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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144373
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L51/04
C08L69/00
C08F279/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053777
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023055124
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】菊地 大文
(72)【発明者】
【氏名】宮井 章吾
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BN14W
4J002CG01X
4J002GN00
4J002GQ00
4J026AA68
4J026BA27
4J026BA30
4J026BB03
4J026BB06
4J026DA04
4J026DA07
4J026DA15
4J026DB04
4J026DB08
4J026DB15
4J026DB24
4J026DB25
4J026DB32
4J026EA04
4J026FA03
4J026GA09
(57)【要約】
【課題】高い引っかき硬度を有し、かつ、シャルピー衝撃強度と面衝撃強度のいずれもが良好な成形体が得られる樹脂組成物及びそれを用いた成形体を提供する。
【解決手段】特定の構成単位(-CO(CHO-)を有するビニル単量体(a1)に由来する構成単位を含む重合体A部分を有する重合体(X)と、イソソルバイド骨格を有するポリカーボネート樹脂(Y)と、を含有する、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位を有するビニル単量体(a1)に由来する構成単位を含む重合体A部分を有する重合体(X)と、
イソソルバイド骨格を有するポリカーボネート樹脂(Y)と、
を含有する、樹脂組成物。
-CO(CHO- ・・・(1)
【請求項2】
前記重合体(X)は、前記ビニル単量体(a1)とは異なるビニル単量体(b1)に由来する構成単位を含む重合体B部分をさらに有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記重合体A部分と前記重合体B部分との合計を100質量%としたときに、前記重合体A部分の含有量が10~50質量%であり、前記重合体B部分の含有量が50~90質量%である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合体(X)がコアシェル重合体であって、
前記重合体A部分が前記コアシェル重合体のシェル部分を構成し、前記重合体B部分が前記コアシェル重合体のコア部分を構成する、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記コアシェル重合体の平均一次粒子径が100~500nmである、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合体A部分は、炭素数1~10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a2)に由来する構成単位をさらに含み、
前記重合体A部分を構成する全構成単位の合計質量に対して、前記ビニル単量体(a1)に由来する構成単位の含有量が1~30質量%であり、前記アルキル(メタ)アクリレート(a2)に由来する構成単位の含有量が70~99質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ビニル単量体(a1)が下記式(2)で表される単量体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
CH=CRCOO(CHO[CO(CHO]H ・・・(2)
(式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、qは2~5の整数を表し、nは1以上の整数を表す。)
【請求項8】
前記式(1)中のRがメチル基である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記式(1)中のnが1~5の整数である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記重合体(X)と前記ポリカーボネート樹脂(Y)との合計を100質量%としたときに、前記重合体(X)の含有量が1~30質量%であり、前記ポリカーボネート樹脂(Y)の含有量が70~99質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム含有コアシェル重合体は、ゴム状重合体に対してビニル単量体がグラフト重合されたものである。ゴム含有コアシェル重合体は、乳化重合で製造され、所定のゴム粒子径、ゴム構造を維持したまま多種多様な樹脂に分散させることができるため、衝撃強度が求められる樹脂に好適に用いられる。
【0003】
樹脂の衝撃強度を改良するには、一般的に樹脂中にゴムを均一に分散させることがよいとされる。しかしながら、ゴム自体は一般の熱可塑性樹脂に対して相容性が低く、単独では樹脂中にゴムを均一に分散することは困難である。
【0004】
樹脂中へのゴム分散性を改良するために、ゴム状重合体に対してビニル単量体でグラフト重合することが知られている。このビニル単量体としては、メチルメタクリレートが好適に用いられている。この理由としては、メチルメタクリレートが、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、塩ビ樹脂等の幅広い熱可塑性樹脂と相容性が高いことが挙げられる。
【0005】
また、熱可塑性樹脂は、家電やOA機器、自動車部品等、様々な用途に使用されている。特に自動車部品用途では、車体の軽量化を目的として金属からの代替が進んでいるが、樹脂には充分な衝撃強度(シャルピー衝撃強度・面衝撃強度)が必要とされる。
【0006】
自動車部品用途では、衝撃強度の観点から、グラフトゴムを添加した熱可塑性樹脂が使用されている。しかし、熱可塑性樹脂にグラフトゴムを添加すると、シャルピー衝撃強度が向上する一方で、面衝撃強度は低下することがある。自動車部品用途として、安全性を確保するために、シャルピー衝撃強度と面衝撃強度の両立が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/131374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されるようなゴム含有グラフト重合体を熱可塑性樹脂と混合して成形体とした際に、成形体のシャルピー衝撃強度と面衝撃強度が不充分であった。
