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特開2024-144183ゼオライト系触媒及び合成ガスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144183
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ゼオライト系触媒及び合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/76 20060101AFI20241003BHJP
   B01J 29/48 20060101ALI20241003BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20241003BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20241003BHJP
   C07C 9/06 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 2/84 20060101ALI20241003BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B01J29/76 M
B01J29/48 M
C01B3/40
C01B32/40
C07C9/06
C07C11/04
C07C2/84
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031652
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2023052409
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】村田 和優
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 亮
(72)【発明者】
【氏名】堤内 出
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA07
4G140EB16
4G140EC02
4G146JA01
4G146JB02
4G146JC03
4G146JC18
4G146JC22
4G146JC27
4G169AA03
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC65A
4G169BC66B
4G169BC69A
4G169CB81
4G169CC29
4G169DA06
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZA32A
4G169ZC04
4G169ZF01B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC23
4H006BA17
4H006BA55
4H006BE20
4H006BE30
4H006BE41
4H006DA15
4H039CA19
4H039CA29
4H039CC20
(57)【要約】
【課題】メタンと酸素との反応において、メタンの完全酸化を抑制し、高選択的にメタンを部分酸化させる触媒を提供すること。
【解決手段】構成元素としてケイ素(Si)とアルミニウム(Al)を含有し、周期律表8~10族の元素の含有量が0.1質量%未満である、軽質炭化水素の部分酸化に用いられるゼオライト系触媒である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素としてケイ素(Si)とアルミニウム(Al)を含有し、周期律表8~10族の元素の含有量が0.1質量%未満である、軽質炭化水素の部分酸化に用いられるゼオライト系触媒。
【請求項2】
前記ゼオライト系触媒に含まれるアルミニウムに対するケイ素のモル比率(Si/Al)が1以上100以下である、請求項1に記載のゼオライト系触媒。
【請求項3】
前記ゼオライト系触媒が、International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードで、AEI、CHA、MFI、及びBEAからなる群から選ばれる少なくとも1種の結晶構造を含む、請求項1又は2に記載のゼオライト系触媒。
【請求項4】
前記軽質炭化水素が炭素数6以下の炭化水素である、請求項1に記載のゼオライト系触媒。
【請求項5】
前記軽質炭化水素がメタン又はメタンを主成分とする、請求項1に記載のゼオライト系触媒。
【請求項6】
構成元素としてケイ素(Si)とアルミニウム(Al)を含有し、周期律表8~10族の元素の含有量が0.1質量%未満であるゼオライト系触媒を触媒とし、
650℃以上の反応温度でメタンの部分酸化反応によって合成ガスを製造する方法。
【請求項7】
前記メタンの部分酸化反応の生成物である合成ガスが、一酸化炭素、水素、エタン、エチレン、二酸化炭素、及び水を含み、メタンに対する二酸化炭素の選択率が30モル%以下である、請求項6に記載の合成ガスを製造する方法。
【請求項8】
前記メタンの部分酸化反応は、酸素に対するメタンのモル比(メタン/酸素)を1以上とする、請求項6又は7に記載の合成ガスを製造する方法。
