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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144807
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】複合酸化物粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/26 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
C01B33/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056929
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 邦彦
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA10
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA75
4G073BD01
4G073BD21
4G073BD23
4G073CE08
4G073FA11
4G073FB03
4G073FB05
4G073FB11
4G073FC02
4G073FD01
4G073FD23
4G073FD26
4G073GA03
4G073GA11
4G073GA12
4G073GA31
4G073GA34
4G073GA40
4G073GB08
4G073GB09
4G073UA08
4G073UB12
(57)【要約】
【課題】球状で高結晶性であり、白味を帯びており、低熱膨張率である複合酸化物粒子を提供する。
【解決手段】本発明に係る複合酸化物粒子は、多結晶であり、かつ主結晶相がコージェライトおよびインディアライトの少なくとも一方を含み、TMA法による熱膨張率が1.5ppm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶であり、かつ主結晶相がコージェライトおよびインディアライトの少なくとも一方を含み、TMA法による熱膨張率が1.5ppm以下である、
複合酸化物粒子。
【請求項2】
平均粒子径(D50)が、0.1μm以上500.0μm以下である、請求項1に記載の複合酸化物粒子。
【請求項3】
X線回折法で測定し、回折角2θが15~40°の範囲で、以下の式(I)で算出される結晶化度が40以上である、請求項1に記載の複合酸化物粒子。
結晶化度=結晶性ピーク面積/(結晶性ピーク面積+非晶質ピーク面積)・・・(I)
【請求項4】
レーザー回折法による粒度分布において、累積90%径である粒径D90と累積10%径である粒径D10との差D90-D10が、1000.0μm以下である、請求項1に記載の複合酸化物粒子。
【請求項5】
真円度が0.70以上である、請求項1に記載の複合酸化物粒子。
【請求項6】
X線回折法で測定し、回折角2θが27.5~29.5°の範囲における結晶の主ピークの半値幅が、0.20°以下である、請求項1に記載の複合酸化物粒子。
【請求項7】
ナノ粒子が、0.1質量%以上30質量%以下の割合で含まれる、請求項1に記載の複合酸化物粒子。
【請求項8】
L*a*b*色空間におけるL*が91.00以上100.00以下、a*が-10.00以上3.00以下、およびb*が-10.00以上5.00以下である、請求項1に記載の複合酸化物粒子。
【請求項9】
粒子状のコージェライトとナノ粒子とを混合して混合粒子を得る工程と、
前記混合粒子を加熱する工程と、
を含む、複合酸化物粒子の製造方法。
【請求項10】
前記加熱工程が、1000℃以上1400℃以下で行われる、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合酸化物粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の半導体実装用材料が種々検討されている。例えば、特許文献1には、コージェライトおよびその多形であるインディアライトの少なくとも一方の結晶を含有する結晶化ガラスが記載されている。特許文献1に記載の結晶化ガラスは、例えば、高周波用基板の高周波電子デバイスの部材として有用であることが記載されている。
【0003】
