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  • 特開-積層体、偏光板および画像表示装置 図1
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  • 特開-積層体、偏光板および画像表示装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144163
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】積層体、偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20241003BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/13363
G02F1/1335 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026172
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023053025
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】小林 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 啓貴
(72)【発明者】
【氏名】上野 敏幸
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
【Fターム(参考)】
2H149AA07
2H149AB02
2H149AB13
2H149AB23
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA17
2H149DA18
2H149DA19
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA19
2H149FA05Z
2H149FA24Y
2H149FD05
2H149FD06
2H149FD47
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA94X
2H291FA94Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FB05
2H291FC33
2H291GA08
2H291GA23
2H291HA15
2H291LA11
2H291LA25
2H291PA53
2H291PA84
2H291PA86
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薄膜化され、かつ、熱による特性変化が小さな積層体、および当該積層体を含む偏光板、さらにこれらを有する画像表示装置を提供する。
【解決手段】式(1)を満たす光学異方性層Xと、式(2)を満たす光学異方性層Yとを含み、式(3)を満たす、積層体。
0.960≦A≦1.040(1)
0.800≦B<0.960(2)
-1.10≦D/C≦0.60(3)
[式(1)~式(3)中、Aは光学異方性層Xの波長450nmにおける面内位相差値と波長550nmにおける面内位相差値との比を表し、Bは光学異方性層Yの波長450nmにおける厚み方向の位相差値と波長550nmにおける厚み方向の位相差値との比を表し、Cは光学異方性層Xの波長550nmにおける面内位相差値を表し、Dは光学異方性層Yの波長550nmにおける厚み方向の位相差値を表す。]
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)を満たす光学異方性層Xと、下記式(2)を満たす光学異方性層Yとを含み、
下記式(3)を満たす、積層体。
0.960≦ A ≦1.040 (1)
0.800≦ B <0.960 (2)
-1.10≦ D/C ≦0.60 (3)
[式(1)中、Aは、光学異方性層Xの波長450nmにおける面内位相差値(Re(450))と波長550nmにおける面内位相差値(Re(550))との比(Re(450)/Re(550))を表す。式(2)中、Bは、光学異方性層Yの波長450nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(450))と波長550nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(550))との比(Rth(450)/Rth(550))を表す。式(3)中、Cは、光学異方性層Xの波長550nmにおける面内位相差値(Re(550))を表し、Dは、光学異方性層Yの波長550nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(550))を表す。]
【請求項2】
前記光学異方性層Xの厚みは、0.5μm以上5μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記光学異方性層Yの厚みは、0.3μm以上5μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
偏光フィルムと、請求項1に記載の光学異方性層Xと、請求項1に記載の光学異方性層Yとをこの順に含む偏光板。
【請求項5】
偏光フィルムと、請求項1に記載の光学異方性層Yと、請求項1に記載の光学異方性層Xとをこの順に含む、偏光板。
【請求項6】
前記偏光フィルムの吸収軸と前記光学異方性層Xの遅相軸との成す角度が90±5°である、請求項4に記載の偏光板。
【請求項7】
偏光フィルムの吸収軸と前記光学異方性層Xの遅相軸との成す角度が0±5°である、請求項5に記載の偏光板。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載の偏光板を含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種の光学異方性層を含む積層体、前記積層体を含む偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、イオンプレーンスイッチング(IPS)方式の液晶表示装置は、偏光子の吸収軸に対して45度の角度において斜め方向から視認した場合に、黒表示の光漏れが大きく、コントラストの低下やカラーシフトが生じやすいことが知られている。この現象は、液晶セルの表側と裏側に配置されている偏光子の吸収軸のなす角度が、見かけ上90度にならないため生じている。
【0003】
前記斜め方向からの視認時の光漏れの低減を目的とし、液晶セルと偏光子の間に位相差フィルムを配する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、nx>ny>nzの屈折率異方性を有する延伸位相差フィルムと、nz>nx>nyの屈折率異方性を有する延伸位相差フィルムを配することにより、IPS方式の液晶表示装置の光漏れを低減する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-139747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている偏光子と位相差フィルムとを積層した偏光板は、IPS方式の液晶表示装置の光漏れ低減に好適に用いられるが、この構成の液晶表示装置では、画面を斜め方向から視認した際に、表示ムラが確認される場合があった。また、画像表示装置の軽量化や使用環境の過酷化に伴い、これら位相差フィルムの薄膜化および熱による特性変化のさらなる抑止が求められている。
【0006】
本発明は上記問題に対して新規な解決手段、すなわち、2種の光学異方性層を組み合わせた積層体を提供することを目的とする。さらに、本発明は、薄膜化され、かつ、熱による特性変化が小さな積層体、および当該積層体を含む偏光板、さらにこれらを有する画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]下記式(1)を満たす光学異方性層Xと、下記式(2)を満たす光学異方性層Yとを含み、
下記式(3)を満たす、積層体。
0.960≦ A ≦1.040 (1)
0.800≦ B <0.960 (2)
-1.10≦ D/C ≦0.60 (3)
[式(1)中、Aは、光学異方性層Xの波長450nmにおける面内位相差値(Re(450))と波長550nmにおける面内位相差値(Re(550))との比(Re(450)/Re(550))を表す。式(2)中、Bは、光学異方性層Yの波長450nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(450))と波長550nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(550))との比(Rth(450)/Rth(550))を表す。式(3)中、Cは、光学異方性層Xの波長550nmにおける面内位相差値(Re(550))を表し、Dは、光学異方性層Yの波長550nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(550))を表す。]
[2]前記光学異方性層Xの厚みは、0.5μm以上5μm以下である、前記[1]に記載の積層体。
[3]前記光学異方性層Yの厚みは、0.3μm以上5μm以下である、前記[1]に記載の積層体。
[4]偏光フィルムと、前記[1]に記載の光学異方性層Xと、前記[1]に記載の光学異方性層Yとをこの順に含む偏光板。
[5]偏光フィルムと、前記[1]に記載の光学異方性層Yと、前記[1]に記載の光学異方性層Xをこの順に含む、偏光板。
[6]前記偏光フィルムの吸収軸と前記光学異方性層Xの遅相軸との成す角度が90±5°である、前記[4]に記載の偏光板。
[7]前記偏光フィルムの吸収軸と前記光学異方性層Xの遅相軸との成す角度が0±5°である、前記[5]に記載の偏光板。
[8]前記[4]~[7]のいずれか1項に記載の偏光板を含む、画像表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄膜化され、かつ、熱による特性変化が小さな積層体、および当該積層体を含む偏光板、さらにこれらを有する画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積層体は、下記式(1)を満たす光学異方性層X(以下、単に、「光学異方性層X」ともいう)と、下記式(2)を満たす光学異方性層Y(以下、単に、「光学異方性層Y」ともいう)とを含み、下記式(3)を満たす。以下、本発明の積層体の層構成の一例を図1に基づいて、本発明の偏光板の層構成の一例を図2および図3に基づいて説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0011】
図1に示される積層体10は、光学異方性層X(図1における層1)および光学異方性層Y(図1における層2)を含んでなる。図1に示される積層体10において、光学異方性層Xは下記式(1)を、光学異方性層Yは下記式(2)を満たし、さらに前記積層体10は下記式(3)を満たす。
0.960≦ A ≦1.040 (1)
0.800≦ B <0.960 (2)
-1.10≦ D/C ≦0.60 (3)
[式(1)中、Aは、光学異方性層Xの波長450nmにおける面内位相差値(Re(450))と波長550nmにおける面内位相差値(Re(550))との比(Re(450)/Re(550))を表す。式(2)中、Bは、光学異方性層Yの波長450nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(450))と波長550nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(550))との比(Rth(450)/Rth(550))を表す。式(3)中、Cは、光学異方性層Xの波長550nmにおける面内位相差値(Re(550))を表し、Dは、光学異方性層Yの波長550nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(550))を表す。]
【0012】
本発明において、光学異方性層Xの波長λnmにおける面内位相差値(Re(λ))は、「式:Re(λ)=(nx(λ)-ny(λ))×d1」により求められる。前記式中、nx(λ)は、光学異方性層Xの面内における波長λnmでの主屈折率を表し、ny(λ)は、nxと同一面内でnxの方向に対して直交する方向の波長λnmでの屈折率を表し、d1は、光学異方性層Xの厚みを示す。
【0013】
光学異方性層Xが式(1)を満たす場合、当該光学異方性層Xは、短波長における面内位相差値と長波長における面内位相差値とがほぼ同等となる特性を示す。このような光学異方性層Xを後述する光学異方性層Yと組み合わせることにより、液晶表示装置に組み込んだ場合において、黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止効果に優れる積層体を得ることができる。また、式(1)において、Aの値は、好ましくは0.970以上であり、より好ましくは0.975以上であり、また、好ましくは1.030以下であり、より好ましくは1.025以下である。Aの値が上記範囲であれば、液晶表示装置を黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止効果により優れた積層体を得ることが可能となる。
【0014】
上記面内位相差値は、光学異方性層Xの厚み(d1)によって調整することができる。面内位相差値は、「式:Re(λ)=(nx(λ)-ny(λ))×d1」によって決定されることから、所望の面内位相差値を得るには、3次元屈折率と膜厚(d1)とを調整すればよい。なお、3次元屈折率は、光学異方性層Xを構成する化合物の分子構造並びに配向状態に依存する。
【0015】
また、光学異方性層Xは、下記式(4)を満たすことが好ましい。
100nm≦Re(550)≦160nm (4)
[式(4)中、Re(λ)は上記と同じ意味である。]
光学異方性層Xの面内位相差値(Re(550))が式(4)の範囲内であると、該光学異方性層Xを含む積層体や該積層体を含む偏光板を液晶表示装置に適用した場合の黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止効果が顕著になる。面内位相差値(Re(550))のさらに好ましい範囲は、110nm≦Re(550)≦150nmである。
【0016】
本発明において、光学異方性層Yの波長λnmにおける厚み方向の位相差値(Rth(λ))は、「式:Rth(λ)=((nx(λ)+ny(λ))/2-nz(λ))×d2」により求められる。前記式中、nx(λ)は波長λnmにおける光学異方性層Yの面内主屈折率を表し、ny(λ)は、波長λnmにおけるnx(λ)に対して面内で直交する方向の屈折率を表し、nz(λ)は、波長λnmにおける光学異方性層Yの厚み方向の屈折率を表し、nx(λ)=ny(λ)である場合には、nx(λ)は、光学異方性層Yの面内で任意の方向の屈折率とすることができ、d2は光学異方性層Yの厚みを示す。
【0017】
光学異方性層Yが式(2)を満たす場合、当該光学異方性層Yは、長波長ほど厚み方向の位相差値が大きくなる逆波長分散特性を示す。このような光学異方性層Yを前記光学異方性層Xと組み合わせることにより、液晶表示装置に組み込んだ場合において、黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止効果に優れる積層体を得ることができる。また、式(2)において、Bの値は、好ましくは0.810以上であり、より好ましくは0.820以上であり、また、好ましくは0.955以下であり、より好ましくは0.950以下である。Bの値が上記範囲であれば、液晶表示装置を黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止効果により優れた積層体を得ることが可能となる。
【0018】
上記厚み方向の位相差値は、光学異方性層Yの厚み(d2)によって調整することができる。厚み方向の位相差値は、「式:Rth(λ)=((nx(λ)+ny(λ))/2-nz(λ))×d2」によって決定されることから、所望の膜厚方向の位相差値(Rth(λ))を得るためには、3次元屈折率と膜厚(d2)とを調整すればよい。なお、3次元屈折率は、光学異方性層Yを構成する化合物の分子構造並びに配向状態に依存する。
【0019】
また、光学異方性層Yは、黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止効果の程度を示す一指標として、下記式(5)を満たすことが好ましい。
-120nm≦Rth(550)≦60nm (5)
[式(5)中、Rth(550)は上記と同じ意味である。]
黒表示時の斜め方向から視視認した際の光漏れやカラーシフトをさらに抑制させ得る観点から、光学異方性層Yの膜厚方向の位相差値(Rth(550))は、より好ましくは-115nm以上であり、さらに好ましくは-110nm以上であり、また、より好ましくは55nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。
【0020】
本発明において、前記式(1)を満たす光学異方性層Xと、前記式(2)を満たす光学異方性層Yとを含む積層体は、さらに下記式(3)を満たす。
-1.10≦ D/C ≦0.60 (3)
[式(3)中、Cは、光学異方性層Xの波長550nmにおける面内位相差値(Re(550))を表し、Dは、光学異方性層Yの波長550nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(550))を表す。]
【0021】
積層体が式(3)を満たす場合、当該積層体を液晶表示装置に組み込んだ場合において、黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止効果が顕著となることを、本発明者らの検討の結果見出した。
【0022】
前記式(3)において、本発明の積層体を液晶表示装置に組み込んだ場合における黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止効果の観点から、D/Cの値は、好ましくは-1.08以上であり、より好ましくは-1.05以上であり、特に好ましくは-1.00以上であり、また、好ましくは0.58以下であり、より好ましくは0.56以下であり、特に好ましくは0.54以下である。D/Cの値が上記範囲であれば、液晶表示装置を黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止効果により優れた積層体を得ることが可能となる。
