(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144805
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】一酸化炭素の除去方法及び除去装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/86 20060101AFI20241004BHJP
B01J 29/48 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B01D53/86 245
B01J29/48 A ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056926
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】000227250
【氏名又は名称】日鉄鉱業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰
(72)【発明者】
【氏名】金 賢夏
(72)【発明者】
【氏名】寺本 慶之
(72)【発明者】
【氏名】高島 和則
(72)【発明者】
【氏名】矢野 匠真
(72)【発明者】
【氏名】滝本 康平
(72)【発明者】
【氏名】松本 博道
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏典
(72)【発明者】
【氏名】市川 隆博
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 諭宇摩
(72)【発明者】
【氏名】淺井 琢也
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA13
4D148AB03
4D148AC07
4D148BA07X
4D148BA11X
4D148BA28X
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4G169AA03
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4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC32A
4G169BC32B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169CA02
4G169CA07
4G169CA14
4G169DA06
4G169EA18
4G169EB12Y
4G169EB14Y
4G169EB18Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169ZA11B
(57)【要約】
【課題】安価で効率的に、被処理気体に含有する比較的低濃度の一酸化炭素を除去することができる除去方法及び除去装置を提供する。
【解決手段】前記方法は、一酸化炭素を含有する被処理気体と、オゾンとを触媒部で接触させることによる、一酸化炭素の除去方法であって、前記触媒部が、少なくともゼオライトを含む担体に対して、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させているものであることを特徴とする。前記装置は、オゾン発生部、及び一酸化炭素を含有する被処理気体と、前記オゾン発生部で発生させたオゾンとを触媒で処理する触媒部を含む、一酸化炭素の除去装置であって、前記触媒部が、少なくともゼオライトを含む担体に対して、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させているものであることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素を含有する被処理気体と、オゾンとを触媒部で接触させることによる、一酸化炭素の除去方法であって、
前記触媒部が、少なくともゼオライトを含む担体に対して、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させているものであることを特徴とする、前記除去方法。
【請求項2】
前記担体が、酸化チタンを更に含む、請求項1に記載の除去方法。
【請求項3】
一酸化炭素を含有する被処理気体を、低温プラズマ放電部で処理し、続いて、触媒部で処理する、請求項1又は2に記載の除去方法。
【請求項4】
被処理気体と接触させるオゾン濃度を所定時間維持した後、オゾン濃度を低下させた状態の前記被処理気体を更に所定時間供給する、請求項1又は2に記載の除去方法。
【請求項5】
オゾン発生部、及び
一酸化炭素を含有する被処理気体と、前記オゾン発生部で発生させたオゾンとを触媒で処理する触媒部