【請求項9】
前記メタンの部分酸化反応は1000℃以下で行う、請求項6又は7に記載の合成ガスを製造する方法。
【請求項10】
前記ゼオライト系触媒に含まれるアルミニウムに対するケイ素のモル比率(Si/Al)が1以上100以下である、請求項6又は7に記載の合成ガスを製造する方法。
【請求項11】
前記ゼオライト系触媒におけるゼオライトは、International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードで、AEI、CHA、MFI、及びBEAからなる群から選ばれる少なくとも1種の結晶構造を含む、請求項6又は7に記載の合成ガスを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゼオライト系触媒及び合成ガスの製造方法に関し、より詳細には、メタンを原料として、触媒を用いて一酸化炭素及び水素(合成ガス)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素(CO)及び水素(H)の混合ガス(合成ガス)を製造する技術としてメタン(CH)の改質はよく利用される技術である。メタンの改質反応の中でも、メタンの水蒸気改質(CH+HO→3H+CO、ΔH=+206kJ)は最もよく利用される技術であるが、この反応は大きな吸熱反応であり、プロセスにおける大きなエネルギー消費が問題となっている。
一方で、メタンの部分酸化(2CH+O→4H+2CO、ΔH=-36kJ)は発熱反応であるために、いったん反応が始まれば外部からエネルギーを供給する必要のない、エネルギー効率が高いプロセスとして注目を集めている。
【0003】
このようなメタンの部分酸化には、従来から活性点としてCo、Ni、Ru、Rh、Pd、Ptといった遷移金属を含む触媒材料が用いられてきた。例えば特許文献1には、コバルトおよびロジウム担持ゼオライトを含む、軽質炭化水素の部分酸化触媒が開示される。また、特許文献2には、ゼオライトに、周期表第8族~11族の遷移金属から選択される少なくとも1種の元素、周期表第1族~3族の金属から選択される少なくとも1種の元素と、を担持した、軽質炭化水素の部分酸化触媒が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-181375号公報
【特許文献2】特開2021-45722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に開示される触媒材料を用いたときには、メタンの部分酸化と同時にメタンの一部が完全酸化(CH+2O→2HO+CO、ΔH=-803kJ)を起こしやすい。完全酸化の発熱量は部分酸化時の発熱量に対して、非常に大きいものであるため、反応が起こり始めるとすぐに触媒床が急激に加熱され、ホットスポットが形成される。このような、ホットスポットの形成により、一酸化炭素の収率が低下するのみならず、ホットスポットでの活性金属種の凝集が生じる。ホットスポットが形成された場合に、いったん反応を停止し部分酸化反応を再開させたとしても、再び完全酸化反応が起こりやすく、また金属の凝集により、触媒劣化の原因ともなる。したがって、メタンの完全酸化を抑制し、酸素との反応によって高選択的にメタンを部分酸化する触媒の開発が求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、メタンと酸素との反応において、メタンの完全酸化を抑制し、高選択的にメタンを部分酸化させる触媒を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を進め、ゼオライト表面の酸性質を利用してメタンを活性化することで、メタンが一酸化炭素と水素へと転換すること、すなわち、ゼオライトがメタンの部分酸化において、高い選択率でメタンから一酸化炭素へと転換できることを見出した。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
本発明は、以下の要旨を含む。
[1]構成元素としてケイ素(Si)とアルミニウム(Al)を含有し、周期律表8~10族の元素の含有量が0.1質量%未満である、軽質炭化水素の部分酸化に用いられるゼオライト系触媒。
[2]前記ゼオライト系触媒に含まれるアルミニウムに対するケイ素のモル比率(Si/Al)が1以上100以下である、上記[1]に記載のゼオライト系触媒。
[3]前記ゼオライト系触媒が、International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードで、AEI、CHA、MFI、及びBEAからなる群から選ばれる少なくとも1種の結晶構造を含む、上記[1]又は[2]に記載のゼオライト系触媒。
[4]前記軽質炭化水素が炭素数6以下の炭化水素である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のゼオライト系触媒。
[5]前記軽質炭化水素がメタン又はメタンを主成分とする、上記[1]~[4]のいずれかに記載のゼオライト系触媒。
