(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144396
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】積層構造体、硬化物および画像表示装置用発光素子基板
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20241003BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20241003BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20241003BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B7/023
H05K3/28 C
H01L33/48
G02B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056418
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023056671
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中居 弘進
(72)【発明者】
【氏名】小山 尚人
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 悠斗
【テーマコード(参考)】
2H042
4F100
5E314
5F142
【Fターム(参考)】
2H042BA02
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2H042BA20
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(57)【要約】
【課題】画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化を改善し、かつ、消灯時の発光素子の隠蔽性を改善した被覆層を形成可能な積層構造体等を提供する。
【解決手段】第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層とを有する積層構造体であって、前記第1の熱硬化性樹脂層の、150℃60分加熱処理後での光波長450~750nmにおけるヘイズが12%以上であり、前記第2の熱硬化性樹脂層が無機充填剤を含むことを特徴とする積層構造体等である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層とを有する積層構造体であって、
前記第1の熱硬化性樹脂層の、150℃60分加熱処理後での光波長450~750nmにおけるヘイズが12%以上であり、
前記第2の熱硬化性樹脂層が無機充填剤を含むことを特徴とする積層構造体。
【請求項2】
第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層とを有する積層構造体であって、
前記第1の熱硬化性樹脂層が、カーボンブラックおよびチタンブラックの少なくとも1種以上と、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂とを含み、
前記第1の熱硬化性樹脂層が前記カーボンブラックを含む場合、その含有量は、前記第1の熱硬化性樹脂層中に、固形分全量基準で0.07質量%以下であり、
前記第1の熱硬化性樹脂層が前記チタンブラックを含む場合、その含有量は、前記第1の熱硬化性樹脂層中に、固形分全量基準で0.70質量%以上であり、
前記第2の熱硬化性樹脂層が無機充填剤を含むことを特徴とする積層構造体。
【請求項3】
画像表示装置用発光素子基板における発光素子の被覆層を形成する用途であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記第1の熱硬化性樹脂層の、150℃60分加熱処理後での光波長450~750nmにおける全光線透過率が30~80%であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項5】
前記第2の熱硬化性樹脂層が、第2の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で1~20質量%の無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項6】
前記無機充填剤がシリカであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項7】
前記第1の熱硬化性樹脂層が黒色着色剤を含むことを特徴とする請求項1記載の積層構造体。
【請求項8】
請求項1または2に記載の積層構造体の少なくとも片面が、フィルムで支持または保護されていることを特徴とする積層構造体。
【請求項9】
請求項1または2に記載の積層構造体を構成する前記第1の熱硬化性樹脂層および前記第2の熱硬化性樹脂層が硬化されたものであることを特徴とする硬化物。
【請求項10】
発光素子が請求項9に記載の硬化物を含む被覆層で被覆されたことを特徴とする画像表示装置用発光素子基板。
【請求項11】
発光素子が第1の樹脂硬化物層と第2の樹脂硬化物層を含む被覆層で被覆された画像表示装置用発光素子基板であって、
前記発光素子側から順に前記第2の樹脂硬化物層と前記第1の樹脂硬化物層が積層し、
前記第1の樹脂硬化物層の光波長450~750nmにおけるヘイズが12%以上であり、前記第2の樹脂硬化物層が無機充填剤を含むことを特徴とする画像表示装置用発光素子基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体、硬化物および画像表示装置用発光素子基板(以下、単に発光素子基板とも称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED等の発光素子を実装した発光素子基板を備えた画像表示装置が開発されている。発光素子基板の表面にはLED等の発光素子を保護するために、透明な硬化性の樹脂組成物からなる被覆層が形成されている(例えば、特許文献1、2等)。
【0003】
近年、画像表示装置の多用途化や高性能化などの市場のニーズの観点から、被覆層の改良が求められている。被覆層の改良の手段の1つとして、被覆層の多層化が挙げられる。例えば、特許文献3には、硬化物のヘイズが10%以下の封止材組成物からなる樹脂層と、エポキシ樹脂およびジシアンジアミドを含む封止材組成物からなる樹脂層とが積層された多層構造の積層構造体が開示されている。特許文献3に記載の積層構造体によれば、発光体の発光を阻害せず、かつ、消灯時に発光体を隠蔽することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-283385号公報
【特許文献2】特開2011-42762号公報
【特許文献3】特開2021-161413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載のような積層構造体を硬化して得られる被覆層では、発光素子を有する画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とで、発光時の色に違いが生じるという課題があることが分かった。また、画像表示装置の大型化や高精細化により発光素子の実装数が増加しているため、消灯時の発光素子の隠蔽性を改善するという課題もあった。
【0006】
