(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144222
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】加工食品の製造方法、香料添加装置、加工食品製造システム、並びにウォーターサーバー
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20241003BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20241003BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20241003BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L5/00 H
A23L2/00 B
A23L2/56
A23L27/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041458
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2023051293
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】谷崎 美江
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LC16
4B035LE03
4B035LG04
4B035LK02
4B035LP21
4B035LP22
4B035LP44
4B035LP46
4B035LP55
4B035LP59
4B035LT01
4B035LT06
4B035LT07
4B035LT14
4B035LT20
4B047LB08
4B047LF07
4B047LG05
4B047LP02
4B047LP20
4B117LC03
4B117LE08
4B117LK06
4B117LL01
4B117LP01
4B117LP11
4B117LP14
4B117LP17
4B117LP20
4B117LT02
4B117LT05
(57)【要約】
【課題】香料の添加量を的確に制御することができ、香料の無菌添加が可能になるとともに、嗜好性に優れた加工食品を生産性よく製造することが可能な加工食品の製造方法、香料添加装置、加工食品製造システム、並びにウォーターサーバーを提供する。
【解決手段】香料添加工程(6)は、食品用香料化合物からなる香料Fを含有する気体G1を中空糸膜60に透過させ、香料Fを気体G1から分離・透過させて液体原料L2に添加することで液体加工食品L3を得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造工程に香料添加工程が含まれる加工食品の製造方法であって、
前記香料添加工程は、食品用香料化合物を含有する気体を中空糸膜に透過させ、前記食品用香料化合物を前記気体から分離・透過させて液体原料に添加することで前記加工食品を得ることを特徴とする、加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記香料添加工程は、加圧用ガスを前記食品用香料化合物に供給して前記気体の分離・透過を促進させることを特徴とする、請求項1に記載の加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記香料添加工程は、前記中空糸膜として、前記食品用香料化合物に対して選択性を有するガス透過膜を用いることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の加工食品の製造方法。
【請求項4】
前記中空糸膜が、少なくとも、気体透過性を有する均質層と、前記均質層を支持する多孔質支持層とを有する複合中空糸膜からなるガス透過膜であることを特徴とする請求項3に記載の加工食品の製造方法。
【請求項5】
前記製造工程における前記香料添加工程の後段側に、前記加工食品を容器に充填する充填工程を備えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の加工食品の製造方法。
【請求項6】
前記製造工程における前記香料添加工程の前段側に、前記加工食品を殺菌する加熱殺菌工程を備えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の加工食品の製造方法。
【請求項7】
香料供給手段と、前記香料供給手段に接続されたガス透過手段とを備える香料添加装置であって、
前記香料供給手段は、
香料を貯蔵するタンクと、
前記タンクに貯蔵された前記香料を含む気体を前記ガス透過手段に供給する香料供給配管と、を有し、
前記ガス透過手段は、
前記香料供給配管から供給された前記気体が導入される気体供給口と、
前記気体によって前記香料が添加される液体原料を導入する液体供給口と、
前記香料を前記気体から分離・透過させて前記液体原料と混合させる中空糸膜と、
を備えることを特徴とする、香料添加装置。
【請求項8】
さらに、前記香料供給手段に接続され、前記タンクに貯蔵された前記香料に加圧用ガスを供給する香料加圧手段を備えることを特徴とする、請求項7に記載の香料添加装置。
【請求項9】
前記香料加圧手段は、
加圧用ガスボンベと、
前記加圧用ガスボンベから供給される前記加圧用ガスを、前記タンクに貯蔵された前記香料に供給する加圧用ガス供給配管と、
を備えることを特徴とする、請求項8に記載の香料添加装置。
【請求項10】
前記ガス透過手段は、さらに、前記香料を含む気体の内、前記中空糸膜で分離・透過されなかった前記気体を排ガスとして排出するガス排出口を備えることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の香料添加装置。
【請求項11】
前記ガス透過手段は、さらに、前記中空糸膜で分離・透過された前記香料と前記液体原料との混合液を排出する液体排出口を備えることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の香料添加装置。
【請求項12】
前記香料供給手段は、さらに、前記香料を含む前記気体の前記ガス透過手段への供給量を制御する制御部を備えることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の香料添加装置。
【請求項13】
前記ガス透過手段は、前記中空糸膜が、前記香料に対して選択性を有するガス透過膜からなることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の香料添加装置。
【請求項14】
前記中空糸膜が、少なくとも、気体透過性を有する均質層と、前記均質層を支持する多孔質支持層とを有する複合中空糸膜からなるガス透過膜であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の香料添加装置。
【請求項15】
請求項7又は請求項8に記載の香料添加装置を含む加工食品製造システムであって、
前記香料添加装置は、
前記香料供給手段が、前記香料として食品用香料化合物を含む前記気体を前記ガス透過手段に供給するものであり、
前記ガス透過手段は、前記食品用香料化合物を前記気体から分離・透過させて前記液体原料に混合させることで、加工食品を得ることを特徴とする、加工食品製造システム。
【請求項16】
さらに、前記香料添加装置の後段側に、前記加工食品を容器に充填する充填装置が備えられていることを特徴とする請求項15に記載の加工食品製造システム。
【請求項17】
さらに、前記香料添加装置の前段側に、前記加工食品を殺菌する加熱殺菌装置が備えられていることを特徴とする請求項15に記載の加工食品製造システム。
