沸点の異なる少なくとも2種の有機溶剤を含むことにより、加熱乾燥工程の前に有機溶剤が揮発するのを防ぐことができ、かつ、加熱乾燥工程において有機溶剤を除去しやすくなる。これにより、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いながらも、ドット抜けの発生を抑制でき、また、加熱乾燥工程における乾燥ムラも抑制できる。本発明の偏光膜形成用組成物が2種以上の重合性液晶化合物を含む場合、有機溶剤AおよびBは、それぞれ、該偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物の混合状態でのアイソトロピック相転移温度に基づき選択される。
【0044】
有機溶剤Aは、通常、重合性液晶化合物、二色性色素や重合開始剤を溶解し、塗膜中において重合性液晶化合物と二色性色素の良好な混合包摂状態を生じやすくするとともに、偏光膜形成用組成物の固形分濃度および粘度を調整する働きをする。特に、一般にスメクチック液晶性を示す化合物は粘度が高い傾向にあり、偏光膜形成用組成物に有機溶剤Aを含むことにより該組成物の取扱性が良好になり、結果として偏光膜の形成がしやすくなる。偏光膜形成用組成物の塗膜の加熱乾燥工程前に塗膜から有機溶剤が揮発することを抑制するために、有機溶剤Aの沸点は、偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃以上50℃以下高く、好ましくは0℃以上50℃以下高く、より好ましくは10℃以上50℃以下高く、さらに好ましくは20℃以上40℃以下高い。有機溶剤Aの沸点が、重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃を超えて低いと加熱乾燥工程前に有機溶剤が揮発しやすく、重合性液晶化合物の微結晶が析出しやすくなる。また、有機溶剤Aの沸点が重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高いと、加熱乾燥工程前の溶剤の揮発は抑制できるが、加熱乾燥工程において溶剤が揮発し難くなって、配向欠陥および乾燥ムラを生じやすくなる。同時に、有機溶剤Aの沸点が好ましい範囲にあると、加熱乾燥工程後に残存する溶剤量を低減することができるため、残存溶剤に起因する転写性の低下やブロッキングの発生を抑制することができる。有機溶剤Aは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
有機溶剤Bは高沸点溶剤であり、加熱乾燥工程前の塗膜において保湿効果をもたらす働きを有する。加熱乾燥工程前における塗膜からの揮発を抑制する観点から、有機溶剤Bの沸点は、偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高く、好ましくは55℃以上高く、また、好ましくは150℃以下高く、さらに、好ましくは60℃以上150℃以下高く、より好ましくは60℃以上130℃以下高く、さらに好ましくは60℃以上120℃以下高く、特に好ましくは60℃以上110℃以下高い。重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも前記範囲において高い沸点を有する有機溶剤Bを含むことにより、加熱乾燥工程前の塗膜から有機溶剤が揮発するのを効果的に抑制することができ、塗膜中で重合性液晶化合物と二色性色素との良好な混合包摂状態を保持することができる。これにより、得られる偏光膜にドット抜けが生じるのを効果的に抑制することができる。また、有機溶剤Bとして、重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度との関係において前記上限以下の沸点を有する有機溶剤を選択することにより、加熱乾燥工程における有機溶剤Bの除去性が高まるため、乾燥ムラを生じ難く、また、得られる偏光膜の転写性やブロッキング抑制効果を向上できる。有機溶剤Bは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
有機溶剤Aの沸点と有機溶剤Bの沸点との差は、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、また、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。有機溶剤AとBの沸点が上記関係にあると、偏光膜形成用組成物の塗膜の加熱乾燥工程前における重合性液晶化合物の微結晶の発生抑制効果と、加熱乾燥工程における溶剤の除去容易性の効果とのバランスを取りやすく、得られる偏光膜にドット抜けなどの欠陥が生じ難くなるとともに、乾燥ムラの抑制効果や、得られる偏光膜の転写性やブロッキング抑制効果をより一層高めることができる。
【0047】
有機溶剤AおよびBは、それぞれ、用いる重合性液晶化合物、二色性色素および重合開始剤等に応じて、重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度に基づき、偏光膜形成用組成物を構成する各成分を溶解可能な公知の有機溶剤から適宜選択できる。有機溶剤としては、例えば、以下の溶剤が挙げられる:
メチルイソブチルケトン(116℃)、シクロヘキサノン(156℃)、シクロペンタノン(131℃)、シクロヘプタノン(180℃)、メチルアミルケトン(151℃)、イソホロン(215℃)、ピペリトン(235℃)等のケトン系溶剤;
γ-ブチロラクトン(GBL)(204℃)等のラクトン系溶剤;
о-キシレン(144℃)、m-キシレン(139℃)、p-キシレン(138℃)、メシチレン(165℃)、クメン(152℃)、エチルベンゼン(136℃)、アニソール(154℃)、アニリン(184℃)、ベンズアルデヒド(178℃)、ベンジルアルコール(205℃)、安息香酸メチル(199℃)、安息香酸エチル(213℃)、安息香酸プロピル(230℃)、安息香酸ブチル(250℃)、ニトロベンゼン(211℃)、テトラリン(207℃)等の芳香族系溶剤;