加えて、特に自動車部品用途において、樹脂製品は人の目に触れる場所に使用されることが多い。そのため、傷がつきにくく良好な外観が維持できることも重要な特性であるが、熱可塑性樹脂にゴム含有グラフト重合体を添加すると、成形体表面の引っかき硬度が低下することがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い引っかき硬度を有し、かつ、シャルピー衝撃強度と面衝撃強度のいずれもが良好な成形体が得られる樹脂組成物及びそれを用いた成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明等が鋭意検討した結果、特定の単量体由来の構造単位を有する重合体と特定の骨格を有するポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物とすることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記式(1)で表される構成単位を有するビニル単量体(a1)に由来する構成単位を含む重合体A部分を有する重合体(X)と、
イソソルバイド骨格を有するポリカーボネート樹脂(Y)と、
を含有する、樹脂組成物。
-CO(CHO- ・・・(1)
[2] 前記重合体(X)は、前記ビニル単量体(a1)とは異なるビニル単量体(b1)に由来する構成単位を含む重合体B部分をさらに有する、前記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記重合体A部分と前記重合体B部分との合計を100質量%としたときに、前記重合体A部分の含有量が10~50質量%であり、前記重合体B部分の含有量が50~90質量%である、前記[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記重合体(X)がコアシェル重合体であって、
前記重合体A部分が前記コアシェル重合体のシェル部分を構成し、前記重合体B部分が前記コアシェル重合体のコア部分を構成する、前記[2]又は[3]に記載の樹脂組成物。
[5] 前記コアシェル重合体の平均一次粒子径が100~500nmである、前記[4]に記載の樹脂組成物。
[6] 前記重合体A部分は、炭素数1~10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a2)に由来する構成単位をさらに含み、
前記重合体A部分を構成する全構成単位の合計質量に対して、前記ビニル単量体(a1)に由来する構成単位の含有量が1~30質量%であり、前記アルキル(メタ)アクリレート(a2)に由来する構成単位の含有量が70~99質量%である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 前記ビニル単量体(a1)が下記式(2)で表される単量体である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
CH=CRCOO(CHO[CO(CHO]H ・・・(2)
(式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、qは2~5の整数を表し、nは1以上の整数を表す。)
[8] 前記式(1)中のRがメチル基である、前記[7]に記載の樹脂組成物。
[9] 前記式(1)中のnが1~5の整数である、前記[7]又は[8]に記載の樹脂組成物。
[10] 前記重合体(X)と前記ポリカーボネート樹脂(Y)との合計を100質量%としたときに、前記重合体(X)の含有量が1~30質量%であり、前記ポリカーボネート樹脂(Y)の含有量が70~99質量%である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] 前記[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の単量体由来の構造単位を有する重合体と特定の骨格を有するポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物とすることにより、成形体の引っかき硬度を向上させつつ、シャルピー衝撃強度と面衝撃強度のいずれもが良好となる樹脂組成物及びそれを用いた成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は目的を逸脱しない範囲において以下の実施形態に限定されるわけではない。
本明細書においては、以下の用語の定義を採用する。
「構成単位」とは、単量体に由来する構成単位、すなわち単量体が重合することによって形成された構成単位、又は重合体を処理することによって構成単位の一部が別の構造に変換された構成単位を意味する。
アクリレート及びメタクリレートの総称を「(メタ)アクリレート」と称する。アクリル及びメタクリルの総称を「(メタ)アクリル」と称する。
「成形体」は、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形物である。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
本明細書に開示の含有量、種々の物性値、性状値の数値範囲は、その下限値及び上限値を任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
【0014】
「樹脂組成物」
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、以下に示す重合体(X)と、ポリカーボネート樹脂(Y)とを含有する。
樹脂組成物は、重合体(X)及びポリカーボネート樹脂(Y)に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、重合体(X)及びポリカーボネート樹脂(Y)以外の成分(以下、「任意成分」ともいう。)をさらに含有していてもよい。
【0015】
[重合体(X)]
重合体(X)は、以下に示す重合体A部分を有する。
重合体(X)は、重合体A部分のみからなる重合体であってもよいが、重合体A部分に加えて、以下に示す重合体B部分をさらに有することが好ましい。
重合体(X)が重合体A部分と重合体B部分とを有する場合、重合体(X)は、重合体A部分と重合体B部分とが共有結合している重合体であってもよいし、重合体A部分と重合体B部分とが共有結合していない重合体であってもよい。
重合体(X)が重合体A部分のみからなる重合体である場合、重合体(X)は重合体Aである。
【0016】
重合体A部分と重合体B部分とが共有結合している重合体としては、例えば重合体A部分と重合体B部分とを有するブロック共重合体が挙げられる。
重合体A部分と重合体B部分とが共有結合していない重合体としては、例えば重合体B部分が重合体A部分によって内包又は外包されている重合体が挙げられる。具体的には、重合体A部分及び重合体B部分の一方をコア部分が含み、他方をシェル部分が含んで構成される、コアシェル構造を有する重合体(以下、「コアシェル重合体」ともいう。)が挙げられる。なお、「コアシェル構造」とは、コアと呼ばれる部分(コア部分)が、シェルと呼ばれる部分(シェル部分)に内包される構造である。
【0017】
これらの中でも、重合体(X)としては、コアシェル重合体であり、重合体A部分がコアシェル重合体のシェル部分を構成し、重合体B部分がコアシェル重合体のコア部分を構成しているコアシェル重合体であることが好ましい。重合体(X)がこのようなコアシェル重合体であれば、樹脂組成物中に重合体(X)が容易に分散し、成形体の耐衝撃性がより向上する。加えて、重合体(X)を粉体として容易に取り扱うことができる。
以下は、代表例として、当該コアシェル構造を有する重合体(X)の好ましい形態について詳細に説明する。
【0018】
<重合体A部分>
重合体A部分は、下記式(1)で表される構成単位を有するビニル単量体(a1)に由来する構成単位(以下、「構成単位(a1)」ともいう。)を含む。すなわち、重合体A部分は、構成単位(a1)を含む重合体Aで構成されている。