【請求項18】
請求項7又は請求項8に記載の香料添加装置を含むことを特徴とするウォーターサーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料添加工程を含む加工食品の製造方法、香料添加装置、香料添加装置を含む加工食品製造システム、香料添加装置を含むウォーターサーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、液体飲料等の加工製品の製造プロセスにおいて、加工製品の嗜好性を高めることを目的として、原料に種々のフレーバー(香料)を添加し、香り高い製品とすることが主流となっている。
【0003】
上記のように、原料に香料を添加する方法として、例えば、インラインブレンダー装置をライン(製造工程)上に設置し、加熱殺菌後の飲料原料液に香料を導入する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような、加工食品の原料に添加される香料は、一般的に揮発性の液体からなる。このような揮発性の香料を、特許文献1に記載されたようなインラインブレンダーで飲料原料液に添加した場合、香料が揮発しやすいことから、香料の利用効率が低下し、香りも弱まることから飲料の嗜好性も低下する可能性がある。しかしながら、香料は揮発性なので、飲料に付与される香りの強度を適性に保つように、香料の添加量を的確に制御することは難しい面もある。このため、飲料の嗜好性を維持しながら、飲料のような加工製品を製造するのは、非常に大きな困難を伴うという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、揮発性の香料を加工食品の原料に添加する場合であっても、香料の添加量を的確に制御することができ、香料の無菌添加が可能になるとともに、嗜好性に優れた加工食品を生産性よく製造することが可能な加工食品の製造方法、香料添加装置、加工食品製造システム、並びにウォーターサーバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。この結果、香料を含む気体を中空糸膜に供給し、さらに、この中空糸膜に液体原料を通液することで、液体原料に対する香料の添加量の制御が容易になることを知見した。これにより、揮発性の香料の添加量を的確に制御することができ、香料の無菌添加が可能になるとともに、嗜好性に優れた加工食品を生産性よく製造できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の態様を包含する。
【0008】
[1] 製造工程に香料添加工程が含まれる加工食品の製造方法であって、前記香料添加工程は、食品用香料化合物を含有する気体を中空糸膜に透過させ、前記食品用香料化合物を前記気体から分離・透過させて液体原料に添加することで前記加工食品を得ることを特徴とする、加工食品の製造方法。
[2] 前記香料添加工程は、加圧用ガスを前記食品用香料化合物に供給して前記気体の分離・透過を促進させることを特徴とする、上記[1]に記載の加工食品の製造方法。 [3] 前記香料添加工程は、前記中空糸膜として、前記食品用香料化合物に対して選択性を有するガス透過膜を用いることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の加工食品の製造方法。
[4] 前記中空糸膜が、少なくとも、気体透過性を有する均質層と、前記均質層を支持する多孔質支持層とを有する複合中空糸膜からなるガス透過膜であることを特徴とする上記[3]に記載の加工食品の製造方法。
[5] 前記製造工程における前記香料添加工程の後段側に、前記加工食品を容器に充填する充填工程を備えることを特徴とする、上記[1]~[4]の何れかに記載の加工食品の製造方法。
[6] 前記製造工程における前記香料添加工程の前段側に、前記加工食品を殺菌する加熱殺菌工程を備えることを特徴とする、上記[1]~[5]の何れかに記載の加工食品の製造方法。
[7] 香料供給手段と、前記香料供給手段に接続されたガス透過手段とを備える香料添加装置であって、前記香料供給手段は、香料を貯蔵するタンクと、前記タンクに貯蔵された前記香料を含む気体を前記ガス透過手段に供給する香料供給配管と、を有し、前記ガス透過手段は、前記香料供給配管から供給された前記気体が導入される気体供給口と、前記気体によって前記香料が添加される液体原料を導入する液体供給口と、前記香料を前記気体から分離・透過させて前記液体原料と混合させる中空糸膜と、を備えることを特徴とする、香料添加装置。
[8] さらに、前記香料供給手段に接続され、前記タンクに貯蔵された前記香料に加圧用ガスを供給する香料加圧手段を備えることを特徴とする、上記[7]に記載の香料添加装置。
[9] 前記香料加圧手段は、加圧用ガスボンベと、前記加圧用ガスボンベから供給される前記加圧用ガスを、前記タンクに貯蔵された前記香料に供給する加圧用ガス供給配管と、を備えることを特徴とする、上記[8]に記載の香料添加装置。
[10] 前記ガス透過手段は、さらに、前記香料が分離・透過された前記気体を不純物ガスとして排出するガス排出口を備えることを特徴とする、上記[7]~[9]の何れかに記載の香料添加装置。
[11] 前記ガス透過手段は、さらに、前記香料を含む気体の内、前記中空糸膜で分離・透過されなかった前記気体を排ガスとして排出するガス排出口を備えることを特徴とする、上記[7]~[10]の何れかに記載の香料添加装置。
[12] 前記香料供給手段は、さらに、前記香料を含む前記気体の前記ガス透過手段への供給量を制御する制御部を備えることを特徴とする、上記[7]~[11]の何れかに記載の香料添加装置。
[13] 前記ガス透過手段は、前記中空糸膜が、前記香料に対して選択性を有するガス透過膜からなることを特徴とする、上記[7]~[12]の何れかにに記載の香料添加装置。
[14] 前記中空糸膜が、少なくとも、気体透過性を有する均質層と、前記均質層を支持する多孔質支持層とを有する複合中空糸膜からなるガス透過膜であることを特徴とする上記[7]~[13]に記載の香料添加装置。
[15] 上記[7]~[14]の何れかに記載の香料添加装置を含む加工食品製造システムであって、前記香料添加装置は、前記香料供給手段が、前記香料として食品用香料化合物を含む前記気体を前記ガス透過手段に供給するものであり、前記ガス透過手段は、前記食品用香料化合物を前記気体から分離・透過させて前記液体原料に混合させることで、加工食品を得ることを特徴とする、加工食品製造システム。
[16] さらに、前記香料添加装置の後段側に、前記加工食品を容器に充填する充填装置が備えられていることを特徴とする上記[15]に記載の加工食品製造システム。
[17] さらに、前記香料添加装置の前段側に、前記加工食品を殺菌する加熱殺菌装置が備えられていることを特徴とする上記[15]又は[16]に記載の加工食品製造システム。