を含む、一酸化炭素の除去装置であって、
前記触媒部が、少なくともゼオライトを含む担体に対して、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させているものであることを特徴とする、前記除去装置。
【請求項6】
前記担体が、酸化チタンを更に含む、請求項5に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素含有気体から一酸化炭素を除去する方法及びそれに用いることのできる除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オゾン発生工程と、発生したオゾンを分解して生じる活性酸素により一酸化炭素を酸化する一酸化炭素酸化工程とを有する一酸化炭素の酸化方法が開示されており、前記一酸化炭素工程を、ハニカム構造または三次元網目構造の多孔体に設けられたCO吸着手段により実施することが開示されている(特許請求の範囲)。また、特許文献1には、前記多孔体がアルミナ、シリカ、マグネシア、炭化珪素、チタン酸アルミニウムの少なくとも1種類の化合物の基材で前記ハニカム構造等が構成されること(請求項6)、あるいは、前記多孔体がMn,Cu,Niの酸化物、Ni,Co,Mn,Cuを含有する多孔質カーボン、ゼオライト、粘土鉱物の少なくとも1つのオゾン分解物質で前記ハニカム構造等が構成されること(請求項7)、更に、前記CO吸着手段が、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウムの少なくとも1種類の白金系貴金属の微粒子で構成されること(請求項8)が、それぞれ、開示されている。
【0003】
特許文献2には、貴金属ナノ粒子担持金属酸化物触媒を用いて、一酸化炭素含有ガスの二酸化炭素への酸化反応である低温酸化反応を低温プラズマ雰囲気下で行う、低温酸化反応の促進方法が開示されている(請求項1)。また、特許文献2には、前記貴金属が、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウムおよびイリジウムからなる群から選択される少なくとも一種であること(請求項4)、担体である前記金属酸化物が、チタン、アルミニウム、珪素、マグネシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、カドミウム、インジウム、錫、アンチモン、バリウム、ランタン、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、リンおよびセリウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む酸化物であること(請求項5)、前記貴金属ナノ粒子担持金属酸化物触媒が、金-チタニア、金-アルミナ、金-シリカ、白金-チタニア、白金-シリカ、白金-アルミナ、銀-チタニア、銀-アルミナおよび銀-シリカからなる群から選択される少なくとも一種であること(請求項6)が、それぞれ、開示されている。特許文献2の実施例では、被処理気体中のCO濃度が1000ppmであるモデルガスを使用している(段落0030)。
【0004】
特許文献3には、CO浄化を目的として(段落0006)、触媒コンバータと、前記触媒コンバータに活性酸素を供給する活性酸素供給装置とを備え、前記触媒コンバータは、担体に銀が担持された触媒を有する、内燃機関の排気浄化装置(請求項1)が開示されている。また、特許文献3には、前記担体が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニアおよび酸化ランタンよりなる群から選択される1種または複数種を主成分とするものであることが開示されている(請求項4)。特許文献3の実施例では、被処理気体中のCO濃度が1000ppmであるモデルガスを使用している(段落0063)。
【0005】
本発明者が知る限りにおいて、一酸化炭素を含有する被処理気体と、オゾンとを触媒部で接触させることによる、一酸化炭素の除去方法及び除去装置において、少なくともゼオライトを含む担体に対して、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させた触媒部を開示する先行技術文献はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4270826号公報
【特許文献2】特許第5030139号公報
【特許文献3】特許第5098988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、オゾン発生部(例えば、低温プラズマ放電部)の下流側に配置される触媒部(具体的には、担体に含まれる触媒とその担体に担持させる触媒との組み合わせ)を鋭意検討した結果、或る特定の組み合わせによって、安価で効率的に、被処理気体に含有するタバコ煙に例示される比較的低濃度の一酸化炭素を除去することができることに成功した。
