(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144779
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進剤、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/513 20060101AFI20241003BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20241003BHJP
A61K 31/7012 20060101ALI20241003BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20241003BHJP
A61K 31/194 20060101ALI20241003BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20241003BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20241003BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20241003BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K31/513
A61K31/198
A61K31/7012
A61K31/455
A61K31/194
A61K31/7068
A61K31/19
A61P17/16
A61Q19/00
A61K8/49
A61K8/44
A61K8/60
A61K8/365
A61K8/67
A61P43/00 107
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024132445
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2020023549の分割
【原出願日】2020-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】南田 美佳
(72)【発明者】
【氏名】川上 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】岩竹 美和
(72)【発明者】
【氏名】桑原 浩誠
(72)【発明者】
【氏名】小西 正敏
(72)【発明者】
【氏名】奥田 洋
(72)【発明者】
【氏名】大戸 信明
(57)【要約】
【課題】作用効果に優れたヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進剤、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進剤、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤を提供する。
【解決手段】本発明により、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸およびウリジンからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とするヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進剤、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進剤、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸およびニコチンアミドからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とするセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進剤。
【請求項2】
グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジンおよびウリジンからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とするアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤。
【請求項3】
シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸および3-ヒドロキシ酪酸からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とするクローディン-1 mRNA発現促進剤。
【請求項4】
シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸およびクエン酸からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とするクローディン-4 mRNA発現促進剤。
【請求項5】
シトシン、トリメチルグリシン、クエン酸、3-ヒドロキシ酪酸およびグリセリン酸からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とするオクルディン mRNA発現促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進剤、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進剤、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚の表皮および真皮は、表皮細胞、線維芽細胞ならびにこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては線維芽細胞の増殖は活発であり、線維芽細胞、細胞外マトリックス成分等の皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
【0003】
ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲン、エラスチンおよびヒアルロン酸の産生量が減少するとともに、分解や変質を引き起こす。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が生じるため、肌は張りや艶を失い、肌荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの変化、弾力性の低下等には、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等のマトリックス成分の減少・変性等が関与している。したがって、コラーゲン、エラスチンまたはヒアルロン酸の産生を促進することは、皮膚の老化を予防、治療または改善する上で重要である。
【0004】
前述した細胞外マトリックス成分のうち、ヒアルロン酸は、ムコ多糖の一種であり、細胞間の間隙に充填されることにより細胞を保持する機能を有し、さらに細胞間隙への水分の保持、組織への潤滑性や柔軟性の付与、機械的障害等の外力に対する抵抗等、数多くの機能を有している。ヒアルロン酸の産生を促進することができれば、皮膚の荒れ、しわ、くすみ、きめの変化、弾力性の低下及び保湿機能の低下等といった皮膚の老化症状を予防、治療または改善できると考えられる。また、表皮ヒアルロン酸の合成促進に関与するヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)の発現を促進することで、皮膚の老化を予防、治療または改善することができるものと考えられる。現在までにヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用を有するものとして、甘草葉部抽出物(特許文献1参照)等が知られている。
【0005】
セラミドは、表皮細胞の角化の過程においてセリンとパルミトイル-CoAとを基に、セラミド合成の律速酵素として知られるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)をはじめとする酵素の働きにより生成される。セラミドは、皮膚最外層を覆う角質細胞間脂質の主成分として特異的に存在し、皮膚本来が持つ生体と外界とのバリア膜としての機能維持に重要な役割を果たしている。
【0006】