オクタン(125℃)、ノナン(151℃)、デカン(174℃)、ウンデカン(196℃)、ドデカン(216℃)等の長鎖炭化水素系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、エチレングリコール-n-プロピルエーテル(151℃)、エチレングリコール-i-プロピルエーテル(141℃)、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(171℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(162℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(189℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(230℃)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(176℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(212℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(120℃)、プロピレングリコールジメチルエーテル(120℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(188℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(171℃)、プロピレングリコールジメチルエーテル(97℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(215℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(216℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(276℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(146℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(145℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(145℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(217℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(245℃)等のグリコール系溶剤;
酢酸プロピル(102℃)、酢酸ブチル(126℃)、酢酸アミル(149℃)、乳酸エチル(155℃)、メチルメトキシプロピオネート(143℃)、エチルエトキシプロピオネート(170℃)、イソアミルプロピオネート(156℃)、イソアミルイソブチレート(179℃)、酪酸エチル(121℃)、酪酸プロピル(143℃)、酪酸ブチル(165℃)、エチレンカーボネート(244℃)、プロピレンカーボネート(242℃)等のエステル系溶剤;
N,N-ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N-ジメチルアセトアミド(165℃)、N-メチルピロリドン(202℃)、γ-ブチロラクタム(245℃)等のアミド系溶剤;および
クロロベンゼン(131℃)、1,1,2,2-テトラクロロエタン(147℃)等のハロゲン系溶剤。
【0048】
有機溶剤Aとしては、重合性液晶化合物、二色性色素や重合開始剤に対する溶解性が高いものを選択することがより有利である。本発明の好適な一実施態様において、有機溶剤Aは、好ましくはケトン系溶剤または芳香族系溶剤であり、より好ましくは芳香族系溶剤である。
【0049】
有機溶剤Bとしては、重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度に対する沸点が高く、かつ、重合性液晶化合物、二色性色素や重合開始剤に対する溶解性が高いものを選択することがより有利である。本発明の好適な一実施態様において、有機溶剤Bは、好ましくはケトン系溶剤またはラクトン系溶剤であり、より好ましくは環状ケトン系溶剤またはラクトン系溶剤である。有機溶剤Aとしてケトン系溶剤または芳香族系溶剤、好ましくは芳香族系溶剤を、有機溶剤Bとしてケトン系溶剤またはラクトン系溶剤、好ましくは環状ケトン系溶剤またはラクトン系溶剤を用いる場合、偏光膜形成用組成物の塗膜の加熱乾燥工程前における重合性液晶化合物の微結晶の発生抑制効果と、加熱乾燥工程における溶剤の除去容易性の効果とのバランスを取りやすい。これにより、乾燥ムラ、ドット抜けおよび/またはブロッキングの発生抑制効果や転写性向上効果をより一層期待できる。
【0050】
本発明の偏光膜形成用組成物における有機溶剤Aの含有量は、有機溶剤Bの含有量より多いことが好ましい。有機溶剤Aの含有量は、偏光膜形成用組成物に含まれる全有機溶剤100質量部に対して、好ましくは51~99質量部であり、より好ましくは60質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上、特に好ましくは80質量部以上であり、また、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下であり得る。また、有機溶剤Bの含有量は、偏光膜形成用組成物に含まれる全有機溶剤100質量部に対して、好ましくは1~49質量部であり、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、また、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下であり得る。有機溶剤AおよびBをそれぞれ上記含有量の範囲内で含むと、加熱乾燥工程前の塗膜においては溶剤の揮発を抑えることにより、重合性液晶化合物と二色性色素との良好な混合包摂状態を得ることができ、かつ、加熱乾燥工程においては、過度な加熱を必要とせず、重合性液晶化合物の相転移温度付近の温度下でも溶剤を十分に除去することが可能となる。これにより、ドット抜けが生じ難くなるとともに、乾燥ムラやブロッキングの発生を抑制し、転写性を向上させることができる。有機溶剤Aおよび/または有機溶剤Bが2種以上を含む場合、上記含有量は有機溶剤Aおよび/または有機溶剤Bそれぞれの合計量を意味する。本発明の効果を損なわない限り、本発明の偏光膜形成用組成物は、有機溶剤AおよびB以外の有機溶剤を含んでもよい。
【0051】
本発明の偏光膜形成用組成物は、その固形分が5~40質量%となるような量で有機溶剤を含むことが好ましい。言い換えると、本発明の偏光膜形成用組成物における有機溶剤の含有量(有機溶剤AおよびB、並びに、含む場合はそれ以外の有機溶剤の合計量)は、偏光膜形成用組成物の総質量に対して60~95質量%であることが好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲であると、加熱乾燥前の塗膜においては溶剤の揮発を抑えることができ、加熱乾燥工程においては必要以上の加熱をすることなく溶剤を乾燥除去し易く、残留溶剤の量を低減することができる。これにより、前記本発明の効果をより一層向上させることができる。
【0052】