従って、本発明の課題は、安価で効率的に、被処理気体に含有する比較的低濃度の一酸化炭素を除去することができる除去方法及び除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、本発明による、
[1]一酸化炭素を含有する被処理気体と、オゾンとを触媒部で接触させることによる、一酸化炭素の除去方法であって、
前記触媒部が、少なくともゼオライトを含む担体に対して、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させているものであることを特徴とする、前記除去方法;
[2]前記担体が、酸化チタンを更に含む、[1]の除去方法;
[3]一酸化炭素を含有する被処理気体を、低温プラズマ放電部で処理し、続いて、触媒部で処理する、[1]又は[2]の除去方法;
[4]被処理気体と接触させるオゾン濃度を所定時間維持した後、オゾン濃度を低下させた状態の前記被処理気体を更に所定時間供給する、[1]又は[2]の除去方法;
[5]オゾン発生部、及び
一酸化炭素を含有する被処理気体と、前記オゾン発生部で発生させたオゾンとを触媒で処理する触媒部
を含む、一酸化炭素の除去装置であって、
前記触媒部が、少なくともゼオライトを含む担体に対して、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させているものであることを特徴とする、前記除去装置;
[6]前記担体が、酸化チタンを更に含む、[5]の処理装置
により解決することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価で効率的に、被処理気体に含有する一酸化炭素を除去することができる除去方法及び除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例3で作製した触媒1~触媒3を用いて、OMS-2型マンガン酸化物の有無、あるいは、酸化チタンの有無(触媒2と触媒3との比較)と、触媒部から排気される処理済み気体中の一酸化炭素濃度との関連を評価した結果を示すグラフである。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、それぞれ、触媒5(シート状マンガン酸化物(MnOx)を主体とする触媒)および触媒4(OMS-2型マンガン酸化物を主体とする触媒)の走査型電子顕微鏡による観察写真(倍率:50000倍)である。
図2(c)は、触媒4および触媒5の一酸化炭素除去率を示すグラフである。
【
図3】触媒6及び触媒7を用いて、酸化チタンの有無と、触媒部から排気される処理済み気体中の一酸化炭素濃度との関連を評価した結果を示すグラフである。
【
図4】触媒7を用いて、プラズマ放電部の異なる動作条件における処理済み気体中の一酸化炭素濃度の経時変化を観察した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一酸化炭素の除去装置(以下、CO除去装置と称することがある)は、オゾン発生部(例えば、低温プラズマ放電部)及び触媒部を備えている。本発明のCO除去装置では、オゾン発生部で発生させたオゾンと、一酸化炭素を含有する被処理気体とを、オゾン発生部の下流に配置した触媒部で接触させ、その触媒部の下流側において、触媒部で処理された処理済み気体を取り出している。あるいは、一酸化炭素を含有する被処理気体を低温プラズマ放電部の上流側から取り入れて、その被処理気体を低温プラズマ放電部で処理し、続いて、その低温プラズマ放電部で処理された気体を触媒部で処理し、最終的に、その触媒部の下流側において、触媒部で処理された処理済み気体を取り出している。
なお、本明細書において、「上流」及び「下流」とは、被処理気体の流れ方向に関して上流及び下流を意味する。
また、本発明の一酸化炭素の除去方法(以下、CO除去方法と称することがある)では、オゾン発生部(例えば、低温プラズマ放電部)及び触媒部を備えるCO除去装置を使用することによって、一酸化炭素を含有する被処理気体を処理することができる。
【0012】
本発明のCO除去装置及びCO除去方法で処理される被処理気体は、一酸化炭素を含有する気体である。一酸化炭素を含有する気体としては、例えば、喫煙室内におけるタバコ煙が挙げられる。
本発明のCO除去装置及びCO除去方法によって、気体に含有される一酸化炭素を除去することができる。
【0013】
