(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144193
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】延伸多孔フィルム、巻回体、衛生用品及び延伸多孔フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/00 20060101AFI20241003BHJP
B29C 55/02 20060101ALI20241003BHJP
B29C 67/20 20060101ALI20241003BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J9/00 A CFD
B29C55/02
B29C67/20 B
B29C44/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034098
(22)【出願日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2023054035
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】森 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】喜多 芹奈
【テーマコード(参考)】
4F074
4F210
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA66
4F074AC26
4F074AE01
4F074CA02
4F074CA06
4F074DA08
4F074DA10
4F074DA23
4F074DA33
4F074DA45
4F074DA46
4F210AA24
4F210AB11
4F210AB16
4F210AG01
4F210AG20
4F210AH63
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4F210QC02
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4F210QM15
4F214AA24
4F214AB11
4F214AB16
4F214AG01
4F214AG20
4F214AH63
4F214AR12
4F214AR20
4F214UA11
4F214UA32
4F214UB02
4F214UN64
4F214UP84
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた透湿度を有する延伸多孔フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ポリエステル、無機充填剤、並びに、OH基及びCOOR基(但し、Rは水素原子又はアルキル基である)から選択される少なくとも1種を有する化合物を含み、化合物の含有量が250~30000ppmである、延伸多孔フィルムに関する。さらに本発明は、延伸多孔フィルムの製造方法、延伸多孔フィルムを巻回してなる巻回体、そして、延伸多孔フィルムを含む衛生用品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル、無機充填剤、並びに、OH基及びCOOR基(但し、Rは水素原子又はアルキル基である)から選択される少なくとも1種を有する化合物を含み、
前記化合物の含有量が250~30000ppmである、延伸多孔フィルム。
【請求項2】
フィルム厚み20μm換算の透湿度が5000g/m2・24h以上である、請求項1に記載の延伸多孔フィルム。
【請求項3】
前記化合物が脂肪酸である、請求項1に記載の延伸多孔フィルム。
【請求項4】
前記脂肪酸がステアリン酸である、請求項3に記載の延伸多孔フィルム。
【請求項5】
前記化合物がグリコールである、請求項1に記載の延伸多孔フィルム。
【請求項6】
前記グリコールがエチレングリコールである、請求項5に記載の延伸多孔フィルム。
【請求項7】
前記無機充填剤の平均粒子径が0.1~10μmである、請求項1に記載の延伸多孔フィルム。
【請求項8】
前記無機充填剤が炭酸カルシウムである、請求項1に記載の延伸多孔フィルム。
【請求項9】
ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレートである、請求項1に記載の延伸多孔フィルム。
【請求項10】
厚みが10~150μmである、請求項1に延伸多孔フィルム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載した延伸多孔フィルムを巻回してなる、巻回体。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載した延伸多孔フィルムを備えた、衛生用品。
【請求項13】
ポリエステルと、OH基及びCOOR基(但し、Rは水素原子又はアルキル基である)から選択される少なくとも1種を有する化合物で被覆された無機充填剤とを混合し、樹脂組成物を得る工程と、
前記樹脂組成物をシート化してシートを得る工程と、
前記シートを延伸する工程と、を含む延伸多孔フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記化合物で被覆された無機充填剤の全質量に対する前記化合物の含有量が、0.01質量%以上である、請求項13に記載の延伸多孔フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸多孔フィルム、巻回体、衛生用品及び延伸多孔フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィンと無機充填剤を含有する樹脂組成物を延伸することにより、ポリオレフィンと無機充填剤との間で界面剥離を発生させ、多数のボイド(微多孔)を形成した多孔フィルムが知られている。特に、ポリオレフィンと無機充填剤を含有する樹脂組成物からなる延伸多孔フィルムは、内部の微多孔が連通孔を形成しているため、高い透気度・透湿度を有しながらも、液体の透過を抑制した透湿防水フィルムとして利用されている。このような延伸多孔フィルムは、例えば紙おむつや女性用生理用品等の衛生用品、作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服等の衣服、マスク、カバー、ドレープ、シーツ及びラップ等の通気性及び透湿性と防水性が求められる用途に幅広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、無機充填剤を50~200質量部含んでなるフィルムを、少なくともフィルムの流れ方向に延伸して多孔化した多孔質フィルムであって、ポリエチレン系樹脂が、Z平均分子量(Mz)が30万以上であり、エチレンと炭素数が6以上のα-オレフィンとの共重合体よりなる線状低密度ポリエチレンを含んでなるポリエチレン系多孔質フィルムが開示されている。
【0004】
