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  • 特開-剥離フィルムつき表面保護フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144817
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】剥離フィルムつき表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/40 20180101AFI20241004BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241004BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09J7/40
C09J7/38
C09J133/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056952
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】新見 洋人
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 洋之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 智美
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC03
4J004CE01
4J004DA01
4J004DB04
4J004FA04
4J040DF041
4J040DF051
4J040DF061
4J040DF091
4J040EC002
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA22
4J040HC16
4J040JA09
4J040JB09
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA23
4J040PA33
(57)【要約】
【課題】ジッピングが起こりにくい、非シリコーン系剥離層を使用した剥離フィルムつき表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】剥離フィルムつき表面保護フィルム10であって、表面保護フィルム16が、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる第一の基材層14と、(メタ)アクリレート系共重合体を架橋させてなる粘着剤層13と、を有し、表面保護フィルム16が光学用または電子用の表面保護フィルムであり、剥離フィルム15は、第二の基材層11と第二の基材層11の一方の面に形成された剥離層12と、を有し、剥離フィルム15の剥離層12にアミノ構造を含み、剥離フィルム15の剥離層12中のSiが蛍光X線で0.5kcps以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離フィルムつき表面保護フィルムであって、
前記表面保護フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる第一の基材層と、(メタ)アクリレート系共重合体を架橋させてなる粘着剤層と、を有し、
前記表面保護フィルムが光学用または電子用の表面保護フィルムであり、
前記剥離フィルムは、第二の基材層と前記第二の基材層の一方の面に形成された剥離層と、を有し、
前記剥離フィルムの剥離層にアミノ構造を含み、
前記剥離フィルムの剥離層中のSiが蛍光X線で0.5kcps以下である、剥離フィルムつき表面保護フィルム。
【請求項2】
前記表面保護フィルムのTgが+22℃以下であり、かつ、前記剥離フィルムの前記剥離層に前記アミノ構造と化学的に反応しない成分を含む、請求項1に記載の剥離フィルムつき表面保護フィルム。
【請求項3】
前記表面保護フィルムのTgが+11℃以下である、請求項1に記載の剥離フィルムつき表面保護フィルム。
【請求項4】
前記剥離フィルムを剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で剥離した際の、剥離力の瞬間最高値をBとし、前記剥離フィルムを剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で剥離した際の平均剥離力をCとするとき、式:A=B/Cにて求められる値Aが1.5以下である、請求項2または請求項3に記載の剥離フィルムつき表面保護フィルム。