そこで本発明の目的は、画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化を改善し、かつ、消灯時の発光素子の隠蔽性を改善した被覆層を形成可能な積層構造体、該積層構造体の硬化物、および、画像表示装置用発光素子基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した結果、発光時に色の違いが生じてしまう原因は、各色発光素子の発光の強度分布が異なるため、例えば、赤色の発光素子は全方向に均一に発光するのに対し、青色および緑色の発光素子は横方向に発光するため、斜め45°方向から見ると、正面から見た場合よりも青色および緑色の発光が強く見えてしまうことがあるためであるとわかった。そこで、消灯時の発光素子の隠蔽性も同時に改善するための構成をさらに鋭意検討した結果、熱硬化性樹脂層が複数積層した積層構造体において、第1の熱硬化性樹脂層の、150℃60分加熱処理後での光波長450~750nmにおけるヘイズを特定の値以上とし、かつ、第2の熱硬化性樹脂層が無機充填剤を含むことが必要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の積層構造体は、第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層とを有する積層構造体であって、前記第1の熱硬化性樹脂層の、150℃60分加熱処理後での光波長450~750nmにおけるヘイズが12%以上であり、前記第2の熱硬化性樹脂層が無機充填剤を含むことを特徴とするものである。
また、本発明の積層構造体は、第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層とを有する積層構造体であって、前記第1の熱硬化性樹脂層が、カーボンブラックおよびチタンブラックの少なくとも1種以上と、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂とを含み、前記第1の熱硬化性樹脂層が前記カーボンブラックを含む場合、その含有量は、前記第1の熱硬化性樹脂層中に、固形分全量基準で0.07質量%以下であり、前記第1の熱硬化性樹脂層が前記チタンブラックを含む場合、その含有量は、前記第1の熱硬化性樹脂層中に、固形分全量基準で0.70質量%以上であり、前記第2の熱硬化性樹脂層が無機充填剤を含むことを特徴とするものであってもよい。
本発明の積層構造体は、画像表示装置用発光素子基板における発光素子の被覆層を形成する用途であることが好ましい。
【0009】
本発明の積層構造体は、前記第1の熱硬化性樹脂層の、150℃60分加熱処理後での光波長450~750nmにおける全光線透過率が30~80%であることが好ましい。
【0010】
本発明の積層構造体は、前記第2の熱硬化性樹脂層が、第2の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で1~20質量%の無機充填剤を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の積層構造体は、前記無機充填剤がシリカであることが好ましい。
【0012】
本発明の積層構造体は、前記第1の熱硬化性樹脂層が黒色着色剤を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の積層構造体は、前記積層構造体の少なくとも片面が、フィルムで支持または保護されていることが好ましい。
【0014】
本発明の硬化物は、前記積層構造体を構成する前記第1の熱硬化性樹脂層および前記第2の熱硬化性樹脂層が硬化されたものであることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の画像表示装置用発光素子基板は、発光素子が前記硬化物を含む被覆層で被覆されたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の好ましい画像表示装置用発光素子基板は、発光素子が第1の樹脂硬化物層と第2の樹脂硬化物層を含む被覆層で被覆された画像表示装置用発光素子基板であって、前記発光素子側から順に前記第2の樹脂硬化物層と前記第1の樹脂硬化物層が積層し、前記第1の樹脂硬化物層の光波長450~750nmにおけるヘイズが12%以上であり、前記第2の樹脂硬化物層が無機充填剤を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化を改善し、かつ、消灯時の発光素子の隠蔽性を改善した被覆層を形成可能な積層構造体、該積層構造体の硬化物、および、画像表示装置用発光素子基板を提供することができる。また、本発明によれば、発光素子の消灯時の黒さにも優れる被覆層を形成可能な積層構造体、該積層構造体の硬化物、および、画像表示装置用発光素子基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の積層構造体の一実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】本発明の画像表示装置用発光素子基板の一実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[積層構造体]
本発明の積層構造体は、第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層とを有する積層構造体であって、第1の熱硬化性樹脂層の、150℃60分加熱処理後での光波長450~750nmにおけるヘイズが12%以上であり、第2の熱硬化性樹脂層が無機充填剤を含むことを特徴とするものである。第1の熱硬化性樹脂層の、150℃60分加熱処理後での光波長450~750nm、すなわち、可視光領域におけるヘイズが12%以上であり、かつ、第2の熱硬化性樹脂層が無機充填剤を含むことにより、画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化を少なくすることができるとともに、消灯時の発光素子の隠蔽性も同時に改善することができる。
【0020】
図1は、本発明の積層構造体の一実施形態を模式的に示した概略断面図である。
図1において、本発明の積層構造体1は、第1の熱硬化性樹脂層10と第2の熱硬化性樹脂層20とが積層した積層構造を有する。
図1において、第2の熱硬化性樹脂層20は第1の熱硬化性樹脂層10よりも厚い。本発明の積層構造体は、画像表示装置用発光素子基板における発光素子の被覆層を形成する用途に好適に用いられる。この用途において、第2の熱硬化性樹脂層が発光素子側になるように、即ち、第2の熱硬化性樹脂層が発光素子を直接被覆するように位置し、第1の熱硬化性樹脂層が第2の熱硬化性樹脂層の発光素子と反対側に位置していることが好ましい。
【0021】
本発明の積層構造体を構成する第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層の合計厚みは、例えば50~500μmであり、好ましくは100~400μmである。マイクロLED等の発光素子の被覆層を形成する用途においては、発光素子の高さよりも厚ければよく、発光素子の高さに応じて合計厚みを適宜設定すればよい。
【0022】
[第1の熱硬化性樹脂層]
前記ヘイズは、12%以上であり、好ましくは13%以上、より好ましくは14%以上である。前記ヘイズが高いほど、画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化を少なくすることができるとともに、消灯時の発光素子の隠蔽性も同時に向上させることができ、消灯時の黒さにも優れる。一方、前記ヘイズは、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下である。前記ヘイズが50%以下であることにより、第1の熱硬化性樹脂層の硬化物が白く濁るといった不都合を抑制することができる。このため、発光素子の消灯時の黒さをより改善することができる。なお、前記ヘイズとは、第1の熱硬化性樹脂層の、150℃60分加熱処理後での光波長450~750nmにおけるヘイズを意味する。
ここで、第1の熱硬化性樹脂層は、150℃60分加熱処理後での光波長450~750nmにおける全光線透過率が30~80%であることが好ましい。前記ヘイズが上記特定値以上であり、かつ、前記全光線透過率が30~80%であると、画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化をより少なくすることができ、かつ、消灯時の発光素子の隠蔽性もより改善することができ、消灯時の黒さにもより優れる。