重合体A部分が構成単位(a1)を含むことで、成形体の引っかき硬度が向上するとともに、シャルピー衝撃強度及び面衝撃強度が良好となる。
-CO(CHO- ・・・(1)
【0019】
ビニル単量体(a1)としては、重合性の観点から下記式(2)で表される単量体が好ましい。
CH=CRCOO(CHO[CO(CHO]H ・・・(2)
(式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、qは2~5の整数を表し、nは1以上の整数を表す。)
式(2)中、Rはメチル基であることが好ましい。また、nは1~5の整数であることが好ましい。
【0020】
前記式(2)で表される単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステルに、ε-カプロラクトンが付加した付加物(ヒドロキシ基含有モノマー)等が挙げられる。
このような単量体としては市販品を用いることができ、例えば株式会社ダイセル製の商品名「プラクセルFA1」、「プラクセルFA2」、「プラクセルFA3」、「プラクセルFA4」、「プラクセルFA5」、「プラクセルFM1」、「プラクセルFM2」、「プラクセルFM3」、「プラクセルFM4」、「プラクセルFM5」等が挙げられる。
これらビニル単量体(a1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
重合体A部分は、炭素数1~10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a2)(以下、「単量体(a2)」ともいう。)に由来する構成単位(以下、「構成単位(a2)」ともいう。)をさらに含むことが好ましい。すなわち、重合体Aは、構成単位(a2)をさらに含むことが好ましい。
重合体A部分が構成単位(a2)をさらに含むことで、成形体の引っかき硬度がより向上するとともに、シャルピー衝撃強度及び面衝撃強度がより良好となる。
【0022】
単量体(a2)としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n-オクチル等のアクリル酸アルキルエステル単量体;タクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル単量体などが挙げられる。
これら単量体(a2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
重合体A部分(すなわち、重合体A)を構成する全構成単位の合計質量に対して、構成単位(a1)の含有量は1~30質量%が好ましく、構成単位(a2)の含有量は70~99質量%が好ましい。構成単位(a1)及び構成単位(a2)の含有量が上記範囲内であれば、重合体(X)と後述するポリカーボネート樹脂(Y)との分子レベルでの絡み合いが促進され、成形体のシャルピー衝撃強度と面衝撃強度が良好となる。
構成単位(a1)の含有量は、1~20質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。一方、構成単位(a2)の含有量は、80~99質量%がより好ましく、85~95質量%がさらに好ましい。
【0024】
重合体A部分は、ビニル単量体(a1)及び単量体(a2)以外の単量体(a3)由来の構成単位(以下、「構成単位(a3)」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。すなわち、重合体Aは、構成単位(a3)をさらに含んでいてもよい。
単量体(a3)としては、ビニル単量体(a1)及び単量体(a2)の少なくとも一方と共重合可能であれば特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル;(メタ)アクリル酸、フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体などが挙げられる。
さらに、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコール;トリメタクリル酸エステル、トリアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のカルボン酸アリルエステル;ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ及びトリアリル化合物等の架橋性単量体などを併用することもできる。
これら単量体(a3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
<重合体B部分>
重合体B部分は、ビニル単量体(a1)とは異なるビニル単量体(b1)に由来する構成単位(以下、「構成単位(b1)」ともいう。)を含む。すなわち、重合体B部分は、構成単位(b1)を含む重合体Bで構成されている。
【0026】
ビニル単量体(b1)としては、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル;アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル単量体などが挙げられる。
さらに、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコール;トリメタクリル酸エステル、トリアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のカルボン酸アリルエステル;ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ及びトリアリル化合物等の架橋性単量体などを併用することもできる。
これらの中でも、成形体のシャルピー衝撃強度や面衝撃強度の観点から、重合体B部分はブタジエンに由来する構成単位を含むことが好ましい。
これらビニル単量体(b1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
重合体B部分(すなわち、重合体B)を構成する全構成単位の合計質量に対して、ブタジエンに由来する構成単位の含有量は40~100質量%が好ましく、ブタジエン以外のビニル単量体(b1)に由来する構成単位の含有量は0~60質量%が好ましい。ブタジエンに由来する構成単位の含有量が上記下限値以上であれば、充分な耐衝撃性が得られやすい。
ブタジエンに由来する構成単位の含有量は、50~100質量%がより好ましく、60~100質量%がさらに好ましい。
【0028】
重合体Bは、ガラス転移温度が0℃以下の重合体で構成されていることが好ましい。重合体B部分のガラス転移温度が上記上限値以下であれば、成形体の衝撃強度及び面衝撃強度がより良好となる傾向がある。
なお、重合体Bのガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用い、JIS K 7121:2012に準拠する方法により測定される値である。
【0029】
重合体Bとしては、ゴム状重合体であることが好ましく、具体的には、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、シリコーンゴム、シリコーン・アクリル複合ゴム(ジメチルシロキサンを主体とする単量体から得られる重合体の存在下に、アクリレートを含むビニル単量体の1種又は2種以上を重合させて得られるもの)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合ゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合、スチレン・イソプレンブロック共重合ゴムなどのブロック共重合体、及びそれらの水素添加物等が挙げられる。これらの中でも、特に寒冷地においては、より低温(-20℃以下)での成形体の衝撃強度の改良が求められるため、ゴム状重合体としては、ガラス転移温度が-20℃以下のブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリル・ブタジエン共重合ゴム、シリコーン・アクリル複合ゴムが好ましく、ブタジエンゴムがより好ましい。