【請求項5】
前記剥離フィルムを剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で剥離した際の平均剥離力をCとするとき、前記Cが、0.02N/25mmより大きい、請求項2または請求項3に記載の剥離フィルムつき表面保護フィルム。
【請求項6】
前記剥離フィルムの剥離層にメラミン構造を含む、請求項2または請求項3に記載の剥離フィルムつき表面保護フィルム。
【請求項7】
前記剥離層に、アクリル、ポリオール、ポリエーテルのいずれかを含む、請求項2または請求項3に記載の剥離フィルムつき表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離フィルムつき表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学部材や電子部材などの表面を保護するため、表面保護フィルムが使用されている。
例えば特許文献1には、粘着剤層のポリエステルフィルムとは反対面にセパレータを有するセパレータ付き光学用表面保護フィルムにおいて、セパレータを剥離した後の粘着剤層の表面の蛍光X線でのSi-Kα線強度を2.5kcps以下とすることが記載されている。また、特許文献2には、セパレータが、基材、及び非シリコーン系の離型層を有する、セパレータ付き光学用表面保護フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-145341号公報
【特許文献2】特開2017-31278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非シリコーン系剥離層を使用すると、表面保護フィルムの粘着剤層から剥離フィルムを剥離するときに、ジッピングが起こりやすい。
【0005】
本発明は、ジッピングが起こりにくい、剥離フィルムつき表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、剥離フィルムつき表面保護フィルムであって、前記表面保護フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる第一の基材層と、(メタ)アクリレート系共重合体を架橋させてなる粘着剤層と、を有し、前記表面保護フィルムが光学用または電子用の表面保護フィルムであり、前記剥離フィルムは、第二の基材層と前記第二の基材層の一方の面に形成された剥離層と、を有し、前記剥離フィルムの剥離層にアミノ構造を含み、前記剥離フィルムの剥離層中のSiが蛍光X線で0.5kcps以下である、剥離フィルムつき表面保護フィルムである。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、前記表面保護フィルムのTgが+22℃以下であり、かつ、前記剥離フィルムの前記剥離層に前記アミノ構造と化学的に反応しない成分を含む、剥離フィルムつき表面保護フィルムである。
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記表面保護フィルムのTgが+11℃以下である、剥離フィルムつき表面保護フィルムである。
【0008】
第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記剥離フィルムを剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で剥離した際の、剥離力の瞬間最高値をBとし、前記剥離フィルムを剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で剥離した際の平均剥離力をCとするとき、式:A=B/Cにて求められる値Aが1.5以下である、剥離フィルムつき表面保護フィルムである。
第5の態様は、第1~4のいずれか1の態様において、前記剥離フィルムを剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で剥離した際の平均剥離力をCとするとき、前記Cが、0.02N/25mmより大きい、剥離フィルムつき表面保護フィルムである。
【0009】
第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様において、前記剥離フィルムの剥離層にメラミン構造を含む、剥離フィルムつき表面保護フィルムである。