[18] 上記[7]~[14]の何れかに記載の香料添加装置を含むことを特徴とするウォーターサーバー。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る加工食品の製造方法によれば、食品用香料化合物を含有する気体を中空糸膜に透過させ、食品用香料化合物を気体から分離・透過させて液体原料に添加する香料添加工程を備える。これにより、揮発性の香料を加工食品の液体原料に添加する場合であっても、香料の添加量を的確に制御できる。従って、加熱殺菌による香料の変性を防ぎながら、香料の無菌添加が可能になるとともに、嗜好性に優れた加工食品を生産性よく製造することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る香料添加装置によれば、ガス透過手段が、香料を気体から分離・透過させて液体原料と混合させる中空糸膜を備えることで、液体原料に対する揮発性の香料の添加量を的確に制御できる。従って、香料の無菌添加が可能になるとともに、香料の添加対象である各種の製品を、嗜好性に優れたものとして生産性よく製造することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る加工食品製造システムによれば、上記の本発明に係る香料添加装置を備え、ガス透過手段が、食品用香料化合物を気体から分離・透過させて液体原料に混合させる構成を採用することで、上記同様、揮発性の香料を加工食品の液体原料に添加する場合であっても、香料の添加量を的確に制御できる。従って、加熱殺菌による香料の変性を防ぎながら、香料の無菌添加が可能になるとともに、嗜好性に優れた加工食品を生産性よく製造することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係るウォーターサーバーによれば、上記の本発明に係る香料添加装置を備えたものなので、例えば、ミネラルウォーター等の原水に対し、添加量を的確に制御しながら香料を添加することができる。従って、例えば、利用者に供給するミネラルウォーター等の加工食品に対し、香料を無菌添加することが可能になるとともに、所定の嗜好性を効果的に付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る加工食品の製造方法、香料添加装置、及び加工食品製造システムの一例を模式的に説明する図であり、加工食品製造システムの全体構成を示す系統図である。
【
図2】本発明に係る加工食品の製造方法、香料添加装置、及び加工食品製造システムの一例を模式的に説明する図であり、
図1中に示した香料添加装置及び充填装置の詳細な構成を示す系統図である。
【
図3A】本発明に係る香料添加装置及びウォーターサーバーの一例を模式的に説明する図であり、内部に香料添加装置が備えられたウォーターサーバーの構成を示す概略図である。
【
図3B】本発明に係る香料添加装置及びウォーターサーバーの一例を模式的に説明する図であり、ウォーターサーバーの内部に備えられた香料添加装置の詳細な構成を示す要部拡大図である。
【
図4】本発明に係る加工食品の製造方法、香料添加装置、加工食品製造システム、並びにウォーターサーバーの実施例について説明する図であり、実験に用いた香料添加装置の構成を示す系統図である。
【
図5】本発明に係る加工食品の製造方法、香料添加装置、加工食品製造システム、並びにウォーターサーバーの実施例について説明する図であり、実験に用いたワンパス式の香料添加装置の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る香料添加工程を含む加工食品の製造方法、香料添加装置、香料添加装置を含む加工食品製造システム、並びに香料添加装置を含むウォーターサーバーの実施の形態を挙げ、
図1~
図3A及び
図3Bを適宜参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0015】
本発明に係る加工食品の製造方法及び加工食品製造システムは、例えば、液体飲料等の加工食品に香りを付与して嗜好性を高めながら、加工食品を製造する用途に好適なものである。
また、本発明に係る香料添加装置は、例えば、上記の加工食品の製造方法の一工程として備えられる香料添加工程で用いることが可能なものであり、また、上記の加工食品製造システムに備えられる香料添加装置として用いることが可能なものである。さらに、本発明に係る香料添加装置は、加工食品以外のものに香りを付与して嗜好性を高めることが可能なものである。
また、本発明に係るウォーターサーバーは、上記の本発明に係る香料添加装置を備え、例えば、利用者に供給するミネラルウォーター等に対して香りを付与して嗜好性を高めることが可能なものである。
【0016】
なお、以下に説明する、本実施形態で用いる食品用香料化合物とは、「食品衛生法施行規則(昭和二十三年厚生省令第二十三号)」別表第一で指定され、着香を目的として使用される食品添加物である。このような食品用香料化合物としては、特に限定されず、揮発性を有する各種形態の香料が用いられ、目的に応じ適宜選定可能である。具体的な例としては、合成香料素材であるエステル系、アルコール系、アルデヒド系、ケトン系、ラクトン系等の化合物、あるいは、天然香料素材として精油系のもののような香料成分が挙げられる。
【0017】
また、本実施形態で説明する加工食品とは、液体加工食品である。このような液体加工食品の具体例としては、例えば、清涼飲料水の他、果汁飲料、炭酸飲料、機能性飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、乳飲料、コーヒー飲料、あるいは、醤油等の各種液体調味料が挙げられる。
【0018】
<加工食品製造システム>
まず、詳細を後述する本実施形態の加工食品の製造方法(以下、単に製造方法と略称する場合がある)で用いることが可能な、本実施形態の加工食品製造システム(以下、単に製造システムと略称する場合がある)の構成について、
図1及び
図2を適宜参照しながら詳述する。
図1は、本実施形態の製造システム100の全体構成を示す系統図であり、
図2は、
図1中に示した香料添加装置6及び充填装置7の詳細な構成を示す系統図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の製造システム100は、少なくとも、追って詳細を説明する香料添加装置6を含むものである。
図1に示す例の製造システム100は、原料貯蔵タンク1と、調合タンク2と、加熱殺菌装置3と、冷却装置4と、ろ過装置5と、香料添加装置6と、充填装置7と、密封装置8と、検査装置9と、梱包装置10とが、工程における流れ方向でこの順で備えられ、概略構成される。
【0020】
そして、
図2に示すように、製造システムに備えられる香料添加装置6は、香料供給部(香料供給手段)6Aが、香料Fとして食品用香料化合物を含む気体G1をガス透過部(ガス透過手段)6Bに供給するものであり、ガス透過部6Bは、香料Fを気体G1から分離・透過させて液体原料L2に混合させることで液体加工食品L3を得る。
【0021】
また、図示例においては、原料貯蔵タンク1、調合タンク2、加熱殺菌装置3、冷却装置4、ろ過装置5、香料添加装置6、及び充填装置7の各々の間が、それぞれ、素材原料L1、液体原料L2、又は液体加工食品(加工食品)L3が通液される配管11で接続されている。
また、充填装置7、密封装置8、検査装置9、及び梱包装置10の各々の間が、それぞれ、液体加工食品L3が充填された容器Bが搬送されるコンベア12で接続されている。
【0022】
原料貯蔵タンク1は、例えば、清涼飲料水等のような液体加工食品L3の原料となる素材原料L1を貯蔵するものである。
【0023】
調合タンク2は、配管11を介して原料貯蔵タンク1から導入される素材原料L1に対し、例えば、水W、香料以外の添加物T、糖類S等を適量で添加することで液体原料L2を調合するものである。
調合タンク2は、例えば、内部に素材原料L1に対し、図示略のディスペンサを用いて、上記の水W、添加物T、糖類S等を添加して液体原料L2を調合し、配管11を介して後段側の加熱殺菌装置3に向けて導出する。
【0024】
加熱殺菌装置3は、配管11を介して調合タンク2から導入される液体原料L2を加熱して殺菌した後、配管11を介して後段側の冷却装置4に向けて導出するものであり、図示例では、通液パイプ31内に通液される液体原料L2を加熱する熱交換器32を備える。
図1の系統図に示すように、本実施形態の製造システム100においては、加熱殺菌装置3が、詳細を後述する香料添加装置6よりも前段側、即ち、システム中における上流側に設けられている。