ところで、近年は、環境保全の観点から従来のプラスチック製品を生分解性樹脂やバイオマス樹脂(植物由来原料)に置き換える研究がさかんに行われている。例えば、特許文献2には、熱可塑性樹脂(A)を含有し、フィルムの全成分100質量%中に、充填剤(B)を1~70質量%含み、空孔率が80%以下であり、いずれかの方向の引き裂き強さが、200mN以下であり、いずれかの方向の引張強度が15MPa未満である、フィルムが開示されている。また、特許文献3には、脂肪族ポリエステル樹脂、充填剤及び可塑剤を含む樹脂組成物を、溶融成形して原反シートとし、該原反シートを少なくとも1軸延伸してなる多孔性シートであって、充填剤の配合量が、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して20~300重量部であり、可塑剤が、トリメット酸エステルであり、該可塑剤の配合量が、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対して0.5~100重量部であることを特徴とする多孔性シートが開示されている。これらの文献では、熱可塑性樹脂としてポリ乳酸系樹脂を用いることが具体的に検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-161787号公報
【特許文献2】国際公開第2014/156952号
【特許文献3】特開2007-119537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、延伸多孔フィルムにおいては、構成する樹脂をポリオレフィン系樹脂からポリ乳酸等のポリエステル系樹脂に置き換える検討がなされている。しかしながら、従来のポリエステル系樹脂を含む延伸多孔フィルムにおいては、透湿度が十分とは言えず、改善が求められていた。
【0007】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、ポリエステル系樹脂を含む延伸多孔フィルムであって、優れた透湿度を有する延伸多孔フィルムを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の具体的な態様の例を以下に示す。
【0009】
[1] ポリエステル、無機充填剤、並びに、OH基及びCOOR基(但し、Rは水素原子又はアルキル基である)から選択される少なくとも1種を有する化合物を含み、
化合物の含有量が250~30000ppmである、延伸多孔フィルム。
[2] フィルム厚み20μm換算の透湿度が5000g/m2・24h以上である、[1]に記載の延伸多孔フィルム。
[3] 化合物が脂肪酸である、[1]又は[2]に記載の延伸多孔フィルム。
[4] 脂肪酸がステアリン酸である、[3]に記載の延伸多孔フィルム。
[5] 化合物がグリコールである、[1]~[4]のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
[6] グリコールがエチレングリコールである、[5]に記載の延伸多孔フィルム。
[7] 無機充填剤の平均粒子径が0.1~10μmである、[1]~[6]のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
[8] 無機充填剤が炭酸カルシウムである、[1]~[7]のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
[9] ポリエステルがポリブチレンアジペートテレフタレートである、[1]~[8]のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
[10] 厚みが10~150μmである、[1]~[9]のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載した延伸多孔フィルムを巻回してなる、巻回体。
[12] [1]~[10]のいずれかに記載した延伸多孔フィルムを備えた、衛生用品。
[13] ポリエステルと、OH基及びCOOR基(但し、Rは水素原子又はアルキル基である)から選択される少なくとも1種を有する化合物で被覆された無機充填剤とを混合し、樹脂組成物を得る工程と、
樹脂組成物をシート化してシートを得る工程と、
シートを延伸する工程と、を含む延伸多孔フィルムの製造方法。
[14] 化合物で被覆された無機充填剤の全質量に対する化合物の含有量が、0.01質量%以上である、[13]に記載の延伸多孔フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリエステル系樹脂を含む延伸多孔フィルムであって、優れた透湿度を有する延伸多孔フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。なお、以下の説明において使用される「フィルム」と「シート」は明確に区別されるものではなく、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0012】
また、本明細書において、フィルムのMD方向とは、フィルム成形時の押出方向(或いは引き取り方向、流れ方向)であり、縦方向とも言う。一方、TD方向とは当該MD方向に直交する方向であり、横方向又は幅方向とも言う。
【0013】
(延伸多孔フィルム)
本実施形態は、ポリエステル、無機充填剤、並びに、OH基及びCOOR基(但し、Rは水素原子又はアルキル基である)から選択される少なくとも1種を有する化合物を含み、化合物の含有量が250~30000ppmである、延伸多孔フィルム(以下、本延伸多孔フィルムともいう)に関する。本実施形態の延伸多孔フィルムは、多数のボイド(微多孔)を有し、このボイドが厚み方向に連通しているため、高い透湿度を発揮することができる。
【0014】
ボイド(微多孔)の孔径は0.05~0.5μmであることが好ましい。ボイド(微多孔)の孔径が上記範囲内であれば、水蒸気や空気を通しつつも、液体不透過性(防水性)のフィルムとすることができる。なお、上記孔径については、バブルポイント法(JIS K3832:1990又はASTM F316)で測定される最大孔径として評価することができ、より具体的には、パームポロメーターを用いて孔径を測定することができる。
【0015】
本延伸多孔フィルムは、一軸延伸フィルムである。本延伸多孔フィルムは、無機充填剤を含むため、製造工程において樹脂組成物を延伸することにより、ポリエステルと無機充填剤との間で界面剥離を発生させることで、上述した孔径のボイド(微多孔)を多数有するフィルムを形成することができる。
【0016】
本実施形態では、無機充填剤は、OH基及びCOOR基(但し、Rは水素原子又はアルキル基である)から選択される少なくとも1種を有する化合物で被覆されたものであることが好ましく、このような無機充填剤がポリエステルと混合され、シート状に成形されることで、フィルム中には、OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物が250~30000ppm含まれることになる。なお、OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物は、無機充填剤(微粒子)の表面に存在していてもよく、無機充填剤から脱離した状態で存在していてもよい。本延伸多孔フィルムの製造工程において、OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物で被覆された無機充填剤を用いることにより、無機充填剤とポリエステルとの分散性や混合性を高めることができ、その結果、フィルムにボイド(微多孔)を均一、かつ多数形成することができる。このような延伸多孔フィルムでは透湿性がより効果的に高められる。本実施形態では、無機充填剤の表面処理剤としてOH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物を使用することで、極性のあるエステル結合を有するポリエステルとの親和性が良好となり、シート中における充填剤の分散性が良好となり、延伸時に多数のボイドが生成されることで、透湿度が高いフィルムを得ることができるものと推定される。