第7の態様は、第1~6のいずれか1の態様において、前記剥離層に、アクリル、ポリオール、ポリエーテルのいずれかを含む、剥離フィルムつき表面保護フィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジッピングが起こりにくい、非シリコーン系剥離層を使用した剥離フィルムつき表面保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】剥離フィルムつき表面保護フィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0013】
図1に示すように、実施形態の剥離フィルムつき表面保護フィルム10は、剥離フィルム15と表面保護フィルム16とを有する。
【0014】
表面保護フィルム16は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる第一の基材層14と、(メタ)アクリレート系共重合体を架橋させてなる粘着剤層13と、を有する。表面保護フィルム16は、光学用または電子用の表面保護フィルムである。
【0015】
剥離フィルム15は、第二の基材層11と第二の基材層11の一方の面に形成された剥離層12と、を有する。剥離フィルム15の剥離層12にはアミノ構造を含む。剥離フィルム15の剥離層12中のSiが蛍光X線で0.5kcps以下である。
【0016】
実施形態の剥離フィルムつき表面保護フィルム10において、剥離フィルム15の剥離層12中のSiが蛍光X線で0.5kcps以下である。剥離層12中のSi量は、蛍光X線分析を用いて、Si-Kα線の強度(kcps)により定量することができる。剥離層12中のSi量は、第二の基材層11中のSi量を含まない値である。剥離フィルム15のSi量を剥離層12側から測定した後、剥離層12を有しない第二の基材層11中のSi量を差し引くことで、剥離層12中のSi量を求めてもよい。
【0017】
剥離層12中のSi量が少ないことにより、剥離層12における有機シリコーン化合物などのシリコーン系成分の含有量が少ないことを確認することができる。剥離層がシリコーン系成分を含む場合は、剥離フィルムと表面保護フィルムとを貼り合わせたときに、シリコーン系成分が粘着剤層の表面に大量に移行するおそれがある。また、粘着剤層の表面に移行したシリコーン系成分が、光学部材や電子部材等の被着体の表面を汚染するおそれがある。このため、剥離層12中のSi量が上述の範囲内であることにより、粘着剤層や被着体の表面汚染を抑制することができる。
【0018】
実施形態の剥離フィルムつき表面保護フィルム10において、剥離フィルム15は、剥離層12にアミノ構造を含む。アミノ構造を含む剥離層12は、アミノ構造をもつ成分を含んでもよい。具体例としては、アミノ構造をもつ1成分からなる構成、アミノ構造をもつ2成分以上からなる構成、アミノ構造をもつ少なくとも1成分とアミノ構造をもたない少なくとも1成分とからなる構成が挙げられる。
【0019】
剥離層12は1成分から構成されてもよく、2成分以上から構成されてもよい。剥離層12が2成分以上を含む組成物から構成される場合は、組成物に含まれる成分の間で化学反応、化学結合などが生じてもよい。
【0020】
アミノ構造をもつ成分としては、特に限定されないが、剥離層12に含まれる剥離剤成分が、アミノ構造をもつ成分であってもよい。アミノ構造をもつ成分としては、シリコーン系剥離剤などのSiをもたない成分であることが好ましい。シリコーン系剥離剤以外の成分が、長鎖アルキル系材料以外の成分であってもよい。剥離層12が、長鎖アルキルをもたないでアミノ構造をもつ成分と、アミノ構造をもたないで長鎖アルキルをもつ成分とを含んでもよい。剥離層12中の剥離剤成分は、1種でも2種以上でもよい。
【0021】
アミノ構造をもつ成分の具体例としては、メラミン樹脂などのアミノ樹脂、アミノアルキッド樹脂などが挙げられる。アミノアルキッド樹脂は、アミノ樹脂とアルキッド樹脂の混合物を含んでもよい。剥離層12に含まれるアミノ構造は、メラミン構造であってもよく、メラミン構造以外のアミノ構造であってもよい。
【0022】
アミノ樹脂は、メラミン、尿素(ユリア)、ベンゾグアナミン、アニリン等のアミノ基をもつ化合物と、ホルムアルデヒド等のアルデヒド基をもつ化合物との縮合によって生成される樹脂である。アミノ樹脂は単独で、あるいはアルキッド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等と組み合わせて、熱硬化性樹脂として用いることができる。
【0023】
剥離フィルム15は、剥離層12にメラミン構造を含むことが好ましい。メラミン構造を含む剥離層12は、メラミン構造をもつ成分を含んでもよい。具体例としては、メラミン構造をもつ1成分からなる構成、メラミン構造をもつ2成分以上からなる構成、メラミン構造をもつ少なくとも1成分とメラミン構造をもたない少なくとも1成分とからなる構成が挙げられる。