本発明の偏光膜形成用組成物は、分子量が400以上である重合開始剤を含む。本発明者等は、偏光膜形成用組成物が先に記載したような高沸点溶剤を含む場合、該高沸点溶剤を除去するための加熱乾燥条件(乾燥温度や時間)下において、重合開始剤が有機溶剤と同様に昇華し得ることを見出した。偏光膜の形成過程において重合開始剤が昇華してしまうと、重合性液晶化合物の重合が十分に進行せず、十分に硬化した偏光膜を得ることが難しくなる。このため、得られる偏光膜の転写性が低下したり、ロール状態などでの保管下においてブロッキングが発生したりする原因となる。上述の通り、有機溶剤Aおよび有機溶剤Bの組合せを調整することによって、加熱乾燥工程時における有機溶剤、特に高沸点溶剤である有機溶剤Bの残存量等に起因する乾燥ムラは抑制し得る。しかしながら、有機溶剤Aおよび有機溶剤Bの組合せを調整するだけでは、偏光膜の転写性向上やブロッキング抑制効果を十分に得ることは難しかった。本発明者等は、重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度との関係において沸点の異なる有機溶剤Aおよび有機溶剤Bを含むとともに、重合開始剤の分子量を制御することで、有機溶剤の組合せを選択するだけでは達成することが困難な程度に高い転写性やブロッキング抑制効果を得ることができることを見出した。このような効果が得られる理由として、必ずしもこれに限定されるものではないが、400以上の分子量を有するようなある程度大きな重合開始剤は、高温下においても昇華し難く、偏光膜形成用組成物の塗膜から硬化膜(偏光膜)を得るまでの間に必要十分な重合開始剤を保持することが可能となり、重合性液晶化合物の重合が十分に進行してしっかりと硬化した偏光膜を得ることができるためと考えられる。このような分子量が400以上である重合開始剤を用いた偏光膜形成用組成物は、重合開始剤の量を増やすことなく十分に硬化した偏光膜を得られる点においても有利である。
上記重合開始剤の分子量は、2000以下であることが好ましく、より好ましくは1500以下であり、さらに好ましくは1000以下である。重合開始剤の重量平均分子量が上記上限値を超えて大きくなり過ぎると、重合性液晶化合物とともに配向し難くなり、重合性液晶化合物に包摂されて存在する二色性色素に対する変性を生じやすい傾向にある。重合開始剤の重量平均分子量が上記上限値以下であると、重合開始剤による重合性液晶化合物の配向の乱れを抑制することができ、高い配向秩序度を保持して優れた偏光性能を有する偏光膜を得ることができる。
【0053】
本発明において重合開始剤は、分子量が400以上であることを重要な特徴とするが、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
重合開始剤としては、400以上の分子量を有するものである限り特に限定されるものではなく、公知の重合開始剤を適宜選択して用いることができる。例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(分子量419)、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](分子量446)、エタノン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(分子量413)等が挙げられる。また、市販の重合開始剤を用いてもよく、例えば、Esacure one、Esacure KIP150、Esacure 1001M、Omnirad 819(いずれもIGM Resins社製)、Irgacure OXE-01、Irgacure OXE-02(ともにBASFジャパン社製)などを用いることができる。
【0055】
なお、重合開始剤の分子量の上限は特に限定されるものではなく、例えば1000以下であってよい。また、本明細書において、重合開始剤が重合物(オリゴマーやポリマー)である場合、その「分子量」は重量平均分子量を意味する。本明細書における重合開始剤の分子量は、重合開始剤の構造より算出した値であり、分子量が重量平均分子量である場合には、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味するか、重合開始剤として市販品を用いる場合には、製品規格書やカタログ等に記載される分子量を用い得る。
【0056】
本発明の偏光膜形成用組成物における、400以上の分子量を有する重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、より好ましくは1.5~8質量部、さらに好ましくは2~5質量部である。分子量が400以上である重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、転写性に優れ、ロール状態などでの保管下においてもブロッキングを生じ難い偏光膜を形成することができる。また、重合性液晶化合物の配向を大きく乱すことなく、重合性液晶化合物の重合反応を行うことができ、高い配向秩序度を保持して優れた偏光性能を有する偏光膜を得ることができる。
【0057】
本発明の偏光膜形成用組成物は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、分子量が400未満である他の重合開始剤(以下、「他の重合開始剤)ともいう)を含んでいてもよい。他の重合開始剤としては、当該分野で従来用いられている400未満の分子量を有する重合開始剤を用いることができ、例えば活性ラジカルを発生する光重合開始剤として、自己開裂型のベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物等の自己開裂型の光重合開始剤;水素引き抜き型のベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等の水素引き抜き型の光重合開始剤;並びに、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等の酸を発生する光重合開始剤などから選択し得る。
【0058】
本発明の偏光膜形成用組成物において、400以上の分子量を有する重合開始剤以外の他の重合開始剤の含有量は、400以上の分子量を有する重合開始剤を配合することにより得られる本発明による上記効果を確保し、かつ、重合性液晶化合物の高い配向秩序を保持し得るよう、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下であり、特に好ましくは他の重合開始剤を含まない。なお、本発明の偏光膜形成用組成物が他の重合開始剤を含む場合、重合開始剤の総含有量が上述した400以上の分子量を有する重合開始剤の含有量の好適な範囲として記載した範囲内になることが好ましい。
【0059】
本発明の偏光膜形成用組成物はレベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤は、偏光膜形成用組成物の流動性を調整し、該偏光膜形成用組成物を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有する成分である。具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。レベリング剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0060】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”および“BYK-392”(BYK Chemie社)等が挙げられる。