【0017】
本実施形態の延伸多孔フィルムは優れた透湿度を発揮することができる。ここで、透湿度は以下の方法で測定することができる。まず、JIS Z0208:1976に準拠して、測定用カップ(内径60mm、内径面積28.27×10-4m2)を使用して、塩化カルシウムを封入後に、延伸多孔フィルムにて封かんする。次いで、当該測定用カップを温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿環境下に置き、24時間後の測定用カップの質量増加分から透湿度(g/m2・24hrs)を算出する。本実施形態では、フィルム厚み20μm換算の透湿度について以下の式を用いて算出することできる。
厚み20μmの透湿度=透湿度(測定値)×フィルムの厚み(μm)/20(μm)
【0018】
フィルム厚み20μm換算の透湿度は、5000g/m2・24hrs以上であることが好ましく、5500g/m2・24hrs以上であることがより好ましく、6000g/m2・24hrs以上であることがさらに好ましく、7000g/m2・24hrs以上であることが特に好ましい。また、フィルム厚み20μm換算の透湿度は、15000g/m2・24hrs以下であることが好ましい。このように、本実施形態の延伸多孔フィルムは優れた透湿度を有している。
【0019】
本実施形態の延伸多孔フィルムのMD方向の引裂強度は0.5N/mm以上であることが好ましく、0.6N/mm以上であることがより好ましい。なお、延伸多孔フィルムのMD方向の引裂強度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、5N/mm以下であることが好ましい。本実施形態においては、特に延伸多孔フィルムのMD方向の引裂強度が高められている。通常、一軸延伸フィルムを作製する際には、MD方向(縦方向)に延伸がなされるため、特にMD方向の引裂強度が低下する傾向が見られる。しかしながら、本実施形態においては、延伸多孔フィルムを構成する樹脂としてポリエステルを用い、さらに、ポリエステルとOH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物で被覆された無機充填剤を混合しているため、引裂強度が低下の傾向が顕著に見られるMD方向の引裂強度を効果的に高めることができる。
【0020】
また、本実施形態の延伸多孔フィルムのTD方向の引裂強度は5.0N/mm以上であることが好ましく、6.0N/mm以上であることがより好ましく、7.0N/mm以上であることがさらに好ましい。なお、延伸多孔フィルムのTD方向の引裂強度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、30N/mm以下であることが好ましい。本実施形態においては、ポリエステルとOH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物で被覆された無機充填剤を混合しているため、TD方向(横方向)の引裂強度も高められている。延伸多孔フィルムの引裂強度を高めることで、フィルムの製膜時や印刷時の破断を抑制することができ、延伸多孔フィルムをおむつ等の吸収性物品に用いた場合の強度も十分となる。なお、本延伸多孔フィルムの引裂強度は、JIS K7128-1:1998に準拠し測定方向に長さ100mm、幅25mmに切り出したサンプルを作製し、幅中央に25mmの切り込みを入れ、引張試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離25mmの条件で測定される。
【0021】
本延伸多孔フィルムのTD方向の破断伸度は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが一層好ましく、90%以上であることがより一層好ましく、100%以上であることが特に好ましい。また、本延伸多孔フィルムのTD方向の破断伸度は800%以下であることが好ましい。
【0022】
本延伸多孔フィルムのMD方向の破断伸度は30%以上であることが好ましく、33%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましい。また、本延伸多孔フィルムのMD方向の破断伸度は200%以下であることが好ましい。なお、本延伸多孔フィルムの破断伸度はJIS K7127:1999に準拠し、測定方向に長さ100mm、幅10mmに切り出したサンプルを作製し、引張試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離20mmの条件で測定される。
【0023】
本実施形態においては、TD方向の破断伸度がMD方向の破断伸度がよりも大きいことが好ましい。一般的なポリオレフィン系樹脂やポリ乳酸系樹脂を用いた延伸多孔フィルムにおいては、MD方向の破断伸度の方がTD方向の破断伸度よりも大きいことが通常であるが、本実施形態においては、TD方向の破断伸度がより高められ、TD方向の破断伸度がMD方向の破断伸度がよりも大きくなっていることが好ましい。
【0024】
ここで、TD方向の破断伸度をPとし、MD方向の破断伸度をQとした場合、P/Qの値は1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.8以上であることがさらに好ましく、1.9以上であることが特に好ましい。また、P/Qの値は20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。P/Qの値を上記範囲内とすることにより、延伸多孔フィルムの透湿性をより効果的に高めることができる。
【0025】
本延伸多孔フィルムのMD方向の引張強度は、10.0MPa以上であることが好ましく、12.0MPa以上であることがより好ましく、14.0MPa以上であることがさらに好ましい。また、本延伸多孔フィルムのMD方向の引張強度は、50MPa以下であることが好ましく、48MPa以下であることがより好ましく、45MPa以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本延伸多孔フィルムのTD方向の引張強度は、1.0MPa以上であることが好ましく、1.2MPa以上であることがより好ましく、1.4MPa以上であることがさらに好ましい。また、本延伸多孔フィルムのTD方向の引張強度は、10MPa以下であることが好ましく、8MPa以下であることがより好ましく、7MPa以下であることがさらに好ましい。なお、本延伸多孔フィルムの引張強度は、JIS K7127:1999に準拠し、測定方向に長さ100mm、幅10mmに切り出したサンプルを作製し、引張試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離20mmの条件で測定される。
【0027】
本延伸多孔フィルムの厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。また、本延伸多孔フィルムの厚みは、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。本延伸多孔フィルムの厚みを上記範囲内とすることにより、フィルムの薄膜化を可能としつつも、透湿度と機械的強度のバランスを保つことができる。