【0024】
メラミン構造をもつ成分としては、特に限定されないが、剥離層12に含まれる剥離剤成分が、メラミン構造をもつ成分であってもよい。メラミン構造をもつ成分の具体例としては、メラミン樹脂が挙げられる。
【0025】
メラミン樹脂としては、メチル化メラミン樹脂、エチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂などのアルキル化メラミン樹脂が挙げられる。より具体的には、フルエーテル型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂などが挙げられる。
【0026】
剥離層12の厚さ、添加剤などは適宜、設計が可能である。剥離層12は、アミノ構造をもつ成分以外の成分として、アミノ構造と化学的に反応する成分、アミノ構造と化学的に反応しない成分、その他の成分から選択される、いずれかを含んでもよい。
【0027】
アミノ構造と化学的に反応しない成分が、剥離層12から粘着剤層13に移行可能な移行成分であってもよい。移行成分は、剥離剤成分に比べて、少量の添加にしてもよい。例えば、剥離層12の全量を100重量部として、剥離剤成分を60~99重量部、移行成分を1~40重量部の範囲で配合してもよい。剥離層12中の移行成分は、1種でも2種以上でもよい。
【0028】
前記移行成分の量としては特に限定されないが、剥離層12の全量を100重量部として、39重量部以下でもよい。移行成分が35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、あるいはそれ以下としてもよい。
【0029】
剥離層12が剥離剤成分と移行成分以外の成分を含む場合は、剥離層12の全量を100重量部として、剥離剤成分と移行成分以外の成分が39重量部以下でもよい。剥離剤成分と移行成分以外の成分の量としては、特に限定されないが、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、あるいはそれ以下としてもよい。
【0030】
剥離層12には、アクリル、ポリオール、ポリエーテルのいずれかを含むことが好ましい。より具体的には、剥離層12は、少なくともいずれかの成分として、アクリル、ポリオール、ポリエーテルのいずれかを含むことが好ましい。アクリル、ポリオール、ポリエーテルのいずれかが、アミノ構造をもたない成分であってもよく、上述の移行成分であってもよく、アミノ構造と化学的に反応する成分であってもよく、アミノ構造と化学的に反応しない成分であってもよい。
【0031】
剥離層12に前記移行成分を含む剥離フィルム15は、粘着剤層への移行が微量となる、微移行タイプであることが好ましい。また、剥離層12に移行成分を含まない剥離フィルム15は、粘着剤層への移行がない、無移行タイプになる。
【0032】
無移行タイプでも、微移行タイプでも、ジッピングの発生を抑制することができる。微移行タイプの剥離フィルム15は、無移行タイプの剥離フィルム15と比べ、比較的硬くTgが高い粘着剤層13を有する表面保護フィルム16と組み合わせてもジッピングの発生を抑制することができ、より好ましい。
【0033】
前記アクリルとしては、アクリル構造をもつ成分であればよく、例えばアクリル化合物、アクリルポリマー、アクリル樹脂等が挙げられる。
前記ポリオールとしては、ポリオール構造をもつ成分であればよく、例えばポリオール化合物が挙げられる。
前記ポリエーテルとしては、ポリエーテル構造をもつ成分であればよく、例えばポリエーテル化合物が挙げられる。
剥離層12が、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなど、ポリエーテル構造をもつポリオール化合物を含んでもよい。
【0034】
必要に応じて、剥離層12に添加剤を配合してもよい。添加剤としては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、増粘剤、潤滑剤、発泡剤、消泡剤、無機粒子、有機粒子等が挙げられる。また、剥離層12がこれらの添加剤を含有しないで形成されてもよい。潤滑剤としては、特に限定されないが、脂肪酸エステルが挙げられる。
【0035】
剥離層12の添加剤として、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸を用いてもよい。スルホン酸は、メラミン樹脂の硬化反応触媒であってもよい。メラミン樹脂を硬化させる場合は、必要に応じて、第二の基材層11上に塗布した塗膜を加熱条件下で処理してもよい。
【0036】