【0061】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”および同“F-483”(DIC(株));“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”および“SA-100”(AGCセイミケミカル(株));“E1830”、“E5844”((株)ダイキンファインケミカル研究所);“エフトップEF301”、“エフトップEF303”、“エフトップEF351”および“エフトップEF352”(三菱マテリアル電子化成(株))等が挙げられる。
【0062】
本発明の偏光膜形成用組成物におけるレベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。レベリング剤の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させやすく、かつ、ムラが生じ難く、より平滑な偏光膜を得られる傾向がある。
【0063】
偏光膜形成用組成物は、光増感剤をさらに含有していてもよい。光増感剤を用いることにより重合性液晶化合物の重合反応をより促進させることができる。光増感剤としては、キサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン等が挙げられる。光増感剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0064】
本発明の偏光膜形成用組成物における光増感剤の含有量は、光重合開始剤および重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよいが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0065】
偏光膜形成用組成物の重合反応をより安定的に進行させるために、該組成物には適量の重合禁止剤を含有してもよく、これにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いを制御しやすくなる。
【0066】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコールなど)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカルなどのラジカル補足剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類およびβ-ナフトール類等が挙げられる。
【0067】
偏光膜形成用組成物が重合禁止剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物の種類およびその量、並びに光増感剤の使用量などに応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合禁止剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0068】
偏光膜形成用組成物は、レベリング剤、光増感剤、および重合禁止剤以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤および滑剤などが挙げられる。偏光膜形成用組成物が他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量は、偏光膜形成用組成物の固形分に対して、0質量%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0質量%を超えて10質量%以下である。
【0069】
本発明の偏光膜形成用組成物の固形分は、好ましくは5~40質量%である。偏光膜形成用組成物の固形分濃度が上記下限値以上であると、偏光膜形成用組成物の塗膜の加熱乾燥工程前に溶剤が揮発して重合性液晶化合物の微結晶が析出するのを防ぎ、偏光膜におけるドット抜けの発生を抑制することができる。また、固形分が上記上限値以下であると、加熱乾燥工程において有機溶剤を除去しやすく、乾燥ムラを生じ難い。さらに、一般にスメクチック液晶性を示す化合物は粘度が高いため、固形分濃度を上記範囲とすることにより塗布がしやすくなり、結果として偏光膜の形成がしやすくなるという利点もある。本発明において、偏光膜形成用組成物の固形分は、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは38質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。固形分濃度は、主に有機溶剤や重合性液晶化合物の配合量により調整することができる。
【0070】
本発明の偏光膜形成用組成物は、通常、重合性液晶化合物、二色性色素、重合開始剤および有機溶剤、並びに必要に応じて上述の添加剤を混合、撹拌することにより調製することができる。
【0071】
本発明の偏光膜形成用組成物は、乾燥ムラやドット抜けを生じ難く、転写性に優れる偏光膜を得ることができる。また、ブロッキングの発生を抑制する効果に優れるため、例えばロール状態で長期間保管可能な偏光膜を製造できる。したがって、本発明は、本発明の偏光膜形成用組成物を硬化させてなる偏光膜(すなわち、偏光膜形成用組成物の硬化物)も包含する。本発明の偏光膜において、これを形成する重合性液晶化合物および/またはその重合体はスメクチック液晶状態で配向していることが好ましい。スメクチック液晶状態で配向することにより、本発明の偏光膜は高い配向秩序度を示す。
【0072】
配向秩序度の高い偏光膜は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークを意味する。本発明の偏光膜形成用組成物から形成される偏光膜は、X線回折測定においてブラッグピークを示すことが好ましく、また、重合性液晶化合物および/またはその重合体が光を吸収する方向に分子配向する「水平配向」であることがより好ましい。本発明においては分子配向の面周期間隔が3.0~6.0Åである偏光膜が好ましい。
【0073】
本発明の偏光膜は、例えば、後述する本発明の偏光板の製造方法における偏光膜の形成方法に従い製造することができる。
【0074】
本発明は、本発明の偏光膜を備えてなる偏光板も対象とする。本発明の一実施態様において、本発明の偏光板は、本発明の偏光膜に加えて基材を含む。また、本発明の一実施態様において、本発明の偏光膜は、偏光膜形成用組成物から形成される層と配向膜とを含み、特に偏光膜形成用組成物から形成される層と光配向膜とを含むことが好ましい。
【0075】