【0023】
以下、本発明の積層体の各構成について詳細に説明する。
〔光学異方性層X〕
本発明の積層体を構成する光学異方性層Xとしては、例えば、延伸フィルムまたは重合性液晶化合物が膜平面に対して水平方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物層が挙げられる。
【0024】
延伸フィルムとしては、例えば、一軸延伸されたポリカーボネート(PC)フィルム、一軸延伸されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、一軸延伸されたシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム等が挙げられる。これら延伸フィルムの面内位相差値は、延伸フィルムを構成する樹脂の組成、延伸方法や延伸フィルムの厚みを制御することにより調節することができる。
【0025】
重合性液晶化合物が膜平面に対して水平方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物層としては、ネマチック液晶(Nematic Liquid Crystal)または円盤状液晶(Discotic Liquid Crystal)を用いて形成することができる。重合性液晶組成物の硬化物層の面内位相差値は、重合性液晶化合物の種類、重合性液晶化合物の硬化物の配向状態や厚みを制御することにより調節することができる。
【0026】
光学異方性層Xの厚みは、好ましくは0.5μm以上5μm以下であり、より好ましくは0.6μm以上4.5μm以下であり、さらに好ましくは0.7μm以上4μm以下である。厚みが薄い方が好ましいことから、以下説明するように、光学異方性層Xは、好ましくは、重合性液晶化合物が膜平面に対して水平方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物(以下、「水平配向液晶硬化膜」ともいう)であり、さらに好ましくは、少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物が硬化膜の面内方向に対して水平に配向した状態で硬化してなる液晶硬化膜である。光学異方性層Xの厚みが上記範囲を満たした水平配向液晶硬化膜であることにより、画像表示装置の軽量化を達成することができ、さらに後述するように熱による特性変化が小さな積層体を得ることが可能になる。
【0027】
本発明において、水平配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物は、重合性基を有する液晶化合物を意味し、特に少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物が好ましい。
重合性基とは、重合開始剤から発生する活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基がさらに好ましい。
【0028】
重合性液晶化合物が示す液晶性はサーモトロピック性液晶であってもよいし、リオトロピック性液晶であってもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。
【0029】
重合性液晶化合物としては、一般に正波長分散性を示す重合性液晶化合物と逆波長分散性を示す重合性液晶化合物とが挙げられ、どちらか一方の種類の重合性液晶化合物のみを使用することもできるし、両方の種類の重合性液晶化合物を混合して用いることもできる。黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止効果の観点においては、光学異方性層Xが前記式(1)を満たすよう組成を調整することが好ましい。
【0030】
逆波長分散性を示す重合性液晶化合物としては、下記(A)~(D)の特徴を有する化合物であることが好ましい。
(A)ネマチック相またはスメクチック相を形成し得る化合物である。
(B)該重合性液晶化合物の長軸方向(a)上にπ電子を有する。
(C)長軸方向(a)に対して交差する方向〔交差方向(b)〕上にπ電子を有する。
(D)長軸方向(a)に存在するπ電子の合計をN(πa)、長軸方向に存在する分子量の合計をN(Aa)として下記式(i)で定義される重合性液晶化合物の長軸方向(a)のπ電子密度:
D(πa)=N(πa)/N(Aa) (i)
と、交差方向(b)に存在するπ電子の合計をN(πb)、交差方向(b)に存在する分子量の合計をN(Ab)として下記式(ii)で定義される重合性液晶化合物の交差方向(b)のπ電子密度:
D(πb)=N(πb)/N(Ab) (ii)
とが、式(iii)
0≦〔D(πa)/D(πb)〕<1 (iii)
の関係にある〔すなわち、交差方向(b)のπ電子密度が、長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きい〕。また、上記記載のように長軸およびそれに対して交差方向上にπ電子を有する重合性液晶化合物は、例えばT字構造となる。
【0031】
上記(A)~(D)の特徴において、長軸方向(a)およびπ電子数Nは以下のように定義される。
・長軸方向(a)は、例えば棒状構造を有する化合物であれば、その棒状の長軸方向である。
・長軸方向(a)上に存在するπ電子数N(πa)には、重合反応により消失するπ電子は含まない。
・長軸方向(a)上に存在するπ電子数N(πa)には、長軸上のπ電子およびこれと共役するπ電子の合計数であり、例えば長軸方向(a)上に存在する環であって、ヒュッケル則を満たす環に存在するπ電子の数が含まれる。
・交差方向(b)に存在するπ電子数N(πb)には、重合反応により消失するπ電子は含まない。
上記を満たす重合性液晶化合物は、長軸方向にメソゲン構造を有している。このメソゲン構造によって、液晶相(ネマチック相、スメクチック相)を発現する。
【0032】
上記(A)~(D)を満たす重合性液晶化合物を、液晶硬化膜を形成する膜(層)上に塗布し、相転移温度以上に加熱することにより、ネマチック相やスメクチック相のような液晶相を形成することが可能である。この重合性液晶化合物が配向して形成された液晶相では通常、重合性液晶化合物の長軸方向が互いに平行になるように配向しており、この長軸方向が液晶相の配向方向となる。このような重合性液晶化合物を膜状とし、液晶相の状態で重合させると、長軸方向(a)に配向した状態で重合した重合体からなる重合体膜を形成することができる。この重合体膜は、長軸方向(a)上のπ電子と交差方向(b)上のπ電子により紫外線を吸収する。ここで、交差方向(b)上のπ電子により吸収される紫外線の吸収極大波長をλbmaxとする。λbmaxは通常300nm~400nmである。π電子の密度は、上記式(iii)を満足していて、交差方向(b)のπ電子密度が長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きいので、交差方向(b)に振動面を有する直線偏光紫外線(波長はλbmax)の吸収が、長軸方向(a)に振動面を有する直線偏光紫外線(波長はλbmax)の吸収よりも大きな重合体膜となる。その比(直線偏光紫外線の交差方向(b)の吸光度/長軸方向(a)の吸光度の比)は、例えば1.0超、好ましくは1.2以上、通常30以下であり、例えば10以下である。
【0033】
上記特性を有する重合性液晶化合物は、一般に逆波長分散性を示すものであることが多い。具体的には、例えば、下記式(X)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(X)」ともいう)が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
式(X)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を有する二価の基を表す。ここでいう芳香族基とは、該環構造が有するπ電子数がヒュッケル則に従い[4n+2]個であるものをさし、例えば後述する(Ar-1)~(Ar-23)で例示されるようなAr基を、二価の連結基を介して2個以上有していてもよい。ここでnは整数を表す。-N=や-S-等のヘテロ原子を含んで環構造を形成している場合、これらヘテロ原子上の非共有結合電子対を含めてヒュッケル則を満たし、芳香族性を有する場合も含む。該芳香族基中には窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも1つ以上が含まれることが好ましい。二価の基Arに含まれる芳香族基は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。芳香族基が1つである場合、二価の基Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基であってもよい。二価の基Arに含まれる芳香族基が2つ以上である場合、2つ以上の芳香族基は互いに単結合、-CO-O-、-O-などの二価の結合基で結合していてもよい。
およびGはそれぞれ独立に、二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を表す。ここで、該二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。
、L、BおよびBはそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基である。
k、lは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦k+lの関係を満たす。ここで、2≦k+lである場合、BおよびB、GおよびGは、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
およびEはそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、炭素数4~12のアルカンジイル基がより好ましい。また、アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH-は、-O-、-S-、-SiH-、-C(=O)-で置換されていてもよい。
およびPは互いに独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。
【0036】
およびGは、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、または無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、または無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。
また、複数存在するGおよびGのうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、また、LまたはLに結合するGおよびGのうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0037】
およびLはそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CR=CR-、または-C≡C-である。ここで、Ra1~Ra8はそれぞれ独立に単結合、または炭素数1~4のアルキレン基を表し、RおよびRは炭素数1~4のアルキル基または水素原子を表す。LおよびLはそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa2-1-、-CH-、-CHCH-、-COORa4-1-、または-OCORa6-1-である。ここで、Ra2-1、Ra4-1、Ra6-1はそれぞれ独立に単結合、-CH-、-CHCH-のいずれかを表す。LおよびLはそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CHCH-、-COO-、-COOCHCH-、または-OCO-である。
【0038】
およびBはそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra9ORa10-、-Ra11COORa12-、-Ra13OCORa14-、またはRa15OC=OORa16-である。ここで、Ra9~Ra16はそれぞれ独立に単結合、または炭素数1~4のアルキレン基を表す。BおよびBはそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa10-1-、-CH-、-CHCH-、-COORa12-1-、または-OCORa14-1-である。ここで、Ra10-1、Ra12-1、Ra14-1はそれぞれ独立に単結合、-CH-、-CHCH-のいずれかを表す。BおよびBはそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CHCH-、-COO-、-COOCHCH-、-OCO-、または-OCOCHCH-である。
【0039】
kおよびlは、逆波長分散性発現の観点から2≦k+l≦6の範囲が好ましく、k+l=4であることが好ましく、k=2かつl=2であることがより好ましい。k=2かつl=2であると対称構造となるため好ましい。
【0040】
またはPで表される重合性基としては、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基およびビニルオキシ基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0041】
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、および電子吸引性基から選ばれる少なくとも一つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、およびフェナンスロリン環等が挙げられる。なかでも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、またはベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。また、Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0042】
式(X)中、Arで表される2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。また、好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、さらに好ましくは24以下である。
【0043】
Arで表される芳香族基としては、例えば以下の基が挙げられる。
【0044】
【化2】
【0045】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、*印は連結部を表し、Z、ZおよびZは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキルスルフィニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数1~12のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~12のN-アルキルスルファモイル基または炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。また、Z、ZおよびZは、重合性基を含んでいてもよい。
【0046】
およびQは、それぞれ独立に、-CR2’3’-、-S-、-NH-、-NR2’-、-CO-または-O-を表し、R2’およびR3’は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0047】
、およびJは、それぞれ独立に、炭素原子、または窒素原子を表す。
【0048】
、YおよびYは、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
【0049】
およびWは、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基またはハロゲン原子を表し、mは0~6の整数を表す。
【0050】
、YおよびYにおける芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0051】
、YおよびYは、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、または芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、または芳香環集合に由来する基をいう。
【0052】
、ZおよびZは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、Zは、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましく、ZおよびZは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。また、Z、ZおよびZは重合性基を含んでいてもよい。
【0053】
およびQは、-NH-、-S-、-NR2’-、-O-が好ましく、R2’は水素原子が好ましい。中でも-S-、-O-、-NH-が特に好ましい。
【0054】
式(Ar-1)~(Ar-23)の中でも、式(Ar-6)および式(Ar-7)が分子の安定性の観点から好ましい。
【0055】
式(Ar-16)~(Ar-23)において、Yは、これが結合する窒素原子およびZと共に、芳香族複素環基を形成していてもよい。芳香族複素環基としては、Arが有していてもよい芳香族複素環として前記したものが挙げられるが、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。また、Yは、これが結合する窒素原子およびZと共に、前述した置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。
【0056】