剥離層12に含まれるメラミン樹脂などのアミノ樹脂(アミノ構造をもつ成分)が硬化されていることにより、剥離層12から粘着剤層13への移行が抑制される。また、アミノ構造と化学的に反応する成分も、硬化した樹脂と結合した状態となるので、粘着剤層13への移行が抑制される。このため、微移行タイプまたは無移行タイプの剥離層12に好適である。
【0037】
剥離フィルム15の第二の基材層11としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステル系樹脂フィルムを用いることができる。第二の基材層11の厚さ、添加剤などは適宜、設計が可能である。第二の基材層11は、アンチブロッキング剤やフィラー等として、シリカ(SiO)、ケイ酸塩、粘土鉱物、ゼオライト等のケイ素(Si)化合物を含んでいてもよい。
【0038】
図示例の表面保護フィルム16は、第一の基材層14の一方の面に粘着剤層13を有する。粘着剤層13は、(メタ)アクリレート系共重合体を架橋させて形成されている。(メタ)アクリレート系共重合体としては、(メタ)アクリル酸モノマーまたは(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを含む、2以上のモノマーを共重合させた共重合体が挙げられる。粘着剤層13の厚さ、添加剤などは適宜、設計が可能である。
【0039】
本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等も同様に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸やその誘導体を意味する。
【0040】
(メタ)アクリレート系共重合体を架橋させるには、紫外線硬化、電子線硬化、架橋剤等を用いてもよい。架橋剤は、過酸化物等のラジカル系架橋剤でもよく、イソシアネート化合物、エポキシ化合物などの反応性架橋剤でもよい。
【0041】
反応性架橋剤は、(メタ)アクリレート系共重合体に含まれる、水酸基やカルボキシル基等の極性官能基と反応して、共重合体を架橋させることができる。極性官能基をもつ(メタ)アクリレート系共重合体は、極性官能基をもつ(メタ)アクリレート系モノマーを(メタ)アクリレート系共重合体に共重合させることで得ることができる。
【0042】
表面保護フィルム16のTgは、+22℃以下であることが好ましく、+11℃以下であることがより好ましい。表面保護フィルム16のTgは、第一の基材層14と粘着剤層13とを有する表面保護フィルム16を粘弾性測定装置に取り付けて測定することができる。
【0043】
Tgは、一般的にはガラス転移温度を意味している。ガラス転移温度(Tg)は転移温度の一種であり、示差走査熱量測定(DSC)、示差熱分析(DTA)、動的粘弾性測定(DMA)等、種々の方法を用いて測定することができる。
【0044】
動的粘弾性測定を用いて損失正接tanδの温度依存性を測定する場合は、変曲点やベースラインシフト等ではなく、ピーク温度からガラス転移温度(Tg)が検出されるため、測定が容易になる。そのため、表面保護フィルム16のような異種材料の積層体であっても、見かけ上のピークを観測することにより、見かけ上、表面保護フィルム16のTgを求めることができる。
【0045】
表面保護フィルム16のTgは、粘着剤層13と第一の基材層14とが同一の温度でガラス転移することを意味するとは限らず、上述した方法でTgの値が測定可能であればよい。第一の基材層14を構成するポリエチレンテレフタレートフィルムのガラス転移温度(Tg)と、粘着剤層13を構成する(メタ)アクリレート系共重合体の架橋物のガラス転移温度(Tg)の値とが、必ずしも一致する必要はない。
【0046】
アクリル系粘着剤の設計においては、架橋前の(メタ)アクリレート系共重合体のガラス転移温度(Tg)を制御することが一般的に行われている。(メタ)アクリレート系共重合体のガラス転移温度(Tg)としては、特に限定されないが、柔らかい粘着剤層13を得るには、例えば、-30℃未満が好ましく、さらに、-70℃以上-40℃以下であってもよい。
【0047】
実施形態の剥離フィルムつき表面保護フィルム10によれば、選択可能なTgの範囲が広いので、粘着剤層13に用いられる(メタ)アクリレート系共重合体としては、従来と同様な比較的低温のTgを選択してもよいし、従来と比べて高温のTgを選択してもよい。表面保護フィルム16の用途や性能などに応じて適宜、(メタ)アクリレート系共重合体の設計が可能である。
【0048】