【0028】
本実施形態は、延伸多孔フィルムを巻回してなる巻回体に関するものであってもよい。本延伸多孔フィルムは適度な強度と柔軟性を有するため、ロール状体として、保管したり、流通させたりすることができる。
【0029】
(ポリエステル)
本延伸多孔フィルムはポリエステルを含む。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートラクテート、ポリブチレンサクシネートヒドロキシカプロエート、ポリブチレンサクシネートカルボネート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンサクシネート;ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリヒドロキシブチレートバリレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシアシル)、ポリヒドロキシアシル等のポリヒドロキシアルカノエート;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートカプロラクトン、ポリプロピオラクトンとこれらの塩や誘導体、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。中でも、ポリエステルは、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリブチレンアジペートテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリエステルはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であることが特に好ましい。
【0030】
ポリブチレンアジペートテレフタレートは、生分解性樹脂であり、熱可塑性樹脂であることが好ましい。本延伸多孔フィルムが構成樹脂としてポリブチレンアジペートテレフタレートを含む場合、本延伸多孔フィルムは生分解性に優れている。本明細書において、生分解性とは、微生物などの生物の作用によりフィルムが分解される性質をいう。
【0031】
ポリブチレンアジペートテレフタレートは、アジピン酸と、テレフタル酸と、ブタンジオールとの共重合体である。アジピン酸、テレフタル酸及びブタンジオールは、同時に共重合させてもよく、多段階的に共重合させてもよい。
【0032】
ポリブチレンアジペートテレフタレートを合成する際には、アジピン酸、テレフタル酸、ブタンジオールの他に、微量の他の共重合成分を加えてもよい。他の共重合成分として、テレフタル酸とアジピン酸以外の他のジカルボン酸や、鎖延長や末端封鎖等を目的とした改質剤等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いてもよい。他のジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いてもよい。改質剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、グリコール化合物等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物として、ジイソシアネート化合物が挙げられ、ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。グリコール化合物としては、ブタンジオール以外の他のジオール、ポリアルキレングリコールが挙げられる。他のジオールとしては、メタンジオール、エタンジオール、プロパンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール(ポリテトラメチレングリコール)等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
ポリブチレンアジペートテレフタレートを構成するジカルボン酸に由来する構成単位100mol%中、テレフタル酸に由来する構成単位は40~60mol%含まれることが好ましく、アジピン酸に由来する構成単位は40~60mol%含まれることが好ましい。ポリブチレンアジペートテレフタレートを構成するジカルボン酸に由来する構成単位のうち、テレフタル酸に由来する構成単位とアジピン酸に由来する構成単位が占める割合を上記範囲内とすることにより、機械的強度、生分解性及び柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られやすくなる。
【0034】
ポリブチレンアジペートテレフタレートの融点は、105℃以上であることが好ましく、108℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらに好ましい。また、ポリブチレンアジペートテレフタレートの融点は、130℃以下であることが好ましく、128℃以下であることがより好ましく、125℃以下であることがさらに好ましい。ポリブチレンアジペートテレフタレートの融点は、JIS K 7121(2012)に準拠して、DSC等で測定される。ポリブチレンアジペートテレフタレートの融点を上記範囲内とすることより、耐熱性と成形性のバランスが良好なフィルムが得られやすくなる。
【0035】
ポリブチレンアジペートテレフタレートとしては、日本バイオプラスチック協会のグリーンプラ(生分解性プラスチック)の分類番号A-1のポジティブリストに記載された生分解性合成高分子化合物が挙げられる。市販品としては、例えば、BASF社製のF Blend C1200、台湾長春社製のECO-A05等が挙げられる。
【0036】
ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、50000以上であることが好ましく、70000以上であることがより好ましく、100000以上であることがさらに好ましい。また、ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、400000以下であることが好ましく、350000以下であることがより好ましく、300000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等で求めることができる。ポリエステルの重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、押出成形性や機械的強度のバランスが良好なフィルムが得られやすくなる。
【0037】
ポリエステルの分子量分布(Mw/Mn)は1.5以上であることが好ましく、1.7以上であることがより好ましく、1.9以上であることがさらに好ましい。また、ポリエステルの分子量分布(Mw/Mn)は5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましい。ポリエステルの分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲内とすることにより、製膜性、フィルムの剛性及び耐衝撃性のバランスが良好なフィルムが得られやすくなる。
【0038】
本延伸多孔フィルム中のポリエステルの含有量は、延伸多孔フィルムの全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、ポリエステルの含有量は、延伸多孔フィルムの全質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。延伸多孔フィルム中のポリエステルの含有量を上記範囲内とすることにより、延伸多孔フィルムの透湿性をより効果的に高めることができる。