【0025】
冷却装置4は、配管11を介して加熱殺菌装置3から導入される加熱殺菌後の液体原料L2を冷却し、配管11を介して後段側のろ過装置5に向けて導出するものであり、図示例では、液体原料L2を冷却する冷却フィン41を備える。
【0026】
ろ過装置5は、配管11を介して冷却装置4から導入される液体原料L2をろ過処理することで、例えば、清涼飲料水等の液体加工食品L3において、品質管理上、含有していることが不適な沈殿物等を除去する。
ろ過装置5としては、特に限定されず、
図1中の破断部分に示すように、内部にろ過膜51を備えたもの等を何ら制限無く採用できる。
【0027】
ろ過装置5において、液体原料L2からろ過・除去される沈殿物としては、例えば、原料である濃縮果汁等に由来するものや、加熱殺菌装置3における加熱、及び、冷却装置4における冷却によって生成された不純物的な沈殿物等が挙げられる。
【0028】
香料添加装置6は、配管11を介してろ過装置5から導入されるろ過後の液体原料L2に香料Fを添加して液体加工食品L3とし、後段側の充填装置7に向けて導出するものである。
本実施形態の製造システム100に備えられる香料添加装置6は、
図2中に示すように、香料供給部6Aが、香料Fとして食品用香料化合物を含む気体G1をガス透過部6Bに供給するものであり、ガス透過部6Bが、香料Fを気体G1から分離・透過させて液体原料L2に混合させることで液体加工食品L3を得るものである。
香料添加装置6のより詳細な構成については、追って詳述する。
【0029】
充填装置7は、配管11を介して香料添加装置6から導入された液体加工食品L3を容器Bに充填するものである。
充填装置7としては、従来から飲料製造プロセス等において用いられているものを何ら制限無く採用できる。図示例の充填装置7は、空の容器Bが順次載置されるターンテーブル72と、容器Bの口部から液体加工食品L3を注入するディスペンサ71とを備える。
【0030】
充填装置7は、ターンテーブル72上の容器Bに液体加工食品L3を順次注入した後、充填が完了したものから、図示略のアーム手段等によってターンテーブル72上から搬出し、コンベア12を介して後段側の密封装置8に向けて搬出する。
上記のように、充填対象が液体からなる液体加工食品L3である場合には、香料添加装置6で液体原料L2に香料Fを添加した後、そのまま、最終製品として液体加工食品L3を容器Bに充填することができる。
【0031】
密封装置8は、コンベア12を介して充填装置7から搬入される、液体加工食品L3が充填された容器Bの口部を、キャップCで密封し、製品の状態とするものであり、図示例では、容器Bが載置されるターンテーブル82と、容器BにキャップCを螺合する螺合器81とを備える。
【0032】
検査装置9は、コンベア12を介して密封装置8から搬入された、液体加工食品L3が充填・密封された容器Bを検査するものであり、図示例では、ディスプレイ91及び操作用のボタン92を備える。
【0033】
梱包装置10は、コンベア12の最下流に配置され、検査装置9で「良品」とされた、コンベア12を介して搬入される容器Bを、複数で運搬箱Hに箱詰めする。
図1に示す例においては、梱包装置10として、運搬箱Hの支持台となる構成のものを示している。
【0034】
本実施形態の製造システム100によれば、詳細を後述する本実施形態の香料添加装置6を備え、ガス透過部6Bが、香料Fを気体G1から分離・透過させて液体原料L2に混合させる構成を採用している。これにより、揮発性の香料Fを液体加工食品L3の液体原料L2に添加する場合であっても、香料Fの添加量を的確に制御できるので、嗜好性に優れた液体加工食品L3を生産性よく製造することが可能となる。なお、香料添加装置6のより詳細な構成、及び、それによって得られる効果については、追って詳述する。
【0035】
<香料添加装置>
以下、上述した本実施形態の製造システム、詳細を後述する本実施形態の製造方法、並びに、本実施形態のウォーターサーバーに適用することが可能な、本実施形態の香料添加装置について、
図2を参照しながらより詳細に説明する。
【0036】
図2に示すように、本実施形態の香料添加装置6は、上述したように、香料供給部6Aと、香料供給部6Aに接続されたガス透過部6Bとを備える。
香料供給部6Aは、香料Fを貯蔵するタンク61と、タンク61に貯蔵された香料Fを含む気体G1をガス透過部6Bに供給する香料供給配管62と、を有する。
ガス透過部6Bは、香料供給配管62から供給された気体G1が導入される気体供給口63と、気体G1によって香料Fが添加される液体原料を導入する液体供給口64と、香料Fを気体G1から分離・透過させて液体原料L2と混合させる中空糸膜60と、を備える。
なお、図示例の香料添加装置6には、さらに、香料供給部6Aに接続され、タンク61に貯蔵された香料Fに加圧用ガスG2を供給する香料加圧部(香料加圧手段)6Cが設けられている。
また、
図2中では、香料添加装置6に接続される、本実施形態の製造システムに備えられる充填装置7も記載している。
【0037】
香料供給部6Aを構成するタンク61は、上述したように、香料Fを貯蔵するものである。図示例においては、タンク61の下部に香料Fが貯蔵されているとともに、その上部の空間には、香料F(及び加圧用ガスG2)を含むベーパー状の気体G1が充満した雰囲気とされている。
上記の気体G1は、揮発性を有する香料Fの他、必要に応じて、例えば、窒素や空気等の加圧用ガスG2を含むものである。
【0038】
また、タンク61の内部空間には、香料供給配管62の一端側が配置されているとともに、詳細を後述する香料加圧部6Cから香料Fに加圧用ガスG2を供給するための加圧用ガス供給配管68の一端側が、香料Fの液中に入り込むように配置されている。
【0039】
タンク61としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス材料からなるものの他、ガラス製、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等フッ素系樹脂、オレフィン樹脂等、樹脂製のものを適宜選択して採用できる。
また、香料供給配管62としても、特に限定されず、ステンレス材料等からなる配管の他、ガラス配管や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等フッ素系樹脂、オレフィン樹脂等樹脂製の、樹脂製の配管等を採用することも可能である。
【0040】
ガス透過部6Bは、
図2中に示す例では、樹脂材料等からなる概略筒状の筐体6aを有して構成され、詳細な図示は省略するが、上述した中空糸膜60が束状に束ねられて内部に配置されている。
また、ガス透過部6Bは、香料Fを含む気体G1の内、中空糸膜60で分離・透過されなかった気体G1、即ち、加圧用ガスG2を含む気体G1を排ガスとして排出するガス排出口66を備える。
さらに、ガス透過部6Bは、中空糸膜60で分離・透過された香料Fと液体原料L2との混合液である液体加工食品L3を排出する液体排出口65を備える。
なお、
図2に示したガス透過部6Bは一例であり、上述した気体供給口、ガス排出口、液体供給口、液体排出口を備える仕様であれば、特に限定されない。
【0041】
本実施形態の香料添加装置6において、ガス透過部6Bに備えられる中空糸膜60は、詳細な図示は省略するが、複数の中空糸膜60が長さ方向で揃えられるように柱状に束ねられて形成され、例えば、円筒状、楕円筒状、角型等に形成される。中空糸膜60を束状として円筒状又は楕円筒状に構成する場合には、例えば、中心軸付近に中空部を有した構造とすることもできる。
【0042】