これらゴム状重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
<含有量>
重合体A部分と重合体B部分との合計を100質量%としたときに、重合体A部分の含有量は10~50質量%であり、重合体B部分の含有量は50~90質量%であることが好ましい。重合体A部分及び重合体B部分の含有量が上記範囲内であれば、樹脂組成物中での重合体(X)の分散性が向上し、成形体の耐衝撃性がより良好となる。
重合体A部分の含有量は、より好ましくは10~40質量%であり、さらに好ましくは10~35質量%である。一方、重合体B部分の含有量は、より好ましくは60~90質量%であり、さらに好ましくは65~90質量%である。
【0031】
<粒子径>
重合体(X)がコアシェル重合体である場合、コアシェル重合体の平均一次粒子径は、100~500nmが好ましい。一次粒子径が上記範囲内であれば、樹脂組成物を調製する際の、配合時や混合装置内への投入時に飛散を抑制でき、粉じん爆発等が生じにくくなる。加えて、コアシェル重合体の流動特性が良好であり、製造過程において配管等の閉塞を抑制できる。
コアシェル重合体の平均一次粒子径は、より好ましくは200nm超、500nm以下であり、より好ましくは200nm超、400nm以下であり、さらに好ましくは210~400nmであり、特に好ましくは210nm~350nmである。
コアシェル重合体の平均一次粒子径は、例えば、乳化重合によるコアシェル重合体の製造において、乳化剤の量を調節したり、肥大化剤を添加したりすることにより調整することができる。
【0032】
コアシェル重合体の平均一次粒子径は、動的光散乱法を使用した粒径アナライザーやCHDF法(Capillary HydroDynamic Fractionation)を使用したキャピラリー粒度分布計により測定することができる。
本明細書において、コアシェル重合体の平均一次粒子径は、動的光散乱法による粒子径分布測定装置を用いて測定を行い、キュムラント解析により算出した散乱光強度基準による調和平均粒子径の値である。この測定は、例えば、濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子株式会社製)を用い、付属のソフトウェアにより解析処理することで算出する。
【0033】
<重合体(X)の製造方法>
コアシェル構造を有する場合の重合体(X)の製造方法としては特に制限されず、懸濁重合、溶液重合、乳化重合等の公知の方法で製造することができる。これらの中でも、製造の容易さの観点より、乳化重合で製造することが好ましい。具体的には、重合体Bの存在下、重合体Aを構成する単量体成分(m2)をグラフト重合、好ましくは乳化重合して重合体(X)を製造することが好ましい。すなわち、重合体(X)は、重合体Bの存在下、単量体成分(m2)を乳化重合させてなる重合体であることが好ましい。
【0034】
(重合体Bの製造)
重合体Bは、例えば、重合体Bを構成する単量体成分(m1)を乳化重合することで得られる。
単量体成分(m1)は、ビニル単量体(b1)を含む。
単量体成分(m1)は、ブタジエンを含むことが好ましい。また、ブタジエンに加えて、必要に応じてブタジエン以外のビニル単量体(b1)であって、ブタジエンと共重合し得る1種以上のビニル単量体(b1)をさらに含んでいてもよ。
単量体成分(m1)の総質量に対するブタジエンの含有量は、40~100質量%が好ましく、50~100質量%がより好ましく、60~100質量%がさらに好ましい。
単量体成分(m1)の総質量に対する、ブタジエン以外のビニル単量体(b1)の含有量は、0~60質量%が好ましく、0~50質量%がより好ましく、0~40質量%がさらに好ましい。
【0035】
単量体成分(m1)の乳化重合は、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
重合開始剤としては、一般的なラジカル重合に使用されるものであれば特に制限されないが、例えば過硫酸カリウム(ペルオキソ二硫酸カリウム)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物類;2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]及びその塩類、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]及びその塩類、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}及びその塩類、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピンアミジン)及びその塩類、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]等の水溶性アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物などが挙げられる。
これら重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤として有機過酸化物を用いる場合、硫酸第一鉄又はイソアスコルビン酸等の還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として用いることができる。
【0036】
単量体成分(m1)の乳化重合は、乳化剤の存在下で行うことが好ましい。
乳化剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩等のカチオン性界面活性剤などが挙げられる。
これら乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
単量体成分(m1)の乳化重合には、分子量の調整を目的として、連鎖移動剤をさらに併用してもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
これら連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
乳化重合時の反応温度は特に制限されないが、例えば45~90℃が好ましく、50~85℃がより好ましい。
乳化重合時の反応時間は特に制限されないが、例えば30分~8時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0039】
(単量体成分(m2)の乳化重合)
単量体成分(m2)は、単量体(a1)を含む。
単量体成分(m2)は、単量体(a1)に加えて、単量体(a2)をさらに含むことが好ましい。単量体成分(m2)は、必要に応じて単量体(a3)をさらに含んでいてもよい。
単量体成分(m2)の総質量に対する単量体(a1)の含有量は、1~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。