なお、第1の熱硬化性樹脂層のヘイズおよび全光線透過率は、以下のようにして測定された値である。すなわち、第1の熱硬化性樹脂層形成用の熱硬化性樹脂組成物を、バーコーターを用いて、熱硬化性樹脂層の厚みが乾燥後に特定厚みになるようにフィルム(PETフィルム;東洋紡社製TN-200、厚さ38μm、大きさ30cm×30cm)(以下、フィルムAと称する)に塗布する。次いで、熱風循環式乾燥炉にて第1の熱硬化性樹脂層中に残留する有機溶剤が0.5~2.5質量%となるように70~120℃(平均100℃)にて5~10分間乾燥し、フィルムA上に第1の熱硬化性樹脂層を形成する。次いで、第1の熱硬化性樹脂層の表面に80℃の温度に設定したロールラミネーターを用いてフィルム(2軸延伸ポリプロピレンフィルム、OPP、アルファンFG-201、フィッシュアイレス、王子エフテックス社製)(以下、フィルムBと称する)を張り合せして、フィルムA/第1の熱硬化性樹脂層/フィルムBからなる評価用積層構造体を作製する。
作製した評価用積層構造体のフィルムB(OPP)を剥がし、厚み1mmのスライドガラス上に、真空ラミネーターMVLP-500(名機製作所社製)を用い張り合わせる。この条件は、ラミネート温度50~80℃、圧力0.3MPaとする。次いで、熱風循環式乾燥炉にて150℃で60分間加熱して熱硬化性樹脂層を硬化させて硬化物を得る。その後、硬化物の表面からフィルムAを剥離して、スライドガラス上に硬化物を有する評価用基板を得る。
評価用基板に形成された硬化物について、ヘイズメイターNDH7000II(日本電色工業社製)を用いて、光波長450~750nmにおける全光線透過率およびヘイズを測定する。なお、評価用積層構造体における第1の熱硬化性樹脂層の厚みは、本発明の積層構造体における第1の熱硬化性樹脂層の厚みと同一とする。
【0023】
第1の熱硬化性樹脂層の厚みは特に限定されないが、例えば、5~150μmであることが好ましく、5~100μmであることがより好ましい。
【0024】
(着色剤)
第1の熱硬化性樹脂層は、着色剤を含有することが好ましい。着色剤を含有することにより、前記ヘイズを12%以上に設定しやすくなる。着色剤としては、黒色着色剤、青色着色剤、赤色着色剤、黄色着色剤、緑色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤などが挙げられる。着色剤は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
着色剤の中でも、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄、酸化コバルト、ペリレン系黒色着色剤などの黒色着色剤が好ましい。特に、第1の熱硬化性樹脂層に含有される着色剤は、カーボンブラックおよびチタンブラックの少なくとも1種以上がより好ましい。第1の熱硬化性樹脂層が黒色着色剤を含有することにより、前記ヘイズを12%以上に容易に設定しやすくなる。このため、画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化をより少なくすることができ、かつ、消灯時の発光素子の隠蔽性もより改善することができ、消灯時の黒さにも優れる。
【0026】
カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックの1種または2種以上を用いることができる。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。カーボンブラックを配合する際は、カーボンブラック粉末を加えてもよいし、カーボンブラック分散液を加えてもよい。カーボンブラックの市販品の例としては、MA-100(三菱ケミカル社製)などが挙げられる。
【0027】
チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R、13R-N、13M-T(商品名:三菱マテリアル社製)、ティラック(Tilack)D TM-F、TM-A、TM-B、TS-A、TM-F、TS-M、TM-A-CSM、TS-A-CSM、TM-F-CSM、TS-M-CSM(商品名:赤穂化成社製)などが挙げられる。
【0028】
着色剤を含有する場合、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層中に、固形分全量基準で好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.02~8質量%、さらに好ましくは0.03~7質量%である。なお、第1の熱硬化性樹脂層に含有される着色剤は黒色着色剤であることが好ましいため、第1の熱硬化性樹脂層中の黒色着色剤の好ましい含有量は、上記と同様である。
【0029】
(熱硬化性樹脂)
第1の熱硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有することが好ましい。但し、第1の熱硬化性樹脂層に含まれる熱硬化性樹脂は、透明性の熱硬化性樹脂であればエポキシ樹脂以外であってもよい。エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する樹脂であり、従来公知のものをいずれも使用することができる。分子中にエポキシ基を2個有する2官能性エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を3個以上有する多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂は、固形エポキシ樹脂、半固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂の何れであってもよい。本明細書において、固形エポキシ樹脂とは40℃で固体状であるエポキシ樹脂をいい、半固形エポキシ樹脂とは20℃で固体状であり、40℃で液状であるエポキシ樹脂をいい、液状エポキシ樹脂とは20℃で液状のエポキシ樹脂をいう。液状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。例えば、特開2016-079384の段落23~25に記載の方法にて行なう。
【0030】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC社製のN-740等が挙げられる。
【0031】
エポキシ樹脂のなかでも、発光を阻害しないように硬化物の着色を少なくするため、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂を含有することが好ましい。脂環式骨格を有するエポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂のような芳香環を有するエポキシ樹脂の水添エポキシ樹脂であってもよい。脂環式骨格としては、例えば、シクロペンタン環、ジシクロペンタジエン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。脂環式骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製ST-6100、三菱ケミカル社製のYX8000等が挙げられる。
【0032】
エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂を含有する場合、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で例えば、10~60質量%である。
【0033】
また、本発明においては、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂を含有する場合は、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で、例えば、10~50質量%である。
【0034】
(熱可塑性樹脂)