[6]構成元素としてケイ素(Si)とアルミニウム(Al)を含有し、周期律表8~10族の元素の含有量が0.1質量%未満であるゼオライト系触媒を触媒とし、650℃以上の反応温度でメタンの部分酸化反応によって合成ガスを製造する方法。
[7]前記メタンの部分酸化反応の生成物である合成ガスが、一酸化炭素、水素、エタン、エチレン、二酸化炭素、及び水を含み、メタンに対する二酸化炭素の選択率が30モル%以下である、上記[6]に記載の合成ガスを製造する方法。
[8]前記メタンの部分酸化反応は、酸素に対するメタンのモル比(メタン/酸素)を1以上とする、上記[6]又は[7]に記載の合成ガスを製造する方法。
[9]前記メタンの部分酸化反応は1000℃以下で行う、上記[6]~[8]のいずれかに記載の合成ガスを製造する方法。
[10]前記ゼオライト系触媒に含まれるアルミニウムに対するケイ素のモル比率(Si/Al)が1以上100以下である、上記[6]~[9]のいずれかに記載の合成ガスを製造する方法。
[11]前記ゼオライト系触媒におけるゼオライトは、International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードで、AEI、CHA、MFI、及びBEAからなる群から選ばれる少なくとも1種の結晶構造を含む、上記[6]~[10]のいずれかに記載の合成ガスを製造する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メタンと酸素との反応において、メタンの完全酸化を抑制し、高選択的にメタンを部分酸化させる触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
[ゼオライト系触媒]
本発明のゼオライト系触媒は、構成元素としてケイ素(Si)とアルミニウム(Al)を含有し、周期律表8~10族の元素の含有量が0.1質量%未満である、軽質炭化水素の部分酸化に用いられる触媒である。
ここで、軽質炭化水素としては、炭素数6以下の炭化水素であることが好ましい。炭素数6以下の炭化水素であると、本発明のゼオライト系触媒が、部分酸化触媒として有効に機能する。特に、炭素数6以下の炭化水素としては、メタン又はメタンを主成分とすることが特に好ましい。
【0012】
<ゼオライト>
本発明の触媒として用いるゼオライトは、構成元素としてケイ素(Si)とアルミニウム(Al)を含有する。構成元素としては、Si、Alの他に、例えばホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)から選ばれる1種または2種以上を含んでいてもよい。なお、ゼオライト骨格を形成するAl等は酸点となり、触媒活性の反応点として作用する。
これらのゼオライトのアルミニウムに対するケイ素のモル比率(以下、「Si/Al比」という。)は、本発明の効果を奏する範囲であれば、特に制限はないが、1以上100以下であることが好ましい。
Si/Al比が100以下であると、酸量が適度となり、メタンの部分酸化反応を促進することができる。以上の観点から、Si/Al比は80以下であることがさらに好ましい。一方、Si/Al比が1以上であると、メタンの部分酸化反応における脱アルミを抑制し、活性を高く維持することができる。以上の観点から、Si/Al比は3以上であることが好ましく、8以上であることがさらに好ましい。
なお、本発明の方法により製造されるゼオライトのSi、Al等の含有量は、通常、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)等により、測定することができる。本発明における「Si/Al比」とは、製造されたゼオライトについてICP-AESを用いて測定した値から算出された値であり、原料の仕込み量から算出したAlに対するSiの比率ではない。
Si/Al比は、ゼオライトを製造する際の仕込みのSiO/Alの比によって制御することができ、また製造条件によっても制御することができる。さらには、ゼオライトを製造した後に、スチーミング処理等により、Al等を脱離させてSi/Al比を制御することもできる。
【0013】
本発明に係るゼオライトの結晶構造については、本発明の効果を奏するものであれば、特に制限はなく、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで、AEI、AEL、AFI、AFX、APC、ATO、BEA、BRE、CDO、CHA、CON、DDR、EAB、EPI、ERI、ESV、EUO、FAU、FER、GIS、GME、HEU、ITH、KFI、LEV、LTA、LTL、MER、MEL、MFI、MON、MOR、MSE、MTF、MTT、MTW、MWW、NES、OFF、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、SOD、STI、STT、SZR、TON、TSC、TUN、UFI、VNI、WEI、YUGなどが挙げられる。中でも、AEI、CHA、MFI、及びBEAから選択される1種以上を含むことが好ましい。これらのゼオライトは、メタン部分酸化反応中でルイス酸性を発現しうるAl種が生成し、メタンの部分酸化反応の反応場として好適である。したがって、MOR、FAUと比較して、より好ましい活性を示す。