本発明の偏光板は、例えば、本発明の偏光膜形成用組成物の塗膜を形成すること、
前記塗膜を、前記偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物のネマチック-アイソトロピック相転移温度付近まで加熱乾燥した後に降温し、該重合性液晶化合物をスメクチック液晶相(スメクチック液晶状態)に相転移させること、および、
前記スメクチック液晶相(スメクチック液晶状態)を保持したまま重合性液晶化合物を重合させて偏光膜を形成すること
を含む方法により製造することができる。
【0076】
偏光膜形成用組成物の塗膜の形成は、例えば、基材上や後述する配向膜上などに偏光膜形成用組成物を塗布することにより行うことができる。また、本発明の偏光板が位相差フィルム等を含む場合にはその上に偏光膜形成用組成物を直接塗布してもよい。
【0077】
基材は通常、透明基材である。基材が表示素子の表示面に設置されないとき、例えば偏光膜から基材を取り除いた積層体を表示素子の表示面に設置する場合は、基材は透明でなくてもよい。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、波長380~780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシド等が挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の一部または全部が、エステル化されたものであり、市場から容易に入手することができる。また、セルロースエステル基材も市場から容易に入手することができる。市販のセルロースエステル基材としては、“フジタックフィルム”(富士写真フィルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”および“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などが挙げられる。
【0078】
基材の厚みは、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向があるため、通常5~300μmであり、好ましくは20~200μm、より好ましくは20~100μmである。
【0079】
偏光膜形成用組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。
【0080】
次いで、偏光膜形成用組成物から得られた塗膜を、前記偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度付近まで加熱し、溶剤を乾燥除去させると同時に重合性液晶化合物を液体相に相転移させる。その後、降温して該重合性液晶化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させる。
【0081】
塗膜の加熱温度は、用いる重合性液晶化合物および塗膜を形成する基材等のフィルムの材質などを考慮して、適宜決定し得る。重合開始剤への加熱の影響を抑えながら、有機溶剤を十分に除去し、かつ、重合性液晶化合物をアイソトロピック状態とするため、本発明における加熱温度は、好ましくは重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度より-7℃以上高く、より好ましくは-5℃以上高く、さらに好ましくは-3℃以上高い温度である。加熱温度の上限は、過度な加熱による重合開始剤の揮発、塗膜や基材等への損傷を避けるため、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。
【0082】
加熱時間は、加熱温度、用いる重合性液晶化合物の種類、有機溶剤の種類、沸点およびその量等に応じて適宜決定し得るが、通常、0.5~10分であり、好ましくは1~5分である。
【0083】
重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度付近まで加熱を行う前に、膜形成用組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で塗膜中の溶剤を適度に除去させるための予備乾燥工程を設けてもよい。該乾燥工程を設けることにより、重合性液晶化合物の配向性を向上させることができる。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられ、該乾燥工程における乾燥温度(加熱温度)は、用いる重合性液晶化合物の種類、有機溶剤の種類、沸点およびその量等に応じて適宜決定し得るが、重合性液晶化合物の微結晶の析出を抑制する観点から、通常、30~150℃であり、好ましくは50~130℃である。乾燥時間は、乾燥温度や用いる有機溶剤の種類等に応じて適宜決定し得るが、通常、0.1~5分であり、好ましくは0.1~3分である。
【0084】
次いで、上記加熱乾燥により得られた乾燥塗膜において、重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、偏光膜形成用組成物の硬化膜が偏光膜として形成される。重合方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって光重合可能なように偏光膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら光照射することにより、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても適切に偏光膜を形成できる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた偏光膜を得ることもできる。
【0085】
前記活性エネルギー線の光源としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0086】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cm2である。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは0.1秒~5分、より好ましくは0.1秒~3分、さらに好ましくは0.1秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm2、好ましくは50~2,000mJ/cm2、より好ましくは100~1,000mJ/cm2である。
【0087】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、偏光膜が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる偏光膜は、前記二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる偏光膜と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0088】