第1の熱硬化性樹脂層は、熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂を含有することにより、厚膜の第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層を有する積層構造体を製造しやすくなる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ブロック共重合体、ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリンと各種2官能フェノール化合物の縮合物であるフェノキシ樹脂或いはその骨格に存在するヒドロキシエーテル部の水酸基を各種酸無水物や酸クロリドを使用してエステル化したもの等が挙げられる。
【0035】
フェノキシ樹脂の具体例としては、日鉄ケミカル&マテリアル社製のFX280、FX293、三菱ケミカル社製のYX8100、YX6954、YL6954、YL6974等が挙げられる。また、ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、積水化学工業社製のエスレックKSシリーズ、ポリアミド樹脂としては、レゾナック社製のKS5000シリーズ、日本化薬社製のBPシリーズ、さらに、ポリアミドイミド樹脂としては、レゾナック社製のKS9000シリーズ等が挙げられる。
【0036】
熱可塑性樹脂は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で、例えば、10~50質量%である。
【0037】
(硬化剤)
第1の熱硬化性樹脂層は、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤としては、第1の熱硬化性樹脂層に含有される熱硬化性樹脂と反応するものであればよく、例えば、ジシアンジアミド、フェノール性水酸基を有する化合物、酸無水物、チオール基を有する化合物、カルボキシル基含有樹脂等が挙げられる。これらの中でも、硬化剤はジシアンジアミドであることが好ましい。
【0038】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類、フェノール/ナフトール樹脂、α-ナフトール骨格含有フェノール樹脂、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ザイロック型フェノールノボラック樹脂等の従来公知のものを用いることができる。
【0039】
酸無水物としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の脂肪族または芳香族二塩基酸無水物;あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または芳香族四塩基酸二無水物などが挙げられる。
【0040】
チオール基を有する化合物は、一分子中に2個以上のチオール基を有する化合物である。チオール基を有する化合物は、従来公知のものをいずれも使用することができる。チオール基を有する化合物としては、例えば、TMMP;トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネ-ト)、PEMP;ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピネオート)、DPMP;ジペンタエリスリトールヘキサネス(3-メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
【0041】
カルボキシル基含有樹脂としては、例えば、カルボキシ基を有する共重合樹脂、カルボキシ基を有するウレタン樹脂、脂環式構造を有するカルボキシル基含有樹脂などが挙げられる。なお、カルボキシル基含有樹脂としては、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれでもよい。
【0042】
硬化剤は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化剤を含有する場合、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で、例えば、1~70質量%である。
【0043】
(硬化促進剤)
第1の熱硬化性樹脂層は、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤は、熱硬化反応を促進させるものであり、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させるために使用される。硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾールおよびイミダゾール誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩および/またはエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-キシリル-S-トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N-ベンジルジメチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N-メチルモルホリン、ヘキサ(N-メチル)メラミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン等の3級アミン類;m-アミノフェノール等のアミノフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス-2-シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ-n-ブチル(2,5-ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;スチレン-無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物、金属触媒等の従来公知の硬化促進剤が挙げられる。硬化促進剤としては、イミダゾールおよびその誘導体が好ましい。
【0044】
硬化促進剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化促進剤を含有する場合、その含有量は、特に硬化を促進したい場合には、熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.1~10質量部の範囲で用いることができる。金属触媒の場合、熱硬化性樹脂100質量部に対して金属換算で、例えば、10~550ppmである。
【0045】
(無機充填剤)
第1の熱硬化性樹脂層は、無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカなどのシリカ、タルク、クレー、ノイブルグ珪土粒子、ベーマイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられる。第1の熱硬化性樹脂層が無機充填剤を含有する場合、無機充填剤はシリカであることが好ましい。
【0046】
無機充填剤の平均粒子径は、0.1~10μmであることが好ましく、0.2~1μmであることがより好ましい。無機充填剤の平均粒子径が上記範囲であると、前記ヘイズを12%以上により設定しやすくなる。このため、画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化を容易に少なくすることができるとともに、消灯時の発光素子の隠蔽性も向上させることができ、消灯時の黒さにも優れる。ここで、平均粒子径とは、粒子径分布を体積基準で作製した際のD50の値のことをいい、レーザー回折式粒子径分布測定装置または動的光散乱法による測定装置により求めることができる。レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EXII、動的光散乱法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のNanotrac Wave II UT151が挙げられる。測定サンプルは、無機充填剤をPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)中に分散させたものを好ましく使用することができる。