コージェライト成分を含む複合酸化物の軟化点は、900℃付近で比較的低い。そのため、コージェライトの結晶多形であるインディアライト相が生成し始めるときに、粒子同士が固着して塊状となり、粒子状(球状)構造を維持することができない。したがって、特許文献1に記載の結晶化ガラスは、無機フィラーのように粉末状かつ球状で使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/059724号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、球状で高結晶性であり、白味を帯びており、低熱膨張率である複合酸化物粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)多結晶であり、かつ主結晶相がコージェライトおよびインディアライトの少なくとも一方を含み、TMA法による熱膨張率が1.5ppm以下である、複合酸化物粒子。
(2)粒子径が、0.1μm以上500.0μm以下である、上記(1)に記載の複合酸化物粒子。
(3)X線回折法で測定し、回折角2θが15~40°の範囲で、以下の式(I)で算出される結晶化度が40以上である、上記(1)または(2)に記載の複合酸化物粒子。
結晶化度=結晶性ピーク面積/(結晶性ピーク面積+非晶質ピーク面積)・・・(I)
(4)レーザー回折法による粒度分布において、累積90%径である粒径D90と累積10%径である粒径D10との差D90-D10が、1000.0μm以下である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の複合酸化物粒子。
(5)真円度が0.70以上である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の複合酸化物粒子。
(6)X線回折法で測定し、回折角2θが27.5~29.5°の範囲における結晶の主ピークの半値幅が、0.20°以下である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の複合酸化物粒子。
(7)ナノ粒子が、0.1質量%以上30質量%以下の割合で含まれる、上記(1)~(6)のいずれかに記載の複合酸化物粒子。
(8)L*a*b*色空間におけるL*が91.00以上100.00以下、a*が-10.00以上3.00以下、およびb*が-10.00以上5.00以下である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の複合酸化物粒子。
(9)コージェライト粒子とナノ粒子とを混合して混合粒子を得る工程と、混合粒子を加熱する工程とを含む、複合酸化物粒子の製造方法。
(10)加熱工程が、1000℃以上1400℃以下で行われる、上記(9)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る複合酸化物粒子は、球状で高結晶性であり、白味を帯びており、低熱膨張率である。したがって、本発明に係る複合酸化物粒子は、例えば、半導体パッケージ基板などの熱による反りを効率よく防止するため、基板に分散させて使用することができる。さらに、本発明に係る複合酸化物粒子は白味を帯びているため、半導体パッケージ基板などに使用したとしても、着色しない。その結果、半導体パッケージ基板などに生じる欠陥や汚れなどを光学的に見分けやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る複合酸化物粒子は、多結晶であり、かつ主結晶相がコージェライトおよびインディアライトの少なくとも一方を含む。すなわち、本発明に係る複合酸化物粒子は、コージェライトおよびインディアライトの少なくとも一方の微細な単結晶(結晶粒)を複数含んでいる。
【0009】
コージェライトおよびインディアライトは、2MgO・2Al・5SiOの組成を有する化合物であり、異なる結晶構造を有する。主結晶相がコージェライトを主として含むか、インディアライトを主として含むかは、例えば、本発明に係る複合酸化物粒子を製造する際の加熱温度(焼成温度)に依存すると推察される。具体的には、1000℃以上1200℃以下程度で加熱すると、インディアライト相を主結晶相とする複合酸化物粒子が得られる傾向にある。一方、1200℃以上1400℃以下程度で加熱すると、コージェライト相を主結晶相とする複合酸化物粒子が得られる傾向にある。
【0010】
本発明に係る複合酸化物粒子は、TMA法による熱膨張率が1.5ppm以下である。熱膨張率が1.5ppm以下であることによって、本発明に係る複合酸化物粒子は、例えば、半導体パッケージ基板に分散させて使用すると、基板の熱による反りを効率よく防止することができる。本発明に係る複合酸化物粒子において、TMA法による熱膨張率は、好ましくは0.0ppm未満である。
【0011】
TMA法(Thermomechanical Analysis、熱機械分析法)とは、標準試料と測定試料とを一定速度で昇温したときの熱膨張量の差から、測定試料の熱膨張量を測定する方法である。標準試料としては石英ガラス、アルミナなどが使用される。
【0012】