表面保護フィルム16の第一の基材層14としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが用いられる。第一の基材層14の厚さ、添加剤などは適宜、設計が可能である。第一の基材層14は、アンチブロッキング剤やフィラー等として、シリカ(SiO)、ケイ酸塩、粘土鉱物、ゼオライト等のケイ素(Si)化合物を含んでいてもよい。
【0049】
本明細書において、剥離フィルム15を剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で剥離した際の、剥離力の瞬間最高値(瞬間最大剥離力)をBとし、剥離フィルム15を剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で剥離した際の平均剥離力をCとする。これらの剥離力は、剥離フィルム15を表面保護フィルム16の粘着剤層13から剥離して測定される。
【0050】
式:A=B/Cにて求められる比の値をAとするとき、Aの値は、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。瞬間最大剥離力/平均剥離力の比Aの値が小さいときは、剥離フィルム15を表面保護フィルム16から剥離する際のジッピングが起こりにくい。
【0051】
平均剥離力Cの値は、0.02N/25mmより大きいことが好ましく、0.04N/25mmより大きいことがより好ましい。平均剥離力Cの値が小さいと、剥離フィルム15を表面保護フィルム16から剥離しやすい。
【0052】
剥離フィルムつき表面保護フィルム10においては、剥離層12が粘着剤層13に対向した状態で、剥離フィルム15が表面保護フィルム16に重ね合わされている。表面保護フィルム16は、剥離フィルムつき表面保護フィルム10から剥離フィルム15を剥がした状態で、保護対象物の表面を保護するために用いられる。このとき粘着剤層13は、表面保護フィルム16を保護対象物の表面に貼り合わせるために用いられる。
【0053】
表面保護フィルム16の保護対象物としては、光学部材や電子部材など、特に限定されないが、光学フィルム、光学ガラス、偏光板、位相差板、表示パネル、タッチパネル等が挙げられる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0054】
表面保護フィルム16が無色透明であると、表面保護フィルム16を貼り合わせても保護対象物の状態を目視で確認することができるので、好ましい。剥離フィルム15が無色透明であってもよい。第二の基材層11、剥離層12、粘着剤層13および第一の基材層14として、無色透明の材料を選択することが可能である。
【0055】
表面保護フィルム16は、保護対象物の製造工程のみに使用されてもよく、保護対象物の出荷後も保護対象物に貼り合わせたままでもよい。表面保護フィルム16が保護対象物の表面を保護し続けるためには、表面保護フィルム16が保護対象物に対して適度な粘着力を有することが好ましい。保護対象物から表面保護フィルム16を剥がす場合は、保護対象物に対する表面保護フィルム16の粘着力が高すぎないことが好ましい。
【0056】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例0057】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0058】
<剥離フィルムの作製方法>
厚さ38μmのPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製、ダイアホイル(登録商標)T100)の上に、下記の剥離層形成用の塗料を塗布し、乾燥させることで、4種類の剥離フィルムを作製した。「部」は重量部を意味する。
【0059】
剥離フィルム1(以下「RF-1」という。)では、荒川化学工業株式会社製の主剤「アラコート(登録商標)RL900」100部に対して、荒川化学工業株式会社製の硬化剤「アラコート(登録商標)RA2000」を3部添加した塗料を用いた。
【0060】
RF-1に用いた塗料は、アミノ構造をもつ成分(メラミン)、アミノ構造と化学的に反応する成分(ポリオール)、アミノ構造と化学的に反応しない成分(アクリル)を含む。これらの中で、剥離性に寄与する成分はアクリルである。
【0061】
剥離フィルム2(以下「RF-2」という。)では、Allnex社製フルエーテル型メチル化メラミン樹脂「サイメル(登録商標)303LF」90部に対して、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量1000)を10部、パラトルエンスルホン酸を3部添加した塗料を用いた。
【0062】