【0039】
(無機充填剤/被覆化合物)
本延伸多孔フィルムは、無機充填剤を含む。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの各種炭酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの各種硫酸塩、酸化亜鉛、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、アルミナなどの各種酸化物、その他、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、珪酸塩鉱物、ヒドロキシアパタイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、モンモリロナイト、ゼオライトなどの各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどの各種リン酸塩、塩化リチウム、フッ化リチウムなどの各種塩などを挙げることができる。中でも、無機充填剤は、透湿性向上や強度等の観点から、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化ケイ素(シリカ)及び酸化チタンよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭酸カルシウム及び硫酸バリウムよりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、炭酸カルシウムであることが特に好ましい。
【0040】
無機充填剤の平均粒子径は0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。また、無機充填剤の平均粒子径は10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。無機充填剤の平均粒子径を上記下限値以上とすることにより、無機充填剤の分散不良や二次凝集が抑制され、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物中に均一に分散させることができるため好ましい。平均粒子径が上記上限値以下であれば、フィルムの薄膜化の際に大きなボイドの発生を抑制することができ、フィルムに十分な強度と耐水性を持たせることができる。
【0041】
無機充填剤の平均粒子径は、恒圧式透過法により、島津式粉体比表面積測定器SS-100を用いて測定した比表面積から算出する。測定条件は、試料重量を3.0g、試料厚を1.35cm、試料層の断面積を2cm2、空気圧力を50cmH2Oとし、空気の粘性係数を181×10-6g/(cm・sec)として平均粒子径を算出する。
【0042】
無機充填剤には表面処理が施されていることが好ましく、無機充填剤は、OH基及びCOOR基(但し、Rは水素原子又はアルキル基である)から選択される少なくとも1種を有する化合物で被覆されたものであることが好ましい。このように、OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物で被覆された無機充填剤がポリエステルと混合され、シート状に成形されることで、フィルム中には、OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物が250~30000ppm含まれることになる。なお、OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物は、無機充填剤(微粒子)の表面に存在していてもよく、無機充填剤から脱離した状態で存在していてもよい。
【0043】
OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物は、無機充填剤の表面を被覆するものであるため、表面処理剤やコーティング剤と呼ぶこともできる。すなわち、本実施形態の延伸多孔フィルム中には、無機充填剤の表面処理剤や表面処理剤に由来する化合物が250~30000ppm含まれることが好ましい。
【0044】
OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の含有量は、延伸多孔フィルムの全質量に対して、250ppm以上であることが好ましく、260ppm以上であることがより好ましく、270ppm以上であることがさらに好ましく、280ppm以上であることが特に好ましい。また、OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の含有量は、延伸多孔フィルムの全質量に対して、30000ppm以下であることが好ましく、25000ppm以下であることがより好ましく、20000ppm以下であることがさらに好ましく、15000ppm以下であることが一層好ましく、10000ppm以下であることが特に好ましい。延伸多孔フィルム中におけるOH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、無機充填剤とポリエステルとの分散性や混合性を高めることができ、その結果、延伸多孔フィルムの透湿性をより効果的に高めることができる。
【0045】
OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の含有量(無機充填剤中において当該化合物が占める割合)は、当該化合物で被覆された無機充填剤の全質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.015質量%以上であることがより好ましく、0.02質量%以上であることがさらに好ましい。OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の含有量は、当該化合物で被覆された無機充填剤の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。無機充填剤におけるOH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、無機充填剤とポリエステルとの分散性や混合性を高めることができ、その結果、延伸多孔フィルムの透湿性をより効果的に高めることができる。
【0046】
COOR基におけるRは、水素原子又はアルキル基である。Rがアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~12であることがさらに好ましく、1~10であることが一層好ましく、1~5であることが特に好ましい。例えば、アルキル基は、メチル基又はエチル基であってもよい。アルキル基はさらに置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基)、芳香族炭化水素基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基)、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の置換基を挙げることができる。
【0047】
OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物は、脂肪酸であることが好ましい。脂肪酸としては、分子内にカルボキシル基を少なくとも1個有する鎖状炭化水素化合物が挙げられる。分子内にカルボキシル基を少なくとも1個有する鎖状炭化水素化合物とは、カルボキシル基が結合する炭素原子が炭素鎖の構成原子となっている化合物を意味する。分子内にカルボキシル基を少なくとも1個有する鎖状炭化水素化合物中の炭素鎖は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。中でも、脂肪酸は、カルボキシル基を1個有する鎖状炭化水素化合物であることが好ましい。具体的には、脂肪酸として、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリル酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。中でも、脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸及びミリスチン酸よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ステアリン酸であることが特に好ましい。
【0048】
また、OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物は、グリコールであることも好ましい。グリコールは、1分子中にヒドロキシ基を2個有するアルコールである。グリコールは、アルキレングリコールであることが好ましく、アルキレングリコールとしては、例えば、メチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等を挙げることができる。中でも、グリコールはエチレングリコールであることが特に好ましい。
【0049】
OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の分子量は、50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、150以上であることがさらに好ましい。また、OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の分子量は、500以下であることが好ましく、450以下であることがより好ましく、400以下であることがさらに好ましい。
【0050】
本延伸多孔フィルム中の無機充填剤の含有量は、延伸多孔フィルムの全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、無機充填剤の含有量は、延伸多孔フィルムの全質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。延伸多孔フィルム中の無機充填剤の含有量を上記範囲内とすることにより、延伸多孔フィルムの透湿性をより効果的に高めることができる。
【0051】
無機充填剤としては、上記の無機充填剤の1種のみを用いてもよく、材質や平均粒子径、表面処理剤の種類などが異なるものを2種以上混合して用いてもよい。無機充填剤が2種類以上で構成される場合、その合計が上記範囲内であることが好ましい。
【0052】
(他の樹脂)
本延伸多孔フィルムは、ポリエステル以外に他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合体、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。また、他の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエチレングリコールなどの生分解性樹脂を用いてもよい。これら他の樹脂は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0053】
本延伸多孔フィルムにポリエステル以外に他の樹脂が含まれる場合、他の樹脂の含有量は、延伸多孔フィルムの全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0054】
(任意成分)
本延伸多孔フィルムは、任意成分として各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、滑剤、相容化剤、加工助剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、艶消し剤、抗菌剤、消臭剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料等を挙げることができる。可塑剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、金属石鹸、高級アルコール、ワセリン、パラフィンワックス、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ひまし油、水添ひまし油、硬化ひまし油、脱水ひまし油、芳香族エステル、芳香族アミド、ポリエール、ポリエステルなどの低分子量ポリマー(オリゴマー)を用いることができる。添加剤の含有量は延伸多孔フィルムの全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。なお、本実施形態では、可塑剤の添加量が1質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、可塑剤が実質的に含まれていなくてもよい。とりわけポリエステルとしてポリブチレンアジペートテレフタレートを用いた場合には、本延伸多孔フィルムは、可塑剤を含まなくても、高い柔軟性を発揮することができる。
【0055】
(本延伸多孔フィルムの製造方法)
本延伸多孔フィルムの製造方法は、例えば、ポリエステルと、OH基及びCOOR基(但し、Rは水素原子又はアルキル基である)から選択される少なくとも1種を有する化合物で被覆された無機充填剤とを混合し、樹脂組成物を得る工程と、樹脂組成物をシート化してシートを得る工程と、シートを延伸する工程を含むことが好ましい。シートを延伸する工程は、シートを少なくとも一軸方向に延伸する工程を含むことが好ましい。
【0056】
本延伸多孔フィルムは、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反シートの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という観点から、平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法は、例えば押出機を用いて樹脂組成物を溶融し、ダイからフィルム状に押出し、冷却ロールや空冷、水冷にて冷却固化して未延伸フィルムを得る工程と、未延伸フィルムを少なくとも一軸方向に延伸することにより延伸多孔フィルムを得る工程を含むことが好ましい。
【0057】
樹脂組成物を得る工程は、ポリエステル及びOH基及びCOOR基(但し、Rは水素原子又はアルキル基である)から選択される少なくとも1種を有する化合物で被覆された無機充填剤を混合した後、溶融混練させる工程を含むことが好ましい。具体的には、タンブラーミキサー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、リボンブレンダ―、スーパーミキサー等の混合機で適当な時間混合した後、異方向二軸押出機、同方向二軸押出機等の押出機を使用し、樹脂組成物を均一に分散させることが好ましい。