上記ゼオライトは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、ルイス酸Al種の形成はCO分子をプローブとした吸着IRによって確認することができる。
【0014】
ゼオライトの細孔径は、特に限定されないが、0.3nm以上が好ましく、0.35nm以上がより好ましい。また0.9nm以下が好ましく、0.8nm以下がより好ましく、0.6nm以下がさらに好ましい。なお、ここで言う細孔径とは、International Zeolite Association(IZA)が定める結晶学的なチャネル直径を示す。ゼオライトの細孔径が上記範囲であると、原料であるメタン及び酸素がゼオライト細孔内に入りやすく、細孔内の活性点で反応が進みやすい。また、生成物の脱離が容易であり、細孔内で過度に反応が進むことによるコーキング等の問題もない。
【0015】
ゼオライトのイオン交換サイトは、特に限定されず、H型であっても、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等で交換されたものであってもよいが、H型が好ましい。
【0016】
また、ゼオライトのBET比表面積は、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、例えば、200m/g以上であることが好ましい。ゼオライトのBET比表面積が200m/g以上であると、原料であるメタンの吸着サイトが十分確保され、反応効率を向上させることができる。以上の観点から、ゼオライトのBET比表面積は、250m/g以上であることがより好ましく、300m/g以上であることがさらに好ましい。一方、ゼオライトのBET比表面積は、2000m/g以下であることが好ましい。ゼオライトのBET比表面積が2000m/g以下であると、ゼオライトの合成が容易になる。以上の観点からゼオライトのBET比表面積は1500m/g以下であることがより好ましく、1000m/g以下であることがさらに好ましい。なお、BET比表面積は、窒素吸着法により測定することができる。
【0017】
また、本発明に係るゼオライトの細孔容積は、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、0.1mL/g以上であることが好ましい。ゼオライトの細孔容積が0.1mL/g以上であると、原料であるメタンの吸着サイトが十分確保され、反応効率を向上させることができる。以上の観点から、ゼオライトの細孔容積は0.2mL/g以上であることがより好ましく、0.3mL/g以上であることがさらに好ましい。
一方、ゼオライトの細孔容積は、3mL/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは2mL/g以下である。
なお、ゼオライトの平均細孔径は前記IZAが公開している各結晶構造の細孔径の値を使用すればよく、細孔容積は、窒素吸着法により測定することができる。
【0018】
本発明に係るゼオライトの平均一次粒子径は、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、10μm以下であることが好ましい。ゼオライトの平均一次粒子径が10μm以下であると、反応基質と反応生成物の拡散の点で有利である。以上の観点から、ゼオライトの平均一次粒子径は、3μm以下であることがより好ましく、700nm以下であることがさらに好ましい。
一方、下限値については、本発明の効果を奏する範囲であれば、特に制限はなく、通常20nm以上であり、好ましくは40nm以上である。
【0019】
なお、「平均一次粒子径」は、いずれも走査型電子顕微鏡(SEM)により算出することができる。
ここで、「一次粒子」とは、粒界が確認されない最小の粒子のことをいう。本発明では、ゼオライト触媒のSEM画像を取得し、当該SEM画像に含まれるゼオライトに相当する部分であって、粒界が確認されない最小粒子を「一次粒子」として判断する。なお、本発明においては、一次粒子は単体の粒子として存在していなくてもよく、凝集等により二次粒子を形成していてもよい。二次粒子を形成していたとしても、SEM画像において二次粒子の表面の一次粒子を判別可能である。
「平均一次粒子径」とは以下のようにして測定されたものをいう。すなわち、ゼオライト触媒のSEM画像に含まれる一次粒子を無作為に50個選択し、選択した50個の一次粒子それぞれについて長径(一次粒子の一端と多端とを直線で結んだ場合に最長となる直線の長さ)を測定し、測定した50個の長径の相加平均値を「平均一次粒子径」とする。
ただし、ゼオライト触媒全体において一次粒子が50個未満しか含まれていない場合は、ゼオライト触媒に含まれるすべての一次粒子について、それぞれの長径を測定し、その平均値を「平均一次粒子径」とする。
【0020】
平均一次粒子径を特定の範囲とすることは、例えば、種結晶として粒子径の小さいゼオライトを用いることや、ゼオライトの製造工程において、ゼオライトの合成原料ゲルに界面活性剤を添加することなどにより、達成できる。
【0021】
本発明に係るゼオライトは、周期律表8~10族の元素の含有量が0.1質量%未満である。周期律表8~10族の元素の含有量が0.1質量%未満であることにより、メタンの完全酸化反応が引き起こされない。したがって、一酸化炭素の収率が低下することがなく、ホットスポットの形成が抑制されるため、好ましい。