本発明においては、被処理気体の導入速度は線速度の数値によって表記する。線速度とは被処理気体が触媒部を通過する際の速度を表し、線速度LV(m/h)=流量Q(m3/h)/触媒部断面積(m2)で求める事ができる。CO除去装置内におけるオゾン発生部(例えば、低温プラズマ放電部)および触媒部と線速度の流量の被処理気体とを接触させる。なお、被処理気体の流量は、下限値としては、0.1m/h以上であり、上限値としては、1000m/h以下である。
【0014】
本発明で用いるオゾン発生部は、被処理対象である一酸化炭素を含む被処理気体、あるいは、一酸化炭素を含まない気体(例えば、空気、酸素)を上流から取り込み、放電によりオゾンを発生させ、発生させたオゾンを下流に送り出すことができるものであれば、公知のオゾン発生器を使用することができる。
【0015】
また、本発明では、オゾン発生装置として低温プラズマ放電装置を用いることができる。本発明で用いることのできる低温プラズマ放電部は、公知の各種電極、例えば、特許第4786649号公報に記載の、被処理気体の流入用開口部と処理済み気体の排出用開口部とを有するハウジング内に、交流電源と接続する少なくとも一対の電極を備える気体励起装置であって、前記電極対の一方の電極が、前記ハウジング内の所定位置に張力を利用して配置される懸架電極であり、前記電極対のもう一方の電極が、前記ハウジング内の保持壁面に端部を埋め込まれて所定位置に配置される埋込電極であり、前記埋込電極の電極部が、全体として線状又は平面状の放電部を有し、前記埋込電極の電極部と対向する前記懸架電極の電極部が、前記埋込電極の電極部との距離が周期的に近接する放電部を有し、前記懸架電極が露出電極であり、前記埋込電極が保護電極であり、前記懸架電極が、全体が付勢手段からなる懸架電極であるか、あるいは両端又は一端に設けた張力付与手段部分と非付勢手段部分とからなる懸架電極であり、前記懸架電極が、その両端部において懸架手段を介して前記ハウジングの保持壁面に着脱自在に固定されており、前記懸架電極と連結する懸架手段の一方に張力調整手段を有し、前記電極対において、前記懸架電極及び前記埋込電極が前記交流電源と接続する端部が、相互に反対側の端部に位置し、前記懸架電極及び/又は前記埋込電極の非接続端部に、放電可能な電極部を含まない非放電領域を有することを特徴とする、前記気体励起装置を用いることができる。
【0016】
低温プラズマ放電部としては、無声放電によって低温プラズマを発生する任意の手段、特には、誘電体バリア電極による手段を用いることができる。
誘電体バリア電極は、高圧極としての保護電極と接地電極としての露出電極との組み合わせを含む。保護電極は、芯電極とその芯電極の周囲を包囲する鞘体とを含む。芯電極および露出電極は、円柱形状とすることができ、鞘体は、円筒形状とすることができる。芯電極として、例えば、アルミ棒を使用することができ、鞘体として、例えば、石英管を使用することができる。露出電極として、例えば、ステンレス棒を使用することができる。
複数の保護電極群と複数の露出電極群との配置は、ハウジング内部で放電がほぼ均等に発生し、各電極間を通過する被処理気体がほぼ均等に処理されるように配置されている限り特に限定されない。しかしながら、1つの露出電極が4つの保護電極により包囲され、しかも1つの保護電極が4つの露出電極により包囲される状態で配置するのが好ましい。
【0017】
触媒部は、触媒成分として少なくともゼオライトを含む担体(好ましくは酸化チタンとゼオライトとの混合物を含む担体)に対して、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させたものを使用する。
担体の外観形状は、例えば、多角柱、円柱、又は楕円柱とすることができ、担体の大きさは、CO除去装置の大きさによって、適宜変更することができる。担体の構造としては、複数のセルを有するハニカム構造にすることができる。このハニカム構造におけるセルの断面形状及び大きさは、通常の断面形状及び大きさのものを使用することができる。セルの横断面形状としては、例えば、矩形形状(好ましくは正方形)が挙げられる。セルの大きさは、100mm四方のハニカム構造の横断面形状に対して、下限値としては、例えば、100個以上、好ましくは150個以上、より好ましくは200個以上であり、上限値としては、例えば、400個以下、好ましくは350個以下、より好ましくは300個以下のセルが存在する大きさにすることが好ましい。上記下限値と上記上限値は、任意に組み合わせることができる。
ハニカム構造の担体は、触媒として少なくともゼオライトと、好ましくは更に酸化チタンを含む混合物を含むこと以外は、公知の製造方法によって得ることができる。公知製造方法によれば、所望に応じてバインダーである骨材を用いることにより目的のハニカム状担体を得ることができる。
【0018】