また、本発明において水平配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶化合物として、例えば、下記式(Y)で表される基を含む化合物(以下、「重合性液晶化合物(Y)」ともいう)を用いてもよい。重合性液晶化合物(Y)は一般に正波長分散性を示す傾向にある。重合性液晶化合物は単独または2種以上を組み合わせて用いることができ重合性液晶化合物(X)と重合性液晶化合物(Y)とを組み合わせて用いてもよい。
【0057】
P11-B11-E11-B12-A11-B13- (Y)
[式(Y)中、P11は、重合性基を表わす。
A11は、2価の脂環式炭化水素基または2価の芳香族炭化水素基を表わす。該2価の脂環式炭化水素基および2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該炭素数1~6のアルキル基および該炭素数1~6アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
B11は、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR16-、-NR16-CO-、-CO-、-CS-または単結合を表わす。R16は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表わす。
B12およびB13は、それぞれ独立に、-C≡C-、-CH=CH-、-CH-CH-、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C(=O)-NR16-、-NR16-C(=O)-、-OCH-、-OCF-、-CHO-、-CFO-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-または単結合を表す。
E11は、炭素数1~12のアルカンジイル基を表わし、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-または-CO-に置き換わっていてもよい。]
【0058】
A11の芳香族炭化水素基および脂環式炭化水素基の炭素数は、3~18の範囲であることが好ましく、5~12の範囲であることがより好ましく、5または6であることが特に好ましい。A11としては、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、1,4-フェニレン基が好ましい。
【0059】
E11としては、直鎖状の炭素数1~12のアルカンジイル基が好ましい。該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-に置き換っていてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、へキサン-1,6-ジイル基、へプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基およびドデカン-1,12-ジイル基等の炭素数1~12の直鎖状アルカンジイル基;-CH-CH-O-CH-CH-、-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-および-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-等が挙げられる。
B11としては、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-が好ましく、中でも、-CO-O-がより好ましい。
B12およびB13としては、それぞれ独立に、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-が好ましく、中でも、-O-または-O-C(=O)-O-がより好ましい。
【0060】
P11で示される重合性基としては、重合反応性、特に光重合反応性が高いという点で、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易な上、液晶化合物の製造自体も容易であることから、重合性基は、下記の式(P-11)~式(P-15)で表わされる基であることが好ましい。
【0061】
【化3】
[式(P-11)~(P-15)中、R17~R21はそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基または水素原子を表わす。]
【0062】
式(P-11)~式(P-15)で表わされる基の具体例としては、下記式(P-16)~式(P-20)で表わされる基が挙げられる。
【0063】
【化4】
【0064】
P11は、式(P-14)~式(P-20)で表わされる基であることが好ましく、ビニル基、p-スチルベン基、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
P11-B11-で表わされる基が、アクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。
【0065】
重合性液晶化合物(Y)としては、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-B16-E12-B17-P12 (I)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-F11 (II)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-E12-B17-P12 (III)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-F11 (IV)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-E12-B17-P12 (V)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-F11 (VI)
(式中、
A12~A14はそれぞれ独立に、A11と同義であり、B14~B16はそれぞれ独立に、B12と同義であり、B17は、B11と同義であり、E12は、E11と同義である。
F11は、水素原子、炭素数1~13のアルキル基、炭素数1~13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(-SOH)、カルボキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わし、該アルキル基およびアルコキシ基を構成する-CH-は、-O-に置き換っていてもよい。)
【0066】
重合性液晶化合物(Y)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、特開2011-6360号公報および特開2011-207765号公報記載の重合性液晶が挙げられる。
【0067】
重合性液晶化合物(Y)の具体例としては、下記式(I-1)~式(I-4)、式(II-1)~式(II-4)、式(III-1)~式(III-26)、式(IV-1)~式(IV-26)、式(V-1)~式(V-2)および式(VI-1)~式(VI-6)で表わされる化合物が挙げられる。なお、下記式中、k1およびk2は、それぞれ独立して、2~12の整数を表わす。これらの重合性液晶化合物(Y)は、その合成の容易さ、または、入手の容易さの点で、好ましい。
【0068】
【化5】
【0069】
【化6】
【0070】
【化7】
【0071】
【化8】
【0072】
【化9】
【0073】
【化10】
【0074】
【化11】
【0075】
【化12】
【0076】
【化13】
【0077】
本発明において、水平配向液晶硬化膜は波長300~400nmの間に少なくとも1つの極大吸収を有することが好ましく、水平配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物は、波長300~400nmの間に極大吸収波長を有する重合性液晶化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。重合性液晶組成物に光重合開始剤が含まれる場合、長期保管時に重合性液晶化合物の重合反応およびゲル化が進行するおそれがある。しかし、重合性液晶化合物の極大吸収波長が300~400nmであれば保管中に紫外光が曝露されても、光重合開始剤からの反応活性種の発生および該反応活性種による重合性液晶化合物の重合反応およびゲル化の進行を有効に抑制できる。従って、重合性液晶組成物の長期安定性の点で有利となり、得られる液晶硬化膜の配向性および膜厚の均一性を向上できる。なお、重合性液晶化合物の極大吸収波長は、溶媒中で紫外可視分光光度計を用いて測定できる。該溶媒は重合性液晶化合物を溶解し得る溶媒であり、例えばクロロホルム等が挙げられる。
【0078】
水平配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは85~98質量部であり、さらに好ましくは90~95質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、得られる液晶硬化膜の配向性の観点から有利である。なお、本発明において、重合性液晶組成物の固形分とは、重合性液晶組成物から有機溶媒等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
【0079】
水平配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物に加えて、溶媒、重合開始剤、レベリング剤、酸化防止剤、光増感剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
水平配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物は、通常、溶媒に溶解した状態で基材や水平配向膜等の上に塗布されるため、溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、重合性液晶化合物を溶解し得る溶媒が好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶媒であることが好ましい。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノールおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートおよび乳酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサンおよびヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフランおよびジメトキシエタン等のエーテル溶媒;クロロホルムおよびクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独または二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、アルコール溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、塩素含有溶媒、アミド系溶媒および芳香族炭化水素溶媒が好ましい。
【0081】
重合性液晶組成物中の溶媒の含有量は、重合性液晶組成物100質量部に対して、好ましくは50~98質量部、より好ましくは70~95重量部である。従って、重合性液晶組成物100質量部に占める固形分は、2~50質量部が好ましい。固形分が50質量部以下であると、重合性液晶組成物の粘度が低くなることから、膜の厚みが略均一になり、ムラが生じ難くなる傾向がある。上記固形分は、製造しようとする液晶硬化膜の厚みを考慮して適宜定めることができる。
【0082】
重合開始剤は、熱または光の寄与によって反応活性種を生成し、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物である。反応活性種としては、ラジカルまたはカチオンまたはアニオン等の活性種が挙げられる。中でも反応制御が容易であるという観点から、光照射によってラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0083】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア127、イルガキュア2959、イルガキュア754、イルガキュア379EG(以上、BASFジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI-6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーN-1717、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(以上、株式会社ADEKA製)、TAZ-A、TAZ-PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)およびTAZ-104(三和ケミカル社製)が挙げられる。
【0084】
光重合開始剤は、光源から発せられるエネルギーを十分に活用でき、生産性に優れるため、極大吸収波長が300nm~400nmであると好ましく、300nm~380nmであるとより好ましく、中でも、α-アセトフェノン系重合開始剤、オキシム系光重合開始剤が好ましい。
【0085】
α-アセトフェノン化合物としては、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オンおよび2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-(4-メチルフェニルメチル)ブタン-1-オン等が挙げられ、より好ましくは2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オンおよび2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オンが挙げられる。α-アセトフェノン化合物の市販品としては、イルガキュア369、379EG、907(以上、BASFジャパン(株)製)およびセイクオールBEE(精工化学社製)等が挙げられる。
【0086】
オキシム系光重合開始剤は、光が照射されることによってフェニルラジカルやメチルラジカル等のラジカルを生成させる。このラジカルにより重合性液晶化合物の重合が好適に進行するが、中でもメチルラジカルを発生させるオキシム系光重合開始剤は重合反応の開始効率が高い点で好ましい。また、重合反応をより効率的に進行させるという観点から、波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能な光重合開始剤を使用することが好ましい。波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能な光重合開始剤としては、オキシム構造を含むトリアジン化合物やカルバゾール化合物が好ましく、感度の観点からはオキシムエステル構造を含むカルバゾール化合物がより好ましい。オキシム構造を含むカルバゾール化合物としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、イルガキュアOXE-01、イルガキュアOXE-02、イルガキュアOXE-03(以上、BASFジャパン株式会社製)、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831(以上、株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
【0087】
光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常、0.1~30質量部であり、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは1~15質量部である。上記範囲内であれば、重合性基の反応が十分に進行し、かつ、重合性液晶化合物の配向を乱し難い。
【0088】
レベリング剤とは、重合性液晶組成物の流動性を調整し、組成物を塗布して得られる塗膜をより平坦にする機能を有する添加剤であり、例えば、シリコーン系、ポリアクリレート系およびパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。レベリング剤として市販品を用いてもよく、具体的には、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、FZ2123(以上、全て東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22-161A、KF6001(以上、全て信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF-4446、TSF4452、TSF4460(以上、全てモメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製)、フロリナート(fluorinert)(登録商標)FC-72、同FC-40、同FC-43、同FC-3283(以上、全て住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)R-08、同R-30、同R-90、同F-410、同F-411、同F-443、同F-445、同F-470、同F-477、同F-479、同F-482、同F-483、同F-556(以上、いずれもDIC(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S-381、同S-382、同S-383、同S-393、同SC-101、同SC-105、KH-40、SA-100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM-1000、BM-1100、BYK-352、BYK-353およびBYK-361N(いずれも商品名:BM Chemie社製)等が挙げられる。レベリング剤は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0089】
レベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がさらに好ましい。レベリング剤の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物を配向させることが容易であり、かつ得られる液晶硬化膜がより平滑となる傾向にあるため好ましい。