【0022】
<ゼオライトの製造方法>
本発明のゼオライトの製造方法は、原料組成物を水熱合成する工程を有する。
より具体的には、シリカ源、アルミニウム源及びアルカリ金属を含む原料ゲルを調製する工程、該原料ゲルを10~240℃で水熱合成する工程を有する。
【0023】
(原料ゲルの調製)
原料ゲルは、シリカ源、アルミニウム源、アルカリ金属を含む化合物を用いて調製する。原料ゲルの調製には、本発明の効果を大幅に阻害しない限り、更にアルカリ土類金属を含む化合物、有機構造規定材、種晶などのこれら以外の成分を用いてもよい。
【0024】
<<原料等>>
シリカ源は、ゼオライトを構成するケイ素原子になる原料化合物のことを言う。シリカ源としては、ヒュームドシリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチルなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、ヒュームドシリカおよびコロイダルシリカが取扱い易く反応性が高いので好ましい。
【0025】
アルミニウム源は、ゼオライトを構成するアルミニウム原子になる原料化合物のことを言う。アルミニウム源は、通常、擬ベーマイト、ギブサイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド;水酸化アルミニウム;アルミナゾルおよびアルミン酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、及び擬ベーマイトが取り扱い易く反応性が高い点で好ましい。
【0026】
アルカリ金属を含む化合物は、NaOH、KOHなどのアルカリ金属の水酸化物などを用いることができる。アルカリ金属の種類は特に限定されず、通常Na、K、Li、Rbが挙げられ、好ましくはNaおよびKである。また、アルカリ金属を含む化合物は2種類以上を併用してもよい。
また、アルカリ土類金属を含む化合物を用いてもよい。アルカリ土類金属を含む化合物としては、Ca(OH)などを用いることができる。アルカリ土類金属の種類は特に限定されず、通常Ca、Mg、Sr、Baが挙げられる。また、アルカリ土類金属を含む化合物は2種類以上を併用してもよい。
【0027】
ゼオライトの合成に用いられる有機構造規定材としては、通常、アミン類、4級アンモニウム塩類などが用いられる。例えば、CHA型のアルミノシリケートを合成する場合には、米国特許第4544538号明細書、米国特許公開第2008/0075656号明細書に記載の有機テンプレートが好ましいものとして挙げられる。なお、得られるゼオライトの組成によっては、有機構造規定材は必ずしも必要ではない。
【0028】
原料ゲルの調製には、種晶を用いてもよい。種晶としては、通常ゼオライトを用いる。
種晶は、製造されるゼオライトがアルミノシリケートであれば、同じくアルミノシリケートのゼオライトが好ましく、CBUとしてd6rが含まれるアルミノシリケートのゼオライトがより好ましい。種晶には、その一部としてアモルファス成分を含んでいてもよい。
また、種晶として用いるゼオライトは、有機構造規定材を含むものでもよいし、含まないものでもよい。種晶となるゼオライトの製造方法は、特に限定されず、本発明のゼオライトの製造方法により製造されたものであってもよく、他の方法、例えばオートクレーブ等を用いて一般的なバッチ方式で製造されたものであってもよい。種晶の量としては、種晶として結晶化を促す効果が発現しやすい点では多いことが好ましい。また、一方で、種晶の溶解がしやすく、種晶として機能しやすい点では少ないことが好ましい。そこで、原料組成物に含まれるシリカ源に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましく、2質量%以上が特に好ましい。また、一方で、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0029】
(原料ゲルの水熱合成)
本発明のゼオライトは、上述の原料ゲルを水熱合成することにより製造することができる。原料ゲルの水熱合成温度は、通常、10℃以上、好ましくは50℃以上、更に好ましくは70℃以上である。反応が進行しやすい点では高温とすることが好ましい。また、水熱合成の温度の上限は特に制限はなく、通常240℃以下、好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
【0030】
<<カチオン交換>>
本発明のゼオライトの製造方法は、更に、上述の水熱合成により得られるゼオライトのカチオン型を交換する工程を有していてもよい。
水熱合成により得られるゼオライトは、必要に応じて、得られたゼオライトを、所望のカチオン型へカチオン交換することができる。カチオン交換は、以下に限定されないが、例えば、NHNO、LiNO、NaNO、KNO、RbNO、CsNO、Be(NO、Ca(NO、Mg(NO、Sr(NO、Ba(NOなどの硝酸塩、或いはこれらの硝酸塩に含まれる硝酸イオンに代えて、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオンとした塩、および硝酸や塩酸などの酸を用いて行うことができる。カチオン交換の温度は、一般的なカチオン交換の温度であれば特に限定されないが、通常、10℃以上、100℃以下である。また、アンモニウム型ゼオライトは、該ゼオライトを焼成することによりプロトン型ゼオライトに変換することもできる。