本発明に係る複合酸化物粒子は、コージェライトおよびインディアライトの少なくとも一方が主結晶相を構成していれば、他の結晶相が含まれていてもよく、非晶質相が含まれていてもよい。他の結晶相および非晶質相は、主結晶相の結晶粒界に不純物(例えば、不可避不純物)として残存する場合や、本発明の効果を阻害しない範囲で、意図的に添加する場合がある。他の結晶相および非晶質相としては限定されず、例えば、プロテンステナイト相、フォレステナイト相、ムライト相、クリストバライト相などが挙げられる。
【0013】
本発明に係る複合酸化物粒子は、ナノ粒子がさらに含まれていてもよい。ナノ粒子は、粒子径が1.0nm以上600.0nm以下の微細な粒子であり、好ましくは50.0nm以上500.0nm以下である。ナノ粒子は、本発明に係る複合酸化物粒子を製造する際に使用され、本発明の効果に悪影響を及ぼさない。そのため、本発明に係る複合酸化物粒子に、ナノ粒子が残存していても差し支えない。ナノ粒子の添加によって、例えば、濡れ性などの表面物性の調整をし、樹脂基板などに添加しやすいように調整することもできる。
【0014】
ナノ粒子は限定されず、例えば、ナノサイズのシリカ微粒子、ナノサイズのチタニア微粒子、ナノサイズのマグネシア微粒子、ナノサイズのアルミナ微粒子などが挙げられる。好ましくは、ナノサイズのシリカ微粒子である。コージェライトの組成である、マグネシア、アルミナのナノサイズの微粒子も好ましい。本発明に係る複合酸化物粒子に、ナノ粒子は、例えば、ナノサイズのシリカ微粒子(ナノ粒子)と複合酸化物粒子との合計に対して0.1質量%以上30質量%以下の割合で含まれる。
【0015】
本発明に係る複合酸化物粒子は、球状であれば大きさについて限定されない。例えば、本発明に係る複合酸化物粒子は、好ましくは体積平均粒子径累積50%径(D50)において、0.1μm以上500.0μm以下の平均粒子径(D50)を有する。本発明に係る複合酸化物粒子が0.1μm以上500.0μm以下の平均粒子径(D50)を有する場合、樹脂に混錬する場合の膜厚を1mm以下のように薄くすることができる。本発明に係る複合酸化物粒子は、より好ましくは1.0μm以上250.0μm以下の粒子径を有する。
【0016】
粒子径は、例えば次のように測定される。まず、複合酸化物粒子を、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に分散させる。次いで、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折法によって粒度分布を測定する。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製の「マイクロトラック:MT-3300EXII」などが挙げられる。
【0017】
本発明に係る複合酸化物粒子は、用途によって、粒子径のバラツキが比較的小さいものが望まれる。例えば、本発明に係る複合酸化物粒子において、レーザー回折法による粒度分布における累積90%径である粒径D90と累積10%径である粒径D10との差D90-D10は、好ましくは1000.0μm以下である。D90-D10が1000.0μm以下である場合、本発明に係る複合酸化物粒子は、樹脂に充填しやすくなる。D90-D10は、より好ましくは800.0μm以下である。D10およびD90は、体積基準の累積頻度分布曲線から算出する。
【0018】
本発明に係る複合酸化物粒子は、球状であれば形状について限定されない。本発明に係る複合酸化物粒子は、用途によって、真球に近いものが望まれる。例えば、本発明に係る複合酸化物粒子は、好ましくは0.70以上の真円度を有する。0.70以上の真円度を有する場合、本発明に係る複合酸化物粒子は、樹脂に混錬した樹脂コンポジットを作成する場合に充填量を増やしやすい。本発明に係る複合酸化物粒子は、より好ましくは0.80、さらに好ましくは0.85以上の真円度を有する。
【0019】
真円度は、例えば、ISO 13322-2に準拠した動的画像解析の原理に基づく装置によって測定される。このような装置としては、例えば、Verder Scientific社製の「CAMSIZER X2」などが挙げられる。真円度は、具体的には次のように測定される。まず、所定量の複合酸化物粒子を秤量する。次いで、装置内に複合酸化物粒子を順次投入して、50kPaのドライエアーにより凝集粒子を分散させながら、カメラ前を通過する粒子を測定する。測定は乾式で行う。この測定を3回繰り返して行い、測定結果の積算平均から真円度を解析する。
【0020】
粒子径を円相当粒子径とする。円相当粒子径とは、投影粒子画像と同じ面積となる真円の粒子径を意味する。粒子径の基準は体積とする。真円度は、ISO 9276-6に準拠して解析する。真円度は4πA/Pによって求める。Aは投影粒子画像の面積の測定値を示し、Pは投影粒子画像の外周長の測定値を示す。
【0021】