角質層の構造は、レンガとモルタルとに例えられ、15層ほどに積み重なった角質細胞を細胞間脂質が繋ぎ止める形で強固なバリア膜を形成している。角質細胞は、アミノ酸を主成分とする天然保湿因子を細胞内に含有することによって水分を保持し、一方、角質細胞間脂質は、約50%のセラミドを主成分とし、コレステロール、脂肪酸等の両親媒性脂質から構成されており、疎水性部分と親水性部分とが交互に繰り返される層板構造、いわゆるラメラ構造を特徴としている。
【0007】
様々な内的・外的要因による皮膚のバリア機能の低下は、経表皮水分蒸散量を増加させ、皮膚のかさつき、落屑、掻痒感等を惹き起こし、いわゆる乾燥肌に陥る。また、皮膚のバリア機能の低下は、皮膚の炎症を増大させ、外界からの様々な刺激に対する防御機能が低下するという悪循環に陥る。最近の研究において、加齢により、またはバリア障害として知られるアトピー性皮膚炎患者において、角質セラミド成分(いわゆる細胞間脂質)の減少や組成変化が報告されており(非特許文献1参照)、皮膚のバリア機能の維持、改善にセラミドが重要であることが広く知られるようになっている。皮膚のバリア機能を改善する方法として、セラミドを外部から補う方法(非特許文献2参照)や皮膚内部においてセラミド産生能を高める方法(非特許文献3参照)等が知られている。
【0008】
皮膚細胞では、水チャンネルとして知られるアクアポリンが、細胞膜上に発現して、細胞間隙の水をはじめとする低分子物質を細胞内へ取り込む役割を担っていることが知られている。ヒトでは、13種類のアクアポリン(AQP0~AQP12)の存在が知られている。表皮細胞においては、主としてAQP3が存在しており、水に加えて、水分保持作用に関与するグリセロールや尿素等の低分子化合物をも取り込む役割を担っていると考えられている。
【0009】
しかしながら、AQP3は加齢とともに減少し、このことが水分保持機能の低下の一因であることが示唆されているため、AQP3の発現を促進することにより、加齢による水分保持能やバリア機能等を制御することが可能であると考えられる(非特許文献4参照)。AQP3発現促進作用を有するものとして、例えば、スターフルーツの葉部からの抽出物(特許文献2参照)等が知られている。
【0010】
生体においてその内と外とを隔てる構造の一つに、上皮細胞から構成される上皮組織がある。上皮組織は、物質透過を制御するバリア機能を有しており、これにより生体において外界とは異なる内部環境を作り上げている。このようなバリア機能は、主に細胞間の接着により形成されるが、かかる接着の一つがタイトジャンクション(以下「TJ」と表記することがある。)である。TJは、隣接する上皮細胞同士を密着させるだけでなく、細胞と細胞との隙間をシールすることで物質の透過を制御する細胞間接着構造である。TJを構成しているのは、細胞膜タンパク質であるクローディンやオクルディン、裏打ちタンパク質であるZO-1やZO-2等であり、これらのタンパク質はTJストランドの骨格を構成し、TJのバリア機能を制御すると考えられている(非特許文献5参照)。
【0011】
現在までクローディンは20種以上のクローディン分子が報告され、クローディンファミリーを形成している。これらは組織特異的な発現パターンを示すことが分かっており、表皮においてはクローディン-1およびクローディン-4が発現している。クローディン-4は粘膜上皮においても多く発現しており、身体の内外で異物の侵入を防ぐバリアとして機能している。
【0012】
クローディンやオクルディンの発現が何らかの原因で減少した場合、TJの機能低下を引き起こす。例えば、消化管においてTJの機能が低下すると、食物アレルゲンや病原性微生物等が体内へ侵入してしまい、炎症性腸疾患や各種感染症などの一因になると考えられる。また、従来は、皮膚のバリア機能は角質層のみが担っていると考えられていたが、近年、表皮顆粒層に存在するTJの構成タンパク質を遺伝子レベルで欠損させると皮膚のバリア機能が崩壊することが見いだされ、TJも皮膚のバリア機能に重要な役割を担うと考えられるようになっている(非特許文献6参照)。ここで、クローディンやオクルディン等の発現が何らかの原因で減少した場合、TJの構造的な破壊が起こり、物質の透過バリアとして機能しなくなることによって、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎などの皮膚症状や各種感染症などの一因になると考えられる。
【0013】
そのため、クローディンやオクルディンの産生促進などを通じてTJの機能を強化することで、上皮組織におけるバリア機能を強化し、消化管においては炎症性腸疾患や食物アレルギー、各種感染症などを予防または改善することができ、一方、表皮においては乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎や各種感染症などの皮膚症状を予防または改善することができると考えられる。クローディン-1産生促進作用およびオクルディン産生促進作用を有するものとして、アスパラサスリネアリス抽出物(特許文献3)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010-090035号公報
【特許文献2】特開2009-191039号公報
【特許文献3】特開2009-256244号公報
【0015】
【非特許文献1】J. Dermatol.,1993年,Vol.20,No.1,p.1-6
【非特許文献2】「フレグランスジャーナル」,2004年,Vol.32,No.11,p.23-32
【非特許文献3】Br. J. Dermatol.,2000年,Vol.143,Issue 3,p.524-531
【非特許文献4】「フレグランスジャーナル」,2006年,Vol.34,No.10,p.19-23
【非特許文献5】日本香粧品科学会誌,2007年,vol.31,pp.296-301
【非特許文献6】J. Cell Biol.,2002年,vol.156,pp.1099-1111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、作用効果に優れたヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進剤、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進剤、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミドおよびシチジンからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸およびニコチンアミドからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明のアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤は、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジンおよびウリジンからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明のクローディン-1 mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸および3-ヒドロキシ酪酸からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明のクローディン-4 mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸およびクエン酸からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明のオクルディン mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、クエン酸、3-ヒドロキシ酪酸およびグリセリン酸からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、作用効果に優れたヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進剤、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進剤、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
〔HAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤、オクルディン mRNA発現促進剤〕