【0031】
原料ゲルの結晶化後は、結晶化した原料ゲルを濾過および洗浄した後、固形分を100~200℃で乾燥し、引続き400~900℃で焼成することによって、ゼオライト粉末として得ることができる。
【0032】
[合成ガスの製造方法]
本発明の合成ガスの製造方法は、メタンの部分酸化反応によって合成ガスを製造する方法であって、構成元素としてケイ素(Si)とアルミニウム(Al)を含有し、周期律表8~10族の元素の含有量が0.1質量%未満であるゼオライト系触媒を触媒とし、650℃以上の反応温度でメタンの部分酸化反応によって合成ガスを製造することを特徴とする。
【0033】
<反応条件>
本発明の合成ガスの製造方法における反応温度は650℃以上であることが必要である。反応温度が650℃以上であることで、メタンの部分酸化が進行し、合成ガスを効率的に得ることができる。
一方、反応温度の上限値については、特に制限はないが、メタンの完全酸化を抑制するために、1000℃以下であることが好ましく、触媒の活性が安定的になることから、900℃以下がより好ましく、850℃以下がさらに好ましく、800℃以下が最も好ましい。
以上の観点から、本反応における反応温度は、650℃~1000℃の範囲が好ましく、650℃~900℃の範囲がより好ましく、650℃~850℃の範囲がさらに好ましく、650~800℃の範囲であることが最も好ましい。
なお、本反応は発熱反応であるため、例えば、反応開始温度を500℃としても、断熱反応容器を用いた場合には650℃以上になることもある。したがって、ここで反応温度とは、反応ガスの入り口温度ではなく、反応器の触媒層の温度を指す。触媒層の温度は、通常反応器の内部温度(入り口温度ではなく)と同じであるとみなすことができる。
【0034】
また、本発明におけるメタンの部分酸化プロセスにおいては、原料中の酸素に対するメタンのモル比(メタン/酸素)が1以上であることが好ましい。この比が1以上であると、メタンの完全酸化を抑制しやすくすることができ、メタンの部分酸化を促進することができる。また、メタン/酸素(CH/O)が1以上であると十分な反応速度が得られる。以上の観点から、原料中のメタン/酸素(CH/O)は1以上であることが好ましく、さらに好ましくは1.5以上、最も好ましくは2以上である。
一方、メタン/酸素(CH/O)の上限値については、特に制限はないが、反応効率の点から、6以下であることが好ましく、3以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本実施形態における反応様式としては、流動床反応装置、移動床反応装置または固定床反応装置を用いた公知の気相反応プロセスを適用することかできる。固定床反応装置の場合、特に附帯設備を含めた設備費、触媒コスト、運転管理の点で有利である。
また、バッチ式、半連続式または連続式のいずれの形態でも行われ得るが、連続式で行うのが好ましく、その方法は、単一の反応器を用いた方法でもよいし、直列または並列に配置された複数の反応器を用いた方法でもよい。
【0036】
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填してもよい。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
また、反応器には、反応に伴う発熱を分散させることを目的に、反応基質(反応原料)を分割して供給してもよい。
【0037】
反応器内には、メタンと酸素の他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、芳香族化合物類、および、それらの混合吻など、を存在させることかできるが、この中でも水(水蒸気)および/または二酸化炭素が共存しているのが、触媒上への炭素析出を抑制する効果が期待できることから好ましい。
このような希釈剤としては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用してもよいし、別途調製した希釈剤を反応原料と混合して用いてもよい。また、希釈剤は反応器に入れる前に反応原料と混合してもよいし、反応原料とは別に反応器に供給してもよい。
【0038】
反応温度の下限としては、650℃以上であることが重要である。反応温度の上限としては、本発明の効果を奏する範囲であれば、制限はないが、800℃以下であることが好ましい。反応温度が650℃以上であると、十分な反応速度が得られる。一方、反応温度が800℃以下であると、触媒の活性が安定的になる。
【0039】
反応圧力の上限は、3MPa(絶対圧、以下同様)以下であることが好ましい。反応圧力が3MPa以下であると、好ましくない副生成物の生成を抑制することができる。以上の観点から、反応圧力は1MPa以下であることが好ましい。
また、反応圧力の下限は特に制限されないが、通常0.1kPa以上、好ましくは1kPa以上、より好ましくは、10kPa以上である。これらの下限値以上であることで、十分な反応速度を得ることができる。