中空糸膜60としては、特に限定されず、気体と液体との分離に用いられる一般的な構造のものを何ら制限無く採用できる。
一方、本実施形態では、中空糸膜60が、香料Fをなす食品用香料化合物に対して選択性を有するガス透過膜からなることが好ましい。このような中空糸膜60を用いることにより、気体G1中に含まれる香料Fを、中空糸膜60から透過させて液体原料L2に効率良く添加できる。この場合、香料Fが分離・透過された気体G1、即ち、加圧用ガスG2を含む気体G1は、不純物ガスとしてガス排出口66から排出される。
【0043】
上記のような、香料Fに対して選択性を有する中空糸膜60としては、詳細な図示は省略するが、気体透過性を有する均質層と、該均質層を支持する多孔質支持層とを有する、少なくとも2層からなる複合中空糸膜からなるガス透過膜を用いることが好ましい。このような中空糸膜60を用いることで、香料Fをなす食品用香料化合物に対する選択性がより顕著に発現され、香料Fを効果的に透過させて液体原料L2に添加することが可能となる。
【0044】
上記のような中空糸膜60としては、少なくとも上記の2層を有するものを用いればよいが、例えば、2層の多孔質支持層の間に薄膜上の均質層が介装された3層構造のものを採用することが、より好ましい。このような3層構造の中空糸膜60を採用することで、気体G1から香料Fの成分をより効果的に透過させることができ、また、強度特性や耐久性に優れ、安定したランニング性能が得られる。
【0045】
均質層を形成する材料としては、公知の材料を使用でき、例えば、シリコンゴム系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素含有樹脂、セルロース系樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリ4-ビニルピリジン、ウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの材料は、1種のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらのなかでも、均質層を形成する材料としては、高流量で被処理液を潅流させた場合でも脱気や給気の性能に優れるとともに、耐薬品性に優れる観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、製膜性に優れる観点から低密度ポリエチレン樹脂がより好ましい。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、ポリ4-メチルペンテン-1、メタロセンポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、変性ポリオレフィン等が挙げられる。
【0047】
多孔質支持層を形成する材料としては、公知の材料を使用でき、例えば、ポリジメチルシロキサン、シリコンとポリカーボネートの共重合体等のシリコンゴム系樹脂;ポリ4-メチルペンテン-1、ポリ3-メチルブテン-1、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂;エチルセルロース等セルロース系樹脂;ポリフェニレンオキサイド;ポリ4-ビニルピリジン;ウレタン系樹脂;ポリスチレン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。これらの材料は、1種のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらのなかでも、中空糸膜束の自立性を確保しやすく、製膜安定性が得られる観点から、多孔質支持層を形成する材料としては、均質層と同等のMFR値を示す高密度ポリエチレンが好ましい。
【0048】
多孔質支持層の孔径は、特に限定されないが、膜の強さ等の観点から0.01~1μmが好ましい。
多孔質支持層の空孔率は、30~80体積%が好ましい。空孔率が上記範囲の下限値以上であれば、給気の性能に優れる。多孔質支持層の空孔率が上記範囲の上限値以下であれば、中空糸膜の耐圧性等の機械的強度が向上する。
また、均質層の厚さは0.3~2μmが好ましく、0.5~1.2μmがより好ましい。なお、中空糸膜の内径及び外径については適宜設定可能である。
【0049】
なお、本実施形態においては、ガス透過部6Bを、液体原料L2が中空糸膜60の内部を流通する内部潅流型として構成することができる。一方、本実施形態では、気体Gが中空糸膜60の内部を流通する外部潅流型を採用してもよい。
【0050】
香料加圧部6Cは、加圧用ガスボンベ67と、加圧用ガスボンベ67から供給される加圧用ガスG2を、タンク61に貯蔵された香料に供給する加圧用ガス供給配管68と、を備える。
加圧用ガスボンベ67としては、例えば、ステンレス材料等からなるガス用のボンベを何ら制限無く用いることができる。なお、製造場所に配管でガスが供給されている場合には、分岐させて目的ガスを供給することも可能である。
【0051】
一般的な香料化合物の多くは揮発性を有する液体からなる。本実施形態では、香料Fの供給に加圧用ガスG2を用いることで、この加圧用ガスG2が、中空糸膜60に香気成分を導入するためのドライビングフォースとして機能する。
加圧用ガスG2としては、特に限定されないが、香料Fの成分によって最適なものを適宜選択することが好ましい。例えば、香料Fの成分が酸素に弱いものである場合には、加圧用ガスG2として窒素等の無酸素ガスを用いることが好ましい。一方、香料Fの成分が酸素に強いものである場合には、空気等の酸素含有ガスを加圧用ガスG2に用いてもよい。
【0052】
本実施形態の香料添加装置6においては、香料供給部6Aにおいて、さらに、香料Fを含む気体G1のガス透過部6Bへの供給量を制御する図示略の制御部を備えることが好ましい。
香料供給部6Aが、上記のような制御部を有することで、香料Fが添加された液体加工食品L3中の香料濃度を的確に制御できるとともに、香料Fの無菌添加が可能となる。
上記のような制御部としては、例えば、液体加工食品L3中の香料濃度を測定してフィードバックしながら香料Fの添加量を制御するものを採用することができるが、香料Fの供給量が一定である場合には、マスフローコントローラ等のような、香料Fの添加量を供給時間で制御するものを採用してもよい。
【0053】
<加工食品の製造方法>
以下、本実施形態の加工食品の製造方法について説明する。
以下の説明においては、本実施形態の製造方法について、上述した香料添加装置を備える製造システムを用いて加工食品を製造する例を、上記同様、
図1及び
図2を用いて説明するとともに、既に説明した構成については、その詳細な説明を省略する。
【0054】
本実施形態の加工食品の製造方法は、製造工程に、少なくとも香料添加工程(6)が含まれる方法である。即ち、本実施形態の製造方法は、香料添加工程(6)が、食品用香料化合物からなる香料Fを含有する気体G1を中空糸膜60に透過させ、香料Fを気体G1から分離・透過させて液体原料L2に添加することで液体加工食品L3を得る方法である。
【0055】
また、本実施形態の製造方法は、製造工程として、原料受入工程(1)と、調合工程(2)と、加熱殺菌工程(3)と、冷却工程(4)と、ろ過工程(5)と、上記の香料添加工程(6)と、充填工程(7)と、密封工程(8)と、検査工程(9)と、梱包工程(10)とを、この順で備える方法である。
【0056】
原料受入工程(1)は、例えば、清涼飲料水等のような液体加工食品L3の原料となる素材原料L1を原料貯蔵タンク1に受け入れ、貯蔵する工程である。
原料受入工程(1)においては、例えば、原料貯蔵タンク1には濃縮果汁等の素材が冷凍状態で投入され、室温による自然解凍あるいは加熱解凍で液化することで素材原料L1とし、これを貯蔵する。