【0090】
酸化防止剤を配合することにより、重合性液晶化合物の重合反応をコントロールすることができる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、ニトロソ系酸化防止剤から選ばれる一次酸化防止剤であってもよいし、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤から選ばれる二次酸化防止剤であってもよい。重合性液晶化合物の配向を乱すことなく、重合性液晶化合物を重合するためには、酸化防止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部である。酸化防止剤は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0091】
また、光増感剤を用いることにより、光重合開始剤を高感度化することができる。光増感剤としては、例えば、キサントン、チオキサントン等のキサントン類;アントラセンおよびアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類;フェノチアジン;ルブレンが挙げられる。光増感剤は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。光増感剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.05~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部である。
【0092】
水平配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物と、溶媒や光重合開始剤、および重合性液晶化合物以外の成分とを所定温度で撹拌等することにより得ることができる。
【0093】
〔光学異方性層Y〕
本発明の積層体を構成する光学異方性層Yとしては、例えば、重合性液晶化合物が膜平面に対して垂直方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物(以下、「垂直配向液晶硬化膜」ともいう)が挙げられる。本発明において、垂直配向液晶硬化膜は垂直配向促進剤を含む。すなわち、本発明において、垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物は垂直配向促進剤を含むことが好ましい。本発明において、垂直配向促進剤とは膜平面に対して垂直方向へ重合性液晶化合物の液晶配向を促進させる材料を意味する。垂直配向液晶硬化膜が垂直配向促進剤を含む重合性液晶組成物から形成することにより、垂直配向膜なしで垂直配向液晶硬化膜を形成することができる。これにより、本発明の積層体においては、垂直配向膜を形成する必要がなく、積層体の製造工程が簡素化され、生産性よく積層体を製造することができる。
【0094】
重合性液晶化合物の垂直方向への配向を促進させる垂直配向促進剤としては、非金属原子からなるイオン性化合物および非イオン性シラン化合物等が挙げられる。垂直配向液晶硬化膜が、非イオン性シラン化合物および非金属原子からなるイオン性化合物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、非イオン性シラン化合物および非金属原子からなるイオン性化合物をともに含むことがより好ましい。
【0095】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が非イオン性シラン化合物を含むと、非イオン性シラン化合物が重合性液晶組成物の表面張力を低下させ、該重合性液晶組成物から形成された乾燥塗膜においては、乾燥塗膜と空気界面に非イオン性シラン化合物が偏在する傾向にあり、重合性液晶化合物に対する垂直配向規制力を高め、乾燥塗膜内において重合性液晶化合物が膜平面に対して垂直方向に配向する傾向にある。これにより、重合性液晶化合物が垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜を形成することができる。
【0096】
非イオン性シラン化合物は、非イオン性であってSi元素を含む化合物である。非イオン性シラン化合物としては、例えば、ポリシランのようなケイ素ポリマー、シリコーンオイルおよびシリコーンレジンのようなシリコーン樹脂、並びにシリコーンオリゴマー、シルセスシロキサンおよびアルコキシシランのような有機無機シラン化合物(より具体的には、シランカップリング剤等)等が挙げられる。
【0097】
非イオン性シラン化合物は、シリコーンモノマータイプのものであってもよく、シリコーンオリゴマー(ポリマー)タイプのものであってもよい。また、非イオン性シラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
シランカップリング剤は、末端にビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、カルボキシ基、およびヒドロキシル基からなる群から選択される少なくとも1種のような官能基と、少なくとも1つのアルコキシシリル基またはシラノール基とを有するSi元素を含む化合物である。これらの官能基を適宜選定することにより、垂直配向液晶硬化膜の機械的強度の向上、垂直配向液晶硬化膜の表面改質、垂直配向液晶硬化膜と隣接する層との密着性向上などの特異な効果を付与することが可能となる。密着性の観点からは、シランカップリング剤がアルコキシシリル基ともう1つの異なる反応基(たとえば、上記官能基)とを有するシランカップリング剤であることが好ましい。さらに、シランカップリング剤が、アルコキシシリル基と極性基とを有するシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤がその分子内に少なくとも1つのアルコキシシリル基と、少なくとも1つの極性基とを有すると、重合性液晶化合物の垂直配向性がより向上しやすく、垂直配向促進効果が顕著に得られる傾向にある。極性基としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアヌレート基、メルカプト基、カルボキシ基およびヒドロキシ基が挙げられる。なお、極性基はシランカップリング剤の反応性を制御するために適宜置換基または保護基を有していてもよい。
【0099】
市販のシランカップリング剤としては、たとえば、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22-161A、KF6001、KBM-1003、KBE-1003、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-573、KBM-575、KBM-9659、KBE-585、KBM-802、KBM-803、KBE-846、およびKBE-9007のような信越化学工業(株)製のシランカップリング剤が挙げられる。
【0100】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が非イオン性シラン化合物を含む場合、その含有量は、通常、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~4質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部である。非イオン性シラン化合物の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶組成物の良好な塗布性を維持しながら、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に促進させることができる。
【0101】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が、非金属原子からなるイオン性化合物を含むと、該重合性液晶組成物から形成された乾燥塗膜においては、静電相互作用によって重合性液晶化合物に対する垂直配向規制力が発現し、乾燥塗膜内において重合性液晶化合物が膜平面に対して垂直方向に配向する傾向にある。これにより、重合性液晶化合物が垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜を形成することができる。
【0102】
非金属原子からなるイオン性化合物としては、たとえば、オニウム塩(より具体的には、窒素原子がプラスの電荷を有する第四級アンモニウム塩、第三級スルホニウム塩、およびリン原子がプラスの電荷を有する第四級ホスホニウム塩等)が挙げられる。これらのオニウム塩のうち、重合性液晶化合物の垂直配向性をより向上させ得る観点から第四級オニウム塩が好ましく、入手性および量産性を向上させる観点から、第四級ホスホニウム塩または第四級アンモニウム塩がより好ましい。オニウム塩は分子内に2つ以上の第四級オニウム塩部位を有していてもよく、オリゴマーやポリマーであってもよい。
【0103】
非金属原子からなるイオン性化合物の分子量は、100以上10,000以下であることが好ましい。分子量が上記範囲内であると、重合性組成物の塗布性を確保したまま重合性液晶化合物の垂直配向性を向上させやすい。イオン性化合物の分子量は、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは3000以下である。
【0104】
非金属原子からなるイオン性化合物のカチオン成分としては、例えば、無機のカチオンおよび有機のカチオンが挙げられる。中でも、重合性液晶化合物の配向欠陥を生じ難いことから、有機のカチオンが好ましい。有機のカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオンおよびホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0105】
非金属原子からなるイオン性化合物は一般的に対アニオンを有する。上記カチオン成分の対イオンとなるアニオン成分としては、例えば、無機のアニオンおよび有機のアニオンが挙げられる。中でも、重合性液晶化合物の配向欠陥を生じ難いことから、有機のアニオンが好ましい。なお、カチオンとアニオンとは、必ずしも一対一の対応となっている必要があるわけではない。
【0106】
アニオン成分としては、具体的に例えば、以下のようなものが挙げられる。
クロライドアニオン〔Cl〕、
ブロマイドアニオン〔Br〕、
ヨーダイドアニオン〔I〕、
テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl 〕、
ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔AlCl 〕、
テトラフルオロボレートアニオン〔BF 〕、
ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF 〕、
パークロレートアニオン〔ClO 〕、
ナイトレートアニオン〔NO 〕、
アセテートアニオン〔CHCOO〕、
トリフルオロアセテートアニオン〔CFCOO〕、
フルオロスルホネートアニオン〔FSO 〕、
メタンスルホネートアニオン〔CHSO 〕、
トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CFSO 〕、
p-トルエンスルホネートアニオン〔p-CHSO 〕、
ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(FSO〕、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CFSO〕、
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CFSO〕、
ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF 〕、
ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF 〕、
ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF 〕、
ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF 〕、
ジメチルホスフィネートアニオン〔(CHPOO〕、
(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF) 〕(たとえば、nは1~3の整数を表す)、
ジシアナミドアニオン〔(CN)〕、
チオシアンアニオン〔SCN〕、
パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔CSO 〕、
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(CSO〕、
パーフルオロブタノエートアニオン〔CCOO〕、および
(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン
〔(CFSO)(CFCO)N〕。
【0107】
非金属原子からなるイオン性化合物の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分との組合せから適宜選択することができる。具体的なカチオン成分とアニオン成分の組合せである化合物としては、以下のようなものが挙げられる。
【0108】
(ピリジニウム塩)
N-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ヘキシルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-オクチルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム p-トルエンスルホネート、および
N-オクチル-4-メチルピリジニウム p-トルエンスルホネート。
【0109】
(イミダゾリウム塩)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム p-トルエンスルホネート、
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム メタンスルホネートなど。
【0110】
(ピロリジニウム塩)
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム p-トルエンスルホネートなど。
【0111】
(アンモニウム塩)
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
テトラヘキシルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
トリオクチルメチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネート
1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,1,1-トリブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,1,1-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルブチル)-1,1,1-トリブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルブチル)-1,1,1-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-{(3-トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}-N,N,N-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、および
N-[2-{3-(3-トリメトキシシリルプロピルアミノ)-1-オキソプロポキシ}エチル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0112】
(ホスホニウム塩)
トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウム ビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリブチルメチルホスホニウムビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[(トリメトキシシリル)メチル]ホスホニウム ビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[4-(トリメトキシシリル)ブチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリブチル-1-[(トリメトキシシリル)メチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリブチル-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、および
1,1,1-トリブチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
これらのイオン性化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ホスホニウム塩またはアンモニウム塩からなるイオン性化合物が好ましい。
【0113】
重合性液晶化合物の垂直配向性をより向上させ得る観点から、イオン性化合物はカチオン部位の分子構造中にSi元素および/またはF元素を有していることが好ましい。イオン性化合物がカチオン部位の分子構造中にSi元素および/またはF元素を有していると、イオン性化合物を垂直配向液晶硬化膜の表面に偏析させやすくなる。中でも、構成する元素が全て非金属元素であるイオン性化合物として、下記イオン性化合物(i)~(iii)等が好ましい。
【0114】
(イオン性化合物(i))
【0115】
【化14】
(イオン性化合物(ii))
【0116】
【化15】
(イオン性化合物(iii))
【0117】
【化16】
【0118】