粒子は立体形状を有するものの、カメラ前を通過する粒子を平面的に測定している。そのため、本明細書においては「真円度」を採用しており、真円度が1.00に近いほど、粒子が真球に近いことを意味する。
【0022】
結晶性を有するか非晶質性を有するかについては、例えば、X線回折スペクトルによって判断できる。非晶質性を有する場合、X線回折スペクトルにハローピークが認められる。本発明に係る複合酸化物粒子は、結晶性を有していれば、非晶質相が含まれていてもよい。本発明に係る複合酸化物粒子において、結晶性の尺度となる結晶化度は限定されない。本発明に係る複合酸化物粒子は、好ましくは40以上の結晶化度を有する。40以上の結晶化度を有する場合、本発明に係る複合酸化物粒子は、より非晶質部分の影響を受けない利点がある。本発明に係る複合酸化物粒子は、より好ましくは80以上、さらに好ましくは90以上の結晶化度を有する。
【0023】
結晶化度は、本発明に係る複合酸化物粒子をX線回折法で測定し、回折角2θが15~40°の範囲で、以下の式(I)で算出される。
結晶化度=結晶性ピーク面積/(結晶性ピーク面積+非晶質ピーク面積)・・・(I)
【0024】
本発明に係る複合酸化物粒子において、X線回折法で測定し、回折角2θが27.5~29.5°の範囲における結晶の主ピークの半値幅が、好ましくは0.20°以下である。この半値幅が0.20°以下である場合、本発明に係る複合酸化物粒子は、当該複合酸化物を特徴づける主ピークの結晶面の結晶性が高いといえる。本発明に係る複合酸化物粒子は、より好ましくは0.18°以下の半値幅を有する。
【0025】
本発明に係る複合酸化物粒子の色は白味を帯びている。そのため、本発明に係る複合酸化物粒子は、半導体パッケージ基板などの基板に分散させても着色させず、基板の欠陥、汚染などを光学的に発見しやすくなる。さらに、本発明に係る複合酸化物粒子の色は白味を帯びていることから、コンポジット作成の際に混合するフィラーとして使用する点でも好ましい。具体的には、本発明に係る複合酸化物粒子において、好ましくは、L*a*b*色空間におけるL*が91.00以上100.00以下、より好ましくは、92.50以上100.00以下、a*が-10.00以上3.00以下、より好ましくは、-5.00以上1.50未満、さらに好ましくは-2.00以上1.00未満、およびb*が-10.00以上5.00以下、より好ましくは、-5.00以上、3.50以下、さらに好ましくは-1.50以上3.00未満である。L*、a*およびb*がこのような範囲である場合、本発明に係る複合酸化物粒子は、より白味が強いと判断できる。
【0026】
本発明に係る複合酸化物粒子を製造する方法は、限定されず、例えば、コージェライト粒子とナノ粒子とを混合して混合粒子を得る工程と、混合粒子を加熱する工程とを含む。
【0027】
コージェライト粒子とナノ粒子とを混合して混合粒子を得る工程において、原料となるコージェライト粒子およびナノ粒子を混合する。コージェライト粒子は、そのまま使用してもよく、火炎溶融して粒状に固化させたものを使用してもよい。具体的には、1200℃以上1500℃以下で火炎溶融し、火炎溶融物を落下させ、落下中の冷却によって粒状に固化したものを使用してもよい。
【0028】
ナノ粒子は、上述のように、ナノシリカなどが挙げられる。ナノ粒子の詳細については上述の通りであり、詳細な説明は省略する。コージェライト粒子とナノ粒子とを含む混合粒子において、コージェライト粒子とナノ粒子との混合割合は限定されない。例えば、ナノ粒子が、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の割合で含まれる。ナノ粒子を、このような割合で使用することによって、球状を維持することができる。
【0029】
混合粒子を加熱する工程では、得られた混合粒子を加熱する。加熱温度は限定されず、好ましくは1000℃以上1400℃以下である。このような温度で加熱することによって、多結晶であり、かつ主結晶相がコージェライトおよびインディアライトの少なくとも一方を含む複合酸化物粒子をより効率よく製造することができ、非晶質なものがより得られにくくなる。
【0030】
主結晶相にインディアライトを含む複合酸化物粒子を効率よく得るためには、好ましくは1000℃以上1200℃以下で加熱すればよい。一方、主結晶相にコージェライトを含む複合酸化物粒子を得るためには、好ましくは1200℃以上1400℃以下で加熱すればよい。
【0031】
加熱は、大気雰囲気下で行ってもよく、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。加熱時間は限定されず、例えば、1時間以上24時間以下である。
【0032】