【0040】
反応原料の重量空間速度は0.1hr-1以上であることが好ましく、0.5hr-1以上であることがより好ましい。一方、重量空間速度は10hr-1以下であることが好ましく、5hr-1以下であることがより好ましい。重量空間速度がこの範囲内であると、メタンの部分酸化反応に有利である。
【0041】
本発明の方法によれば、反応生成物は、合成ガス(CO+H)の他にエタン、エチレン等の炭素数2の炭化水素(副生成物)、二酸化炭素、および水を含むが、これらの反応生成物のうち、反応原料であるメタンに対する二酸化炭素の選択率を30モル%以下とすることができ、より好ましくは25モル%以下とすることができる。また、本発明においては、メタンの転化率は8~100%であり、一酸化炭素及び水素の選択率は、それぞれ60~90%、8~25%である。
なお、反応器出口ガス中の未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスは、公知の分離・精製設備に導入され、それぞれの成分に応じて回収、精製、リサイクル、排出の処理を行うことができる。
【実施例0042】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例により限定されるものではない。
(評価方法)
(1)ゼオライトの物性
<元素分析>
元素分析は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)により行った。
<X線回折測定>
各ゼオライトの結晶構造をX線回折測定(XRD)により決定した。測定は、BRUKER社製の「D2PHASER」を用いて行った。
各実施例及び比較例で用いたゼオライトの結晶構造、Si/Al比、元素分析結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
(2)反応評価
固定床気相流通式反応装置を用いて、石英ガラス製反応管(触媒層部分:外径8.0mm、内径6.0mm、その他:外径6.0mm、内径4.0mm、全長260mm)の中段に、各実施例及び比較例の触媒100mgを充填した。N流通下(10ml/min)で電気炉を500℃まで昇温した。その後、CHを5.0ml/min及び、Oを2.5ml/min、Nを12.5ml/minの流量で導入し、反応温度500℃から800℃の温度範囲でメタンの部分酸化反応試験を行った。反応器の下流では、リボンヒーターにより100℃での加熱及び、反応ガスをN(100ml/min)で希釈することによって、生成した水の凝縮を防いだ。生成物の分析は2チャンネルのオンラインMicro-GC(FUSION、INFICON製)で分析した。Micro-GCのチャンネル1では、キャリアガスにArを用いたキャピラリーカラム Moleculer Sieve 5A(商品名)によって、H、O、N、CH、COを定量した。チャンネル2では、キャリアガスにHeを用いたキャピラリーカラム Porapak(商品名)によって、CO、C、C、HOを定量した。検出器にはTCDを用いた。
【0045】
反応物の転化率及び生成物の収率は以下のようにして算出した。なお、以下の式で、Fはflow rate、inはinlet、outはoutletを意味する。例えば、FCH4,inは入口のCH流量を意味する。
【0046】
【数1】
【0047】
なお、上記式には、以下の関係が成り立つ。
【0048】
【数2】
【0049】
実施例1
メタン部分酸化触媒としてプロトン型BEAゼオライト(Zeolyst製、Si/Al比=13)を準備した。上記方法にて、反応評価を行った。700℃におけるプロトン型BEAゼオライトの反応結果は、表2に示すように、CH転化率22%、O転化率60%、CO選択率81%、H選択率20%、二酸化炭素選択率19%であった。
【0050】
実施例2~21及び比較例1~5
実施例1において、表1に示す触媒を用い、表1に示す反応条件にて反応させたこと以外は実施例1と同様にして、メタンの部分酸化反応試験を行った。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表1及び表2に示す結果から、SiとAlから構成されるゼオライトであって、周期表第8族~10族の遷移金属の含有量を0.1質量%未満とすることで、メタンの完全燃焼反応を抑制することができ、メタンの部分酸化の選択性を向上させることができた。具体的には、メタンの完全酸化により発生するCOの選択率を30%以下に抑えることができた。
また、MOR、FAUに比較して、ルイス酸性を有するAlサイトが存在するCHA、MFI、BEAが好ましいことがわかる。
さらに、各実施例と比較例4及び5との比較から、反応温度が600℃以下であると、メタンの転化率が低いことがわかる。したがって、本発明においては、反応温度を650℃以上とすることが肝要であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の製造方法によれば、高い選択率でメタンを部分酸化することができ、効率的に合成ガス(CO+H)を製造することができる。合成ガスは、種々の反応原料として重要であることから、本発明は産業に貢献し得る技術である。