偏光膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~5μm、さらに好ましくは1~3μmである。
【0089】
偏光膜形成用組成物の塗膜は配向膜上に形成されることが好ましい。配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜としては、偏光膜形成用組成物に含まれる有機溶剤により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光により配向規制力を生じるポリマーと溶剤とを含む組成物から形成される光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、静電気や異物が発生し難く光学フィルムとしての品位に優れるという観点から、光配向膜が好ましい。
【0090】
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0091】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」ということがある)を基材に塗布し、溶剤を除去する、または、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングする(ラビング法)ことにより得られる。溶剤としては、偏光膜形成用組成物に用い得る有機溶剤として先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0092】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20%が好ましく、0.1~10%程度がさらに好ましい。
【0093】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0094】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、偏光膜形成用組成物を基材へ塗布する方法として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0095】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0096】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。
【0097】
ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることにより基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0098】
光配向膜は、通常、光反応性基を有し、光による配向規制力を生じるポリマーまたはモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材等のフィルム上に塗布して塗膜を形成して得られた塗膜から溶剤を乾燥除去し、次いで、得られた乾燥塗膜に偏光紫外線を照射することにより形成できる。光配向膜は、照射する偏光紫外線の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0099】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0100】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0101】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0102】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶剤としては、偏光膜形成用組成物において用い得る有機溶剤として先に例示したものと同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0103】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜決定できるが、光配向膜形成用組成物の総質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0104】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、偏光膜形成用組成物を基材へ塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0105】
溶剤を乾燥除去する際の温度は、用いる溶剤の種類やその量等に応じて適宜決定し得るが、通常30~150℃であり、好ましくは60~130℃である。乾燥除去する際の時間は、通常0.1~10分であり、好ましくは0.5~5分である。
【0106】
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去したものに、偏光紫外線を照射する形式でも、基材側から偏光紫外線を照射し、偏光紫外線を透過させて照射する形式でもよい。当該偏光紫外線は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光紫外線の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲の紫外線が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光紫外線を照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0107】
なお、ラビングまたは偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0108】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターンまたは複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0109】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像およびリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、および、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0110】
配向膜(配向性ポリマーを含む配向膜または光配向膜)の厚みは、通常10~10000nmの範囲であり、好ましくは10~1000nmの範囲であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10~200nm、特に好ましい30~150nmの範囲である。