そして、原料受入工程(1)は、貯蔵した素材原料L1を、所定の時間あるいは所定の量で、原料貯蔵タンク1から配管11を介して、後段側の調合工程(2)で用いる調合タンク2に向けて導出する。
【0057】
調合工程(2)は、配管11を介して原料貯蔵タンク1から調合タンク2に導入される素材原料L1に対し、例えば、水W、添加物T、糖類S等を適量で添加することで液体原料L2を調合する工程である。
そして、調合工程(2)は、調合した液体原料L2を、配管11を介して調合タンク2から後段側の加熱殺菌工程(3)で用いる加熱殺菌装置3に向けて導出する。
【0058】
加熱殺菌工程(3)は、配管11を介して調合タンク2から加熱殺菌装置3に導入される液体原料L2を加熱して殺菌する工程である。
そして、加熱殺菌工程(3)は、加熱殺菌後の液体原料L2を、配管11を介して加熱殺菌装置3から後段側の冷却工程(4)で用いる冷却装置4に向けて導出する。
【0059】
冷却工程(4)は、配管11を介して加熱殺菌装置3から冷却装置4に導入される加熱殺菌後の液体原料L2を冷却する工程である。
そして、冷却工程(4)は、冷却後の液体原料L2を、配管11を介して冷却装置4から後段側のろ過工程(5)で用いるろ過装置5に向けて導出する。
【0060】
ろ過工程(5)は、配管11を介して冷却装置4からろ過装置5に導入される液体原料L2をろ過処理することで、例えば、清涼飲料水等の液体加工食品L3において、品質管理上、含有していることが不適な沈殿物等を除去する工程である。このような沈殿物としては、上述したような、原料である濃縮果汁等に由来するものや、加熱殺菌工程(3)における加熱、及び、冷却工程(4)における冷却によって生成された不純物的な沈殿物等が挙げられる。
そして、ろ過工程(5)は、ろ過後の液体原料L2を、配管11を介してろ過装置5から後段側の香料添加工程(6)で用いる香料添加装置6に向けて導出する。
【0061】
香料添加工程(6)は、配管11を介してろ過装置5から香料添加装置6に導入されるろ過後の液体原料L2に香料Fを添加して液体加工食品L3とする工程である。
より詳細には、本実施形態の香料添加工程(6)は、上述したように、香料供給部6Aが、香料Fとして食品用香料化合物を含む気体G1をガス透過部6Bに供給する工程であり、ガス透過部6Bが、香料Fを気体G1から分離・透過させて液体原料L2に混合させることで液体加工食品L3を得る工程である。
【0062】
香料添加工程(6)は、加圧用ガスG2を食品用香料化合物を含む香料Fに供給して気体G1の分離・透過を促進させることが好ましい。このように、香料Fの供給に加圧用ガスG2を用いることで、上述したように、加圧用ガスG2が、中空糸膜60に香気成分を導入するためのドライビングフォースとして機能する。また、上述したように、香料Fの成分が酸素に弱いものである場合には、加圧用ガスG2として窒素等の無酸素ガスを用い、香料Fの成分が酸素に強いものである場合には、空気等の酸素含有ガスを加圧用ガスG2に用いることができる。
【0063】
また、香料添加工程(6)は、中空糸膜60として、食品用香料化合物からなる香料Fに対して選択性を有するガス透過膜を用いることが好ましい。即ち、香料添加工程(6)においては、香料Fに対して選択性を有する中空糸膜60として、上述したような、詳細な図示は省略するが、気体透過性を有する均質層と、該均質層を支持する多孔質支持層とを有する、少なくとも2層からなる複合中空糸膜からなるガス透過膜を用いることが好ましい。また、中空糸膜60として、2層の多孔質支持層の間に薄膜上の均質層が介装された3層構造のものを採用することがより好ましい。
【0064】
香料添加工程(6)においては、上記のような中空糸膜60を用いることで、香料Fをなす食品用香料化合物に対する選択性がより顕著に発現され、香料Fを効果的に透過させて液体原料L2に添加することが可能となる。
そして、香料添加工程(6)は、香料Fを添加して得られた液体加工食品L3を、配管11を介して後段側の充填工程(7)で用いられる充填装置7に向けて導出する。
【0065】
充填工程(7)は、配管11を介して香料添加装置6から充填装置7に導入された液体加工食品L3を容器Bに充填する工程である。
【0066】
密封工程(8)は、コンベア12を介して充填装置7から密封装置8に搬入される、液体加工食品L3が充填された容器Bの口部を、キャップCで密封し、製品の状態とする工程である。
【0067】
検査工程(9)は、コンベア12を介して密封装置8から検査装置9に搬入された、液体加工食品L3が充填・密封された容器Bを検査する工程である。
【0068】
検査工程(9)において「良品」と判断された容器Bは、コンベア12を介して後段側の梱包工程(10)で用いられる梱包装置10に向けて導出される。
【0069】
梱包工程(10)は、コンベア12の最下流に配置され、検査装置9で「良品」と判断された、コンベア12を介して梱包装置10に導入される容器Bを、複数で運搬箱Hに箱詰めする。
【0070】
本実施形態の製造方法においては、上述したように、製造工程における香料添加工程(6)の後段側に、液体加工食品L3を容器Bに充填する充填工程(7)を備えることが好ましい。
香料添加工程(6)の後段側に、液体加工食品L3を容器Bに充填する充填工程(7)を備えることで、充填の直前に香料Fを添加するタイミングとなるので、香料Fによる香りを最大限で維持した状態での充填が可能となる。
【0071】
また、本実施形態においては、上述したように、製造工程における香料添加工程(6)の前段側に、液体加工食品L3を殺菌する加熱殺菌工程(3)を備えることが好ましい。 香料添加工程(6)の前段側の何れかの位置に、液体原料L2を加熱殺菌する加熱殺菌工程(3)を備えることで、液体原料L2を加熱した後に香料Fを添加するタイミングとなるので、加熱殺菌工程で液体原料L2に発生した匂いを香料Fで抑制できる効果が得られる。
【0072】
また、本実施形態の製造方法によれば、香料添加工程(6)において、上記のような中空糸膜60を用いることで、従来のようなインラインブレンダーを用いて香料を添加する方法に比べて香料が揮発し難いため、香料Fの利用効率が高められる。また、香料添加工程(6)において中空糸膜60を用いることで、液体原料L2に対する香料Fの添加量を的確に制御することが可能となる。
【0073】
さらに、本実施形態の製造方法によれば、香料添加工程(6)において、清涼飲料水等、水分を含む液体の加工食品を製造するのにあたって中空糸膜60を使用することにより、液体加工食品L3に対して無菌添加で香気を付与することが可能となる。これにより、香料成分が加熱によって変質するのを防止でき、商品品質を高く維持することが可能となる。
【0074】
<ウォーターサーバー>
以下に、本実施形態のウォーターサーバーについて、
図3A及び
図3Bを参照しながら説明する。
図3Aは、本実施形態のウォーターサーバー200を正面側から、即ち、使用者がミネラルウォーターMWを得るための操作を行う側から見た図で、正面パネル201を開放して内部を露出させた状態を示す平面図である。
図3Bは、ウォーターサーバー200の内部に備えられた香料添加装置6の詳細な構成を示す要部拡大図である。
【0075】
本実施形態のウォーターサーバー200は、上述した本実施形態の香料添加装置6を含んで構成されるものである。
本実施形態のウォーターサーバー200は、例えば、オフィスや商業施設、医療機関の待合室、あるいは一般家庭等に設置され、利用者が持参したマイボトル等にミネラルウォーター(水)等の各種飲料を供給する用途で用いられるものである。