【0058】
OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の含有量(無機充填剤中において当該化合物が占める割合)は、当該化合物で被覆された無機充填剤の全質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.015質量%以上であることがより好ましく、0.02質量%以上であることがさらに好ましい。OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の含有量は、当該化合物で被覆された無機充填剤の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物を得る工程において混合する無機充填剤において、OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、無機充填剤とポリエステルとの分散性や混合性を高めることができ、その結果、延伸多孔フィルムの透湿性をより効果的に高めることができる。
【0059】
シート(未延伸シート)を得る工程では、押出機の先端にTダイや丸ダイ等の口金を接続し、得られた樹脂組成物をフィルム状に成膜することが好ましい。また、混練機の先端にストランドダイを接続し、ストランドカット、ダイカット等の方法により一旦ペレット化した後、(場合によっては追加する組成物とともに)得られたペレットを単軸押出機等に導入し、押出機の先端にTダイや丸ダイ等の口金を接続し、フィルム状に成形することもできる。フィルム状に成形するにあたり、インフレーション成形、チューブラー成形、Tダイ成形等のフィルム成形方法を採用することが好ましい。
【0060】
シートを延伸する工程では、未延伸フィルムを少なくとも一軸方向に延伸する。例えば、押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイや丸ダイから押出し、冷却ロールで冷却固化し、MD方向(縦方向)へのロール延伸や、横方向(フィルムの流れ方向に対して垂直方向、TD)へのテンター延伸等により、少なくとも一軸方向に延伸される。中でも、延伸多孔フィルムを得る工程は、MD方向(縦方向)へ一軸延伸する工程を含むことが好ましく、本延伸多孔フィルムは一軸延伸多孔フィルムであることが好ましい。なお、MD方向(縦方向)へ一軸延伸する工程では、同じ方向に2回以上延伸する工程を有していてもよい。また、延伸倍率は、2.5~6.0倍であることが好ましく、3.0~5.5倍であることがより好ましい。延伸倍率を上記下限値以上とすることで、透湿性に優れ、かつ均一に延伸されて優れた外観を有する延伸多孔フィルムが得られる。また、延伸倍率を上記上限値以下とすることで、フィルムの破断伸度を高めることができる。
【0061】
必要に応じて、延伸後に熱処理や弛緩処理を行ってもよい。ロール延伸により延伸を行う場合、延伸工程と巻取工程の間で、延伸後のフィルムを加熱したロール(アニールロール)に接触させることで熱処理を行うことができる。また、アニールロールにより加熱しながら、次に接触するロールの速度をアニールロール速度よりも遅くすることで、弛緩処理を行うことができる。なお、これらの熱処理や弛緩処理は、未延伸フィルムの延伸を延伸し、延伸多孔フィルムを巻き取った後、別工程にて行うこともできる。
【0062】
本延伸多孔フィルムの製造方法は、必要に応じて、スリット、コロナ処理、印刷、粘着剤の塗布、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工処理を行う工程を有していてもよい。本延伸多孔フィルムには、例えば、印刷が施されていてもよく、印刷層を有するフィルムであってもよい。
【0063】
(用途)
本延伸多孔フィルムは、例えば、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物や粉粒物、固形物の包装用資材、農業用資材、建築資材等幅広い用途において、特に使い捨てにされる用途に好適に用いることができる。具体的用途としては、例えば、農業用マルチフィルム、トンネルフィルム、ハウスフィルム、日覆い、防草シート、畦シート、発芽シート、林業用燻蒸シート、フラットヤーン等を含む結束テープ、おむつや生理用品のバックシート、包装用シート、カイロ用シート、ショッピングバッグ、レジ袋、ゴミ袋、水切り袋、コンポストバッグ等が挙げられる。中でも、本延伸多孔フィルムは、透湿性に優れているため、おむつや生理用品等のバックシートとして用いられることが好ましい。
【0064】
本実施形態は、上述した延伸多孔フィルムを備えた、衛生用品に関するものであってもよい。衛生用品としては、例えば、吸収性物品(おむつや生理用品等)を挙げることができる。
【実施例0065】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0066】
<厚み>
JIS K7130:1999に準拠して、スタンドタイプ定圧厚み測定器にてフィルムの厚みを測定し、36回の測定値の平均を算出した。
【0067】
<破断伸度・引張強度>
JIS K7127:1999に準拠して、測定方向に長さ100mm、幅10mmに切り出したサンプルを作製し、引張試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離20mmの条件で破断伸度及び引張強度測定し、3本の測定値の平均を算出した。
【0068】
<引裂強度>
JIS K7128-1:1998に準拠して、測定方向に長さ100mm、幅25mmに切り出したサンプルを作製し、幅中央に25mmの切り込みを入れ、引張試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離25mmの条件で引裂強度を測定し、3本の測定値の平均を算出した。
【0069】
<透湿度(20μm換算)>
JIS Z0208:1976に準拠して、測定用カップ(内径60mm、内径面積28.27×10-4m2)に塩化カルシウムを封入し、サンプルにて封かんした。当該測定用カップを温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿環境下に置き、24時間後の測定用カップの質量増加分から透湿度(g/m2・24hrs)を算出した。3回の測定値の平均を算出後、下記の式からフィルムの厚み20μmあたりの透湿度(フィルム厚み20μm換算の透湿度)を算出した。
厚み20μmの透湿度=透湿度(測定値)×サンプルの厚み(μm)/20(μm)
【0070】
<OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の定量1>
<<無機充填剤中の表面処理剤濃度の定量(脂肪酸系原料)>>
無機充填剤300mgにTHF5mlを加えて2時間撹拌後、遠心分離を行い、上澄み液を乾固させて得られた抽出物をクロロホルムに溶解した。次いで、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)を用いて、下記の条件にて定性分析を行った。その後、標準物質として選択したパルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸メチルをクロロホルムに溶解してガスクロマトグラフ分析(GC測定)を行い、無機充填剤の抽出物のピーク面積を比較した。
<<GC/MS測定条件>>
・装置:GC/MS-QP2020(島津製作所社製)