例えば、ある程度鎖長の長いアルキル基を有する界面活性剤を用いて基材表面を処理し、液晶の配向性を向上させる方法(例えば、「液晶便覧」の第2章 液晶の配向と物性(丸善株式会社発行)等を参照)を応用して重合性液晶化合物の垂直配向性をより向上させることができる。すなわち、ある程度鎖長の長いアルキル基を有するイオン性化合物を用いて基材表面を処理することにより、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に向上させることができる。
【0119】
具体的には、非金属原子からなるイオン性化合物が下記式(10)を満たすことが好ましい。
5<M<16 (10)
式(10)中、Mは下記式(11)で表される。
M=(プラスの電荷を有する原子上に直接結合される置換基の内、分子鎖末端までの共有結合数が最も多い置換基の、プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数)÷(プラスの電荷を有する原子の数) (11)
非金属原子からなるイオン性化合物が上記(10)を満たすことにより、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に向上させることができる。
【0120】
なお、非金属原子からなるイオン性化合物の分子中にプラスの電荷を有する原子が2つ以上存在する場合、プラスの電荷を有する原子を2つ以上有する置換基については、基点として考えるプラスの電荷を有する原子から数えて最も近い別のプラスの電荷を有する原子までの共有結合数を、上記Mの定義に記載の「プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数」とする。また、非金属原子からなるイオン性化合物が繰返し単位を2つ以上有するオリゴマーやポリマーである場合には、構成単位を一分子として考え、上記Mを算出する。プラスの電荷を有する原子が環構造に組み込まれている場合、環構造を経由して同プラスの電荷を有する原子に至るまでの共有結合数、または環構造に結合している置換基の末端までの共有結合数のうち、共有結合数が多い方を上記Mの定義に記載の「プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数」とする。
【0121】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が非金属原子からなるイオン性化合物を含む場合、その含有量は、通常、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~4質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらに好ましい。イオン性化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶組成物の良好な塗布性を維持しながら、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に促進させることができる。
【0122】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が、非イオン性シラン化合物および非金属原子からなるイオン性化合物の両方を含むことにより、垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物から形成された乾燥塗膜においては、イオン性化合物に由来する静電相互作用と、非イオン性シラン化合物に由来する表面張力低下効果により、重合性液晶化合物の垂直配向がより促進されやすくなる。これにより、重合性液晶化合物がより精度よく垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜を形成することができる。
【0123】
垂直配向液晶硬化膜は、好ましくは、上記配向促進剤および少なくとも1種の重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物の硬化物であり、より好ましくは、少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物が該液晶硬化膜の面内方向に対して垂直に配向した状態で硬化してなる液晶硬化膜である。本発明において、垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物は、水平配向液晶硬化膜において示したものと同様に重合性基を有する液晶化合物を意味し、特に少なくとも1つのラジカル重合性基を有する液晶化合物が好ましい。重合性液晶化合物は特に限定されず、例えば位相差フィルムの分野において従来公知の重合性液晶化合物を用いることができる。
【0124】
本発明の光学異方性層Yとして、垂直配向液晶硬化膜は、垂直配向膜を介さずに垂直配向規制力を有しない層上に形成されることが好ましい。本発明の積層体において垂直配向液晶硬化膜は垂直配向膜なしで形成することができるため、積層体の製造工程数が少なくなり、生産性よく製造し得る積層体となる。
【0125】
垂直配向液晶硬化膜を構成する重合性液晶化合物は特に限定されず、例えば位相差フィルムの分野において従来公知の重合性液晶化合物を用いることができる。具体的には、水平配向液晶硬化膜の形成に用い得る重合性液晶化合物として例示した、重合性液晶化合物(X)または重合性液晶化合物(Y)を用いることができ、中でも、いわゆる逆波長分散性を示す重合性液晶化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、例えば、合性液晶化合物(X)を好適に用いることができる。垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物において、重合性液晶化合物は単独または2種以上を組み合わせて用いることができ重合性液晶化合物(X)と重合性液晶化合物(Y)とを組み合わせて用いてもよい。
【0126】
光学異方性層Yの厚みは、好ましくは0.3μm以上5μm以下であり、より好ましくは0.4μm以上4.5μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上4μm以下である。光学異方性層Yの厚みが上記範囲を満たした水平配向液晶硬化膜であることにより、画像表示装置の軽量化を達成することができる。
【0127】
垂直配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは85~98質量部であり、さらに好ましくは90~95質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られる液晶硬化膜の配向性の観点から有利である。
【0128】
垂直配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物または重合性液晶化合物および垂直配向促進剤に加えて、溶媒、重合開始剤、レベリング剤、酸化防止剤、光増感剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分としては、水平配向液晶硬化膜で用い得る成分として先に例示したものと同様のものが挙げられ、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
垂直配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物と、溶媒や光重合開始剤などの重合性液晶化合物以外の成分とを所定温度で撹拌等することにより得ることができる。
【0130】
〔積層体の製造方法〕
本発明の積層体は、光学異方性層Xと光学異方性層Yとを含む。光学異方性層Xとしては、前述したように、例えば、延伸フィルムまたは重合性液晶化合物が膜平面に対して水平方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物層(水平配向液晶硬化膜)を用いることができる。また、光学異方性層Yとしては、例えば、重合性液晶化合物が膜平面に対して垂直方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物(垂直配向液晶硬化膜)を用いることができる。
【0131】
本発明の積層体は、例えば、
延伸フィルム上に、重合性液晶化合物を含む垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の塗膜を形成し、該塗膜から垂直配向液晶硬化膜を形成する工程(以下、「垂直配向液晶硬化膜形成工程」ともいう)により、光学異方性層X上に直接光学異方性層Yを有する積層体を製造することができる。
【0132】
本発明の積層体は、例えば、
重合性液晶化合物を含む水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の塗膜を形成し、該塗膜から水平配向液晶硬化膜を形成する工程(以下、「水平配向液晶硬化膜形成工程」ともいう)、および、垂直配向液晶硬化膜形成工程をこの順に含む方法により、光学異方性層Xと直接光学異方性層Yとを有する積層体を製造することができる。
【0133】
本発明の積層体において光学異方性層Xが水平配向液晶硬化膜により形成される場合、
水平配向液晶硬化膜を形成する前に、水平配向膜形成用組成物の塗膜を形成し、該塗膜から水平配向膜を形成する工程(以下、「水平配向膜形成工程」ともいう)を含むことが好ましく、水平配向膜形成工程および水平配向液晶硬化膜形成工程がこの順に連続して行われることが好ましい。水平配向膜形成工程を含む製造方法により、水平配向膜上に形成された水平配向液晶硬化膜からなる光学異方性層Xが得られる。
【0134】
水平配向液晶硬化膜形成工程において、水平配向液晶硬化膜は、例えば、
水平配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を基材または配向膜上に塗布して塗膜を得る工程、
前記塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成する工程、および、
乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射し、水平配向液晶硬化膜を形成する工程
を含む方法により製造することができる。
【0135】
重合性液晶組成物の塗膜の形成は、例えば、基材上や後述する配向膜上などに水平配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を塗布することにより行うことができる。
基材としては、例えば、ガラス基材やフィルム基材等が挙げられるが、加工性の観点から樹脂フィルム基材が好ましい。フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびノルボルネン系ポリマーのようなポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、およびセルロースアセテートプロピオネートのようなセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドのようなプラスチックが挙げられる。このような樹脂を、溶媒キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して基材とすることができる。基材表面には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等から形成される保護層を有していてもよく、シリコーン処理のような離型処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0136】
基材として市販の製品を用いてもよい。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、フジタックフィルムのような富士写真フィルム株式会社製のセルロースエステル基材;「KC8UX2M」、「KC8UY」、および「KC4UY」のようなコニカミノルタオプト株式会社製のセルロースエステル基材などが挙げられる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、たとえば、「Topas(登録商標)」のようなTicona社(独)製の環状オレフィン系樹脂;「アートン(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)」、および「ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)」のような日本ゼオン株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「アペル」(登録商標)のような三井化学株式会社製の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、「エスシーナ(登録商標)」および「SCA40(登録商標)」のような積水化学工業株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「ゼオノアフィルム(登録商標)」のようなオプテス株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「アートンフィルム(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材が挙げられる。
【0137】
積層体の薄型化、基材の剥離容易性、基材のハンドリング性等の観点から、基材の厚みは、通常、5~300μmであり、好ましくは10~150μmである。また、基材を本発明の積層体中に配する場合には、後述する光学補償の観点から、基材は光学的に等方であることが好ましい。本発明において光学的に等方であるとは、基材の面内位相差値が3nm以下であることを意味する。
【0138】
重合性液晶組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法等の公知の方法が挙げられる。
【0139】
次いで、溶媒を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。この際、重合性液晶組成物から得られた塗膜を加熱することにより、塗膜から溶媒を乾燥除去させるとともに、重合性液晶化合物を塗膜平面に対して水平方向に配向させることができる。塗膜の加熱温度は、用いる重合性液晶化合物および塗膜を形成する基材等の材質などを考慮して、適宜決定し得るが、重合性液晶化合物を液晶相状態へ相転移させるために液晶相転移温度以上の温度であることが通常必要である。重合性液晶組成物に含まれる溶媒を除去しながら、重合性液晶化合物を水平配向状態とするため、例えば、前記重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物の液晶相転移温度(スメクチック相転移温度またはネマチック相転移温度)程度以上の温度まで加熱することができる。
なお、液晶相転移温度は、例えば、温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡や、示差走査熱量計(DSC)、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)等を用いて測定することができる。また、重合性液晶化合物として2種以上を組み合わせて用いる場合、上記相転移温度は、重合性液晶組成物を構成する全重合性液晶化合物を重合性液晶組成物における組成と同じ比率で混合した重合性液晶化合物の混合物を用いて、1種の重合性液晶化合物を用いる場合と同様にして測定される温度を意味する。なお、一般に前記重合性液晶組成物中における重合性液晶化合物の液晶相転移温度は、重合性液晶化合物単体としての液晶相転移温度よりも下がる場合もあることが知られている。
【0140】
加熱時間は、加熱温度、用いる重合性液晶化合物の種類、溶媒の種類やその沸点およびその量等に応じて適宜決定し得るが、通常、15秒~10分であり、好ましくは0.5~5分である。
【0141】
塗膜からの溶媒の除去は、重合性液晶化合物の液晶相転移温度以上への加熱と同時に行ってもよいし、別途で行ってもよいが、生産性向上の観点から同時に行うことが好ましい。重合性液晶化合物の液晶相転移温度以上への加熱を行う前に、重合性液晶組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で塗膜中の溶媒を適度に除去させるための予備乾燥工程を設けてもよい。かかる予備乾燥工程における乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられ、該乾燥工程における乾燥温度(加熱温度)は、用いる重合性液晶化合物の種類、溶媒の種類やその沸点およびその量等に応じて適宜決定し得る。
【0142】
次いで、得られた乾燥塗膜において、重合性液晶化合物の水平配向状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、水平配向液晶硬化膜が形成される。重合方法としては、熱重合法や光重合法が挙げられるが、重合反応を制御しやすい観点から光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、重合性液晶組成物に含有される重合性液晶化合物や重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、比較的耐熱性の低い基材を用いたとしても、適切に水平配向液晶硬化膜を形成できる。また、光照射時の熱による不具合(基材の熱による変形等)が発生しない範囲で重合温度を高くすることにより重合反応を促進することも可能である。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた硬化膜を得ることもできる。
【0143】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0144】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cmである。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは0.1秒~5分、より好ましくは0.1秒~3分、さらに好ましくは0.1秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm、好ましくは50~2,000mJ/cm、より好ましくは100~1,000mJ/cmである。
【0145】