本実施形態のウォーターサーバー200は、公共水道等から原水BWを冷水機202に直接取り込む水道直結タイプの構成を採用するものである。このような構成を採用した場合には、原水BWを冷水機202に取り込む充填作業等を省略できるというメリットがある。また、水道直結のウォーターサーバー200は、従来にない香料添加機能をさらに有することで、より美味しい飲料水を簡単に提供することが可能となる。
【0076】
図3Aに示すように、本実施形態のウォーターサーバー200は、筐体200Aの内部に、水道水等の原水BWを貯留する冷水機202と、原水をろ過して不純物等を除去するとともに、必要に応じてミネラル成分等を付与するプレフィルター203と、上記の香料添加装置6と、使用者が図示略のマイボトル又は紙コップ等を置くことでミネラルウォーターMWを得る収容部204と、余剰のミネラルウォーターMWを外部に排出する排水管205と、を備え、概略構成される。また、冷水機202、プレフィルター203、香料添加装置6、及び収容部204の各々の間は、それぞれ、ミネラルウォーターMWが通液される配管211で接続されている。
【0077】
冷水機202は、例えば水道水から取り込んだ原水BWを内部に貯留するとともに、この原水BWを冷却する機能を有する。
冷水機202で冷却された原水BWは、配管211を介してプレフィルター203に向けて導出される。
【0078】
プレフィルター203は、上記のように、冷水機202で冷却された原水BWをろ過して不純物を除去するものであり、例えば、活性炭や中空糸膜等からなるフィルタを内部に備える。
また、プレフィルター203は、必要に応じて原水BWにミネラル成分を付与するためのミネラル源を内部に備えることも可能である。
プレフィルター203で不純物が除去された原水は、ミネラルウォーターMWとして、配管211を介して香料添加装置6に導出される。
【0079】
収容部204は、上記のように、香料添加装置6で香料Fが添加されたミネラルウォーターMWを、使用者が内部に載置する図示略のマイボトル又は紙コップ等に注入するためのスペースである。
図3Aでは図示を省略しているが、収容部204は、正面パネル201の表面に開口する箱状の部材である。
【0080】
排水管205は、収容部204の底部に接続される配管であり、例えば、収容部204の内部で零れたミネラルウォーターMW等を外部に排出する。
【0081】
本実施形態のウォーターサーバー200は、冷水機202に収容された原水BWがプレフィルター203でろ過され、さらに、香料添加装置6で香料Fが添加されることで、香気を有する嗜好性の高いミネラルウォーターMWを得る。
即ち、
図3Bに示すように、香料供給部6Aのタンク61に貯蔵された香料Fは、香料供給配管62により、加圧用ガスG2も含む気体G1として、中空糸膜60を内部に有するガス透過部6Bの気体供給口63に導入される。
一方、プレフィルター203で不純物が除去されたミネラルウォーターMWは、ガス透過部6Bの液体供給口64から導入される。
【0082】
ミネラルウォーターMWには、中空糸膜60によって気体G1から分離・透過された香料Fが添加される。このように、香料Fによって香気が付与され、嗜好性が高められたミネラルウォーターMWは、配管211を介して上記の収容部204に向けて導出される。
【0083】
上記同様、香料添加装置6は、加圧用ガスG2を食品用香料化合物を含む香料Fに供給して気体G1を生成させることで、加圧用ガスG2を中空糸膜60に香気成分を導入するためのドライビングフォースとして機能させて、ミネラルウォーターMWに香料Fを添加することが好ましい。
また、上記同様、香料Fの成分に酸素に弱いものを用いる場合には、加圧用ガスG2として窒素等の無酸素ガスを用い、香料Fの成分に酸素に強いものを用いる場合には、空気等の酸素含有ガスを加圧用ガスG2に用いることが好ましい。
【0084】
ウォーターサーバー200により、利用者がミネラルウォーターMW(又は各種飲料等)の供給を受ける際は、利用者が持参した図示略のマイボトルや備え付けの紙コップを収容部204の内部に載置し、図示略のディスペンサの下方に配置する。そして、図示略のレバー等の操作により、ディスペンサからミネラルウォーターMWが吐水され、マイボトルや紙コップ等に注水される。
【0085】
また、本実施形態のウォーターサーバー200における香料添加装置6の取り付け位置は、特に限定されず、図示例のように、筐体200Aの内部空間における任意の位置に取り付ければ良いが、例えば、正面パネル201の裏側における収容部204付近に香料添加装置6を取り付けてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、例えば、図示を省略するボトル中の原水BWを冷水機202に直接取り込むタイプの構成を採用することも可能である。
【0087】
本実施形態のウォーターサーバー200によれば、香料添加装置6を備えることで、ミネラルウォーターMWに対する添加量を的確に制御しながら香料Fを無菌添加することができるので、所定の嗜好性を効果的に付与することが可能となる。
【0088】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の加工食品の製造方法によれば、食品用香料化合物からなる香料Fを含有する気体G1を中空糸膜60に透過させ、香料Fを気体G1から分離・透過させて液体原料L2に添加する香料添加工程(6)を備える。これにより、揮発性の香料Fを液体加工食品L3の液体原料L2に添加する場合であっても、香料Fの添加量を的確に制御できる。従って、香料Fの無菌添加が可能になるとともに、嗜好性に優れた液体加工食品L3を生産性よく製造することが可能となる。
【0089】
また、本実施形態の香料添加装置6によれば、ガス透過部6Bが、香料Fを気体G1から分離・透過させて液体原料L2と混合させる中空糸膜60を備えることで、液体原料L2に対する揮発性の香料Fの添加量を的確に制御できる。従って、香料Fの無菌添加が可能になるとともに、香料Fの添加対象である各種の製品を、嗜好性に優れたものとして生産性よく製造することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態の加工食品製造システム100によれば、上述した本実施形態の香料添加装置6を備え、ガス透過部6Bが、食品用香料化合物からなる香料Fを気体G1から分離・透過させて液体原料L2に混合させる構成を採用することで、上記同様、揮発性の香料Fを液体加工食品L3の液体原料L2に添加する場合であっても、香料Fの添加量を的確に制御できる。従って、香料Fの無菌添加が可能になるとともに、嗜好性に優れた液体加工食品L3を生産性よく製造することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態のウォーターサーバー200によれば、上述した本実施形態の香料添加装置6を備えたものなので、例えば、ミネラルウォーター等の原水に対し、添加量を的確に制御しながら香料を添加することができる。従って、例えば、利用者に供給するミネラルウォーターMW等の液体加工食品に対し、香料Fを無菌添加することが可能になるとともに、所定の嗜好性を効果的に付与することが可能となる。
【0092】
<その他の構成>
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例0093】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
<香料(シトラール)の濃度測定>
本実験においては、まず、
図4に示すような、