担体として、ハニカム構造の成型体を使用すること以外にも、触媒としてのゼオライト(好ましくはゼオライト及び酸化チタン)と、バインダー、水との混合物を、例えば、米粒形状(長径:略3.0mm;短径:略1.5mm)に成型して、前記米粒形状の成型体の表面に銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させて、更に、任意の外観形状を有する容器に複数の米粒形状の成型体を敷き詰めて、これを触媒部とすることもできる。すなわち、触媒としてのゼオライト(好ましくはゼオライト及び酸化チタン)を含む米粒形状の成型体を、触媒部の担体とすることもできる。
また、米粒形状の成型体の大きさを変えることにより、触媒部の通気率を変化させることができる。
【0019】
本発明において用いるゼオライトは、担体に含有させて一酸化炭素の除去ができる限り、特に限定されるものではないが、SiO2/Al2O3比は3000以上が望ましく、ゼオライトの種類はZSM-5が望ましい。
【0020】
担体におけるゼオライトの含有量は、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させる前の重量に対して、下限値としては、例えば、40重量%以上、好ましくは45重量%以上、より好ましくは50重量%以上であり、上限値としては、例えば、80重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記下限値と上記上限値は、任意に組み合わせることができる。
【0021】
触媒部におけるゼオライトの含有量は、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させた後の触媒部の全重量に対して、下限値としては、例えば35重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは45重量%以上であり、上限値としては、例えば、75重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは67重量%以下である。上記下限値と上記上限値は、任意に組み合わせることができる。
【0022】
本発明において用いることのできる酸化チタンは、担体に含有させて一酸化炭素の除去ができる限り、特に限定されるものではないが、触媒として使用できる公知の酸化チタンを使用することができる。
【0023】
担体における酸化チタンの含有量は、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させる前の重量に対して、下限値としては、例えば、1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、上限値としては、例えば、35重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記下限値と上記上限値は、任意に組み合わせることができる。
【0024】
触媒部における酸化チタンの含有量は、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させた後の触媒部の全重量に対して、下限値としては、例えば、0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上であり、上限値としては、例えば、45重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは34重量%以下である。上記下限値と上記上限値は、任意に組み合わせることができる。
【0025】
担体に対して銀を担持させる方法は、公知の担持方法を使用することができる。
例えば、ハニカム構造を有する担体に対して銀を担持させる場合には、ハニカム構造を有する担体を銀含有溶液(例えば、硝酸銀水溶液)に浸漬させることによって、担体に対して銀を担持させることができる。これによって、ハニカム構造におけるセルの内側表面に均一に銀を担持させることができる。
なお、担体に対する銀の担持量は、例えば、担体を銀含有溶液に浸漬させる時間、銀溶液濃度、銀溶液温度等を変更することによって変えることができる。
【0026】
担体に担持させる銀の担持量は、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させた後の触媒部の全重量に対して、下限値としては、例えば、0.5重量部以上、好ましくは0.7重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、上限値としては、例えば、20重量部以下、好ましくは17重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。上記下限値と上記上限値は、任意に組み合わせることができる。
【0027】