水平配向液晶硬化膜の配向秩序度を高めることができるため、本発明において、水平配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物の塗膜は、得られる液晶硬化膜平面に対して水平方向に配向規制力を有する水平配向膜上に形成されることが好ましい。したがって、本発明の積層体において、光学異方性層Xは水平配向膜上に形成され、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜がこの順に含まれていることが好ましい。
なお、配向膜の配向規制力は、配向膜の種類、表面状態やラビング条件等によって任意に調整することが可能であり、配向膜が光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。
【0146】
水平配向膜としては、重合性液晶組成物の塗布等により溶解しない溶媒耐性を有し、また、溶媒の除去や後述する重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、配向角の精度および品質の観点から光配向膜が好ましい。
【0147】
配向性ポリマーとしては、例えば、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0148】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶媒に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」ということがある)を基材に塗布し、溶媒を除去する、または、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶媒を除去し、ラビングする(ラビング法)ことで得られる。溶媒としては、重合性液晶組成物に用い得る溶媒として先に例示した溶媒と同様のものが挙げられる。
【0149】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶媒に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20%が好ましく、0.1~10%程度がさらに好ましい。
【0150】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0151】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、重合性液晶組成物を基材へ塗布する方法として先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0152】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶媒を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0153】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を接触させる方法が挙げられる。ラビング処理を行う時に、マスキングを行えば、配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を配向膜に形成することもできる。
【0154】
本発明の好適な一態様において、水平配向膜は(メタ)アクリロイル基を有するポリマーから形成されてなる光配向膜である。水平配向膜が水平配向液晶硬化膜を構成する重合性液晶化合物と近似するまたは同じ重合性基を有する場合、水平配向膜と水平配向液晶硬化膜の密着性がより高まる傾向にあるため、水平配向膜が(メタ)アクリロイル基を有するポリマーから形成され、水平配向液晶硬化膜が(メタ)アクリロイル基を有する重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物から形成されてなることが好ましい。
【0155】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーと溶媒とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材に塗布し、溶媒を除去後に偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御することができる点でも有利である。
【0156】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0157】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0158】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、アゾ基、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、アゾ基またはシンナモイル基を有するポリマーが好ましく、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが、水平配向膜と水平配向液晶硬化膜との密着性向上の観点から、特に好ましい。
【0159】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶媒としては、重合性液晶組成物に用い得る溶媒として先に例示した溶媒と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0160】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0161】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶媒を除去する方法としては例えば、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0162】
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から、溶媒を除去したものに直接、偏光UVを照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0163】
なお、ラビングまたは偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0164】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターンまたは複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0165】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像およびリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、および、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0166】
配向膜(配向性ポリマーを含む配向膜または光配向膜)の厚みは、通常100~5000nmであり、好ましくは100~1000nm、より好ましくは100~500nm、さらに好ましくは100~300nm、特に好ましくは100~250nmである。配向膜の厚みが上記範囲内であると、水平配向規制力を十分に有し、また、積層体における該配向膜での凝集破壊の発生を生じ難い。
【0167】
本発明の積層体における光学異方性層Yが垂直配向液晶硬化膜により形成される場合、
垂直配向液晶硬化膜形成工程において、垂直配向液晶硬化膜は、例えば、
垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を延伸フィルム(光学異方性層X)上に塗布して塗膜を得る工程、
前記塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成する工程、および、
乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射し、垂直配向液晶硬化膜を形成する工程
を含む方法により、光学異方性層X上に直接光学異方性層Yを有する積層体を製造することができる。
【0168】
重合性液晶組成物の塗膜の形成は、例えば、延伸フィルム上に垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を塗布することにより行うことができる。重合性液晶組成物の塗布方法としては、水平配向液晶硬化膜の製造方法で採用し得る方法と同様の方法が挙げられる。
【0169】
垂直配向液晶硬化膜形成工程において、垂直配向液晶硬化膜は、例えば、
垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を水平配向液晶硬化膜上に塗布して塗膜を得る工程、
前記塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成する工程、および、
乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射し、垂直配向液晶硬化膜を形成する工程
を含む方法により、光学異方性層X上に直接光学異方性層Yを有する積層体を製造することができる。
【0170】
重合性液晶組成物の塗膜の形成は、例えば、水平配向液晶硬化膜上に垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を塗布することにより行うことができる。重合性液晶組成物の塗布方法としては、水平配向液晶硬化膜の製造方法で採用し得る方法と同様の方法が挙げられる。
【0171】
また、重合性液晶組成物の塗膜の形成は、例えば、前述した基材上に垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を塗布することにより行うことができる。基材としては、水平配向液晶硬化膜の製造方法において例示したものを使用することができる。また、基材を本発明の積層体中に配する場合には、後述する光学補償の観点から、基材は光学的に等方であることが好ましい。本発明において光学的に等方であるとは、基材の面内位相差値が3nm以下であることを意味する。
【0172】
本発明の積層体は、本発明の効果に影響を及ぼさない限り、水平配向液晶硬化膜と垂直配向液晶硬化膜とが他の層を介して積層されていてもよい。そのような他の層としては、例えば、粘接着層が挙げられる。本発明の積層体が粘接着層を含む場合、かかる粘接着層の厚みは、好ましくは0.1~30μm、より好ましくは0.5~20μmである。
【0173】
前記粘接着剤層としては、例えば、感圧式粘接着剤やエネルギー線硬化型の粘接着剤が挙げられる。中でも、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤であれば、透明性が高く、耐熱性に優れることから好ましい。
【0174】
また、本発明の積層体は、前記他の層として、液晶硬化膜の機械的強度を高めたり、補強したりすることを目的とした硬化樹脂層、ハードコート層などを含んでいても良い。本発明の積層体が水平配向液晶硬化膜と垂直配向液晶硬化膜との間に上記のような他の層を含む場合、かかる他の層の厚みは、好ましくは0.1~4μm、より好ましくは0.5~3μmである。本発明の積層体が水平配向液晶硬化膜と垂直配向液晶硬化膜との間に上記のような他の層を含む場合、水平配向液晶硬化膜を形成した後、他の層を形成し、次いで前記他の層上に垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物の塗膜を形成すればよい。
【0175】
前記硬化樹脂層は、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等から形成され得る。硬化樹脂層を設けることにより、硬化樹脂層に隣接して形成される液晶硬化膜が薄膜であっても硬化樹脂層が保護層または補強層として液晶硬化膜の強度を十分に補うことができる。
【0176】
重合性液晶組成物の塗膜の形成後、溶媒を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。生産性の面からは加熱乾燥が好ましく、その場合の加熱温度は、溶媒を除去でき、かつ、重合性液晶化合物の相転移温度以上であることが好ましい。かかる工程における手順や条件は、水平配向液晶硬化膜の製造方法で採用し得るのと同様のものが挙げられる。
【0177】
得られた乾燥塗膜に活性エネルギー線(より具体的には、紫外線等)を照射し、重合性液晶化合物が塗膜平面に対して垂直方向に配向した状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、垂直配向液晶硬化膜が形成される。重合方法としては、水平配向液晶硬化膜の製造方法で採用し得る方法と同様の方法が挙げられる。
【0178】
本発明の積層体は、光学異方性層Y上に光学異方性層Xを配した積層体であってもよい。
光学異方性層Y上に光学異方性層Xを配した積層体は、
垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を基材に塗布して塗膜を得る工程、
前記塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成する工程、
乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射し、垂直配向液晶硬化膜を形成する工程、
前記垂直配向液晶硬化膜上に水平配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を布して塗膜を得る工程、
前記塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成する工程、および、
乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射し、水平配向液晶硬化膜を形成する工程、
をこの順に含む方法により、製造することができる。
【0179】
本発明の積層体において、光学異方性層Y上に光学異方性層Xを形成する場合、水平配向液晶硬化膜を形成する前に、水平配向膜形成工程により水平配向膜を形成する工程を含むことが好ましい。ここで、水平配向膜形成工程は、前述した水平配向液晶硬化膜形成工程で例示した方法と同様の工程を用いることができる。
【0180】
〔偏光板〕
本発明は、本発明の積層体と偏光フィルムとを含む偏光板を包含する。
偏光フィルムは、偏光機能を有するフィルムであり、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムや吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムを偏光子として含むフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。
【0181】
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として含むフィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造された偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して透明保護フィルムで挟み込むことで作製される。
【0182】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0183】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000の範囲である。
【0184】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10~150μm程度とすることができる。
【0185】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、または染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶媒を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0186】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。
【0187】
二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性の有機染料としては、C.I.DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料および、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0188】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常、0.01~1質量部程度である。またヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常、0.5~20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒程度である。
【0189】
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常、1×10-4~10質量部程度であり、好ましくは1×10-3~1質量部であり、さらに好ましくは1×10-3~1×10-2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常、20~80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、10~1,800秒程度である。
【0190】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0191】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。また浸漬時間は、通常1~120秒程度である。
【0192】
水洗後に乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒程度であり、好ましくは120~600秒である。乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5~20質量%程度であり、好ましくは8~15質量%である。水分率が5質量%を下回ると、偏光子の可撓性が失われ、偏光子がその乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。また、水分率が20質量%を上回ると、偏光子の熱安定性が悪くなる可能性がある。