図2に示した香料添加装置6と同様、香料供給部6Aと、香料供給部6Aに接続されたガス透過部6Bと、香料加圧部6Cとが設けられた構成とされた、実験用の香料添加装置600を準備した。この香料添加装置600は、液体加工食品の製造システムに組み込まれた実使用状態をシミュレーションするため、さらに、ガス透過部6Bの液体供給口64から、送水ポンプ602によって後述の香料液FLを供給する香料液タンク601と、ガス透過部6Bの液体排出口65から排出される香料F添加後の香料液FLをサンプル採取するバイアル瓶603と、気体G1の圧力を検出する圧力計604とを備える。また、ガス透過部6Bの液体排出口65から排出される香料F添加後の香料液FLは、香料液タンク601に還流される構成とされている。
【0095】
(実施例1)
また、実施例1では、液体加工食品に相当する香料液FLとして1M・3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)溶液400mlを準備した。
また、実施例1では、ガス透過部6Bとして、ステラポアー三層複合膜モジュール(品番:20M0060A;三菱ケミカル株式会社製;登録商標)を用い、送水ポンプ602で上記の香料液FLを220ml/minで循環させた。
【0096】
また、別途準備した1M・MOPS溶液にシトラール原液を1ml添加したシトラール水を香料Fとして用い、香料加圧部6Cによって加圧用ガスG2である窒素を加えてバブリングしながら香料Fを含む気体G1を生成させ、これをガス透過部6Bの気体供給口63に継続的に導入し、香料液FLに香料Fを添加した。
そして、バイアル瓶603で、継続的に循環している香料Fを添加した実施例1の香料液FLのサンプルを5ml採取した。
なお、下記表1に示すように、実施例1においては、香料液FLを常時循環させて実験を行い、初期(0分)データに加え、循環開始から1分後、3分後、5分後、7分後、10分後の各時点で、それぞれ香料液FLのサンプルを5ml採取した。
【0097】
また、1M・MOPS溶液にシトラール原液を添加しなかった点以外は、実施例1と同様に1M・MOPS溶液をバブリングして気体を生成させ、この気体をガス透過部6Bの気体供給口63に導入し、香料液FLに該香料液FLと同じ組成の香料液を添加した。
そして、バイアル瓶603で、香料Fを添加しなかった参考例のサンプルを採取した。
なお、下記表1に示すように、参考例においては、実施例のような短い間隔でのサンプル採取は実施せず、初期(0分)データと、循環開始から10分後のサンプルのみを採取した。
【0098】
そして、実施例1及び参考例の各サンプルにおけるシトラールの濃度を、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析装置(HS-GC/MS)を用いて測定し、その結果を下記表1に示した。
【0099】
【0100】
表1に示したように、本発明で規定する構成並びに条件とされた香料添加装置を用いて香料(シトラール)Fを添加した場合には、香料液FLの循環の開始1分後からシトラールの検出が確認できる。これは、本発明に係る香料添加装置が、香料F、即ち、シトラールの濃度を的確に制御できることを示している。
【0101】
一方、参考例のサンプルは、シトラールを添加しなかったことから、初期(0分)及び10分後の何れにおいても、不検出(ND)の結果となった。
【0102】
<香料(シトラール)の官能試験>
また、上記実施例1とは別に1M・MOPS溶液を用い、シトラールを添加して、1ppb、5ppb、10ppb濃度のシトラール溶液を調製した。
そして、調製したシトラール溶液5mlを容量100mlのPP製広口ボトルに入れ、被験者数をn=6として、シトラールの香りが感じられるかどうかの官能試験を行った。
この結果、全6名中、2名は1ppb、残り4名は5ppb濃度でシトラールの香りを感じ取ることができたことを確認した。即ち、香料液FLの循環開始からごく短時間で、液体加工食品を摂取する利用者が感じ取ることができる濃度のシトラールを添加できていることが確認できた。
【0103】
<本実施例による評価結果>
上記結果により、本発明に係る香料添加装置を適用して加工食品製造システムやウォーターサーバーを構成するか、あるいは、当該香料添加装置を加工食品の製造方法に適用することで、揮発性の香料を加工食品の原料に添加する場合であっても、香料の添加量を的確に制御することができることが確認できた。
【0104】
(実施例2)
実施例2では、液体加工食品に相当する香料液FLとして5%エタノール溶液800mlを準備した。香料Fとしては、5%エタノール溶液300mlにシトラールを0.5%となるように添加したものである。
また、実施例2では、ガス透過部6Bとして、実施例1で使用した20M0060Aの中空糸膜を三層複合膜(MHF300EPE;三菱ケミカル株式会社製)に替えたモジュールを用い、送水ポンプ602で上記の香料液FLを300ml/minで循環させた。
【0105】
そして、実施例1と実施例2の各サンプルにおけるシトラールの濃度を、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析装置(HS-GC/MS)を用いて測定し、その結果も上述した表1に示した。
【0106】
表1で示したように、実施例2では、実施例1よりも高濃度のシトラールが循環水中で検出できたことを確認した。その理由としては、エタノールとシトラールの親和性の違いであると推測される。
【0107】
(実施例3)
実施例3では、香料液FLを1500ml用意し、送水ポンプ602で上記の香料液FLを1000ml/minで循環させた以外は、実施例2と同様に実施した。
【0108】
(実施例4)
実施例4では、液体加工食品に相当する香料液FLとして純水1500mlを準備した以外は、実施例3と同様に実施した。
【0109】
前述した香料(シトラール)の官能試験を5名で行い、その結果を下記表2に示した。
【0110】
【0111】
表2に示したように、5%のエタノールと純水を香料液FLとした場合、循環数分後に、いずれも香りが感じられた。香料液FLを純水とした場合、香りの強度が弱まる傾向となった。また、得られた循環後の香料液をガラス瓶に密封し、室温で保管し、実施例3では10日後、実施例4では4日後に確認したところ、特に大きな変化のないことを確認した。
【0112】
(実施例5)
実施例5では、送水ポンプ602で上記の香料液FLを循環させずに、
図5に示すようなワンパス式の香料添加装置700を用いて通水した以外は、実施例4と同様に実施した。
図5のワンパス式の香料添加装置700は、以下の点で
図4の装置と異なる。
・ガス透過部を通過した香料液FLはバイアル瓶603への採取時以外は継続的に排水し、香料液タンク601に戻さない。代わりに、純水ライン605から水を香料液タンク601に補充すること。
ワンパス式の香料添加装置700においては、香料液FLは、香料液タンク601として用意した2Lボトルにて常にオーバーフローさせながら供給した。
【0113】
(実施例6)
実施例6では、送水ポンプ602で上記の香料液FLを2000ml/minワンパスで通水した以外は、実施例5と同様に実施した。
【0114】
実施例5~実施例6の各サンプルにおけるシトラールの濃度を、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析装置(HS-GC/MS)を用いて測定した。その結果を下記表3に示した。
【0115】
【0116】
表3で示したように、ワンパス式での通液でも、循環式と同様に、シトラールを水中で検出できることを確認した。
本発明の加工食品の製造方法、香料添加装置、加工食品製造システム、並びにウォーターサーバーは、上記のように、香料の添加量を的確に制御することができ、加熱殺菌による香料の変性を防ぎながら香料の無菌添加が可能になるとともに、嗜好性に優れた加工食品を生産性よく製造することが可能なものである。従って、本発明は、例えば、液体飲料等の加工製品の製造プロセスにおいて、加工製品の嗜好性を高める用途において非常に好適である。