単量体成分(m2)の総質量に対する単量体(a2)の含有量は、70~99質量%が好ましく、80~99質量%がより好ましく、85~95質量%がさらに好ましい。
【0040】
重合体Bと単量体成分(m2)との合計を100質量%としたときに、単量体成分(m2)の含有量は10~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、10~35質量%がさらに好ましい。
重合体Bと単量体成分(m2)との合計を100質量%としたときに、重合体Bの含有量は50~90質量%が好ましく、60~90質量%がより好ましく、65~90質量%がさらに好ましい。
【0041】
単量体成分(m2)の乳化重合は、乳化剤の存在下で行うことが好ましい。また、必要に応じて重合開始剤の存在下で単量体成分(m2)の乳化重合を行ってもよい。これら乳化剤及び重合開始剤としてはそれぞれ、重合体(B)の製造の説明において先に例示した乳化剤及び重合開始剤が挙げられる。
また、単量体成分(m2)の乳化重合には、分子量の調整を目的として、連鎖移動剤をさらに併用してもよい。連鎖移動剤としては、重合体(B)の製造の説明において先に例示した連鎖移動剤が挙げられる。
【0042】
単量体成分(m2)を乳化重合する際の反応温度は特に制限されないが、例えば45~90℃が好ましく、50~85℃がより好ましい。
単量体成分(m2)を乳化重合する際の反応時間は特に制限されないが、例えば30分~8時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0043】
なお、単量体成分(m2)を乳化重合する際に肥大化剤を加えて、粒子径を調整してもよい。
肥大化剤としては種々のものを使用でき、例えば、酸基含有共重合体、酸素酸塩等が挙げられる。酸基含有共重合体としては、例えば、構成要素にアクリル酸、メタクリル酸やイタコン酸等を有する共重合体等が挙げられる。酸素酸塩としては、例えば、酸素酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、又は亜鉛、ニッケル、及びアルミニウムからなる群より選ばれる1種以上の酸素酸塩等が挙げられる。酸素酸塩の具体例としては、硫酸、硝酸、リン酸等の酸素酸のカリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ニッケル塩、アルミニウム塩等が挙げられる。
これら肥大化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
重合体Bの存在下で単量体成分(m2)を乳化重合することにより、重合体(X)はラテックスの状態で得られる。
重合体(X)のラテックスから重合体(X)を回収する方法としては特に制限されないが、例えば重合体(X)のラテックスを、噴霧乾燥法や凍結乾燥法による乾燥、又は凝析することにより、重合体(X)を粉体として得ることができる。これらの中でも、噴霧乾燥法による乾燥又は凝析が好ましい。
なお、重合体(X)が重合体A部分のみからなる場合、例えば、上述した単量体成分(m2)を重合開始剤及び乳化剤の存在下で乳化重合することで、重合体Aからなる重合体(X)が得られる。
【0045】
[ポリカーボネート樹脂(Y)]
ポリカーボネート樹脂(Y)は、イソソルバイド骨格を有する。
ポリカーボネート樹脂(Y)がイソソルバイド骨格を有することで、成形体の引っかき硬度が向上する。
イソソルバイド骨格を有するポリカーボネート樹脂(Y)としては、下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物(以下、「化合物(c)」ともいう。)に由来する構成単位(以下、「構成単位(c)」ともいう。)を含むポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(Y)は、構成単位(c)のみで構成されている、すなわち化合物(c)のホモポリカーボネートであってもよいし、構成単位(c)に加えて、構成単位(c)以外の構成単位をさらに含むポリカーボネート樹脂(以下、「共重合ポリカーボネート樹脂」ともいう。)であってもよい。成形体の耐衝撃性がより向上するという観点からは、ポリカーボネート樹脂(Y)は共重合ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【0046】
【化1】
【0047】
化合物(c)としては、例えば、立体異性体関係にあるイソソルバイド、イソマンニド、イソイデット等が挙げられる。これらの中でも、植物由来資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルバイドが、入手及び製造のしやすさ、耐候性、光学特性、成形性、耐熱性及びカーボンニュートラルの面から最も好ましい。
これら化合物(c)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
ポリカーボネート樹脂(Y)が共重合ポリカーボネート樹脂である場合、共重合ポリカーボネート樹脂としては、構成単位(c)と、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物、及びエーテル含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1種以上のジヒドロキシ化合物(以下、「化合物(d)」ともいう。)に由来する構成単位(以下、「構成単位(d)」ともいう。)とを含む共重合ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
化合物(d)は柔軟な分子構造を有するため、化合物(d)を原料として用いることにより、得られるポリカーボネート樹脂(Y)の靭性を向上させることができる。化合物(d)の中でも、靭性を向上させる効果の大きい脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物が好ましく、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物がより好ましい。
【0049】
脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物;1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等の分岐鎖を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物などが挙げられる。
これら脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、リモネン等の、テルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールであるジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール又は3級アルコールであるジヒドロキシ化合物などが挙げられる。
これら脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
エーテル含有ジヒドロキシ化合物としては、オキシアルキレングリコール類やアセタール環を含有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等が挙げられる。
これらエーテル含有ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