【0193】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗および乾燥をして得られる偏光子の厚さは好ましくは5~40μmである。
【0194】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物または、二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布して得られるフィルム等が挙げられる。当該フィルムは、好ましくは、その片面または両面に保護フィルムを有する。当該保護フィルムとしては、水平配向液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示した樹脂フィルムと同一のものが挙げられる。
【0195】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムは薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該フィルムの厚さは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5~3μmである。
【0196】
前記吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、具体的には、特開2012-33249号公報等に記載のフィルムが挙げられる。
【0197】
このようにして得られた偏光子の少なくとも一方の面に、例えば接着剤層を介して透明保護フィルムを積層していてもよい。透明保護フィルムとしては、液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示した樹脂フィルムと同様の透明フィルムを用いることができる。
【0198】
本発明の偏光板は、本発明の積層体と偏光フィルムとを含んで構成されるものであり、例えば、本発明の積層体と偏光フィルムとを粘接着剤層等を介して積層させることにより本発明の偏光板を得ることができる。
【0199】
本発明の一実施態様においては、本発明の積層体と偏光フィルムとが積層される場合、図2に例示されるように、偏光フィルム3と、光学異方性層X(図2における層1)と、光学異方性層Y(図2における層2)とをこの順に含む偏光板20が挙げられる。この際、粘接着剤層を介して光学異方性層Xと光学異方性層Yとを含む積層体を偏光フィルム3とを貼合することにより本発明の偏光板を得ることができる。本発明において、偏光フィルムと、光学異方性層Xと、光学異方性層Yとがこの順に積層される場合、積層体を構成する光学異方性層Xの遅相軸(光軸)と偏光フィルムの吸収軸との成す角度が90±5°となるように積層することが好ましい。
【0200】
また、本発明の一実施態様においては、本発明の積層体と偏光フィルムとが積層される場合、図3に例示されるように、偏光フィルム3と、光学異方性層Y(図3における層2)と、光学異方性層X(図3における層1)とをこの順に含む偏光板21が挙げられる。この際、粘接着剤層を介して光学異方性層Yと光学異方性層Xとを含む積層体を偏光フィルム3とを貼合することにより本発明の偏光板を得ることができる。本発明において、偏光フィルムと、光学異方性層Yと、光学異方性層Xとがこの順に積層される場合、積層体を構成する光学異方性層Xの遅相軸(光軸)と偏光フィルムの吸収軸との成す角度が0±5°となるように積層することが好ましい。
【0201】
偏光フィルムと光学異方性層Xまたは光学異方性層Yとを貼合する粘接着剤層としては、水平配向液晶硬化膜と垂直配向液晶硬化膜とを貼り合わせる前記他の層として例示したものと同様のものを使用することができる。
【0202】
本発明の偏光板は、従来の一般的な偏光板、または偏光フィルムおよび位相差フィルムが備えるような構成を有していてもよい。そのような構成としては、例えば、偏光板を液晶表示装置等の表示素子に貼合するための粘着剤層(シート)、偏光フィルムや液晶硬化膜の表面を傷や汚れから保護する目的で用いられるプロテクトフィルム等が挙げられる。
【0203】
本発明の積層体および偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。
表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)および圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置および投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。特に本発明の積層体および偏光板は、その効果が顕著に発揮されやすいことから液晶表示装置に好適に用いることができ、特に、IPS(in-plane switching)液晶表示装置用として使用することが好ましい。本発明の積層体または偏光板を用いることにより、表示装置の薄型化を実現しやすく、液晶表示装置を黒表示時の斜め方向から視認した際の光漏れやカラーシフトの防止特性を発現することのできる表示装置を得ることが可能となる。
【実施例0204】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、例中の「%」および「部」は、特記ない限り、それぞれ質量%および質量部を意味する。
【0205】
1.実施例1
(1)水平配向膜形成用組成物の調製
下記構造の光配向性材料5質量部(重量平均分子量:30000)とシクロペンタノン(溶媒)95質量部とを成分として混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向膜形成用組成物を得た。
【0206】
【化17】
【0207】
(2)重合性液晶化合物の調製
下記分子構造を有する重合性液晶化合物(X1)を特開2010-31223号公報に記載の方法に準じて製造した。また、重合性液晶化合物(III-1)のk2=4である化合物(III-1-4)を、特開2010-270108号公報に記載の方法に準じて製造した。
【0208】
重合性液晶化合物(X1)
【0209】
【化18】
【0210】
(3)水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)の調製
重合性液晶化合物(X1)および下記式(LC242)に示す重合性液晶化合物LC242:PaliocolorLC242(BASF社 登録商標)を質量比65:35で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BM Chemie社製)0.1質量部と、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が10%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を得た。
【0211】
LC242:PaliocolorLC242(BASF社登録商標)
【0212】
【化19】
【0213】
(4)水平配向液晶硬化膜の形成
日本ゼオン社製COPフィルム(ZF14-50)にコロナ処理を実施した後、水平配向膜形成用組成物をバーコーターを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥した後、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-9;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長313nmにおける積算光量:100mJ/cmで偏光UV露光を実施し、水平配向膜を得た。得られた水平配向膜の膜厚をエリプソメータで測定したところ、200nmであった。
続いて、前記水平配向膜上に水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を塗布し、120℃で60秒間加熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより水平配向液晶硬化膜からなる光学異方性層Xを形成した。得られた水平配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ―で測定したところ、1.3μmであった。
【0214】
<水平配向液晶硬化膜の位相差値測定>
前述の基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜からなる積層体の水平配向液晶硬化膜面にコロナ処理を実施し、リンテック社製25μm感圧式粘着剤を介してガラスに貼合後した。得られたガラス、粘着剤、水平配向液晶硬化膜、水平配向膜、基材からなる積層体について、予め基材に位相差がないことを確認したうえで、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WPRを用いて水平配向液晶硬化膜のRe(450)およびRe(550)を測定し、A=Re(450)/Re(550)を算出した。結果を表1に示す。
【0215】
(5)垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)の調製
重合性液晶化合物(X1)および前記重合性液晶化合物LC242:PaliocolorLC242(BASF社 登録商標)を質量比63:27で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、特願2016-514802号公報を参考にして調製したイオン性化合物A(分子量:645)1.5質量部、シランカップリング剤「KBE-9103」(信越化学工業株式会社製)0.5質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を得た。
【0216】
イオン性化合物A:
【0217】
【化20】
【0218】
(6)垂直配向液晶硬化膜の形成
上記の通り作製した基材、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜からなる積層体の水平配向液晶硬化膜上にコロナ処理を実施した後、バーコーターを用いて前記垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を塗布し、120℃で60秒間加熱した。次いで、120℃に加熱したままの状態で高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、垂直配向液晶硬化膜からなる光学異方性層Yを形成し、基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を得た。得られた垂直配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ(日本分光株式会社製M-220)で測定したところ、1.1μmであった。
【0219】
<垂直配向液晶硬化膜の位相差値測定>
前記手順にて作製した基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜、垂直配向液晶硬化膜からなる積層体の垂直配向液晶硬化膜面にコロナ処理を実施し、リンテック社製25μm感圧式粘着剤を介してガラスに貼合した。得られた積層体について、予め基材に位相差が無いことを確認した後に、王子計測機器株式会社製KOBRA-WPRを使用して光学特性測定用サンプルへの光の入射角を変化させて垂直配向液晶硬化膜および水平配向液晶硬化膜を含む積層体の面内位相差値、および進相軸中心に50°傾斜させたときの位相差値を測定した。また、同様の方法によりガラス、粘着剤、水平配向液晶硬化膜、水平配向膜、基材からなる積層体の面内位相差値、および進相軸中心に50°傾斜させたときの位相差値を測定した。
続いて、前述の垂直配向液晶硬化膜、水平配向液晶硬化膜それぞれについて、各波長における平均屈折率を日本分光株式会社製のエリプソメータ M-220を用いて測定した。また、膜厚を浜松ホトニクス株式会社製のOptical NanoGauge膜厚計C12562-01を使用して測定した。前述の面内位相差値、進相軸中心に50°傾斜させたときの位相差値、平均屈折率、膜厚の値から、王子計測機器技術資料(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/reference.html)を参考に3次元屈折率を算出した。得られた3次元屈折率から、以下の式に従って垂直配向液晶硬化膜および水平配向液晶硬化膜を含む積層体、並びに水平配向液晶硬化膜の光学特性を計算し、それぞれの値の差から垂直配向液晶硬化膜のRth(450)、Rth(550)の値を計算し、B=Rth(450)/Rth(550)を算出した。結果を表1に示す。
【0220】
(7)積層体の評価
<黒表示の確認>
実施例1で製造した積層体の基材側の面に、粘着剤層と偏光フィルムとをこの順で積層し偏光板を形成した。この際、偏光フィルムの吸収軸と、積層体の光学異方性層Xの遅相軸との成す角が90度となるように積層した。得られた偏光板を、視認側偏光板を取り除いたi-Pad(登録商標)(アップル社製)の視認側に偏光フィルムが最表面となるように貼合し、黒表示させた時の光漏れを、パネル表面に対し方位角45°、仰角45°の方向から目視で確認し、以下の基準にて色抜けを判定した。結果を表1に示す。
評価基準:
A:斜め方向からの視認時の着色がほとんどない。
B:斜め方向からの視認時の着色がわずかに確認される。
C:斜め方向からの視認時の着色が強く確認される。
【0221】
<熱による特性変化の確認>
実施例1で製造した基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜、垂直配向液晶硬化膜からなる積層体を80℃のオーブンに入れ30分静置した。前記処理を行った積層体の面内位相差値を測定したところ、加熱前と比べて位相差値の変化が1nm以下であり、熱による特性変化が小さいことを確認した。
【0222】
2.実施例2
垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製および垂直配向液晶硬化膜の形成を以下の通り変更した以外は、実施例1と同様にして、基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。また、実施例1と同様にして、基材側の面に偏光フィルムを貼合することにより偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。結果を表1に示す。
【0223】
(1)垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)の調製
重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物LC242:PaliocolorLC242(BASF社 登録商標)を質量比85:15で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、特願2016-514802号公報を参考にして調製したイオン性化合物A(分子量:645)1.5質量部、シランカップリング剤「KBE-9103」(信越化学工業株式会社製)0.5質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)を得た。
【0224】
(2)垂直配向液晶硬化膜の作製
実施例1と同様の手順で作製した基材、水平配向膜、膜厚1.4μmの水平配向液晶硬化膜からなる積層体の水平配向液晶硬化膜面にコロナ処理を実施した後、バーコーターを用いて垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)を塗布し、120℃で60秒間加熱した。次いで、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、垂直配向液晶硬化膜からなる光学異方性層Yを形成した。得られた垂直配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ(日本分光株式会社製M-220)で測定したところ、1.5μmであった。なお、製造した基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜、垂直配向液晶硬化膜からなる積層体を80℃のオーブンに入れ30分静置し、前記処理を行った積層体の面内位相差値を測定したところ、加熱前と比べて位相差値の変化が1nm以下であり、熱による特性変化が小さいことを確認した。
【0225】
3.実施例3
水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製および水平配向液晶硬化膜の形成を以下の通り変更した以外は、実施例1と同様にして、基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。また、実施例1と同様にして、基材側の面に偏光フィルムを貼合することにより偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。結果を表1に示す。
【0226】
(1)水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)の調製
重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物LC242:PaliocolorLC242(BASF社 登録商標)を質量比50:50で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BM Chemie社製)0.1質量部と、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)を得た。
【0227】
(2)水平配向液晶硬化膜の形成
実施例1と同様に、基材上に水平配向膜を形成した後、前記水平配向膜上に水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)を塗布し、120℃で60秒間加熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより水平配向液晶硬化膜からなる光学異方性層Xを形成した。得られた水平配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ―で測定したところ、1.1μmであった。