本発明において用いるOMS-2型マンガン酸化物は、3価(Mn3+)と4価(Mn4+)のマンガンがゼオライトの骨格を形成したゼオライトの一種である。
【0028】
担体に対してOMS-2型マンガン酸化物を担持させる方法は、公知の担持方法を使用することができる。
例えば、ハニカム構造を有する担体に対してOMS-2型マンガン酸化物を担持させる場合には、ハニカム構造を有する担体をマンガン酸化物含有溶液(例えば、酢酸マンガン(II)四水和物水溶液)に浸漬させることによって、担体に対してOMS-2型マンガン酸化物を担持させることができる。これによって、ハニカム構造におけるセルの内側表面に均一にOMS-2型マンガン酸化物を担持させることができる。
なお、担体に対するOMS-2型マンガン酸化物の担持量は、例えば、担体をマンガン酸化物含有溶液に浸漬させる時間、マンガン酸化物溶液濃度、マンガン酸化物溶液温度等を変更することによって変えることができる。
【0029】
担体に担持させるOMS-2型マンガン酸化物の担持量は、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させた後の触媒部の全重量に対して、下限値としては、下限値としては、例えば、1.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以上、より好ましくは3.5重量%以上であり、上限値としては、例えば、15重量%以下、好ましくは12.5重量%以下、より好ましくは11.6重量%以下である。上記下限値と上記上限値は、任意に組み合わせることができる。
【0030】
ハニカム構造を有する担体を使用する場合には、ハニカム構造におけるセルの長手方向の中心軸と、低温プラズマ放電部で処理された気体流れ方向及び触媒部で処理された処理済み気体の流れ方向とが平行となるように、触媒部をCO除去装置に設置することが好ましい。
触媒部の温度は、10℃以上であれば任意の温度で使用することができる。
低温プラズマ放電部の放電に伴う発熱によって触媒部の温度上昇を抑えることを目的として、低温プラズマ放電部の上流側に冷却ユニットを設けることもできる。
【0031】
低温プラズマ放電部の下端部と触媒部の上端部との距離は、下限値としては、例えば、0.0cmm以上であり、上限値としては50.0mm以下である。
【0032】
本発明によって、実際に被処理気体を処理する場合には、被処理気体を取り入れる取入口及び処理済み気体を取り出すための取出口を、例えば、喫煙室等の天井、壁面、及び/又は床面に適宜設けることができる。あるいは、被処理気体取入口と処理済気体取出口とを有するCO除去装置を喫煙室などに設置することもできる。
【0033】
一酸化炭素を含有する被処理気体における一酸化炭素、低温プラズマ放電部で処理された気体における一酸化炭素、及び/又は触媒部で処理された処理済み気体における一酸化炭素を測定するための公知の測定装置を設けることもできる。
一酸化炭素を含有する被処理気体におけるオゾン、低温プラズマ放電部で処理された気体におけるオゾン、及び/又は触媒部で処理された処理済み気体におけるオゾンを測定するための公知の測定装置を設けることもできる。
【0034】
本発明のCO除去装置及びCO除去方法は、ほぼ室温(例えば、20~70℃の温度領域)で使用することができる。
【0035】
本発明のCO除去方法では、低温プラズマ放電部で処理され、触媒部に供給される被処理気体におけるオゾン濃度に関して、所定の一定濃度で定常運転することもできるし、あるいは、第一の一定濃度で所定時間運転した後、続いて、前記第一の一定濃度よりも低い第二の一定濃度で所定時間運転することもできる。
後述の試験例3に具体的実験データを示すとおり、運転途中でオゾン濃度を低下させても(試験例3における条件1)一酸化炭素除去性能を相当な時間、維持させることができ、更には、高いオゾン濃度で定常運転した場合(試験例3における条件2)と比較して、触媒の一酸化炭素除去性能の低下を軽減できる。
【0036】
また、オゾン濃度を段階的に低下させながら連続運転することもできるし、あるいは、間欠運転、すなわち、運転途中で低温プラズマ放電部の作動を一時停止して所定時間運転した後、低温プラズマ放電部の作動を再開することもできる。
【実施例0037】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
《実施例1:低温プラズマ放電部の作製》
以下の実施例では、12本の保護電極と11本の露出電極とからなる低温プラズマ放電部を使用した。前記保護電極としては、円柱状のアルミ棒(外径=1.25mm)とそのアルミ棒の周囲を包囲する円筒状の石英管(外径=4mm)を用いた。前記露出電極としては、円柱状のステンレス棒(外径=4mm)を用いた。低温プラズマの発生は、印加電圧3.9kVで行った。触媒部の温度を調整するために、低温プラズマ放電部の上流側に冷却ユニットを設けた。また、後述の触媒部の上端部と低温プラズマ放電部の下端部との距離は6.4mmとした。