このような工程によって、本発明に係る複合酸化物粒子が得られる。加熱直後、複合酸化物粒子は、例えば容器の形状に固まっている場合がある。このように固まっている場合であっても、冷却後に手や木槌で容易に崩すことができ、さらさらした複合酸化物粒子が得られる。得られた複合酸化物粒子は、球状で結晶性を有し、白味を帯びており、主結晶相がコージェライトおよびインディアライトの少なくとも一方を含む。このような構成を有することによって、本発明に係る複合酸化物粒子は、TMA法による熱膨張率が1.5ppm以下、好ましくは0.0ppm未満である。
【実施例0033】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0034】
(調製例)
まず、不定形コージェライト粒子(丸ス釉薬合資会社製、品番:SS400)を、1500℃で火炎溶融し、火炎溶融物を落下させた。落下中の冷却によって粒状に固化させ、原料粒子を調製した。
【0035】
(実施例1)
調製例で得られた原料粒子を95質量%およびナノシリカを5質量%の割合で乳鉢に入れ、10分間混合した。ナノシリカとしては、株式会社アドマテックス製のSO-E1を使用した。
【0036】
次いで、アルミナ製のるつぼに原料粒子を入れて1200℃で10時間焼成し、球状を有する複合酸化物粒子を得た。得られた球状を有する複合酸化物粒子についてXRD測定を行った。得られたスペクトルには、ブロードなハローピークが存在しておらず、得られた球状を有する複合酸化物粒子は、高い結晶性を有することを確認した。さらに、焼成温度およびXRDスペクトルから、得られた球状を有する複合酸化物粒子は、インディアライト相およびコージェライト相の少なくとも一方を含むことを確認した。
【0037】
(実施例2)
1400℃で10時間焼成した以外は、実施例1と同様の手順で、球状を有する複合酸化物粒子を得た。得られた球状を有する複合酸化物粒子についてXRD測定を行った結果、ブロードなハローピークが存在しないスペクトルが得られた。このスペクトルから、得られた球状を有する複合酸化物粒子は、高い結晶性を有することを確認した。さらに、焼成温度およびXRDスペクトルから、得られた球状を有する複合酸化物粒子は、インディアライト相およびコージェライト相の少なくとも一方を含むことを確認した。
【0038】
(実施例3)
調製例で得られた原料粒子を70質量%およびナノシリカを30質量%の割合で使用した以外は、実施例2と同様の手順で、球状を有する複合酸化物粒子を得た。得られた球状を有する複合酸化物粒子についてXRD測定を行った結果、ブロードなハローピークが存在しないスペクトルが得られた。このスペクトルから、得られた球状を有する複合酸化物粒子は、高い結晶性を有することを確認した。さらに、焼成温度およびXRDスペクトルから、得られた球状を有する複合酸化物粒子は、インディアライト相およびコージェライト相の少なくとも一方を含むことを確認した。
【0039】
(実施例4)
調製例で得られた原料粒子を99質量%およびナノシリカを1質量%の割合で使用した以外は、実施例1と同様の手順で、球状を有する複合酸化物粒子を得た。得られた球状を有する複合酸化物粒子についてXRD測定を行った結果、ブロードなハローピークが存在しないスペクトルが得られた。このスペクトルから、得られた球状を有する複合酸化物粒子は、高い結晶性を有することを確認した。さらに、焼成温度およびXRDスペクトルから、得られた球状を有する複合酸化物粒子は、インディアライト相およびコージェライト相の少なくとも一方を含むことを確認した。
【0040】
(比較例1)
調製例で得られた原料粒子を、アルミナ製のるつぼに原料粒子を入れて850℃で10時間焼成し、球状を有する複合酸化物粒子を得た。得られた球状を有する複合酸化物粒子についてXRD測定を行った。得られたスペクトルには、ブロードなハローピークが存在し、得られた球状を有する複合酸化物粒子は、非晶質相と結晶質相とを含むことを確認した。
【0041】
(比較例2)
1400℃で10時間焼成した以外は、比較例1と同様の手順で、球状を有する複合酸化物粒子を得ることを試みた。しかし、塊状の複合酸化物が得られ、球状の粒子は得られなかった。
【0042】
実施例1~4および比較例1で得られた球状を有する複合酸化物粒子について、粒径、比表面積、真円度、熱膨張率、結晶性、および色を検証した。
【0043】
<粒径>
得られた球状を有する複合酸化物粒子を、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に分散させた。次いで、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラック:MT-3300EXII)を用いて、レーザー回折法によって粒度分布を測定した。体積基準の累積頻度分布曲線から、D10、D50およびD90を算出した。D50の値、およびD90とD10との差(D90-D10)を表1に示す。
【0044】
<比表面積>