RF-2に用いた塗料は、アミノ構造をもつ成分(メラミン)、アミノ構造と化学的に反応しない成分(ポリプロピレングリコール)、その他の成分(パラトルエンスルホン酸)を含む。これらの中で、剥離性に寄与する成分はポリプロピレングリコールである。
【0063】
剥離フィルム3(以下「RF-3」という。)では、Allnex社製メチロール基型メチル化メラミン樹脂「サイメル(登録商標)370」70部に対して、アクリルポリマー(藤森工業株式会社製、水酸基価59.8mgKOH/g)を30部、パラトルエンスルホン酸を3部添加した塗料を用いた。
【0064】
RF-3に用いた塗料は、アミノ構造をもつ成分(メラミン)、アミノ構造と化学的に反応する成分(アクリルポリマー)、その他の成分(パラトルエンスルホン酸)を含む。これらの中で、剥離性に寄与する成分はアクリルポリマーである。
【0065】
剥離フィルム4(以下「RF-4」という。)では、株式会社レゾナック製の長鎖アルキル変性アミノアルキッド樹脂「テスファイン(登録商標)303」100部に対して、株式会社レゾナック製パラトルエンスルホン酸溶液「ドライヤー900」を3部添加した塗料を用いた。
【0066】
RF-4に用いた塗料は、アミノ構造をもつ成分、アミノ構造と化学的に反応する成分(アルキッド)、その他の成分(パラトルエンスルホン酸)を含む。これらの中で、剥離性に寄与する成分はアルキッドである。
【0067】
さらに、剥離フィルム5(以下「RF-5」という。)として、三菱ケミカル株式会社製の剥離フィルム「ダイアホイル(登録商標)MRF」(基材の厚さ:38μm)を使用した。
【0068】
RF-1からRF-4のうち、RF-1及びRF-2は微移行タイプであり、それらの「アミノ構造と化学的に反応しない成分」は移行成分である。RF-3及びRF-4は、移行成分を用いていない無移行タイプである。RF-5は、シリコーン等の成分が、剥離層から粘着剤層へ大量に移行するタイプである。
【0069】
<(メタ)アクリレート系共重合体の製造>
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、表1の(A)~(C)に示すモノマーと溶剤(酢酸エチル)を90重量部加えた。その後、重合開始剤としてジメチルアゾビスイソブチレート0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、(メタ)アクリレート系共重合体を得た。
【0070】
得られた5種類の(メタ)アクリレート系共重合体を以下それぞれ「AP-A」、「AP-B」、「AP-C」、「AP-D」、「AP-E」という。なお、特に測定結果を示さないが、得られた(メタ)アクリレート系共重合体の重量平均分子量は、10万~100万の範囲内である。
【0071】
用いたモノマーは、それぞれ、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ジメチルアクリルアミド(DMAA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)である。表1の(A)~(C)に括弧書きで示した数値は、各モノマーの重量部である。
【0072】
【表1】
【0073】
<(メタ)アクリレート系共重合体のTgの算出>
(メタ)アクリレート系共重合体のTg(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)及び各モノマーの重量分率Wnの値から、次の式を用いて算出した。
1/(Tg+273)=Σ[Wn/(Tgn+273)]
【0074】
ホモポリマーのTgnは、文献値から、2EHAでは-70℃、DMAAでは+119℃、4HBAでは-32℃とした。Σは、各モノマーについて求めた項[Wn/(Tgn+273)]の値の総和を表す。結果は、上記の表1に示す。
【0075】
<粘着剤組成物及び表面保護フィルムの製造>
表2の(E)に示す(メタ)アクリレート系共重合体に対して、表2の(F)に示す架橋剤TKA-100(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、旭化成株式会社製)を加えて撹拌混合して粘着剤組成物を得た。表2の(E)~(F)に括弧書きで示した数値は、それぞれ(メタ)アクリレート系共重合体及び架橋剤の重量部である。
【0076】
得られた粘着剤組成物を、厚さ38μmのPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製、ダイアホイル(登録商標)T100)の上に塗布した後、120℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが15μmである表面保護フィルムを得た。