上記の通り作製した基材、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜からなる積層体の水平配向液晶硬化膜上に、実施例1と同様に垂直配向液晶硬化膜を形成することで積層体を得、基材側の面に偏光フィルムを貼合することで偏光板を得た。なお、製造した基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜、垂直配向液晶硬化膜からなる積層体を80℃のオーブンに入れ30分静置し、前記処理を行った積層体の面内位相差値を測定したところ、加熱前と比べて位相差値の変化が1nm以下であり、熱による特性変化が小さいことを確認した。
【0228】
4.実施例4
実施例3で調製した水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)を用い、実施例3と同様にして、基材、水平配向膜、および、膜厚1.3μmの水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。次いで、実施例2と同様にして、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)を用いて、前記水平配向液晶硬化膜上に膜厚1.5μmの垂直配向液晶硬化膜を形成することで積層体を得、基材側の面に偏光フィルムを貼合することで偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。結果を表1に示す。なお、製造した基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜、垂直配向液晶硬化膜からなる積層体を80℃のオーブンに入れ30分静置し、前記処理を行った積層体の面内位相差値を測定したところ、加熱前と比べて位相差値の変化が1nm以下であり、熱による特性変化が小さいことを確認した。
【0229】
5.実施例5
垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製および垂直配向液晶硬化膜の形成を以下の通り変更した以外は、実施例3と同様にして、基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。また、実施例3と同様にして、基材側の面に偏光フィルムを貼合することにより偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。結果を表1に示す。
【0230】
(1)垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(3)の調製
重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物LC242:PaliocolorLC242(BASF社 登録商標)を質量比95:5で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、特願2016-514802号公報を参考にして調製したイオン性化合物A(分子量:645)1.5質量部、シランカップリング剤「KBE-9103」(信越化学工業株式会社製)0.5質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(3)を得た。
【0231】
(2)垂直配向液晶硬化膜の作製
実施例3で調製した水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)を用い、実施例3と同様にして、基材、水平配向膜、および、膜厚1.4μmの水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。次いで、前記水平配向液晶硬化膜面にコロナ処理を実施した後、バーコーターを用いて垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(3)を塗布し、120℃で60秒間加熱した。次いで、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(3)を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、垂直配向液晶硬化膜からなる光学異方性層Yを形成した。得られた垂直配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ(日本分光株式会社製M-220)で測定したところ、1.6μmであった。なお、製造した基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜、垂直配向液晶硬化膜からなる積層体を80℃のオーブンに入れ30分静置し、前記処理を行った積層体の面内位相差値を測定したところ、加熱前と比べて位相差値の変化が1nm以下であり、熱による特性変化が小さいことを確認した。
【0232】
6.実施例6
水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製および水平配向液晶硬化膜の形成を以下の通り変更した以外は、実施例3と同様にして、基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。また、実施例3と同様にして、基材側の面に偏光フィルムを貼合することにより偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。結果を表1に示す。
【0233】
(1)水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(3)の調製
重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物LC242:PaliocolorLC242(BASF社 登録商標)を質量比30:70で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BM Chemie社製)0.1質量部と、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(3)を得た。
【0234】
(2)水平配向液晶硬化膜の形成
実施例3と同様に、基材上に水平配向膜を形成した後、前記水平配向膜上に水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(3)を塗布し、120℃で60秒間加熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(3)を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより水平配向液晶硬化膜からなる光学異方性層Xを形成した。得られた水平配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ―で測定したところ、1.0μmであった。上記の通り作製した基材、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜からなる積層体の水平配向液晶硬化膜上に、実施例4と同様にして、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を用いて、膜厚1.0μmの垂直配向液晶硬化膜を形成することで積層体を得、基材側の面に偏光フィルムを貼合することで偏光板を得た。なお、製造した基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜、垂直配向液晶硬化膜からなる積層体を80℃のオーブンに入れ30分静置し、前記処理を行った積層体の面内位相差値を測定したところ、加熱前と比べて位相差値の変化が1nm以下であり、熱による特性変化が小さいことを確認した。
【0235】
7.実施例7
実施例6で調製した水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(3)を用い、実施例6と同様にして、基材、水平配向膜、および、膜厚1.1μmの水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。次いで、実施例4と同様にして、前記水平配向液晶硬化膜上に垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(2)を塗布し膜厚1.4μmの垂直配向液晶硬化膜を形成することで積層体を得、基材側の面に偏光フィルムを貼合することで偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。結果を表1に示す。なお、製造した基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜、垂直配向液晶硬化膜からなる積層体を80℃のオーブンに入れ30分静置し、前記処理を行った積層体の面内位相差値を測定したところ、加熱前と比べて位相差値の変化が1nm以下であり、熱による特性変化が小さいことを確認した。
【0236】
8.実施例8
実施例3と同様にして、基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。次に、垂直配向液晶硬化膜側の面に粘着剤を用いて偏光フィルムを貼合し偏光板を形成した。この際、偏光フィルムの吸収軸と、積層体の光学異方性層Xの遅相軸との成す角が0度となるように積層した。得られた偏光板を、視認側偏光板を取り除いたi-Pad(登録商標)(アップル社製)の視認側に偏光フィルムが最表面となるように貼合し、黒表示させた時の光漏れを、パネル表面に対し方位角45°、仰角45°の方向から目視で確認した。結果を表1に示す。
【0237】
9.実施例9
実施例4と同様にして、基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。次に、垂直配向液晶硬化膜側の面に粘着剤を用いて偏光フィルムを貼合し偏光板を形成した。この際、偏光フィルムの吸収軸と、積層体の光学異方性層Xの遅相軸との成す角が0度となるように積層した。得られた偏光板の黒表示時の視認性を、実施例8と同様にして確認した。結果を表1に示す。
【0238】
10.比較例1
水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製および水平配向液晶硬化膜の形成、ならびに、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製および垂直配向液晶硬化膜の形成を以下の通り変更した以外は、実施例1と同様にして、基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。また、実施例1と同様にして、基材側の面に偏光フィルムを貼合することにより偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。結果を表1に示す。
【0239】
(1)水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)の調製
重合性液晶化合物(III-1-4)に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BM Chemie社製)0.1質量部と、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)を得た。
【0240】
(2)水平配向液晶硬化膜の形成
実施例4と同様に、基材上に水平配向膜を形成した後、前記水平配向膜上に水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)を塗布し、120℃で60秒間加熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより水平配向液晶硬化膜からなる光学異方性層X’を形成した。得られた水平配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ―で測定したところ、0.9μmであった。
【0241】
(3)垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)の調製
重合性液晶化合物(III-1-4)に対して、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、特願2016-514802号公報を参考にして調製したイオン性化合物A(分子量:645)1.5質量部、シランカップリング剤「KBE-9103」(信越化学工業株式会社製)0.5質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)を得た。
【0242】
(4)垂直配向液晶硬化膜の形成
上記の通り作製した基材、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜からなる積層体の水平配向液晶硬化膜上にコロナ処理を実施した後、バーコーターを用いて前記垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)を塗布し、120℃で60秒間加熱した。次いで、120℃に加熱したままの状態で高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、垂直配向液晶硬化膜からなる光学異方性層Y’を形成し、基材、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を得た。得られた垂直配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ(日本分光株式会社製M-220)で測定したところ、0.8μmであった。
【0243】
11.比較例2
実施例1で調製した水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を用い、実施例1と同様にして、基材、水平配向膜、および、膜厚1.6μmの水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。次いで、比較例1と同様にして、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)を用いて、前記水平配向液晶硬化膜上に膜厚0.8μmの垂直配向液晶硬化膜を形成することで積層体を得、基材側の面に偏光フィルムを貼合することで偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。結果を表1に示す。
【0244】
12.比較例3
膜厚32μmで面内位相差値が140nmのシクロオレフィン系樹脂からなる位相差フィルム(ゼオノアフィルム、(株)オプテス製)を基材として用い、比較例2と同様にして、前記基材面にコロナ処理を実施した後、バーコーターを用いて垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)を塗布し、120℃で60秒間加熱した。次いで、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(4)を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、垂直配向液晶硬化膜を形成することで、基材からなる光学異方性層Xおよび垂直配向液晶硬化膜からなる光学異方性層Y’をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。得られた垂直配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ(日本分光株式会社製M-220)で測定したところ、0.8μmであった。また、基材側の面に偏光フィルムを貼合することにより偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。結果を表1に示す。
なお、基材および垂直配向液晶硬化膜からなる積層体を80℃のオーブンに入れ30分静置し、前記処理を行った積層体の面内位相差値を測定したところ、加熱前と比べて位相差値の変化が2nm以上であり、熱による特性変化が大きいことを確認した。
【0245】
13.比較例4
実施例1で調製した水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を用い、実施例1と同様にして、基材、水平配向膜、および、膜厚1.1μmの水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製した。次いで、実施例1と同様にして、前記水平配向液晶硬化膜上に垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を塗布し膜厚1.3μmの垂直配向液晶硬化膜を形成することで積層体を得、基材側の面に偏光フィルムを貼合することで偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。結果を表1に示す。
【0246】
14.実施例10
シクロオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムを基材とし、比較例3と同様にして、前記基材面にコロナ処理を実施した。次いで、コロナ処理した基材面上に実施例1と同様に、バーコーターを用いて垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物(1)を塗布し、前記基材上に膜厚1.1μmの垂直配向液晶硬化膜を形成することで積層体を得、基材側の面に偏光フィルムを貼合することで偏光板を作製し、黒表示時の視認性を確認した。
【0247】
【表1】
【0248】
本発明によれば、薄膜化され、かつ、熱による特性変化が小さな積層体、および当該積層体を含む偏光板、さらにこれらを有する画像表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0249】
1:光学異方性層X
2:光学異方性層Y
3:偏光フィルム
10:積層体
20:偏光板
21:偏光板
図1
図2
図3