本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミドおよびシチジンからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とするものである。
本実施形態のSPT mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸およびニコチンアミドからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とするものである。
本実施形態のAQP3 mRNA発現促進剤は、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジンおよびウリジンからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とするものである。
本実施形態のクローディン-1 mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸および3-ヒドロキシ酪酸からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とするものである。
本実施形態のクローディン-4 mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸およびクエン酸からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とするものである。
本実施形態のオクルディン mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、クエン酸、3-ヒドロキシ酪酸およびグリセリン酸からなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とするものである。
【0025】
本実施形態において使用されるシトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸およびウリジンは市販されているため、これを用いてもよい。また、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸またはウリジンを含有する植物抽出物から公知の方法にて単離・精製することにより製造してもよく、また公知の方法にて合成することにより製造してもよい。なお、上記植物抽出物には、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸またはウリジンを含有する植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0026】
シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸またはウリジンを含有する植物としては、特に限定されないが、例えばコメが挙げられる。
【0027】
上記植物抽出物は、微生物による発酵に付されてもよい。発酵処理は、例えば、濃縮乾固した植物抽出物を水に溶解し、または植物抽出物を濃縮乾固せずにそのまま用い、発酵を行う微生物を接種することにより、行うことができる。
【0028】
発酵を行う微生物は、特に限定されず、乳酸菌、酵母、麹菌などが挙げられるが、酵母であることが好ましく、特にサッカロミセス・ヴェローナであることが好ましい。
【0029】
本実施形態において使用される、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸およびウリジンは、優れたHAS3 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、クローディン-1 mRNA発現促進作用、クローディン-4 mRNA発現促進作用またはオクルディン mRNA発現促進作用を有しているため、HAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤またはオクルディン mRNA発現促進剤の有効成分として用いることができる。本実施形態に係るHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品等の幅広い用途に使用することができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸およびウリジンのうちいずれか一つをHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤またはオクルディン mRNA発現促進剤の有効成分として用いてもよいし、これら2種以上を混合して上記有効成分として用いてもよい。シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸またはウリジンの2種以上を混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸およびウリジンが有するHAS3 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、クローディン-1 mRNA発現促進作用、クローディン-4 mRNA発現促進作用またはオクルディン mRNA発現促進作用の程度等により適宜調整すればよい。
【0031】
本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸もしくはウリジン、またはこれらの混合物のみからなるものであってもよいし、これらの有効成分を製剤化したものであってもよい。
【0032】
本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。HAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤は、他の組成物(例えば、後述する皮膚外用剤、経口組成物等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0033】
本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤を製剤化した場合、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸もしくはウリジン、またはこれらの混合物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0034】
なお、本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤は、必要に応じて、HAS3 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、クローディン-1 mRNA発現促進作用、クローディン-4 mRNA発現促進作用またはオクルディン mRNA発現促進作用を有する他の物質(例えば、天然抽出物等)を、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸もしくはウリジン、またはこれらの混合物とともに配合して有効成分として用いることができる。
【0035】
本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0036】
本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミドおよびシチジンが有するHAS3 mRNA発現促進作用を通じて、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)の発現を促進することができるため、それによりヒアルロン酸の生成が促進され、皮膚の荒れ、しわ、くすみ、きめの変化、弾力性の低下及び保湿機能の低下等、皮膚の老化症状を予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にも上記作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0037】
本実施形態のSPT mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸およびニコチンアミドが有するSPT mRNA発現促進作用を通じて、セラミドの合成を促進することができ、これにより、皮膚のバリア機能を強化し、肌荒れ、乾燥肌等のほか、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎等)を予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態のSPT mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にも上記作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0038】