【0077】
得られた10種類の表面保護フィルムは、以下それぞれ「PF-A1」、「PF-A2」、「PF-B1」、「PF-B2」、「PF-C1」、「PF-C2」、「PF-D1」、「PF-D2」、「PF-E1」、「PF-E2」という。
【0078】
【表2】
【0079】
<表面保護フィルムのTgの測定方法>
表面保護フィルムを粘弾性測定装置(製品名「Rheogel-E4000」、株式会社ユービーエム社製)のオプションである固体剪断用治具に挟んで取り付けた。装置の設定温度を-50℃から+100℃まで、昇温速度2℃/分で上昇させながら、歪み量1%かつ周波数1Hzの条件で、せん断モードにて貯蔵弾性率と損失弾性率を測定した。その結果から表面保護フィルムの、1℃ごとの損失正接tanδを算出した。この損失正接の値が極大値となる温度を、表面保護フィルムのTgとした。結果は、上記の表2に示す。
【0080】
表面保護フィルムのTgは、実際には、後述する製造方法で剥離フィルムつき表面保護フィルムを製造した後、剥離フィルムを剥がして粘弾性測定装置に取り付け、測定した。しかし、剥離フィルムの違いから表面保護フィルムのTgに差は出ないため、剥離フィルムの種類を区別しないで、表面保護フィルムごとに結果を示した。
【0081】
<剥離層に含まれるSi量の測定方法>
剥離フィルムの剥離層面に存在するSi量をF(kcps)とし、蛍光X線分析により測定した。前記蛍光X線分析は、リガク社製のXRF装置、型式「ZSX(登録商標)PrimsTVi」を用いて、測定範囲:直径30mmの円内、検出X線:Si-Kα、出力:30kV、100mA、分光結晶PETHにより実施した。
【0082】
ブランクとして、剥離フィルムに使用している基材フィルムの30mmの円に相当する面積当たりに存在するSi量をA(kcps)とし、前記F(kcps)と同一の条件で蛍光X線分析により測定した。前記F(kcps)から前記A(kcps)を差し引いた値を前記剥離層に含まれるSi量(kcps)とした。
【0083】
【表3】
【0084】
<剥離フィルムつき表面保護フィルムの製造方法及び剥離力の測定方法>
表2に示す10種類の表面保護フィルムから選択されるいずれか1種類に、表3に示す5種類の剥離フィルムから選択されるいずれか1種類を貼り合わせた。これにより、合計50種類の剥離フィルムつき表面保護フィルムを製造した。
【0085】
剥離フィルムつき表面保護フィルムを、25mm幅で150mmの長さにカットして、試験片を作成した。試験片の表面保護フィルム側を試験装置に固定し、剥離フィルムを把持して剥離することにより、剥離力(N/25mm)を測定した。剥離速度は、0.3m/分、剥離角度は、180°とした。
【0086】
試験機には卓上形精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(登録商標)AGS-X)を用いて、120mmの長さ分の剥離を行い、毎秒60回の頻度で剥離力を測定した。この測定結果から、瞬間的に最大の値を示した際の剥離力をBとし、剥離力の平均値をCとした。さらに、A=B/Cの値を算出した。
【0087】
結果は、B(瞬間最高値)の測定値を表4に、C(平均値)の測定値を表5に、A=B/Cの値を表6に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
RF-1からRF-4は、いずれも剥離層に含まれるSi量が蛍光X線で0.5kcps以下である。
RF-1及びRF-2に対しては、それぞれPF-A1からPF-D2の8種類において、A=B/Cの値が小さくなり、ジッピングを抑制することができた。
RF-3及びRF-4に対しては、それぞれPF-A1からPF-C2の6種類において、A=B/Cの値が小さくなり、ジッピングを抑制することができた。
RF-5においては、10種類の表面保護フィルム全部において、A=B/Cの値が小さく、ジッピングを抑制することができたが、剥離層にSiが多く含まれている。
【0092】
RF-1又はRF-2と、PF-A1からPF-D2との組み合わせでは、表面保護フィルムのTgが+22℃以下であり、かつ、剥離フィルムの剥離層にアミノ構造をもつ成分及びアミノ構造と化学的に反応しない成分を含んでいる。また、RF-1からRF-4と、PF-A1からPF-C2との組み合わせでは、表面保護フィルムのTgが+11℃以下であり、かつ、剥離フィルムの剥離層にアミノ構造を含んでいる。
【符号の説明】
【0093】
10…剥離フィルムつき表面保護フィルム、11…第二の基材層、12…剥離層、13…粘着剤層、14…第一の基材層、15…剥離フィルム、16…表面保護フィルム。
図1