【0047】
無機充填剤は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。無機充填剤を含有する場合、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で、例えば、0.1~10質量%である。
【0048】
(有機溶剤)
第1の熱硬化性樹脂層は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、2-メトキシプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等の他、テトラクロロエチレン、テレビン油等が挙げられる。また、丸善石油化学社製スワゾール1000、スワゾール1500、三共化学社製ソルベント#100、ソルベント#150、シェルケミカルズジャパン社製シェルゾールA100、シェルゾールA150、出光興産社製イプゾール100番、イプゾール150番等の有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いることができる。
【0049】
有機溶剤を含有する場合、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層中に、例えば、0.1~5質量%である。
【0050】
(その他の成分)
第1の熱硬化性樹脂層は、アクリル系、フッ素系、シリコン系等の消泡剤、レベリング剤、表面調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、界面活性剤、可塑剤、滑剤、流れ調整剤、増粘剤、増膜剤、密着性付与剤、離型剤、有機フィラー、ゴム状粒子、イオン吸着体、反応性希釈剤等の従来公知の添加剤類を含有することができる。
【0051】
[第2の熱硬化性樹脂層]
第2の熱硬化性樹脂層は、無機充填剤を含む。無機充填剤を含むことにより、消灯時の発光素子の隠蔽性を改善することができる。
第2の熱硬化性樹脂層は、加熱処理後のヘイズが80%以上であることが好ましく、82%以上であることがより好ましい。ヘイズが高いほど、画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化を少なくすることができるとともに、消灯時の発光素子の隠蔽性も同時に向上させることができ、消灯時の黒さにもより優れる。ここで、加熱処理後のヘイズの測定方法と測定条件、即ち、加熱処理温度と時間および光波長は、上記と同様である。
【0052】
第2の熱硬化性樹脂層の厚みは特に限定されないが、45~350μmであることが好ましく、95~300μmであることがより好ましい。
【0053】
(無機充填剤)
第2の熱硬化性樹脂層は、無機充填剤を含有する。無機充填剤としては、上記のものが挙げられ、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機充填剤の中でも、シリカが好ましい。
【0054】
無機充填剤の平均粒子径は、0.1~10μmであることが好ましく、0.2~1μmであることがより好ましい。ここで、平均粒子径およびその測定方法は、上記と同様である。第2の熱硬化性樹脂層に含有される無機充填剤の平均粒子径が上記範囲であると、第2の熱硬化性樹脂層の硬化物のヘイズを80%以上に設定しやすくなる。このため、画像表示装置を正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化を容易に少なくすることができるとともに、消灯時の発光素子の隠蔽性も向上させることができ、消灯時の黒さにも優れる。
【0055】
第2の熱硬化性樹脂層における無機充填剤の含有量は、第2の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で1~20質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましく、7~15質量%であることが特に好ましい。
【0056】
(着色剤)
第2の熱硬化性樹脂層は、着色剤を含有してもよく、無機充填剤とともに含有することが好ましい。着色剤としては、上記のものの他に白色着色剤が挙げられ、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。第2の熱硬化性樹脂層が着色剤を含有する場合、着色剤は、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄、酸化コバルト、ペリレン系黒色着色剤などの黒色着色剤であることが好ましい。
【0057】
着色剤を含有する場合、その含有量は、第2の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で0.01~3質量%であることが好ましく、0.01~2質量%であることがより好ましい。なお、第2の熱硬化性樹脂層に含有される着色剤は黒色着色剤であることが好ましいため、第2の熱硬化性樹脂層中の黒色着色剤の好ましい含有量は、上記と同様である。
【0058】
(熱硬化性樹脂)
第2の熱硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有することが好ましい。但し、第2の熱硬化性樹脂層に含まれる熱硬化性樹脂は、透明性の熱硬化性樹脂であればエポキシ樹脂以外であってもよい。エポキシ樹脂としては、上記のものが挙げられ、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。発光を阻害しないように硬化物の着色を少なくするため、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0059】
エポキシ樹脂を含有する場合、その含有量は、第2の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で、例えば、10~50質量%である。また、本発明においては、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂を含有する場合は、その含有量は、第2の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で、例えば、10~50質量%である。
【0060】
(熱可塑性樹脂)
第2の熱硬化性樹脂層は、熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂としては、上記のものが挙げられ、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。
【0061】
熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、第2の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で、例えば、10~50質量%である。
【0062】
(硬化剤)
第2の熱硬化性樹脂層は、硬化剤を含有してもよい。硬化剤としては、上記のものが挙げられ、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤は、ジシアンジアミドであることが好ましい。
【0063】
硬化剤を含有する場合、その含有量は、第2の熱硬化性樹脂層の固形分全量基準で、例えば、1~70質量%である。
【0064】
(硬化促進剤)
第2の熱硬化性樹脂層は、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、上記のものが挙げられ、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤は、イミダゾールおよびその誘導体が好ましい。
【0065】
硬化促進剤を含有する場合、その含有量は、特に硬化を促進したい場合には、熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.1~10質量部の範囲で用いることができる。金属触媒の場合、熱硬化性樹脂100質量部に対して金属換算で、例えば、10~550ppmである。