【0111】
本発明の偏光板は、本発明の偏光膜および基材の他に、例えば偏光膜を保護するためのハードコート層やオーバーコート層などを含んでもよい。ハードコート層やオーバーコート層は、従来公知の材料や成分を適宜選択し、従来公知の方法により形成することができる。
【0112】
本発明の偏光板の厚みは、表示装置の屈曲性や視認性の観点から、好ましくは10~300μm、より好ましくは20~200μm、さらに好ましくは25~100μmである。
【0113】
本発明の偏光膜および偏光板は偏光性能に優れるため、種々の表示装置に好適に用いることができる。表示装置とは、表示機構を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(電場放出表示装置(FED等)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置等)および圧電セラミックディスプレイ等が挙げられ、特に有機EL表示装置およびタッチパネル表示装置が好ましく、特に有機EL表示装置が好ましい。本発明の偏光板を粘着剤または接着剤を介して表示装置の表面に貼合することにより、本発明の偏光板を含む表示装置を得ることができる。
【実施例0114】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記ない限り、質量%および質量部である。
【0115】
1.実施例1
(1)偏光膜形成用組成物の調製
下記の成分を混合し、温度80℃で1時間撹拌することで、偏光膜形成用組成物(1)を得た。重合性液晶化合物(A-6)および(A-7)は、lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)に記載の方法にしたがって製造した重合性液晶化合物であり、下記に示す構造を有する。二色性色素(I-a)~(I-c)は、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ色素であり、下記に示す構造を有する。
【0116】
<偏光膜形成用組成物の構成成分>
・重合性液晶化合物(A-6):75部
・重合性液晶化合物(A-7):25部
・二色性色素(I-a):2.5部
・二色性色素(I-b):2.5部
・二色性色素(I-c):2.5部
・重合開始剤[Esacure ONE(IGM Resins B.V社製)、分子量435]:2.5部
・レベリング剤[ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)]:1.2部
・有機溶剤[o-キシレン:イソホロン混合溶媒(90:10、質量比)]:250部
【0117】
重合性液晶化合物(A-6):
【化13】
重合性液晶化合物(A-7):
【化14】
【0118】
二色性色素(I-a):
【化15】
二色性色素(I-b):
【化16】
二色性色素(I-c):
【化17】
【0119】
(2)光配向膜形成用組成物の調製
特開2013-033249号公報記載の下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物を得た。
・下記に示す構造の光配向性ポリマー:2部
(重量平均分子量:50000)
【化18】
・溶剤[o-キシレン]:98部
【0120】
(3)水溶性ポリマー水溶液の調製
以下の合成スキームにしたがって、下記構造単位からなる水溶性ポリマーを得た。
【化19】
【0121】
ジメチルスルホキシド400g中に重量平均分子量1000のポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社製)20gと、求核剤としてN,N-ジメチル-4-アミノピリジンを0.55mg、トリエチルアミン4.6gを溶解し、撹拌しながら温度60℃まで昇温した。次いで、ジメチルスルホキシド50g中にメタクリル酸無水物10.5gを溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、温度60℃で14時間加熱撹拌することで反応させた。得られた反応溶液を室温まで冷却後、反応溶液中にメタノール481gを加えて完全に混合するように撹拌することで、反応溶液とメタノールの比率(質量)が1:1となるように調整した。この溶液中に1500mLのアセトンを徐々に加えることで、水溶性ポリマーを晶析法により結晶化させた。得られた白色結晶を含む溶液を濾過し、アセトンでよく洗浄した後に真空乾燥することで、水溶性ポリマーを20.2g得た。得られた水溶性ポリマーを水に溶解させ、3質量%の水溶性ポリマー水溶液を調製した。
【0122】
(4)HC層形成用組成物の調製
下記の成分を混合し、温度50℃で4時間撹拌して、ハードコート(HC)層形成用組成物を得た。
・下記に示す構造のアクリレートモノマー:70部
【化20】
・ウレタンアクリレート樹脂[EBECRYL4858(ダイセル・オルネクス株式会社製)]:30部
・重合開始剤[Omnirad907(IGM Resins B.V社製)]:3部
・有機溶剤[メチルエチルケトン]:10部
【0123】
<相転移温度の測定>
(i)配向膜の形成
偏光膜形成用組成物(1)中の重合性液晶化合物の相転移温度を以下の方法に従い測定した。ガラス基材上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚み100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向膜を形成した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ-008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA-20-RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。
【0124】
(ii)相転移温度の測定
重合性液晶化合物(A-6)75質量部、重合性液晶化合物(A-7)25質量部をクロロホルム400質量部に加えて80℃で1時間撹拌することにより均一に混合した混合組成物を得た。得られた組成物を前記配向膜付きガラス基材上にスピンコート法により塗布し、130℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥することにより溶剤であるクロロホルムを除去した。その後、得られた塗布膜を速やかに室温まで冷却して、重合性液晶化合物の乾燥被膜を得た。この乾燥被膜をホットプレート上で再び130℃まで昇温後、5℃/分の速度で23℃まで降温時において、偏光顕微鏡で観察をすることにより相転移温度を測定した。その結果、111.6℃でネマチック液晶相に相転移し、109.2℃でスメクチックA相に相転移し、93.9℃でスメクチックB相へ相転移し、23℃になるまでスメクチックB相を維持することを確認した。上記過程においてアイソトロピック相転移温度は111.6℃であることを確認した。