【0039】
《実施例2:ハニカム状担体の作製》
ハニカム状担体として、本発明に用いる担体A、担体Bを作製した。
前記担体は、表1に示す組成の酸化チタン(平均粒径15nm)、ゼオライト(ZSM-5:ユニオン昭和社製)、及び骨材の混合物を公知の方法によってハニカム状に成型することにより作製した。
ハニカム状担体の大きさは、縦100mm×横100mm×高さ30mmとし、ハニカム構造のセル数は300個とした。
なお、ハニカム状担体中の酸化チタンの粒度分布を測定した結果は、平均粒径1.25μmであった。
【0040】
【0041】
《実施例3:担体への銀あるいは銀及びOMS-2型マンガン酸化物の担持による触媒部の作製》
本実施例では、実施例2で作製した担体A、担体Bの表面に、銀あるいは銀及びマンガン酸化物を担持させ、表2に示す各触媒部を作製した。
なお、表中の「マンガン酸化物担持量」は、ICP発光分光分析法(パーキンエルマー社製 Optima8300)による測定値であり、銀あるいは銀及びマンガン酸化物担持後の触媒部の全重量に対する百分率である。「銀担持量」は、ICP発光分光分析法による測定値であり、銀あるいは銀及びマンガン酸化物担持後の触媒部の全重量に対する百分率である。また、表中の「銀・Mn担持後の触媒部中の酸化チタン量」及び「銀・Mn担持後の触媒部中のゼオライト量」は、換算値であり、銀あるいは銀及びマンガン酸化物担持後の触媒部の全重量に対する百分率である。
【0042】
【0043】
銀の担持は、以下に示す手順により実施した。
硝酸銀(純度99.8%以上)を純水に溶解し、0.3mol/Lの硝酸銀水溶液を調製した。得られた水溶液に各担体を浸漬し、65℃の温度、120rpmの速さで6時間攪拌した。120℃で3.5時間乾燥した後、500℃で5時間焼成した。
【0044】
マンガン酸化物の担持は、硝酸銀に代えて、酢酸マンガン(II)四水和物を用いること以外は、銀の担持と同様の手順に従って実施した。
【0045】
なお、銀及びマンガン酸化物の両方を担持させる場合には、担持量の少ないものを先に担持させると、担持量の多いものを担持させたときに、先に担持させたものを覆ってしまう可能性があるため、それを考慮して決定することが好ましい。本実施例では、いずれも、マンガン酸化物を先に担持させ、続いて銀を担持させた。
【0046】
銀及びマンガン酸化物を担持した後の触媒2、触媒3に関して、担体に担持させたマンガン酸化物を走査電子顕微鏡(HITACHI社製 S-4800)により分析した結果、いずれもOMS-2型であった。
【0047】
《試験例1:マンガン酸化物の有無による一酸化炭素除去性能の比較》
本試験例では、触媒部として、実施例3で作製した触媒1(比較例:担体にゼオライト及び酸化チタンを含み、銀を担持するが、OMS-2型マンガン酸化物を担持しない)、触媒2(担体にゼオライトを含むが、酸化チタンを含まず、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持する)、触媒3(担体にゼオライト及び酸化チタンを含み、銀およびOMS-2型マンガン酸化物担持する)を用いて、マンガン酸化物の有無(触媒1と触媒3との比較)、あるいは、酸化チタンの有無(触媒2と触媒3との比較)と、触媒部から排気される処理済み気体中の一酸化炭素濃度との関連を評価した。
試験条件は、表3に示す条件で実施した。なお、表3中の「100mm」は、100mm四方(一辺100mm)の正方形であることを示す。
【0048】
本試験例では、一酸化炭素を含有する被処理気体を低温プラズマ放電部の上流部から取り入れて、その被処理気体を低温プラズマ放電部で処理し、続いて、その低温プラズマ放電部で処理された気体を触媒部で処理し、最終的に、その触媒部の下流側において、触媒部で処理された処理済み気体を取り出した。
【0049】
【0050】
結果を
図1に示す。
触媒1と触媒3との比較から、銀のみを担持する触媒1と比較して、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を併用する触媒3では、一酸化炭素の除去性能は格段に向上した。
また、触媒2と触媒3との比較から、担体が酸化チタンを含まない場合(触媒2)であっても、充分な一酸化炭素の除去性能が得られることが判明した。
【0051】
《参考試験例1:マンガン酸化物の違いによる一酸化炭素除去性能の比較》
本試験例では、触媒部として、OMS-2型マンガン酸化物を主体とする触媒(以下、触媒4と称する)と、シート状マンガン酸化物(MnOx)を主体とする触媒(以下、触媒5と称する)とを用いて、一酸化炭素除去性能を比較した。