【0066】
(有機溶剤)
第2の熱硬化性樹脂層は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、上記のものが挙げられ、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
有機溶剤を含有する場合、その含有量は、第2の熱硬化性樹脂層中に、例えば、0.1~5質量%である。
【0068】
(その他の成分)
第2の熱硬化性樹脂層は、その他の成分を含有してもよい。その他の成分は、上記と同様である。
【0069】
本発明の好ましい積層構造体は、第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層とを有する積層構造体であって、第1の熱硬化性樹脂層が、カーボンブラックおよびチタンブラックの少なくとも1種以上と、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂とを含み、第1の熱硬化性樹脂層がカーボンブラックを含む場合、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層中に、固形分全量基準で0.07質量%以下であり、第1の熱硬化性樹脂層がチタンブラックを含む場合、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層中に、固形分全量基準で0.70質量%以上であり、第2の熱硬化性樹脂層が無機充填剤を含むことを特徴とするものである。
【0070】
本発明の好ましい積層構造体において、第1の熱硬化性樹脂層は、カーボンブラックおよびチタンブラックの少なくとも1種以上を含有することが好ましい。第1の熱硬化性樹脂層がカーボンブラックを含む場合、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層中に、固形分全量基準で0.07質量%以下であることが好ましく、また、0.01質量%以上であることが好ましい。第1の熱硬化性樹脂層がチタンブラックを含む場合、その含有量は、第1の熱硬化性樹脂層中に、固形分全量基準で0.70質量%以上であることが好ましく、また、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが特に好ましい。
【0071】
本発明の積層構造体は、発光素子用被覆層の形成に好ましく用いることができる。また、発光素子としては、LED、有機EL等の発光体が挙げられる。なかでも、マイクロLEDの封止に好適に用いることができる。また、発光素子の発光色は特に限定されないが、赤色、緑色、青色の場合、本発明の効果を好適に発揮することができる。
【0072】
本発明の積層構造体は、少なくとも片面が、フィルムで支持または保護された形態であってもよい。フィルムとしては、以下の第1のフィルムまたは第2のフィルムを用いればよい。
【0073】
第1のフィルムとは、積層構造体の第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層を支持する役割を有するものである。第1のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、および、表面処理した紙等を用いることができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムを好適に使用することができる。第1のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。第1のフィルムの第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層側の面には、離型処理が施されていてもよい。
【0074】
第2のフィルムとは、積層構造体の第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層を保護する目的で、第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層の第1のフィルムとは反対側の面に設けられるものである。第2のフィルムとしては、例えば、前記第1のフィルムで例示した熱可塑性樹脂からなるフィルム、および、表面処理した紙等を用いることができるが、これらの中でも、ポリエステルフィルムおよびポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましい。第2のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。第2のフィルムの第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層側の面には、離型処理が施されていてもよい。
【0075】
本発明の積層構造体の製造方法は特に限定されず、公知慣用の方法で製造すればよい。積層構造体の少なくとも片面がフィルムで支持または保護されている積層構造体の場合、例えば、第1のフィルム上に、第1または第2の熱硬化性樹脂層用の熱硬化性樹脂組成物のどちらかを塗布して乾燥した後、その上にもう一方の熱硬化性樹脂組成物を塗布した後に乾燥し、積層構造体を製造することができる。なお、この積層構造体の第1のフィルムと反対側には、第2のフィルムをさらに積層してもよい。他の製造方法の例としては、フィルム上に形成された第1の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムと、フィルム上に形成された第2の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムとをそれぞれ予め作製する。この後、これらのドライフィルムを、第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層が接するように積層することで、フィルムで両面が支持または保護された積層構造体を形成することができる。
また、発光素子基板上に積層構造体を直接製造してもよい。例えば、第2の熱硬化性樹脂層用の熱硬化性樹脂組成物を発光素子基板上に塗布、乾燥することによって、第2の熱硬化性樹脂層を形成する。この後、第2の熱硬化性樹脂層上に第1の熱硬化性樹脂層用の熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥する。これにより、発光素子基板上に本発明の第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層とを有する積層構造体を直接製造することができる。
また、2種類のドライフィルムを使用して発光素子基板上に積層構造体を製造してもよい。すなわち、フィルム上に形成された第1の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムと、フィルム上に形成された第2の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムとをそれぞれ予め作製する。この後、第2の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムを、第2の熱硬化性樹脂層が発光素子基板を被覆するように積層する。この第2の熱硬化性樹脂層上のフィルムを剥離した後、第2の熱硬化性樹脂層の表面に第1の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムを積層する。これにより、2種類のドライフィルムを使用して発光素子基板上に本発明の第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層とを有する積層構造体を製造することができる。
【0076】
[硬化物]
本発明の硬化物は、積層構造体を構成する第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層が硬化されたものである。硬化条件は、例えば120~200℃の温度で30~90分間加熱すればよく、好ましくは150℃60分間加熱する。加熱方法としては、公知慣用の方法を使用することができ、例えば、熱風循環式乾燥炉、オーブンまたは熱板プレス等を使用すればよい。本発明の硬化物は、発光素子基板の発光素子を被覆するための被覆層として好適に用いることができる。