【0125】
(6)基材層付き偏光板の調製
離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ユニチカ(株)製「FF-50」、片面離型処理PETフィルム(支持基材の厚み:50μm))の離型処理面に、上記で得たHC層形成用組成物をスロットダイコーターで連続的に塗布し、温度100℃で2分間乾燥して厚み2.00μmのHC層(第1保護層)を形成した。これにより、片面離型処理PETフィルムの離型処理面上にHC層が積層されたフィルムが得られ、これを第1基材層(1)とした。
【0126】
第1基材層(1)のHC層にプラズマ処理を施した後、スロットダイコーターを用いて上記で調製した光配向膜形成用組成物を塗布して、片面離型処理PETフィルムの中央部の幅600mm範囲に塗布層を形成した。続いて、温度100℃に設定した通風乾燥炉中を2分間かけて搬送することで溶剤を除去し、HC層上の塗布層を乾燥させた。その後、乾燥後の上記塗布層に対して、片面離型処理PETフィルムの長さ方向に対して90°方向の偏光UV光を20mJ/cm2(313nm基準)の強度となるように照射することで配向規制力を付与して、HC層上に光配向膜(1)を形成した。光配向膜(1)の厚みは、約50nmであった。
【0127】
第1基材層(1)上に形成した光配向膜(1)上に、スロットダイコーターを用いて上記で調製した偏光膜形成用組成物(1)を塗布し、第1基材層(1)の中央部の幅600mm範囲に塗布層を形成した。続いて、温度110℃に設定した通風乾燥炉中を2分間かけて搬送することで溶剤を除去し、第1基材層(1)上の塗布層を乾燥させた。その後、高圧水銀灯を用いて紫外光を1000mJ/cm2(365nm基準)で照射して、乾燥後の上記塗布層に含まれる重合性液晶化合物を硬化させることで偏光膜形成用組成物の硬化物層を形成し、第1基材層(1)上に光配向膜(1)および硬化物層(これらをあわせて偏光膜)がこの順に形成された基材層付き偏光膜(1)を得た。基材層付き偏光膜(1)は、長さ方向に対して90°方向に吸収軸を有していた。硬化物層の厚みは3μmであった。なお、得られた偏光膜に対して、X線回折測定を行った結果、ブラッグピークが得られ、高次スメクチック相を反映した構造を形成することを確認した。
【0128】
次いで、基材層付き偏光膜(1)の硬化物層側にプラズマ処理を施した後、スロットダイコーターを用いて、上記で調製した水溶性ポリマー水溶液を連続的に塗布し、温度100℃で2分間乾燥して厚み2μmのオーバーコート層(第2保護層)を形成した。これにより、第1基材層(1)(片面離型処理PETフィルム/HC層)/偏光膜(光配向膜(1)/硬化物層)/オーバーコート層をこの順に備える、長尺の基材層付き偏光板(1)を得た。
【0129】
(7)偏光膜の評価
以下に記載の方法に従い、偏光膜の評価を行った。各評価結果を表1に記載する。
<乾燥ムラの評価>
得られた基材層付き偏光板(1)の塗布表面の状態を、直線偏光板がセットされたバックライト上で目視で確認し、下記の基準で評価した。
[乾燥ムラの評価基準]
〇:ムラが視認されない。
△:少しムラが視認される。
×:全体的にムラが視認される。
【0130】
<ドット抜けの評価>
基材層付き偏光膜(1)を200倍の顕微鏡にて透過観察した。また、200倍の偏光顕微鏡クロスニコル下にて偏光膜の吸収軸(分子配向方向)を45°となるように観察した。上記観察結果において、液晶ドメイン中に二色性色素が包摂されていない領域(ドット抜け)は生じていないことを確認した。
なお、目視観察において、約200~800μm程度の円状の色抜けが観察される場合、目視観察にてドット抜けが確認されたと評価し、目視では色抜けが観察されないものの、偏光顕微鏡観察において微小な円状の色抜けが観察される場合に、顕微鏡観察にてドット抜けが確認されたと評価した。
【0131】
[ドット抜け評価基準]
○:目視で確認されず、上記顕微鏡観察においても確認されなかった。
△:目視では確認されないが、上記顕微鏡観察においては確認された。
×:目視で確認され、上記顕微鏡観察においても確認された。
【0132】
<ブロッキング性の評価>
基材層付き偏光板(1)を10cm×10cmのサイズに切り出した切り出し片を5枚用意した。切り出し片の基材層側がガラス側となるように、ガラス上に5枚の切り出し片を重ね、4つの角をカプトンテープでとめて、温度90℃のオーブンに投入し、5分間保持した。保持後、切り出し片の面積(100cm2)に対する、切り出し片どうしが貼り付いた面積の割合を算出し、下記の基準で評価した。
[ブロッキングの評価基準]
〇:貼り付いた面積が20%以下
△:貼り付いた面積が20%超40%以下
×:貼り付いた面積が40%超100%以下
【0133】
<転写性の評価>
得られた基材層付き偏光板(1)を、40mm×40mmの大きさの正方形に裁断した。オーバーコート層側を、無アルカリガラス板(コーニング社製、商品名「Eagle-XG」)に、厚みが25μmのアクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名「P-3132」)を用いて貼合した後、片面離型処理PETフィルムを剥離した。
[転写性評価基準]
〇:全面が転写可能(PETフィルムとHC層との間で剥離する)
△:偏光子の一部が片面離型処理PETフィルムに残る
×:ほとんど転写できない
【0134】
2.実施例2~8、10
用いる有機溶剤の種類や混合比率を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、偏光膜形成用組成物(2)~(8)および(10)を調製し、基材層付き偏光板(2)~(8)および(10)を得た。得られた基材層付き偏光板(2)~(8)および(10)を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0135】
3.実施例9、11、比較例1、2、5
重合開始剤を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、偏光膜形成用組成物(9)、(11)、(12)、(15)および(16)を調製し、基材層付き偏光板(9)、(11)、(12)、(15)および(16)を得た。得られた基材層付き偏光板(9)、(11)、(12)、(15)および(16)を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0136】
4.比較例3、4
有機溶剤をo-キシレンのみ、または、イソホロンのみとした以外は実施例と同様にして、偏光膜形成用組成物(13)および(14)を調製し、基材層付き偏光板(13)および(14)を得た。得られた基材層付き偏光板(13)および(14)を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0137】