得られた球状を有する複合酸化物粒子の比表面積を、ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定法(JIS Z 8830:2013)に準拠して測定した。具体的には、吸着ガスとして窒素を使用し、1gの球状を有する複合酸化物粒子をサンプル管に入れて、吸脱着等温線を取得した。多点プロット法により、比表面積(m/g)を算出した。結果を表1に示す。
【0045】
<真円度>
得られた球状を有する複合酸化物粒子の真円度を、ISO 13322-2に準拠した動的画像解析の原理に基づく装置(CAMSIZER X2(Verder Scientific社製))によって測定した。具体的には、3gの球状を有する複合酸化物粒子を秤量した。次いで、装置内に複合酸化物粒子を順次投入して、50kPaのドライエアーにより凝集粒子を分散させながら、カメラ前を通過する粒子を測定した。測定は乾式で行った。この測定を3回繰り返して行い、測定結果の積算平均から真円度を解析した。真円度は4πA/Pによって求めた。Aは投影粒子画像の面積の測定値を示し、Pは投影粒子画像の外周長の測定値を示す。結果を表1に示す。
【0046】
<熱膨張率>
得られた球状を有する複合酸化物粒子それぞれの原料(原料粒子および必要に応じてナノシリカ)を用いて、実施例1~4、比較例1および比較例2と同じ温度で焼成して直方体の焼結体(20mm×4mm×4mm)を得た。得られた焼結体(試料)の線膨張率を、TD5020SE(NETZSCH製)を用いて測定した。具体的には、熱機械分析法(JIS R1618)に準拠し、大気下で30~300℃の範囲にて、得られた試料の線膨張率を測定した。標準試料としては、サファイアを使用した。この線膨張率を熱膨張率とした。結果を表1に示す。
【0047】
<結晶性>
得られた球状を有する複合酸化物粒子の結晶性を、X線回折によって測定した。具体的には、粉末X線回折装置X’PertPROMPD(スペクトリス株式会社製)によって測定し、回折スペクトルを得た。測定条件について、X線源はCuKα、X線出力は45kVおよび40mA、走査速度は0.2deg/sとした。明確でシャープなピークが示されていれば結晶性と判定し、ブロードなハローピークが示されていればアモルファスと判定した。内蔵ソフトHighScorePlusの結果から、結晶化度を、上述の式(I)(結晶化度=結晶性ピーク面積/(結晶性ピーク面積+非晶質ピーク面積))によって算出した。結果を表1に示す。
【0048】
<色>
得られた球状を有する複合酸化物粒子の色を、L*a*b*色空間に基づいて判定した。具体的には、得られた球状を有する複合酸化物粒子を、ガラス板に隙間がないように1.5cm×1.5cm角状に乗せ、その上にカバーガラスを乗せて試料を固定して試料片を得た。得られた試料片を、分光測色計CM-3700A(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、黒色補正および白色補正を実施後、JIS Z8722条件cに準拠し、拡散照明8°方向受光し、SCI反射測定を実施して、明度L*と色度a*およびb*とを得た。L*=0.00は黒色、L*=100.00は白色を示し、0.00≦L*≦100.00、-100.00≦a*≦100.00および-100.00≦b*≦100.00である。L*>91.00、a*<3.00およびb*<5.00を満たす場合に、白色と判定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
上記のように、実施例1~4で得られた複合酸化物粒子(本発明に係る複合酸化物粒子に相当)は、コージェライト相およびインディアライト相の少なくとも一方を含む。実施例1~4で得られた複合酸化物粒子は、表1に示すように、いずれもD50が0.1μm以上500.0μm以下であり、D90とD10との差D90-D10が1000.0μm以下である。実施例1~4で得られた複合酸化物粒子は、いずれも白色を呈しており、球状で0.7以上の真円度を有し、熱膨張率(線膨張率)は0.0ppm以下である。さらに、実施例1~4で得られた複合酸化物粒子は、結晶性であり、回折角2θが15~40°の範囲で結晶化度が40以上であり、回折角2θが27.5~29.5°の範囲における結晶の主ピークの半値幅が0.20°以下である。
【0051】
一方、比較例1で得られた複合酸化物粒子は、白色ではなくピンク色を呈しており、熱膨張率(線膨張率)が4.0ppmと1.5ppmを超えており、非晶質部分も存在していることがわかる。比較例2で得られた複合酸化物粒子は、表1にも記載のように、焼成後は塊状であり木槌で崩すことができず、金槌で粒子状に粉砕した。比較例2で得られた複合酸化物粒子は、結晶性で白色を呈するものの、熱膨張率(線膨張率)が1.7ppmと1.5ppmを超えている。表1に記載の比較例3は、調製例で得られた原料粒子に関して、色を、L*a*b*色空間に基づいて判定したものである。