本実施形態のAQP3 mRNA発現促進剤は、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジンおよびウリジンが有するAQP3 mRNA発現促進作用を通じて、アクアポリン3(AQP3)の発現を促進することができるため、加齢による水分保持能やバリア機能等を改善することができる。ただし、本実施形態のAQP3 mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にも上記作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0039】
本実施形態のクローディン-1 mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸および3-ヒドロキシ酪酸が有するクローディン-1 mRNA発現促進作用を通じて、上皮組織におけるタイトジャンクションの形成を促すことができ、これにより、バリア機能および水分保持機能を高め、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎などの皮膚症状や各種感染症などを予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態のクローディン-1 mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にも上記作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0040】
本実施形態のクローディン-4 mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸およびクエン酸が有するクローディン-4 mRNA発現促進作用を通じて、上皮組織におけるタイトジャンクションの形成を促すことができ、これにより、バリア機能および水分保持機能を高め、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎などの皮膚症状や各種感染症などを予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態のクローディン-4 mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にも上記作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0041】
本実施形態のオクルディン mRNA発現促進剤は、シトシン、トリメチルグリシン、クエン酸、3-ヒドロキシ酪酸およびグリセリン酸が有するオクルディン mRNA発現促進作用を通じて、上皮組織におけるタイトジャンクションの形成を促すことができ、これにより、バリア機能および水分保持機能を高め、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎などの皮膚症状や各種感染症などを予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態のオクルディン mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にも上記作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0042】
また、本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤は、優れたHAS3 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、クローディン-1 mRNA発現促進作用、クローディン-4 mRNA発現促進作用またはオクルディン mRNA発現促進作用を有するため、例えば、皮膚外用剤や経口組成物等に配合するのに好適である。この場合に、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸もしくはウリジン、またはこれらの混合物をそのまま配合してもよいし、クエン酸、ウリジン、シチジン、トリメチルグリシン、グリセリン酸、3-ヒドロキシ酪酸、シトシン、グルクロン酸もしくはニコチンアミド、またはこれらの混合物から製剤化したHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤またはオクルディン mRNA発現促進剤を配合してもよい。
【0043】
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、経皮的に使用される皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、化粧水、美容液、ローション、ジェル、美容オイル、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、シャンプー、リンス、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0044】
経口組成物とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の飲食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「経口組成物」は、経口的に摂取される一般食品、飼料、健康食品、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
【0045】
また、本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤は、優れたHAS3 mRNA発現促進作用、SPT mRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、クローディン-1 mRNA発現促進作用、クローディン-4 mRNA発現促進作用またはオクルディン mRNA発現促進作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【0046】
なお、本実施形態のHAS3 mRNA発現促進剤、SPT mRNA発現促進剤、AQP3 mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
【実施例0047】
以下、試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0048】
なお、以下の試験例においては、シトシン、トリメチルグリシン、グルクロン酸、クエン酸、ニコチンアミド、シチジン、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸およびウリジンとして、以下の試料1~9を使用した。
試料1:シトシン(東京化成工業社製)
試料2:トリメチルグリシン(シグマアルドリッチ社製)
試料3:D-グルクロン酸(東京化成工業社製)
試料4:クエン酸(富士フィルム和光純薬社製)
試料5:ニコチンアミド(富士フィルム和光純薬社製)
試料6:シチジン(東京化成工業社製)
試料7:DL-3-ヒドロキシ酪酸(東京化成工業社製)
試料8:DL-グリセリン酸(東京化成工業社製)
試料9:ウリジン(東京化成工業社製)
【0049】
〔試験例1〕ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3) mRNA発現促進作用試験
シトシン(試料1)、トリメチルグリシン(試料2)、D-グルクロン酸(試料3)、クエン酸(試料4)、ニコチンアミド(試料5)およびシチジン(試料6)について、以下のようにしてHAS3 mRNA発現促進作用を試験した。
【0050】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレに2mLずつ播種し(40×104cells/シャーレ)、37℃・5%CO2の条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGM培地に増殖因子(hEGF,BPE,インスリン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
【0051】