・カラム:UA1(MS/HT)-30M-0.1F
・キャリアガス:ヘリウム
・流速:1mL/分
・注入量:1μL
・注入温度:320℃
・カラム温度:70℃で1分間保持→25℃/分で320℃まで昇温→320℃で5分間保持
・インターフェース温度:320℃
・イオン源温度:250℃
・イオン化法:EI(70eV)
・検出範囲:35-800m/z
<<GC測定条件>>
・装置:GC-2010Plus(島津製作所社製)
・カラム:UA1(MS/HT)-30M-0.1F
・キャリアガス:ヘリウム
・流速:1mL/分
・注入量:1μL
・注入温度:320℃
・カラム温度:70℃で1分間保持→25℃/分で320℃まで昇温→320℃で5分間保持
・検出器:FID
【0071】
<OH基及びCOOR基から選択される少なくとも1種を有する化合物の定量2>
<<無機充填剤中の表面処理剤濃度の定量(グリコール系原料)>>
無機充填剤54mgにクロロホルム1.63gを加えて数時間浸漬後、遠心分離を行い、上澄み液を採取して1H-NMR分析を行った。ピークより物質の構造を特定した後、クロロホルムに含まれるテトラメチルシラン 0.05vol%を標準として、シグナルの積分比より濃度を定量した。
【0072】
<フィルム中の表面処理剤濃度の定量1(脂肪酸系原料)>
得られた延伸多孔フィルムに対して、試料1.8gをクロロホルムで溶解後、メタノールで樹脂を沈殿させ、濾過した後の濾液を乾固させて得られた抽出物に水を加えて、遠心分離後の沈殿物をクロロホルムに溶解した。次いで、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)を用いて、下記の条件にて定性分析を行った。その後、標準物質として選択したパルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸メチルをクロロホルムに溶解してガスクロマトグラフ分析(GC測定)を行い、無機充填剤の抽出物のピーク面積を比較した。
【0073】
<フィルム中の表面処理剤濃度の定量2(グリコール系原料)>
得られた延伸多孔フィルムに対して、試料1.8gをクロロホルムで溶解後、メタノールで樹脂を沈殿させ、濾過した後の濾液を乾固させて得られた抽出物に水を加えて、遠心分離後の上澄み液を乾固させた後、クロロホルムに溶解した。次いで、1H-NMR分析を行い、クロロホルムに含まれるテトラメチルシラン 0.05vol%を標準として、シグナルの積分比より濃度を定量した。
【0074】
<成形性>
押出後のシートから縦方向500mm、横方向200mmの試験片を5枚切り出し、ブツや穴開きなど外観不良の欠点数を数え、試験片5枚の合計数を以下の基準で評価した。
A:欠点数が5個未満
B:欠点数が5個以上10個未満
C:欠点数が10個以上
【0075】
<ポリブチレンアジペートテレフタレート(A)>
A-1:BASF社製「F Blend C1200」(密度1.270g/cm3、MFR3.8g/10分、融点:116℃、ジカルボン酸に由来する構成単位100mol%中のテレフタル酸に由来する構成単位:48.1mol%、アジピン酸に由来する構成単位:51.9mol%、重量平均分子量:150000、Mw/Mn:2.4)
【0076】
<無機充填剤(B)>
B-1:備北粉化工業社製、炭酸カルシウム「ライトンBS-0」(平均粒子径1.0μm、脂肪酸系表面処理品、脂肪酸系原料濃度0.029質量%)
B-2:カルファイン社製、炭酸カルシウム「CSK-5」(平均粒子径1.5μm、脂肪酸系表面処理品、脂肪酸系原料濃度0.065質量%)
B-3:備北粉化工業社製、炭酸カルシウム「ライトン26A」(平均粒子径0.85μm、脂肪酸表面処理品)
B-4:備北粉化工業社製、炭酸カルシウム「ライトンBK」(平均粒子径0.85μm、ポリエチレングリコール表面処理品)
B-5:カルファイン社製、炭酸カルシウム「サンカット-160」(平均粒子径1.5μm、ワックス表面処理品)
B-6:備北粉化工業社製、炭酸カルシウム「ソフトン1000」(平均粒子径2.2μm、表面未処理品)
【0077】
<実施例1>
原材料を表1に示す組成比率にて計量した後、ヘンシェルミキサーに投入し、5分間混合、分散させた。次いで、同方向二軸押出機を用いて、設定温度200℃にて溶融混練した。同方向二軸押出機の先端に接続したTダイにて、樹脂組成物を押出し、35℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて厚さ59μmの未延伸フィルムを得た。その後、得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機にて温度63℃で縦方向に3.5倍延伸して、延伸多孔フィルムを得た。
【0078】
<実施例2及び3>
延伸倍率を変更した以外は、実施例1と同様の手法により、延伸多孔フィルムロールを得た。
【0079】
<実施例4>
原材料を表1に示す組成比率に変更して、実施例1と同様の手法により、厚さ55μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機にて温度63℃で縦方向に3.5倍延伸して、延伸多孔フィルムを得た。
【0080】
<実施例5>
延伸倍率を変更した以外は、実施例4と同様の手法により、延伸多孔フィルムロールを得た。
【0081】
<実施例6>
原材料を表1に示す組成比率に変更して、実施例1と同様の手法により、厚さ61μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機にて温度63℃で縦方向に5倍延伸して、延伸多孔フィルムを得た。
【0082】
<実施例7>
延伸倍率を変更した以外は、実施例6と同様の手法により、延伸多孔フィルムロールを得た。
【0083】
<実施例8>
原材料を表1に示す組成比率に変更して、実施例1と同様の手法により、厚さ65μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機にて温度63℃で縦方向に4.5倍延伸して、延伸多孔フィルムを得た。
【0084】
<比較例1>
原材料を表1に示す組成比率に変更して、実施例1と同様の手法により、厚さ62μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機にて温度63℃で縦方向に3.5倍延伸して、延伸多孔フィルムを得た。
【0085】
<比較例2>
延伸倍率を変更した以外は、比較例1と同様の手法により、延伸多孔フィルムロールを得た。
【0086】
<比較例3>
原材料を表1に示す組成比率に変更して、実施例1と同様の手法により、厚さ65μmの未延伸フィルムを得た。
【0087】
<参考例1>
ポリエチレン系樹脂と炭酸カルシウムから構成されている三菱ケミカル社製の透湿性フィルムKTFの透湿度を測定した結果、5965(g/m2・24hrs)であった。
【0088】
【0089】
比較例に比べて実施例では、優れた透湿度が発揮されていた。なお、従来の延伸多孔フィルムにおいては、透湿性の観点からポリプロピレン系樹脂が主に用いられていたが、実施例で得られた延伸多孔フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を用いた延伸多孔フィルムと同様の透湿度が達成された。ポリプロピレン系樹脂をポリエステル系樹脂に置き換えることができれば、例えば、生分解性を有するポリエステル系樹脂を用いることができ、生分解性に優れた延伸多孔フィルムを得ることも可能となる。