ポリカーボネート樹脂(Y)において、全ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位100モル%に対する構成単位(c)の含有割合は、30モル%以上が好ましく、40~95モル%がより好ましく、45~90モル%がさらに好ましく、60~85モル%が特に好ましい。構成単位(c)の含有割合が上記範囲内であれば、生物起源物質含有率をより高めることができ、耐熱性をより向上させることができる。
なお、ポリカーボネート樹脂(Y)における構成単位(c)の含有割合は100モル%でもよいが、分子量をより高めるという観点及び成形体の耐衝撃性をより向上させるという観点からは、ポリカーボネート樹脂(Y)は、構成単位(c)以外の構成単位(例えば上述した構成単位(d))をさらに含んでいることが好ましい。
【0053】
また、前記ポリカーボネート樹脂(Y)は、化合物(c)及び化合物(d)以外のジヒドロキシ化合物(以下、「化合物(e)」ともいう。)に由来する構成単位(以下、「構成単位(e)」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
化合物(e)としては、例えば、芳香族基を含有するジヒドロキシ化合物等が挙げられる。ただし、前記ポリカーボネート樹脂(Y)に芳香族基を含有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多く含まれる場合には、前述の理由により高い分子量のポリカーボネート樹脂(Y)が得られにくくなり、成形体の耐衝撃性の向上効果が低下することがある。したがって、成形体の耐衝撃性をより向上させるという観点からは、全ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位100モル%に対して、芳香族基を含有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の含有割合は、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。
【0054】
ポリカーボネート樹脂(Y)のガラス転移温度は、90℃以上が好ましい。ポリカーボネート樹脂(Y)のガラス転移温度が上記下限値以上であれば、樹脂組成物の耐熱性と生物起源物質含有率とをバランスよく向上させることができる。同様の観点から、ポリカーボネート樹脂(Y)のガラス転移温度は、100℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましく、120℃以上が特に好ましい。一方、ポリカーボネート樹脂(Y)のガラス転移温度は170℃以下が好ましい。ポリカーボネート樹脂(Y)のガラス転移温度が上記上限値以下であれば、前述の溶融重合によって溶融粘度を小さくすることができ、充分な分子量のポリマーを得ることができる。また、重合温度を高くして溶融粘度を下げることにより、分子量を高くしようとした場合には、構成単位(c)による耐熱性の向上効果が充分に得られず、着色し易くなることがある。分子量の向上と着色の防止をよりバランスよく向上できるという観点から、ポリカーボネート樹脂(Y)のガラス転移温度は、165℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましく、150℃以下が特に好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂(Y)のガラス転移温度は、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook(J.Brandrup,Interscience,1989)〕に記載されている値を用いてFOXの式から算出した値である。
【0055】
ポリカーボネート樹脂(Y)の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度が高いほど分子量が大きいことを示す。還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.33dL/g以上が好ましい。ポリカーボネート樹脂(Y)還元粘度が上記下限値以上であれば、成形体の機械的強度をより向上させることができる。一方、還元粘度は、通常、1.20dL/g以下であり、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下がさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂(Y)還元粘度が上記上限値以下であれば、樹脂組成物の成形時の流動性を向上させることができ、生産性や成形性をより向上させることができる。
なお、ポリカーボネート樹脂(Y)の還元粘度は、塩化メチレンを溶媒としてポリカーボネート樹脂(Y)の濃度を0.6g/dLに精密に調整した溶液を用いて、ウベローデ粘度管により温度20.0℃±0.1℃の条件下で測定される値である。
【0056】
ポリカーボネート樹脂(Y)の溶融粘度は、400~3000Pa・sが好ましい。ポリカーボネート樹脂(Y)の溶融粘度が上記範囲内であれば、成形体が脆くなることを防止し、機械物性をより向上させることができる。加えて、樹脂組成物の成形時の流動性を向上させることができ、成形体の外観が損なわれたり、寸法精度が悪化したりすることを防止することができる。さらに、剪断発熱により樹脂温度が上昇することに起因する、着色や発泡をより一層防止することができる。同様の観点から、ポリカーボネート樹脂(Y)の溶融粘度は、600~2500Pa・sがより好ましく、800~2000Pa・sがさらに好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂(Y)の溶融粘度は、キャピラリーレオメータを用いて測定される、温度240℃、剪断速度91.2sec-1における溶融粘度である。キャピラリーレオメータとしては、例えば、株式会社東洋精機製作所製の製品名「キャピログラフ」等が挙げられる。
【0057】
重合体(X)とポリカーボネート樹脂(Y)との合計を100質量%としたときに、重合体(X)の含有量は1~30質量%であり、ポリカーボネート樹脂(Y)の含有量は70~99質量%であることが好ましい。重合体(X)及びポリカーボネート樹脂(Y)の含有量が上記範囲内であれば、成形体のシャルピー衝撃強度と面衝撃強度がより向上する。
重合体(X)の含有量は、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは1~15質量%であり、特に好ましくは5~15質量%である。一方、ポリカーボネート樹脂(Y)の含有量は、より好ましくは80~99質量%であり、さらに好ましくは85~99質量%であり、特に好ましくは85~95質量%である。
【0058】
重合体(X)及びポリカーボネート樹脂(Y)の含有量の合計は、樹脂組成物の総質量に対して60~100質量%が好ましく、65~100質量%がより好ましい。
【0059】
[任意成分]
任意成分としては、例えば、安定剤、難燃剤、難燃助剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、発泡剤、染料、顔料等の周知の種々の添加剤などが挙げられる。
これら任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
樹脂組成物中の任意成分の含有量は、樹脂組成物の総質量に対して0~40質量%が好ましく、0~35質量%がより好ましい。
【0061】
[樹脂組成物の製造方法]
樹脂組成物は、例えば、重合体(X)と、ポリカーボネート樹脂(Y)と、必要に応じて任意成分とを混合又は溶融混練することで製造することができる。