24時間培養後、培地を除去し、KBM培地に溶解した被験試料(試料1~6,試料濃度は下記表1を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2の条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0052】
この総RNAを鋳型とし、HAS3および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(R) Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、TaKaRa SYBR Prime Script RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2Step RT-PCR反応により行った。HAS3 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりHAS3 mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0053】
HAS3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表1に示す。
【0054】
【0055】
表1に示すように、試料1~6は、いずれも優れたHAS3 mRNA発現促進作用を有していた。
【0056】
〔試験例2〕セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT) mRNA発現促進作用試験
シトシン(試料1)、トリメチルグリシン(試料2)、D-グルクロン酸(試料3)およびニコチンアミド(試料5)について、以下のようにしてSPT mRNA発現促進作用を試験した。
【0057】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレに2mLずつ播種し(40×104cells/シャーレ)、37℃・5%CO2の条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGM培地に増殖因子(hEGF,BPE,インスリン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
【0058】
24時間培養後、培地を除去し、KBM培地に溶解した被験試料(試料1~3および5,試料濃度は下記表2を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO2の条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0059】
この総RNAを鋳型とし、SPTおよび内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(R) Real Time System III(タカラバイオ社製)を用い、TaKaRa SYBR Prime Script RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2Step RT-PCR反応により行った。SPT mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりSPT mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0060】
SPT mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表2に示す。
【0061】
【0062】
表2に示すように、試料1~3および5は、いずれも優れたSPT mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0063】
〔試験例3〕アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進作用試験
D-グルクロン酸(試料3)、クエン酸(試料4)、ニコチンアミド(試料5)、シチジン(試料6)およびウリジン(試料9)について、以下のようにしてAQP3 mRNA発現促進作用を試験した。
【0064】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレに2mLずつ播種し(40×104cells/シャーレ)、37℃・5%CO2の条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGM培地に増殖因子(hEGF,BPE,インスリン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
【0065】
24時間培養後、培地を除去し、KBM培地に溶解した被験試料(試料3~6および9,試料濃度は下記表3を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2の条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0066】
この総RNAを鋳型とし、AQP3および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(R) Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT-PCR反応により行った。AQP3 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりAQP3 mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0067】
AQP3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表3に示す。
【0068】
【0069】
表3に示すように、試料3~6および9は、いずれも優れたAQP3 mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0070】
〔試験例4〕クローディン-1 mRNA発現促進作用試験
シトシン(試料1)、トリメチルグリシン(試料2)、D-グルクロン酸(試料3)およびDL-3-ヒドロキシ酪酸(試料7)について、以下のようにしてクローディン-1 mRNA発現生促進作用を試験した。
【0071】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレに2mLずつ播種し(40×104cells/シャーレ)、37℃・5%CO2の条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGM培地に増殖因子(hEGF,BPE,インスリン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
【0072】
24時間培養後、培地を除去し、KBM培地に溶解した被験試料(試料1~3および7,試料濃度は下記表4を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2の条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0073】
この総RNAを鋳型とし、クローディン-1および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(R) Real Time System III (タカラバイオ社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT-PCR反応により行った。クローディン-1 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりクローディン-1 mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0074】
クローディン-1 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表4に示す。
【0075】
【0076】
表4に示すように、試料1~3および7は、いずれも優れたクローディン-1 mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0077】
〔試験例5〕クローディン-4 mRNA発現促進作用試験
シトシン(試料1)、トリメチルグリシン(試料2)、D-グルクロン酸(試料3)およびクエン酸(試料4)について、以下のようにしてクローディン-4 mRNA発現促進作用を試験した。