触媒4の担体としては、実施例2で作製した担体Aを使用し、触媒5の担体としては酸化チタンを使用した。銀およびマンガン酸化物の合計担持量は、銀及びマンガン酸化物担持後の触媒部の全重量に対する百分率として、5重量%とし、銀及びマンガン酸化物の比率(Ag:Mn)は、触媒4では1:4、触媒5では4:1とした。
【0052】
触媒4については、実施例3に記載の手順に準じて銀及びマンガン酸化物の担持を実施した。
触媒5については、前記の所定濃度および所定比率となるように、硝酸銀およびマンガン酸化物を純水100mLに溶解した。得られた水溶液に28%アンモニア水溶液を滴下してpHを8に調整した。pH8に調整した前記水溶液をフラスコに入れ、更に担体100gを加え、攪拌後、一晩静置した。乾燥後、空気中500℃で10時間焼成した。
【0053】
本試験例では、低温プラズマ放電部で発生させたオゾンと、一酸化炭素を含有する被処理気体とを、オゾン発生部の下流に配置した触媒部で接触させ、その触媒部の下流側において、触媒部で処理された処理済み気体を取り出した。すなわち、処理対象である一酸化炭素は、低温プラズマ放電部での処理を実施せずに、触媒部に供給した。
試験は、線速度=38m/h、一酸化炭素とオゾンの初期濃度=500ppmの条件で実施した。
【0054】
触媒4および触媒5の走査型電子顕微鏡による観察写真(倍率:50000倍)を、それぞれ、
図2(b)および
図2(a)に、各触媒の一酸化炭素除去率を
図2(c)に示す。
図2(a)に示すように、触媒5はマンガン酸化物がシート状であるのに対して、
図2(b)に示すように、触媒4のOMS-2型マンガン酸化物は糸状であった。
図3(c)から明らかなとおり、糸状のOMS-2型マンガン酸化物を主体とする触媒4(Ag:Mn比=1:4)は、シート状マンガン酸化物を主体とする触媒5(Ag:Mn=4:1)と比較して、優れた一酸化炭素除去性能を示した。
なお、データは示さないが、銀を使用せず、マンガン酸化物のみを担持させた触媒では一酸化炭素除去活性が低かったため、一酸化炭素除去には銀が重要であることを確認した。
【0055】
《試験例2:酸化チタンの有無による一酸化炭素除去性能の比較》
本試験例では、表4に示す触媒6(担体にゼオライトを含むが、酸化チタンを含まず、銀およびOMS-2型マンガン酸化物を担持する)と、触媒7(担体にゼオライト及び酸化チタンを含み、銀およびOMS-2型マンガン酸化物担持する)を用いて、酸化チタンの有無と、触媒部から排気される処理済み気体中の一酸化炭素濃度との関連を評価した。 試験条件を表5に示す。
本試験例では、一酸化炭素を含有する被処理気体を低温プラズマ放電部の上流部から取り入れて、その被処理気体を低温プラズマ放電部で処理し、続いて、その低温プラズマ放電部で処理された気体を触媒部で処理し、最終的に、その触媒部の下流側において、触媒部で処理された処理済み気体を取り出した。
【0056】
【0057】
【0058】
結果を
図3に示す。
図3(2回の試験を行い、その平均値を示す)に示すとおり、23.75ppm、47.5ppm、95ppm、190ppm、280ppmのいずれの入気オゾン濃度においても、銀及びマンガン酸化物を担持する触媒部において担体に酸化チタンを含有する場合(触媒7)の方が一酸化炭素の除去性能は高かった。
【0059】
《試験例3:プラズマ放電部の動作条件の検討》
本試験例では、表4に示す触媒7(担体にゼオライト及び酸化チタンを含み、銀およびOMS-2型マンガン酸化物担持する)を用いて、入気濃度95ppmのオゾンを60分間供給した後に、入気濃度を20ppmまで低下させて280分間供給した場合(以下、条件1)と、入気濃度95ppmのオゾンを340分間供給した場合(以下、条件2)について、触媒部から排気される処理済み気体中の一酸化炭素濃度の経時変化を観察した。
試験条件を表6に示す。
本試験例では、一酸化炭素を含有する被処理気体を低温プラズマ放電部の上流部から取り入れて、その被処理気体を低温プラズマ放電部で処理し、続いて、その低温プラズマ放電部で処理された気体を触媒部で処理し、最終的に、その触媒部の下流側において、触媒部で処理された処理済み気体を取り出した。
【0060】
【0061】
結果を
図4に示す。
図4に示すとおり、条件2では、入気濃度95ppmのオゾンを定常供給しているにもかかわらず、試験開始から150分を超えた付近から、排気気体中の一酸化炭素濃度の上昇(すなわち、一酸化炭素除去性能の低下)が観察された。一方、試験開始から60分後にオゾン濃度を低下させた条件1では、試験開始から170分程度まで一酸化炭素除去性能が維持されており、170分を超えた付近から一酸化炭素濃度の上昇が観察されるものの、条件2と比べて、一酸化炭素除去性能の低下を軽減できることが判明した。この理由は、触媒の触媒能の劣化を回避または遅延させることができるためと考えられる。