混合又は溶融混錬には、例えば、タンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混錬ロール、押し出し機等を使用できる。
【0062】
[作用効果]
以上説明した本実施形態の樹脂組成物は、上述した重合体(X)とポリカーボネート樹脂(Y)とを含有するので、本実施形態の樹脂組成物を用いれば、高い引っかき硬度を有し、かつ、シャルピー衝撃強度と面衝撃強度のいずれもが良好な成形体が得られる。
【0063】
「成形体」
本発明の一実施形態に係る成形体は、上述した本発明の樹脂組成物を含む。
成形体は、樹脂組成物を所望の形状となるように成形することで得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法など、通常の熱可塑性樹脂組成物の成形に用いられる方法が挙げられる。
【0064】
本実施形態の成形体は、本発明の樹脂組成物を含むので、高い引っかき硬度を有し、かつ、シャルピー衝撃強度と面衝撃強度のいずれもが良好である。
本実施形態の成形体は、例えば、自動車分野、OA機器分野、家電、電気・電子分野、建築分野、生活・化粧品分野、医療用品分野などの種々の材料として、工業的に広く利用することができる。より具体的な成形体の用途としては、自動車内外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられる。特に、本発明の成形体は、シャルピー衝撃強度と面衝撃強度に優れるため、自動車内外装部品に好適である。
自動車外装部品としては、例えば、フェンダー、バンパー、フェーシャ、ドアパネル、サイドガーニッシュ、ピラー、ラジエータグリル、サイドプロテクター、サイドモール、リアプロテクター、リアモール、各種スポイラー、ボンネット、ルーフパネル、トランクリッド、デタッチャブルトップ、ウインドリフレクター、ミラーハウジング、アウタードアハンドル等が挙げられる。自動車内装部品としては、例えばインストルメントパネル、センターコンソールパネル、メーター部品、各種スイッチ類、カーナビケーション部品、カーオーディオビジュアル部品、オートモバイルコンピュータ部品等が挙げられる。
【実施例0065】
以下、製造例及び実施例により本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例等において、特に記載のない限り「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0066】
[測定・評価]
<平均一次粒子径の測定>
動的光散乱法による粒子径分布測定装置(大塚電子株式会社製、製品名「濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000」)を用いて室温下にて測定を行い、キュムラント解析により算出した散乱光強度基準による調和平均粒子径をコアシェル重合体の平均一次粒子径とした。
【0067】
<シャルピー衝撃試験>
ペレット状の樹脂組成物を射出成形機(住友重機械工業株式会社製、製品名「住友射出成形機SE100DU」)に供給し、シリンダー温度240℃、金型温度60℃にて、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの成形体(試験片)を得た。得られた試験片を用いて以下のようにしてシャルピー衝撃試験を行った。
シャルピー衝撃試験はISO 179-1:2023に準拠し、ISO 2818:2018に準拠したTYPE Aのノッチを刻んで測定し、以下の評価基準にて成形体のシャルピー衝撃強度を評価した。
〇:シャルピー衝撃強度が20kJ/m以上である。
×:シャルピー衝撃強度が20kJ/m未満である。
【0068】
<面衝撃試験>
ペレット状の樹脂組成物を射出成形機(住友重機械工業株式会社製、製品名「住友射出成形機SE100DU」)に供給し、シリンダー温度240℃、金型温度60℃にて、長さ100mm×幅50mm×厚さ2mmの成形体(試験片)を得た。得られた試験片を用いて以下のようにして面衝撃試験を行った。
面衝撃試験は、デュポン衝撃試験機(株式会社東洋精機製作所製、製品名「デュポン衝撃試験機H-100」)を用い、直径5インチの半球状先端を有するストライカと、内径10インチの試験片支持台を使用した。測定温度(23℃又は0℃)に冷却した試験片に、ストライカの先端を試験片に水平に接触させた後、5kgの錘を1500mmの位置から垂直に自由落下させ、破壊形態を目視にて確認した。
破壊形態はISO 6603-2:2000に記載の分類を用い、力学的挙動がYD、YS、YUであった試験片を延性破壊として、その割合を測定し、以下の評価基準にて成形体の面衝撃強度を評価した。
〇:0℃での面衝撃試験における延性破壊率が40%以上である。
×:0℃での面衝撃試験における延性破壊率が40%未満である。
【0069】
<引っかき硬度測定試験>
ペレット状の樹脂組成物を射出成形機(住友重機械工業株式会社製、製品名「住友射出成形機SE100DU」)に供給し、シリンダー温度240℃、金型温度60℃にて、長さ100mm×幅50mm×厚さ2mmの成形体(試験片)を得た。得られた試験片を用いて以下のようにして引っかき硬度測定試験を行った。
引っかき硬度測定試験は、電動鉛筆引っかき硬度試験機(株式会社安田精機製作所製)を用い、JIS K 5600-5-4:1999に準拠して測定を行い、試験後の成形体の表面を目視にて観察し、以下の評価基準にて成形体の引っかき硬度を評価した。
〇:3Bの鉛筆で引っかいた際に、成形体の表面に傷がつかない。
×:3Bの鉛筆で引っかいた際に、成形体の表面に傷がつく。
【0070】
[ポリブタジエンゴムラテックス(B-1)の製造]
耐圧オートクレーブ中に、1,3-ブタジエンを100部、t-ドデシルメルカプタンを0.3部、クメンヒドロペルオキシドを0.28部、ピロリン酸テトラナトリウム塩を0.3部、硫酸第一鉄を0.0036部、硫酸ナトリウムを0.39部、グルコースを0.24部、ロジン酸カリウムを1.25部、牛脂酸カリウムを1.25部及び脱イオン水を200部仕込み、撹拌しながら53℃で12時間反応させて、ポリブタジエンゴムラテックス(B-1)を得た。
【0071】
[酸基含有共重合体ラテックス(K-1)の製造]
還流冷却器付きガラス製反応器に、牛脂酸カリウムを1.67部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを2.5部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを0.3部、硫酸第一鉄を0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を0.009部及び脱イオン水を196部仕込み、攪拌しながらガラス製反応器の内温が60℃となるまで昇温した。次いで、上記原料の混合物に、アクリル酸n-ブチル85部、メタクリル酸15部、クメンヒドロパーオキシド0.5部からなる混合物を2時間かけて連続的に添加した後、さらに2時間保持して重合を行い、酸基含有共重合体ラテックス(K-1)を得た。
【0072】
[製造例1]
<コアシェル重合体(X-1)の製造>