【0077】
[画像表示装置用発光素子基板]
本発明の画像表示装置用発光素子基板は、発光素子が本発明の積層構造体の硬化物を含む被覆層で被覆されたことを特徴とするものである。なお、被覆層は、本発明の効果を奏する範囲において本発明の積層構造体の硬化物以外の硬化性樹脂組成物の硬化物をさらに有していてもよい。
【0078】
本発明の好ましい画像表示装置用発光素子基板は、発光素子が第1の樹脂硬化物層と第2の樹脂硬化物層を含む被覆層で被覆された発光素子基板であって、発光素子側から順に第2の樹脂硬化物層と第1の樹脂硬化物層が積層し、第1の樹脂硬化物層の光波長450~750nmにおけるヘイズが12%以上であり、第2の樹脂硬化物層が無機充填剤を含むことを特徴とするものである。
第1の樹脂硬化物層および第2の樹脂硬化物層はそれぞれ、本発明の積層構造体の第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層の硬化物であることが好ましい。第1の樹脂硬化物層と第2の樹脂硬化物層の合計厚みは、発光素子の高さよりも厚ければよく、例えば50~500μmであり、好ましくは100~400μmである。第1の樹脂硬化物層と第2の樹脂硬化物層の合計厚みは、発光素子の高さに応じて合計厚みを適宜設定すればよい。
第1の樹脂硬化物層の光波長450~750nmにおけるヘイズは、12%以上であり、好ましくは13%以上、より好ましくは14%以上である。一方、前記ヘイズは、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下である。また、第1の樹脂硬化物層の光波長450~750nmにおける全光線透過率は、30~80%であることが好ましい。第1の熱硬化性樹脂層の厚みは特に限定されないが、例えば、5~150μmであることが好ましく、5~100μmであることがより好ましい。第2の樹脂硬化物層の光波長450~750nmにおけるヘイズは、80%以上であることが好ましく、82%以上であることがより好ましい。第2の熱硬化性樹脂層の厚みは特に限定されないが、45~350μmであることが好ましく、95~300μmであることがより好ましい。
本発明の好ましい発光素子基板は、本発明の第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層を有する積層構造体を用いて容易に製造することができる。すなわち、本発明の積層構造体が、第1のフィルム、第1の熱硬化性樹脂層、第2の熱硬化性樹脂層および第2のフィルムをこの順に有する場合、第2の熱硬化性樹脂層の表面から第2のフィルムを剥離し、発光素子基板上に、第2の熱硬化性樹脂層が発光素子を被覆するように積層した後、硬化させる。これにより、第1の樹脂硬化物層と第2の樹脂硬化物層を含む被覆層を形成する。次いで、第1のフィルムを剥離する。このようにして、発光素子が第1の樹脂硬化物層と第2の樹脂硬化物層を含む被覆層で被覆された発光素子基板を製造することができる。なお、本発明の好ましい発光素子基板は、他の製造方法で製造してもよい。すなわち、発光素子基板上に、熱硬化性樹脂組成物を塗布および乾燥して発光素子を被覆するように第2の熱硬化性樹脂層を形成する。この後、第2の熱硬化性樹脂層の上に、熱硬化性樹脂組成物を塗布および乾燥して第1の熱硬化性樹脂層を形成する。そして、第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層を同時に硬化させて被覆層を形成する。これにより、発光素子が第1の樹脂硬化物層と第2の樹脂硬化物層を含む被覆層で被覆された発光素子基板を製造することができる。また、2種類のドライフィルムを使用して発光素子が被覆層で被覆された発光素子基板を製造してもよい。すなわち、フィルム上に形成された第1の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムと、フィルム上に形成された第2の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムとをそれぞれ予め作製する。この後、第2の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムを、第2の熱硬化性樹脂層が発光素子を被覆するように積層する。この第2の熱硬化性樹脂層上のフィルムを剥離した後、第2の熱硬化性樹脂層の表面に第1の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムを積層する。そして、第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層を同時に硬化させて第1の樹脂硬化物層と第2の樹脂硬化物層を含む被覆層を形成する。次いで、被覆層上のフィルムを剥離する。これにより、2種類のドライフィルムを使用して発光素子が第1の樹脂硬化物層と第2の樹脂硬化物層を含む被覆層で被覆された発光素子基板を製造することができる。
【0079】
図2は、本発明の画像表示装置用発光素子基板の一実施形態を模式的に示した概略断面図である。
図2の発光素子基板3は、基板40上の赤色、緑色および青色の発光素子30、31、32が、本発明の積層構造体の第1の熱硬化性樹脂層を硬化して形成した第1の樹脂硬化物層11および第2の熱硬化性樹脂層を硬化して形成した第2の樹脂硬化物層21を含む被覆層で被覆されたものである。
図2において、第2の樹脂硬化物層21は第1の樹脂硬化物層11よりも厚い。また、第2の樹脂硬化物層21は、赤色、緑色および青色の発光素子30、31、32よりも厚く、それら発光素子30、31、32の表面を覆っている。
【実施例0080】
以下、本発明の実施例、比較例および試験例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、特に断りのない限り全て質量部である。
【0081】
(配合例1~18)
下記表1、2に示す処方にて各成分を配合し、3本ロールで分散し、配合例1~18の熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0082】
<実施例1の積層構造体の作製方法>
配合例3の熱硬化性樹脂組成物を、バーコーターを用いて、第1の熱硬化性樹脂層の厚みが乾燥後50μmになるようにフィルム(PETフィルム;東洋紡社製TN-200、厚さ38μm、大きさ30cm×30cm)(以下、フィルムAと称する)に塗布した。次いで、熱風循環式乾燥炉にて第1の熱硬化性樹脂層中に残留する有機溶剤が0.5~2.5質量%となるように70~120℃(平均100℃)にて5~10分間乾燥し、フィルムA上に第1の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムを作製した。次いで、作製したドライフィルムの表面に80℃の温度に設定したロールラミネーターを用いてフィルム(2軸延伸ポリプロピレンフィルム、OPP、アルファンFG-201、フィッシュアイレス、王子エフテックス社製)(以下、フィルムBと称する)を張合せして、フィルムA/第1の熱硬化性樹脂層(厚み:50μm)/フィルムBの3層構造のドライフィルムを作製した。
配合例13の熱硬化性樹脂組成物を、バーコーターを用いて第2の熱硬化性樹脂層の厚みが乾燥後150μmになるようにフィルム(PETフィルム;東洋紡社製TN-200、厚さ38μm、大きさ30cm×30cm)(以下、フィルムCと称する)に塗布した。次いで、熱風循環式乾燥炉にて第2の熱硬化性樹脂層中に残留する有機溶剤が0.5~2.5質量%となるように70~120℃(平均100℃)にて5~10分間乾燥し、フィルムC上に第2の熱硬化性樹脂層を有するドライフィルムを作製した。次いで、作製したドライフィルムの表面に80℃の温度に設定したロールラミネーターを用いてフィルム(2軸延伸ポリプロピレンフィルム、OPP、アルファンFG-201、フィッシュアイレス、王子エフテックス社製)(以下、フィルムDと称する)を張合せして、フィルムC/第2の熱硬化性樹脂層(厚み:150μm)/フィルムDの3層構造のドライフィルムを作製した。