【0078】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレに2mLずつ播種し(40×104cells/シャーレ)、37℃・5%CO2の条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGM培地に増殖因子(hEGF,BPE,インスリン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
【0079】
24時間培養後、培地を除去し、KBM培地に溶解した被験試料(試料1~4,試料濃度は下記表5を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2の条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0080】
この総RNAを鋳型とし、クローディン-4および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(R) Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT-PCR反応により行った。クローディン-4 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりクローディン-4 mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0081】
クローディン-4 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表5に示す。
【0082】
【0083】
表5に示すように、試料1~4は、いずれも優れたクローディン-4 mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0084】
〔試験例6〕オクルディン mRNA発現促進作用試験
シトシン(試料1)、トリメチルグリシン(試料2)、クエン酸(試料4)、DL-3-ヒドロキシ酪酸(試料7)およびDL-グリセリン酸(試料8)について、以下のようにしてオクルディン mRNA発現促進作用を試験した。
【0085】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレに2mLずつ播種し(40×104cells/シャーレ)、37℃・5%CO2の条件下で一晩培養した。培養後、培地を正常ヒト表皮角化細胞基礎培地(KBM,上記KGM培地に増殖因子(hEGF,BPE,インスリン)を添加していないもの)に交換し、さらに24時間培養した。
【0086】
24時間培養後、培地を除去し、KBM培地に溶解した被験試料(試料1,2,4,7および8,試料濃度は下記表6を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃・5%CO2の条件下にて24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0087】
この総RNAを鋳型とし、オクルディンおよび内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(R) Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT-PCR反応により行った。オクルディン mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりオクルディン mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0088】
オクルディン mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表6に示す。
【0089】
【0090】
表6に示すように、試料1、2、4、7および8は、いずれも優れたオクルディン mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0091】
〔配合例1〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
シトシン 0.02g
トリメチルグリシン 0.02g
グルクロン酸 0.01g
クジンエキス 0.1g
オウゴンエキス 0.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
スクワラン 10.0g
セタノール 3.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
油溶性カンゾウエキス 0.1g
1,3-ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0092】
〔配合例2〕
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
クエン酸 0.01g
ニコチンアミド 0.01g
シチジン 0.01g
ホホバオイル 4.00g
1,3-ブチレングリコール 3.00g
アルブチン 3.00g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
オリーブオイル 2.00g
スクワラン 2.00g
セタノール 2.00g
モノステアリン酸グリセリル 2.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
グリチルレチン酸ステアリル 0.10g
黄杞エキス 0.10g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
イチョウ葉エキス 0.10g
コンキオリン 0.10g
オウバクエキス 0.10g
カミツレエキス 0.10g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0093】
〔配合例3〕
下記組成の美容液を常法により製造した。
3-ヒドロキシ酪酸 0.01g
グリセリン酸 0.01g
ウリジン 0.01g
カミツレエキス 0.1g
ニンジンエキス 0.1g
キサンタンガム 0.3g
ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
カルボキシビニルポリマー 0.1g
1,3-ブチレングリコール 4.0g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
グリセリン 2.0g
水酸化カリウム 0.25g
香料 0.01g
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
エタノール 2.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0094】
〔配合例4〕
常法により、以下の組成を有する錠剤を製造した。
シトシン 1.0mg
トリメチルグリシン 1.0mg
グルクロン酸 1.0mg
クエン酸 1.0mg
ニコチンアミド 1.0mg
ドロマイト(カルシウム20%、マグネシウム10%含有) 83.4mg
カゼインホスホペプチド 16.7mg
ビタミンC 33.4mg
マルチトール 136.8mg
コラーゲン 12.7mg
ショ糖脂肪酸エステル 12.0mg
【0095】
〔配合例5〕
常法により、以下の組成を有する経口液状製剤を製造した。
<1アンプル(1本100mL)中の組成>
シチジン 0.1質量%
3-ヒドロキシ酪酸 0.1質量%
グリセリン酸 0.1質量%
ウリジン 0.1質量%
ソルビット 12.0質量%
安息香酸ナトリウム 0.1質量%
香料 1.0質量%
硫酸カルシウム 0.5質量%
精製水 残部(100質量%)
本発明に係るヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進剤、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進剤、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤、クローディン-1 mRNA発現促進剤、クローディン-4 mRNA発現促進剤およびオクルディン mRNA発現促進剤は、皮膚の老化症状の予防、治療または改善;皮膚のバリア機能および水分保持能の改善または強化;乾燥性皮膚疾患等の予防、治療または改善;各種感染症の予防、治療または改善;などに大きく貢献できる。