ポリブタジエンゴムラテックス(B-1)222部(仕込みモノマー成分として70部)を、攪拌機及び還流冷却管を備えたガラス製反応容器(セパラブルフラスコ)内に仕込んだ。このセパラブルフラスコ内に窒素気流を通ずることによりセパラブルフラスコ内の雰囲気の窒素置換を行った。酸基含有共重合体ラテックス(K-1)を4.24部投入し、液温を40℃まで昇温させた後、10分保持した。次いで、アルケニルコハク酸ジカリウム0.94部及び脱イオン水27部からなる水溶液を加え、液温を80℃まで昇温させた。さらに、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物0.09部及び脱イオン水3.8部からなる水溶液を加えた。その後、メチルメタクリレート27部、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン3部及びt-ブチルヒドロペルオキシド0.11部からなる混合液を60分間かけて反応容器内に滴下し、引き続き、120分間加熱撹拌を続けた。このようにして、ゴム状重合体であるポリブタジエンゴムに対してビニル単量体(a1)及び単量体(a2)を含む単量体成分(m2)をグラフト重合させて、コアシェル重合体ラテックス(X-1)を得た。
なお、アルケニルコハク酸ジカリウムは花王株式会社製の商品名「ラテムルASK」、t-ブチルヒドロペルオキシドは日油株式会社製の商品名「パーブチルH」、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトンは株式会社ダイセル製の商品名「プラクセルFM1」を使用した。
【0073】
得られたコアシェル重合体ラテックス(X-1)288.18部に、安定剤のエマルションを2.2部配合して、混合した。その後、酢酸カルシウム5部と脱イオン水173部を混合した水溶液を90℃にし、その水溶液中に安定剤エマルションを配合したコアシェル重合体ラテックス(X-1)を投入してスラリーを形成した。液温を95℃に昇温し5分保持することでスラリーを凝集させた。凝集物を回収し、脱イオン水1500部に浸し、脱水する工程を2度繰り返し、温度60℃で12時間乾燥して、コアシェル重合体(X-1)の粉体を得た。
コアシェル重合体(X-1)の平均一次粒子径を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
[製造例2~6]
<コアシェル重合体(X-2)~(X-5)、(B-2)>
グラフトの組成を表1に示す各成分に変更した以外は、製造例1と同様にしてコアシェル重合体(X-2)~(X-5)、(B-2)の粉体を得た。
得られたコアシェル重合体(X-2)~(X-5)、(B-2)の平均一次粒子径を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表中の略号は以下の通りである。また、表中のBd(ポリブタジエンゴムラテックス(B-1))の配合量は純分換算、すなわち仕込みモノマー成分としての量(部)である。
・Bd:ポリブタジエンゴムラテックス(B-1)。
・MMA:メチルメタクリレート。
・FM1:不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン(株式会社ダイセル製、商品名「プラクセルFM1」、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン1mol付加物、前記式(2)中、Rがメチル基であり、qが2であり、nが1であるビニル単量体(a1)に相当)。
・FM3:不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン(株式会社ダイセル製、商品名「プラクセルFM3」、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン3mol付加物、前記式(2)中、Rがメチル基であり、qが2であり、nが3であるビニル単量体(a1)に相当)。
・FM5:不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン(株式会社ダイセル製、商品名「プラクセルFM5」、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン5mol付加物、前記式(2)中、Rがメチル基であり、qが2であり、nが5であるビニル単量体(a1)に相当)。
【0077】
[実施例1]
コアシェル重合体(X-1)と、イソソルバイド骨格を有するポリカーボネート樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「DURABIO D7340R」、構成単位(c)の含有量70モル%)とを表2に示す組成で配合して混合し、混合物を得た。得られた混合物を、バレル温度240℃に加熱した脱揮式二軸押出機(株式会社池貝製、製品名「PCM-30」)に供給して混練し、コアシェル重合体が10質量%配合された実施例1の樹脂組成物のペレットを作製した。
得られたペレット状の樹脂組成物を用いて成形体を作製し、シャルピー衝撃試験、面衝撃試験及び引っかき硬度測定試験を行った。結果を表2に示す。
【0078】
[実施例2~6、比較例1及び2]
表2、3に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを作製し、シャルピー衝撃試験、面衝撃試験及び引っかき硬度測定試験を行った。結果を表2、3に示す。
【0079】
[比較例3及び4]
コアシェル重合体(X-1)又は(X-4)と、イソソルバイド骨格を有さないポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、商品名「ユーピロン S2000F」)を表3に示す組成で配合し、混合し、混合物を得た。得られた混合物を、バレル温度280℃に加熱した脱揮式二軸押出機(株式会社池貝製、製品名「PCM-30」)に供給して混練し、コアシェル重合体が10質量%配合された比較例3及び4の樹脂組成物のペレットを作製した。
得られたペレット状の樹脂組成物を用いて成形体を作製し、シャルピー衝撃試験、面衝撃試験及び引っかき硬度測定試験を行った。結果を表3に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
表中の略号は以下の通りである。
・DURABIO D7340R:イソソルバイド骨格を有するポリカーボネート樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「DURABIO D7340R」、構成単位(c)/1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位=70/30モル%、ガラス転移温度120℃)。ガラス転移温度は、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook(J.Brandrup,Interscience,1989)〕に記載されている値を用いてFOXの式から算出した。
・ユーピロン S2000F:イソソルバイド骨格を有さないポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、商品名「ユーピロン S2000F」)。
【0083】
本発明の樹脂組成物は、実施例1~6の結果より、高い引っかき硬度を有し、かつ、シャルピー衝撃強度と面衝撃強度のいずれも良好な成形体を提供できることが確認された。
比較例1の樹脂組成物は重合体(X)を含有しないため、シャルピー衝撃強度に劣ることが確認された。
比較例2では、構成単位(a1)を含まない重合体(B-2)を使用しているため、面衝撃強度に劣ることが確認された。
比較例3及び4では、イソソルバイド骨格を有さないポリカーボネート樹脂を使用しているため、引っかき硬度に劣ることが確認された。