配合例3を使用して得られたドライフィルムのフィルムBと、配合例13を使用して得られたドライフィルムのフィルムDを剥がし、第1の熱硬化性樹脂層と第2の熱硬化性樹脂層を50℃でロールラミネーターを使用して張合わせた。
これにより、フィルムA/第1の熱硬化性樹脂層(発光素子に接しない側の樹脂層)/第2の熱硬化性樹脂層(発光素子に接する側の樹脂層)/フィルムCの4層構造の積層構造体を得た。
【0083】
<実施例2~10、比較例1~6の積層構造体および発光素子基板の作製方法>
表3、4に示す熱硬化性樹脂組成物の配合例および熱硬化性樹脂層の厚みとした以外は、実施例1と同様に、積層構造体を作製した。
【0084】
<ヘイズおよび全光線透過率の評価用基板の作製>
配合例3の熱硬化性樹脂組成物を、バーコーターを用いて、熱硬化性樹脂層の厚みが乾燥後50μmになるようにフィルム(PETフィルム;東洋紡社製TN-200、厚さ38μm、大きさ30cm×30cm)(以下、フィルムAと称する)に塗布した。次いで、熱風循環式乾燥炉にて熱硬化性樹脂層中に残留する溶剤が0.5~2.5質量%となるように70~120℃(平均100℃)にて5~10分間乾燥し、フィルムA上に熱硬化性樹脂層を形成した。ついで、熱硬化性樹脂層の表面に80℃の温度に設定したロールラミネーターを用いてフィルム(2軸延伸ポリプロピレンフィルム、OPP、アルファンFG-201、フィッシュアイレス、王子エフテックス社製)(以下、フィルムBと称する)を張合せして、フィルムA/熱硬化性樹脂層(厚み:50μm)/フィルムBからなる評価用積層構造体を作製した。
作製した評価用積層構造体のフィルムB(OPP)を剥がし、厚み1mmのスライドガラス上に、真空ラミネーターMVLP-500(名機製作所社製)を用い張りあわせた。条件は、ラミネート温度50~80℃、圧力0.3MPaとした。ついで、熱風循環式乾燥炉にて100℃で30分間加熱後、さらに150℃で60分間加熱して熱硬化性樹脂層を硬化させて硬化物を得た。その後、硬化物の表面からフィルムAを剥離して、スライドガラス上に硬化物を有する評価用基板を得た。なお、100℃にて30分間加熱した理由は、熱硬化性樹脂層に残留する有機溶剤が多い場合、150℃にて60分間加熱して硬化させる際に発泡するおそれがあるためであり、100℃にて30分間加熱するという条件は必要条件では無い。
表3、4に示す熱硬化性樹脂組成物の配合例および熱硬化性樹脂層の厚みとした以外は上記と同様にして、配合例1~18の熱硬化性樹脂組成物からなる評価用積層構造体をそれぞれ作製した。また、上記と同様にして、それら評価用積層構造体を用いてスライドガラス上に硬化物を有する評価用基板を得た。
【0085】
<ヘイズおよび全光線透過率の測定方法>
評価用基板に形成された硬化物について、ヘイズメイターNDH7000II(日本電色工業社製)を用いて、光波長450~750nmにおける全光線透過率およびヘイズを測定した。得られたヘイズおよび全光線透過率の数値を表3、4に示す。
【0086】
<発光素子基板の作製方法>
赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子として、それぞれ縦200μm×横100μm×高さ75μm、バンプ高さ30μmのものを準備した。次いで、予め配線加工したFR-4基板上に、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子の順に横方向に150μmピッチで並べることにより、1組の発光素子基板を準備した。次いで、1mmピッチとなるように縦10組×横10組のグリッド状に組み合わせて、評価基板としての発光素子が実装された基板、すなわち、発光素子基板を作製した。
【0087】
<実施例1の積層構造体からなる被覆層で被覆された発光素子基板の作製方法>
実施例1の積層構造体のフィルムCを剥がし、発光素子基板上に、真空ラミネーターMVLP-500(名機製作所製)を用いて第2の熱硬化性樹脂層側から張合わせた。これにより、発光素子基板上に第2の熱硬化性樹脂層と第1の熱硬化性樹脂層とをこの順に有する積層構造体を得た。真空ラミネーターの条件は、ラミネート温度50~80℃、圧力0.3MPaとした。次いで、熱風循環式乾燥炉にて100℃にて30分間加熱し、さらに150℃にて60分間加熱して第1の熱硬化性樹脂層および第2の熱硬化性樹脂層を硬化させた。この後、フィルムAを剥離して、発光素子が第2の樹脂硬化物層と第1の樹脂硬化物層を含む被覆層により被覆された発光素子基板を作製した。なお、100℃にて30分間加熱した理由は、第2の熱硬化性樹脂層と第1の熱硬化性樹脂層とに残留する有機溶剤が多い場合、150℃にて60分間加熱して硬化させる際に発泡するおそれがあるためであり、100℃にて30分間加熱するという条件は必要条件では無い。
【0088】
<実施例2~10、比較例1~6の積層構造体からなる被覆層で被覆された発光素子基板の作製方法>
実施例2~10、比較例1~6の積層構造体を用いた以外は、実施例1と同様に、発光素子基板を作製した。
【0089】
<発光時の正面と斜め45°方向から見た場合との色の差>
被覆層で被覆された発光素子基板の全ての発光素子を点灯させ、基板正面および斜め45°の方向から目視により発光色に差があるかを観察した。
◎:差がないと回答した人が10人中10人である。
○:差がないと回答した人が10人中5~9人である。
×:差がないと回答した人が10人中4人以下である。
【0090】
<消灯時の黒さ>
上記の色の差の評価で使用した発光素子基板を用いて、消灯時の黒さを基板正面から観察した。
◎:黒いと回答した人が10人中10人である。
○:黒いと回答した人が10人中5~9人である。
×:黒いと回答した人が10人中4人以下である。
【0091】
<消灯時の発光素子の隠蔽性>
上記の色の差の評価で使用した発光素子基板を用いて、消灯時の発光素子の見えにくさを基板正面から観察した。
◎:見えにくいと回答した人が10人中10人である。
○:見えにくいと回答した人が10人中5~9人である。
×:見えにくいと回答した人が10人中4人以下である。
【0092】
【0093】
※1:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製)
※2:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製)
※3:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製)
※4:フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製)(シクロヘキサノンとメチルエチルケトンの混合溶媒、固形分量30質量%)
※5:ジシアンジアミド(三菱ケミカル社製)
※6:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業社製)
※7:カーボンブラック、黒色着色剤(三菱ケミカル社製)
※8:チタンブラック、黒色着色剤(赤穂化成社製)
※9:シリカ(アドマテックス社製)(平均粒子径:0.5μm)
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
上記表3、4に示す結果から、実施例1~10の積層構造体は、正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化を改善し、かつ、消灯時の発光素子の隠蔽性を改善した被覆層を形成できることが分かる。また、上記表3、4に示す結果から、実施例1~10の積層構造体は、発光素子の消灯時の黒さにも優れる被覆層を形成できることが分かる。これに対し、比較例1~6の積層構造体は、発光時の正面から見た場合と斜め45°方向から見た場合とにおける発光素子の発光時の色の変化を改善できなかった。また、比較例1~3の積層構造体は、消灯時の黒さを改善できなかった。さらに、比較例1、6の積層構造体は、消灯時の発光素子の隠蔽性を改善できなかった。